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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】防振部材および圧縮機の支持構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20250206BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20250206BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
F16F15/08 L
F16F15/08 V
F16F1/36 K
F04B39/00 102Q
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023186950
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2024-04-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】和田 昌浩
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-164342(JP,U)
【文献】特開2017-067154(JP,A)
【文献】特開2014-105853(JP,A)
【文献】特開2005-180648(JP,A)
【文献】特開2016-114194(JP,A)
【文献】実開昭50-050407(JP,U)
【文献】実開昭58-140345(JP,U)
【文献】特開2006-292331(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051017(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02-15/08
F16F 1/36
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体からなり、軸方向に貫通する貫通孔が形成された中空状の防振部材であって、
筒状の胴部と、
前記軸方向において前記胴部の一方側に設けられる筒状の首部と、を備え、
前記胴部は、前記軸方向から見て、前記首部に対して前記貫通孔の径方向に突出するように設けられた複数の厚肉部と、前記径方向における前記首部に対する突出長さが前記首部に対する前記厚肉部の突出長さよりも小さい複数の薄肉部とを有し、
前記軸方向から見て、前記複数の厚肉部および前記複数の薄肉部は、前記胴部の軸心周りに45°または60°ごとに交互に設けられ
前記胴部は、前記軸方向から見て、前記径方向における前記複数の厚肉部の先端部において仮想円に接する、防振部材。
【請求項2】
前記径方向における前記厚肉部の先端部は、前記軸方向から見て、R面状またはC面状に形成されている、請求項1に記載の防振部材。
【請求項3】
前記胴部は、前記軸方向から見て、四角形状、または四角形の各頂点をR面状またはC面状に形成した形状を有する、請求項1または2に記載の防振部材。
【請求項4】
前記胴部は、前記軸方向から見て、三角形状、または三角形の各頂点をR面状またはC面状に形成した形状を有する、請求項1または2に記載の防振部材。
【請求項5】
前記軸方向において前記首部の一方側に設けられ、かつ前記首部に対して前記径方向に突出する環状の顎部をさらに備える、請求項1または2に記載の防振部材。
【請求項6】
複数の取付脚を有する圧縮機を、ベース上で支持するための支持構造であって、
前記ベース上において、前記複数の取付脚を複数の請求項1に記載された前記防振部材によって支持する、圧縮機の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振部材および圧縮機の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷蔵庫および空調設備等(以下、冷蔵庫等と記載する。)において、圧縮機において発生した振動が冷蔵庫等の他の部材(筐体等)に伝達されることを抑制するための支持構造が提案されている。例えば、特許文献1には、複数の支持体によって圧縮機を支持する支持装置が開示されている。特許文献1に記載された支持装置では、複数の支持体を弾性体によって構成することによって、圧縮機の振動を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-235665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような支持装置の製造コストを低減するためには、例えば、各支持体の体積を小さくして、材料コストを低減することが考えられる。しかしながら、支持体の寸法を単に小さくすると、防振機能が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、体積を低減しつつ防振機能を維持することができる防振部材およびそれを備えた支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、防振部材の体積を低減しつつ、防振機能を維持するための構成について、以下に説明する検討を行った。
