(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-04
(45)【発行日】2025-02-13
(54)【発明の名称】ハウジング、モータ及びブロア
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20250205BHJP
【FI】
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2024573870
(86)(22)【出願日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 JP2024026373
【審査請求日】2025-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186875
【氏名又は名称】海老澤 知則
(72)【発明者】
【氏名】山形 泰浩
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 明子
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-203649(JP,A)
【文献】特開2018-088782(JP,A)
【文献】米国特許第9166452(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータのステータを収容するハウジングにおいて、
前記ステータを収容するための開口部と、
前記開口部に対して径方向の外側において前記ステータの外周を囲繞するように周方向に形成され、且つ、前記径方向に延在する外縁部と、
前記ステータの巻線を含む導線同士がはんだ付けされるとともに前記外縁部に引き出されたはんだ部が収容される収容溝と、を備え、
前記収容溝は、前記外縁部に配置されており、前記収容溝が配置される周方向位置における前記外周の法線方向から当該周方向位置における前記外周の接線方向までのいずれかの方向に延設されている
ことを特徴とする、ハウジング。
【請求項2】
前記外縁部の径方向長さは、前記はんだ部の長手方向の長さよりも短く設定されており、
前記収容溝は、前記法線方向と交差する方向に延設されている
ことを特徴とする、請求項1に記載のハウジング。
【請求項3】
前記収容溝は、前記法線方向及び前記接線方向の両方と交差する方向に延設されている
ことを特徴とする、請求項2に記載のハウジング。
【請求項4】
前記収容溝は、前記はんだ部が固定されずに載置されただけの状態で前記はんだ部を収容する
ことを特徴とする、請求項1に記載のハウジング。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のハウジングと、
前記ハウジングに収容されたステータと、
前記ステータと径方向に対向配置されるロータと、を備えた
ことを特徴とする、モータ。
【請求項6】
請求項5に記載のモータと、
前記モータの回転軸に固定されたインペラと、を備えた
ことを特徴とする、ブロア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、モータのステータを収容するハウジング、このハウジングに収容されたステータを有するモータ、及び、このモータが適用されたブロアに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータを収容するハウジングにおいて、コイルを形成する巻線や巻線に電力を供給するためのリード線といった導線の端部を、他の部材に干渉しないように配置するための構造が提案されている。例えば特許文献1には、ブラシレスモータにおいて、固定子鉄心に絶縁層を介して固定子巻線を施して、各相を構成する固定子巻線の一端を同電位となるように直接結線して中性点結線とし、絶縁層の一部に中性点結線を配置するための留め具や孔等を設けた構造が開示されている。特許文献1の技術では、中性点結線は留め具や孔に挿入されるとともに接着剤や突起で固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の特許文献1のように、中性点結線を接着剤等で固定して配置する技術では、固定作業時に中性点結線の箇所に外力が加わりやすいので、中性点結線が変形する虞がある。特に、中性点結線をはんだ付けした場合に、固定作業時の外力によってはんだ部分が変形すると、接続品質の低下を招く。なお、巻線の一端同士を接続した中性点結線に限らず、巻線とリード線とを接続した箇所や、リード線同士を接続した箇所をはんだ付けした部分(以下「はんだ部」と言う)を配置する構造においても、上記と同様の課題が生じうる。そのため、ステータを収容するハウジングにおいて、巻線を含む導線同士をはんだ付けしたはんだ部の変形を抑制できる配置構造に関して改良の余地がある。
