(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】誘電体導波路変換器
(51)【国際特許分類】
H01P 5/08 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
H01P5/08 G
(21)【出願番号】P 2024031359
(22)【出願日】2024-03-01
【審査請求日】2024-03-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年度、総務省、「アクティブ空間無線リソース制御技術に関する研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、総務省、「アクティブ空間無線リソース制御技術に関する研究開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000232287
【氏名又は名称】日本電業工作株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149113
【氏名又は名称】加藤 謹矢
(72)【発明者】
【氏名】陸田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】東 右一郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 弘樹
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/065918(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0312327(US,A1)
【文献】特開2018-061249(JP,A)
【文献】特開平04-032304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の内側誘電体と、当該内側誘電体の外周を被覆するように配置された誘電率の異なる円筒形状の外側誘電体とからなる誘電部の端部またはその近傍に、先端に向けて徐々にまたは段階的に小径となる第1テーパ部を有する誘電体導波路と、
前記誘電部の少なくとも一部を挿入または貫通可能とする断面形状が円形状の第1円形貫通孔に、当該誘電部が挿入される方向の第1側から反対側の第2側に向けて徐々にまたは段階的に小径となる第2テーパ部を有する第1円形導波管と、
を備え、
前記第1円形貫通孔に挿入された状態の前記誘電体導波路の前記第1テーパ部と、前記第1円形貫通孔の前記第2テーパ部とが対向して接触する誘電体導波路変換器。
【請求項2】
前記誘電部の前記第1テーパ部のうち前記第1円形貫通孔に挿入された部分の軸方向の長さに応じて伝送時の損失の大きさが変化する、
請求項1に記載の誘電体導波路変換器。
【請求項3】
前記第1円形貫通孔を貫通した前記誘電部を挿入可能とする断面形状が円形状の第2円形貫通孔を有し、当該第2円形貫通孔に当該誘電部が挿入された状態で前記第1円形導波管に接続可能な第2円形導波管をさらに備える、
請求項1に記載の誘電体導波路変換器。
【請求項4】
前記誘電部の前記第1テーパ部のうち前記第2円形貫通孔に挿入された部分の軸方向の長さに応じて伝送時の損失の大きさが変化する、
請求項3に記載の誘電体導波路変換器。
【請求項5】
断面形状が楕円形状である楕円形貫通孔を有し、前記第2円形貫通孔に当該楕円形貫通孔を連通させた状態で前記第2円形導波管に接続可能とし、
断面形状が方形状である方形貫通孔を有する方形導波管に前記楕円形貫通孔を連通させた状態で当該方形導波管に接続可能とする、
楕円形導波管をさらに備える、
請求項3に記載の誘電体導波路変換器。
【請求項6】
前記楕円形導波管の軸方向の長さに応じて伝送時の損失の大きさが変化する、
