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特許7629440体内レーザ砕石術の施術中に温度をモニタリングするためのシステム
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  • 特許-体内レーザ砕石術の施術中に温度をモニタリングするためのシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】体内レーザ砕石術の施術中に温度をモニタリングするためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20250205BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20250205BHJP
   A61B 1/015 20060101ALI20250205BHJP
   A61B 17/94 20060101ALI20250205BHJP
   A61B 18/26 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
A61B17/22
A61B1/00 621
A61B1/00 550
A61B1/015 513
A61B17/94
A61B18/26
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022501171
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2020069125
(87)【国際公開番号】W WO2021005060
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】202019103823.3
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500498763
【氏名又は名称】ジャイラス エーシーエムアイ インク ディー/ビー/エー オリンパス サージカル テクノロジーズ アメリカ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミエルニク,アルカディウスツ
(72)【発明者】
【氏名】ハイン,ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】ペツォルド,ラルフ
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-023943(JP,A)
【文献】特開2001-079016(JP,A)
【文献】特開2018-118115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61B 1/00
A61B 1/015
A61B 17/94
A61B 18/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位側でレーザに光学的に接続され、遠位側に光出射口を有する光ファイバーケーブルのための作動チャネルと、前記遠位側で前記光出射口の領域へと開口し、前記近位側で灌注液リザーバと流体連結している灌注液チャネルとを備える内視鏡アセンブリを採用しているレーザ光ベースの砕石術の施術中に温度をモニタリングするためのシステムであって、
前記内視鏡アセンブリと組み合わせることが可能なモジュール部を備え、
前記モジュール部は、
前記灌注液チャネルおよび/または前記灌注液チャネルと流体連結している供給ラインと並んで取り付け可能で、灌注液と非接触で灌注流量を判定する流量センサと
記灌注液チャネルおよび/または前記灌注液チャネルと流体連結している供給ラインと並んで取り付け可能で、前記灌注液と非接触で前記灌注液の温度を判定する温度センサと、
前記流量センサおよび前記温度センサによって生成されるセンサ信号を受信する処理部と、
前記処理部に接続され、前記光出射口の位置に照射可能なレーザ出力を決定するための基礎となる前記レーザのための動作パラメータを前記処理部に送信可能である入力手段と、
を備え、
前記処理部は、
なくとも前記灌注流量と、前記灌注液の温度(T)と、前記決定された照射レーザ出力とに基づいて、前記光出射口の位置での前記レーザ光ベースの砕石術中に体内で発生する温度Tを数値的に決定する分析部と、
前記決定された温度Tを閾値と比較し、前記閾値を上回った場合、信号を生成する比較部と、
含む、システム。
【請求項2】
前記流量センサは、超音波センサの形態を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記入力手段は、手動で操作可能なインタフェースまたはデータインタフェースである、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記レーザの動作パラメータは、レーザパルス周波数および個別パルスエネルギーを含む指定可能なパラメータである、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記分析部は、前記光出射口の位置で発生する前記温度Tを以下のアルゴリズムに基づいて決定する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【数1】
【請求項6】
