(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ゼオライト膜複合体およびゼオライト膜複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20250206BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20250206BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20250206BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20250206BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20250206BHJP
C01B 39/46 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B01D71/02
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/10
B01D69/12
C01B39/46
(21)【出願番号】P 2022580618
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2022004697
(87)【国際公開番号】W WO2022172893
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021019722
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004543
【氏名又は名称】弁理士法人松阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】宮原 誠
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】木下 直人
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-066564(JP,A)
【文献】特開2018-130719(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230737(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/22、61/00-71/82
C02F1/44
C01B39/00-39/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト膜複合体であって、
多孔質の支持体と、
前記支持体上に設けられ、RHO型ゼオライトからなるゼオライト膜と、
を備え、
前記ゼオライト膜の表面をX線回折法により測定した場合に、RHO型ゼオライトの(310)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.4倍以下であり、(211)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.3倍以下であ
り、
前記ゼオライト膜におけるケイ素/アルミニウムのモル比が1.2~3.0である
ゼオライト膜複合体。
【請求項2】
請求項1に記載のゼオライト膜複合体であって、
前記支持体において前記ゼオライト膜の一部が気孔内に入り込んでいる複合層が設けられており、前記複合層の厚さが、前記支持体上の前記ゼオライト膜の厚さよりも小さい
ゼオライト膜複合体。
【請求項3】
請求項2に記載のゼオライト膜複合体であって、
前記ゼオライト膜の厚さが、5μm以下であり、
前記複合層の厚さが、1μm以下である
ゼオライト膜複合体。
【請求項4】
ゼオライト膜複合体の製造方法であって、
a)多孔質の支持体上に、RHO型ゼオライトからなる種結晶を付着させる工程と、
b)原料溶液に前記支持体を浸漬し、水熱合成により前記種結晶からRHO型ゼオライトを成長させて前記支持体上にゼオライト膜を形成する工程と、
を備え、
前記原料溶液において、ケイ素/アルミニウムのモル比が2~20であり、ナトリウム/アルミニウムのモル比が10~100であり、セシウム/アルミニウムのモル比が0.5~10であり、水/アルミニウムのモル比が500~5000であ
り、H
2
O/SiO
2
のモル比が50~500である
ゼオライト膜複合体の製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載のゼオライト膜複合体の製造方法であって、
前記原料溶液の20℃における粘度が、1~150mPa・sである
ゼオライト膜複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼオライト膜複合体およびゼオライト膜複合体の製造方法に関する。
[関連出願の参照]
本願は、2021年2月10日に出願された日本国特許出願JP2021-19722からの優先権の利益を主張し、当該出願の全ての開示は、本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
