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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20250205BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20250205BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20250205BHJP
【FI】
B60R21/231
B60R21/207
B60N2/42
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023516440
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(86)【国際出願番号】 JP2022017362
(87)【国際公開番号】W WO2022224844
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2021070754
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】桜井 努
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09994181(US,B1)
【文献】特開2005-119510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0152422(US,A1)
【文献】米国特許第10300878(US,B2)
【文献】米国特許第10336283(US,B2)
【文献】特開2021-049898(JP,A)
【文献】国際公開第2019/193987(WO,A1)
【文献】米国特許第05730464(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータと、車両用シートのシートバックの側部に設けられ、該インフレータから供給されるガスを利用して前記車両用シートの乗員の側方へ膨張展開する袋状のクッションとを備えるサイドエアバッグ装置であって、
前記クッションは、
少なくとも3辺を有する第1部位であって、膨張展開可能な第1チャンバを含む第1部位と、
少なくとも3辺を有し前記第1部位に隣接する第2部位であって、膨張展開可能な第2チャンバを含む第2部位と、
少なくとも3辺を有する非膨張の第3部位であって、前記第1部位および第2部位に隣接する第3部位とを含み、
膨張展開した状態の前記クッションは、前記第1チャンバが膨張展開した第1部位と、前記第2チャンバが膨張展開した前記第2部位と、非膨張の前記第3部位とによって囲まれ上下方向に延びた連続する空間を有する柱体状または錐体状になっていて、
前記クッションはさらに、前記第1部位と前記第2部位の間に形成され、前記第1チャンバと前記第2チャンバの間でガスを流通させる1つ以上のダクトを有し、
前記第1部位の第1チャンバは、前記インフレータからのガスを導入するガス導入口を有し、
前記インフレータは、前記車両用シートのシートバック内に配置されたシートフレームに設置され、前記ガス導入口を通して前記第1チャンバの内部に挿入されていることを特徴とするサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記空間は、上下の少なくとも一方が開口していることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1部位、前記第2部位および前記第3部位はいずれも4辺を有し、
前記クッションは、膨張展開した状態で三角柱を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項4】
前記空間は、上下の両方が開口していることを特徴とする請求項1または3に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項5】
前記第3部位は、前記クッションが膨張展開した状態で前記車両用シートに着座する乗員側に面することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項6】
前記第1部位と前記第3部位の境界が、前記車両用シートのシートバックの側部に固定されていて、
前記第1部位は、前記クッションが膨張展開した状態で前記車両用シートに隣接する他の車両用シートに面することを特徴とする請求項5に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項7】
前記1つ以上のダクトは、前記第1部位と前記第2部位の間のうち上部に設けられた上ダクトと、下部に設けられた下ダクトとを含むことを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項8】