前記温度センサは、赤外線センサの形態を有する、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムは、前記比較部によって生成された前記信号を触覚的、聴覚的および/または視覚的に認知可能にする生理学的認知可能信号部を備える、請求項1からのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記灌注液チャネルおよび/または前記灌注液リザーバに熱的に結合される冷却部を備え、
前記冷却部は、前記比較部により生成された前記信号によって起動または制御されることが可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記比較部により生成される前記信号によって起動可能な緊急停止スイッチを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記レーザの動作を記録するマイク信号を生成するためにマイク部を備え、
前記マイク部は前記分析部に接続されている、請求項1から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、レーザ光ベースの砕石術の施術に適し、使用中の内視鏡アセンブリに取り付けるための後付けキットとして構成されている、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記作動チャネルおよび前記灌注液チャネルは、前記作動チャネルに並んで配置されている前記光ファイバーケーブルが前記灌注液によって直接的に灌流されるように1つのチャネルとして構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記内視鏡アセンブリは、前記砕石術の施術中に患者の外部に残留する体外領域を有し、
前記モジュール部の前記温度センサおよび前記流量センサは、前記灌注液チャネルまたは前記灌注液チャネルに流体連結されている供給ラインに並ぶ前記内視鏡アセンブリの前記体外領域に取り付けられている、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記灌注液リザーバ内の灌注液の充填レベルを演算またはセンサによって直接検出するためのユニットが備えられ、
前記ユニットは、前記充填レベルに依存する信号を少なくとも1つ生成する、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記ユニットは、前記灌注液リザーバに備えられているセンサおよび/または前記処理部により実装されるソフトウェアベースの分析アルゴリズムであり、前記センサにより検出された前記灌注流量および灌注液が放出される時間の計測長に基づいて前記充填レベルを決定する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記充填レベルに依存する信号は、請求項7に記載の前記信号部によって、またはさらなる信号手段によって、触覚的、聴覚的および/または視覚的に認知可能に生成可能である、請求項7および請求項14または請求項7および請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記温度センサにより検出された前記灌注液の温度(T)は、前記比較部または前記灌注液の温度(T)が臨界温度値を下回るまたは上回る場合に信号を生成するさらなる比較部に提供されることが可能である、請求項1から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記灌注液チャネルは、前記近位側において、電気的に動作可能な灌注液供給部に接続される、請求項1から17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記灌注液供給部は、前記光出射口の位置で発生する前記温度Tおよび/または前記レーザの少なくとも1つの動作パラメータに応じて前記灌注流量を制御することが可能な手段を提供する、請求項18に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近位側でレーザに光学的に接続され、遠位側に光出射口を有する光ファイバーケーブルのための作動チャネルと、遠位側で光出射口の領域へと開口し、近位側で灌注液リザーバと流体連結している灌注液チャネルとを備える内視鏡アセンブリを採用する、レーザ光ベースの体内砕石術の施術中に温度をモニタリングするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
体内砕石術は、胆石、尿路結石または腎臓結石等の結石を破砕するための低侵襲手術であり、結石は罹患臓器の排泄管に主に凝集し、他の医学的問題だけでなく、激痛を引き起こし得る。多くの公知の体内砕石治療のうち、レーザ誘起砕石術は定着した治療法となってきており、その治療では高エネルギーのレーザビームが光ファイバーケーブルを介してレーザパルスの形態で破砕される結石の位置に照射される。レーザパルスが体内の媒体と相互作用を起こすと、蒸気の気泡を形成する。これらのパルス状の膨張は圧力波を発生させ、これが結石の破砕を引き起こす。それらのサイズによっては、レーザ誘起砕石術によって作られた結石の破片は自然に排泄または適切に構成された内視鏡把持具で抽出できる。
【0003】
