(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】発振回路
(51)【国際特許分類】
H03K 3/03 20060101AFI20250205BHJP
H03K 4/502 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
H03K3/03
H03K4/502
(21)【出願番号】P 2023127936
(22)【出願日】2023-08-04
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】595102189
【氏名又は名称】三栄ハイテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171240
【氏名又は名称】山越 淳
(72)【発明者】
【氏名】田中 義範
(72)【発明者】
【氏名】小野 秀和
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0162062(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0145665(US,A1)
【文献】特開2013-038744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0197612(US,A1)
【文献】特開2013-232877(JP,A)
【文献】特表2002-504296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 3/03
H03K 4/00-4/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧と抵抗値によって決まる充電電流を供給するように構成された電流供給回路と、
クロック信号が第1信号レベルのときに前記充電電流で第1コンデンサを充電し、前記クロック信号が第2信号レベルのときに前記第1コンデンサを放電するように構成された第1充電回路と、
前記クロック信号が前記第2信号レベルのときに前記充電電流で第2コンデンサを充電し、前記クロック信号が前記第1信号レベルのときに前記第2コンデンサを放電するように構成された第2充電回路と、
前記第1コンデンサの充電電圧が予め設定された閾値に到達した第1到達タイミングに従って前記第2信号レベルに変化し、前記第2コンデンサの充電電圧が前記閾値に到達した第2到達タイミングに従って前記第1信号レベルに変化する前記クロック信号を生成するように構成された信号生成回路と、
前記クロック信号が前記第1信号レベルから前記第2信号レベルに変化する第1クロックタイミングで、前記第1コンデンサの充電電圧である第1充電電圧をサンプリングする第1サンプリング、及び前記クロック信号が前記第2信号レベルから前記第1信号レベルに変化する第2クロックタイミングで、前記第2コンデンサの充電電圧である第2充電電圧をサンプリングする第2サンプリングのうち、少なくともいずれかを実行するように構成されたサンプリング回路と、
を備え、
前記電流供給回路は、前記サンプリング回路によるサンプリング値を、前記基準電圧とするように構成された、
発振回路。
【請求項2】
請求項1に記載の発振回路であって、
前記サンプリング回路は、前記サンプリング値を保持する保持コンデンサを備え、前記第1クロックタイミング及び前記第2クロックタイミングから前記保持コンデンサの充電電圧が前記第1充電電圧又は前記第2充電電圧に達するまでに要する待機期間の間、前記保持コンデンサを前記第1コンデンサ又は前記第2コンデンサに並列接続するように構成され、
前記第1充電回路は、前記第1クロックタイミングから前記待機期間の経過後に、前記第1コンデンサを放電するように構成され、
前記第2充電回路は、前記第2クロックタイミングから前記待機期間の経過後に、前記第2コンデンサを放電するように構成された、
発振回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マルチバイブレーション型発振回路に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、マルチバイブレーション型発振回路が記載されている。マルチバイブレーション型発振回路は、第1充電回路、第2充電回路、信号生成回路を備える。