前記1つ以上のダクトは、前記第1部位と前記第2部位の間のうち上下方向の中間部に設けられた中間ダクトをさらに含むことを特徴とする請求項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項9】
前記第1部位は、前記第1チャンバに隣接する第1非膨張部を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【請求項10】
前記第2部位は、前記第2チャンバに隣接する第2非膨張部を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側突時などに、車両用シートの乗員の側方へ膨張展開する袋状のクッションを備えたサイドエアバッグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の車両にはエアバッグ装置がほぼ標準装備されている。エアバッグ装置は、車両衝突などの緊急時に作動する安全装置であって、ガス圧でクッションを膨張展開させて乗員を受け止めて保護する。一例としてサイドエアバッグ装置は、車両の側突時などに、車両用シートの乗員の側方へ膨張展開する袋状のクッションを備えている。
【0003】
通常、車両に横方向からの衝撃が加わった場合、乗員は、車幅方向に移動する。例えば、助手席側のサイドドアに他の車両や電柱などの物体(衝突物)が衝突する側突が生じた場合、乗員を保護するサイドエアバッグは2種類に大別される。1つ目はいわゆるニアサイドエアバッグである。ニアサイドエアバッグは、助手席とサイドドアとの間で膨張展開し、衝突物接触側の乗員(ニアサイド側乗員;この場合は助手席側乗員)がサイドドアに衝突するのを防ぐ。2つ目はいわゆるファーサイドエアバッグ(例えば特許文献1)である。ファーサイドエアバッグは、運転席と助手席との間で膨張展開し、横方向からの衝撃によって車両中央に移動する乗員(ファーサイド側乗員;この場合は運転席側乗員)を保護する。
【0004】
特許文献1には、車両の隣り合う2つのシートの各々のシートバックに、中央エアバッグとリテーナとを収容したエアバッグ装置が記載されている。両方の中央エアバッグは、膨張展開の際、車幅方向内側から乗員を拘束する。またリテーナは、シートバックに収容されることで、対応する中央エアバッグを車両内側方向に傾斜させて膨張展開させる。
【0005】
特許文献1では、車両の側面衝突の際、隣り合う2つのシートそれぞれに収容された中央エアバッグが、両シート間で、それぞれ膨張展開し、互いに当接した状態で係止するので、車幅方向内側への乗員の移動を効果的に規制できる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-296642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のエアバッグ装置では、車両の隣り合う2つのシートそれぞれに、中央エアバッグを収容するだけでなく、中央エアバッグを車両内側方向に傾斜させて膨張展開させるためにリテーナも収容する必要がある。このため、特許文献1では、部品点数が増えて取付け作業も手間となる。さらに、2つの中央エアバッグを膨張展開させるため、膨張展開に必要なガス量も多くなってしまう。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、膨張展開に必要なガス量を少なくして迅速に膨張展開しつつ、乗員の保護性能も向上させることができるサイドエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかるサイドエアバッグ装置の代表的な構成は、インフレータと、車両用シートのシートバックの側部に設けられ、インフレータから供給されるガスを利用して車両用シートの乗員の側方へ膨張展開する袋状のクッションとを備えるサイドエアバッグ装置において、クッションは、少なくとも3辺を有する第1部位であって、膨張展開可能な第1チャンバを含む第1部位と、少なくとも3辺を有し第1部位に隣接する第2部位であって、膨張展開可能な第2チャンバを含む第2部位と、少なくとも3辺を有する非膨張の第3部位であって、第1部位および第2部位に隣接する第3部位とを含み、膨張展開した状態のクッションは、第1チャンバが膨張展開した第1部位と、第2チャンバが膨張展開した第2部位と、非膨張の第3部位とによって囲まれ上下方向に延びた連続する空間を有する柱体状または錐体状になっていることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、クッションは、膨張展開した状態で第1部位、第2部位および第3部位のうち、第1部位の第1チャンバおよび第2部位の第2チャンバのみが膨張展開する。また、第3部位は、第1チャンバを含む第1部位と、第2チャンバを含む第2部位とをつないでいるので、第1チャンバおよび第2チャンバが膨張展開すると第1部位および第2部位からそれぞれ引っ張られる。
【0011】
