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特許7629409カーボンナノチューブを製造するシステムおよび方法
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  • 特許-カーボンナノチューブを製造するシステムおよび方法 図1A
  • 特許-カーボンナノチューブを製造するシステムおよび方法 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブを製造するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/16 20170101AFI20250205BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20250205BHJP
   C01B 17/18 20060101ALI20250205BHJP
   D01F 9/12 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
C01B32/16
C01B32/168
C01B17/18
D01F9/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021557962
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 US2020026590
(87)【国際公開番号】W WO2020206262
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】62/828,981
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521257466
【氏名又は名称】ナノコンプ テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイラス,デービッド
(72)【発明者】
【氏名】シャウアー,マーク
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500201(JP,A)
【文献】特表2018-511544(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0147261(US,A1)
【文献】米国特許第02796331(US,A)
【文献】特開昭59-190380(JP,A)
【文献】特開昭56-146883(JP,A)
【文献】特開2015-145340(JP,A)
【文献】特公昭50-000033(JP,B1)
【文献】特表2015-505802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0101317(US,A1)
【文献】特表2009-509066(JP,A)
【文献】特表2008-544939(JP,A)
【文献】QIU Jieshan et al.,Carbon,2006年,44,p2565-2568 ,doi:10.1016/j.carbon.2006.05.030
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
C07F 15/02
B01J 21/00-38/74
D01F 9/12
JSTPlus/JSTchina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブの製造法であって:
(i)炭素質ガスを含んでなるフレアガスを得;
(ii)フレアガスを、過剰な硫化水素の少なくとも一部をフレアガスから除去するための1もしくは複数のプロセスに供することによって、フレアガスを処理し;
(iii)フレアガス、触媒および水素の混合物を反応槽に導入し、ここで反応槽は触媒の存在下で炭素質ガスを炭素質ガスの構成原子に分解するために十分な温度であり、そしてここで構成原子は炭素原子および水素原子を含んでなり;
(iv)炭素質ガスの炭素原子を触媒と相互作用させてカーボンナノチューブを生成し;そして
(v)カーボンナノチューブを回収する
ことを含んでなる前記方法。
【請求項2】
