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特許7629462バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具
<図1>
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図1
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図2A
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図2B
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図3A
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図3B
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図3C
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図3D
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図4A
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図4B
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図4C
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図5A
  • 特許-バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具 図5B
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】バーピーリングのための四角形状インサート及び四角形状インサートのためのインサートホルダ工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 5/12 20060101AFI20250205BHJP
   B23B 27/16 20060101ALI20250205BHJP
   B23B 27/14 20060101ALI20250205BHJP
   B23B 29/00 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B23B5/12
B23B27/16 Z
B23B27/14 C
B23B29/00 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022539732
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 IL2021050084
(87)【国際公開番号】W WO2021161301
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】62/975,259
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(72)【発明者】
【氏名】ダクワー,アムジャド
(72)【発明者】
【氏名】ヘン,ダニエル
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-331005(JP,A)
【文献】米国特許第05256008(US,A)
【文献】特表2010-536599(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02734095(DE,A)
【文献】国際公開第2010/147065(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 5/12
B23B 27/00 - 27/24
B23B 29/00
B23C 5/00 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面の四角形状バーピーリングインサート(14、16)であって、
第1すくい面(42)及び前記第1すくい面(42)の反対側に配置された第2面(44)と、
前記第1すくい面(42)及び前記第2面(44)の両方の中心を通って延在するインサート軸線(As)と、
前記第1すくい面(42)及び前記第2面(44)を接続するインサート周辺面(46)であって、第1周辺サブ面(48)、第2周辺サブ面(50)、第3周辺サブ面(52)及び第4周辺サブ面(54)と、隣接する周辺サブ面(48、50、52、54)を接続する第1コーナ(56)、第2コーナ(58)、第3コーナ(60)及び第4コーナ(62)と、を備えるインサート周辺面(46)と、
前記インサート周辺面(46)及び前記第1すくい面(42)の交線に沿って延在する第1切れ刃(66)であって、隣接するコーナ(56、58、60、62)の各対の間にサブ切れ刃(68)を備える第1切れ刃(66)と、
前記インサート周辺面(46)及び前記第2面(44)の交線に沿って延在する第2切れ刃と、を備え、
前記第1すくい面(42)の平面視において、各サブ切れ刃(68)は、
中央に配置された真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃(76)と、
前記ワイパーサブ切れ刃(76)の両側に配置された第1ピーリングサブ切れ刃(78)及び第2ピーリングサブ切れ刃(82)と、を備え、
前記第1ピーリングサブ切れ刃(78)は、少なくとも部分的に湾曲しており、かつ、隣接するコーナ(56、58、60、62)の前記対のうちの1つの第1コーナ(56)の第1コーナ縁(80)に前記ワイパーサブ切れ刃(76)を接続し、
前記第2ピーリングサブ切れ刃(82)は、少なくとも部分的に湾曲しており、かつ、前記第1コーナ(56)と同じ隣接するコーナ(56、62)の対の第2コーナ(62)の第2コーナ縁(84)に前記ワイパーサブ切れ刃(76)を接続し、
前記第1ピーリングサブ切れ刃(78)及び前記第2ピーリングサブ切れ刃(82)の各々は、前記ワイパーサブ切れ刃(76)に接続された主サブ切れ刃(86)と、その一方の側で前記主サブ切れ刃(86)に接続され、かつ、その他方の側で前記コーナ(56、62)に接続される副サブ切れ刃(88)と、を備え、
前記第1すくい面(42)の前記平面視において、
前記中央に配置された真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃(76)は、前記インサート(14、16)を境界付ける仮想四角形Sを規定し、
前記第1コーナ(56)、前記第2コーナ(58)、前記第3コーナ(60)及び前記第4コーナ(62)は前記仮想四角形Sから内側に離間され、
前記仮想四角形Sの辺はインサート辺長さSLを有し、
前記ワイパーサブ切れ刃(76)はワイパー長さWLを有し、
前記平面視において、前記主サブ切れ刃(86)は前記副サブ切れ刃(88)よりもさらに湾曲しており、
前記バーピーリングインサート(14、16)は四角形状である、四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項2】
前記第2切れ刃は、隣接するコーナ(56、58、60、62)の各対の間にサブ切れ刃(68、70、72、74)を備え、前記第2面(44)の平面視において、各サブ切れ刃(68、70、72、74)は、中央に配置された真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃(76)と、前記ワイパーサブ切れ刃(76)の両側に配置された第1ピーリングサブ切れ刃(78)及び第2ピーリングサブ切れ刃(82)と、を備え、前記第1ピーリングサブ切れ刃(78)は、少なくとも部分的に湾曲し、かつ、隣接するコーナ(56、58、60、62)の前記対のうちの1つの第1コーナ(56)の第1コーナ縁(80)に前記ワイパーサブ切れ刃(76)を接続し、前記第2ピーリングサブ切れ刃(84)は、前記第1コーナ(56)と同じ隣接するコーナ(56、58、60、62)の前記対の第2コーナ(62)の第2コーナ縁(84)に前記ワイパーサブ切れ刃(76)を接続する、請求項1に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項3】
前記インサート周辺面(46)は、前記第1すくい面(42)及び前記第2面(44)の両方に対して垂直に延在する、請求項1又は2に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項4】
前記平面視において、前記副サブ切れ刃(88)は真っ直ぐである、請求項1~3のいずれか1項に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項5】
前記インサート(14、16)は、WL/SL<0.6の条件を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項6】
