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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】油調用魚介類冷凍食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/00 20160101AFI20250205BHJP
   A23L 7/157 20160101ALI20250205BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20250205BHJP
   A23L 17/40 20160101ALN20250205BHJP
【FI】
A23L17/00 A
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L17/40 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024103287
(22)【出願日】2024-06-26
(65)【公開番号】P2025010501
(43)【公開日】2025-01-21
【審査請求日】2024-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2023112586
(32)【優先日】2023-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇根 雄太
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064520(JP,A)
【文献】特開2000-342210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加熱の魚介類と、
前記魚介類を被覆し、酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸及びソルビン酸から選択される少なくとも一種の有機酸並びに酢酸塩を合計で0.1~7.0質量%の量で含有する打ち粉と、
前記打ち粉で被覆された前記魚介類を被覆する衣と、を含有し、
前記衣が、酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸及びソルビン酸から選択される少なくとも一種の有機酸並びに酢酸塩を含むパン粉を有する、油調用魚介類冷凍食品。
【請求項2】
パン粉が前記酢酸塩を0.1~4.0質量%含有し、更に前記有機酸を0.01~0.5質量%含有する、請求項1に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項3】
前記衣がバッターを有し、当該バッターが、ワックス又は硬化油脂に被覆された酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸及びソルビン酸から選択される少なくとも一種の有機酸並びに酢酸塩を含有する、請求項1又は2に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項4】
前記衣が、前記有機酸並びに酢酸塩を合計で0.1~5.1質量%含有するバッターを含む、請求項1又は2に記載の油調用魚介類冷凍食品。
【請求項5】
未加熱の魚介類を酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸及びソルビン酸から選択される少なくとも一種の有機酸並びに酢酸塩量が合計で0.1~7.0質量%である打ち粉で被覆する工程と、
前記打ち粉で被覆された前記魚介類を、酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸及びソルビン酸から選択される少なくとも一種の有機酸並びに酢酸塩を含むパン粉を有する衣で被覆する工程と、を有する、油調用魚介類冷凍食品の製造方法。
【請求項6】
前記打ち粉で被覆する工程の前に、酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸及びソルビン酸から選択される少なくとも一種の有機酸並びに酢酸塩を合計で2~9質量%含有する浸漬液で未加熱の魚介類を浸漬する工程を有する、請求項5に記載の油調用魚介類冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油調用魚介類冷凍食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品の日持ちに関する要求はますます高まっており、これは揚げ物製品にも当てはまる。日持ち剤としては、酢酸ナトリウムやフマル酸等の有機酸や有機酸塩が広く使用される。揚げ物食品では、従来、バッター液や打ち粉に日持ち剤を添加して油調品の日持ちを向上させることが行われている(例えば特許文献1)。特許文献1には、日持ち剤は「本発明の揚げ物用粉末状日持ち向上剤を、打ち粉に添加する場合、全量に対し10~30重量%、好ましくは15~25重量%を目安に添加する。」と記載されている(〔0039〕)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-064520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、食品へのコスト意識はますます高まっており、日持ちへの要望がますます高まっている。具材にバッター等の衣を付して冷凍する油調用魚介類冷凍食品は、店舗で油調されて販売されるが、その際に日持ちすることが求められる。
バッター、打ち粉や具材の前処理のための浸漬液に日持ち剤を多く用いれば、得られる油調食品の日持ちを向上させることができる。