内視鏡は、レーザ光ベースの砕石術を実行するために使用される。内視鏡は近位側でレーザに光学的に接続され、遠位側に光出射口を有する光ファイバーケーブルのための作動チャネルを少なくとも1つ有する。内視鏡で結石まで内在するアクセス経路をたどることを可能にするため、および処置中の患者への負担を可能な限り少なくするために、この種の内視鏡は柔軟で可撓性のある構成であってもよい。加えて、灌注液は、この種の内視鏡を介して、多くの場合、遠位側で光出射口の領域へと開口し、近位側で灌注シリンジおよび/または制御可能もしくは調節可能な供給ポンプの形態であることが好ましい灌注液供給装置および灌注液リザーバと流体連結している作動チャネルを介して適用できる。
【0004】
内視鏡を備えるこの種の内視鏡アセンブリと、それに接続される前述の周辺機器とを用いて、破砕される結石の位置にて体内で照射されるレーザ出力と、遠位側の灌注チャネルへと放出される灌注液の量とは、一方で効果的な石の破砕が行えるように、そして他方でレーザ光による組織の周辺領域の局所的な過熱(これは組織に不可逆的な損傷を与えかねないため)が起こらないように互いに調和する必要がある。殆どの場合、この種の内視鏡は、内視鏡の先端に、オペレータ用の追加のグラスファイバー光学系または画像センサが設けられている。内視鏡の先端は、破砕工程のモニタリングのために鮮明な視界をオペレータに保証するため、灌注液が計量供給デリバリーを使用して光学的にクリアに保持されなくてはならない。
【0005】
特許文献1は、砕石工程に影響のあるパラメータの少なくとも1つに応じて調整されることが可能な、すなわち、灌注流量が砕石工程に応じて影響を受ける、関連する灌注液供給部を有して、レーザ光ベースの砕石術を実施するための、この種の内視鏡アセンブリを説明している。破砕工程の光学的なモニタリングに加え、公知の内視鏡アセンブリには、それを取り囲む流体の遠位温度を検出できる内視鏡の先端部に取り付けられている温度センサが設けられており、灌注液の流量を調整するためにこれに基づいて灌注液供給部が制限される。
【0006】
レーザ光ベースの砕石術を施術するために適切な、特許文献2による公知の医療用内視鏡の場合でも、周辺温度センサが、温度測定の目的で内視鏡の遠位領域に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公報第2018/0055568号明細書
【文献】独国実用新案第202017102316号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようにセンサを備えた内視鏡アセンブリは、長期にわたって包括的な医療技術的な認可および検査を受けなくてはならない極めて複雑な医療機器を構成する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、医療技術的な検査または認可に関して過剰なコストと時間とをかける必要なしにこの種の標準的な内視鏡でモニタリングされた体内砕石術を施術できるように、近位側でレーザに光学的に接続され、遠位側に光出射口を有する光ファイバーケーブルのための作動チャネルと、遠位側で光出射口の領域へと開口し、近位側で灌注液リザーバと流体連結している灌注液チャネルとを備える内視鏡アセンブリを採用しているレーザ光ベースの砕石術の施術中に温度をモニタリングするためのシステムをさらに発展させることである。結石の破砕位置のすぐ周辺の領域で起こり得る熱的に誘発されるいかなる組織の劣化も除外できるようにするために、その手段によって、レーザ光ベースの砕石術に一般に適した、内視鏡、レーザシステムならびに受動的および能動的な灌注のための灌注液装置等のすでに使用されている他の医療技術的な装置に適切に選択されたコンポーネントを後付け(Retrofit)できる手段が求められている。
【0010】
本発明の基本的な目的に対する解決策が請求項1に定義されている。有利な方法で発明概念をさらに発展させる特性は従属請求項の主題およびさらなる説明、特に、実施形態例への参照により形成されている。
【0011】
概して、灌注のない、すなわち、光ファイバーケーブルの遠位光出射口の領域に灌注液の供給がない、体内レーザの適用は、短時間、すなわち、数秒未満のみ可能で、他にも灌注によってもたらされる冷却もない場合、臨界温度である約42°Cは到達および超過され、それを超えると周囲の組織が不可逆的に熱損傷するだろう。その結果、十分な冷却を保証するために、レーザ光ベースの砕石術中の灌注は不可欠である。
【0012】
体内に照射されるレーザ出力と、灌注液の流量と、灌注液の温度と、レーザパルスの適用中に発生する体内の温度との確実な数的または理論的な関係性は、これまでに施術されてきたレーザ光ベースの砕石術の多数の実験によって既知である。
【0013】
この発見に基づくと、近位側でレーザに光学的に接続され、遠位側に光出射口を有する光ファイバーケーブルのための少なくとも1つの作動チャネルと、作動チャネルと分離または一体であってもよく、遠位側で光出射口の領域へと開口し、近位側でオプションの灌注液供給部と、灌注液リザーバと流体連結している灌注液チャネルとを有する公知の内視鏡の場合、それを内視鏡アセンブリの体外領域に並ぶ灌注液チャネルおよび/または灌注液チャネルと流体連結している供給ラインに並んでそれぞれ脱着可能で固定的に取り付け可能な少なくとも1つの流量センサと、少なくとも1つの温度センサとを備えるモジュール部と組み合わせることには可能性がある。このようにして、灌注液に非接触で灌注流量が決定できるように流量センサは構成および配置される。同時に、非接触で灌注液の温度が決定できるように灌注液チャネルおよび/または灌注液チャネルと流体連結している供給ラインに並んで温度センサは構成および取り付けられている。