請求項5に記載の誘電体導波路変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体導波路変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体導波路は、円柱形状の誘電体の周囲に誘電率の異なる円筒形状の誘電体が配置された有線伝送媒体である。また、同軸ケーブルは、円柱形状の内部導体の周囲に円筒形状の絶縁体が配置され、その周囲に円筒形状の外部導体がさらに配置された有線伝送媒体である。誘電体導波路および同軸ケーブルは、いずれも電波を内側に閉じ込めて伝送可能とし、周波数が高くなるほど損失が増加する。ただし、同軸ケーブルよりも誘電体導波路の方が損失の増加が少ないため、高周波数帯の有線伝送媒体として誘電体導波路が用いられることが多く、関連する技術も存在する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、誘電体導波路を導波管に接続する場合には、伝搬モードの違い等により損失が増大することがあるため、誘電体導波路を導波管に低損失で接続可能とする技術の開発が望まれていた。
本発明の目的は、誘電体導波路を導波管に低損失で接続できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的のもと完成させた本発明は、円柱形状の内側誘電体と、当該内側誘電体の外周を被覆するように配置された誘電率の異なる円筒形状の外側誘電体とからなる誘電部の端部またはその近傍に、先端に向けて徐々にまたは段階的に小径となる第1テーパ部を有する誘電体導波路と、前記誘電部の少なくとも一部を挿入または貫通可能とする断面形状が円形状の第1円形貫通孔に、当該誘電部が挿入される方向の第1側から反対側の第2側に向けて徐々にまたは段階的に小径となる第2テーパ部を有する第1円形導波管と、を備え、前記第1円形貫通孔に挿入された状態の前記誘電体導波路の前記第1テーパ部と、前記第1円形貫通孔の前記第2テーパ部とが対向して接触する誘電体導波路変換器である。
ここで、前記誘電部の前記第1テーパ部のうち前記第1円形貫通孔に挿入された部分の軸方向の長さに応じて伝送時の損失の大きさが変化してもよい。
また、前記第1円形貫通孔を貫通した前記誘電部を挿入可能とする断面形状が円形状の第2円形貫通孔を有し、当該第2円形貫通孔に当該誘電部が挿入された状態で前記第1円形導波管に接続可能な第2円形導波管をさらに備えてもよい。
また、前記誘電部の前記第1テーパ部のうち前記第2円形貫通孔に挿入された部分の軸方向の長さに応じて伝送時の損失の大きさが変化してもよい。
また、断面形状が楕円形状である楕円形貫通孔を有し、前記第2円形貫通孔に当該楕円形貫通孔を連通させた状態で前記第2円形導波管に接続可能とし、断面形状が方形状である方形貫通孔を有する方形導波管に前記楕円形貫通孔を連通させた状態で当該方形導波管に接続可能とする、楕円形導波管をさらに備えてもよい。
また、前記楕円形導波管の軸方向の長さに応じて伝送時の損失の大きさが変化してもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、誘電体導波路を導波管に低損失で接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施の形態にかかる誘電体導波路変換器の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1の誘電体導波路変換器により実現される第1乃至第3変換の順序を示す図である。
【
図3】
図1の誘電体導波路変換器のSパラメータである。
【
図4】(A)は、誘電体導波路の端部の構成の一例を示す図である。(B)は、同軸ケーブルの端部の構成の一例を示す図である。
【
図5】(A)および(B)は、誘電体導波路を電波が伝送される様子を模式化した図である。
【
図6】(A)は、誘電体導波路に方形導波管が直接接続された場合の構成の一例を示す図である。(B)は、(A)の構成のSパラメータである。
【
図7】(A)は、
図1の誘電体導波路変換器において
図2の第1変換を行う部分の構成の一例を示す図である。(B)は、第1変換を行う部分の構成のSパラメータである。
【
図8】(A)は、
図1の誘電体導波路変換器において
図2の第2変換を行う部分の構成の一例を示す図である。(B)は、第2変換を行う部分の構成のSパラメータである。
【
図9】(A)は、