第1充電回路は、第1コンデンサを充放電し、充電には、定電流源から供給される電流を用いる。第2充電回路は、第2コンデンサを充放電し、充電には、定電流源から供給される電流を用いる。第1充電回路及び第2充電回路は、一方が充電期間、他方が放電を含む非充電期間となり、充電期間及び放電期間が交互に入れ替わるように相補的に作動する。信号生成回路は、第1コンデンサの充電電圧V1が基準電圧Vrefに達した第1到達タイミングAR1、及び第2コンデンサの充電電圧V2が基準電圧Vrefに達した第2到達タイミングAR2に従って、信号レベルが反転するクロック信号を生成する。
【0003】
このような発振回路は、
図3の上段に示すように、充電期間中は、第1コンデンサが定電流Iによって一定の割合で充電される。そして、第1コンデンサの充電電圧が基準電圧Vrefに達した第1到達タイミングAR1で第1コンデンサは放電され、第2コンデンサの充電が開始される。すると、第2コンデンサが定電流Iによって一定の割合で充電される。第2コンデンサの充電電圧V2が基準電圧Vrefに達した第2到達タイミングAR2で、第2コンデンサは放電され、第1コンデンサの充電が開始される。以後、同様動作が繰り返されることで、第1到達タイミングAR1と第2到達タイミングAR2とによって信号レベルが反転するクロック信号が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したマルチバイブレーション型発振回路が生成するクロック信号の周波数f(=1/T)は、(1)式で算出される。但し、Tは、クロック信号の周期、Cは、第1コンデンサ及び第2コンデンサの容量、Iは定電流源が供給する一定の充電電流、Vrefは、設定された基準電圧である。そして、Rを抵抗値として、一定の充電電流Iを、(2)式で表されるように設定することで、クロック信号の周波数fは、(3)式に示すように、理論上、RCのみで決定することができる。
【0006】
【0007】
しかしながら、現実的には、クロック信号の信号レベルが変化するタイミングは、第1到達タイミングAR1及び第2到達タイミングAR2とは一致せず、
図3の下段に示すように、第1到達タイミングAR1及び第2到達タイミングAR2から信号生成回路での動作遅延ΔTだけ遅延する。これに応じてクロック信号の反転時における第1コンデンサ及び第2コンデンサの充電電圧V1,V2もΔVだけ大きくなる。つまり、現実的なクロック信号の周波数fは、(1)式におけるVrefをVref+ΔVに置き換えた(4)式で表される。この(4)式に、(2)式に示す一定の充電電流Iを代入すると、(5)式が得られる。つまり、クロック信号の周波数fは、CRのみで決定されず、動作遅延ΔTの影響を受けることがわかる。
【0008】
【0009】
遅延時間ΔTは、温度や電源電圧の変動によって変化し、遅延時間ΔTに応じて電圧変動量ΔVも変化する。つまり、従来技術では、温度や電源電圧の変動に応じてクロック信号の周波数fが変動してしまうという課題があった。
【0010】
なお、特許文献1には、定電流回路の代わりに可変電流回路を使用し、クロック信号の周期を検出して、クロック周期に応じた制御信号を生成し、クロック周期が一定となるように、可変電流回路が生成する充電電流をフィードバック制御することも記載されている。しかしながら、クロック周期を検出し、クロック周期に応じた制御信号を生成するための回路を追加する必要があり、装置構成が複雑化するという課題があった。
【0011】
本開示は、マルチバイブレーション型発振回路の発振周波数を、簡易な構成で安定させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様は、発振回路であって、電流供給回路と、第1充電回路と、第2充電回路と、信号生成回路と、サンプリング回路と、を備える。電流供給回路は、基準電圧と抵抗値によって決まる充電電流を供給するように構成される。第1充電回路は、クロック信号が第1信号レベルのときに充電電流で第1コンデンサを充電し、クロック信号が第2信号レベルのときに第1コンデンサを放電するように構成される。第2充電回路は、クロック信号が第2信号レベルのときに充電電流で第2コンデンサを充電し、クロック信号が第1信号レベルのときに第2コンデンサを放電するように構成される。信号生成回路は、クロック信号を生成するように構成される。