特開2018-130719号公報(文献1)では、有機構造規定剤を用いて多孔質支持体上に形成されたRHO型ゼオライト膜が開示されている。当該ゼオライト膜表面にX線を照射して得たX線回折パターンにおいて、2θ=18.7°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の1.0倍以上であり、2θ=14.4°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の0.5倍以上である。したがって、文献1のゼオライト膜では、(310)面と(211)面とが膜表面と平行に近い向きになるように、ゼオライト結晶が配向して成長している。また、Bo Liu、他4名による「Preparation of Rho Zeolite Membranes on Tubular Supports」(MEMBRANE、2016年、41巻2号、81-86頁)(文献2)では、有機構造規定剤を用いることなく、多孔質支持体上にRHO型ゼオライト膜を形成する手法が開示されている。
【0003】
ところで、分離性能が高いゼオライト膜複合体を得るには、緻密なゼオライト膜が必要となる。しかしながら、例えば、アルミノケイ酸塩タイプのRHO型ゼオライト膜の形成に使用される原料溶液は流動性が低いため、粒界に隙間が生じ易く、緻密な薄膜を形成することが困難である。文献1では、水熱合成を複数回繰り返すことでゼオライト膜の緻密性を向上させているが、ゼオライト膜複合体の製造コストが増大してしまう。文献2では、水熱合成を6日間実施することで緻密な膜が得られているが、この場合も、ゼオライト膜複合体の製造コストが増大してしまう。また、文献2では、ゼオライト膜の厚さは2μm程度であるが、水透過量(水フラックス)は1kg/m2h以下で低い値となっている。ゼオライト膜複合体では、分離性能のみならず、透過量も高いことが求められる。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ゼオライト膜複合体に向けられており、RHO型ゼオライトからなるゼオライト膜を有し、分離性能および透過量が高いゼオライト膜複合体を容易に提供することを目的としている。
【0005】
本発明の好ましい一の形態に係るゼオライト膜複合体は、多孔質の支持体と、前記支持体上に設けられ、RHO型ゼオライトからなるゼオライト膜とを備える。前記ゼオライト膜の表面をX線回折法により測定した場合に、RHO型ゼオライトの(310)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.4倍以下であり、(211)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.3倍以下であり、前記ゼオライト膜におけるケイ素/アルミニウムのモル比が1.2~3.0である。
【0006】
本発明によれば、RHO型ゼオライトからなるゼオライト膜を有し、分離性能および透過量が高いゼオライト膜複合体を容易に提供することができる。
【0007】
好ましくは、前記支持体において前記ゼオライト膜の一部が気孔内に入り込んでいる複合層が設けられており、前記複合層の厚さが、前記支持体上の前記ゼオライト膜の厚さよりも小さい。
【0008】
好ましくは、前記ゼオライト膜の厚さが、5μm以下であり、前記複合層の厚さが、1μm以下である。
【0010】
本発明は、ゼオライト膜複合体の製造方法にも向けられている。
【0011】
本発明の好ましい一の形態に係るゼオライト膜複合体の製造方法は、a)多孔質の支持体上に、RHO型ゼオライトからなる種結晶を付着させる工程と、b)原料溶液に前記支持体を浸漬し、水熱合成により前記種結晶からRHO型ゼオライトを成長させて前記支持体上にゼオライト膜を形成する工程とを備える。前記原料溶液において、ケイ素/アルミニウムのモル比が2~20であり、ナトリウム/アルミニウムのモル比が10~100であり、セシウム/アルミニウムのモル比が0.5~10であり、水/アルミニウムのモル比が500~5000であり、H
2
O/SiO
2
のモル比が50~500である。
【0012】
好ましくは、前記原料溶液の20℃における粘度が、1~150mPa・sである。
【0013】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】ゼオライト膜複合体の一部を拡大して示す断面図である。
【
図3】ゼオライト膜の表面から得られるX線回折パターンを示す図である。
【
図4】ゼオライト膜の結晶構造を模式的に示す図である。
【
図5】ゼオライト膜複合体の製造の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ゼオライト膜複合体1の断面図である。
図2は、ゼオライト膜複合体1の一部を拡大して示す断面図である。ゼオライト膜複合体1は、多孔質の支持体11と、支持体11上に設けられたゼオライト膜12とを備える。ゼオライト膜とは、少なくとも、支持体11の表面にゼオライトが膜状に形成されたものであって、有機膜中にゼオライト粒子を分散させただけのものは含まない。
図1では、ゼオライト膜12を太線にて描いている。
図2では、ゼオライト膜12および後述の複合層13に平行斜線を付す。また、
図2では、ゼオライト膜12および複合層13の厚さを実際よりも厚く描いている。
【0016】