フレアガスが石油またはガス製造現場、製油所、化学プラント、石炭プラントまたは埋め立て地から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フレアガスを処理する工程が、さらに、フレアガスを、過剰な二酸化炭素および/または一酸化炭素の少なくとも一部をフレアガスから除去するための1もしくは複数のプロセスに供することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フレアガスを処理する工程が、(i)フレアガス中の過剰な硫化水素の少なくとも一部を硫黄に電気化学的に還元し、その後それを除去すること、および(ii)フレアガス中の過剰な二硫化水素の少なくとも一部を硫酸に酸化し、そして除去することの、少なくとも1つを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
フレアガス中の過剰な一酸化炭素および/または二酸化炭素の少なくとも一部が、フレアガスから除かれる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒がフェロセンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
カーボンナノチューブを形成するための触媒と相互作用しなかった炭素質ガスを含む混合物の一部が第2反応槽へ送られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
触媒量が混合物から回収され、そして次に再生され第2反応槽へ導入されるか、または後に使用するために貯蔵される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
触媒が、(i)触媒を空気中で酸化しおよび/または電気化学的処理により触媒を剥離し、触媒を塩酸に溶解して、塩酸塩を形成し、次いで塩酸塩をシクロペンタジエニドナトリウムと反応させる;および(ii)触媒を少なくとも2000℃に加熱して触媒を揮発させ、次いで揮発した触媒を沈着させること、の少なくとも1つにより再生される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)の反応槽に導入される水素が、別の反応槽の工程(iii)における炭素質ガスの分解から形成される水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(v)で回収されるカーボンナノチューブが1mmから約50mmの範囲の長さを有する短いカーボンナノチューブファイバーの形態になるように、反応槽から出る前に反応槽内で形成されるカーボンナノチューブが、(i)1もしくは複数の高速ジェットガス、(ii)1もしくは複数の回転インペラ、(iii)テクスチャー表面をわたるガス流、および/または(iv)鈍器の配列による衝撃に供される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との関係
本出願は、2019年4月3日に出願された米国特許仮出願第62/828,981号明細書の優先権を主張し、その内容は全部、引用により本明細書に編入する。
【0002】
連邦政府により資金提供された研究開発に関する表明
なし
【0003】
分野
本開示は一般に、フレアガスおよび他のガス状炭素含有源からカーボンナノチューブを製造するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
カーボンナノチューブを形成するための現在の方法は、反応してカーボンナノチューブと水素を形成する炭素質源として高価な市販級の天然ガス(主にメタンおよび幾らかのエタン、ブタンおよびプロパン)に依存している。石油-ガス採取、製油所、化学プラント、石炭産業および埋め立て地のような廉価な炭素質源から採取し、そしてカーボンナノチューブのようなより高価な製品および水素ガスに転換するシステムおよびプロセスを有することが有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】カーボンナノチューブの製造用のCVDシステムの概略図を具体的に説明する。
図1B図1Aで具体的に説明したCVDシステムと関連して使用するためのインジェクター装置の概略図を具体的に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本開示はその応用が以下の記載で説明される構成要素または工程または方法論の構成および配置の詳細に限定されないと理解される。本開示は他の態様が可能であり、すなわち様々な方法で実施または行われることができる。また本明細書で使用される語法および用語法は説明を目的とし、そして限定するものと見なすべきではないと理解される。
【0007】
本明細書で別段の定めがない限り、本開示と関連して使用される技術用語は当業者により一般的に理解されている意味を有するものである。さらに文脈により別の解釈を必要とするものでない限り、単数形は複数形を含み、そして複数形は単数形を含む。
