IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電線ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ケーブル終端接続部 図1
  • 特許-ケーブル終端接続部 図2
  • 特許-ケーブル終端接続部 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ケーブル終端接続部
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/064 20060101AFI20250205BHJP
   H02B 13/035 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
H02G15/064
H02B13/035 301L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023045445
(22)【出願日】2023-03-22
(65)【公開番号】P2024134973
(43)【公開日】2024-10-04
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002255
【氏名又は名称】SWCC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住本 勉
(72)【発明者】
【氏名】今西 晋
(72)【発明者】
【氏名】福濱 大河
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-093795(JP,A)
【文献】特開2019-169424(JP,A)
【文献】特開2020-080622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/064
H02B 13/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力用機器の機器ケースのケース開口に設置されるケーブル終端接続部であって、
内部導体及び前記内部導体の外周面を覆うように配置される絶縁性の硬質プラスチック樹脂製のブッシング本体を有するブッシングと、
前記ブッシングに装着される電力ケーブルのケーブル端末部と、
フランジ開口を有し、前記ブッシングと前記機器ケースとの接続を中継する金属製のアダプターフランジと、を備え、
前記ブッシング本体は、前記機器ケースの内部に収容される先端側のヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置される固定フランジと、を有し、
前記アダプターフランジは、前記フランジ開口が前記ケース開口に連通するように前記機器ケースに固定され、
前記アダプターフランジに、前記固定フランジが固定されており、
前記ブッシングの前記フランジ開口に対応する部分に、遮へい部が設けられている、
ケーブル終端接続部。
【請求項2】
前記アダプターフランジの一方の面に前記固定フランジが固定され、他方の面が前記機器ケースに固定される、
請求項1に記載のケーブル終端接続部。
【請求項3】
前記フランジ開口の開口サイズは、前記ケース開口の開口サイズよりも小さい、
請求項1に記載のケーブル終端接続部。
【請求項4】
前記硬質プラスチック樹脂はエポキシ樹脂である、
請求項1に記載のケーブル終端接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル終端接続部として、ガス絶縁開閉機器(GIS:Gas Insulated Switchgear)のような密閉型の電力用機器と電力ケーブルとを接続するガス中終端接続部が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなケーブル終端接続部は、内部導体及び内部導体の外周に配置されるエポキシ樹脂等からなる硬質の絶縁体からなるブッシング本体を有する絶縁ユニット(「ブッシング」と呼ばれる)に、接続材料が取り付けられたケーブル端末部を接続することで形成される。
【0003】