【0014】
さらに、モジュール部は、レーザのための動作パラメータを、それを介して入力できる入力手段であって、入力手段に接続されている処理部にレーザのための動作パラメータを送信できる入力手段か、レーザのための動作パラメータを、それを介して直接的に転送できるインタフェースかのいずれかを備える。レーザのための動作パラメータは、レーザ出力を含むことが好ましく、それにより、光出射口の位置に照射されるレーザ出力の計算がレーザパルス周波数と個別パルスエネルギーとを介して計算できる。
【0015】
加えて、灌注液のセンサによって得られた灌注流量と、センサによって得られた温度と、決定された体内で当てられたレーザ出力とに基づいて、光出射口の位置でのレーザ光ベースの砕石術中に体内で発生する温度を数値的に決定する分析部が処理部に取り付けられている。比較部は処理部と分離または一体化しており、例えば42°Cの調整可能な閾値と決定された温度を比較し、閾値を上回る場合、信号を生成する。
【0016】
加えて、好適な実施形態では、比較部に無線または配線で接続されている信号部が設けられ、これによって、比較部で生成された信号は触覚的、聴覚的および/または視覚的に認知可能とできる。信号部によって、砕石術を施術する医師は、潜在的な体内の過熱の影響に気づくことができ、砕石処置を中断または他の手段を取ることができる。
【0017】
後付けセットまたは後付けキットとして構成されていることが好ましい本発明によるモジュール部は、内視鏡アセンブリの一般的機能を損なうことなく、既に使用中の内視鏡アセンブリにモジュール式で取り付けできるコンポーネントを排他的に備える。このように、本発明によるシステムは、レーザ光ベースの砕石術の施術中に医師を支援する安全システムを構成し、これによって、医師は砕石治療を効果的および患者に優しい方法で行うことを可能にする確実で信頼できる情報を受け取る。
【0018】
この点に関して必要な情報は、作動チャネルまたは灌注液チャネルによって内視鏡アセンブリを介して導入された体内の灌注液の現在の温度と、破砕される結石の位置で照射されるレーザ出力と、レーザ光を当てる位置での作動チャネルまたは灌注液チャネルを通して体内に導入される灌注液の灌注流量とに過ぎない。
【0019】
灌注液温度および灌注流量に必要なセンサは、身体へと体内に導入されていない内視鏡アセンブリの領域に適用されている灌注液チャネルおよび/または灌注液チャネルと流体連結している供給ラインに脱着可能で固定的に取り付けられている構造的要素をそれぞれ構成している。このように、好適には、灌注流量を決定するセンサは、超音波センサの形態の流量センサである。赤外線センサの形態の温度センサは、灌注液の温度を得るために適切と思われる。
【0020】
光ファイバーケーブルの光出射口の位置で発生する温度を決定するために必要なレーザのために指定できる動作パラメータは、レーザパルス周波数および個別パルスエネルギーである。これらの動作パラメータは、キーボード等の適切に構成された入力手段または音声操作入力手段または処理部のレーザ装置との直接的なインタフェースによって供給できる。
【0021】
コンピュータ部に取り付けられた分析部は、下記のように下記の数式に基づいて光出射口の位置で発生する温度Tを決定する。
【0022】
レーザ光を当てる位置におけるレーザ光ベースの砕石術中に体内で発生する温度と、照射されるレーザ出力と、灌注流量と、灌注液の温度との数的関係性は、試験管内(in vitro)および生体外(ex vivo)における多数の実験において確認されている。
【0023】
上記のアルゴリズムが簡易で定型的な関係性を示していても、レーザ光ベースの砕石術中の結石破砕の位置における予想される体内の最終温度は、上記アルゴリズムによって十分に正確に予測でき、そしてレーザ光ベースの砕石術の位置のすぐ周辺に不可逆的な組織損傷を招きかねない局部的な過熱を排除できる。
【0024】
レーザ部がレーザ動作を示すためのインタフェースを有していない場合、モジュール部は、実際のレーザ動作と同期している信号分析の目的のための分析部に送信されるレーザの動作を示す音響信号を検出するためのマイク部をさらに備える。このようにして、レーザの動作中、レーザは、時間分解的にマイク部で検出できる明確に検出可能な音響信号を作り出す。
【0025】
レーザ光ベースの砕石術を施術している際は、砕石術の施術の責任を担う医師が唯一の意思決定者であるが、さらなる実施形態では、本発明によるモジュール部は、追加の緊急停止スイッチを、すなわち、聴覚的、視覚的および/または触覚的な信号発信信号部に加えて、備えており、信号によって少なくともレーザ源の電源の遮断を引き起こすこともできる。
【0026】
さらに好適な実施形態では、内視鏡アセンブリに適合できるモジュール部は、灌注液リザーバ内に含有されている灌注液の量の充填レベルを検出するためのユニットを別途有する。ユニットは、灌注液リザーバに設けられたセンサとして構成されているおよび/またはセンサにより検出された灌注流量と、灌注液の放出が発生した間の測定された期間とに基づいて、現在の充填レベルを決定する処理部に実装されているソフトウェアベースの分析アルゴリズムの形態である。充填レベルを表すセンサ信号または充填レベルを表す数値的に決定された充填レベル値は、少なくとも実際の状態をモニタリングするため、灌注液リザーバを完全に空にするまでにかかる時間を予測するため、または最小残量に到達する際の警告として機能する。このようにして得られた情報は、適切な表示によって医師に対して光学的にまたは聴覚的に認知可能にされる。表示は、砕石術を施術している医師に、可能性のある体内過熱の影響を、それを介して警告する信号部によって、または追加の表示によって行われてもよい。