【0007】
図9は、従来の防振部材を示す外観斜視図である。図9に示す従来の防振部材100は、弾性体からなる。防振部材100には、軸方向Zに貫通する貫通孔100aが形成されている。
【0008】
防振部材100は、首部102と、顎部104と、胴部106とを有している。首部102は、円筒形状を有している。顎部104は、軸方向Zにおいて首部102の一方側に設けられている。顎部104は、首部102に対して貫通孔100aの径方向に突出するように環状に形成されている。胴部106は、円筒形状を有し、軸方向Zにおいて首部102の他方側に設けられている。
【0009】
図10は、図9に示した防振部材の使用例を示す図である。図10には、防振部材100に加えて、圧縮機200の一部が示されている。具体的には、圧縮機200が有する複数の取付脚202のうちの一つが示されている。
【0010】
図10に示すように、防振部材100は、冷蔵庫等のベース300上に圧縮機200を支持するために用いられる。図10に示す例では、取付脚202に形成された取付穴202aに防振部材100の首部102が嵌められている。この状態で、ベース300の下方から、ベース300に形成された取付穴300aおよび防振部材100の貫通孔100a(図9参照)にボルト400を挿入するとともに、ボルト400の先端部にナット402を嵌める。ナット402を締め込むことによって、顎部104によって取付脚202が胴部106に押し付けられるとともに、胴部106がベース300に押し付けられる。圧縮機200の複数の取付脚202に対してそれぞれ同様に防振部材100が取り付けられる。これにより、ベース300上において圧縮機200が複数の防振部材100によって弾性的に支持され、圧縮機200で発生した振動がベース300に伝達されることを抑制することができる。
【0011】
上記の防振部材100において、本発明者は、胴部106の外径を小さくすることによって、防振部材100の体積を低減することを試みた。しかしながら、胴部106の外径を小さくした場合には、防振機能が低下することが分かった。
【0012】
次に、本発明者は、軸方向から見たときに胴部に外接する円の直径を十分に確保しつつ、胴部の体積を低減することを試みた。図11は、本発明者が検討した胴部の形状を説明するための図である。なお、図11には、防振部材の軸方向における一方側から見た胴部の外縁の形状を示している。また、図11においては、図9に示した防振部材100の胴部106の外縁の形状を一点鎖線で示し、胴部106に対して体積を低減した形状の胴部106a,106bの外縁の形状を実線で示している。
【0013】
本発明者は、まず、図11(a)に示すように、胴部106aの外周縁を略四角形状とすることを検討した。この場合、胴部106aに外接する円の直径を胴部106の直径と同等に維持しつつ、胴部106aの体積を胴部106に比べて十分に低減することができる。
【0014】
さらに、本発明者は、胴部106を備えた防振部材100および胴部106aを備えた防振部材について、軸方向および軸方向に直交する方向の振動伝達特性(防振特性)を実験により評価した。その結果、胴部106を備えた防振部材100と、胴部106aを備えた防振部材とで、振動伝達特性に大きな差は生じなかった。すなわち、防振部材の体積を低減しつつ、防振部材の防振機能を維持することができた。なお、軸方向に直交する方向については、図11(a)に矢印X1,X2で示す二方向の振動伝達特性を評価した。その結果、振動方向によって振動伝達特性に大きな差は生じなかった。この結果から、胴部106aを備えた防振部材は、圧縮機200(取付脚202)への取付方向に関係無く、防振機能を適切に発揮できることが分かった。
【0015】
次に、本発明者は、図11(b)に示すように、胴部106bの外周縁を略三角形状とすることを検討した。胴部106bを備えた防振部材についても、軸方向および軸方向に直交する方向の振動伝達特性(防振特性)を実験により評価した。その結果、胴部106を備えた防振部材100と、胴部106bを備えた防振部材とで、振動伝達特性に大きな差は生じなかった。すなわち、胴部106bの体積を胴部106に比べてさらに低減しつつ、防振部材の防振機能を維持することができた。また、軸方向に直交する方向については、図11(b)に矢印X3,X4で示す二方向の振動伝達特性を調査した。その結果、振動方向によって振動伝達特性に大きな差は生じなかった。すなわち、胴部106bを備えた防振部材も、圧縮機200(取付脚202)への取付方向に関係無く、防振機能を適切に発揮できることが分かった。
【0016】
本発明は、上記の知見に基づいて完成したものであり、下記の防振部材および圧縮機の支持構造を要旨とする。
【0017】
(1)弾性体からなり、軸方向に貫通する貫通孔が形成された中空状の防振部材であって、
筒状の胴部と、
前記軸方向において前記胴部の一方側に設けられる筒状の首部と、を備え、