ブッシングは、例えば、特許文献1に記載されているように、内部導体が引き出されている先端部を機器ケースに設けられた取付口に挿入するとともに、ブッシング本体の後端部に設けられた固定フランジを機器ケースに固定することにより、機器ケースに気密に固定される。機器ケースの内部には、例えば、SFガス等の絶縁ガスが封入される。しかし、SFガスは、優れた絶縁性能を有する一方で、温室効果の高いガスであるため、近年では、環境への配慮から、絶縁ガスとしてSFガスの代替ガス(例えば乾燥空気等)が適用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5548567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、SFガスに比較してSFガスの代替ガスの絶縁性能は低いため、GIS等の電力用機器の絶縁ガスとしてSFガスの代替ガスを適用する場合、SFガスを適用した場合と同等の絶縁耐力を得るためには、SFガスの代替ガスの絶縁ガス圧を高くする必要がある。絶縁ガス圧を増大させると、機器ケースの歪みが大きくなり、機器ケースの材質や厚さにもよるが、機器ケースに固定されているブッシングの固定フランジ(特にブッシング本体と同じ硬質の絶縁体で形成されている場合)に歪みが生じ、ブッシングが破損する虞がある。
【0006】
従来は、電力用機器メーカーとの間で、取り合い部の仕様(例えば、機器ケース及び固定フランジの厚さなど)についての事前検討が行われ、使用ガス圧において機器ケース及び固定フランジに歪みが生じないように設計されている。
【0007】
本発明の目的は、機器ケースの歪みに伴うブッシングの破損を防止できる安全性の高いケーブル終端接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るケーブル終端接続部は、
電力用機器の機器ケースのケース開口に設置されるケーブル終端接続部であって、
内部導体及び前記内部導体の外周面を覆うように配置される絶縁性の硬質プラスチック樹脂製のブッシング本体を有するブッシングと、
前記ブッシングに装着される電力ケーブルのケーブル端末部と、
フランジ開口を有し、前記ブッシングと前記機器ケースとの接続を中継する金属製のアダプターフランジと、を備え、
前記ブッシング本体は、前記機器ケースの内部に収容される先端側のヘッド部と、前記ヘッド部より後端側に配置される固定フランジと、を有し、
前記アダプターフランジは、前記フランジ開口が前記ケース開口に連通するように前記機器ケースに固定され、
前記アダプターフランジに、前記固定フランジが固定されており、
前記ブッシングの前記フランジ開口に対応する部分に、遮へい部が設けられている
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機器ケースの歪みに伴うブッシングの破損を防止でき、ケーブル終端接続部の安全性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係るケーブル終端接続部を示す断面図である。
図2図2A図2Bは、ケーブル終端接続部の取り合い部の構成を後端側から見た平面図である。
図3図3A図3Cは、機器ケース、アダプターフランジ及び固定フランジの寸法関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、実施の形態に係るケーブル終端接続部1を示す図である。図1では、ブッシング10が半断面図で示されている。図2A図2Bは、ケーブル終端接続部1の接続部分(取り合い部)の構成を後端側から見た平面図である。図2A図2Bには、3相の電力ケーブル50が電力用機器に接続される場合、すなわち、電力ケーブルの相ごとのケーブル端末部20が装着される3つのケーブル終端接続部1を機器ケース60に設置する場合について示している。
【0013】
ケーブル終端接続部1は、開閉装置や変圧器等の気密性を要求される電力用機器の接続部分(取り合い部)に適用されるガス中終端接続部である。図1に示すように、ケーブル終端接続部1は、ブッシング10、ケーブル端末部20及びアダプターフランジ30を有し、電力用機器の機器ケース60のケース開口61に設置される。ケース開口61の形状は、典型的には、円形である。機器ケース60の内部には、絶縁ガスとしてSFガスの代替ガス(例えば乾燥空気等)が封入される。
【0014】
以下において、内部導体11が引き出される側(図1では上側)を「先端側」、ケーブル端末部20が装着される側(図1では下側)を「後端側」として説明する。
【0015】
ケーブル終端接続部1において、ブッシング10は、内部導体11及び内部導体11の外周面を覆うように配置される絶縁性のブッシング本体12を有する。内部導体11及びブッシング本体12は、例えば、モールド成形により一体的に形成される。
【0016】