図1の誘電体導波路変換器において
図2の第3変換を行う部分の構成の一例を示す図である。(B)は、第3変換を行う部分の構成のSパラメータである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<誘電体導波路変換器1の構成>
図1は、本実施の形態にかかる誘電体導波路変換器1の構成の一例を示す図である。
図2は、
図1の誘電体導波路変換器1により実現される第1乃至第3変換の順序を示す図である。
図3は、
図1の誘電体導波路変換器1のSパラメータ(Scattering parameter)である。
図4(A)は、誘電体導波路の端部の構成の一例を示す図である。
図4(B)は、同軸ケーブルの端部の構成の一例を示す図である。
図5(A)および(B)は、誘電体導波路を電波が伝送される様子を模式化した図である。
図6(A)は、誘電体導波路に方形導波管が直接接続された場合の構成の一例を示す図である。
図6(B)は、
図6(A)の構成のSパラメータである。
【0009】
図1に示す誘電体導波路変換器1は、3段階の変換を経ることで誘電体導波路10を方形導波管30に変換するためのコネクタである。3段階の変換とは、
図2に示すように、誘電体導波路10を第1円形導波管21に変換する第1変換と、第1円形導波管21を第2円形導波管22に変換する第2変換と、第2円形導波管22を方形導波管30に変換する第3変換とをその順番で行うことをいう。
【0010】
図1に示すように、誘電体導波路変換器1は、軸方向の第2側の端部またはその近傍に第1テーパ部114を有する誘電体導波路10と、破線の領域A1で示された第1円形導波管21と、破線の領域A2で示された第2円形導波管22と、破線の領域A3で示された楕円形導波管23と、方形導波管30とを有する。このうち、第1円形導波管21は、
図2の第1変換を行うために誘電体導波路10に接続された導波管である。また、第2円形導波管22は、
図2の第2変換を行うために第1円形導波管21に接続された導波管である。また、楕円形導波管23は、
図2の第3変換を行うために第2円形導波管22および方形導波管30に接続された導波管である。
【0011】
(誘電体導波路10)
誘電体導波路変換器1を構成する誘電体導波路10は、円柱形状の内側誘電体12と、内側誘電体12の外周を被覆するように配置された外側誘電体11とからなる誘電部13を有する有線伝送媒体である。内側誘電体12と、外側誘電体11とは、誘電率が異なる誘電体でそれぞれ構成されている。このうち、内側誘電体12は、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の誘電体で構成されている。また、外側誘電体11は、例えば、ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)等の誘電体で構成されている。誘電体導波路10は、主に誘電部13の内側誘電体12に高周波数帯の電波を閉じ込めて伝送する。誘電体導波路10の伝搬モードはHE11モードであるものとする。
【0012】
誘電体導波路10は、誘電部13の端部またはその近傍に第1テーパ部114を有する。第1テーパ部114は、テーパ形状の領域を少なくとも一部に含む部分であり、具体的には、誘電部13の軸方向の第2側の端部またはその近傍において、第2側の先端に向けて徐々にまたは段階的に小径となるように設計された部分である。これにより、第1テーパ部114は、全体としてテーパ形状または略テーパ形状を呈する。
【0013】
図1の例において、第1テーパ部114は、外側誘電体11の端部の近傍に形成されたテーパ領域111と、誘電体導波路10の軸方向に対して平行になるように形成された非テーパ領域112と、内側誘電体12の先端部分に形成されたテーパ領域113とが連続する部分であり、全体として略テーパ形状を呈している。
【0014】
誘電体導波路変換器1は、
図2の第1変換として、誘電体導波路10のHE11モードを、第1円形導波管21のTE11モードに変換する。また、誘電体導波路変換器1は、
図2の第2変換として、第1円形導波管21の第1円形貫通孔210に挿入された誘電体導波路10の誘電部13を、第2円形導波管22の第2円形貫通孔220に変換する。