しかしながら、発明者は、油調用魚介類冷凍食品の製造において、日持ち剤を多用すると、外観、呈味悪化や食感悪化等の食品の質の低下を招く場合があることを知見した。
【0005】
本発明の課題は、油調用魚介類冷凍食品において、油調後の日持ちに優れ、かつ、外観、食味及び食感が良好な油調食品が得られる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために見出されたものであり、未加熱の魚介類と、前記魚介類を被覆し、有機酸及び/又は有機酸塩量が合計で0.1~7.0質量%である打ち粉と、
前記打ち粉で被覆された前記魚介類を被覆する衣と、を含有し、
前記衣が、有機酸及び/又は有機酸塩を含むパン粉を有する、油調用魚介類冷凍食品を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、未加熱の魚介類を有機酸及び/又は有機酸塩量が合計で0.1~7.0質量%である打ち粉で被覆する工程と、
前記打ち粉で被覆された前記魚介類を、有機酸及び/又は有機酸塩を含むパン粉を有する衣で被覆する工程を有する、油調用魚介類冷凍食品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、油調後の日持ちに優れ、かつ、外観、食味及び食感が良好な油調食品が得られる油調用魚介類冷凍食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明は、未加熱の魚介類と、前記魚介類を被覆し、有機酸及び/又は有機酸塩量が合計で0.1~7.0質量%である打ち粉と、
前記打ち粉で被覆された前記魚介類を被覆する衣と、を含有し、
前記衣が、有機酸及び/又は有機酸塩を含むパン粉を有する、油調用魚介類冷凍食品である。
【0010】
本発明者は、未加熱の魚介類に衣を付して冷凍する油調用魚介類冷凍食品において、従来の有機酸及び/又は有機酸塩を含む日持ち剤を用いて日持ちをさせる場合に、油調品に焦げが発生したり、酸味が生じたり、身や衣の食感が固くなる問題が生じる場合があることを知見した。
本発明者は、さらに検討した結果、パン粉に有機酸及び/又は有機酸塩を含有させ、これを有機酸及び/又は有機酸塩入りの打ち粉と特定条件下で併用することで、打ち粉における日持ち剤の量を低減させても、従来と同等の日持ち効果が得られ、かつ、従来に比して、表面の焦げや酸味の抑制、身及び衣の食感の向上を図ることができることを見出した。
【0011】
本発明により、上記効果が得られる理由は明確ではないが、以下が考えられる。
従来の油調用魚介類冷凍食品においては、打ち粉が有機酸及び/又は有機酸塩を多く含有すると、該有機酸及び/又は有機酸塩の存在等に起因して、冷凍及び解凍時に魚介類からドリップというアミノ酸を含む水分が生じやすくなり、冷凍及び解凍の間に油調用魚介類冷凍食品の表面に移行しやすく、油調時にアミノ酸とパン粉やバッター中の糖分とがメイラード反応を起こす場合があった。これにより、油調時に焦げが生じやすく、しかも、魚介類から水分が抜けやすいため、身の食感が固くなりやすくなるものと考えられる。
また、打ち粉に有機酸及び/又は有機酸塩が高濃度で含まれる場合、喫食時に酸味を感じやすくなると考えられる。
また、従来の油調用魚介類冷凍食品において喫食時に衣が固く感じられることは、打ち粉等における有機酸及び/又は有機酸塩が多いことに起因して、加熱中に脱水が促進されることが原因とみられる。
【0012】
これに対し、パン粉は衣の構成成分の中でも、最も魚介類から遠いため、パン粉に有機酸及び/又は有機酸塩を含有させてもドリップの発生につながりにくい。また油調用魚介類冷凍食品における総使用量としての有機酸及び/又は有機酸塩量は同じであっても、打ち粉に有機酸及び/又は有機酸塩を高濃度で含むことを防止できるので、酸味を防止しやすいと考えられる。
さらに、本発明において、衣の固い食感が抑制されることは打ち粉中の有機酸及び/又は有機酸塩量が少ないことにより、加熱中の脱水が抑制されることが原因だと考えられる。浸漬液においても有機酸及び/又は有機酸塩量が一定量以下であると更に一層有利である。
【0013】
本発明ではパン粉において有機酸及び/又は有機酸塩を含有させる。パン粉は衣の最も外側に位置するため、効果的に静菌を図ることができる。また、パン粉は衣の中でも比較的多量を占めるため、低濃度での有機酸及び/又は有機酸塩の使用でも、一定量の日持ち剤とすることでき、効果的に静菌を図ることができるうえ、食味、食感への影響が少ない。これらのことから、パン粉に有機酸及び/又は有機酸塩を含有させることで、打ち粉における有機酸及び/又は有機酸塩量を低減できるために、冷凍及び解凍過程で有機酸及び/又は有機酸塩の存在に起因した魚介類のドリップを抑制でき、魚介類の身の劣化を防止しやすい。このことから、魚介類における細菌の繁殖をも抑制しやすく、有機酸及び/又は有機酸塩による日持ち効果を十分発揮できるようになると考えられる。
【0014】
本発明で用いる魚介類としては、魚類、貝類、甲殻類、頭足類等が挙げられる。魚類としては、アイナメ、アカハタ、アカウオ、アジ、アナゴ、アユ、アンコウ、イサキ、イトヨリ、イワシ、イワナ、ウナギ、エイ、エソ、オコゼ、カイワリ、カサゴ、カジカ、カジキ、カツオ、カトラ、カマス、カレイ、カワハギ、カンパチ、キス、キンキ、キビナゴ、グチ、コチ、コクレン、サケ(アトランティックサーモン、トラウトサーモン、ギンザケを含む)、サバ、サメ、サンマ、サワラ、サヨリ、ソウギョ、ハクレン、パンガシウス、ヒラメ、ドジョウ、スズキ、タラ、タイ、タチウオ、トビウオ、ドジョウ、ナイルテラピア、ナマズ、ニシン、ニジマス、ハゼ、ハタ、ハモ、ヒラメ、ヒラマサ、フグ、フナ、ブリ(ハマチ、イナダ、メジロ等の成長名・季節名を含む)、ホッケ、ホキ、ムツ、マグロ、マゴイ、ミルクフィッシュ、メバル、ママカリ、ヤマトゴイ、ロフーなどが挙げられる。貝類としては、カキ、シジミ、アサリ、ホタテガイ、アカガイ等が挙げられる。甲殻類としては、エビ、カニ、シャコが挙げられる。頭足類としてはイカやタコが挙げられる。