各コーナ(56、58、60、62)は、前記第1ピーリングサブ切れ刃(78)及び前記第2ピーリングサブ切れ刃(82)のいずれかよりも小さいコーナ半径を有している、請求項1~5のいずれか1項に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項7】
各コーナ(56、58、60、62)は、前記主サブ切れ刃(86)のいずれかよりも小さいコーナ半径を有している、請求項1~6のいずれか1項に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項8】
前記仮想四角形Sの前記辺のうちの関連の1つに平行な方向における各ピーリングサブ切れ刃(78、82)の長さがピーリング長さPLを規定し、かつ、前記インサート(14、16)が、PL/SL<0.3の条件を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項9】
前記仮想四角形Sの前記辺のうちの関連の1つに平行な方向における各ピーリングサブ切れ刃(78、82)の長さがピーリング長さPLを規定し、前記主サブ切れ刃(86)が主長さP1Lを有し、前記副サブ切れ刃(88)が副長さP2Lを有し、かつ、前記主長さP1L及び前記副長さP2LがP2L/P1L<0.50の条件を満たす、請求項1~7のいずれか1項に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項10】
前記真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃(76)と前記副サブ切れ刃(88)との間に形成されたリード角(K)は15°<K<25°の条件を満たす、請求項1に記載の四角形状バーピーリングインサート(14、16)。
【請求項11】
バーピーリングインサートホルダ(12)であって、シャンク部分(92)及び切削部分(94)を備え、前記切削部分(94)は、同じ方向に開いている第1インサートポケット(22)及び第2インサートポケット(24)を備え、前記第1インサートポケット(22)及び前記第2インサートポケット(24)の各々は、ポケットベース面(96、116)と、前記ポケットベース面(96)から延在する第1ポケット側面(98、118)及び第2ポケット側面(100、120)と、を備え、
それぞれの各ポケットベース面(96)の平面視において、前記第1ポケット側面(98)及び前記第2ポケット側面(100)は仮想四角形S、S1、S2の2つの辺を規定し、各前記ポケットベース面(96)の前記仮想四角形S1は、他方の前記ポケットベース面(96)の前記仮想四角形S2に対して前記仮想四角形S1の中心周りに回転させられる、バーピーリングインサートホルダ(12)。
【請求項12】
前記第1インサートポケット(22)は、前記ポケットベース面(96)から延在する第3ポケット側面(110)を備え、前記第1インサートポケット(22)の前記ポケットベース面(96)の平面視において、前記第3ポケット側面(114)は、前記第1インサートポケット(22)の前記仮想四角形S1の辺を規定し、前記第2インサートポケット(24)は、前記ポケットベース面(116)から延在する第3ポケット側面(129)を備え、前記第2インサートポケット(24)の前記ポケットベース面(116)の平面視において、前記第3ポケット側面(129)は前記第2インサートポケット(24)の前記仮想四角形S2の辺を規定する、請求項11に記載のバーピーリングインサートホルダ(12)。
【請求項13】
前記ポケットベース面(96、116)の少なくとも1つは、中心に配置されたねじ孔(130)と、前記中心に配置されたねじ孔(130)から離間された2つのシムねじ孔(132、134)と、を有するように形成される、請求項11又は12に記載のバーピーリングインサートホルダ(12)。
【請求項14】
前記第2インサートポケット(24)の前記第1ポケット側面(118)及び前記第2ポケット側面(120)のうちの一方が前記インサートホルダ(12)の延在方向Dに平行である、請求項11~13のいずれか1項に記載のバーピーリングインサートホルダ(12)。
【請求項15】
請求項11~14のいずれか1項に記載のバーピーリングインサートホルダ(12)と、前記インサートホルダ(12)の前記第1インサートポケット(22)及び前記第2インサートポケット(24)にそれぞれ取り付けられる、請求項1~10のいずれか1項に記載の第1インサート(14)及び第2インサート(16)と、を備え、前記第1インサート(14)は第1動作可能サブ切れ刃(68)を有し、前記第2インサート(16)は第2動作可能切れ刃(68)を有する、バーピーリング工具アセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001] 本願の主題は、バーピーリングインサート、インサートホルダ及びそれらを備える工具アセンブリに関する。より具体的には、主題は、四角形状バーピーリングインサート及び四角形状インサートを保持するためのインサートホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
[002] バーピーリングは、ワークピースが回転させられる標準的な旋削工程、及び、切削工具が回転してワークピースが静止している標準的なフライス加工工程とは異なる機械加工工程である。一般的に言えば、バーピーリング工程では、バーピーリング切削工具アセンブリが配置されている領域を通って軸線方向に(相対的に)細長いバーが移動させられ、ピーリングヘッドがバーの周りを回転して外層を「ピーリング」する。
【0003】
[003] このような工程は、切り屑の負荷が大きく、かつ、切削インサート及び切削アセンブリに結果として大きな力がかかり、かつ、結果としてかなりの振動が生じることが通常である不安定な、非常に「粗い」機械加工工程として特徴付けられる。
【0004】
[004] 米国特許第5,256,008号の図1は、理解に役立つ従来のバーピーリング工程の概略図を示している。
【0005】
[005] 米国特許第5,256,008号の開示は、工具ホルダが、凸状に湾曲した切れ刃を有するラフィングインサートと、基本的に直線状の切れ刃を有する仕上げインサートと、を備える、ピーリング工程のための工具アセンブリに関する。本願では、最初にワークピースに接触するように位置決めされたバーピーリングインサート(以下、代替的に「バー」とも呼ぶ)がラフィングバーピーリングインサート(又は、簡潔にするために「ラフィングインサート」)と呼ばれ、その後にワークピースに接触するように位置決めされたバーピーリングインサートが仕上げバーピーリングインサート(又は、簡潔にするために「仕上げインサート」)と呼ばれる。
【0006】
[006] 独国特許出願公開第35 40 665 A1号は、湾曲したラフィングインサート(複数の部品から形成される)、及び、それに続く真っ直ぐな切れ刃の仕上げインサートの同様の全体的な概念を例示しているようである。
【0007】
[007] 独国特許第2 820 810号は、切れ刃の各々が、以下、ピーリングサブ切れ刃及びワイパーサブ切れ刃と呼ばれるものを有する、細長い2つの切れ刃を有するインサートを開示している。ピーリングサブ切れ刃は、ワイパーサブ切れ刃に対して異なる角度で傾斜しているだけでなく、それ自体がさらに2つの異なる角度で傾斜しており、これは、切れ刃の破損のリスクを低減するという上記目的のためのものである。挙げられた理由は、湾曲した形状(2つの異なる角度)が破損を防止するのに有益であるが、表面仕上げを減少させることである。本開示から、細長いインサートを使用することにより、深い切り込みを形成することが可能であることが理解される。
【0008】
[008] 独国特許第2 820 810号の何年も後に発行された刊行物では、同様のインサートが米国特許第7,972,092号に開示されているが、相違点は、そのインサートが、その主切れ刃に2つの異なる角度を有するのみならず、多数の半径を有することである。特に、図1A図1Eには、従来技術のインサート形状として説明されているものが示されている。特に、それらはほとんどが細長く、1つのインサート形状は基本的に三角形である。背景には、ピーリングインサートがピーリングサブ切れ刃及びワイパーサブ切れ刃(平滑切れ刃とも呼ばれる)を有することにも留意されたい。また、平滑切れ刃は、機械加工されたバーを支持するように作用し、かつ、ピーリングヘッドの中心にそのバーをガイドすることも説明されている。
【0009】
[009] 仏国特許第2 483 819号は、凸状に湾曲した三角形状インサート、及び、3つのそのようなインサートがともに使用される一実施形態を示しているようである。
【0010】
[0010] 上述した従来技術の切削インサート形状に関して、いくつかの一般的な観察を行うことができる。一般に、従来技術のインサートは、従来技術の刊行物に記載されている切り込みの深さを増加させる及び安定化させる効果を可能にする細長い形状、又は、当技術分野で、バーピーリング工程のための切削力方向を付与するのにより安定であることが知られている三角形タイプの形状を有している。