【0005】
本件のハウジング、モータ及びブロアは、このような課題に鑑み案出されたもので、はんだ部の変形を抑制し、接続品質を確保することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のハウジング、モータ及びブロアは、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2~4は、いずれもが付加的に適宜選択されうる態様であって、いずれもが省略可能な態様である。態様2~4の各態様は、いずれもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0007】
態様1.開示のハウジングは、モータのステータを収容するハウジングにおいて、前記ステータを収容するための開口部と、前記開口部に対して径方向の外側において前記ステータの外周を囲繞するように周方向に形成され、且つ、前記径方向に延在する外縁部と、前記ステータの巻線を含む導線同士がはんだ付けされるとともに前記外縁部に引き出されたはんだ部が収容される収容溝と、を備え、前記収容溝は、前記外縁部に配置されており、前記収容溝が配置される周方向位置における前記外周の法線方向から当該周方向位置における前記外周の接線方向までのいずれかの方向に延設されている。
【0008】
態様2.上記の態様1において、前記外縁部の径方向長さは、前記はんだ部の長手方向の長さよりも短く設定されており、前記収容溝は、前記法線方向と交差する方向に延設されていることが好ましい。
態様3.上記の態様1又は2において、前記収容溝は、前記法線方向及び前記接線方向の両方と交差する方向に延設されていることが好ましい。
態様4.上記の態様1~3のいずれか一つにおいて、前記収容溝は、前記はんだ部が固定されずに載置されただけの状態で前記はんだ部を収容することが好ましい。
【0009】
態様5.開示のモータは、上記の態様1~4のいずれか一つに記載のハウジングと、前記ハウジングに収容されたステータと、前記ステータと径方向に対向配置されるロータと、を備える。
態様6.開示のブロアは、上記の態様5に記載のモータと、前記モータの回転軸に固定されたインペラと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
開示のハウジング、モータ及びブロアによれば、巻線を含む導線同士をはんだ付けしたはんだ部が外縁部に配置された収容溝に収容されるので、外縁部に引き出されたはんだ部の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るブロアを説明するための平面図である。
【
図4】収容溝の延設方向を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、実施形態としてのハウジング、モータ及びブロアについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0013】
実施形態では、ハウジングの一例として、ブロアに用いられるモータのステータを収容するためのハウジングを説明する。
以下の説明では、モータの回転軸が延びる方向(回転軸方向)を軸方向と定義し、軸方向に直交する方向であって回転軸から離れる方向及び回転軸に向かう方向を径方向と定義する。また、径方向において、回転軸側を径方向の内側とし、これと反対側(回転軸から離れる側)を径方向の外側と定義する。軸方向に直交する方向であって回転軸回りに周回する方向を周方向と定義する。
【0014】
[1.構成]
図1は、本実施形態に係るブロア1の構成を説明するための平面図であり、内部構造がわかるようエンドベル12(
図2参照)を省略して示す。
図2は、
図1のA-A矢視断面図である。本実施形態のブロア1は、インペラ2(
図2参照)の回転により気体(例えば空気)を送る送風機である。