【0015】
中でも甲殻類、特にエビを用いることがパン粉と打ち粉における有機酸及び/又は有機酸塩を組み合わせたことによる本発明の日持ち向上効果を高めるために好ましい。
【0016】
未加熱とは、例えば60℃以上、10分以上の加熱処理が施されていないことを指すことが好ましく、50℃以上、5分以上の加熱処理が施されていないことが好ましい。
【0017】
魚介類は、打ち粉で被覆されており、打ち粉中に有機酸及び/又は有機酸塩を含有させて日持ちさせるものである。打ち粉に含まれる有機酸としては、酢酸(氷酢酸を含む)、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸等が挙げられ、日持ちや身質の点から、酢酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸から選ばれる一種以上が好ましい。
【0018】
打ち粉に含有させる有機酸は、ワックス又は硬化油脂に被覆されていてもよく、されていなくてもよいが、日持ち向上効果を発揮させやすい点から、ワックス又は硬化油脂に被覆されていないことが好ましい。具体的には、ワックス又は硬化油脂に被覆されていないとは、積極的な被覆処理を行っていないことを指し、融点以上に加熱されたワックス又は硬化油脂と有機酸とを混合などさせる積極的な被覆工程を経ていないことを指す。なお、油調用魚介類冷凍食品の製造工程において、不可避的に有機酸がワックス又は硬化油脂と接触する場合はワックス又は硬化油脂に被覆されていないことに該当しない。ワックス又は硬化油脂の具体例は後述する。
【0019】
また打ち粉に含まれる有機酸塩としては、酢酸(氷酢酸を含む)、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸等のアルカリ金属塩が挙げられ、具体的にはナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。なかでも、酢酸ナトリウムを含有すると日持ち向上効果が高い点で好ましい。
【0020】
打ち粉中に有機酸及び/又は有機酸塩を含有させる場合、その合計量は、0.1~7.0質量%であり、好適には、0.2~5.5質量%であり、より好適には、0.3~5.0質量%であり、更に好適には、0.4~4.5質量%であり、更に一層好適には、0.5~4.2質量%であり、特に好適には、0.6~3.7質量%であり、最も好適には0.7~3.3質量%である。この範囲内とすることで、日持ち、食感、食味、焦げ防止などの効果を効果的に図ることができる。
【0021】
上記の効果を一層優れたものとする点から、打ち粉中に有機酸を含有させる場合、0.05~2.0質量%含有させることが好ましく、0.07~1.5質量%含有させることもより好ましく、0.1~1.0質量%含有させることもさらに好ましく、0.1~0.9質量%が最も好ましい。打ち粉中に有機酸塩を含有させる場合、0.05質量%以上が好ましく、0.2~5.0質量%含有させることがより好ましく、0.3~4.5質量%含有させることも更に好ましく、0.4~4.0質量%含有させることが更に一層好ましく、0.5~3.5質量%含有させることが中でも好ましく、0.7~3.0質量%含有させることが特に好ましい。
【0022】
打ち粉としては、通常、穀粉及び澱粉から選択される少なくとも一種を用いる。穀粉としては小麦粉、米粉等を用いることができ、小麦粉が好適である。澱粉は加工澱粉であっても未加工澱粉であってもよい。以下、澱粉と穀粉とを総称して「澱粉類」ともいう。
【0023】
上記の通り、本発明では、パン粉に有機酸及び/又は有機酸塩を含有させる。
【0024】
パン粉に含有させうる有機酸塩としては、打ち粉に含有させる有機酸塩と同様のものがあげられ、特に日持ち効果の点で、酢酸ナトリウムが好ましい。
パン粉に含有されうる有機酸としては、打ち粉に含有させる有機酸と同様のものがあげられ、特に、フマル酸であることが油調時以後、pHを下げて日持ち効果が高い点で好ましい。
【0025】
パン粉に有機酸塩を含有させる場合、パン粉中、有機酸塩を0.1~4.0質量%含有させることが好ましく、0.2~3.0質量%含有させることもより好ましく、0.3~2.0質量%含有させることも更に好ましく、0.4~1.7質量%含有させることも更に一層好ましく、0.5~1.4質量%含有させることも特に好ましい。
パン粉は生パン粉の場合、有機酸塩を0.1~4.0質量%含有させることが好ましく、0.2~3.0質量%含有させることもより好ましく、0.3~2.0質量%含有させることも更に好ましく、0.4~1.7質量%含有させることも更に一層好ましく、0.5~1.4質量%含有させることも特に好ましい。
乾燥パン粉の場合、有機酸塩を0.1~4.0質量%含有させることが好ましく、0.2~3.0質量%含有させることもより好ましく、0.3~2.0質量%含有させることも更に好ましく、0.4~1.7質量%含有させることも更に一層好ましく、0.5~1.4質量%含有させることも特に好ましい。
【0026】
またパン粉に有機酸を含有させる場合、パン粉中に有機酸を0.01~0.5質量%含有させることが好ましく、0.01~0.3質量%含有させることがより好ましく、0.02~0.2質量%含有させることが更に好ましく、0.03~0.15質量%含有させることも更に一層好ましく、0.04~0.12質量%含有させることも更により一層好ましく、0.05~0.12質量%含有させることが最も好ましい。