内部導体11は、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。内部導体11の内周面は、ブッシング本体12から露出しており、ケーブル導体51を電気的に接続するための導体挿入部(符号略)が設けられている。内部導体11の先端側の端部は、ブッシング本体12を貫通して、電力用機器の導体(図示略)と接続される。内部導体11の形状は限定されず、例えば、露出した先端側がシールド形状を有する大径の形状であってもよい。なお、内部導体11を電力用機器の導体(図示略)と接続する際は、別途用意する接続端子(図示略)を介して接続してもよいし、直接接続してもよい。
【0017】
ブッシング本体12は、機械的強度の高い硬質の絶縁体であるプラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)など)で形成される。本実施の形態では、ブッシング本体12がエポキシ樹脂で形成されたエポキシブッシングである場合、すなわち、後述する固定フランジ123がエポキシ樹脂で形成されている場合について説明する。ブッシング本体12は、機器ケース60の内部に収容されるヘッド部121、ヘッド部121の後端側に連設される電界緩和部122及び電界緩和部122の後端側に連設される固定フランジ123を有する。
【0018】
ブッシング本体12は、固定フランジ123、電界緩和部122及びヘッド部121の後端部にわたって、ケーブル端末部20を受け入れるコーン状の端末挿入部(符号略)を有する。端末挿入部は、内部導体11の導体挿入部に連通する。端末挿入部の後端側のケーブル挿入口124(図2A図2B参照)は、例えば、円形状に形成される。導体挿入部(符号略)及び端末挿入部124により、ケーブル端末部20が装着されるケーブル受容部が形成される。
【0019】
ヘッド部121は、機器ケース60の内部に収容される部分であり、後端部がベルマウス状に形成されている。
【0020】
電界緩和部122の外表面には、例えば、導電塗料(図示略)が塗布される。当該導電塗料が機器ケース60に電気的に接続されることにより、ブッシング10の遮へい部として機能する。ブッシング10に遮へい部を設けることにより、ブッシング本体12の内部で電界が集中することなく、ブッシング10の電気特性の安定化が図られる。
【0021】
なお、ブッシング10の遮へい部は、電界緩和部122の内部に埋め込んで配置される遮へい金具で構成されてもよい。また、ケーブル端末部20に装着されるストレスコーン22の後端側の半導電性ゴム材料で形成した部分もブッシング10の遮へい部として機能する。
【0022】
固定フランジ123は、ヘッド部121及び電界緩和部122よりも径方向外側に張り出すように形成されている。固定フランジ123は、軸方向から見た平面視において、例えば、六角形状の外形を有する(図2A図2B参照)。なお、固定フランジ123の平面視における外形形状は六角形に限定されず、例えば、円形や六角形以外の正多角形であってもよい。
【0023】
固定フランジ123は、例えば、ボルト止めによりアダプターフランジ30に固定される。固定フランジ123とアダプターフランジ30の間には、機器ケース60の内部の気密性を保持するために、Oリング等のシール部材(図示略)が配置される。
【0024】
アダプターフランジ30は、ブッシング10と機器ケース60との接続を中継する板状部材である。アダプターフランジ30は、軸方向から見た平面視において、例えば、円形状の外形を有する(図2A参照)。なお、アダプターフランジ30の平面視における外形形状は円形に限定されず、例えば、六角形(図2B参照)や六角形以外の正多角形であってもよい。
【0025】
アダプターフランジ30は、例えば、ステンレス等の金属材料で形成され、機器ケース60の歪みを許容しうる曲げ強度を有する。「機器ケース60の歪みを許容しうる」とは、ケーブル終端接続部1の稼働時に機器ケース60に歪み(変形)が生じても破損しない(機器ケース60の変形に追従して多少変形してもよい)ことを意味する。
【0026】
アダプターフランジ30は、中央部に、円形のフランジ開口31を有する。フランジ開口31の開口サイズは、ブッシング本体12のヘッド部121の後端部(ベルマウス状の部分)を挿通可能に設定される。フランジ開口31の先端側の開口端縁には、R面取り又はC面取り等の面取り加工が施されるのが好ましい。アダプターフランジ30は、例えば、ボルト止めにより機器ケース60に固定される。アダプターフランジ30と機器ケース60の間には、機器ケース60の内部の気密性を保持するために、Oリング等のシール部材(図示略)が配置される。