【0015】
図1,
図2に示すように、ブロア1には、インペラ2と、インペラ2の駆動源としてのモータ10と、インペラ2及びモータ10を収容するケース体をなすブロアハウジング11(以下、単に「ハウジング11」という)とが含まれる。本実施形態のモータ10は、インナーロータ型のブラシレスモータであり、回転中心Xを持つシャフト21(回転軸)と、これと一体回転するロータ20と、ロータ20の径方向外側(以下、単に「外側」ともいう)に位置するステータ30とを備える。ステータ30はハウジング11に収容されており、ロータ20は、ステータ30と径方向に(本実施形態では径方向の内側に)対向配置されている。
【0016】
図2に示すように、ロータ20は、シャフト21に固定されたマグネット22と、マグネット22を軸方向から挟む二つのバランサ23とを有し、軸受24によりハウジング11及びエンドベル12に対して回転自在に固定される。ステータ30は、ハウジング11の内周面に固定されるステータコア31と、ステータコア31に対してインシュレータ32を介して巻回されたコイル35とを有する。
【0017】
本実施形態では、
図1に示すように、周方向に等間隔で配置された六個のコイル35を有するステータ30を例に挙げる。ステータ30の六個のコイル35は、例えばY結線方式で巻線35aが巻回されてなる。詳しくは、六個のコイル35は、U相,V相,W相のいずれかを構成し、同相を構成する二個のコイル35同士が渡り線(図示省略)により接続される。
【0018】
コイル35を形成する巻線35aの端部(例えば巻き始め)には、巻線35aに電力を供給するためのリード線14がはんだ付けにより接続される。また、各相のコイル35においてリード線14が接続されない側の巻線35aの端部(以下「巻き終わり」と言う)は、一つに結合された中性点を形成し、これらの巻線35aの端部(巻き終わり)同士がはんだ付けにより接続される。
【0019】
本明細書では、ステータ30の巻線35aを含む導線同士がはんだ付けされた部分を、「はんだ部」と称する。なお、巻線35a及びリード線14はいずれも、請求の範囲でいう「導線」に含まれる要素である。
【0020】
以下の説明では、「はんだ部」の一例として、各相のコイル35の巻き終わり同士をはんだ付けしたはんだ部16について述べる。このはんだ部16は、複数本の巻線35aの端部同士を束ねてはんだ付けした部位であることから、はんだ部16において巻線35aの延在する方向(長手方向)に沿って延びた形状、例えば略円柱形状や略楕円体形状といった形状に形成される。なお、はんだ部16は、実際には略円柱形状や略楕円体形状といった綺麗な形状に形成されるとは限らないが、少なくとも巻線35aの延在する方向を長手方向とした形状に形成される。
【0021】
また、ハウジング11の上面側には、複数本(ここでは五本)のリード線14のそれぞれを、ハウジング11及びエンドベル12の内部から外方へ引き出せるように、溝部14Aが形成されている。溝部14Aの個数とリード線14の本数とは同数であり、各溝部14Aに各リード線14を配置することにより、ハウジング11の内部から外方へリード線14を適切に配索できるようになっている。本実施形態では、五本のリード線14のうち三本が巻線35aに接続され、残り二本は、例えば温度センサなどの巻線35a以外の電子機器に接続される。なお、リード線14の本数や接続対象物はこれに限られない。
【0022】
図2に示すように、シャフト21の一端部には、インペラ2が固定されている。インペラ2は、送風用の羽根車であり、例えば、シャフト21に固定された円盤状のベース部とベース部の盤面に放射状に立設された複数のフィンとを含んで構成される。モータ10が作動してシャフト21が回転すると、シャフト21と一体になってインペラ2が回転する。
【0023】
ハウジング11は、インペラ2とモータ10とを収容するための部位として、有底の筒状部11Aと、環状部11Bとを有する。筒状部11Aは、モータ10(すなわちロータ20及びステータ30)の配置空間をその内部に形成する部位であり、環状部11Bは、筒状部11Aの外部であって図示しないカバー部材との間にインペラ2の配置空間を形成する部位である。環状部11Bは、筒状部11Aの側壁部11cの外周面から外側へ連続して形成される。環状部11Bの上端部は、側壁部11cから外側へ延在するフランジ部11fとして機能する。