前記胴部は、前記軸方向から見て、前記首部に対して前記貫通孔の径方向に突出するように設けられた複数の厚肉部と、前記径方向における前記首部に対する突出長さが前記首部に対する前記厚肉部の突出長さよりも小さい複数の薄肉部とを有し、
前記軸方向から見て、前記複数の厚肉部および前記複数の薄肉部は、前記胴部の軸心周りに交互に設けられる、防振部材。
【0018】
(2)前記軸方向から見て、前記複数の厚肉部および前記複数の薄肉部は、前記胴部の軸心周りに45°または60°ごとに交互に設けられる、上記(1)に記載の防振部材。
【0019】
(3)前記径方向における前記厚肉部の先端部は、前記軸方向から見て、R面状またはC面状に形成されている、上記(1)または(2)に記載の防振部材。
【0020】
(4)前記胴部は、前記軸方向から見て、四角形状、または四角形の各頂点をR面状またはC面状に形成した形状を有する、上記(1)または(2)に記載の防振部材。
【0021】
(5)前記胴部は、前記軸方向から見て、三角形状、または三角形の各頂点をR面状またはC面状に形成した形状を有する、上記(1)または(2)に記載の防振部材。
【0022】
(6)前記軸方向において前記首部の一方側に設けられ、かつ前記首部に対して前記径方向に突出する環状の顎部をさらに備える、上記(1)または(2)に記載の防振部材。
【0023】
(7)複数の取付脚を有する圧縮機を、ベース上で支持するための支持構造であって、
前記ベース上において、前記複数の取付脚を複数の前記防振部材によって支持する、圧縮機の支持構造。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、防振部材の体積を低減しつつ、防振部材の防振機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る支持構造を示す概略図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る防振部材を示す外観斜視図である。
図3図3は、図2の防振部材を示す正面図である。
図4図4は、図3のA-A部分を示す断面図である。
図5図5は、図3のB-B部分を示す断面図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態に係る防振部材を示す外観斜視図である。
図7図7は、防振部材を示す正面図である。
図8図8は、図7のA-A部分を示す断面図である。
図9図9は、従来の防振部材を示す外観斜視図である。
図10図10は、図9に示した防振部材の使用例を示す図である。
図11図11は、本発明者が検討した胴部の形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る防振部材および圧縮機の支持構造について図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る支持構造を示す概略図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る防振部材を示す外観斜視図である。また、図3は、防振部材を示す正面図であり、図4は、図3のA-A部分を示す断面図であり、図5は、図3のB-B部分を示す断面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る支持構造10は、ベース300上に圧縮機200を支持するために設けられている。支持構造10は、圧縮機200の複数の取付脚202に対応するように、複数(本実施形態では3つ)の防振部材12を備えている。各防振部材12は、ゴム等の弾性体からなる。防振部材12の材料としては、種々のゴムを採用することができる。具体的には、防振部材12の材料として、例えば、イソブチレン-イソプレン共重合ゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)及びエチレン-プロピレン共重合ゴムの群から選ばれる1種又は2種以上を好適に利用することができる。とりわけ、防振性能が高いイソブチレンーイソプロピレン共重合ゴム(IIR)を含ませるのが特に好適である。後述の実施形態についても同様である。
【0028】
防振部材12には、軸方向Z(図2参照)に貫通する貫通孔12aが形成されている。貫通孔12aには、防振部材12を固定するための棒状部材(ボルト等)が挿入される。本実施形態では、各防振部材12は、上述の防振部材100と同様に、ボルト400およびナット402によって、ベース300および取付脚202に取り付けられることによって、ベース300上で圧縮機200を支持する。
【0029】
図2図5に示すように、防振部材12は、首部20と、顎部22と、胴部24とを有している。首部20は、筒状(本実施形態では、円筒状)に形成されている。顎部22は、防振部材12の軸方向Zにおいて、首部20の一方側に設けられている。顎部22は、首部20に対して貫通孔12aの径方向に突出するように環状に形成されている。本実施形態では、顎部22は、軸方向Zにおける一方側ほど直径が小さくなるように、テーパー状に形成されている。
【0030】