パン粉が乾燥パン粉の場合、有機酸を0.01~0.5質量%含有させることが好ましく、0.01~0.3質量%含有させることがより好ましく、0.02~0.2質量%含有させることが更に好ましく、0.03~0.15質量%含有させることも更に一層好ましく、0.04~0.12質量%含有させることも更により一層好ましく、0.05~0.12質量%含有させることが最も好ましい。
またパン粉が生パン粉の場合、有機酸を0.01~0.5質量%含有させることが好ましく、0.01~0.3質量%含有させることがより好ましく、0.02~0.2質量%含有させることがより好ましく、0.03~0.15質量%含有させることが更に好ましく、0.04~0.12質量%含有させることも更に一層好ましく、0.05~0.12質量%含有させることが最も好ましい。
【0027】
上記のような量でパン粉に有機酸及び/又は有機酸塩量を含有させることで、油調用魚介類冷凍食品において、優れた日持ち向上効果を発揮させることができる。
【0028】
パン粉における有機酸塩及び有機酸の量は以下の方法で測定できる。以下では有機酸塩の量として酢酸ナトリウムの量の定量方法を記載し、有機酸の量としてフマル酸の定量方法を記載するが、他の有機酸や有機酸塩も下記方法及び技術常識に基づいて測定することができる。
【0029】
(酢酸ナトリウム量測定方法)
パン粉を所定量(3~5g)測り取り、ここに5mlの5%過塩素酸水溶液と適量の水とを加え、10分間振とうして酢酸を抽出する。その後、50mlに定容して、ろ過し、得られた液を必要ならば希釈した後、下記条件のHPLC測定に供する。得られた酢酸(根)の量から酢酸ナトリウム量を換算する。
HPLC測定条件
HPLC:島津製作所社製 LC-20AD
カラム:Shodex-RSpak KC-811×2、φ8.0mm×300mm(昭和電工社製)
カラム温度:40℃
検出器:紫外可視吸光光度計 SPD-20AV(島津製作所社製)
移動相:3mmol/L、過塩素酸
反応液:0.2mmol/L ブロモチモールブルー含有 15mmol/L りん酸水素二ナトリウム溶液
流量:移動相 1.0ml/min、反応液 1.4ml/min
測定波長:445nm
注入量:20μL
【0030】
(フマル量測定方法)
有機酸がフマル酸である場合は、上記(酢酸ナトリウム量測定方法)と同様の方法にて測定試料を得て、下記の条件のHPLCに供することより測定できる。
HPLC:島津製作所社製 LC-20AD
カラム:Shodex-RSpak KC-811×2、φ8.0mm×300mm(昭和電工社製)
カラム温度:40℃
検出器:紫外可視吸光光度計 SPD-20AV(島津製作所社製)
移動相:3mmol/L、過塩素酸
流量:移動相 1.0ml/min
測定波長:220nm
注入量:20μL
【0031】
パン粉は、原料パンとして、ワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸をパン生地に添加する工程を経て製造されたことが好ましい。当該工程によれば、ワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸により酵母の発酵が阻害されないという利点を有する。
【0032】
ワックスとしては、カルナウバロウ、コメヌカロウ、カンデリラロウ、ミツロウ、サトウキビロウ、モクロウなどが挙げられる。これらの中でも、臭気が少ない点で、カルナウバロウが好ましい。硬化油脂としては、菜種硬化油、大豆硬化油、パーム硬化油、牛脂硬化油、やし油硬化油、魚油硬化油等が挙げられる。ワックス及び硬化油脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、本発明では、ワックスを用いることが好ましく、とりわけライスワックスを用いることが好ましい。
ワックス及び硬化油脂は融点が65℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。
【0033】
有機酸のワックス又は硬化油脂による被覆は、特に限定されず、スプレードライ法、コーティングパン法、気中懸濁被覆法、真空蒸着被覆法、静電的合体法、融解分散冷却法等の公知の方法により行うことができる。
【0034】
パン粉は入手しやすさや焦げ防止効果を高める点から、原料粉(液体以外の成分)中の糖類含量が5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることが更に一層好ましい。ここでいう糖類とは、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、還元水飴、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
パン粉は油脂を含有していてもしていなくてもよい。
パン粉の主成分としては、通常、澱粉類を用い、穀粉を用いることが好適である。主成分とは、原料粉体の70質量%以上を占める材料をいう。穀粉としては小麦粉等を用いることができ、小麦粉が好適である。澱粉は加工澱粉であっても未加工澱粉であってもよい。下記実施例及び比較例でも小麦粉を主成分としたパン粉を用いている。
【0035】
打ち粉及びパン粉に被覆される魚介類は、打ち粉及びパン粉に含まれない有機酸及び/又は有機酸塩量を含有していてもよい。これにより、魚介類はさらに一層日持ち効果に優れたものとなる。
【0036】
魚介類に打ち粉及びパン粉に含まれない有機酸及び/又は有機酸塩を含有させる一例としては、打ち粉を付着させる前に、有機酸及び/又は有機酸塩を含有する浸漬液に魚介類を浸漬する場合があげられる。
【0037】