【0024】
また、本実施形態のハウジング11では、筒状部11Aの底部11dに、シャフト21が挿通される貫通孔と、軸受24及びOリング25が固定される段部11eとが設けられる。シャフト21の下端部は、貫通孔からハウジング11の下面側へ突き出ており、この下端部にインペラ2が固定される。ハウジング11の下面側には、カバー部材が取り付けられる。
【0025】
本実施形態では、ハウジング11に、エンドベル12とカバー部材とが組み合わせられて、ブロア1のケース体が形成される。言い換えると、ハウジング11は、ケース体を構成する部品の一つである。このケース体は、軸方向からみて略円形の外観を有しており、内部にインペラ2とモータ10とが配置(収容)される。ブロア1のケース体の寸法は、少なくともインペラ2とモータ10とを内蔵し得るように設定されている。エンドベル12は、ハウジング11に組み合わされる蓋部材である。本実施形態では、エンドベル12の外周端部12aがハウジング11のフランジ部11fに載置されて、ハウジング11に対してエンドベル12が固定される。
【0026】
上記の筒状部11Aの内部、すなわち、側壁部11cと底部11dとで囲まれた空間がロータ20及びステータ30の配置空間である。以下、便宜上、軸方向において、ハウジング11に対してエンドベル12が配置される側を「第一方向D1」とし、これとは逆側を「第二方向D2」とする。また、軸方向を上下方向と仮定した場合、第一方向D1側を「上」、第二方向D2側を「下」と称する。
【0027】
図1及び
図2に示すように、ハウジング11は、ステータ30を収容するための開口部15を備える。開口部15は、ステータ30を軸方向から収容するものである。開口部15は、筒状部11Aの上端において、側壁部11cの上端縁で囲まれた部位であり、ロータ20及びステータ30を筒状部11A内に配置するための開口を形成する。
【0028】
開口部15は、第一方向D1からみて略円形の輪郭を有する。なお、略円形とは、真円(円形)に限らず円形とみなし得る形状を含む。例えば、開口部15は、第一方向D1からみて円形とみなし得る多角形状であってもよい。筒状部11Aの開口部15は、
図2中に二点鎖線で模式的に示すように、エンドベル12により覆われる。
【0029】
図3は、ハウジング11の要部拡大図である。
図1及び
図3に示すように、ハウジング11には、開口部15に対して径方向の外側においてステータ30の外周30Aを囲繞するように周方向に形成され、且つ、径方向に延在する外縁部17と、外縁部17に引き出されたはんだ部16が収容される収容溝40とが設けられている。
【0030】
外縁部17は、第一方向D1からみて、側壁部11cの上端縁から径方向の外側に向かって面状に形成された円環状の部位である。この面状の外縁部17が、ステータ30側から径方向の外側へ引き出されたはんだ部16を配置する領域をなす。収容溝40は、外縁部17に配置されており、外縁部17に引き出されたはんだ部16を、変形を抑制できるように配置するための溝状の部位である。詳しくは、収容溝40は、はんだ部16をステータ30や巻線35aといった他の部材に干渉しないように配置するように、すなわち、はんだ部16と他の部材とを、物理的に接触させず、かつ、電気的に絶縁させるように構成されている。
【0031】
なお、「はんだ部16を収容する」とは、はんだ部16の少なくとも一部が収容溝40内に収まっていることを意味する。ただし、はんだ部16の周囲に導体が配置されるなどして、はんだ部16とその導体との接触を避けたい場合は、はんだ部16のどの部分も収容溝40外へ露出しないようにすることもできる。なお、巻線35aは、はんだ部16となる部分を除き絶縁性材料で被覆されているので、少なくともはんだ部16が収容溝40に収容されていれば(言い換えると、はんだ付けされておらず被覆されている巻線35aは収容溝40外に露出していても)、電気的絶縁性が確保され得る。
【0032】
本実施形態のハウジング11には、一つのはんだ部16に対応して一つの収容溝40が設けられている。
図1及び
図3に示すよう、外縁部17において収容溝40の配置される位置は、ステータ30側からはんだ部16が引き出される位置に応じて適宜に設定されてよく、ステータ30側からはんだ部16が引き出される位置から収容溝40までの距離が最短距離となるように設定されることが好ましい。この収容溝40の位置は、コイル35の仕様(すなわち各相の巻線35aの配置)に応じて決定してよい。