支持体11はガスおよび液体を透過可能な多孔質部材である。
図1に示す例では、支持体11は、一体成形された一繋がりの柱状の本体に、長手方向(すなわち、
図1中の左右方向)にそれぞれ延びる複数の貫通孔111が設けられたモノリス型支持体である。
図1に示す例では、支持体11は略円柱状である。各貫通孔111(すなわち、セル)の長手方向に垂直な断面は、例えば略円形である。
図1では、貫通孔111の径を実際よりも大きく、貫通孔111の数を実際よりも少なく描いている。ゼオライト膜12は、貫通孔111の内周面上に形成され、貫通孔111の内周面を略全面に亘って被覆する。
【0017】
支持体11の長さ(すなわち、
図1中の左右方向の長さ)は、例えば10cm~200cmである。支持体11の外径は、例えば0.5cm~30cmである。隣接する貫通孔111の中心軸間の距離は、例えば0.3mm~10mmである。支持体11の表面粗さ(Ra)は、例えば0.1μm~5.0μmであり、好ましくは0.2μm~2.0μmである。なお、支持体11の形状は、例えば、ハニカム状、平板状、管状、円筒状、円柱状または多角柱状等であってもよい。支持体11の形状が管状または円筒状である場合、支持体11の厚さは、例えば0.1mm~10mmである。
【0018】
支持体11の材料は、表面にゼオライト膜12を形成する工程において化学的安定性を有するのであれば、様々な物質(例えば、セラミックまたは金属)が採用可能である。本実施の形態では、支持体11はセラミック焼結体により形成される。支持体11の材料として選択されるセラミック焼結体としては、例えば、アルミナ、シリカ、ムライト、ジルコニア、チタニア、イットリア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。本実施の形態では、支持体11は、アルミナ、シリカおよびムライトのうち、少なくとも1種類を含む。
【0019】
支持体11は、無機結合材を含んでいてもよい。無機結合材としては、チタニア、ムライト、易焼結性アルミナ、シリカ、ガラスフリット、粘土鉱物、易焼結性コージェライトのうち少なくとも1つを用いることができる。
【0020】
支持体11の平均細孔径は、例えば0.01μm~70μmであり、好ましくは0.05μm~25μmである。ゼオライト膜12が形成される表面近傍における支持体11の平均細孔径は0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。平均細孔径は、例えば、水銀ポロシメータ、パームポロシメータまたはナノパームポロシメータにより測定することができる。支持体11の表面および内部を含めた全体における細孔径の分布については、D5は例えば0.01μm~50μmであり、D50は例えば0.05μm~70μmであり、D95は例えば0.1μm~2000μmである。ゼオライト膜12が形成される表面近傍における支持体11の気孔率は、例えば20%~60%である。
【0021】
支持体11は、例えば、平均細孔径が異なる複数の層が厚さ方向に積層された多層構造を有する。ゼオライト膜12が形成される表面を含む表面層における平均細孔径および焼結粒径は、表面層以外の層における平均細孔径および焼結粒径よりも小さい。支持体11の表面層の平均細孔径は、例えば0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05μm~0.5μmである。支持体11が多層構造を有する場合、各層の材料は上記のものを用いることができる。多層構造を形成する複数の層の材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
ゼオライト膜12は、微細孔(マイクロ孔)を有する多孔膜である。ゼオライト膜12は、複数種類の物質が混合した混合物質から、分子篩作用を利用して特定の物質を分離する分離膜として利用可能である。ゼオライト膜12では、当該特定の物質に比べて他の物質が透過しにくい。換言すれば、ゼオライト膜12の当該他の物質の透過量は、上記特定の物質の透過量に比べて小さい。ゼオライト膜12の表面粗さ(Ra)は、例えば5μm以下であり、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。
【0023】
ゼオライト膜12は、構造がRHO型であるゼオライトにより構成される。換言すれば、ゼオライト膜12は、国際ゼオライト学会が定める構造コードが「RHO」であるゼオライトからなる。ゼオライト膜12の表面から得られる、後述の
図3のXRDパターンは、RHO型ゼオライトの構造から想定されるXRDパターンとピークの位置が一致する。ゼオライト膜12は、典型的には、RHO型ゼオライトのみから構成されるが、製造方法等によっては、ゼオライト膜12においてRHO型ゼオライト以外の物質が僅かに(例えば、1質量%以下)含まれていてもよい。
【0024】
RHO型ゼオライトの最大員環数は8であり、ここでは、8員環細孔の短径と長径の算術平均を平均細孔径とする。8員環細孔とは、酸素原子が後述するT原子と結合して環状構造をなす部分の酸素原子の数が8個である微細孔である。RHO型ゼオライトの固有細孔径は、0.36nm×0.36nmであり、平均細孔径は、0.36nmである。ゼオライト膜12の平均細孔径は、ゼオライト膜12が形成される表面近傍における支持体11の平均細孔径よりも小さい。