【0027】
さらなる実施形態は、供給される灌注液の温度の追加的なモニタリングを可能にする。この目的に向けて、センサにより検出された灌注液の温度(T)は、視覚表示部に英数字値として表示されることが好ましい。さらに、測定された温度は、比較部またはさらなる比較部に供給されることが好ましく、そこで、灌注液の温度(T)が臨界温度値を上回るまたは下回る場合に、処置を行っている医師に警告するように機能する信号が生成される。一例として、灌注液が冷えすぎた場合、患者が低体温になるリスクを回避するために警告が出される。
【0028】
さらなる可能性のある実施形態では、灌注液供給部には、光出射口の位置で発生する温度Tに応じておよび/またはレーザの少なくとも1つの動作パラメータに応じて灌注液の流量を調整できる手段が設けられる。これにより、照射されるレーザ光出力および/または介入領域において算出された温度に応じて、ポンプの形態で灌注液供給部への灌注液量を能動的に調整することが可能になる。
【0029】
レーザ光ベースの砕石術の施術中に温度をモニタリングするための本発明によるシステムは、膀胱、尿管または腎盂領域等の様々な解剖学的領域で使用できる。適用領域に応じて、介入に適した異なるモードを選択してもよい。この点において、システムは、定義可能な警告制限と保存された特性によって区別されている前立腺、膀胱、尿管または腎盂モードの選択を提供する。このようにして、様々な手術に関する個々のリスクスペクトルを対処することができる。
【0030】
このように、システムは泌尿器分野における任意のレーザ光ベースの処置、とりわけレーザ砕石術、前立腺の摘出(HoLEP、ThuLEP)、レーザ蒸発(PVP)および組織内レーザ凝固術(ILC)において使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の内視鏡1を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
1枚の図面が、近位側でレーザ3に光学的に接続され、遠位側に光出射口4を有する光ファイバーケーブル2のための作動チャネルを有する内視鏡1を示している。さらに、内視鏡1は、遠位側で光出射口4の領域へと開口し、近位側で流体供給部6と流体リザーバ7と流体連結している灌注液チャネル5を有する。明らかに、内視鏡は、灌注液チャネル5を光ファイバーケーブル2のための作動チャネルと1つのチャネルで組み合わせたものも知られている。この種の公知の内視鏡アセンブリは、レーザ光ベースの砕石術の過程中に体内結石8を破砕するように機能する。
【0033】
温度をモニタリングするための本発明によるシステムは、内視鏡1と、レーザ3と、流体供給部6と、流体リザーバ7とを備える内視鏡アセンブリの体外領域と組み合わせることのできるモジュール部9に関する。好適な実施形態では、下記のコンポーネントを備える。
【0034】
灌注液供給ライン5に並んで、好適には超音波センサの形態の流量センサ10が脱着可能に固定されている。同様に、灌注液チャネル5またはそれと流体連結している供給ラインに並んで、好適には赤外線センサの形態の灌注液の温度を検出するための温度センサ11が脱着可能に固定されている。センサ10、11によって生成されるセンサ信号S、Tは、無線または配線接続で処理部12へと送信される。
【0035】
さらに、好適には自動動作パラメータ送信のためのレーザ部へのインタフェースの形態または代替的にそれによってレーザ3のための動作パラメータが入力できる手動操作可能なキーボードの形態で、入力手段13が設けられている。レーザ3の動作には、レーザパルス周波数fと、個別パルスエネルギーEとがオペレータによって指定可能である。これらの動作パラメータも、入力手段13を介して処理部12へと供給でき、これを基に光出射口4の位置に当てることができるレーザ出力を算出できる。
【0036】
分析部14は、処理部12内に設置され、レーザの動作パラメータと、センサによって検出された灌注液の灌注流量Sと、温度Tとに基づいて、下記のアルゴリズムを基に光出射口4の位置で発生している現在の温度を決定する。
【0037】
次に、決定された体内温度Tが、好適には、T=42°Cである調整可能な閾値と比較部15で比較される。閾値Tを上回った場合は、比較部15は信号部16に供給される信号Sを生成し、これは、その後、砕石術を施術している医師によって触覚的、聴覚的および/または視覚的に認識可能である。
【0038】
加えて、マイク部17が処理部12に接続されて、これによってレーザ3の作動が検出される。これにより、処理部12および、そこに実装される分析部14によって処理されるデータおよびそれに基づく信号Sの生成によって、レーザ3の実際の動作との同期を実現させる。
【符号の説明】
【0039】
1 内視鏡
2 光ファイバーケーブル
3 レーザ
4 光出射口
5 灌注液
6 灌注液供給部
7 灌注液リザーバ
8 結石
9 モジュール部
10 流量センサ
11 温度センサ
12 処理部
13 入力手段
14 分析部
15 比較部
16 信号部
17 マイク部
図1