【0033】
図1及び
図3に示すように、収容溝40は、収容溝40が配置される位置(周方向位置)30Bにおける外周30Aの法線方向Dn(
図4参照)から当該位置30Bにおける外周30Aの接線方向Dt(
図4参照)までのいずれかの方向Dgに延設されている。詳しくは、収容溝40は、外周30A上で収容溝40が配置される位置30Bから上記の方向Dgへ直線状に延設された部位である。以下、収容溝40の延びる方向を「延設方向Dg」とも言う。
【0034】
図4は、収容溝40の延設方向Dgを説明するための模式図である。
図4中の円形は、ステータ30の外周30Aを示している。外周30A上の位置30Bは、収容溝40が配置される位置(収容溝40の径方向内側の端部位置)である。また、
図4では、
図1のハウジング11における収容溝40を破線で模式的に示す。外周30Aの法線方向Dnとは、外周30A上で位置30Bを通る仮想的な法線の延びる方向であり、円形(ステータ30)の径方向に一致する。また、外周30Aの接線方向Dtとは、外周30A上で位置30Bを通る仮想的な接線の延びる方向である。法線方向Dnは、外周30Aが延在する平面において接線方向Dtに対して垂直に交差する方向とも言える。
【0035】
収容溝40の延設方向Dg、すなわち、法線方向Dnから接線方向Dtまでのいずれかの方向Dgとは、位置30Bにおける法線方向Dnから、位置30Bから一方に延びる接線方向Dtまでの略90°の角度範囲Raと位置30Bから他方の延びる接線方向Dtまでの略90°の角度範囲Rbとに収まる領域(すなわち一方の接線方向Dtから他方の接線方向Dtまでの180°内)のいずれかの方向である。
【0036】
ところで、
図3に示すように、収容溝40の延設方向Dgの長さLgは、外縁部17の径方向長さLd(外縁部17が径方向に延在する寸法)と収容溝40の延設方向Dgとによって規定される。収容溝40の長さLgは、はんだ部16を変形することなく収容しうる収容性を確保する観点から、少なくともはんだ部16よりも長く設定されることが好ましい。一方、外縁部17の径方向長さLd(
図3,
図4参照)は、ハウジング11をコンパクト化する観点から、できるだけ短く設定されることが望ましい。
【0037】
そこで、外縁部17の径方向長さLdをできるだけ短く設定し、かつ、収容溝40の長さLgを長く設定するために、外縁部17の径方向長さLdは、はんだ部16の長手方向の長さLsよりも短く設定され、収容溝40は、法線方向Dnと交差する方向に延設される。このように、収容溝40が法線方向Dnに対して接線方向Dt側へ傾斜して設けられることで(すなわち、延設方向Dgが法線方向Dnに一致しないことで)、収容溝40の延設方向Dgの長さLgは、外縁部17の径方向長さLdよりも長く設定できる。言い換えれば、外縁部17の径方向長さLdがはんだ部16の長さLsよりも短く設定されていても、収容溝40の長さLgははんだ部16の長さLsよりも短く設定できる。
【0038】
また、本実施形態の収容溝40は、はんだ部16を変形することなく収容しうる収容性を確保する観点から、法線方向Dn及び接線方向Dt側の両方と交差する方向に延設されている。すなわち、
図4に示すように、収容溝40の延設方向Dgが法線方向Dnにも接線方向Dtにも一致しないように設定される。
【0039】
はんだ部16は、法線方向Dn及び接線方向Dt側の両方と交差する方向へ延出した姿勢で外縁部17に引き出される。そのため、このはんだ部16を法線方向Dnに一致する方向、又は、接線方向Dtに一致する方向へ引き出そうとすると、はんだ部16に加わる外力が大きくなる傾向がある。これに対し、収容溝40が、法線方向Dn及び接線方向Dtの両方と交差する方向に延設された構成は、はんだ部16を収容溝40に収容する際に、はんだ部16を変形させる外力が加わりにくい構成と言える。
【0040】
次に、収容溝40においてはんだ部16を収容するための構造を説明する。
図5は、
図3のB-B矢視断面図である。
図1,
図3及び
図5に示すように、収容溝40は、外縁部17に引き出されて収容溝40に収容されたはんだ部16に対して、周方向の両側と径方向の外側との三方に配置された壁面41,42,43で画成されはんだ部16を収容可能な空間44を有する。
【0041】