胴部24は、防振部材12の軸方向Zにおいて、首部20の他方側に設けられている。胴部24は、筒状(本実施形態では、角筒状)に形成されている。なお、本実施形態では、貫通孔12aは、断面円形状を有しているが、貫通孔12aの断面形状は、円形状に限定されない。貫通孔12aの断面形状が円形状でない場合には、貫通孔12aの径方向とは、軸方向Zから見て、貫通孔12aの中心を中心とする仮想円の径方向を意味する。後述の実施形態においても同様である。以下、貫通孔12aの径方向を、単に径方向と記載する。なお、図4においては、軸方向Zから見た首部20の外縁の位置を一点鎖線で示し、胴部24に外接する仮想円26を二点鎖線で示している。
【0031】
図2および図4に示すように、胴部24は、複数の厚肉部40と、複数の薄肉部42とを有している。軸方向Zから見て、径方向における首部20に対する薄肉部42の突出長さ(径方向における薄肉部42の厚み)は、径方向における首部20に対する厚肉部40の突出長さ(径方向における厚肉部40の厚み)よりも小さい。複数の厚肉部40と複数の薄肉部42とは、胴部24の軸心周りに交互に設けられている。本実施形態では、複数の厚肉部40と複数の薄肉部42とは、胴部24の軸心周りに45°ごとに設けられている。なお、図4に示すように、本実施形態では、軸方向Zから見て、複数の厚肉部40および複数の薄肉部42の全体が、首部20よりも径方向外側に突出するように設けられている。しかしながら、薄肉部42の一部が、首部20よりも径方向外側に突出していなくてもよい。例えば、胴部24の周方向において、各薄肉部42の中心部(厚肉部40と厚肉部40との中間部)の外側面が、首部20の外周面と面一になっていてもよい。後述の実施形態においても同様である。
【0032】
図1に示すように、軸方向Zにおける胴部24の一方側の端面24aは、圧縮機200(取付脚202)を支持する支持面として機能する。以下、端面24aを支持面24aと記載する。図2に示すように、本実施形態では、支持面24aは、平面状に形成されている。支持面24aは、複数の幅広部40aと、複数の幅狭部42aとを含む。幅広部40aは、厚肉部40の端面であり、幅狭部42aは、薄肉部42の端面である。軸方向Zから見て、径方向における首部20に対する幅狭部42aの突出長さは、首部20に対する幅広部40aの突出長さよりも小さい。
【0033】
図2および図4に示すように、径方向における厚肉部40の先端部40bは、軸方向Zから見て、R面状(弧状)に形成されている。本実施形態では、胴部24は、軸方向Zから見て、四角形の各頂点をR面状に湾曲させた形状を有している。
【0034】
(作用効果)
本実施形態に係る防振部材12では、胴部24は、複数の厚肉部40と、複数の薄肉部42とを有している。首部20に対する各厚肉部40の突出量を大きくすることによって、胴部24に外接する仮想円26の直径を大きくすることができる。この場合、胴部24によって圧縮機200を安定して支持することができるので、十分な防振機能を実現できる。一方で、隣り合う厚肉部40の間に薄肉部42が設けられていることにより、胴部24の体積を小さくすることができる。すなわち、本実施形態に係る防振部材12では、体積を低減しつつ、防振機能を維持することができる。
【0035】
なお、防振部材12は、例えば、防振部材12の形状に対応する複数のキャビティを有する金型を用いて製造することができる。本実施形態では、軸方向Zから見て、薄肉部42の外縁は、胴部24(複数の厚肉部40)に外接する仮想円26よりも内側を通るように設けられている。この場合、円形状の胴部に対応する複数のキャビティを金型に形成する場合に比べて、胴部24を成形するための複数のキャビティを、互いの隙間を小さくして配置することができる。これにより、防振部材12の材料コストを低減できるだけでなく、1つの金型からの防振部材12の取り数を多くすることができる。したがって、防振部材12を低コストで効率良く製造することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る防振部材12では、各厚肉部40の先端部40bは、R面状に湾曲している。この場合、厚肉部の先端部が尖った形状をしている場合に比べて、金型から防振部材12を取り出しやすくなる。また、胴部24の周方向における先端部40bの幅を大きくできるので、圧縮機200をより安定して支持することができる。なお、図示は省略するが、厚肉部40の先端部40bが、C面状(直線状)に形成されていてもよい。この場合も、同様の効果が得られる。
【0037】
また、本実施形態では、軸方向Zにおいて、首部20の一方側に顎部22が設けられている。これにより、防振部材12によって圧縮機200を支持する際に、取付脚202が防振部材12から上方に抜けることを防止することができる。その結果、圧縮機200をより安定して支持することができる。後述の実施形態においても同様である。
【0038】
(他の実施形態)
上述の実施形態では、軸方向Zから見て、胴部24が略四角形状を有する場合について説明したが、胴部の形状は上述の例に限定されない。図6は、本発明の他の実施形態に係る防振部材を示す外観斜視図であり、図7は、防振部材を示す正面図である。また、図8は、図7のA-A部分を示す断面図である。
【0039】