この場合、魚介類に含有させる有機酸及び/又は有機酸塩の種類及び好ましいものとしては、打ち粉に含有させる有機酸及び/又は有機酸塩の種類と同様である。打ち粉で被覆させる前の浸漬処理により魚介類に含有させる有機酸は、日持ち向上効果を発揮させやすい点から、ワックス又は硬化油脂に被覆されていないことが好ましい。
【0038】
日持ち効果に優れる点、及び食感及び食味、焦げ防止の効果に優れる点から、浸漬液における有機酸及び/又は有機酸塩量は、合計で、2.0質量%以上9.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、3.5質量%以上7.0質量%以下が更に好ましく、3.7質量%以上6.5質量%以下が更に一層好ましく、3.8質量%以上5.8質量%以下がとりわけ好ましい。
【0039】
浸漬液が、有機酸を含有する場合、その量は、浸漬液中、0.05質量%以上であることが日持ち向上や浸漬効果の向上の点で好ましく、2.0質量%以下であることが焦げ防止のしやすさや食味、食感の点で好ましい。その観点から、浸漬液中、有機酸の量は、0.1質量%以上1.6質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上1.2質量%以下であることが特に好ましい。
【0040】
浸漬液における有機酸塩の量は、浸漬液中、1.95質量%以上であることが、日持ち向上や浸漬効果の向上の点で好ましく、7.0質量%以下であることが焦げ防止のしやすさや食味。食感の点で好ましい。その観点から、浸漬液中、有機酸塩の量は、2.5質量%以上6.0質量%以下であることがより好ましく、3.5質量%以上5.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0041】
前記浸漬液には、液状油脂を含有させることが好適である。この場合、魚介類は、有機酸及び/又は有機酸塩を含有し、且つ液状油脂に被覆されたものとなり、この状態で打ち粉に被覆されることとなる。
【0042】
魚介類は魚介類に由来しない液状油脂に被覆されている場合、液状油脂を用いない場合に比して油調用魚介類冷凍食品の油調後の日持ちを向上させやすく、焦げ防止や食感向上などを図りやすいため好ましい。これは魚介類が液状油脂に被覆されている場合、冷凍及び解凍時において魚介類から水分や有機物が滲出することが抑制されやすいためである。
魚介類は、その全体が液状油脂に被覆されていてもよく、一部の被覆であってもよい。未加熱の魚介類を液状油脂に被覆させるには、液状油脂を含有する浸漬液に未加熱の魚介類を浸漬させればよい。
【0043】
液状油脂は25℃で液状を示す油脂である。本発明で用いる液状油脂の具体例としては、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、アマニ油、パーム油の分別低融点部、オリーブ油、ごま油が挙げられる。液状油脂としては、大豆油、菜種油、綿実油又はコーン油が、風味や食味の点で好ましく挙げられる。液状油脂の上昇融点は20℃以下が好適であり、10℃以下がより好適である。
上昇融点は、例えば日本油化学会制定、基準油脂分析試験法(I)1996年版、2.2.4.2-1996、上昇融点の測定方法により融点温度を決定することができる。
【0044】
浸漬液における液状油脂の量は、浸漬液中、5.0質量%以上であることが、焦げ防止抑制しやすさや食感向上の点で好ましく、20.0質量%以下であることが、それ以上液状油脂量を増加させても焦げ防止が得られないことに基づく経済性の点で好ましい。その観点から、浸漬液中、液状油脂の量は、8.0質量%以上16.0質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明では、魚介類に糖アルコールを含有させることが更に一層を焦げ抑制効果を高める点で好ましい。糖アルコールとしては、還元麦芽糖、還元水あめ、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ラクチトール、キシロビイトールが知られているが、還元麦芽糖、還元水あめを用いることが浸漬効率の点で好ましく、還元水あめを用いることが、食味の点で最も好ましい。
【0046】
なお、還元水あめとは、単糖から多糖までの糖アルコールの混合物であり、澱粉を酸や酵素で加水分解することにより得られる水あめを原料とし、水素添加によって水あめのグルコース末端を還元することにより製造される単糖の糖アルコール及び多糖の糖アルコール混合物の総称である。一般に還元水あめは、原料となる水あめの糖化度により分類され、糖化度の高い水あめを原料としたものを高糖化還元水あめ、糖化度の低い水あめを原料としたものを低糖化還元水あめ、中間のものは中糖化還元水あめがあり、本発明において還元水あめを用いる場合、いずれの還元水あめも用いることができ、特に制限されない。
【0047】
魚介類に糖アルコールを含有させるためには、糖アルコールを含有する浸漬液に魚介類を浸漬させればよい。当該浸漬液に液状油脂も含有させることができる。また糖アルコール及び液状油脂を含有する浸漬液に魚介類を浸漬させた場合、魚介類の表面に糖アルコールが付着し、糖アルコール及び液状油脂で被覆された魚介類が得られると解される。
【0048】
浸漬液が糖アルコールを含有する場合、その量は、浸漬液中、5.0質量%以上であることが、焦げ防止させやすさや浸漬効果の向上の点で好ましく、20.0質量%以下であることが食味の点で好ましい。その観点から、浸漬液中、糖アルコールの量は、8.0質量%以上16.0質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