【0025】
ゼオライト膜12を構成するRHO型ゼオライトの一例は、ゼオライトを構成する酸素四面体(TO4)の中心に位置する原子(T原子)がケイ素(Si)とアルミニウム(Al)とからなるアルミノケイ酸塩ゼオライトである。T原子の一部は、他の元素(ガリウム、チタン、バナジウム、鉄、亜鉛、スズ等)に置換されていてもよい。これにより、細孔径や吸着特性を変えることが可能となる。ゼオライト膜12におけるケイ素/アルミニウムのモル比(ケイ素原子のモル数をアルミニウム原子のモル数で除して得た値である。以下同様。)は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1.1~5であり、さらに好ましくは1.2~3である。これにより、ゼオライト膜12の親水性を向上することができる。ケイ素/アルミニウムのモル比は、EDS(エネルギー分散型X線分光)分析により測定可能である。後述する原料溶液中の配合割合等を調整することにより、ゼオライト膜12におけるケイ素/アルミニウム比を調整することが可能である(他の元素の比率についても同様である。)。もちろん、RHO型ゼオライトは、アルミノケイ酸塩型には限定されない。
【0026】
典型的には、ゼオライト膜12は、ナトリウム(Na)を含む。ゼオライト膜12におけるナトリウム/アルミニウムのモル比は、好ましくは10~100であり、より好ましくは20~90である。これにより、RHO型ゼオライトの構造が安定なものになる(結晶の崩壊が抑制される等)。ゼオライト膜12は、セシウム(Cs)をさらに含むことが好ましい。ゼオライト膜12におけるセシウム/アルミニウムのモル比は、好ましくは0.5~3.0であり、より好ましくは1.0~2.0である。ゼオライト膜12は、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)等の他のアルカリ金属を含んでいてもよい。また、一部またはすべてのカチオンは、イオン交換等によりプロトン(H+)やアンモニウムイオン(NH4
+)等に置換されていてもよい。
【0027】
ゼオライト膜12の一例は、構造規定剤(Structure-DirectingAgent、以下「SDA」とも呼ぶ。)と呼ばれる有機物を用いることなく製造され、この場合、ゼオライト膜12はSDAを含まない。SDAを含まないゼオライト膜12では、細孔が適切に確保される。ゼオライト膜12は、SDAを用いて製造されてもよい。この場合、ゼオライト膜12の形成後にSDAがほとんど、もしくは完全に除去されることが好ましい。SDAとして、例えば18-クラウン-6-エーテル等を用いることができる。
【0028】
図3は、ゼオライト膜12の表面にX線を照射して得られるX線回折(XRD)パターンの一例を示す図である。XRDパターンの取得では、例えば、X線回折装置の線源としてCuKα線が用いられるが、他の種類の線源が用いられてもよい。既述のように、ゼオライト膜12から得られるXRDパターンは、RHO型ゼオライトの構造から想定されるXRDパターンとピークの位置が一致する。
【0029】
ゼオライト膜12では、XRDパターンにおける2θ=18.7°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の0.4倍以下であり、2θ=14.4°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の0.3倍以下である。2θ=18.7°付近のピークは、2θ=18.7°±0.9°の範囲に存在するピークであり、RHO型ゼオライトの(310)面に由来する。2θ=8.3°付近のピークは、2θ=8.3°±0.6°の範囲に存在するピークであり、(110)面に由来する。2θ=14.4°付近のピークは、2θ=14.4°±0.8°の範囲に存在するピークであり、(211)面に由来する。したがって、ゼオライト膜12では、RHO型ゼオライトの(310)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.4倍以下であり、(211)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.3倍以下である。このように、ゼオライト膜12は、(110)面に由来するピーク強度が比較的高い、配向膜となっている。
【0030】
(310)面に由来するピーク強度を(110)面に由来するピーク強度で割った比は、0.3以下であることがより好ましい。当該比の下限は特に限定されないが、例えば、0.05である。(211)面に由来するピーク強度を(110)面に由来するピーク強度で割った比は、0.2以下であることがより好ましい。当該比の下限は特に限定されないが、例えば、0.05である。なお、ピーク強度は、XRDパターンにおける底部のライン、すなわち、バックグラウンドノイズ成分を除いた高さを用いるものとする。XRDパターンにおける底部のラインは、例えば、Sonneveld-Visser法またはスプライン補間法により求められる。
【0031】
図4は、ゼオライト膜12の結晶構造を模式的に示す図である。