そして膨張展開した状態のクッションは、上下方向に延びた連続する空間を囲むように第1部位、第2部位および第3部位が張った状態で配置され、さらに全体として柱体状または錐体状になる。したがってクッションは、第1部位、第2部位および第3部位に加え、空間を含めた全体で乗員を受け止めて保護することができる。
【0012】
また、クッションは、第1部位の第1チャンバおよび第2部位の第2チャンバのみが膨張展開するので、膨張展開に必要なガス量を少なくできる。このため、クッションは、より迅速に膨張展開することができるため、乗員の保護性能を向上させることができる。
【0013】
さらに、クッションは、膨張展開した状態で上下方向から見て第1部位、第2部位および第3部位からなる三角形を成すため、乗員を受け止める際に倒れ難くなる。そしてクッションでは、乗員を受け止める際、第1部位、第2部位および第3部位の少なくとも1つの部位が反力面を形成することができるため、乗員を支えて拘束する力をより向上させることができる。
【0014】
上記の空間は、上下の少なくとも一方が開口しているとよい。これにより、クッションは、膨張展開した状態で第1部位、第2部位および第3部位に加え、上下の少なくとも一方が開口している空間を含めた全体で乗員を受け止めて保護することができる。
【0015】
上記の第1部位、第2部位および第3部位はいずれも4辺を有し、クッションは、膨張展開した状態で三角柱を形成するとよい。このように膨張展開した状態のクッションが三角柱になるので、乗員を受け止める際に倒れ難くなり、乗員を確実に拘束して保護することができる。
【0016】
上記の空間は、上下の両方が開口しているとよい。これにより、クッションは、膨張展開した状態で第1部位、第2部位および第3部位に加え、上下の両方が開口している空間を含めた全体で乗員を受け止めて保護することができる。
【0017】
上記の第3部位は、クッションが膨張展開した状態で車両用シートに着座する乗員側に面するとよい。これにより、膨張展開した状態のクッションでは、乗員が第3部位で受け止められる。そしてクッションでは、第3部位に受け止められた乗員がさらに空間に進入しようとしても、第1チャンバおよび第2チャンバが膨張展開しているため、第1部位および第2部位が第3部位に張力を与えている。したがってクッションは、膨張展開した状態で第3部位の反力によって乗員の移動を抑制することができる。
【0018】
上記の第1部位と第3部位の境界が、車両用シートのシートバックの側部に固定されていて、第1部位は、クッションが膨張展開した状態で車両用シートに隣接する他の車両用シートに面するとよい。
【0019】
これにより、膨張展開した状態のクッションでは、第3部位で受け止められた乗員がさらに空間に進入しようとした場合、車両用シート(運転席)のシートバックの側部に固定された第1部位と第3部位の境界を軸として回転する。そして第1部位は、他の車両用シート(助手席)または他の車両用シートに着座した乗員に接触する。このため、クッションでは、第1部位も反力面となり、車両用シートに着座した乗員の移動をさらに抑制することができる。さらに第1部位は、他の車両用シートに乗員が着座していた場合、この乗員の移動も抑制することができる。
【0020】
上記のクッションはさらに、第1部位と第2部位の間に形成され、第1チャンバと第2チャンバの間でガスを流通させる1つ以上のダクトを有し、第1部位の第1チャンバは、インフレータからのガスを導入するガス導入口を有し、インフレータは、車両用シートのシートバック内に配置されたシートフレームに設置され、ガス導入口を通して第1チャンバの内部に挿入されているとよい。
【0021】
これにより、クッションの膨張展開時にインフレータからのガスが第1部位の第1チャンバにガス導入口を通して供給され、第1チャンバが確実に膨張展開することができる。さらに、第1部位の第1チャンバと第2部位の第2チャンバの間は、ダクトを通してガスが流通するので、第2チャンバも確実に膨張展開させることができる。
【0022】
上記の1つ以上のダクトは、第1部位と第2部位の間のうち上部に設けられた上ダクトと、下部に設けられた下ダクトとを含むとよい。これにより、クッションは、膨張展開時に第1部位と第2部位の間のうち上ダクトおよび下ダクトを通して、第1チャンバおよび第2チャンバにガスが流通する。このためクッションは、第1部位および第2部位の形状を保持しつつ、第1チャンバおよび第2チャンバを確実に膨張展開させることができる。
【0023】
上記の1つ以上のダクトは、第1部位と第2部位の間のうち上下方向の中間部に設けられた中間ダクトをさらに含むとよい。これにより、クッションは、膨張展開時に第1部位と第2部位の間のうち上ダクトおよび下ダクトに加え中間ダクトを通して、第1チャンバおよび第2チャンバにガスが流通する。このためクッションは、第1部位および第2部位の形状をより確実に保持しつつ、第1チャンバおよび第2チャンバをより確実に膨張展開させることができる。
【0024】
上記の第1部位は、第1チャンバに隣接する第1非膨張部を含むとよい。このように、第1部位は、第1非膨張部を含むため、第1チャンバを膨張展開させるために必要なガス量をより少なくできる。このため、クッションをより迅速に膨張展開させることができる。