【0015】
また、誘電体導波路変換器1は、
図2の第3変換として、第2円形導波管22の第2円形貫通孔220を、楕円形導波管23の楕円形貫通孔230に変換し、さらに、方形導波管30の方形貫通孔300に変換する。なお、本実施の形態では、方形導波管30の一例として、28GHzのEIA(Electronic Industries Alliance、米国電子工業会)規格のWR-34が採用されている。
【0016】
図1の誘電体導波路変換器1が、
図2の第1乃至第3変換を行うと、
図3に示す解析結果としてのSパラメータが得られる。
図3のSパラメータにおいて、横軸は周波数(Frequency[GHz])であり、縦軸(左側)は反射特性を示すS11[dB]、縦軸(右側)は透過特性を示すS21[dB]である。
図3のSパラメータにおいて、線L1はS21、線L2はS11をそれぞれ示している。
図3に示すように、誘電体導波路変換器1によれば、誘電体導波路10から方形導波管30まで電波を伝送する際、0.1dB程度の損失のみで伝送することが可能となる。
【0017】
図4(A)には、テーパ部を有しない誘電体導波路の構成の一例が示されている。
図4(A)に示す誘電体導波路は、円柱形状の内側誘電体と、内側誘電体の周囲に配置された、誘電率の異なる円筒形状の外側誘電体とを有し、電波を内側に閉じ込めて伝送する有線伝送媒体である。外側誘電体および内側誘電体は誘電部を構成する。誘電部は、軸方向の第2側の端部またはその近傍の部分を除いた部分が、円筒形状の絶縁体からなるジャケットにより被覆されており、ジャケットの軸方向の第2側の端部から外側誘電体の一部が露出し、外側誘電体の軸方向の第2側の端部から内側誘電体の一部が露出した構成になっている。
【0018】
図4(B)には、比較対象としての同軸ケーブルが示されている。
図4(B)に示す同軸ケーブルは、円柱形状の内部導体と、その周囲に配置された円筒形状の絶縁体と、さらにその周囲に配置された円筒形状の外部導体とを有し、電波を内側に閉じ込めて伝送する有線伝送媒体である。外部導体は、軸方向の第2側の端部またはその近傍の部分を除いた部分が、円筒形状の絶縁体からなるジャケットにより被覆されており、ジャケットの軸方向の第2側の端部から外部導体の一部が露出し、外部導体の軸方向の第2側の端部から絶縁体の一部が露出し、さらに、絶縁体の軸方向の第2側の端部から内部導体の一部が露出した構成になっている。
【0019】
図4(A)に示す誘電体導波路、および
図4(B)に示す同軸ケーブルは、電波を内側に閉じ込めて伝送する有線伝送媒体であり、いずれも周波数が高くなるほど損失が増加する。ただし、同軸ケーブルよりも誘電体導波路の方が、周波数が高くなったときの損失の増加が少ない。このため、高周波数帯の有線伝送媒体として誘電体導波路が用いられることが多い。
【0020】
図5(A)には、誘電率(ε
r)が外側誘電体よりも内側誘電体の方が大きい場合における電波の伝送の様子が示されている。また、
図5(B)には、誘電率(ε
r)が内側誘電体よりも外側誘電体の方が大きい場合における電波の伝送の様子が示されている。なお、
図5(A)および(B)において、矢印の太さは電波の大きさを示し、矢印の向きは電波の向きを示している。
【0021】
図5(A)の例では、内側誘電体の誘電率(ε
r)が「2.2」であり、外側誘電体の誘電率(ε
r)が「1.3」であるため、誘電率(ε
r)は外側誘電体よりも内側誘電体の方が大きい。この場合、誘電体導波路の半径方向の内側の軸心に向かって電波が集芯されるように電波が伝送されるため、周波数が高くなっても損失の増加が抑制される。このため、誘電体導波路は、上述のように高周波数帯の有線伝送媒体として用いられることが多い。
【0022】
これに対して、
図5(B)の例では、内側誘電体の誘電率(ε
r)が「1.3」であり、外側誘電体の誘電率(ε
r)が「2.2」であるため、誘電率(ε
r)は内側誘電体よりも外側誘電体の方が大きい。この場合、誘電体導波路の半径方向の外側に向かって電波が拡散されてしまい、効率よく電波が伝送されない。また、誘電体導波路は、単独使用されるだけではなく、用途に応じて導波管や同軸ケーブルに接続される場合がある。