【0011】
[0011] 概して四角形状のピーリングインサートが開示されている唯一の先行技術の刊行物、すなわち、独国実用新案登録第298 15 761 U1号が発見されている。開示されている切削インサートは、ピーリングサブ切れ刃及び細長いワイパー(平滑)サブ切れ刃を有するという点で、従来技術の細長いインサートに類似している。特に興味深いのは、切削インサートを保持することを可能にするインサートホルダが開示されていないことである。このことの関連性は、バーピーリング工程のための四角形インサートを安定して取り付けることが明らかにされていないという課題である。
【0012】
[0012] 米国特許出願公開第2019/0054542号は、バーピーリングインサートに関連して本出願人が発見した最新の刊行物であり、かつ、独国実用新案登録第298 15 761 U1号よりもさらに多くの切れ刃を有する切削インサート、すなわち、側面ごとに5又は6対のピーリングサブ切れ刃及びワイパーサブ切れ刃(すなわち、五角形又は六角形の切削インサート)を有する切削インサートを開示している。開示されている切削インサートが両面である可能性があることを考えると、切削インサートは、10個又は12個の切れ刃を有し得る(すなわち、各切れ刃はピーリングサブ切れ刃及びワイパーサブ切れ刃の対である)。
【0013】
[0013] 本発明の目的は、新規で改良されたバーピーリングインサート及び当該バーピーリングインサートのためのインサートホルダを提供することである。
【0014】
[0014] 本発明の別の目的は新規なシム(shim)である。
【0015】
[0015] 切削インサートは完全な多角形状ではなく、「四角形状」という単語は、四角形が最も近い規則形状であること(代替的に、「基本的な四角形状」、「ほぼ四角形状」を使用可能である)を意味することが理解される。これは、五角形、六角形、三角形又はトリゴンなどとして説明される従来技術のインサートと類似している。
【発明の概要】
【0016】
[0016] 本発明は、これまで既知のものよりも高い汎用性を有するバーピーリングインサートを提供することを目的とする。
【0017】
[0017] 本願の主題の第1態様によれば、切れ刃を備える四角形状のバーピーリングインサートが提供され;切れ刃は、真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃と、ワイパーサブ切れ刃の両側にそれぞれ配置され、かつ、隣接するコーナにワイパーサブ切れ刃を接続する、少なくとも部分的に湾曲した第1ピーリングサブ切れ刃及び第2ピーリングサブ切れ刃と、を備える。
【0018】
[0018] バーピーリングインサートの片側に2つの対向する少なくとも部分的に湾曲したピーリングサブ切れ刃を設けることにより、バーピーリングインサートが結果として追加のピーリングサブ切れ刃を有するという点で、従来技術に対して汎用性を高めることができる。
【0019】
[0019] 好ましくは、第1ピーリングサブ切れ刃及び第2ピーリングサブ切れ刃は、ワイパーサブ切れ刃の中央に対して鏡面対称である。
【0020】
[0020] 切削インサートに追加の切れ刃を設けることは直感的であるようにみえるが、従来技術のバーピーリングインサートがそのような構造を有しない理由を説明する必要がある。
【0021】
[0021] 第1の理由は、ワイパーサブ切れ刃が従来、ピーリングサブ切れ刃からバーピーリングインサートの端部まで、又は基本的には端部まで、かなり細長いことである。これは、米国特許第7,972,092号の説明で上述したように、バーピーリングが非常に粗い機械加工工程であり、かつ、前記ワイパーサブ切れ刃がワイパー機能だけでなく安定化機能も提供するからである。他の機械加工用途のいわゆるワイパーサブ切れ刃は、それらの全体の機能が仕上げを生成することであって安定化ではないので、通常は相対的にはるかに小さく(例えば、1mm)、これは、ワイパーサブ切れ刃が通常、いわゆる「ピーリングサブ切れ刃」よりもかなり長いバーピーリングインサートとは異なる。
【0022】
[0022] ワイパーサブ切れ刃が細長い第2の理由は、独国特許第2 820 810号の説明を参照して上述したように、切り込みを深くすることを可能にすることである。
【0023】
[0023] 本発明に従って追加のピーリングサブ切れ刃を追加することによって、ワイパーサブ切れ刃の全長が、同様のサイズを有するバーピーリングインサートに提供可能な長さから短縮される(安定性及び切り込みの深さを減少させる)ことは自明である。
【0024】
[0024] しかしながら、図5Bに関連して、仕上げ目的だけでなく(及びしたがって、この欠点を有する)、粗面にも使用される今回の汎用性を有するバーピーリングインサートの場合、少なくとも、2つの提案された用途のうちの1つについて、この欠点は生じない。
【0025】
[0025] さらに、既知のバーピーリングインサートホルダは2方向に作動するように設計されておらず、及びしたがって、エンドユーザは切削インサートの側面に1つのピーリングサブ切れ刃のみを必要とする。したがって、第2ピーリングサブ切れ刃を追加することによる即時の明らかな利点はない。
【0026】
[0026] したがって、先行技術の刊行物に示されている細長いワイパーサブ切れ刃の機能を低下させることは明らかではない。
【0027】
[0027] したがって、インサートの汎用性に関連する第1の利点は、同じバーピーリングインサートを左右両方のインサートホルダで使用可能であり、これは、ワイピング/安定化サブ切れ刃の一部が失われるという欠点を上回るものと考えられる。
【0028】
[0028] さらに、他の機械加工作業とは異なり、ピーリングサブ切れ刃はワイパーサブ切れ刃と比較して相対的に短く、ワイパーサブ切れ刃の機能の損失は他の用途の場合により小さい。
【0029】
[0029] しかしながら、ここでのバーピーリングインサートは四角形状であり、従来技術のインサートの一部のように細長くないので、安定化する長さの損失は特に顕著であり、ワイパーサブ切れ刃の長さの損失をより顕著なものにする。
【0030】
[0030] したがって、安定化効果の損失を補償するため、バーピーリングインサートは、切削インサートに対して相対的に大きいことが好ましい。例えば、バーピーリングインサートの内接円ICは、D≧30mm、より好ましくはD≧35mmの条件を満たす直径Dを有することが好ましい。それにもかかわらず、そのようなバーピーリングインサートは、通常、相対的に高価な超硬合金から形成されており、かつ、大きなインサートはプレスすることがより困難であるので、必要以上に大きく形成されないことが好ましい。したがって、インサートは、D≦45mm、より好ましくはD≦40mmの条件を満たすことが好ましい。
【0031】
[0031] 汎用性に関連する別の格別な利点は、同じピーリングインサートがラフィングバーピーリングインサートとして使用可能であることであり、このインサートでは、第2ピーリングサブ切れ刃も含む、その片側に沿った切れ刃全体が利用される(図5Bを参照)。
【0032】
[0032] 別の言い方をすれば、上述した2つの利点の少なくとも1つについて、追加のピーリングサブ切れ刃を設けることによって、拡大された切削インサートの追加コスト、及び/又は、通常、バーピーリングインサートに有益であると考えられているワイパーサブ切れ刃の短縮の不利な点を上回ると考えられる。
【0033】
[0033] そのような有利な構造は、バーピーリングインサートの複数の、好ましくは、すべての側面に適用可能であることが理解される。
【0034】
[0034] したがって、本願の主題の第2態様によれば、四角形状バーピーリングインサートが提供され、四角形状バーピーリングインサートは、第1すくい面及び第1すくい面とは反対に配置された第2面と;第1すくい面及び第2面を接続するインサート周辺面と;インサート周辺面及び第1すくい面の交線に沿って延在する第1切れ刃と;を備え、インサート周辺面は、第1周辺サブ面、第2周辺サブ面、第3周辺サブ面及び第4周辺サブ面と、第1周辺サブ面、第2周辺サブ面、第3周辺サブ面及び第4周辺サブ面を接続する第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナと、を備え、第1すくい面の平面視において、第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナの各々の隣接する各対の間で、第1切れ刃は第1仮想四角形を規定し、かつ、第1切れ刃は:真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃と;第1コーナにワイパーサブ切れ刃を接続する、少なくとも部分的に湾曲した第1ピーリングサブ切れ刃と;第2コーナにワイパーサブ切れ刃を接続する、少なくとも部分的に湾曲した第2ピーリングサブ切れ刃と、を備え、第1及ピーリングサブ切れ刃及び第2ピーリングサブ切れ刃はワイパーサブ切れ刃の両側にそれぞれ配置され、第1すくい面の平面視において、第1コーナ及び第2コーナの各々は仮想四角形から内側に離間して配置される。
【0035】