【0025】
上記の第2部位は、第2チャンバに隣接する第2非膨張部を含むとよい。このように、第2部位は、第2非膨張部を含むため、第2チャンバを膨張展開させるために必要なガス量をより少なくできる。このため、クッションをより迅速に膨張展開させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、膨張展開に必要なガス量を少なくして迅速に膨張展開しつつ、乗員の保護性能も向上させることができるサイドエアバッグ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態におけるサイドエアバッグ装置の概要を例示する図である。
図2図1(b)のクッションを他の方向から見た状態を例示する図である。
図3図1(b)の車両用シートに乗員が着座しているときのサイドエアバッグ装置を車両前側から見た状態を例示する図である。
図4図3のサイドエアバッグ装置を車両上側から見下ろした状態を例示する図である。
図5図1(b)のクッションの縫製過程を例示した図である。
図6図1(b)のクッションの変形例を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態におけるサイドエアバッグ装置100の概要を例示する図である。図1(a)は、車両102内の一部を示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)のサイドエアバッグ装置100を車両用シート104とともに示す図である。
【0030】
本実施形態においては、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向を前方、その反対方向を後方と称する。また乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を右方向、乗員の左側を左方向と称する。更に、乗員が正規の姿勢で着座した際に、乗員の頭部方向を上方、乗員の腰部方向を下方と称する。そして、以下の説明において用いる図面では、必要に応じて、上述した乗員を基準とした前後左右上下方向を、Front、Back、Left、Right、Up、Downと示す。
【0031】
サイドエアバッグ装置100は、図1(a)に点線で示すように、車両用シート104のシートバック106の車両中央側の側部に埋設されている。車両用シート104は、車両102内の右側前部座席(例えば、運転席)であり、シートバック106に加え、乗員が着座するシートクッション108を有する。
【0032】
車両102には、車両用シート104に隣接する車両用シート110が配置されている。車両用シート110は、左側前部座席(例えば、助手席)であり、シートバック112およびシートクッション114を有している。また、車両用シート110の車両外側には、サイドドア116が位置している。さらに車両用シート104、110の間には、センターコンソール118が配置されている。なお上記サイドエアバッグ装置100は、車両用シート110の車両中央側の側面に埋設してもよい。
【0033】
サイドエアバッグ装置100は、図1(b)に示すように、膨張展開する袋状のクッション120と図中点線で示すインフレータ122とを備える。クッション120は、ガス発生装置であるインフレータ122(図2(a)参照)から供給されるガスを利用して、車両用シート104の乗員124(図3参照)の側方へ膨張展開する。
【0034】
図1(b)は、図1(a)の車両用シート104のシートバック106のうち、表皮やシートパッド(例えばウレタン材)を省略してシートバックフレーム126のみを例示している。シートバックフレーム126は、シートバック106の骨格となる部材であって、上部フレーム128とサイドフレーム130とを含む。上部フレーム128は、シートバック106の上縁に沿ってシートバック106に内蔵されている。またサイドフレーム130は、シートバック106の側面に沿ってシートバック106に内蔵されている。
【0035】
図2は、図1(b)のクッション120を他の方向から見た状態を例示する図である。図2(a)は、図1(b)のA矢視図であり、クッション120、インフレータ122およびサイドフレーム130を例示している。図2(b)は、図1(b)のB矢視図であり、クッション120およびサイドフレーム130のみを例示している。
【0036】
クッション120は、第1部位132と、第2部位134(図1(b)参照)と、第3部位136とを有する。第1部位132は、図2に示すように4辺を有する長方形の部位であって、膨張展開可能な第1チャンバ138を含む。第1チャンバ138は、図2(a)に示すインフレータ122からのガスを導入するガス導入口140を有する。
【0037】