【0027】
アダプターフランジ30は、ケース開口61とフランジ開口31が連通するように機器ケース60に固定される。また、ブッシング10がケース開口61及びフランジ開口31に挿入された状態で固定フランジ123がアダプターフランジ30に固定される。本実施の形態では、機器ケース60の後端側の面に、アダプターフランジ30の先端側の面を当接させて、機器ケース60にアダプターフランジ30が固定されている。また、アダプターフランジ30の後端側の面に、固定フランジ123の先端側の面を当接させて、アダプターフランジ30にブッシング10が固定されている。
【0028】
なお、ブッシング10を機器ケース60に固定する作業においては、機器ケース60にアダプターフランジ30を固定してからアダプターフランジ30にブッシング10(固定フランジ123)を固定するようにしてもよいし、ブッシング10をアダプターフランジ30に固定してからアダプターフランジ30を機器ケース60に固定するようにしてもよい。
【0029】
ブッシング10は、アダプターフランジ30を介して、機器ケース60に気密に固定されるので、機器ケース60に歪みが生じても、機器ケース60の歪みは、アダプターフランジ30で吸収され、ブッシング10のブッシング本体12(具体的には、固定フランジ123)には直接伝達されない。したがって、エポキシ樹脂製で形成された固定フランジ123の破損を防止することができる。
【0030】
アダプターフランジ30の曲げ強度は、例えば、アダプターフランジ30の板厚によって適切に調整することができる。板厚が30mm程度の一般的な機器ケース60の場合、例えば、アダプターフランジ30の板厚を20mm以上とすることにより、絶縁ガス圧をSFガスの場合に比較して高くした場合でも、アダプターフランジ30は破損しない。すなわち、機器ケース60の内部の絶縁ガスにおいて許容できる最高ガス圧を高くすることができる。よって、本実施の形態のように、機器ケース60の内部の絶縁ガスがSFガスの代替ガス(例えば乾燥空気等)の場合だけでなく、SFガスを従来よりも高いガス圧で使用する必要がある場合にも、適用可能である。
【0031】
ケーブル終端接続部1において、ケーブル端末部20は、電力ケーブル50の先端部に、導体接続端子21、ストレスコーン22、圧縮装置23、ケーブル保護金具24、及び防食層25等の接続材料が取り付けられて構成される。
【0032】
電力ケーブル50は、例えば、ゴム又はプラスチックで絶縁された電力ケーブルである。電力ケーブル50は、中心から順に、ケーブル導体51、ケーブル絶縁体52、ケーブル外部半導電層(図示略)、ケーブル遮へい層(図示略)及びケーブルシース(図示略)等を有する。ケーブル端末部20においては、電力ケーブル50の先端部から所定長で段剥ぎすることにより各層が露出される。
【0033】
ケーブル導体51には、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性の導体接続端子21が圧縮により接続される。導体接続端子21は、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。導体接続端子21と内部導体11とを電気的に接続する方法は、チューリップコンタクト構造により接続してもよいし、マルチラムバンド等の導体接触子(図示略)を介して接続してもよく、他の既知の接続方法により接続してもよい。ケーブル絶縁体52からケーブル外部半導電層の先端部にわたる外周面にはストレスコーン22が装着される。
【0034】
ストレスコーン22は、紡錘状に形成され、先端側の絶縁部(符号略)と、後端側の半導電部(符号略)と、を有する。絶縁部は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等の絶縁性ゴム材料で筒状に形成され、半導電部は、例えば、半導電性のEPゴム等の半導電性ゴム材料で筒状に形成される。絶縁部と半導電部は、モールド成型により一体的に形成される。
【0035】
ストレスコーン22の後端部(半導電部)は、電力ケーブル50のケーブル外部半導電層に接続される。ストレスコーン22の後端部は、ケーブル終端接続部1として所定の性能を有する限りにおいて、ケーブル外部半導電層に直接接続されてもよいし、ケーブル外部半導電層の端部にモールドや導電塗料で再生した外部半導電層の端部を介して接続されてもよい。ストレスコーン22の先端部(絶縁部)は、ブッシング10のケーブル受容部に対応する形状を有する。ストレスコーン22の後端側には、圧縮装置23及びケーブル保護金具24が装着される。