クロック信号は、第1コンデンサの充電電圧が予め設定された閾値に到達した第1到達タイミングに従って第2信号レベルに変化し、第2コンデンサの充電電圧が閾値に到達した第2到達タイミングに従って第1信号レベルに変化する。サンプリング回路は、第1サンプリング及び第2サンプリングのうち、少なくともいずれかを実行するように構成される。第1サンプリングでは、クロック信号が第1信号レベルから第2信号レベルに変化する第1クロックタイミングで、第1コンデンサの充電電圧である第1充電電圧をサンプリングする。第2サンプリングでは、クロック信号が第2信号レベルから第1信号レベルに変化する第2クロックタイミングで、第2コンデンサの充電電圧である第2充電電圧をサンプリングする。電流供給回路は、サンプリング回路によるサンプリング値を、基準電圧とするように構成される。
【0013】
このような構成によれば、発振回路の発振周波数を、簡易な構成で安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】マルチバイブレーション型発振回路の構成を示す回路図である。
【
図2】制御回路が生成する信号及びマルチバイブレーション型発振回路の全体的な動作を説明するタイミング図である。
【
図3】従来技術の問題点を説明するタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[1.構成]
図1に示すマルチバイブレーション型発振回路(以下、発振回路)1は、電流供給回路2と、第1充電回路3と、第2充電回路4と、信号生成回路5と、サンプリング回路6と、制御回路7とを備える。
【0016】
電流供給回路2は、第1FET21と、第2FET22と、演算増幅器23と、抵抗24とを備える。
第1FET21及び第2FET22は、いずれもPチャネル型のMOSFETであり、ソースが電源線に接続され、ゲートが互いに接続される。第1FET21のドレインは、抵抗24を介して接地され、第2FET22のドレインは、第1充電回路3及び第2充電回路4に接続される。以下では、抵抗24の抵抗値をRとする。
【0017】
演算増幅器23は、非反転入力端子が、第1FET21のドレインに接続され、反転入力端子がサンプリング回路6に接続され、出力端子が第1FET21及び第2FET22のゲートに接続される。
【0018】
ここで、演算増幅器23の反転入力端子に印加される電圧、すなわち、サンプリング回路6の出力電圧を基準電圧VRとし、演算増幅器23の非反転入力端子に印加される電圧をフィードバック電圧VFBとする。演算増幅器23は、フィードバック電圧VFBが、基準電圧VRと一致するように、すなわち、第1FET21のドレイン電流Iが、I=VR/Rとなるように、第1FET21及び第2FET22を駆動する。第1FET21と共にカレントミラー回路を形成する第2FET22からは、第1FET21のドレイン電流Iと同じ大きさの充電電流Iが、第1充電回路3及び第2充電回路4に供給される。
【0019】
第1充電回路3は、第1コンデンサ31と、第1充電スイッチ32と、第1放電スイッチ33とを備える。
第1コンデンサ31の一端は接地される。第1コンデンサ31の非接地端は、第1充電スイッチ32を介して電流供給回路2の第2FET22のドレインに接続されると共に、第1放電スイッチ33を介して接地される。第1コンデンサ31は、第1充電スイッチ32がオン、かつ第1放電スイッチ33がオフである間、電流供給回路2から供給される充電電流Iによって充電される。第1コンデンサ31は、第1放電スイッチ33がオンである間、充電電荷が放電される。なお、第1充電スイッチ32は、第1クロック信号CK_Pによって操作され、第1放電スイッチ33は、第1放電信号DC_Pによって操作される。
【0020】
第2充電回路4は、第2コンデンサ41と、第2充電スイッチ42と、第2放電スイッチ43とを備え、それぞれが、第1コンデンサ31、第1充電スイッチ32、及び第1放電スイッチ33と同様に動作する。但し、第2充電スイッチ42は、第2クロック信号CK_Nによって操作され、第2放電スイッチ43は、第2放電信号DC_Nによって操作される。
【0021】
信号生成回路5は、比較回路51,52と、クロック生成回路53と、バッファ回路54,55とを備える。
比較回路51は、第1コンデンサ31の非接地端の電圧である第1充電電圧CPと、閾値電圧Vrefとを比較し、CP>Vrefであればローレベルとなり、CP≦Vrefであればハイレベルとなる第1判定信号CM_Pを出力するインバータ回路である。