インフレータ122は、シリンダ型(筒型)であって、その一部がガス導入口140を通して第1チャンバ138の内部に挿入されている。また、インフレータ122は、本体142から突出したスタッドボルト144、146により、車両用シート104のシートバック106内に配置されたサイドフレーム130の車幅方向中央側に設置されている。
【0038】
さらに第1部位132は、第1非膨張部148を含む。第1非膨張部148は、図2(b)に示すように第1部位132の例えば中央に位置するシーム部であって、その周囲に第1チャンバ138が隣接している。このように第1部位132では、第1非膨張部148を含むため、第1チャンバ138を膨張展開させるために必要なガス量を少なくできる。
【0039】
第2部位134は、図1(b)に示すように4辺を有する長方形の部位であって、さらに第1部位132に隣接している(図4参照)。また、第2部位134は、膨張展開可能な第2チャンバ150と、第2非膨張部152を含む。
【0040】
第2非膨張部152は、図1(b)に示すように第2部位134の例えば中央に位置するシーム部であって、その周囲に第2チャンバ150が隣接している。このように第2部位134では、第2非膨張部152を含むため、第2チャンバ150を膨張展開させるために必要なガス量を少なくできる。
【0041】
第3部位136は、非膨張の部位であって、図2(a)に示すように4辺を有する長方形を形成していて、第1部位132および第2部位134に隣接している(図4参照)。
【0042】
クッション120はさらに、図2(b)に示すように第3非膨張部154と第4非膨張部156を含む。第3非膨張部154と第4非膨張部156は、シーム部であって、第1部位132と第2部位134の間に上下に離間して形成されている。
【0043】
クッション120では、上下に離間した第3非膨張部154と第4非膨張部156により、第1部位132と第2部位134の間で上ダクト158、下ダクト160および中間ダクト162が形成されている。上ダクト158、下ダクト160および中間ダクト162は、第1チャンバ138と第2チャンバ150の間でガスを流通させる。
【0044】
上ダクト158は、第1部位132と第2部位134の間のうち上部すなわち第3非膨張部154よりも上側に設けられている。下ダクト160は、第1部位132と第2部位134の間のうち下部すなわち第4非膨張部156よりも下側に設けられている。中間ダクト162は、第1部位132と第2部位134の間のうち中間部すなわち第3非膨張部154と第4非膨張部156の間に設けられている。
【0045】
このため、クッション120の膨張展開時にインフレータ122からのガスが第1部位132の第1チャンバ138にガス導入口140を通して供給されるため、第1チャンバ138を確実に膨張展開させることができる。さらに第1チャンバ138が膨張展開して、上ダクト158、下ダクト160および中間ダクト162を通して、第2チャンバ150にガスが流通するので、第2チャンバ150も確実に膨張展開させることができる。このようにクッション120は、第1チャンバ138および第2チャンバ150を確実に膨張展開させて、膨張展開時に第1部位132および第2部位134の形状を確実に保持することができる。
【0046】
図3は、図1(b)の車両用シート104に乗員124が着座しているときのサイドエアバッグ装置100を車両前側から見た状態を例示する図である。図4は、図3のサイドエアバッグ装置100を車両上側から見下ろした状態を例示する図である。
【0047】
また図3では、側突に伴う横方向の衝撃(矢印C参照)を車両102が受け、乗員124が慣性によって車両中央側に向かう横方向の衝撃(矢印D参照)を受けて車両中央側に移動する状態を示している。つまり、側突に伴う乗員124の動線軸は、これら矢印C、Dで示される横方向(すなわち車幅方向)となる。
【0048】
サイドエアバッグ装置100は、図3に示すように、矢印Dで示される方向に移動した乗員124の例えば頭部164を、膨張展開したクッション120によって受け止める。
【0049】
膨張展開した状態のクッション120は、図4に示す上下の両方が開放あるいは開口された空間Eを有する柱体状(ここでは三角柱)になっている。この空間Eは、第1チャンバ138が膨張展開した第1部位132と、第2チャンバ150が膨張展開した第2部位134と、非膨張の第3部位136とによって囲まれている。なお空間Eは、上下方向に延びた連続する空間である。
【0050】
クッション120の第3部位136は、第1チャンバ138を含む第1部位132と、第2チャンバ150を含む第2部位134とをつないでいるので、第1チャンバ138および第2チャンバ150が膨張展開すると、第1部位132および第2部位134からそれぞれ引っ張られる。
【0051】
このため、膨張展開した状態のクッション120は、空間Eを囲むように第1部位132、第2部位134および第3部位136が張った状態で配置され、さらに全体として三角柱になる。したがってクッション120は、第1部位132、第2部位134および第3部位136に加え、空間Eを含めた全体で乗員124を受け止めて保護することができる。