【0036】
圧縮装置23は、例えば、ストレスコーン22に当接する押し金具(図示略)、ストレスコーン22に向けて押し金具を付勢するコイルスプリング(図示略)、並びに、押し金具及びコイルスプリングを支持する押し金具フランジ(図示略)と、を有する。
【0037】
電力ケーブル50の先端部を段剥ぎした後、ケーブル保護金具24、圧縮装置23、ストレスコーン22が電力ケーブル50に挿通され、ケーブル導体51に導体接続端子21が取り付けられる。そして、ケーブル端末部20の先端部をブッシング10のケーブル受容部に挿入し、圧縮装置23のコイルスプリングを圧縮させながら、押し金具フランジをブッシング本体12の後端面にボルト止めし、ケーブル保護金具24を押し金具フランジにボルト止めすることにより、ケーブル受容部にケーブル端末部20が装着される。
【0038】
なお、図1の実施の形態では、圧縮装置23として押し金具フランジが外観で見えている例を示すが、圧縮装置23の構造は特に限定されず、圧縮装置がシャフト付きのケーブル保護金具24内に収容される構造でもよい。この場合は、ブッシング本体12の後端面には、押し金具フランジではなくケーブル保護金具24がボルト止めされる。
【0039】
ストレスコーン22の先端部はブッシング本体12の内面に押し付けられ、導体接続端子21は内部導体11と電気的に接続される。また、ケーブル保護金具24の後端部には、防水のための防食層25が配置される。このように、ケーブル終端接続部1は、プラグイン接続により、比較的簡単な作業で組み立てることができる。
【0040】
図3A図3Cは、機器ケース60、アダプターフランジ30及び固定フランジ123の寸法関係を示す図である。図3Aは、機器ケース60のケース開口61の開口サイズ(内径R1)を示す。図3Bは、ケース開口61の開口サイズ(内径R1)とアダプターフランジ30のフランジ開口31の開口サイズ(内径R21)及び外形サイズ(外径R22)との関係を示す。図3Cは、アダプターフランジ30のフランジ開口31の開口サイズ(内径R21)と固定フランジ123のケーブル挿入口124の開口サイズ(内径R31)及び外形サイズとの関係を示す。なお、図3Cでは、固定フランジ123の外形サイズを、六角形の外形形状の内接円の直径R32で表している。
【0041】
図3Aに示す機器ケース60のケース開口61は、従来のようにアダプターフランジ30を介さずにブッシングを機器ケース60に直接ボルト等で固定する場合に比較して、内径R1を大きく設定することができる。
【0042】
図3Bに示すように、アダプターフランジ30の外形サイズ(外径R22)は、アダプターフランジ30と機器ケース60とが軸方向に重なるようにケース開口61の開口サイズ(内径R1)よりも大きく設定される。
【0043】
また、図3Bに示すように、フランジ開口31の開口サイズ(内径R21)は、ケース開口61の開口サイズ(内径R1)よりも小さく設定される。言い替えると、ケース開口61の開口サイズは、フランジ開口31の開口サイズより大きい。この場合、機器ケース60におけるケース開口61の内径R1は、従来のようにアダプターフランジ30を介さずにブッシングを機器ケース60に直接ボルト等で固定する場合に比較して、大きく設定されているため、ケーブル終端接続部1の高圧側である中心導体(ケーブル導体51)と、接地側である機器ケース60との距離を大きくすることができ、ブッシング10にかかる電界を低下させることができる。
【0044】
また、機器ケース60におけるケース開口61の内径R1が、従来のアダプターフランジ30が無い場合に比較して大きく設定されることで、ブッシング10のヘッド部121の外形と機器ケース60との距離が従来に比較して大きくなるため、ブッシング10を容易にケース開口61に挿入することができ、機器ケース60との接触によるブッシング10の損傷を防止することができる。
【0045】
仮にアダプターフランジ30を介しての電力用機器への取り付けを想定していないブッシング10および機器ケース60に対して、単に固定フランジ123と機器ケース60との間にアダプターフランジ30を介在させた場合、ブッシング10における従来よりも先端側の位置に接地側である機器ケース60のケース開口61が存在することになるため、機器内部の電界分布に影響し電気的性能が低下する。したがって、電界を低下させる意味でも、ケース開口61の開口サイズ(内径R1)は、フランジ開口31の開口サイズ(内径R21)より大きい方が好ましい。
【0046】