【0022】
比較回路52は、第2コンデンサ41の非接地端の電圧である第2充電電圧CNと、閾値電圧Vrefとを比較し、CN>Vrefであればローレベルとなり、CN≦Vrefであればハイレベルとなる第2判定信号CM_Nを出力するインバータ回路である。
【0023】
なお、比較回路51,52は、必ずしもインバータ回路である必要はなく、例えば、コンパレータであってもよい。
クロック生成回路53は、2つのNAND回路と、2つのインバータ回路とを組み合わせた公知のSRフリップフロップ回路である。クロック生成回路53は、第1判定信号CM_P及び第2判定信号CM_Nに従って、第1クロック信号CK_P及び第2クロック信号CK_Nを生成する。
【0024】
図2に示すように、第1判定信号CM_Pがハイレベルからローレベルに変化するタイミングを第1到達タイミングAR1とし、第2判定信号CM_Nがハイレベルからローベルに変化するタイミングを第2到達タイミングAR2とする。第1クロック信号CK_Pは、第1到達タイミングAR1に従ってハイレベルからローレベルに変化し、第2到達タイミングAR2に従って、ローレベルからハイレベルに変化する。第2クロック信号CK_Nは、第1クロック信号CK_Pとは反対に、第2到達タイミングAR2に従ってハイレベルからローレベルに変化し、第1到達タイミングAR1に従って、ローレベルからハイレベルに変化する。
【0025】
なお、第1クロック信号CK_P及び第2クロック信号CK_Nは、クロック生成回路53での動作遅延ΔTだけ、第1到達タイミングAR1及び第2到達タイミングAR2から遅延したタイミングで、信号レベルが反転する。
【0026】
バッファ回路54,55は、第1クロック信号CK_P及び第2クロック信号CK_Nによる電流駆動能力を向上させるために設けられたインバータ回路である。バッファ回路54,55は、例えばソースフォロア回路等によって構成されてもよい。
【0027】
サンプリング回路6は、保持コンデンサ61と、第1サンプリングスイッチ62と、第2サンプリングスイッチ63とを備える。保持コンデンサ61の一端は接地される。保持コンデンサ61の非接地端は、第1サンプリングスイッチ62を介して第1コンデンサ31の非接地端に接続されると共に、第2サンプリングスイッチ63を介して第2コンデンサ41の非接地端に接続される。また、保持コンデンサ61の非接地端は、演算増幅器23の反転入力端子に接続される。
【0028】
第1サンプリングスイッチ62は、第1サンプリング信号SP_Pによって操作され、第2サンプリングスイッチ63は、第2サンプリング信号SP_Nによって操作される。
第1サンプリングスイッチ62がオンすると、保持コンデンサ61と第1コンデンサ31とが並列接続され、保持コンデンサ61に第1充電電圧CPのサンプリング値が保持される。また、第2サンプリングスイッチ63がオンすると、保持コンデンサ61と第2コンデンサ41とが並列接続され、保持コンデンサ61に第2充電電圧CNのサンプリング値が保持される。この保持コンデンサ61に保持されたサンプリング値が、基準電圧VRとして、電流供給回路2に供給される。
【0029】
制御回路7は、第1及び第2判定信号CM_P,CM_N、並びに、第1及び第2クロック信号CK_P,CK_Nに従って、第1及び第2放電信号DC_P,DC_N、並びに、第1及び第2サンプリング信号SP_P,SP_Nを生成する。
【0030】
[2.動作]
制御回路7にて生成される各信号のタイミング、及び発信回路の全体動作を、
図2のタイミング図を用いて説明する。制御回路7は、論理回路によって構成されてもよい。
【0031】
第1クロック信号CK_P、第1判定信号CM_P、第1放電信号DC_P、第1サンプリング信号SP_P、及び第1充電電圧CPの波形と、第2クロック信号CK_N、第2判定信号CM_N、第2放電信号DC_N、第2サンプリング信号SP_N、及び第2充電電圧CNの波形は、それぞれが同様であり、かつ、第1クロック信号CK_P及び第2クロック信号CK_Nの半周期分だけずれたタイミングを有する。以下、第1クロック信号CK_P及び第2クロック信号CK_Nを総称する場合は、単にクロック信号という。
【0032】
第1クロック信号CK_Pと第2クロック信号CK_Nとは、相補的な信号レベルを有するため、第1充電スイッチ32及び第2充電スイッチ42は、常にいずれか一方がオン、いずれか他方がオフとなる。これにより、充電電流Iの供給先は、クロックの半周期毎に、第1充電回路3と第2充電回路4との間で交互に入れ替わる。