【0008】
本明細書で言及する全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、本開示が関係する技術分野の当業者の技術水準を示す。本出願の任意の部分で引用される全ての特許、公開された特許出願、および非特許刊行物は、各個別の特許または刊行物が個別具体的に引用により編入されているように、そしてそれらが本開示と矛盾しない程度と同じ程度までそれら全部を引用により明白に本明細書に編入する。
【0009】
本明細書に開示するすべての組成物および/または方法は、本開示に照らして必要以上の実験を行わずに作成でき、そして実施できる。本開示の組成物および方法は態様または好適な態様という意味で記載したが、当業者には本開示の概念、精神、および範囲から逸脱せずに本明細書に記載する組成物および/または方法に、そして方法の工程または工程の順序に変更を適用できることが明白である。そのような当業者には明白なすべての類似する置き換えおよび修飾は、本開示の精神、範囲および概念の中にあると見なされる。
【0010】
カーボンナノチューブに関する本明細書の任意の態様は、本開示の精神および範囲内で、例えば無機またはミネラルナノチューブを含む他の管状ナノ構造に置き換えるために改変することもできる。無機またはミネラルナノチューブには、例えばシリコンナノチューブ、ホウ素ナノチューブおよびナノチューブ構造内にヘテロ原子置換を有するカーボンナノチューブを含む。
【0011】
本開示に従い使用されるように、以下の用語は別段の定めがない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0012】
用語“a”または“an”の使用は、用語「含んでなる(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」または「含む(containing)」(またはそのような用語の派生形)と関連して使用する場合、「1つ」を意味するものだが、これはまた「1もしくは複数」、「少なくとも1つ」および「1または1より多く」という意味とも合致する。
【0013】
用語「または」の使用は、もっぱら代替物を明らかに示し、そして代替物が相互に排他的である場合のみを除き、「および/または」を意味するために使用する。
【0014】
本開示を通して用語「約」は、値が定量する装置、メカニズムまたは方法の誤差の固有の変動、あるいは測定される対象(1もしくは複数)間に存在する固有の変動を含むことを示す。例えば限定するわけではないが、用語「約」を使用する場合、それが指す表示した値は、プラスまたはマイナス10パーセント、または9パーセント、または8パーセント、または7パーセント、または6パーセント、または5パーセント、または4パーセント、または3パーセント、または2パーセントまたは1パーセントまで、あるいはそれらの間の1もしくは複数の画分で変動してよい。
【0015】
「少なくとも1つ」の使用は、1ならびに限定するわけではないが1,2,3,4,5,10,15,20,30,40,50,100等を含む1より多くの任意の量を含むと理解されるものである。用語「少なくとも1つ」は、それが指す用語に依存して最高100または1000またはそれより多くに拡張することができる。さらに100/1000の量は、より低い、またはより高い限界も満足な結果を生じる可能性があるので、限定と考えるものではない。
【0016】
加えて「X、YおよびZの少なくとも1つ」という句は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX,YおよびZの任意の組み合わせを含むと理解されるものである。同様に「XおよびYの少なくとも1つ」とは、X単独、Y単独、ならびにXおよびYの任意の組み合わせを含むと理解されるものである。さらに「少なくとも1つ」という句は、任意の数の構成要素を用いて使用でき、そして前記と同様の意味を有することができる。
【0017】
序数の用語法(すなわち第1,第2、第3、第4等)の使用は、単に2以上の項目間を区別する目的であり、そして他に言及しない場合には別の項目または追加の順序に対して1つの項目の配列、順番または重要性を付加することを意味していない。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「含んでなる(comprising)」(およびその任意の形、例えば“comprise”および“comprises”)、「有する(having)」(およびその任意の形、例えば“have”および“has”)、「含む(including)」(およびその任意の形、例えば“includes”および“include”)または「含む(containing)」(およびその任意の形、例えば“contains”および“contain”)は、包含的、すなわちオープンエンドであり、追加の非言及要素または方法工程を排除しない。