また、ケース開口61の大きさが決まっている機器ケース60に対して、アダプターフランジ30を介してブッシング10を取り付ける場合は、固定フランジ123の外形サイズを機器ケース60のケース開口61の開口サイズに適合させる必要はなく、固定フランジ123の外形サイズを、機器ケース60のケース開口61の開口サイズに適合させる場合に比較して小さくすることができる。よって、固定フランジ123の小型化、ひいてはブッシング10の小型化を図ることができる。
【0047】
図3Cに示すように、固定フランジ123の外形サイズ(内接円の直径R32に対応する六角形のサイズ)は、固定フランジ123とアダプターフランジ30とが軸方向に重なるようにフランジ開口31の開口サイズ(内径R21)よりも大きく設定される。つまり、固定フランジ123の外形サイズは、機器ケース60のケース開口61の開口サイズ(内径61)による制限は受けない。したがって、機器ケース60のケース開口61に適合するサイズのアダプターフランジ30を採用することで、機器ケース60のケース開口61(ブッシング10と電力用機器との取り合い部の仕様の一例)にかかわらず、ブッシング10を機器ケース60に固定することができる。
【0048】
上述したように、本実施の形態に係るケーブル終端接続部1は、以下の特徴事項を単独で、又は、適宜組み合わせて備えている。
【0049】
すなわち、ケーブル終端接続部1は、電力用機器の機器ケース60のケース開口61に設置されるケーブル終端接続部であって、内部導体11及び内部導体11の外周面を覆うように配置される絶縁性の硬質プラスチック樹脂製(例えば、エポキシ樹脂製)のブッシング本体12を有するブッシング10と、ブッシング10に装着される電力ケーブル50のケーブル端末部20と、フランジ開口31を有し、ブッシング10と機器ケース60との接続を中継する金属製のアダプターフランジ30と、を備える。ブッシング本体12は、機器ケース60の内部に収容される先端側のヘッド部121と、ヘッド部121より後端側に配置される固定フランジ123とを有し、アダプターフランジ30は、フランジ開口31がケース開口61に連通するように機器ケース60に固定され、アダプターフランジ30に固定フランジ123が固定されている。
【0050】
ケーブル終端接続部1によれば、アダプターフランジ30を介してブッシング10が機器ケース60に固定されるので、機器ケースの歪みに伴うブッシングの破損を防止でき、ケーブル終端接続部1の安全性を向上することができる。具体的には、機器ケース60に歪みが生じても、機器ケース60の歪みは、アダプターフランジ30で吸収され、ブッシング10のブッシング本体12(固定フランジ123)には直接伝達されない。したがって、絶縁耐力を確保するために絶縁ガス圧を増大させて機器ケース60に歪みが生じたとしても、ブッシング10が破損することはなく、SFガスに比較して絶縁性能が低いSFガスの代替ガス(例えば乾燥空気等)を絶縁ガスとして適用する場合にも対応することができる。
【0051】
これにより、SFガスを使用しない環境に配慮した電力機器の推進に貢献することができる。よって、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」及び目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献することが可能となる。また、SFガスを従来よりも高いガス圧で使用する必要がある場合にも、対応することができる。
【0052】
また、ケーブル終端接続部1において、アダプターフランジ30の後端側の面(一方の面)に固定フランジ123が固定され、先端側の面(他方の面)が機器ケース60に固定される。これにより、固定フランジ123の外形サイズは、機器ケース60のケース開口61の開口サイズ(内径R1)による制限を受けないので、機器ケース60のケース開口61に適合するサイズのアダプターフランジ30を採用することで、機器ケース60のケース開口61(ブッシング10と電力用機器との取り合い部の仕様の一例)にかかわらず、ブッシング10を機器ケース60に固定することができ、汎用性が向上する。さらには、ケース開口61の大きさが決まっている機器ケース60に対してアダプターフランジ30を介してブッシング10を取り付ける場合は、固定フランジ123の外形サイズを機器ケース60のケース開口61の開口サイズに適合させる必要はなく、固定フランジ123の小型化、ひいてはブッシング10の小型化を図ることができる。
【0053】