図4では、後述の複合層13の図示を省略している。RHO型ゼオライトでは、8員環細孔が連続した連続細孔が形成される。(110)面に由来するピーク強度が比較的高いゼオライト膜12では、(110)面がゼオライト膜12の表面と平行に近い向きとなっており、多くの連続細孔の開口121が表面に位置する。これにより、後述する混合物質の分離では、ゼオライト膜12に対する透過性が高い物質(以下、「高透過性物質」と呼ぶ。)の連続細孔へのアクセスが増えるため、ゼオライト膜12における高透過性物質の透過量(透過速度)が高くなるとともに、分離性能も高くなる。
【0032】
図2のゼオライト膜複合体1では、ゼオライト膜12の形成の際に、支持体11の気孔内にもRHO型ゼオライトが生成される。換言すると、支持体11には、ゼオライト膜12の一部が気孔内に入り込んでいる層13(以下、「複合層13」という。)が設けられる。既述のように、
図2では、ゼオライト膜12および複合層13に平行斜線を付す。本明細書では、複合層13は、支持体11の一部であるものとする。複合層13は、ゼオライト膜12と支持体11との間の界面に設けられる。好ましいゼオライト膜複合体1では、複合層13の厚さが、支持体11上のゼオライト膜12の厚さ(すなわち、複合層13を除いたRHO型ゼオライトの膜の厚さ)よりも小さい。
【0033】
ここで、ゼオライト膜12および複合層13の厚さの測定について説明する。当該厚さの測定では、まず、ゼオライト膜12の形成面である貫通孔111の内周面に垂直な断面が、例えば断面研磨により露出される。当該断面は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮像され、SEM画像が取得される。SEM画像は、
図2のように、複合層13の周囲を示す。SEM画像の倍率は、例えば5000倍である。
【0034】
続いて、SEM画像において当該形成面(支持体11とゼオライト膜12との界面)に沿う方向の一の測定位置近傍にて、当該形成面に垂直な方向(以下、「深さ方向」と呼ぶ。)における複合層13の境界位置が特定される。複合層13におけるゼオライト膜12側の境界位置は、ゼオライト膜12と支持体11との間の界面であり、詳細には、深さ方向において最もゼオライト膜12側に位置する支持体11の粒子(すなわち、支持体11の最表層に位置する粒子)の頂点である。複合層13におけるゼオライト膜12とは反対側の境界位置は、支持体11の気孔内に存在するゼオライトのうち、深さ方向においてゼオライト膜12から最も離れたゼオライトの縁(すなわち、複合層13の内端部)である。
【0035】
そして、複合層13におけるゼオライト膜12側の境界位置と、ゼオライト膜12とは反対側の境界位置との間の深さ方向の距離T3が、当該測定位置における複合層13の厚さとして取得される。また、支持体11から離れたゼオライト膜12の表面の位置と、複合層13におけるゼオライト膜12側の境界位置との間の深さ方向の距離T2が、当該測定位置におけるゼオライト膜12の厚さとして取得される。本実施の形態では、異なる複数の測定位置(例えば、10個の測定位置)における複合層13の厚さの平均値が、ゼオライト膜複合体1における複合層13の厚さとして決定される。また、複数の測定位置におけるゼオライト膜12の厚さの平均値が、ゼオライト膜複合体1におけるゼオライト膜12の厚さとして決定される。
【0036】
ゼオライト膜12の厚さは、例えば0.05μm~30μmである。ゼオライト膜12の厚さは、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。ゼオライト膜12を薄くすると高透過性物質の透過量がさらに増大する。ゼオライト膜12の厚さは、好ましくは0.1μm以上であり、より好ましくは0.5μm以上である。ゼオライト膜12を厚くすると分離性能が向上する。
【0037】
既述のように、好ましいゼオライト膜複合体1では、複合層13の厚さが、支持体11上のゼオライト膜12の厚さよりも小さい。複合層13の厚さは、ゼオライト膜12の厚さの0.8倍以下であることがより好ましく、0.5倍以下であることがさらに好ましい。複合層13の厚さは、好ましくは1μm以下であり、より好ましくは1μm未満であり、さらに好ましくは0.5μm以下である。複合層13の厚さが小さいことにより、高透過性物質の透過が複合層13において阻害されることが抑制され、高透過性物質の透過量がさらに高くなる。複合層13の厚さは小さいほど好ましく、厚さの下限は特に限定されないが、例えば0.01μmである。複合層13が存在しなくてもよい。
【0038】
次に、
図5を参照しつつ、ゼオライト膜複合体1の製造の流れの一例について説明する。ゼオライト膜複合体1が製造される際には、まず、ゼオライト膜12の製造に利用される種結晶が準備される(ステップS11)。種結晶は、例えば、水熱合成にてRHO型のゼオライトの粉末が生成され、当該ゼオライトの粉末から取得される。RHO型ゼオライトの粉末は、任意のまたは公知の製造方法(例えば、上記文献1または文献2の手法)により生成されてよい。当該ゼオライトの粉末はそのまま種結晶として用いられてもよく、当該粉末を粉砕等によって加工することにより種結晶が取得されてもよい。なお、後述の実施例では、種結晶の生成に利用される原料溶液に、RHO型ゼオライトの粉末(種結晶)を混合することにより、種結晶を短時間で生成することが可能となるが、種結晶の生成に利用される原料溶液は、当該粉末を含まなくてもよい。
【0039】