【0019】
本明細書で使用する句「またはそれらの組み合わせ」および「およびそれらの組み合わせ」は、用語に先行する列挙した項目の全ての並べ替え(permutations)および組み合わせ(combinations)を指す。例えば「A,B,Cまたはそれらの組み合わせ」は:A,B,C,AB,AC,BC,またはABCの少なくとも1つを含むことを意図し、そして特定の文脈で順序が重要ならばBA,CA,CB,CBA,BCA,ACB,BACまたはCABの少なくとも1つを含むことを意図する。この例に続いて明確に含まれるのは、1もしくは複数の項目または用語の反復を含む組み合わせ、例えばBB,AAA,CC,AABB,AACC,ABCCCC,CBBAAA,CABBB等である。当業者は文脈から明らかにそうでない場合を除き、一般に任意の組み合わせの中の項目および用語の数に制限はないと理解するだろう。同じ考え方で、用語「またはそれらの組み合わせ」および「およびそれらの組み合わせ」は、句「から選択される」または「からなる群から選択される」と一緒に使用される場合、その句に先行する列挙した項目の全ての並び替えおよび組み合わせを指す。
【0020】
「1つの態様において」、「態様では」、「1つの態様によれば」等の句は、一般にその句に続く特定の機能、構造または特徴が本開示の少なくとも1つの態様に含まれることを意味し、そして本開示の1より多くの態様に含まれ得ることを意味する。重要なことは、そのような句は非限定的であり、そして同じ態様を必ずしも指していないが、もちろん1もしくは複数の先行する、および/または後述する態様を指すことができる。例えば添付の請求の範囲では、任意の請求する態様を任意の組み合わせで使用することができる。
【0021】
本明細書で使用するように、用語「重量%」、「wt%」、「重量パーセント」または「重量による割合」は互換的に使用する。
【0022】
本明細書で使用する用語「フレアガス」は、石油-ガス生産中に、または製油所、化学プラント、石炭産業および埋め立て地での操作から生産され、通常は燃やされる(burned)か、または燃え上がらせる(flared)ガスの混合物を指す。フレアガスの組成はその供給源に依存するが、1もしくは複数の以下の炭素質ガスを含んでなる可能性がある:メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオ-ペンタン、n-ヘキサン、エチレン、プロピレン、および1-ブテン、ならびに一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、二硫化水素、水素、酸素、窒素および水のような1もしくは複数の他の成分。石油-ガス生産現場からのフレアガスは、90%より多いメタンを含んでなる主に天然ガスを含む。
【0023】
本明細書で使用するように、「カーボンナノチューブ」は約1nm未満から約20nmの直径、および1mmから5mmの長さを有する単層、二層および/または多層カーボンナノチューブを称するために使用される。
【0024】
本明細書で使用する「カーボンナノチューブファイバー」とは、0.1から10ミクロンの範囲の直径、および約150mmから約500mmの長さを有する構造を形成するような相互に連結された多数のカーボンナノチューブを含んでなるステープルファイバーを称する。
【0025】
本明細書で使用する「短いカーボンナノチューブファイバー」とは、わずか約1mmから約50mmの長さを有するカーボンナノチューブファイバーを称する。
【0026】
1つの観点では、本開示は:(i)炭素質ガス、触媒および水素を反応槽に導入し、ここで反応槽は(触媒の存在下で)炭素質ガスを炭素および水素を含む炭素質ガスの構成原子に分解するために十分な温度であり、そして(ii)炭素質ガスの炭素原子を触媒と相互作用させてカーボンナノチューブを生成する工程を含んでなるカーボンナノチューブの製造法を対象とする。
【0027】
別の観点では、本開示は:炭素質源を含んでなるフレアガスを得;フレアガスを処理し;フレアガス、触媒および水素を反応槽に導入し、ここで反応槽は(触媒の存在下で)炭素質ガスを炭素および水素を含む炭素質ガスの構成原子に分解するために十分な温度であり;炭素質ガスの炭素原子を触媒と相互作用させてカーボンナノチューブを生成し;そしてカーボンナノチューブを回収する工程を含んでなるカーボンナノチューブの製造法を対象とする。
【0028】