【0033】
以下では、第1到達タイミングAR1に従って、クロック信号の信号レベルが変化するタイミングを第1クロックタイミングTM1、第2到達タイミングAR2に従って、クロック信号の信号レベルが変化するタイミングを第2クロックタイミングTM2という。
【0034】
図2に示すように、第1クロック信号CK_Pがハイレベルにあり、第1充電スイッチ32がオンしている期間では、第1コンデンサ31が充電電流Iによって充電され、第1充電電圧CPが一定の割合で増大する。第1充電電圧CPが比較回路51の閾値Vrefを超えると、第1判定信号CM_Pがハイレベルからローレベルに変化する。このタイミングが第1到達タイミングAR1である。第1到達タイミングAR1からクロック生成回路53での遅延時間ΔTだけ遅れたタイミングで、第1クロック信号CK_Pがハイレベルからローレベルに変化する。このタイミングが第1クロックタイミングTM1である。
【0035】
第1充電回路3は、第1到達タイミングAR1から、第1クロックタイミングTM1の間は、充電電流Iによる第1コンデンサ31への充電が継続されるため、第1充電電圧CPは増加し続ける。第1クロックタイミングTM1以降は、第1クロック信号CK_Pがローレベルとなり、第1充電スイッチ32を介した第1コンデンサ31への充電電流Iの供給が途絶える。従って、第1充電電圧CPは、第1クロックタイミングTM1での電圧レベルに保持される。
【0036】
制御回路7は、第1クロックタイミングTM1にて、第1サンプリング信号SP_Pをローレベルからハイレベルに変化させ、第1サンプリングスイッチ62を介して保持コンデンサ61を第1充電電圧CPまで充電する。制御回路7は、保持コンデンサ61の充電に必要な待機期間だけ、第1サンプリング信号SP_Pのハイレベルを保持し、待機期間の経過後に、第1サンプリング信号SP_Pをローレベルに変化させる。これにより、保持コンデンサ61には、第1コンデンサ31への充電電流Iの供給が停止した第1クロックタイミングTM1での第1充電電圧CPが保持される。また、保持コンデンサ61に保持された電圧が、基準電圧VRとして電流供給回路2に供給される。つまり、電流供給回路2が供給する充電電流Iの大きさは、保持コンデンサ61に保持される基準電圧VRによって、適宜、補正されることになる。
【0037】
更に、制御回路7は、第1サンプリング信号SP_Pをローレベルに戻した後、第1放電信号DC_Pを、ローレベルからハイレベルに変化させる。すると、第1コンデンサ31の充電電荷は、第1放電スイッチ33を介して放電されるため、第1充電電圧CPは、0V(接地電位)となる。この第1充電電圧CPの変化に従って、比較回路51の出力である第1判定信号CM_Pが、ローレベルからハイレベルに変化する。
【0038】
その後、制御回路7は、第2クロックタイミングTM2にて、第1放電信号DC_Pをハイレベルからローレベルに変化させる。
第2クロックタイミングTM2の後は、第1充電スイッチ32がオンするため、上述した動作が繰り返される。
【0039】
なお、第2クロック信号CK_Nがハイレベル(すなわち、第1クロック信号CK_Pがローレベル)にあり、第2充電スイッチ42がオンしている期間では、第2コンデンサ41が充電電流Iによって充電され、第2充電電圧CNが一定の割合で増大する。
【0040】
以下、第1コンデンサ31が充電電流Iによって充電される時と同様の動作が、クロック信号の半周期遅れで実行される。但し、この場合、上述の説明において、第1クロック信号CK_P、第1判定信号CM_P、第1放電信号DC_P、第1サンプリング信号SP_P、第1充電電圧CP、第1コンデンサ31、第1充電スイッチ32、第1放電スイッチ33、比較回路51、及び第1サンプリングスイッチ62は、それぞれ、第2クロック信号CK_N、第2判定信号CM_N、第2放電信号DC_N、第2サンプリング信号SP_N、第2充電電圧CN、第2コンデンサ41、第2充電スイッチ42、第2放電スイッチ43、比較回路52、及び第2サンプリングスイッチ63に置き換えられるものとする。
【0041】
[3.クロック信号の周波数]
発振回路1では、保持コンデンサ61に保持される基準電圧VRは、(6)式で表される。なお、Vrefは、比較回路51,52の閾値電圧であり、ΔVは、クロック生成回路53での動作遅延ΔTによって生じる、第1充電電圧CP又は第2充電電圧CNの電圧変動量ΔVである。