また、ケーブル終端接続部1において、フランジ開口31は、ヘッド部121を挿通可能である。これにより、既設の機器ケース60に対して、ブッシング10を外側から取り付ける場合に、外側から容易にブッシング10を固定することができる。
【0054】
また、ケーブル終端接続部1において、ケース開口61の開口サイズ(内径R1)は、フランジ開口31の開口サイズ(内径R21)よりも大きい。これにより、ケーブル終端接続部1の高圧側である中心導体(ケーブル導体51)と、接地側である機器ケース60との距離が大きくなるため、ブッシング10にかかる電界を低下させることができ、ケーブル終端接続部1の電気特性を向上することができる。さらには、ブッシング10を容易にケース開口61に挿入することができ、機器ケース60との接触によるブッシング10の損傷を防止できるので、機器ケース60にブッシング10を固定する際の施工性が向上する。
【0055】
また、ケーブル終端接続部1において、ブッシング10のフランジ開口31に対応する部分に、遮へい部が設けられている。これにより、ブッシング本体12の内部で電界が集中することなく、ブッシング10の電気特性の安定化を図ることができる。
【0056】
また、ケーブル終端接続部1において、ブッシング本体12は、機器ケース60の内部に収容されるヘッド部121を有し、フランジ開口31は、ヘッド部121を挿通可能である。
【0057】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0058】
実施の形態では、アダプターフランジ30の後端側の面に固定フランジ123を固定し、先端側の面を機器ケース60に固定しているが、アダプターフランジ30、機器ケース60及び固定フランジ123の固定態様は、実施の形態で示した形態に限定されない。
【0059】
例えば、アダプターフランジ30の先端側の面を機器ケース60に固定するとともに、当該先端側の面のケース開口61から露出する部分に、固定フランジ123の後端側の面を当接させて、固定フランジ123をアダプターフランジ30の先端側の面に固定してもよい。すなわち、固定フランジ123の外周面がケース開口61(機器ケース60)の内周面に対向する位置関係となる。この場合、アダプターフランジ30のフランジ開口31の開口サイズを機器ケース60のケース開口61の開口サイズよりも小さくし、固定フランジ123の外形サイズをケース開口61の開口サイズよりも小さくする必要がある。
【0060】
また例えば、アダプターフランジ30の先端側の面に固定フランジ123の後端側の面を固定し、アダプターフランジ30の後端側の面を機器ケース60の先端側の面に固定(すなわち機器内部に固定)してもよい。この場合、ブッシング10は、固定フランジ123よりも後端側がアダプターフランジ30のフランジ開口31及び機器ケース60のケース開口61を挿通する形状、あるいは、固定フランジ123がブッシング10の最後端部であり電力ケーブル50とケーブル端末部20のみがフランジ開口31及び機器ケース60のケース開口61を挿通する形状となる。
【0061】
また、アダプターフランジ30の後端側の面を機器ケース60の先端側の面に固定(すなわち機器内部に固定)するとともに、当該後端側の面のケース開口61から露出する部分に、固定フランジ123の先端側の面を当接させて、固定フランジ123をアダプターフランジ30の後端側の面に固定してもよい。すなわち、固定フランジ123の外周面がケース開口61(機器ケース60)の内周面に対向する位置関係となる。
【0062】
これらの場合、機器ケース60の内部にアダプターフランジ30が配置されるので、少なくともアダプターフランジ30は、電力用機器の組み立て時に機器ケース60に固定されることになる。
【0063】
また、本実施の形態では、ブッシング本体12がエポキシブッシングで形成されている場合、すなわち、固定フランジ123がエポキシ樹脂で形成されている場合について説明したが、固定フランジ123は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)など、エポキシ樹脂以外の機械的強度の高い硬質の絶縁体で形成されてもよい。その場合も、エポキシブッシングの場合(固定フランジ123がエポキシ樹脂製の場合)と同様の効果が得られる。
【0064】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 ケーブル終端接続部
10 ブッシング
11 内部導体
12 ブッシング本体
123 固定フランジ
20 ケーブル端末部
30 アダプターフランジ
31 フランジ開口
60 機器ケース
61 ケース開口
図1
図2
図3