フレアガスは、石油またはガス生産現場、製油所、化学プラント、石炭プラント、または埋め立て地から得ることができる。1つの態様では、カーボンナノチューブを製造するために使用するシステムは、石油またはガス生産現場、製油所、化学プラント、石炭プラント、または埋め立て地の現場なので、フレアガスはその供給源から直接得ることができ、そして反応槽へ導入される前に処理されることができる。
【0029】
フレアガスを処理する工程は、フレアガスを、過剰な硫化水素、二硫化水素、二酸化炭素および/または一酸化炭素をそこから除去するための1もしくは複数のプロセスに供することを含んでなる。本明細書で使用する「過剰」とは、フレアガスがサワーガスと考えられるようになり、そしてカーボンナノチューブを生産する能力に有害な影響を有するに十分な量を意味する。
【0030】
1つの態様では、過剰な硫化水素とはフレアガスの総重量の50重量%より高い量、または40重量%より高い量、または30重量%より高い量、または20重量%より高い量、または10重量%より高い量、または5重量%より高い量、または1重量%より高い量、または0.1重量%より高い量を意味する。
【0031】
1つの態様では、過剰な二酸化炭素とはフレアガスの総重量の50重量%より高い量、または40重量%より高い量、または30重量%より高い量、または20重量%より高い量、または10重量%より高い量、または5重量%より高い量、または1重量%より高い量、または0.1重量%より高い量を意味する。
【0032】
1つの態様では、過剰な一酸化炭素とはフレアガスの総重量の50重量%より高い量、または40重量%より高い量、または30重量%より高い量、または20重量%より高い量、または10重量%より高い量、または5重量%より高い量、または1重量%より高い量、または0.1重量%より高い量を意味する
【0033】
1つの態様では、過剰な二硫化水素とはフレアガスの総重量の50重量%より高い量、または40重量%より高い量、または30重量%より高い量、または20重量%より高い量、または10重量%より高い量、または5重量%より高い量、または1重量%より高い量、または0.1重量%より高い量を意味する。
【0034】
1つの特定の態様では、処理したフレアガスは、(i)硫化水素をフレアガスの総重量の50重量%より低い量、または40重量%より低い量、または30重量%より低い量、または20重量%より低い量、または10重量%より低い量、または5重量%より低い量、または1重量%より低い量、または0.1重量%より低い量で、(ii)二酸化炭素をフレアガスの総重量の50重量%より低い量、または40重量%より低い量、または30重量%より低い量、または20重量%より低い量、または10重量%より低い量、または5重量%より低い量、または1重量%より低い量、または0.1重量%より低い量で、(iii)一酸化炭素をフレアガスの総重量の50重量%より低い量、または40重量%より低い量、または30重量%より低い量、または20重量%より低い量、または10重量%より低い量、または5重量%より低い量、または1重量%より低い量、または0.1重量%より低い量で、および/または(iv)二硫化水素をフレアガスの総重量の50重量%より低い量、または40重量%より低い量、または30重量%より低い量、または20重量%より低い量、または10重量%より低い量、または5重量%より低い量、または1重量%より低い量、または0.1重量%より低い量で含む。
【0035】
フレアガスを処理する工程が、(i)硫化水素の少なくとも一部を硫黄に電気化学的に還元し、その後それを除去すること、および(ii)二硫化水素の少なくとも一部を硫酸に酸化し、そして除去することの少なくとも1つを含んでことができる。
【0036】
フレアガスを処理する工程が、別法で、または追加で一酸化炭素および/または二酸化炭素の少なくとも一部がフレアガスから除かれる(scrubbed)プロセスまたはシステムを含むことができる。1つの態様では、一酸化炭素および/または二酸化炭素の一部は、一酸化炭素および/または二酸化炭素の一部が溶媒に吸収されるように、フレアガスを例えば限定するわけではないが、アミン溶媒を含む溶媒と接触させることによりフレアガスから除かれることができる。しかし当業者はフレアガスから二酸化炭素および/または一酸化炭素を除くための他のプロセスも存在でき、そして本開示の範囲内にあると認識するだろう。
【0037】
反応槽の温度は周囲圧で800℃から1400℃より高く、または800(Cから1500℃、または900℃から1400℃、または1000℃から1400℃、または1100℃から1300℃の範囲、または約1200℃であることができる。
【0038】