【0023】
図6(A)の例において、方形導波管は、28GHzのEIA規格のWR-34であるものとする。また、方形導波管の伝搬モードはTEmnモードであり、インピーダンスは50Ωであるものとする。
【0024】
また、
図6(B)のSパラメータにおいて、横軸は周波数(Frequency[GHz])であり、縦軸(左側)は反射特性を示すS11[dB]、縦軸(右側)は透過特性を示すS21[dB]である。また、線L11は
図6(A)の構成(誘電体導波路と方形導波管とを直接接続させた構成)のS11、線L12は
図6(A)の構成のS21の各々を示している。
【0025】
例えば、
図6(B)の線L11、および線L12に示すように、
図6(A)の構成では、S11が-30dB未満であり、S21が約-3dBである。すなわち、
図6(A)の構成では放射による損失が3dB程度あるため、一般的なケーブル接続としては好ましくない特性となる。このように、
図6(A)に示す構成では、電波の通り道である伝搬モードの違いにより損失が増大する。これに対して、上述の
図1の誘電体導波路変換器1によれば、上述の
図2の3段階の変換の手法により、方形導波管に対する誘電体導波路の接続を低損失で実現させることができる。
【0026】
(第1円形導波管21)
図1に戻り、第1円形導波管21は、断面形状が円形状の第1円形貫通孔210を有する導波管である。第1円形導波管21は、例えば、真鍮、青銅、銅、銀、アルミニウム等の金属で構成される。第1円形貫通孔210は、誘電体導波路10の誘電部13の少なくとも一部を軸方向の第1側から第2側に挿入または貫通可能とする貫通孔である。第1円形貫通孔210には、誘電体導波路10の誘電部13が挿入される軸方向の第1側から第2側に向けて徐々にまたは段階的に小径となる第2テーパ部211が形成されている。
【0027】
第1円形貫通孔210に誘電体導波路10が挿入されると、誘電体導波路10の誘電部13の第1テーパ部114のうちテーパ領域111と、第1円形貫通孔210の第2テーパ部211とが対向して接触して電波の伝送が可能となる。なお、
図1の例において、第1円形導波管21の外周には円筒形状の保護部材41が配置されている。
【0028】
(第2円形導波管22)
第2円形導波管22は、断面形状が円形状の第2円形貫通孔220を有する導波管である。第2円形導波管22は、例えば、真鍮、青銅、銅、銀、アルミニウム等の金属で構成される。第2円形貫通孔220は、第1円形導波管21の第1円形貫通孔210を貫通した誘電体導波路10の誘電部13の先端部分を挿入可能とする貫通孔である。第2円形導波管22は、第2円形貫通孔220に誘電体導波路10の誘電部13の先端部分が挿入された状態で第1円形導波管21に接続される。
【0029】
第2円形導波管22を第1円形導波管21に接続する手法は特に限定されず、溶接や接着等の手法を用いて接合させることで常時接続させてもよいし、着脱可能な他の手法を用いて一時的に接続させてもよい。なお、
図1の例において、第2円形導波管22の外周には円筒形状の保護部材42が配置されている。
【0030】
(楕円形導波管23)
楕円形導波管23は、断面形状が楕円形状である楕円形貫通孔230を有する導波管である。楕円形導波管23は、例えば、真鍮、青銅、銅、銀、アルミニウム等の金属で構成される。楕円形貫通孔230は、第2円形導波管22と楕円形導波管23とが接続され、さらに楕円形導波管23と方形導波管30とが接続された状態で、第2円形導波管22の第2円形貫通孔220と連通し、さらに方形導波管30の方形貫通孔300と連通する貫通孔である。
【0031】
楕円形導波管23を第2円形導波管22に接続する手法、および楕円形導波管23を方形導波管30に接続する手法は特に限定されない。例えば、溶接や接着等の手法を用いて接合させることで常時接続させてもよいし、着脱可能な他の手法を用いて一時的に接続させてもよい。なお、
図1の例において、楕円形導波管23の外周には円筒形状の保護部材43が配置されている。
【0032】
(方形導波管30)