図6図8に示すように、本実施形態に係る防振部材13は、首部30と、防振部材13の軸方向Zにおいて首部30の一方側に設けられた顎部32と、軸方向Zにおいて首部30の他方側に設けられた胴部34とを有している。なお、図8においては、軸方向Zから見た首部30の外縁の位置を一点鎖線で示し、胴部34に外接する仮想円36を二点鎖線で示している。
【0040】
上述の防振部材12と同様に、防振部材13には、軸方向Zに貫通する貫通孔13aが形成されている。なお、首部30および顎部32は、上述の防振部材12の首部20および顎部22と同様に構成できるので、説明は省略する。
【0041】
図6および図8に示すように、胴部34は、複数の厚肉部46と、複数の薄肉部48とを有している。本実施形態では、軸方向Zから見て、胴部34のうち、首部30よりも径方向外側に突出する部分に、複数の厚肉部46および複数の薄肉部48が設けられている。軸方向Zから見て、径方向における首部30に対する薄肉部48の突出長さは、首部30に対する厚肉部46の突出長さよりも小さい。複数の厚肉部46と複数の薄肉部48とは、胴部34の軸心周りに交互に設けられている。本実施形態では、複数の厚肉部46と複数の薄肉部48とは、胴部34の軸心周りに60°ごとに設けられている。
【0042】
本実施形態においても、軸方向Zにおける胴部34の一方側の端面34aは、取付脚202(図1参照)を支持する支持面として機能する。以下、端面34aを支持面34aと記載する。図6に示すように、本実施形態では、支持面34aは、平面状に形成されている。支持面34aは、複数の幅広部46aと、複数の幅狭部48aとを含む。幅広部46aは、厚肉部46の端面であり、幅狭部48aは、薄肉部48の端面である。軸方向Zから見て、径方向における首部30に対する幅狭部48aの突出長さは、首部30に対する幅広部46aの突出長さよりも小さい。
【0043】
図6および図8に示すように、本実施形態では、径方向における厚肉部46の先端部46bは、軸方向Zから見て、R面状(弧状)に形成されている。本実施形態では、胴部34は、軸方向Zから見て、三角形の各頂点をR面状に湾曲させた形状を有している。
【0044】
(作用効果)
本実施形態に係る防振部材13においても、胴部34は、複数の厚肉部46と、複数の薄肉部48とを有している。首部30に対する各厚肉部46の突出量を大きくすることによって、胴部34に外接する仮想円36の直径を大きくすることができる。この場合、胴部34によって圧縮機200を安定して支持することができるので、十分な防振機能を実現できる。一方で、隣り合う厚肉部46の間に薄肉部48が設けられていることにより、胴部34の体積を小さくすることができる。したがって、本実施形態に係る防振部材13においても、体積を低減しつつ、防振機能を維持することができる。
【0045】
また、本実施形態においても、軸方向Zから見て、薄肉部48の外縁は、胴部34(複数の厚肉部46)に外接する仮想円36よりも内側を通るように設けられている。したがって、円形状の胴部に対応する複数のキャビティを金型に形成する場合に比べて、胴部34を成形するための複数のキャビティを、互いの隙間を小さくして配置することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る防振部材13においても、各厚肉部46の先端部46bはR面状に湾曲している。これにより、金型から防振部材13を容易に取り出すことができる。また、胴部34の周方向における先端部46bの幅を大きくできるので、圧縮機200をより安定して支持することができる。なお、図示は省略するが、厚肉部46の先端部46bが、C面状(直線状)に形成されていてもよい。この場合も、同様の効果が得られる。
【0047】
(変形例)
上述の実施形態では、胴部24が、軸方向Zから見て、四角形の各頂点をR面状またはC面状に形成した形状を有する場合について説明したが、胴部24が、軸方向Zから見て四角形であってもよい。また、上述の実施形態では、胴部34が、軸方向Zから見て、三角形の各頂点をR面状またはC面状に形成した形状を有する場合について説明したが、胴部34が、軸方向Zから見て、三角形であってもよい。
【0048】
上述の実施形態では、防振部材12,13が顎部22,32を有する場合について説明したが、顎部は設けられなくてもい。ただし、圧縮機200(取付脚202)が防振部材から上方に抜けることを確実に防止する観点からは、防振部材が顎部を有することが好ましい。
【実施例
【0049】
以下、実施例により本発明に係る防振部材の効果を説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0050】
図2~5に示した実施例1の防振部材12、図6~8に示した実施例2の防振部材13、および図9に示した比較例の防振部材100について、振動伝達特性(防振特性)を評価した。防振部材12、防振部材13および防振部材100は、同一の材料(弾性体)によって作製した。また、実施例1,2および比較例の防振部材12,13,100の高さ(軸方向の寸法)は互いに等しくし、首部および顎部の寸法も等しくした。また、実施例1,2の防振部材12,13の胴部24,34に外接する仮想円26,36(図4図8参照)の直径および比較例の防振部材100の胴部106(図9参照)の直径は等しくした。