魚介類はその他、酵母細胞、アルカリ剤、塩化ナトリウムを含有していてもよい。酵母細胞とは酵母の内容物を除去した後の酵母細胞を用いることができる。「酵母の内容物を除去した後」の例としては、酵母エキスを抽出した後が挙げられる。酵母の内容物を除去した後の酵母細胞の例としては、酵母細胞の細胞壁、細胞膜等の酵母の骨格部分が挙げられる。アルカリ剤としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、貝殻焼成カルシウム等が挙げられる。
【0050】
酵母、アルカリ剤、食塩の量は食感等の効果から、合計で、浸漬液中、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以上4.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0051】
浸漬液の液媒は水が好適である。浸漬液中、有機酸、酢酸ナトリウム、糖アルコール、液状油脂及び水以外の量は、合計で、45.0質量%以下であることがより好ましく、35.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0052】
本発明の油調用魚介類冷凍食品は、打ち粉で被覆された魚介類が更に衣で被覆されている。衣としては、パン粉に加えて通常バッターを用いてもよい。
【0053】
バッターは、穀粉及び澱粉から選択される少なくとも一種に、水性液を混合させて得られる。水性液としては、水等が挙げられる。バッターには必要に応じて卵類を添加してもよい。バッターの調製にあたっては、穀粉及び澱粉から選択される少なくとも一種に対して加水率80~300質量%としたものを用いることが好適である。穀粉としては小麦粉、米粉等を用いることができ、小麦粉が好適である。澱粉は加工澱粉であっても未加工澱粉であってもよい。
【0054】
バッターは、日持ち剤を含有することが好ましく、これにより、得られる油調食品の日持ち効果を一層高めることができる。バッターに添加する日持ち剤としては、日持ち向上の点から有機酸及び/又は有機酸塩が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸(氷酢酸を含む)、フマル酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、リンゴ酸、クエン酸、ソルビン酸等のアルカリ金属塩が挙げられ、具体的にはナトリウム塩やカリウム塩が挙げられる。なかでも、酢酸ナトリウムを含有すると日持ち向上効果が高い点で好ましい。
【0055】
バッターが有機酸塩を含有する場合、有機酸塩の含有量としてはバッター中、0.4~5.0質量%が好ましく、0.4~4.0質量%がより好ましく、0.5~3.0質量%が特に好ましい。
【0056】
バッターは、日持ち剤として、有機酸塩に加えて、又は換えて、有機酸を含有することが好ましい。有機酸としては、魚介類に含有させる場合の有機酸の例として上記で挙げたものが挙げられる。好適な有機酸としては、日持ちや身質の点から、酢酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸から選ばれる一種以上が好ましく、フマル酸、酢酸、リンゴ酸から選ばれる一種以上がより好ましく、とりわけ、特にフマル酸が油調時以後、pHを速やかに下げ、日持ち効果が高い点で好ましい。
【0057】
バッターは、有機酸として、ワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸を含有することが、該有機酸の存在等に起因して、冷凍及び解凍時に魚介類からアミノ酸を含む水分が油調用魚介類冷凍食品の表面に移行することにより油調時にアミノ酸とパン粉やバッター中の糖分とがメイラード反応を起こすことを防止しやすい点から好ましい。
【0058】
ワックス又は硬化油脂に被覆された場合又は被覆されていない場合のいずれにおいても、バッターにおける有機酸の含有量は0.03~2.0質量%が好ましく、0.05~1.0質量%がより好ましく、0.06~0.7質量%以下が更に好ましく、0.34質量%以下であってもよい。
【0059】
またワックス又は硬化油脂に被覆された有機酸を用いる場合、ワックス又は硬化油脂で被覆された有機酸の量100質量部中、ワックス又は硬化油脂の含有量は3.0~15.0質量部が好適であり、5.0~10.0質量部が好適である。
【0060】
バッターが、有機酸及び/又は有機酸塩を含有する場合、その量は、0.1~5.1質量%が好ましく、0.2~3.6質量%がより好ましく、0.3~3.4質量%が特に好ましく、0.4~3.2質量%が更に一層好ましく、0.5~3.2質量%が最も好ましい。
【0061】
次いで、本発明の油調用魚介類冷凍食品の好適な製造方法について説明する。本製造方法は、未加熱の魚介類を有機酸及び/又は有機酸塩量が合計で0.1~7.0質量%である打ち粉で被覆する工程と、
前記打ち粉で被覆された前記魚介類を、有機酸及び/又は有機酸塩を含むパン粉を有する衣で被覆する工程を有する。
【0062】
本製造方法では、日持ち効果を高めるために、打ち粉を用いる前に、前述した日持ち剤を含む浸漬液に浸漬させることが好ましい。
浸漬液のpHは20.0℃で5.0~6.0であることが日持ち向上効果や浸漬する魚介類の硬化抑制(たんぱく質の酸変性の抑制)の点で好適であり、20.0℃で5.2~5.8であることがより好適である。
【0063】
魚介類を浸漬液に浸漬させる温度としては、未加熱の魚介類の劣化防止の点や漬け込み効率の点から、1℃以上10℃以下が好適である。また魚介類の生肉を浸漬液に浸漬させる時間としては、焦げ防止、及び食感改善の点及び生肉の劣化防止の点から、0.5時間以上3時間以下が好ましく、1.0時間以上2.5時間以下がより好ましい。
【0064】