方形導波管30は、断面形状が方形状である方形貫通孔300を有する導波管である。方形導波管30は、例えば、真鍮、青銅、銅、銀、アルミニウム等の金属で構成される。方形貫通孔300は、方形導波管30が楕円形導波管23に接続された状態で、第2円形導波管22の第2円形貫通孔220と連通する貫通孔である。なお、
図1の例において、方形導波管30の外周には円筒形状の保護部材53が配置されている。
【0033】
以下、
図7乃至
図9を参照して、
図1の誘電体導波路変換器1において行われる
図2の第1乃至第3変換の詳細について説明する。
<第1変換>
図7(A)は、
図1の誘電体導波路変換器1において
図2の第1変換を行う部分の構成の一例を示す図である。
第1変換は、誘電部13に第1テーパ部114を有する誘電体導波路10を、第1円形貫通孔210に第2テーパ部211を有する第1円形導波管21に変換するものである。誘電体導波路10の伝搬モードがHE11モードであるのに対して、第1円形導波管21の伝搬モードはTE11モードであるため、第1変換が行われる。HE11モードおよびTE11モードは同じ円形の電磁界分布を有しているため、HE11モードをTE11モードに変換することで伝送時の損失を抑制できる。
【0034】
図7乃至
図9に示す例において、誘電部13の径(すなわち、第1円形貫通孔210の軸方向の第1側の端部の径)r1の大きさは21.4mm(ミリメートル)であるものとする。また、誘電部13を構成する内側誘電体12の径r2の大きさは6.4mm(ミリメートル)であるものとする。また、誘電部13のテーパ領域111の軸方向の第2側の端部の径(すなわち、第1円形導波管21の第1円形貫通孔210の軸方向の第2側の端部の径)r3の大きさは、周波数が28GHzである場合に最適とされる8mm(ミリメートル)であるものとする。
【0035】
図7(B)は、第1変換を行う部分の構成のSパラメータである。
第1変換は、誘電部13のテーパ領域111の軸方向の長さD1の値に応じて伝送時の損失の大きさが変化する。このため、テーパ領域111の設計上、
図7(A)の長さD1の値として伝送時の損失が抑制されやすい値が選択される。
【0036】
例えば、
図7(B)のSパラメータにおいて、横軸は周波数(Frequency[GHz])であり、縦軸は透過特性を示すS21[dB]である。
図7(B)のSパラメータにおいて、線L21は、
図7(A)の長さD1の値が5mm(ミリメートル)、線L22は、長さD1の値が10mm(ミリメートル)、線L23は、長さD1の値が15mm(ミリメートル)をそれぞれ示している。また、線L24は、長さD1の値が20mm(ミリメートル)、線L25は、長さD1の値が25mm(ミリメートル)をそれぞれ示している。
【0037】
図7(B)に示すように、
図7(A)の長さD1の値が20mm(ミリメートル)のときの損失が-0.05dB以下となる。このため、
図7(A)のテーパ領域111の軸方向の長さD1の値として20mm(ミリメートル)を選択することで伝送時の損失を最も抑制できる。
【0038】
<第2変換>
図8(A)は、
図1の誘電体導波路変換器1において
図2の第2変換を行う部分の構成の一例を示す図である。
第2変換は、第1円形導波管21を第2円形導波管22に変換するものである。具体的には、第2変換は、第2円形導波管22に挿入された誘電部13の軸方向の第2側の先端部分のテーパ領域113を、第2円形導波管22の第2円形貫通孔220に変換するものである。
【0039】
図8(B)は、第2変換を行う部分の構成のSパラメータである。
第2円形導波管22の第2円形貫通孔220に挿入されたテーパ領域113は、軸方向の長さD2の値に応じて伝送時の損失の大きさが変化する。このため、テーパ領域113の設計上、
図8(A)の長さD2の値として伝送時の損失が抑制されやすい値が選択される。
【0040】
例えば、
図8(B)のSパラメータにおいて、横軸は周波数(Frequency[GHz])であり、縦軸は透過特性を示すS21[dB]である。
図8(B)のSパラメータにおいて、線L31は、