[0035] 特に、上述した好ましいさらなる任意選択的な特徴(すなわち、バーピーリングの鏡面対称性及びインサートサイズ)はすべてのインサートの態様に等しく適用可能である。
【0036】
[0036] 好ましくは、第1すくい面の平面視において:第1周辺サブ面、第2周辺サブ面、第3周辺サブ面及び第4周辺サブ面の各々は、前記仮想四角形を規定するワイパーサブ切れ刃に関連付けられ、かつ、第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナの各々は、仮想四角形から内側に離間して配置される。
【0037】
[0037] 説明されるように内側に離間された(又は、別の言い方をすれば「内側に凹んだ」)コーナは通常、工具寿命を延ばすためにかなりアールを有するコーナ又は丸いコーナを有する切削インサートには不利であると考えられる。より鋭いコーナはより破損しやすいことが理解される。しかしながら、バーピーリングの特定の用途では、より鋭いコーナ、又は上で規定したように内側に離間されたコーナは、より多くの切れ刃を利用することを可能にする。特に、他の機械加工工程とは異なり、バーピーリングインサートのコーナはワークピースを機械加工することを目的としていない。
【0038】
[0038] 「仮想四角形から内側に離間して配置される」コーナの代替の定義は、コーナが、第1すくい面の平面視において、より鋭い縁のコーナである(すなわち、丸い縁のコーナとは対照的である)可能性があることを理解すべきである。同じことが、第2面に沿って切れ刃を有する好ましい実施形態にも当てはまり得る。
【0039】
[0039] 上で定義された態様により、四角形バーピーリングインサートが、既知の三角形インサートに対して改善された8つのバーピーリング切れ刃を有することを可能にする。三角形インサートは、より簡単で安定した取り付け構成を有しているが、本願では、以下の四角形状インサートの安定した取り付け構成について詳しく説明する。
【0040】
[0040] 米国特許出願公開第2019/0054542号は、さらに多くの切れ刃を有するバーピーリングインサートを開示していることに留意されたいが、本発明は、図5Bのラフィングバーピーリングインサートに示すように、少なくとも、より長いワイパー(及び安定化)サブ切れ刃及びインサートの片側に沿った全体的な機械加工深さ長さについて有利であると考えられる。
【0041】
[0041] 上記及び下記の態様のいずれかによれば、好ましくは、本発明に係るバーピーリングインサートはリバーシブル(すなわち、両面インサート)である。言い換えれば、第1すくい面の反対側は、インサート周辺面とともに第2切れ刃を形成する第2すくい面である。別の言い方をすれば、上述した及び特許請求の範囲の第2面は第2すくい面であり得る。
【0042】
[0042] 好ましくは、第2すくい面は、第1すくい面と同一であり得るが、少なくとも、すくい面の反対側に配置された第2面上に形成されるバーピーリング工程のために構成される切れ刃を備える。別の言い方をすれば、第2切れ刃は、第1切れ刃と同じ特徴を備え得る。
【0043】
[0043] 本明細書及び特許請求の範囲における第2面という単語は、そのような表面がすくい面である(例えば、インサート周辺面との交線に沿って延在する切れ刃で形成される)ことが示された後、(読みやすさのために「第2面」の名称のままであるとしても)第2「すくい」面を指す。
【0044】
[0044] すべての切れ刃が、(確かに、切削インサート自体がネガティブインサートであり、補償のためにポジティブ切れ刃が必要とされる実施形態の場合)溝などのチップフォーマ構成に隣接して配置されることが非常に好ましいことが理解される。
【0045】
[0045] 両面インサートは切れ刃の数を2倍にすることができることが理解される。すなわち、四角形状インサートの片側に沿って2つのピーリングサブ切れ刃がある場合、結果として、各すくい面に8つのピーリングサブ切れ刃が存在し得る。
【0046】
[0046] しかしながら、ワイパーサブ切れ刃の粗い使用方法(他の機械加工用途のワイパーサブ切れ刃よりも摩耗が多いことを意味する)により、各側面に沿った各切れ刃は、(摩耗により使用不可になるまで)使い捨てされることが当然予想される。例えば、バーピーリングインサートが16個のピーリングサブ切れ刃を有する場合でも、通常とは異なる設計が生じることを意味し、これは、8方向の割り出し可能なインサートとして使用されることが当然予想される。
【0047】
[0047] 上述した両面インサートは、製造するのに非常に効率的なタイプのインサートである(逃げを提供するためにも関わらず、バーピーリングインサートはネガティブ取り付け位置を必要とし得る)ので、好ましくは、インサートがネガティブインサートである(すなわち、インサート周辺面が第1すくい面及び第2面の両方に対して垂直に延在する)ことの結果である。
【0048】
[0048] それにもかかわらず、好ましいネガティブ構成を除いて、他のオプションが実行可能である。例えば、内側に凹形状(すなわち、当技術分野で知られているアリ溝構成)によって形成されているインサート周辺面は、追加の取り付け安定性などのために好ましい場合がある。
【0049】
[0049] したがって、本願の主題の第3態様によれば、四角形状バーピーリングインサートが提供され、四角形状バーピーリングインサートは、第1すくい面及び第1すくい面の反対側に配置された第2すくい面と;第1すくい面及び第2面を接続するインサート周辺面と;インサート周辺面と第1すくい面との交線に沿って延在する第1切れ刃と;を備え、インサート周辺面は、第1周辺サブ面、第2周辺サブ面、第3周辺サブ面及び第4周辺サブ面と、第1周辺サブ面、第2周辺サブ面、第3周辺サブ面及び第4周辺サブ面を接続する第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナと、を備え;第1すくい面の平面視において、第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナの各々の隣接する各対の間で、第1切れ刃は、同じ切れ刃の他のワイパー切れ刃とともに仮想四角形を規定する真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃と;隣接するコーナにワイパーサブ切れ刃のうちの隣接する1つを接続する接続する単一のピーリングサブ切れ刃と、を備え、第2すくい面は第1すくい面に対して鏡面対称である。
【0050】
[0050] 上記構造は、例えば、バーピーリングインサートが、独国実用新案登録第298 15 761 U1号の図1に示されているものと同様の切れ刃形状を示すが、バーピーリングインサートの両方のすくい面にある構造であり得る。例えば、これは、以下に例示されるように、周辺面に沿ったネガティブ構成又は内側に凹形状で実現されることができる。
【0051】
[0051] 単一の切削インサートの2つの対向するすくい面を単に同一にすることは簡単に見えるが、この特定のケースでは、インサートの片側が左向きインサートであり、かつ、他方の側が右向きインサートであり(ここでの特定の名称は重要ではない)、むしろ、上述したように、一方のすくい面は左側のインサートホルダにのみ適しており、もう一方は右側のインサートホルダに適していることになる。したがって、様々なインサートホルダ用のこのインサートの製造の汎用性の後知恵によってのみ、このことが考慮される。このようなインサートは、エンドユーザにとって独国実用新案登録第298 15 761 U1号よりも多くの切れ刃を有しないが、むしろ製造メーカにとって利点となる。
【0052】
[0052] いずれにせよ、明らかに、前述の態様は、それ自体が既知の先行技術に対して特定の方法で依然として利点を有する第3態様よりも有利である。
【0053】
[0053] 特に、以下に示すバーピーリングインサートの好ましい実施形態は、上記のすべての態様に好ましいねじ孔を有するように形成されているが、代替のオプションは、バーピーリングインサートが、ねじを有しておらず、かつ、例えば、当技術分野で知られているトップクランプを用いてクランプされることであることが理解される。それにもかかわらず、バーピーリングインサートは、第1すくい面及び第2面を通って延在するねじ孔を備えることが好ましい。
【0054】