浸漬液に魚介類を漬け込む際には、例えば魚介類100質量部に対し、浸漬液の使用量が70.0質量部以上150.0質量部以下であることがバラツキなく浸漬できる点で好ましく、より好ましくは80.0質量部以上120.0質量部以下である。
【0065】
浸漬後の未加熱の魚介類に含有させた浸漬液の量は、原料魚介類100質量部に対し、通常1.0~50.0質量部が好適であり、5.0~20.0質量部がより好適である。ここでいう原料魚介類の質量とは、浸漬処理を行った場合は、浸漬前の質量をいう(以下同様)。魚介類の表面積中、浸漬液で被覆させる割合は、50%以上が好適であり、60%以上がさらに好適であり、70%以上が更に好適であり、80%以上が更に一層好適であり、90%以上が特に好適である。
【0066】
上記の方法で得られた浸漬後の未加熱の魚介類は打ち粉に被覆させる。原料魚介類100質量部に対し、付着させる打ち粉の量としては、通常1.0~10.0質量部が好適であり、3.0~7.0質量部がより好適である。ここでいう原料魚介類の質量とは、浸漬処理を行った場合は、浸漬前の質量をいう(以下同様)。
【0067】
更に、打ち粉を付着させた未加熱の魚介類はバッター液で被覆させることが好ましい。原料魚介類100質量部に対し、付着させるバッター液の量としては、通常10.0~55.0質量部が好適であり、20.0~50.0質量部がより好適である。
魚介類の表面積中、バッターで被覆させる割合は、50%以上が好適であり、60%以上がさらに好適であり、70%以上が更に好適であり、80%以上が更に一層好適であり、90%以上が特に好適である。
【0068】
バッターのpHは通常、20.0℃で5.5~7.5であることが好適であり、焦げの防止等の点から、5.9~7.0であることが特に好適であり、6.0~7.0であることが最も好適である。好適には打ち粉をバッターによる被覆前に付着させることが好適であり、バッターに被覆させた後にパン粉により被覆することが好適である。このようにして得られた製品は冷凍される。
【0069】
次いで、打ち粉及びバッターを付着させた未加熱の魚介類はパン粉で被覆させることが好ましい。原料魚介類100質量部に対し、付着させるパン粉の量としては、通常10.0~75.0質量部が好適であり、15.0~65.0質量部がより好適である。
以上の食品を冷凍させることで本実施形態の油調用魚介類冷凍食品が得られる。
【0070】
油調用魚介類冷凍食品をパッケージにより包装する場合、パッケージの素材としては、合成樹脂フィルムが挙げられ、例えば、VDC/MA(塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体)、HIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PA(ポリアミド)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)、PET(ポリエチレンテフタレート樹脂)及びこれらの1又は2以上の複合材が挙げられ、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリプロピレン又はこれらの複合材であることが破れにくさや保存性等の点で好ましい。密封方法としては、例えば、含気包装、脱気包装、真空包装が挙げられる。
【0071】
本発明において得られた加工食品は適宜油調される。油調は冷凍状態のまま行われることが油調後の品位の安定化及び一層の焦げ防止の点で好適であるが、後述する実施例のように、冷凍後、冷蔵状態で解凍し、その状態で一定時間(例えば数日間)保存したものを油調してもよい。
【実施例
【0072】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。なお、表1に記載の「%」は特に断らない場合「質量%」を意味する。
【0073】
(実施例1)
(1)浸漬液の調製
還元水あめ10質量%、液状油脂10質量%、日持ち剤No.1を5質量%、水72.8質量%、酵母製剤1質量%、食塩1質量%、重曹0.2質量%を混合し、浸漬液を調製した。
・日持ち剤No.1としては、組成が酢酸ナトリウム86質量%、氷酢酸9質量%、DL-リンゴ酸2質量%である製剤を用いた(粉末状、残部は二酸化ケイ素、乳化剤、食品素材)。
・酵母製剤としては富士食品工業株式会社製の酵母細胞パウダーである商品名「モイステックス」を用いた。モイステックスは、酵母細胞から酵母エキスを抽出した後の菌体(酵母細胞の細胞壁、細胞膜等の酵母の骨格部分)を加熱殺菌し、乾燥したものを用いた。
・液状油脂としては、サラダ油(原料:菜種油)を用いた。
・還元水あめとしては、ウエノフードテクノ社製MU-45を用いた。
【0074】
(2)浸漬処理
未加熱のバナメイエビに対し、当該エビ100質量部に対して100質量部の量の浸漬液を混合し、浸漬液にエビを浸漬させた。浸漬液のpHは20℃で5.2~5.8であった。浸漬状態のエビを2時間、10℃で静置した。
【0075】
(3)衣による被覆
浸漬液に浸漬させた後のエビを金ザルの上にあけ、3分間液切りを行った。その後、エビ100質量部に対し、打ち粉を付着させ、次いで、日持ち剤添加後のバッターに浸漬させてエビ100質量部に対し、バッター液を付着させた後、パン粉をエビ100質量部に付着させて-30℃で冷凍させて油調用魚介類冷凍食品を得た。製品100g中、原料エビの質量は47.2g、浸漬液は2.8g、打ち粉1.5g、バッター液21.5g、パン粉27gと計算された。
・打ち粉として、澱粉材と日持ち剤No.1とを質量比97:3で配合したものを用いた。澱粉材としては、加工澱粉86質量%、澱粉10質量%、その他(有機酸塩及び有機酸以外の成分)4質量%の混合物を用いた(以下、実施例2以降の澱粉材として同様)。