図8(A)の長さD2の値が5mm(ミリメートル)、線L32は、長さD2の値が10mm(ミリメートル)、線L33は、長さD2の値が15mm(ミリメートル)をそれぞれ示している。また、線L34は、長さD2の値が20mm(ミリメートル)、線L35は、長さD2の値が25mm(ミリメートル)をそれぞれ示している。
【0041】
図8(B)に示すように、
図8(A)の長さD2の値が20mm(ミリメートル)のときの損失が-0.01dB未満となる。このため、テーパ領域113の軸方向の長さD2の値として20mm(ミリメートル)を選択することで伝送時の損失を最も抑制できる。
【0042】
<第3変換>
図9(A)は、
図1の誘電体導波路変換器1において
図2の第3変換を行う部分の構成の一例を示す図である。
第3変換は、
図9(A)に示す楕円形導波管23を介して、
図1に示す第2円形導波管22を方形導波管30に変換するものである。具体的には、第3変換は、第2円形導波管22と方形導波管30との間に、
図9(A)に示す軸方向の長さD3の値が約1/4波長(λ)である楕円形導波管23を配置することで、第2円形導波管22の第2円形貫通孔220を、楕円形導波管23の楕円形貫通孔230に変換し、さらに、方形導波管30の方形貫通孔300に変換する。
【0043】
図9(B)は、第3変換を行う部分の構成のSパラメータである。
第2円形導波管22と方形導波管30との間に配置された楕円形導波管23は、上述の
図9(A)に示す軸方向の長さD3の値に応じて伝送時の損失の大きさが変化する。このため、楕円形導波管23の設計上、
図9(A)の長さD3の値として伝送時の損失が抑制されやすい値が選択される。なお、本実施の形態にかかる楕円形導波管23の楕円形貫通孔230の径の大きさは、
図9(A)に示す径r4の大きさが2.7mm(ミリメートル)であり、径r5の大きさが5.6mm(ミリメートル)であるものとする。
【0044】
例えば、
図9(B)のSパラメータにおいて、横軸は周波数(Frequency[GHz])であり、縦軸は透過特性を示すS21[dB]である。
図9(B)のSパラメータにおいて、線L41は、
図9(A)の長さD3の値が3.7mm(ミリメートル)(1/4λ)のときに、損失が-0.01dB未満になることを示している。このため、楕円形導波管23の軸方向の長さD3の値として3.7mm(ミリメートル)を選択することで伝送時の損失を抑制できる。
【0045】
以上まとめると、本発明の第1の実施の形態にかかる誘電体導波路変換器1は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施の形態を取ることができる。
すなわち、誘電体導波路変換器1は、円柱形状の内側誘電体12と、内側誘電体12の外周を被覆するように配置された誘電率の異なる円筒形状の外側誘電体11とからなる誘電部13の端部またはその近傍に、先端に向けて徐々にまたは段階的に小径となる第1テーパ部114を有する誘電体導波路10と、誘電部13の少なくとも一部を挿入または貫通可能とする断面形状が円形状の第1円形貫通孔210に、誘電部13が挿入される方向の第1側から反対側の第2側に向けて徐々にまたは段階的に小径となる第2テーパ部211を有する第1円形導波管21と、を備え、第1円形貫通孔210に挿入された状態の誘電体導波路10の第1テーパ部114のテーパ領域111と、第1円形導波管21の第1円形貫通孔210の第2テーパ部211とが対向して接触する誘電体導波路変換器である。
【0046】
これにより、第1円形貫通孔210に挿入された状態の誘電体導波路10の第1テーパ部114のテーパ領域111と、第1円形貫通孔210の第2テーパ部211とが対向して接触する。その結果、伝搬モードを変換させる第1変換が可能となり、伝送時の損失を抑制できる。
【0047】
ここで、誘電部13の第1テーパ部114のうち第1円形導波管21の第1円形貫通孔210に挿入された部分の軸方向の長さD1に応じて伝送時の損失の大きさが変化してもよい。
これにより、誘電部13の第1テーパ部114のうち第1円形導波管21の第1円形貫通孔210に挿入された部分の軸方向の長さD1に応じて伝送時の損失の大きさが変化する。その結果、誘電部13の第1テーパ部114のうち第1円形貫通孔210に挿入される部分の軸方向の長さD1を、伝送時の損失がより抑制される長さに設計できる。