また、種結晶に用いるRHO型ゼオライトとしては、SDAを含有したRHO型ゼオライトを用いてもよく、SDAを含有しないRHO型ゼオライトを用いてもよい。SDAを含有しないRHO型ゼオライトは、SDAを用いずに合成したり、SDAを用いて合成した後に焼成する等して得ることができる。膜形成の際に種結晶が完全に溶解せずに残った場合でも透過性の低下が起きにくいため、種結晶としてSDAを用いないRHO型ゼオライトを用いることが好ましい。
【0040】
また、種結晶は必要に応じて粉砕したものを用いてもよい。粉砕によって種結晶の結晶性が低下し、それにともなって膜の結晶性が低下することを抑制するため、RHO型ゼオライトの(110)面に由来する、2θ=8.3°付近のピーク強度が粉砕によって95%以上低下しない(すなわち、粉砕後のピーク強度が粉砕前のピーク強度の5%よりも大きい)ことが好ましい。
【0041】
続いて、種結晶を分散させた分散液に多孔質の支持体11を浸漬し、種結晶を支持体11に付着させる(ステップS12)。あるいは、種結晶を分散させた分散液を、支持体11上のゼオライト膜12を形成させたい部分に接触させることにより、種結晶を支持体11に付着させる。これにより、種結晶付着支持体が作製される。種結晶は、他の手法により支持体11に付着されてもよい。
【0042】
種結晶が付着された支持体11は、原料溶液に浸漬される。原料溶液は、例えば、ケイ素源、アルミニウム源、アルカリ源(ナトリウム源やセシウム源等)等を、溶媒である水に溶解・分散させることにより作製する。ケイ素源は、例えばコロイダルシリカ、水ガラス、フュームドシリカ等である。アルミニウム源は、例えば水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム等である。ナトリウム源は、例えば水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等である。セシウム源は、例えば水酸化セシウム、塩化セシウム等である。
【0043】
原料溶液において、ケイ素/アルミニウムのモル比は2~20であり、好ましくは3~15であり、より好ましくは4~10である。ナトリウム/アルミニウムのモル比は10~100であり、好ましくは20~90であり、より好ましくは30~80である。セシウム/アルミニウムのモル比は0.5~10であり、好ましくは0.7~5.0であり、より好ましくは1.0~2.0である。水/アルミニウムのモル比は500~5000であり、好ましくは1000~4000であり、より好ましくは1500~3000である。原料溶液の20℃における粘度は、例えば1~150mPa・sであり、好ましくは2~100mPa・sであり、より好ましくは3~50mPa・sである。原料溶液の粘度は、例えば超音波卓上粘度計(富士工業社製FCV-100H)を用いて測定可能である。原料溶液は、SDAを含まないことが好ましいが、SDAを含んでもよい。原料溶液には、他の原料が混合されてよく、原料溶液の溶媒には、水以外が用いられてもよい。
【0044】
支持体11の原料溶液への浸漬後、水熱合成により支持体11上の種結晶を核としてRHO型のゼオライトを成長させることにより、支持体11上にRHO型のゼオライト膜12が形成される(ステップS13)。水熱合成時の温度は、好ましくは60~200℃である。水熱合成時間は、好ましくは1~20時間である。水熱合成時間が短いほど、ゼオライト膜複合体1の製造コストを削減することができる。水熱合成が終了すると、支持体11およびゼオライト膜12が純水で洗浄される。洗浄後の支持体11およびゼオライト膜12は、例えば50℃にて乾燥される。以上の処理により、緻密なゼオライト膜12が形成され、分離性能および透過量が高い上記ゼオライト膜複合体1が製造される。原料溶液がSDAを含む場合には、ゼオライト膜12を酸化性ガス雰囲気下で加熱処理することにより、ゼオライト膜12中のSDAが燃焼除去される。好ましくは、SDAはおよそ完全に除去される。
【0045】
ゼオライト膜12を構成するゼオライト粒子の粒径は、例えば0.01μm~1μmであり、好ましくは0.05~0.9μmであり、より好ましくは0.1~0.8μmである。ゼオライト粒子の粒径は、ゼオライト膜12表面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察し、任意の20個のゼオライト粒子の粒径を算術平均することによって求められる。
【0046】
ゼオライト膜12は、必要に応じてイオン交換されてもよい。RHO型ゼオライト膜を合成する際にCs源を用いた場合には、細孔にCsイオンが存在することで、分離係数の向上が期待できる一方で、透過係数が小さくなる場合がある。交換するイオンとしては、プロトン、アンモニウムイオン、Na+、K+、Li+等のアルカリ金属イオン、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Ba2+等のアルカリ土類金属イオン、Fe2+、Fe3+、Cu2+、Zn2+、Ag+等の遷移金属イオンが挙げられる。
【0047】
次に、
図6および
図7を参照しつつ、ゼオライト膜複合体1を利用した混合物質の分離について説明する。
図6は、分離装置2を示す図である。
図7は、分離装置2による混合物質の分離の流れを示す図である。
【0048】