[0054] 本願の主題の第4の態様によれば、四角形状バーピーリングインサートが提供され、四角形状バーピーリングインサートは、第1すくい面及び第1すくい面の反対側に配置された第2面と;第1すくい面及び第2面の両方の中心を通って延在するインサート軸線(As)と;第1すくい面及び第2面を接続するインサート周辺面であって、第1周辺サブ面、第2周辺サブ面、第3周辺サブ面及び第4周辺サブ面と、隣接する周辺サブ面を接続する第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナと、を備えるインサート周辺面と;インサート周辺面及び第1すくい面の交線に沿って延在する第1切れ刃であって、隣接するコーナの各対の間にサブ切れ刃を備える第1切れ刃と、を備え、第1すくい面の平面視において、各サブ切れ刃は:中央に配置された真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃と;ワイパーサブ切れ刃の両側に配置された第1ピーリングサブ切れ刃及び第2ピーリングサブ切れ刃と;を備え、第1ピーリングサブ切れ刃は、少なくとも部分的に湾曲しており、かつ、隣接するコーナの前記対のうちの1つの第1コーナの第1コーナ縁にワイパーサブ切れ刃を接続し;第2ピーリングサブ切れ刃は、第1コーナと同じ隣接するコーナの対の第2コーナの第2コーナ縁にワイパーサブ切れ刃を接続する、少なくとも部分的に湾曲した第2ピーリングサブ切れ刃であり;第1すくい面の前記平面視において:前記中央に配置された真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃は、インサートを境界付ける仮想四角形(S)を規定し;第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナは、仮想四角形から内側に離間され;仮想四角形の辺はインサート辺長さSLを有し;ワイパーサブ切れ刃はワイパー長さWLを有する。
【0055】
[0055] 上記態様のいずれかに係るバーピーリングインサートの好ましいさらなる任意選択的な特徴は以下のとおりである。
【0056】
[0056] 第2面は、好ましくは、インサート周辺面とのその交線に沿った切れ刃(以下、「第2切れ刃」ともいう)を備えるすくい面であり得る。チップフォーミング溝又は構造が、好ましくは、切れ刃に隣接して延在することができる。
【0057】
[0057] 第1すくい面の平面視において:第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナの各々は、好ましくは、仮想四角形から内側に離間して配置される。
【0058】
[0058] 第2面がすくい面である場合の第2面の平面視において:第1コーナ、第2コーナ、第3コーナ及び第4コーナのそれぞれは、好ましくは、第2面のワイパーサブ切れ刃によって形成される仮想四角形から内側に離間して配置される。
【0059】
[0059] インサート周辺面は、好ましくは、第1すくい面及び第2面の両方に対して垂直に延在する。
【0060】
[0060] 好ましくは、ピーリングサブ切れ刃は、前記ワイパーサブ切れ刃に接続された主サブ切れ刃と、その一方の側で主サブ切れ刃に接続され、かつ、その他方の側で前記コーナに接続された副サブ切れ刃と、を備え、ピーリングサブ切れ刃が配置されるすくい面の平面視において、主サブ切れ刃は副サブ切れ刃よりも湾曲している。好ましくは、バーピーリングインサートの第1ピーリングサブ切れ刃及び第2ピーリングサブ切れ刃の各々は、前記主サブ切れ刃及び前記副サブ切れ刃を備え、それぞれの各主サブ切れ刃は、隣接する副サブ切れ刃よりも湾曲している。
【0061】
[0061] 説明すると、前述したように、バーピーリングは非常に粗い機械加工工程であり、及びしたがって、破損を防止するためにできる限り大きな曲率(真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃から延在する)が望ましい。しかしながら、前記曲率はまた、リード角Kを増加させ、及びしたがって、ピーリングサブ切れ刃への負荷を増大させる。結果として、副サブ切れ刃は主サブ切れ刃よりも真っ直ぐであることが好ましく、最も好ましくは真っ直ぐであり、その結果、より小さいリード角Kが得られる。これは、好ましい実施形態が、15°<K<25°、より好ましくは18°<K<22°の条件を満たすリード角Kを有することを可能にする。
【0062】
[0062] 好ましくは、すくい面の平面視において、副サブ切れ刃は真っ直ぐである。
【0063】
[0063] ピーリングサブ切れ刃及びワイパーサブ切れ刃の両方が機能してバランスされる必要があることが理解される。好ましくは、すくい面の平面視において、仮想四角形の辺のうちの1つの長さは、インサート辺長さSLを規定し、かつ、同じ視点における各ワイパーサブ切れ刃の長さがワイパー長さWLを規定し;インサートは以下の条件を満たす:WL/SL<0.6、より好ましくはWL/SL<0.5、及び、最も好ましくはWL/SL<0.45。それにもかかわらず、ワイパー長さWLが、有益な仕上げ/安定化効果を提供しないような小さすぎないことが有利であると考えられる。したがって、好ましくは、インサートは以下の条件を満たす:WL/SL>0.20、より好ましくはWL/SL>0.30、及び、最も好ましくはWL/SL>0.35。
【0064】
[0064] インサート辺の使用可能な長さを大きくするため、コーナサイズが小さくされ得る。好ましくは、各コーナは、前記第1ピーリングサブ切れ刃及び第2ピーリングサブ切れ刃のいずれよりも小さいコーナ半径を有する。主サブ切れ刃は、副サブ切れ刃よりも小さい半径を有するので、好ましくは、各コーナは、前記主サブ切れ刃のいずれよりも小さいコーナ半径を有する。
【0065】
[0065] 第1すくい面の平面視において、仮想四角形の辺うちの1つの長さがインサート辺長さSLを規定し、かつ、仮想四角形の辺のうちの隣接する1つに平行な方向の各ピーリングサブ切れ刃の長さがピーリング長さPLを規定し;好ましくは、インサートは以下の条件を満たす:PL/SL<0.3、より好ましくはPL/SL<0.25。ピーリングサブ切れ刃は、機能的であり、かつ好ましくは、小さすぎないことが必要である。したがって、インサートは以下の条件を満たすことが好ましい:PL/SL>0.10、より好ましくはPL/SL>0.15。
【0066】
[0066] 好ましくは、第1切れ刃及び第2切れ刃のうちの少なくとも1つ、より好ましくは両方が、第1すくい面及び第2面の両方の中心を通って延在するインサート軸線に対して90°の回転対称である。
【0067】
[0067] 上記説明を考慮すると、本願の主題の第5態様に従って、切れ刃を備えるバーピーリングインサートが提供され、バーピーリングインサートの1つの側面に沿って、バーピーリングインサートの隣接する第1コーナ及び第2コーナの間に規定され、切れ刃は:真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃と、第1コーナにワイパーサブ切れ刃を接続する第1ピーリングサブ切れ刃と、を備え;ワイパーサブ切れ刃は、第1ピーリングサブ切れ刃よりも長く、かつ、ピーリングサブ切れ刃は、前記ワイパーサブ切れ刃に接続された主サブ切れ刃と、その一方の辺で主サブ切れ刃に接続され、かつ、その他方の辺で前記コーナに接続される副サブ切れ刃と、を備え;主サブ切れ刃は、隣接する副サブ切れ刃よりも湾曲している。
【0068】
[0068] 上記の態様のいずれかに係るバーピーリングインサートの好ましいさらなる任意選択的な特徴は以下のとおりである。
【0069】
[0069] 好ましくは、副サブ切れ刃は、バーピーリングインサートのすくい面の平面視において真っ直ぐである。これにより、相対的に小さいが、小さすぎないリード角を可能にすることができる。
【0070】
[0070] 湾曲した主サブ切れ刃は、複数の異なる曲率から構成されることができるが、製造を単純化するため、単一の曲率(すなわち、半径)を備えることが好ましい。
【0071】
[0071] 好ましくは、ワイパー長さWLは、上述したように、及びバーピーリング工程に関連して上で説明した理由のため、ピーリング長さPLよりもかなり長い。好ましくは、インサートは以下の条件を満たす:PL/WL<0.75、より好ましくはPL/WL<0.65。ピーリングサブ切れ刃は、機能的であり、かつ好ましくは、小さすぎないようにする必要がある。したがって、インサートは以下の条件を満たすことが好ましい:PL/WL>0.35、より好ましくはPL/WL>0.45。
【0072】
[0072] ピーリングサブ切れ刃は頑丈であることが好ましいので、その大部分が湾曲していることが好ましい。したがって、主サブ切れ刃の長さ、主長さP1Lは、副サブ切れ刃の長さ、副長さP2Lよりも長いことが好ましい。別の言い方をすれば、好ましくは:P2L/P1L<0.50、より好ましくはP2L/P1L<0.40。それにもかかわらず、リード角が小さいという利点を得るには、副サブ切れ刃の長さが重要である必要がある。したがって、好ましくは:P2L/P1L>0.20、より好ましくはP2L/P1L>0.30。
【0073】
[0073] 好ましくは、リード角Kは以下の条件を満たす:15°<K<25°、より好ましくは18°<K<22°。
【0074】
[0074] この特定の切れ刃設計は、独立して独創的であると考えられるが、明らかに、さらに多くの利点を得るために上記の以前のバーピーリングインサートの態様のいずれかと組み合わせられることができる。
【0075】
[0075] 本願の主題の第6態様によれば、バーピーリングインサートホルダが提供され、バーピーリングインサートホルダは、シャンク部分及び切削部分を備え;切削部分は、同じ方向に開いている第1インサートポケット及び第2インサートポケットを備え;第1インサートポケット及び第2インサートポケットの各々は、ポケットベース面と、ポケットベース面から延在する第1ポケット側面及び第2ポケット側面と、を備え;それぞれの各ポケットベース面の平面視において、第1ポケット側面及び第2ポケット側面は、仮想四角形の2つの辺を規定し;前記各ポケットベース面の仮想四角形は、他方のポケットベース面の仮想四角形に対して回転させられる。