【0052】
またクッション120は、膨張展開した状態で第1部位132、第2部位134および第3部位136のうち、第1部位132の第1チャンバ138および第2部位134の第2チャンバ150のみが膨張展開するので、膨張展開に必要なガス量を少なくできる。このため、クッション120は、より迅速に膨張展開することができるため、乗員124の保護性能を向上させることができる。
【0053】
さらにクッション120は、図4に示すように膨張展開した状態で上下方向から見て第1部位132、第2部位134および第3部位136からなる三角形を成し、さらに全体として三角柱になるので、乗員124を受け止める際に倒れ難くなり、乗員124を確実に拘束して保護することができる。
【0054】
ここでは図4に示す第3部位136が、クッション120の膨張展開した状態で車両用シート104に着座する乗員124側に面している。このため、膨張展開した状態のクッション120では、矢印Dの方向に移動した乗員124が第3部位136で受け止められる。そしてクッション120では、第3部位136に受け止められた乗員124がさらに移動して空間Eに進入しようとすると、第3部位136に矢印F、Gで示す張力が与えられる。
【0055】
これに対してクッション120では、第1チャンバ138および第2チャンバ150が膨張展開しているため、第1部位132および第2部位134にそれぞれ矢印H、Iに示す膨張力が発生する。さらにクッション120では、この膨張力に伴って第1部位132および第2部位134が、矢印F、Gで示した張力に抗する張力(矢印J、K参照)を第3部位136に与えることができる。したがってクッション120は、膨張展開した状態で第3部位136の反力によって乗員124の移動を抑制することができる。
【0056】
またクッション120は、図2(a)に示すように第1部位132と第3部位136の境界165が、車両用シート104のうちシートバック106の側部となるサイドフレーム130に固定されている。また、図4に示すように第1部位132は、クッション120が膨張展開した状態で車両用シート104に隣接する他の車両用シート110に面している。
【0057】
これにより、膨張展開した状態のクッション120では、第3部位136で受け止められた乗員124がさらに空間Eに進入しようとしても、車両用シート104のサイドフレーム130に固定された第1部位132と第3部位136の境界165を軸として、図4の矢印Lに示す方向に回転する。続いて第1部位132は、他の車両用シート110または他の車両用シート110に着座した図中点線で示す乗員166に接触する。
【0058】
したがってクッション120では、第1部位132も反力面となり、車両用シート104に着座した乗員124の移動をさらに抑制することができる。このように、クッション120では、乗員124を受け止める際、第1部位132および第3部位136が反力面を形成することができるため、乗員124を支えて拘束する力をより向上させることができる。さらにクッション120は、他の車両用シート110に乗員166が着座していた場合、この乗員166の移動も第1部位132によって抑制することができる。
【0059】
図5は、図1(b)のクッション120の縫製過程を例示した図である。クッション120は、図5(a)に示す第1基布168と第2基布170を縫製したり折り重ねたりすることによって形成される。
【0060】
具体的には、図5(a)に示す第1基布168を矢印Mに示すように第2基布170に重ねる。第2基布170は、その一部が第1基布168と対称の形状を有し、さらに第3部位136を有する。
【0061】
図5(b)に示すように第1基布168を第2基布170の上に重ねた状態で、図5(c)の縫製ライン172、174に示すように外周縫製を行う。また、図5(c)の縫製ライン176、178に示すように、図5(b)の第1非膨張部148、第2非膨張部152を縫製する。さらに、図5(c)の縫製ライン180に示すように、図5(b)の第3非膨張部154、第4非膨張部156を縫製する。
【0062】
続いて、図5(c)の矢印Nに示すように第2基布170の一端部182を、縫製ライン172よりも外側の他端部184に重ねるように、第2基布170を、第1基布168および第2基布170に折り重ねる。そして図5(d)の縫製ライン186に示すように、第1基布168と、一端部182と他端部184が重なった状態の第2基布170とを重ねて縫製する。
【0063】
このような縫製過程により、第1チャンバ138を含む第1部位132と、第2チャンバ150を含み第1部位132に隣接する第2部位134と、第1部位132および第2部位134に隣接する非膨張の第3部位136とを有し、膨張展開時に三角柱を成す上記のクッション120を形成することができる。
【0064】
図6は、図1(b)のクッション120の変形例を例示する図である。変形例のクッション120Aは、膨張展開時に錐体状(逆三角錐)になる点で上記のクッション120と異なる。
【0065】