壁面41,42は、収容溝40の底面45に対して周方向の両側に配置された壁部である。壁面43は、底面45に対して径方向の外側に配置された壁部である。また、収容溝40の上面側と径方向の内側とは壁部が設けられておらず、開放されている。なお、以下、壁面41,42と壁面43とを区別する場合、壁面41,42を「側壁41,42」と称し、壁面43を「外壁43」と称する。
【0042】
図3及び
図5に示す構成例では、各側壁41,42は、外縁部17の上面から第一方向D1へ立設され、周方向に互いに離隔して略平行に配置されている。また、外壁43は、外縁部17の上面から第一方向D1へ立設されている。なお、この実施形態の外壁43は、外縁部17の外周(径方向の外側の周縁)に突設された外周壁18の一部で形成されているが、外壁43は、他の部位又は部材の一部が兼用される構成に限らず、独立した部位又は部材で形成されてもよい。また、
図5では、外縁部17の上面と収容溝40の底面45とが略同じ軸方向位置にあるが、前者が後者よりも第一方向D1側に位置してもよいし第二方向D2側に位置してもよい。なお、二つの側壁41,42の幅は必ずしも同一でなくてもよい。
【0043】
収容溝40の高さTg(深さ)、幅Wg及び延設方向Dgの長さLgの三つの寸法は、はんだ部16を収容可能な空間44を形成できるように、はんだ部16の高さTs、幅Ws及び長手方向の長さLsのそれぞれよりも長く設定される。
収容溝40の高さTgは、軸方向の寸法であり、底面45から壁面41,42,43の上面までの寸法である。なお、
図5に示す収容溝40では、各側壁41,42と外壁43とは、互いに共通の高さに形成されるものとする。
【0044】
収容溝40の幅Wgは、側壁41,42同士が周方向に離隔する寸法である。すなわち、幅Wgは、側壁41,42の向かい合う面同士の間隔であり、空間44の周方向の寸法(幅)とも言える。
収容溝40の延設方向Dgの長さLg(
図3参照)は、収容溝40の外周30A上の位置30Bから外壁43までの距離(位置30Bと外壁43とを直線状に結んだ長さ)と言える。この長さLgは、収容溝40の延設方向Dgと外縁部17の径方向長さLdとにより規定される。
【0045】
はんだ部16の高さTs及び幅Wsは、例えばはんだ部16を略円柱形状であるとみなしたときの外径に相当する部分の長さである。実際には、はんだ部16の形状は必ずしも略円柱形状とはならないことから、はんだ部16の高さTsは、はんだ部16を底面45に載置したときの軸方向の寸法とも言え、また、はんだ部16の幅Wsは、はんだ部16を底面45に載置したときの周方向の寸法とも言える。
【0046】
はんだ部16の長さLsは、はんだ部16を略円柱形状だとみなしたときの高さに相当する部分の長さである。実際には、はんだ部16の形状は必ずしも略円柱形状とはならないことから、はんだ部16の長さLsは、高さTs及び幅Wsに交差する方向の長さであり、はんだ部16において巻線35aの延在する方向に沿う寸法とも言える。はんだ部16は、通常は、高さTs及び幅Wsよりも長さLsが長くなることから、はんだ部16の長さLsとは、はんだ部16の長手方向の寸法と言える。
【0047】
収容溝40内にはんだ部16を収容する作業において、はんだ部16に加わる外力を抑制する観点から、収容溝40の寸法(特に、幅Wg及び長さLg)は、はんだ部16の寸法(特に、幅Ws及び長さLs)に対して十分なゆとりを持った大きさに設定されることが好ましい。収容溝40の寸法がはんだ部16の寸法に対して小さいと、収容溝40内にはんだ部16が収容される作業時に、はんだ部16が無理やり押し込まれたり、はんだ部16が変形したりする場合がある。
【0048】
本実施形態の収容溝40では、外縁部17に引き出されたはんだ部16が、収容溝40の上側及び径方向の内側の開放された箇所から、空間44内へ収容される。収容溝40は、固定されずに載置されただけの状態で、はんだ部16を収容する。すなわち、はんだ部16を収容する作業では、収容溝40内にはんだ部16を接着剤や突起等で固定したりしない。言い換えれば、収容溝40には、収容されたはんだ部16を固定する構造は設けられていない。
【0049】
なお、上述した
図1~