【0076】
[0076] 以下で明らかになるように、バーピーリングインサートの汎用性の高い設計により、バーピーリングインサートは、ラフィングバーピーリングインサート又は仕上げバーピーリングインサートの両方として使用されることができる。
【0077】
[0077] 仏国特許第2 483 819号は、同一のインサートが一緒に使用される一実施形態を示しているようにみえるが、重要なワイパーサブ切れ刃の欠如が、現在の態様では2つだけではなく3つのインサートポケットを使用することが必要であることの原因のようである。そして、3つのインサートを用いても、本発明のワイパーサブ切れ刃は、より良好な仕上げ、並びに、他の利点(相対的に長い切れ刃、及び、インサートあたりの追加の切れ刃など)を提供すると考えられる。
【0078】
[0078] バーピーリングインサートが四角形状であると仮定すると、インサートポケットは対応の形状を有し得る。好ましくは、それぞれの第1インサートポケット及び第2インサートポケットの各々の第1ポケット側面及び第2ポケット側面は、仮想四角形の隣接する辺に沿って延在する。
【0079】
[0079] 第1インサートポケット(すなわち、ラフィングバーピーリングインサートを保持することを目的としたインサートポケット)は、好ましくは、ポケットベース面から延在する第3ポケット側面を備え得、第1インサートポケットのポケットベース面の平面視において、第3ポケット側面は、第1インサートポケットの前記仮想四角形の辺を規定する。特に、本発明の好ましいが非限定的な実施形態では、前記第3ポケット側面は、バーピーリングインサートに当接するために使用されず、及びしたがって、バーピーリングインサートを損傷から保護するためにのみ追加されている。しかしながら、バーピーリングインサートが第3ポケット側面に当接する、異なる当接構成が利用可能であると考えられる。
【0080】
[0080] 好ましくは、第2インサートポケット(すなわち、仕上げバーピーリングインサートを保持することを意図したインサートポケット)は、ポケットベース面から延在する第3ポケット側面を備え、第2インサートポケットのポケットベース面の平面視において、第3ポケット側面は、第2インサートポケットの前記仮想四角形の辺を規定する。
【0081】
[0081] 好ましくは、第2インサートポケットの第1ポケット側面及び第2ポケット側面のうちの1つはインサートホルダの延在方向に平行である。
【0082】
[0082] 当技術分野で知られているように、シムが使用されて、バーピーリングインサートが破損した場合にインサートホルダが損傷するのを保護することができる。好ましくは、シムは、インサートホルダよりも硬い材料、通常は超硬合金から形成される。
【0083】
[0083] 本発明の開発中、インサートのねじ孔と同軸のブッシングの標準的なシム設計は以下の設計概念よりも好ましくなかった。
【0084】
[0084] 他の機械加工工程で使用される切削インサートと比較する場合、バーピーリングインサートのサイズが異常に大きいので、ポケットベース面に、バーピーリングインサートのための中心に配置されたねじ孔と、さらに、中心に配置されたねじ孔から離間された2つのシムねじ孔とを設けるのに十分なスペースがあった。それらは中心に配置されていないので、安定性を提供するために複数のシムねじ孔があることが好ましい。それは、切削インサート及びシムの両方に使用される中心に配置された単一のねじ孔よりも洗練された解決策ではないように見え、かつ、シムだけを固定するために2つの別個のねじなどの追加の部品を必要とするが、これは、これまで発明者に知られていなかった好ましい設計であり、相対的に複雑なシムの必要性を減らす。
【0085】
[0085] 好ましくは、第1インサートポケット及び第2インサートポケットの両方が囲まれ、ポケットベース面のうちの少なくとも1つが、中心に配置されたねじ孔及び中心に配置されたねじ孔から離間された2つのシムねじ孔で形成される。
【0086】
[0086] したがって、本願の主題の第7態様によれば、中心に配置されたねじ孔と、中心に配置されたねじ孔から離間された2つのシムねじ孔とで形成されたポケットベース面を有するインサートポケットを備えるインサートホルダが提供される。
【0087】
[0087] 本願の主題の第8態様によれば、対向する第1シム側面及び第2シム側面と、第1シム側面及び第2シム側面を接続するシム周縁と、を備える平面形状シムが提供され、シムはさらに、中心に配置されたねじ孔と、中心に配置されたねじ孔から離間された2つのシムねじ孔とで形成されている。好ましくは、ねじ孔の直径は2つのシムねじ孔の各々よりも大きい。
【0088】
[0088] 本願の主題の第9態様によれば、第6態様又は第7態様に係るインサートホルダと、第8態様に係る少なくとも1つのシムと、を備える工具アセンブリが提供される。
【0089】
[0089] 本願の主題の第10態様によれば、第6態様又は第7態様のいずれか1つに係るインサートホルダと、第1態様~第5態様のいずれか1つに係る少なくとも1つのバーピーリングインサートと、を備えるバーピーリング工具アセンブリが提供される。
【0090】
[0090] バーピーリング工具アセンブリはまた、好ましくは、第8態様に係るシムを備え得ることが理解される。
【0091】
[0091] 好ましくは、バーピーリング工具アセンブリは、上記態様に係る2つの(第1及び第2)バーピーリングの態様を備え、これらは、インサートホルダの第1インサートポケット及び第2インサートポケットにそれぞれ取り付けられる。
【0092】
[0092] 好ましくは、第1インサートは、バーピーリングインサートの片側の少なくとも1つのピーリングサブ切れ刃及びワイパーサブ切れ刃がバーワークピースに接触して位置決めされるように配向され、かつ、第2インサートは、少なくともワイパーサブ切れ刃がバーワークピースに接触して位置決めされるように配向され、第2インサートの前記ワイパーサブ切れ刃はバーの延在方向に基本的に平行であるように位置決めされる。
【0093】
[0093] 好ましくは、第1インサートは、第1ピーリングサブエッジ及び第2ピーリングサブエッジ並びにそのワイパーサブ切れ刃の両方がバーワークピースに接触して位置決めされるように配向される。
【0094】
[0094] 好ましくは、第2インサートは、その第2ピーリングサブ切れ刃よりも第1インサートにより近くに配置されるその第1ピーリングサブ切れ刃が、バーワークピースに接触して位置決めされるように配向される。
【0095】
[0095] 好ましくは、第2インサートは、その第2ピーリングサブ切れ刃がバーワークピースに接触しないように位置決めされるように配向される。
【0096】
[0096] 本明細書及び特許請求の範囲で言及されるインサートは、バーピーリングインサートであること、かつ、簡潔にするためだけに、「インサート」という単語が、場合によっては、先行する「バーピーリング」という単語なしで言及されることが理解される。同様に、「インサートホルダ」又は「アセンブリ」という単語は省略形で表示され得る。この言及の唯一の例外は、シムの態様並びに関連のインサートホルダ及びアセンブリの態様に関連するものであり、これは、バーピーリングの態様ではない場合でも、切削インサートのための有利な設計であると考えられる。
【0097】
[0097] 本願の主題をよりよく理解するため、かつ、本願の主題が実際にどのように実施され得るかを示すため、ここで、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】本発明の創作的な態様に係る工具アセンブリの斜視図である。
図2A図1の工具アセンブリでも使用されている、本発明の別個の創作的な態様に係るシムの斜視図である。
図2B図2Aのシムの平面図である。
図3A図1の工具アセンブリでも使用されている、本発明の創作的な態様に係るバーピーリングインサートの斜視図である。
図3B図3Aのインサートの平面図及び仮想の破線四角形である。
図3C図3Aのインサートの側面図である。
図3D図3Bの線IIID-IIIDに沿って取られた断面図である。
図4A図1の工具アセンブリでも使用されている、本発明の創作的な態様に係るインサートホルダの一部の斜視図であり、仮想ハッチング線は、意図された当接領域を示すために使用される。
図4B図4Aのインサートホルダの一部の平面図及び仮想破線四角形である。
図4C図4Aのインサートの側面図である。
図5A図1の工具アセンブリの側面斜視図である。
図5B図5Aのアセンブリの一部のほぼ平面図(すなわち、以下で説明するように、インサートホルダ上面にわずかに垂直ではない)であり、バーワークピースにバーピーリング工程を実行することを概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0099】