・バッターとして、澱粉混合物(澱粉と小麦粉との配合質量比率1:1の混合物)38.83質量部、水58.25質量部、および日持ち剤No.2を2.91質量部で配合したものを用いた。バッターのpHは表1に記載した。
・日持ち剤No.2としては、酢酸ナトリウム84質量%、フマル酸10質量%、ライスワックス(融点70℃以上)0.8質量%を含有し、フマル酸がライスワックスに被覆された製剤を用いた(粉末状、残部は食品素材)。
・パン粉として、日持ち剤No.2を添加して製造したパンを粉砕したパン粉(生パン粉)を使用した。パン粉中のフマル酸量の分析値は0.07質量%、酢酸(根)量の分析値は0.51質量%(酢酸ナトリウム換算0.7質量%)、パン粉中の砂糖の使用量は固形分中0.47質量%、油脂使用量は3.7質量%であった。
【0076】
(実施例2)
打ち粉の日持ち剤の量を、澱粉材と日持ち剤No.1との質量比を99:1に変更した。その点以外は実施例1と同様として、油調用魚介類冷凍食品を得た。
【0077】
(実施例3)
バッター液における組成を澱粉混合物の39.60質量部、水59.41質量部、および日持ち剤No.2を0.99質量部とした。その点以外は実施例1と同様として、油調用魚介類冷凍食品を得た。
【0078】
(比較例1)
浸漬液において、酢酸ナトリウム及びフマル酸を追加することで、表1に示す組成とした。パン粉として、日持ち剤No.2を用いずに製造された、パン粉中の砂糖の使用量が固形分中1.46質量%、油脂は不使用としたものを用いた。それらの点以外は実施例1で用いたものと同様の組成のものを用いた。
油調用魚介類冷凍食品に含有される酢酸ナトリウムの総量の計算値は実施例1と同じである。なお、油調用魚介類冷凍食品におけるフマル酸の総量の計算値は、実施例1と異なるが、これは、浸漬液のpHを実施例1と同程度とするためである。
【0079】
(比較例2)
打ち粉において、酢酸ナトリウム及びフマル酸を追加することで、表1に示す組成とした。パン粉として、日持ち剤No.2を用いずに製造された、パン粉中の砂糖の使用量が固形分中1.46質量%、油脂を不使用としたものを用いた。それらの点以外は実施例1で用いたものと同様の組成のものを用いた。
油調用魚介類冷凍食品に含有される酢酸ナトリウム及びフマル酸の総量は実施例1と同じである。
【0080】
(参考例)
浸漬液、バッター、打ち粉のいずれにおいても、酢酸ナトリウム及び有機酸を用いなかった。その点以外は実施例1と同様として、油調用魚介類冷凍食品を製造した。なおバッター液のpHの測定は省略する。
【0081】
(評価)
20日間冷凍させた冷凍食品について、10℃で2日間保存したものを、冷蔵状態から、170℃で3分間油調してエビフライを得た。得られたエビフライについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
<日持ちの評価方法>
エビフライを油調後アルミホイルで覆った状態で5分間放冷した後、滅菌袋に移し替えた。移し替えの時点を初発とし、初発の時点で滅菌袋に移し替えて25℃に保持した状態で48、72、96時間後経過した各時点の一般生菌数を食品衛生検査指針が定める一般生菌数検査により求めた。具体的には、エビフライ中において、複数個所から少しずつ切り取った合計25gを量り採り、ストマッカー処理用の滅菌袋などに移した。希釈水としてリン酸緩衝液を用い、この希釈水225mlを加え、ストマッキングした。ストマッキング後の試料液を試料源液として、順次10倍段階希釈液を調製した。調製した試料液1mlに標準寒天培地15-20mlを入れて混釈し、インキュベーターで、35±1℃、48時間まで培養して生菌数をカウントした。標準寒天培地2連の平均値を表1に示す。なお参考例については日持ち評価の結果を示していないが、日持ち剤を一切用いていないので、各実施例に比して大きく日持ち評価の劣るものとなることが想定される。
【0083】
得られたエビフライについて、外観、酸味、エビの固さ、衣の固さを評価した。
<外観評価>
A:外観に焦げを視認せずキツネ色で良好な色味である。
B:ところどころ外観に焦げ色を視認でき、色むらがある印象である。
C:明らかに焦げている。
【0084】
<酸味評価>
A:酸味が感じられない。
B:酸味を感じるが、許容範囲である。
C:酸味が強く感じられ、喫食に適さない。
【0085】
<エビの固さ評価>
A:通常のエビフライと同等である。
B:エビは固いが、許容範囲である。
C:エビが固く、喫食に適さない。
【0086】
<衣の固さ評価>
A:通常のエビフライと同等である。
B;衣は固いが、許容範囲である。
C:衣が固く、喫食に適さない。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示す通り、打ち粉として所定量以下の有機酸及び/又は有機酸塩量を用い、有機酸及び/又は有機酸塩量を含むパン粉を用いた実施例1~3の油調用魚介類冷凍食品は、冷蔵保存という日持ちに不利な条件においても、油調後の日持ちに優れ、かつ、揚げ色抑制、酸味抑制、エビの固さ抑制効果、衣の固さ抑制効果が得られることがわかる。特に実施例2及び3は日持ち剤を低減しても優れた日持ち効果が得られている。
これに対し、比較例1及び2では、実施例1と日持ちの上では同様の効果が得られるものの、揚げ色、酸味、エビの固さ、衣の固さといった点に劣ることがわかる。なお各実施例と各比較例では用いるパン粉の糖分含量や油分含量は僅かに異なる。ただし、参考例は比較例1及び2と同じパン粉を使用していても揚げ色及び衣の硬さが良好である。このことから、各実施例の揚げ色が比較例1及び2に比して改善されていることは、パン粉の糖分量の違いによるものではないこと、及び、各実施例の衣の固さが比較例1及び2に比して抑制されていることがパン粉の油分量によるものでなく、日持ち剤の配置に起因することが判る。