【0048】
また、第1円形導波管21の第1円形貫通孔210を貫通した誘電部13を挿入可能とする断面形状が円形状の第2円形貫通孔220を有し、第2円形貫通孔220に誘電部13が挿入された状態で第1円形導波管21に接続可能な第2円形導波管22をさらに備えてもよい。
これにより、第1円形導波管21の第1円形貫通孔210を貫通した誘電部13が第2円形貫通孔220に挿入された状態で第1円形導波管21に接続可能な第2円形導波管22を備える。その結果、第1円形導波管21を第2円形導波管22に変換する第2変換が可能となる。
【0049】
また、誘電部13の第1テーパ部114のうち第2円形貫通孔220に挿入された部分の軸方向の長さD2に応じて伝送時の損失の大きさが変化してもよい。
これにより、誘電部13の第1テーパ部114のうち第2円形貫通孔220に挿入された部分の軸方向の長さD2に応じて伝送時の損失の大きさが変化する。その結果、誘電部13の第1テーパ部114のうち第2円形貫通孔220に挿入される部分の軸方向の長さD2を、伝送時の損失がより抑制される長さに設計できる。
【0050】
また、断面形状が楕円形状である楕円形貫通孔230を有し、第2円形貫通孔220に楕円形貫通孔230を連通させた状態で第2円形導波管22に接続可能とし、断面形状が方形状である方形貫通孔300を有する方形導波管30に楕円形貫通孔230を連通させた状態で方形導波管30に接続可能とする、楕円形導波管23をさらに備えてもよい。
これにより、第2円形導波管22の第2円形貫通孔220と、方形導波管30の方形貫通孔300とを連通させる楕円形貫通孔230を有する楕円形導波管23を備える。その結果、楕円形導波管23を介して第2円形導波管22を方形導波管30に変換する第3変換が可能となる。
【0051】
また、楕円形導波管23の軸方向の長さD3に応じて伝送時の損失の大きさが変化してもよい。
これにより、楕円形導波管23の軸方向の長さD3に応じて伝送時の損失の大きさが変化する。その結果、楕円形導波管23の軸方向の長さD3を、伝送時の損失がより抑制される長さに設計できる。
【0052】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限るものではない。また、本発明による効果も、上述の実施の形態に記載されたものに限定されない。例えば、
図1に示す誘電体導波路変換器1の構成は、本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。
【0053】
また、例えば、
図1の誘電体導波路変換器1の誘電体導波路10の誘電部13に形成された第1テーパ部114は、テーパ領域111と、非テーパ領域112と、テーパ領域113とで構成されている。このため、誘電部13は、先端に向けて2段階のテーパ領域(テーパ領域111および113)を有しているが、これに限定されない。例えば、図示はしないが、誘電部13は、先端に向けて段階のない1つのテーパ領域を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…誘電体導波路変換器、10…誘電体導波路、11…外側誘電体、12…内側誘電体、13…誘電部、21…第1円形導波管、22…第2円形導波管、23…楕円形導波管、30…方形導波管、111、113…テーパ領域、112…非テーパ領域、114…第1テーパ部、210…第1円形貫通孔、211…第2テーパ部、220…第2円形貫通孔、230…楕円形貫通孔、300…方形貫通孔
【要約】
【課題】誘電体導波路を導波管に低損失で接続できるようにする。
【解決手段】誘電体導波路変換器1は、内側誘電体12と、誘電率の異なる外側誘電体11とからなる誘電部13の端部またはその近傍に第1テーパ部114を有する誘電体導波路10と、誘電部13の少なくとも一部を挿入または貫通可能とする第1円形貫通孔210に第2テーパ部211を有する第1円形導波管21とを備え、第1円形貫通孔210に挿入された状態の誘電体導波路10の第1テーパ部114と、第1円形導波管21の第1円形貫通孔210の第2テーパ部211とが対向して接触する。
【選択図】
図1