【0042】
【0043】
発振回路1では、充電電流IがI=R/Vrefに固定されている従来装置とは異なり、(7)式で示すように、保持コンデンサ61に保持された基準電圧VRに応じて決まる。
【0044】
【0045】
従って、発振回路1におけるクロック信号の周波数(以下、発振周波数)fは、信号生成回路5での動作遅延ΔTが考慮された(4)式に、(7)式で表される充電電流Iを代入することで算出される。つまり、発振周波数fは、(3)式によって表される。
【0046】
[4.用語の対応]
本実施形態において、第1クロック信号CK_P又は第2クロック信号CK_Nが本開示におけるクロック信号に相当する。第1クロック信号CK_Pのハイレベル又は第2クロック信号CK_Nのローレベルが、本開示における第1信号レベルに相当し、第1クロック信号CK_Pのローレベル又は第2クロック信号CK_Nのハイレベルが、本開示における第2信号レベルに相当する。
【0047】
[5.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
発振回路1は、第1クロックタイミングTM1にて第1コンデンサ31の充電電圧CPをサンプリングし、第2クロックタイミングTM2にて第2コンデンサ41の充電電圧CNをサンプリングする構成を新たに備える。そして、サンプリングした電圧に従って、第1コンデンサ31及び第2コンデンサ41を充電する充電電流Iを生成する。これにより、発振回路1では、発振周波数fが、抵抗24の抵抗値R、及び第1コンデンサ31及び第2コンデンサ41の容量Cのみで決定される。つまり、発振回路1によれば、発振周波数fが、動作遅延ΔTに基づく電圧変動量ΔVの影響を受けないため、温度や電源電圧の変動によらず、発振周波数fを安定させることができ、その効果を簡易な構成によって実現することができる。
【0048】
[6.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0049】
(a)上記実施形態では、クロック生成回路53として、SRフリップフロップ回路を用いているが、これに限定されるものではない。第1判定信号CM_Pと第2判定信号CM_Nとに基づき、第1到達タイミングAR1及び第2到達タイミングAR2に信号レベルが反転するクロック信号を生成できる回路であれば、どのような構成でもよい。
【0050】
(b)上記実施形態では、サンプリング回路6は、第1充電電圧CP及び第2充電電圧CNをいずれもサンプリングするように構成されているが、いずれか一方だけをサンプリングするように構成されてもよい。
【0051】
(c)上記実施形態では、サンプリング回路6は、すべての第1クロックタイミングTM1及び第2クロックタイミングTM2にてサンプリングするように構成されているが、予め設定された条件が成立した場合のみサンプリングするように構成されてもよい。
【0052】
(d)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、同等の機能を有する他の構成に置換してもよい。
【0053】
(e)上述した発振回路1の他、当該発振回路1を構成要素とするシステム、周波数安定化方法などの形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1…発振回路、2…電流供給回路、3,4…充電回路、5…信号生成回路、6…サンプリング回路、7…制御回路、21,22…FET、23…演算増幅器、24…抵抗、31,41…コンデンサ、32,42…充電スイッチ、33,43放電スイッチ、51,52…比較回路、53…クロック生成回路、54,55…バッファ回路、61…保持コンデンサ、62,63…サンプリングスイッチ。
【要約】
【課題】マルチバイブレーション型発振回路の発振周波数を、簡易な構成で安定させる技術を提供する。
【解決手段】第1コンデンサ31及び第2コンデンサ41は、充電電流Iによって充電される。サンプリング回路6は、第1コンデンサ31への充電電流Iの供給が停止したときの第1充電電圧CPをサンプリングする。また、第2コンデンサ41への充電電流Iの供給が停止したときの第2充電電圧CNをサンプリングする。電流供給回路2は、サンプリング回路6にてサンプリングされた電圧である基準電圧VRに応じた充電電流Iを生成する。
【選択図】
図1