[0098] 図1を参照すると、バーピーリング工具アセンブリ10が示されている。アセンブリ10は、インサートホルダ12と、インサートホルダ12内のそれらのそれぞれの位置及び方向において、ラフィングインサート14及び仕上げインサート16として機能する2つの同一のインサート14、16と、ラフィングインサート14及び仕上げインサート16とそれらが取り付けられているそれぞれの第1インサートポケット22及び第2インサートポケット24との間にそれぞれ配置された同一の第1シム18及び第2シム20と、を備えている。
【0100】
[0099] ラフィングインサート14は、ねじ26によって第1インサートポケット22に固定されている。仕上げインサート16は、同様に、別のねじ28によって第2インサートポケット22に固定されている。
【0101】
[00100] 図2A図2B図3A及び図4Aも参照して、2つの同一のシムのうちの第1シム18のみを説明する。
【0102】
[00101] 第1シム18は、超硬合金から形成されており、かつ、平らな(又は、別の言い方をすれば、プレート)形状を有している。より正確には、第1シム18は、対向する第1シム側面30及び第2シム側面32並びにシム周縁34を備えている。
【0103】
[00102] 第1シム18は、中心に配置されたねじ孔36と、中心に配置されたねじ孔から離間された2つのシムねじ孔38、40と、を有するように形成されている。
【0104】
[00103] 中心に配置されたねじ孔36は、(ラフィングインサート14(又は仕上げインサート16も)へのより大きな力に起因して)より大きなねじ26用であるので、2つのシムねじ孔38、40の各々よりも直径が大きい。
【0105】
[00104] アセンブリにおいて、第1インサートポケット22に形成されたねじ切りされた第1シムねじ孔38及び第2シムねじ孔40に第1シムを固定するために2つの別個のねじ(図示せず)が使用される。しかしながら、標準的なねじが、ラフィングインサート14の安定した取り付けを妨げないように、第1シム側面に面一になるか又は第1シム側面より下にあるように選択(構成)される。
【0106】
[00105] 第1シム18が固定された状態で、その後、ラフィングインサート14が、ねじ26を用いて第1インサートポケット22に固定され得る。
【0107】
[00106] ここで図3A図3Dを参照して、ラフィングインサート14を詳細に説明する(シムと同様に、2つの同一のインサートのうちの1つのみのインサート、ラフィングインサート14のみを説明する)。
【0108】
[00107] ラフィングインサート14は、第1すくい面42と、第2面44(この例では「第2すくい面」44でもあり、第2面44は、図3Bの第1すくい面42の図と同一であるので、平面図は示されていない)と、第1すくい面42及び第2面44を接続するインサート周辺面46と、を備えている。第1すくい面42及び第2面44の両方が同一であるので、第1すくい面42のみを詳細に説明する。
【0109】
[00108] 異なる視点から、インサート周辺面46は、第1すくい面42及び第2面44の両方に対して垂直に延在し、及びしたがって、ラフィングインサート14は、いわゆるネガティブ切削インサートであることが理解される。
【0110】
[00109] ラフィングインサート14は4つの同一の側面を備え、そのうちの1つのみを詳細に説明する。
【0111】
[00110] 詳述すると、インサート周辺面46は、第1周辺サブ面48、第2周辺サブ面50、第3周辺サブ面52及び第4周辺サブ面54と、第1周辺サブ面48、第2周辺サブ面50、第3周辺サブ面52及び第4周辺サブ面54を接続する第1コーナ56、第2コーナ58、第3コーナ60及び第4コーナ62と、を備えているとみなされ得る。
【0112】
[00111] ラフィングインサート14は、第1すくい面42及び第2面44の中心を通って延在するねじ孔64を備える。上述したように、そのようなバーピーリングインサートは、異なるクランプ方法が望まれる場合、代替として中実インサート(すなわち、ねじ孔を有しない)であり得る。
【0113】
[00112] 第1切れ刃66は、インサート周辺面46と第1すくい面42との交線に沿って延在する。この好ましい例では、第1切れ刃66はインサート周辺面46全体に沿って延在する。
【0114】
[00113] より正確には、第1切れ刃66は、第1周辺サブ面48に隣接する第1サブ切れ刃68と、第2周辺サブ面50に隣接する第2サブ切れ刃70と、第3周辺サブ面52に隣接する第3サブ切れ刃72と、第4周辺サブ面54に隣接する第4サブ切れ刃74と、を備えている。
【0115】
[00114] ラフィングインサート14は4方向(90°)で割り出し可能であるので、第1サブ切れ刃68のみを詳細に説明する。
【0116】
[00115] 第1すくい面42の平面視(すなわち、図3B)では、第1サブ切れ刃68は、中央に配置された真っ直ぐなワイパーサブ切れ刃76と、その一方の側で第1コーナ56(又はより正確には、第1コーナ56と第1すくい面42との交点に形成された第1コーナ縁80)に接続する第1ピーリングサブ切れ刃78と、その他方の側で第2コーナ62(又はより正確には第2コーナ縁84)に接続する第2ピーリングサブ切れ刃82と、を備えている。
【0117】
[00116] 第1ピーリングサブ切れ刃78は、すべてのピーリングサブ切れ刃が同一であることに留意し、前記ワイパーサブ切れ刃76に接続された主サブ切れ刃86と、第1コーナ56(又はより正確には、第1コーナ縁80)に接続された第2サブ切れ刃88と、を備えている。
【0118】
[00117] 好ましくは、主サブ切れ刃86は、副サブ切れ刃88(この好ましい例では真っ直ぐである)よりも(図3に示される平面図において)より湾曲している。
【0119】
[00118] 図3Bに示すように、第1ピーリングサブ切れ刃及び第2ピーリングサブ切れ刃は両方とも、(インサートの中心を通って延在する、より正確には、第1すくい面42の両側に見られるサブ切れ刃72、76に属するワイパーサブ切れ刃の中央を通って延在する)平面Pによって二等分されたワイパーサブ切れ刃76の中央Cに対して鏡面対称である。
【0120】
[00119] 特に、ねじ孔軸線としても機能するインサート軸線Aは、ねじ孔64の中心を通って延在し、かつ、平面P内にある。
【0121】
[00120] ラフィングインサート14は、第1すくい面42及び第2すくい面44においても、インサート軸線A周りに90°の回転対称である。したがって、各々の側で、ラフィングインサート14は、ねじ孔軸線Aに対して4方向の回転割り出し可能性を有している。
【0122】
[00121] 第1切れ刃66に戻ると、すべての切れ刃は、この好ましい例では切れ刃66全体に隣接して延在する溝90などのチップフォーマ構成に隣接して配置されることが好ましい。
【0123】
[00122] 図3Bから分かるように、ワイパーサブ切れ刃76の各々は、仮想四角形Sを形成し、すなわち、4つのワイパー切れ刃はすべて、仮想四角形の異なる辺上にある。
【0124】
[00123] 完全を期すため、特に第1すくい面のワイパーサブ切れ刃だけでなく、第2面の同一の視点(図示せず)でも、同様の仮想四角形(図示せず)が提示され、かつ、第1すくい面のワイパーサブ切れ刃と第2面との間のインサート周辺面の実際の部分も、2つの仮想四角形を接続する平面内にある。したがって、8つのワイパーサブ切れ刃(各すくい面に関連付けられた4つ)は、ネガティブ(又は少なくともニュートラルな)形状を有するものとみなされる。
【0125】
[00124] さらに、第1切れ刃66、又はより正確には、そのワイパーサブ切れ刃76は、直径Dを有する内接円ICを規定する。この好ましい例では、直径Dは約35mmである。
【0126】
[00125] 直径Dの長さも仮想四角形Sのインサート辺長さSLの長さに等しい。
【0127】
[00126] 特に、ワイパー長さWLはピーリング長さPLよりも長い。
【0128】
[00127] この好ましい例では、ワイパー長さWLは約14mmである。
【0129】
[00128] この好ましい例では、ピーリング長さPLは約8mmである。
【0130】
[00129] さらに、好ましい実施形態では、インサート辺長さSLの長さは、ワイパー長さWLとピーリング長さPLの2倍との合計よりもさらに大きいことに留意されたい。
【0131】
[00130] 同様に、主サブ切れ刃86に関連する主長さP1Lは、好ましくは、副サブ切れ刃88に関連する副長さP2Lよりも長い。
【0132】
[00131] この好ましい例では、主長さP1Lは約6mmである。
【0133】
[00132] この好ましい例では、副長さP2Lは約2mmである。
【0134】
[00133] ここで図1を参照すると、インサートホルダ12はシャンク部分92及び切削部分94を備えている。
【0135】
[00134] 図4A図4Cを参照して、切削部分94をより詳細に説明する。
【0136】
[00135] 上述したように、好ましい実施形態では、切削部分94は、同じ方向に開いている第1インサートポケット22及び第2インサートポケット24を備えている。
【0137】