【0051】
実施例1,2および比較例の防振部材12,13,100に対して正弦波掃引振動試験を実施し、共振周波数および振動伝達率の最大値(共振時の振動伝達率)を測定した。実施例1の振動試験では、3つの防振部材12を用意し、錘部材(7.5kg)を3つの防振部材12によって振動試験機のステージ上で支持した。ステージに対して、鉛直方向(軸方向Z)および水平方向(図4に矢印X1,X2で示す方向:以下、水平方向X1,X2と記載する。)の振動を与えて、ステージから3つの防振部材12を介して錘部材に伝達される振動(加速度)を測定した。錘部材に伝達される振動は、錘部材に取り付けた振動計によって測定した。なお、図4に示すように、防振部材12の軸方向Zから見て、水平方向X1は、任意の薄肉部42の外側面42bに垂直な方向である。水平方向X2は、水平方向X1に対して45°傾斜した方向である。試験中にステージに与える振動の条件は、加速度:0.3G、周波数:5~200Hz、掃引速度:2oct/minとした。
【0052】
実施例2の振動試験においても同様に、錘部材(7.5kg)を3つの防振部材13によって振動試験機のステージ上で支持した。ただし、実施例2の振動試験では、ステージに対して、鉛直方向(軸方向Z)および水平方向(図8に矢印X3,X4で示す方向:以下、水平方向X3,X4と記載する。)の振動を与えて、ステージから3つの防振部材13を介して錘部材に伝達される振動(加速度)を測定した。なお、図8に示すように、防振部材13の軸方向Zから見て、水平方向X3は任意の薄肉部48の外側面48bに垂直な方向である。水平方向X4は、水平方向X3に対して60°傾斜した方向である。試験中にステージに与える振動の条件は、実施例1と同様である。
【0053】
比較例の振動試験においても、3つの防振部材100を用意し、実施例1,2と同様の条件で振動試験を行った。ただし、水平方向の振動試験については、一方向のみの試験を行った。
【0054】
下記の表1~3に、実施例1,2および比較例の振動試験結果を示す。なお、表1~3に示す振動伝達率(dB)は、ステージに与える加速度をG,振動計によって測定された加速度をGとして、下記式によって算出される値である。下記の表1~3には、各振動試験において算出された振動伝達率の最大値を示している。振動伝達率が0を超えている場合は、ステージから錘部材に伝達された振動の振幅が増加したことを意味し、振動伝達率が0未満の場合は、ステージから錘部材に伝達された振動の振幅が減少したことを意味する。
振動伝達率(dB)=20log10(G/G
【0055】
【表1】
【表2】
【表3】
【0056】
表1~3に示すように、実施例1,2および比較例の振動試験において、水平方向の振動に対する共振周波数および振動伝達率の最大値に大きな差は生じなかった。また、鉛直方向の振動に対しても、実施例1,2および比較例の振動試験において、共振周波数および振動伝達率の最大値に大きな差は生じなかった。この結果から、水平方向および鉛直方向(軸方向Z)の振動に対して、実施例1,2の防振部材12,13および比較例の防振部材100は、同様の振動伝達特性(防振特性)を有していることが分かる。以上のことから、本発明に係る防振部材12,13によれば、防振機能を維持しつつ体積を低減できることが分かる。
【0057】
また、表1に示すように、実施例1の防振部材12に対して、水平方向X1の振動を与えた場合と、水平方向X2の振動を与えた場合とで、共振周波数および振動伝達率の最大値に大きな差は生じなかった。同様に、表2に示すように、実施例2の防振部材13に対して、水平方向X3の振動を与えた場合と、水平方向X4の振動を与えた場合とで、共振周波数および振動伝達率の最大値に大きな差は生じなかった。これらの結果から、本発明に係る防振部材12,13は、圧縮機200(取付脚202)への取付方向に関係無く、防振機能を適切に発揮できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、防振部材の体積を低減しつつ防振機能を維持することができる。
【符号の説明】
【0059】
10 支持構造
12,13 防振部材
20,30 首部
22,32 顎部
24,34 胴部
40,46 厚肉部
42,48 薄肉部
200 圧縮機
300 ベース

【要約】
【課題】体積を低減しつつ防振機能を維持することができる防振部材を提供する。
【解決手段】防振部材12は、弾性体からなり、軸方向Zに貫通する貫通孔12aを有する。防振部材12は、首部20と胴部24とを有する。胴部24は、複数の厚肉部40と、複数の薄肉部42とを有する。軸方向Zから見て、貫通孔12aの径方向における薄肉部42の首部20に対する突出長さは、首部20に対する厚肉部40の突出長さよりも小さい。軸方向Zから見て、複数の厚肉部40および複数の薄肉部42は、胴部24の軸心周りに交互に設けられる。
【選択図】 図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11