分離装置2では、複数種類の流体(すなわち、ガスまたは液体)を含む混合物質をゼオライト膜複合体1に供給し、混合物質中の透過性が高い物質(すなわち、高透過性物質)を、ゼオライト膜複合体1を透過させることにより混合物質から分離させる。分離装置2における分離は、例えば、高透過性物質を混合物質から抽出する目的で行われてもよく、透過性が低い物質(以下、「低透過性物質」とも呼ぶ。)を濃縮する目的で行われてもよい。
【0049】
当該混合物質(すなわち、混合流体)は、複数種類のガスを含む混合ガスであってもよく、複数種類の液体を含む混合液であってもよく、ガスおよび液体の双方を含む気液二相流体であってもよい。
【0050】
混合物質は、例えば、水素(H2)、ヘリウム(He)、窒素(N2)、酸素(O2)、水(H2O)、水蒸気(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、窒素酸化物、アンモニア(NH3)、硫黄酸化物、硫化水素(H2S)、フッ化硫黄、水銀(Hg)、アルシン(AsH3)、シアン化水素(HCN)、硫化カルボニル(COS)、C1~C8の炭化水素、有機酸、アルコール、メルカプタン類、エステル、エーテル、ケトンおよびアルデヒドのうち、1種類以上の物質を含む。上述の高透過性物質は、例えば、H2、He、N2、O2、CO2、NH3およびH2Oのうち1種類以上の物質であり、好ましくはH2Oである。
【0051】
窒素酸化物とは、窒素と酸素の化合物である。上述の窒素酸化物は、例えば、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、亜酸化窒素(一酸化二窒素ともいう。)(N2O)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素(N2O4)、五酸化二窒素(N2O5)等のNOX(ノックス)と呼ばれるガスである。
【0052】
硫黄酸化物とは、硫黄と酸素の化合物である。上述の硫黄酸化物は、例えば、二酸化硫黄(SO2)、三酸化硫黄(SO3)等のSOX(ソックス)と呼ばれるガスである。
【0053】
フッ化硫黄とは、フッ素と硫黄の化合物である。上述のフッ化硫黄は、例えば、二フッ化二硫黄(F-S-S-F,S=SF2)、二フッ化硫黄(SF2)、四フッ化硫黄(SF4)、六フッ化硫黄(SF6)または十フッ化二硫黄(S2F10)等である。
【0054】
C1~C8の炭化水素とは、炭素が1個以上かつ8個以下の炭化水素である。C3~C8の炭化水素は、直鎖化合物、側鎖化合物および環式化合物のうちいずれであってもよい。また、C2~C8の炭化水素は、飽和炭化水素(すなわち、2重結合および3重結合が分子中に存在しないもの)、不飽和炭化水素(すなわち、2重結合および/または3重結合が分子中に存在するもの)のどちらであってもよい。C1~C4の炭化水素は、例えば、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、プロパン(C3H8)、プロピレン(C3H6)、ノルマルブタン(CH3(CH2)2CH3)、イソブタン(CH(CH3)3)、1-ブテン(CH2=CHCH2CH3)、2-ブテン(CH3CH=CHCH3)またはイソブテン(CH2=C(CH3)2)である。
【0055】
上述の有機酸は、カルボン酸またはスルホン酸等である。カルボン酸は、例えば、ギ酸(CH2O2)、酢酸(C2H4O2)、シュウ酸(C2H2O4)、アクリル酸(C3H4O2)または安息香酸(C6H5COOH)等である。スルホン酸は、例えばエタンスルホン酸(C2H6O3S)等である。当該有機酸は、鎖式化合物であってもよく、環式化合物であってもよい。
【0056】
上述のアルコールは、例えば、メタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)、イソプロパノール(2-プロパノール)(CH3CH(OH)CH3)、エチレングリコール(CH2(OH)CH2(OH))またはブタノール(C4H9OH)等である。
【0057】
メルカプタン類とは、水素化された硫黄(SH)を末端に持つ有機化合物であり、チオール、または、チオアルコールとも呼ばれる物質である。上述のメルカプタン類は、例えば、メチルメルカプタン(CH3SH)、エチルメルカプタン(C2H5SH)または1-プロパンチオール(C3H7SH)等である。
【0058】
上述のエステルは、例えば、ギ酸エステルまたは酢酸エステル等である。
【0059】
上述のエーテルは、例えば、ジメチルエーテル((CH3)2O)、メチルエチルエーテル(C2H5OCH3)またはジエチルエーテル((C2H5)2O)等である。
【0060】
上述のケトンは、例えば、アセトン((CH3)2CO)、メチルエチルケトン(C2H5COCH3)またはジエチルケトン((C2H5)2CO)等である。
【0061】
上述のアルデヒドは、例えば、アセトアルデヒド(CH3CHO)、プロピオンアルデヒド(C2H5CHO)またはブタナール(ブチルアルデヒド)(C3H7CHO)等である。
【0062】
以下の説明では、分離装置2により分離される混合物質は、複数種類の液体を含む混合液であるものとして説明する。
【0063】