図5のハウジング11を組み立てる手順について付言する。ハウジング11を組み立てる場合、先ずハウジング11の筒状部11A内にロータ20及びステータ30を配置する。次に、巻線35aとリード線14や、巻線35aの巻き終わり同士といった、導線同士をはんだ付けする。それから、巻線35aの巻き終わりをはんだ付けしてなるはんだ部16を収容溝40に配置する。なお、巻線35aとリード線14とをはんだ付けした部分についても、所定の位置に配置する。その後、ハウジング11にエンドベル12を組み合わせて、開口部15を覆う。
【0050】
最後に、モータ10とブロア1の構造を説明する。モータ10は、上述したハウジング11と、ハウジング11に収容されたステータ30と、ステータ30と径方向に対向配置されたロータ20を含む。
また、本実施形態のブロア1は、このモータ10と、モータ10のシャフト21(回転軸)に固定されたインペラ2とを含んで構成される。
【0051】
[2.効果]
(1)上述したハウジング11では、開口部15の径方向外側に形成された外縁部17に収容溝40が設けられており、この収容溝40は、外周30A上の位置30Bの法線方向Dnから接線方向Dtまでのいずれかの方向Dgに延設されている。そのため、開口部15に対して径方向の外側に引き出したはんだ部16を、外縁部17に配置された収容溝40に収容できる。
【0052】
巻線35aを含む導線同士をはんだ付けしたはんだ部16が収容溝40に収容されることで、はんだ部16の変形を抑制できる。さらに、収容溝40にはんだ部16を収容するだけの構成であるため、接着剤や突起を用いて中性点結線を固定する従来技術に比べて、はんだ部16が外力で変形することを抑制できる。したがって、接続品質を確保することができ、ひいてはモータ10やブロア1の品質向上を図ることができる。
【0053】
また、本実施形態の収容溝40は、三つの壁面41,42,43で画成された空間44を有しており、この空間44にはんだ部16を収容可能となっている。このため、収容溝40内に収容されたはんだ部16は、壁面41,42,43によって、ステータ30や巻線35aといった他の部材から隔絶される。そのため、収容溝40内に収容されたはんだ部16が他の部材と干渉しない。したがって、本実施形態のような空間44を有する構成であれば、はんだ部16の変形をさらに抑制することができる。
【0054】
(2)上述したハウジング11では、外縁部17の径方向長さLdは、はんだ部16の長手方向の長さLsよりも短く設定されており、収容溝40は法線方向Dnと交差する方向に延設されている。このため、収容溝40の長さLgを外縁部17の径方向長さLdよりも長く形成することができ、収容溝40内ではんだ部16を収容可能な距離(長さ)をより長く設定できる。
【0055】
そのため、はんだ部16の長さLsが外縁部17の径方向長さLdよりも長い場合であっても、はんだ部16に曲げ変形を加える(撓ませる)ことなく、収容溝40内に収容できる。これにより、はんだ部16が外力で変形することをより抑制でき、接続品質を確保することができる。
また、収容溝40の長さLgを長く設定し、かつ、外縁部17の径方向長さLdを抑制できるので、ハウジング11のコンパクト化(大型化抑制)に寄与できる。
【0056】
(3)また、上述したハウジング11では、収容溝40が、法線方向Dn及び接線方向Dtの両方と交差する方向に延設されている。このため、外縁部17へ引き出されたはんだ部16に、過大な曲げ変形を加えることなく収容溝40内へ収容することができる。そのため、はんだ部16が外力で変形することをより一層抑制でき、接続品質を確保することができる。
【0057】
(4)さらに、上述したハウジング11では、はんだ部16が固定されずに底面45に載置されただけの状態で収容溝40に収容されるので、接着剤や突起を用いて中性点結線を固定する従来技術に比べて、収容溝40にはんだ部16を収容する作業時に外力が加わりにくい。そのため、はんだ部16が外力で変形する可能性を小さくすることができ、接続品質を確保することができる。
【0058】
(5)上述したハウジング11を備えたモータ10によれば、少なくとも上記の(1)でハウジング11について述べた効果と同様の効果が得られる。また、上記の(2)~(4)に記載の構成を持つハウジング11を含むモータ10であれば、上記の(2)~(4)に記載の効果と同様の効果も得ることができる。
【0059】