1つの態様では、反応槽中の炭素質ガスの一部はカーボンナノチューブを形成するための触媒と相互作用しない。炭素質ガスのこの一部は、次いで分離され、そして反応槽から取り出され、そして任意に天然ガスまたは処理済もしくは未処理フレアガスの追加量と共に第2反応槽に送られる。
【0039】
触媒量も反応槽から回収され、そして任意に再生され、そして新たな(すなわち未使用の)触媒量と共に、またはそれ無しに第2反応槽に導入されることができる。
【0040】
1つの態様では、触媒は(i)触媒を空気中で酸化し、および/または電気化学的処理により触媒を剥離し(exfoliating)、触媒を塩酸に溶解して塩酸塩を形成し、次いで塩酸塩をシクロペンタジエニドナトリウムと反応させる;および(ii)触媒を少なくとも2000℃に加熱して触媒を揮発させ、次いで揮発した触媒を沈着させることの少なくとも1つにより再生される。
【0041】
未反応の炭素質ガスを各反応槽から取り、そしてそれを新たな触媒、再生した触媒および/または古い触媒と追加の反応槽で合わせるこのプロセスは、1回または複数回行うことができる。
【0042】
1つの特定の態様では、炭素質ガスの分解から形成される水素が分離され、そして貯蔵または転売のために回収されるか、反応槽を加熱するための燃料として使用されるか、および/または別の反応槽へ導入されるいずれかとなる。
【0043】
別の態様では、反応槽で形成されたカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブが1mmから約50mmの範囲、またはより好ましくは約25mmの長さを有する短いカーボンナノチューブファイバーの形態になるように、反応槽から出る前に(i)1もしくは複数の高速ジェットガス、(ii)1もしくは複数の回転インペラ(spinning impeller)、(iii)テクスチャー表面(a textured surface)をわたるガス流、および/または(iv)鈍器の配列(an array of blunt objects)による衝撃に供される。
【0044】
典型的には、カーボンナノチューブファイバーの作製法は、できるかぎり層流に近い流れでカーボンナノチューブの凝集を促進して、大変長いファイバーを形成しようとする。カーボンナノチューブをガス流およびカーボンナノチューブの凝集能力の他の中断(例えば回転インペラとの接触または鈍器との衝突)に供することは、短いカーボンナノチューブファイバーに適する分散物、および他の生成物の作製に有用な短いカーボンナノチューブファイバー、の形成を可能にすることが見い出された。
【0045】
カーボンナノチューブの製造法は、さらに米国特許第7,993,620号および同第9,061,913号明細書に説明されている方法およびシステムの観点を含んでなることができ、これらは引用により全部、本明細書に記載する。
【0046】
特に本方法は図1Aで具体的に説明するシステム10を使用することを含んでなることができ、このシステムは1つの態様では、向かい合う末端111および112を有するハウジング11(すなわち炉)、および末端111と112との間を延びる通路113を有する。中で延びた長さのナノ構造を生成できる管12(すなわち反応槽)は、ハウジング11の通路113内に位置することができる。図1Aで示すように、管12の末端121および122は、ハウジング11の末端111および112からそれぞれ延びるように配置することができる。態様では、ハウジング11は管12内でカーボンナノ構造を成長させるために必要な約1100℃から約1500℃に上がる温度を生じるための加熱要素またはメカニズム(示さず)を含むことができる。加熱要素は、延びた長さのナノ構造の合成中に管12内の温度環境を特定範囲内に維持しなければならないので、具体的に説明はしないが、システム10には管12内の温度環境を監視するための熱電対を管12の外に備えることができる。態様では、例えば約1000℃から約1400℃の管12内の温度範囲の管理は、断熱構造123の使用により至適化することができる。1つの態様では、断熱構造123は例えばジルコニアセラミックファイバー(例えばジルコニア-安定化窒化ホウ素)から作られることができる。もちろん他の断熱材料も使用することができる。
【0047】
ハウジング11および管12は、温度およびガス-反応性環境での変動に耐えなければならないので、ハウジング11および管12は強く実質的にガス不透過性の実質的に腐食耐性の材料から製造されなければならない。態様では、ハウジング11および管12は、石英材料から作製されることができる。もちろんハウジング11および管12がガスに対して不透過性のままで、しかも非腐食特性を維持できる限り他の材料を使用することができる。また円筒状の形態として具体的に説明しているが、ハウジング11および管12は任意の幾何学的断面で提供されることができる。