[00136] 第1インサートポケット22は、ポケットベース面96と、ポケットベース面96から延在する周方向に隣接する第1ポケット側面98及び第2ポケット側面100と、を備える。ポケットベース面96の表面の平面視(図4B)において、第1ポケット側面98及び第2ポケット側面100は、第1仮想四角形S1の周方向に隣接する2つの辺を規定する。
【0138】
[00137] 第1インサートポケット22のポケット当接面(図4Aに概略ハッチングで示されている)のすべてが第1ポケット側面98及び第2ポケット側面100に形成されている。
【0139】
[00138] 具体的には、第1ポケット側面98は、この好ましい実施形態では、インサートホルダ12の前端104に隣接する第1ポケット当接面102を備えている。見ることは困難であるが、第1ポケット側面98の隣接領域106は、ラフィングインサート14が意図された当接エリア、すなわち、第1ポケット当接面102に確実に接触するように、第1ポケット当接面102のわずかに後方に凹んでいる。
【0140】
[00139] さらに、前端104から最も遠いポケット側面である第2ポケット側面100は、逃げ凹部112によって分離された第2ポケット当接面108及び第3ポケット当接面110を備えている。
【0141】
[00140] 第1インサートポケット22は、この非限定的な実施形態では、ラフィングインサート14に接触しないように意図されている第3ポケット側面114をさらに備えている。
【0142】
[00141] したがって、示される好ましい構成では、ラフィングインサート14は、ポケットベース面96(より正確には、シムを備えるこの実施形態では、今度は、ポケットベース面96に接触する第1シム18)と、第1ポケット当接面102、第2ポケット当接面108及び第3ポケット当接面110と、のみに接触する。
【0143】
[00142] 異なる当接構成が、第3ポケット側面114に当接面を含むことが考えられる可能性があることが理解される。
【0144】
[00143] 第2インサートポケット24は、基本的に、第1インサートポケット22と同一であり、及びしたがって、簡単にのみ説明する。
【0145】
[00144] 第2インサートポケット24は、第2仮想四角形S2の2つの辺を規定する第1ポケット側面118及び第2ポケット側面120に周方向に隣接するポケットベース面116を備えている。インサートホルダの切削部分94の平面視において(図4B)、第2インサートポケット24のポケットベース面116と第1インサートポケット22のポケットベース面96とは同じ方向に面している。しかしながら、平面視において、第1ポケット22の角度方向は第2ポケット24の角度方向とは異なる。したがって、2つのポケット22、24の仮想四角形S1、S2は、それぞれ、前記平面視において互いに対して回転させられ、そのような回転は、対応する仮想四角形S1又はS2の中心周りである。
【0146】
[00145] 第2インサートポケット24のポケット当接面(図4Aに概略ハッチングで示されている)のすべてが第1ポケット側面118及び第2ポケット側面120に形成されている。
【0147】
[00146] 具体的には、第1ポケット側面118は第1ポケット当接面122を備えている。第2ポケット側面120は、逃げ凹部128によって分離されている第2ポケット当接面124及び第3ポケット当接面126を備えている。
【0148】
[00147] 第2インサートポケット24は、この非限定的な実施形態では、仕上げインサート16に接触しないように意図されている第3ポケット側面129をさらに備えている。
【0149】
[00148] したがって、示される好ましい構成では、仕上げインサート16は、ポケットベース面116(又は、より正確には、シムを備えるこの実施形態では、今度はポケットベース面116に接触する第2シム20)と、第1ポケット当接表面122、第2ポケット当接表面124及び第3ポケット当接表面126と、のみに接触する。
【0150】
[00149] 第1シム18に対応して、第1インサートポケット22のポケットベース面96は、中心に配置されたねじ切りされたねじ孔130と、中心に配置されたねじ孔130から離間された2つのねじ切りされたシムねじ孔132、134と、を有するように形成される(対応する構造が第2インサートポケット24に形成されている)。
【0151】
[00150] 第1インサートポケット22の第3ポケット側面114、又はより正確には、第3ポケット側面114を備える第1ポケット壁114Aは、当接に使用されず、及びしたがって、必須ではない。それにもかかわらず、第1ポケット壁114Aは上述したような保護機能を提供することができる。
【0152】
[00151] 完全を期すため、第2壁98Aは、第1インサートポケット22及び第2インサートポケット24を分離し、かつ、第1インサートポケット22の第1ポケット側面98と、反対側に第2インサートポケット24の第3ポケット側面129と、を備えている。
【0153】
[00152] さらに、第3壁118Aは、第2インサートポケット24の第1ポケット側面118を備えている。
【0154】
[00153] 第1インサートポケット22及び第2インサートポケット24の回転位置に関して、第2インサートポケット24(及びそれらが形成される第2ポケット側面120)の第2当接面124及び第3当接面126が、基本的に、インサートホルダ12の延在方向(延在軸線Aによって規定される)に対して垂直である。
【0155】
[00154] 代替の方法でポケットの角回転を規定するため、インサートホルダ12の切削部分94の平面視において(図4B)、第1インサートポケット22は、そのインサートの第2ポケット側面100に対して垂直であり(及びより正確には、その第2ポケット当接面108及び第3ポケット当接面110に対して垂直であり)、かつ、第1仮想四角形S1を二等分する第1法線N1を有する。一方で、第2インサートポケット24は、そのインサートの第2ポケット側面120に対して垂直であり(及びより正確には、その第2ポケット当接面124及び第3ポケット当接面126に対して垂直であり)、かつ、第2仮想四角形S2を二等分する第2法線N2を有する。第1法線N1と第2法線N2とは鋭角αを形成する。ある実施形態では、角度αは、30°~50°(すなわち、30°≦α≦50°)であり、及び好ましくは、35°≦α≦45°である。第2法線N2は、インサートホルダ12の延在軸線Aに平行であり得る。
【0156】
[00155] 図5Bを参照すると、延在方向Dを有するバー136上でのバーピーリング工具アセンブリ10の動作を説明する。この図では、1つの切削インサートが各インサートポケットに取り付けられており、そのインサートの動作可能サブ切れ刃(この例では、サブ切れ刃68)がバー136に係合している。
【0157】
[00156] 上述したように、ラフィングインサート14及び仕上げインサート16はネガティブインサートであり、及びしたがって、インサートホルダ12は、ネガティブ配向で逃げを提供することが好ましく、これは、周辺インサート面46がわずかに見えるという事実において見える。
【0158】
[00157] ラフィングインサート14は、ラフィング機能(大量の材料の除去)を提供するように配向され、その結果、第1動作可能サブ切れ刃68全体(すなわち、ワイパーサブ切れ刃76及び第1ピーリングサブ切れ刃78及び第2ピーリングサブ切れ刃82の両方)が、バー136に係合して、そこから切り込み深さAP1で材料を除去する。
【0159】
[00158] 切り込み深さAP1は、非常に大きく、かつ、ラフィングインサート14にかかる力が特定の用途で大きすぎる場合、第2ピーリングサブ切れ刃82がワークピースに係合することを少なくすることで確実に減らされ得ることを理解されたい。
【0160】
[00159] しかしながら、第2コーナ62は、鋭く、及びしたがって、比較的壊れやすい構造であるので、係合されない。
【0161】
[00160] それにもかかわらず、ラフィングインサート14のその後の割り出しにより、仮想的にその切れ刃全体が利用されることが理解される。
【0162】
[00161] 同様に、仕上げインサート16は、より少ない材料を除去するように配向され(切り込み深さAP1と比較した場合、相対的にはるかに小さい切り込み深さAP2に注目されたい)、かつ、バー136に係合する唯一のピーリングサブ切れ刃(第2ピーリングサブ切れ刃82)及びワイパーサブ切れ刃76を用いて仕上げ機能を提供する。
【0163】
[00162] この場合も、第2コーナ62は係合されておらず、確かに第1コーナ56は係合されていない。
【0164】
[00163] 特に、仕上げインサート16のワイパーサブ切れ刃76は、基本的にバーの延在方向Dに平行であり、及びしたがって、ワイパー機能だけでなく上述したような安定化機能も提供する。
【0165】
[00164] 上記説明は、例示的な実施形態を含み、かつ、例示されていない実施形態及び詳細を本願の特許請求の範囲から除外するものではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B