(6)さらに、上述したモータ10と、モータ10のシャフト21に固定されたインペラ2とを含むブロア1によれば、少なくとも上記の(5)でモータ10について述べた効果と同様の効果が得られる。なお、ブロア1が、上記の(2)~(4)に記載の構成を持つハウジング11を含むモータ10を備えることにより、上記の(2)~(4)に記載の効果と同様の効果も得ることができる。
【0060】
[3.その他]
上述したハウジング11、モータ10及びブロア1は一例であって、上述した構成に限られない。
例えば、収容溝40は、外縁部17の上面から立設された壁面41,42,43で画成された空間44を有する構造に限らず、外縁部17の上面を掘削して形成された空間を有する構造でもよい。この場合、外縁部17の上面を掘削して形成された空間において周方向の両側と径方向の外側との三方に配置された壁面が、当該空間を画成する壁面となる。
【0061】
なお、
図1及び
図2に示すブロア1のケース体では、軸方向の寸法(厚さ)を薄型化することが望まれている。そのため、ハウジング11の軸方向の寸法(厚さ)も薄型化されている。このような薄型のハウジング11では、外縁部17を掘削するための厚さを確保しにくい。よって、立設された壁面41,42,43で画成された空間44を有する上記の収容溝40の構造は、ハウジング11を薄型化し、かつ、はんだ部16を収容可能な高さTgを設定しやすい点で有利である。
なお、ハウジング11は、必ずしも、三方に配置された壁面で画成される空間を必要としない。例えば、はんだ部16の側方(二方向)に壁面を設けることで、はんだ部16の変形を抑制できる構造としてもよい。
【0062】
また、収容溝40の延設方向Dgは、法線方向Dnに一致する方向であってもよいし、接線方向Dtに一致する方向であってもよい。
また、外縁部17の径方向長さLdは、はんだ部16の長手方向の長さLs以上であってもよい。この場合、収容溝40が法線方向Dnに一致する方向に延設された構造であっても、収容溝40の長さLgがはんだ部16の長手方向の長さLs以上に設定され得る。
【0063】
はんだ部16は、巻線35aの端部同士をはんだ付けした部位に限らず、巻線35aとリード線14とをはんだ付けした部位や、リード線14同士をはんだ付けした部位であってもよい。
【0064】
また、ハウジング11の形状は、図示の形状に限らず、例えば
図1及び
図2に示す環状部11Bを有さない円筒形状であってもよい。
また、モータ10の種類はインナーロータ型ブラシレスモータに限られず、アウターロータ型のモータに適用してもよいし、ブラシ付きモータに適用してもよい。
上述した収容溝40を有するハウジング11の適用対象はブロア1に限らず、任意の機器に適用可能である。収容溝40を有するハウジング11を適用可能なブロア以外の対象物の一例として、樹脂ギアボックスがある。
【符号の説明】
【0065】
1 ブロア
2 インペラ
10 モータ
11 ブロアハウジング(ハウジング)
11A 筒状部
11B 環状部
11c 側壁部
11d 底部
11e 段部
11f フランジ部
12 エンドベル
12a 外周端部
14 リード線(導線)
14A 溝部
15 開口部
16 はんだ部
17 外縁部
18 外周壁
20 ロータ
21 シャフト
22 マグネット
23 バランサ
24 軸受
25 Oリング
30 ステータ
30A 外周
30B 位置(周方向位置)
31 ステータコア
32 インシュレータ
35 コイル
35a 巻線(導線)
40 収容溝
41,42 側壁(壁面)
43 外壁(壁面)
44 空間
45 底面
D1 第一方向
D2 第二方向
Dg 収容溝の延設方向
Dn 法線方向
Dt 接線方向
Ld 外縁部の径方向長さ
Lg 収容溝の長さ
Ls はんだ部の長さ(長手方向の長さ)
Ra,Rb 角度範囲
【要約】
モータ(10)のステータ(30)を収容するハウジング(11)は、ステータ(30)を収容するための開口部(15)と、開口部(15)に対して径方向の外側においてステータ(30)の外周(30A)を囲繞するように周方向に形成され、且つ、径方向に延在する外縁部(17)と、ステータ(30)の巻線(35a)を含む導線同士がはんだ付けされるとともに外縁部(17)に引き出されたはんだ部(16)が収容される収容溝(40)と、を備える。収容溝(40)は、外縁部(17)に配置されており、収容溝(40)が配置される周方向位置における外周(30A)の法線方向から当該周方向位置における外周(30A)の接線方向までのいずれかの方向に延設されている。