【0048】
またシステム10は、管12内から生成されるナノ構造を回収するために、管12の末端122と流路でつながる回収ユニット13を含むことができる。管12の反対121で、システム10は管12と流路でつながるインジェクター装置14(すなわち噴霧器)を含む。態様では、インジェクター14は管12内でナノ構造の成長に必要な成分の流体混合物をリザーバー15から受けるように設計されることができる。またインジェクター14は、ナノ構造の生成および成長のために混合物を管12に向ける前に、混合物を揮発または流動化(すなわち小液滴の生成)するように設計されることができる。
【0049】
1つの態様では、流体混合物はとりわけ(a)続いてそれらの上でのナノ構造の成長のための触媒粒子が生成され得る触媒前駆体(すなわち触媒)、(b)触媒前駆体から生成される触媒粒子のサイズ分布、そしてすなわちナノ構造の直径を制御するためのコンディショナー(conditioner)化合物、および(c)ナノ構造を成長させるために触媒粒子上に沈着する炭素原子のための炭素質源(例えば(i)処理済または未処理フレアガス、(ii)メタン、エタン、ブタン、および/またはプロパン、(iii)天然ガスおよび/または(iv)キシレン、トルエンおよびベンゼンのような他の炭化水素を含む)を含むことができる。
【0050】
触媒粒子が生成し得る触媒前駆体の例には、フェロセン、鉄、鉄合金、ニッケルまたはコバルト、それらの酸化物、またはそれらの合金(または他の金属またはセラミックスとの化合物)のような材料を含むことができる。あるいは触媒粒子は、Fe3O4,Fe2O4,またはFeOのような金属酸化物、またはコバルトまたはニッケルのような類似酸化物、またはそれらの組み合わせから作成され得る。
【0051】
本発明の流体混合物との関連で使用するコンディショナー化合物の例には、チオフェン(Thiophene),H2S、他の硫黄含有化合物、またはそれらの組み合わせを含む。
【0052】
本開示の流体混合物との関連で使用する炭素質源の例には、限定するわけではないが、処理済または未処理フレアガス、エタノール、ギ酸メチル、プロパノール、酢酸、ヘキサン、メタノール、またはメタノールとエタノールとのブレンドを含む。C2H2,CH3およびCH4を含む他の液体炭素質源も使用することができる。
【0053】
ここで今、図1Bを見ると、インジェクター14の詳細な説明が示されている。1つの態様では、インジェクター14は実質的に管状のチャンバー141を含み、通路142を規定し、これに沿って揮発した流体混合物が生成され、そして反応槽管12に向けられる。混合物を揮発させるか、または流動化するために、インジェクター14はリザーバー15から導入されている流体混合物から小液滴を生成するために、ベンチュリ―効果を与えるように設計された噴霧管16を含むことができる。1つの態様では、流体混合物の揮発化または流動化は流体が噴霧管16の遠位末端161を出る時に実質的に起こると考えるべきである。態様では、生成されている液滴はナノスケールのサイズからマイクロスケールのサイズの範囲となり得る。1つの態様では、揮発した流体混合物を噴霧管16に沿って反応槽管12に向けるために、H2、Heまたは任意の他の不活性ガスのようなガスの体積が、揮発した流体を反応槽管12に向けて押すために使用される。
【0054】
インジェクター14は実質的に管状と説明されているが、インジェクターが噴霧管16を収納でき、そして通路に沿って揮発した流体混合物を反応槽管12に向けることができる通路を提供できる限り、任意の幾何学的設計で提供されると理解すべきである。
【0055】
加えて、本開示のインジェクター14は流体混合物の個々の成分を流体混合物の一部として提供するよりもむしろそれらを個別にインジェクター14へ導入することを可能にすることに注目すべきである。そのような態様では、各成分が管16に類似する噴霧管を通して個別に揮発され、そしてインジェクター14に導入され、ここでそれらは混合され、そして引き続き前記に類似した様式でインジェクター14に沿って方向付けられる。
【0056】
インジェクター14は反応槽管12および炉11内に位置するので、管12および炉11内で生成している熱は、インジェクター14内の温度環境に負の効果を有する恐れがある。反応槽管12および炉11内の熱からインジェクター14を遮断するために、断熱パッケージ17をインジェクター14の周りに提供することができる。特に、断熱パッケージ17はインジェクター14の長さに沿って温度環境を保護するように作用できる。
【0057】