クッション120Aは、第1部位132A、第2部位134Aおよび第3部位136Aを含む。第1部位132Aは、図6(a)に示す3辺を有する逆三角形の部位であって、膨張展開する第1チャンバ138Aを有する。第2部位134Aは、図6(b)および図6(c)に示す3辺を有する逆三角形の部位であって、膨張展開する第2チャンバ150Aを有する。第3部位136Aは、図6(b)に示す3辺を有する逆三角形の非膨張の部位である。
【0066】
また、第1部位132A、第2部位134Aはそれぞれ、第1非膨張部148A、第2非膨張部152Aを含む。さらにクッション120Aでは、上下に離間した第3非膨張部154Aと第4非膨張部156Aにより、第1部位132Aと第2部位134Aの間で上ダクト158A、下ダクト160Aおよび中間ダクト162Aが形成されている。
【0067】
これにより、クッション120Aでは、インフレータ122(図2(a)参照)からのガスが第1部位132Aの第1チャンバ138Aにガス導入口140を通して供給されるため、第1チャンバ138Aが確実に膨張展開する。さらにクッション120Aでは、上ダクト158A、下ダクト160Aおよび中間ダクト162Aを通して、第1チャンバ138Aと第2チャンバ150Aの間でガスが流通するので、第2チャンバ150Aも確実に膨張展開させることができる。
【0068】
膨張展開した状態のクッション120Aは、図6(d)に示すように第1チャンバ138Aが膨張展開した第1部位132Aと、第2チャンバ150Aが膨張展開した第2部位134Aと、非膨張の第3部位136Aとによって囲まれていて、上下のうち上方のみが開放あるいは開口された空間Oを有する。なお空間Oは、上下方向に延びた連続する空間である。
【0069】
クッション120Aの第3部位136Aは、第1チャンバ138Aを含む第1部位132Aと、第2チャンバ150Aを含む第2部位134Aとをつないでいる。このため、第3部位136Aは、第1チャンバ138Aおよび第2チャンバ150Aが膨張展開すると、第1部位132Aおよび第2部位134Aからそれぞれ引っ張られる。
【0070】
これにより、膨張展開した状態のクッション120Aは、空間Oを囲むように第1部位132A、第2部位134Aおよび第3部位136Aが張った状態で配置され、さらに全体として逆三角錐になる。したがってクッション120Aは、第1部位132A、第2部位134Aおよび第3部位136Aに加え、空間Oを含めた全体で乗員124(図4参照)を受け止めて保護することができる。
【0071】
なおクッション120の空間Eは、上下方向に延びた連続する空間であって、上下の両方が開口されているとしたが、これに限られず、上下のうち上方のみをセールパネルなどで閉じたり、下方のみをセールパネルなどで閉じたり、さらには上下の両方をセールパネルなどで閉じたりようにしてもよい。
【0072】
またクッション120Aの空間Oは、上下方向に延びた連続する空間であって、上下のうち上方のみが開口されているとしたが、上方をセールパネルなどで閉じてもよい。このように、膨張展開した状態のクッションが、各部位によって囲まれ上下方向に延びた連続する空間を有することにより、各部位と空間を含めた全体で乗員を受けて止めて保護することができる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
また、上記実施形態においては本発明にかかるサイドエアバッグ装置100を自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、車両の側突時などに、車両用シートの乗員の側方へ膨張展開する袋状のクッションを備えたサイドエアバッグ装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
100…サイドエアバッグ装置、102…車両、104、110…車両用シート、106、112…シートバック、108、114…シートクッション、116…サイドドア、118…センターコンソール、120、120A…クッション、122…インフレータ、124、166…乗員、126…シートバックフレーム、128…上部フレーム、130…サイドフレーム、132、132A…第1部位、134、134A…第2部位、136、136A…第3部位、138、138A…第1チャンバ、140…ガス導入口、142…インフレータの本体、144、146…スタッドボルト、148、148A…第1非膨張部、150、150A…第2チャンバ、152、152A…第2非膨張部、154、154A…第3非膨張部、156、156A…第4非膨張部、158、158A…上ダクト、160、160A…下ダクト、162、162A…中間ダクト、164…乗員の頭部、165…第1部位と第3部位の境界、168…第1基布、170…第2基布、172、174、176、178、180、186…縫製ライン、182…第2基布の一端部、184…第2基布の他端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6