断熱パッケージ17の存在で、インジェクター14内の温度環境はナノ構造が成長するために必要な様々な反応に影響を及ぼすことができる範囲に下げることができる。このために、インジェクター14はまた触媒前駆体から触媒粒子の形成を可能にする十分な温度範囲を提供するために、噴霧管16から下流に位置する加熱ゾーンAを含むことができる。1つの態様では、加熱ゾーンAは噴霧管16の遠位末端161の下流に位置する第1ヒーター18を含む。ヒーター18は、例えば触媒前駆体をその構成原子に分解するために必要なTp1での温度範囲を維持するために提供でき、この原子はその後、触媒粒子のクラスターとなり、続いてこの上でナノ構造が成長する。触媒前駆体を分解するために必要なレベルにTp1での温度範囲を維持するために、1つの態様では、ヒーター18はTp1よりわずかに下流に位置することができる。フェロセンが前駆体として使用される態様では、その構成原子(すなわち鉄粒子)はそのサイズが実質的にナノスケールであるが、Tp1での温度が約200℃から約300℃の範囲に維持できる時に生成され得る。
【0058】
加熱ゾーンAは、炉11内の第1ヒーター18の下流に配置される第2ヒーター19をさらに含むことができる。ヒーター19は例えばTp2で、コンディショナー化合物をその構成原子に分解するために必要な温度範囲に維持するために提供されることができる。これらの原子は触媒粒子のクラスターの存在で、クラスターと相互作用して触媒粒子のサイズ分布、つまり生成しているナノ構造の直径を制御することができる。チオフェンがコンディショニング化合物として使用される態様では、触媒粒子のクラスターと相互作用してチオフェンの分解で硫黄が放出され得る。態様ではヒーター19はTp2での温度範囲を約700℃から約950℃に維持し、そしてそのような範囲をヒーター19のわずかに下流の場所で維持するように設計することができる。
【0059】
本発明の1つの態様によれば、Tp2はTp1から所望の距離に配置することができる。様々なパラメータが役割を果たすことになるので、Tp1からTp2への距離は、触媒前駆体の分解が起こるTp1からTp2への流体混合物の流れが、触媒粒子のサイズ分布を至適化するためにコンディショニング化合物の分解量を至適化できるような距離にするべきである。
【0060】
インジェクター14内の第1ヒーター18および第2ヒーター19により生じる特定の温度ゾーンに加えて、噴霧管16の遠位末端161での温度も、揮発した流体混合物の凝縮、または流体混合物が噴霧管16の遠位末端161を通って出る時のその不均一な流れのいずれかを回避するために、インジェクター14内で特定範囲内に維持できる必要があると考えるべきである。ある態様では、遠位末端161での温度は約100℃から約250℃の間に維持する必要があるかもしれない。例えば温度が示した範囲より低い場合、流体混合物の凝縮がインジェクター16の壁面に沿って生じる恐れがある。結果としてインジェクター16から反応槽管12へ向けられる流体混合物は、リザーバー15から導入された混合物とは実質的に異なる可能性がある。例えば温度が示した範囲より高い場合、遠位末端161で流体混合物の沸騰が起こる可能性があり、流体のインジェクター14へのスパッタリングおよび不均一流を生じる。
【0061】
噴霧管16の遠位末端161での凝縮を最少にし、Tp1で触媒前駆体の分解を可能にするために必要な温度を維持し、またはTp2でコンディショニング化合物の分解を可能にするにしても、インジェクター14はその長さに沿って温度勾配を維持する必要がかもしれないので、反応槽管12および炉11からの熱を遮断することに加えて、断熱パッケージ17は各重要な場所でインジェクター14に沿って所望する温度勾配を維持するように作動できる。1つの態様では、断熱パッケージ17は石英または類似の材料から、あるいはジルコニアセラミックファイバー(例えばジルコニア安定化窒化ホウ素)のような孔質セラミック材料から作製することができる。もちろん他の断熱材料も使用できる。
【0062】
1つの態様では、システム10は遠位末端161を出る流体混合物が第2のシステムのインジェクターに導入できるように設計される。
【0063】
システム10はさらに、ガス流または他の手段のいずれかが形成後のカーボンナノチューブを破壊して有意な凝集を防止し、これにより短いカーボンナノチューブファイバーを生じるように設計される。
【0064】
本発明の様々な態様の作成および使用を前記に詳細に説明してきたが、本発明は広い範囲の具体的内容に具現化できる多くの応用可能な発明の概念を提供すると考えるべきである。本明細書で検討する具体的態様は、本発明の作製および使用の具体的方法を単に説明するものであり、本発明の範囲を制限しない。
図1A
図1B