分離装置2は、ゼオライト膜複合体1と、封止部21と、外筒22と、2つのシール部材23と、供給部26と、第1回収部27と、第2回収部28とを備える。ゼオライト膜複合体1、封止部21およびシール部材23は、外筒22内に収容される。供給部26、第1回収部27および第2回収部28は、外筒22の外部に配置されて外筒22に接続される。
【0064】
封止部21は、支持体11の長手方向(すなわち、
図6中の左右方向)の両端部に取り付けられ、支持体11の長手方向両端面、および、当該両端面近傍の外周面を被覆して封止する部材である。封止部21は、支持体11の当該両端面からの液体の流入および流出を防止する。封止部21は、例えば、ガラスまたは樹脂により形成された板状部材である。封止部21の材料および形状は、適宜変更されてよい。なお、封止部21には、支持体11の複数の貫通孔111と重なる複数の開口が設けられているため、支持体11の各貫通孔111の長手方向両端は、封止部21により被覆されていない。したがって、当該両端から貫通孔111への液体等の流入および流出は可能である。
【0065】
外筒22の形状は特に限定されないが、例えば、略円筒状の筒状部材である。外筒22は、例えばステンレス鋼または炭素鋼により形成される。外筒22の長手方向は、ゼオライト膜複合体1の長手方向に略平行である。外筒22の長手方向の一方の端部(すなわち、
図6中の左側の端部)には供給ポート221が設けられ、他方の端部には第1排出ポート222が設けられる。外筒22の側面には、第2排出ポート223が設けられる。供給ポート221には、供給部26が接続される。第1排出ポート222には、第1回収部27が接続される。第2排出ポート223には、第2回収部28が接続される。外筒22の内部空間は、外筒22の周囲の空間から隔離された密閉空間である。
【0066】
2つのシール部材23は、ゼオライト膜複合体1の長手方向両端部近傍において、ゼオライト膜複合体1の外周面と外筒22の内周面との間に、全周に亘って配置される。各シール部材23は、液体が透過不能な材料により形成された略円環状の部材である。シール部材23は、例えば、可撓性を有する樹脂により形成されたOリングである。シール部材23は、ゼオライト膜複合体1の外周面および外筒22の内周面に全周に亘って密着する。
図6に示す例では、シール部材23は、封止部21の外周面に密着し、封止部21を介してゼオライト膜複合体1の外周面に間接的に密着する。シール部材23とゼオライト膜複合体1の外周面との間、および、シール部材23と外筒22の内周面との間は、シールされており、液体の通過はほとんど、または、全く不能である。
【0067】
供給部26は、混合液を、供給ポート221を介して外筒22の内部空間に供給する。供給部26は、例えば、外筒22に向けて混合液を圧送するポンプを備える。当該ポンプは、外筒22に供給する混合液の温度および圧力をそれぞれ調節する温度調節部および圧力調節部を備える。第1回収部27は、例えば、外筒22から導出された液体を貯留する貯留容器、または、当該液体を移送するポンプを備える。第2回収部28は、例えば、外筒22内におけるゼオライト膜複合体1の外周面の外側の空間(すなわち、2つのシール部材23に挟まれている空間)を減圧する真空ポンプと、気化しつつゼオライト膜複合体1を透過したガスを冷却して液化する液体窒素トラップとを備える。
【0068】
混合液の分離が行われる際には、上述の分離装置2が用意されることにより、ゼオライト膜複合体1が準備される(
図7:ステップS21)。続いて、供給部26により、ゼオライト膜12に対する透過性が異なる複数種類の液体を含む混合液が、外筒22の内部空間に供給される。例えば、混合液の主成分は、水(H
2O)およびエタノール(C
2H
5OH)である。混合液には、水およびエタノール以外の液体が含まれていてもよい。供給部26から外筒22の内部空間に供給される混合液の圧力(すなわち、導入圧)は、例えば、0.1MPa~2MPaであり、当該混合液の温度は、例えば、10℃~200℃である。
【0069】
供給部26から外筒22に供給された混合液は、矢印251にて示すように、ゼオライト膜複合体1の図中の左端から、支持体11の各貫通孔111内に導入される。混合液中の透過性が高い液体である高透過性物質は、気化しつつ各貫通孔111の内周面上に設けられたゼオライト膜12、および、支持体11を透過して支持体11の外周面から導出される。これにより、高透過性物質(例えば、水)が、混合液中の透過性が低い液体である低透過性物質(例えば、エタノール)から分離される(ステップS22)。
【0070】
支持体11の外周面から導出されたガス(以下、「透過物質」と呼ぶ。)は、矢印253にて示すように、第2排出ポート223を介して第2回収部28へと導かれ、第2回収部28において冷却されて液体として回収される。第2排出ポート223を介して第2回収部28により回収されるガスの圧力(すなわち、透過圧)は、例えば、約50Torr(約6.67kPa)である。透過物質には、上述の高透過性物質以外に、ゼオライト膜12を透過した低透過性物質が含まれていてもよい。
【0071】
また、混合液のうち、ゼオライト膜12および支持体11を透過した物質を除く液体(以下、「不透過物質」と呼ぶ。)は、支持体11の各貫通孔111を図中の左側から右側へと通過し、矢印252にて示すように、第1排出ポート222を介して第1回収部27により回収される。第1排出ポート222を介して第1回収部27により回収される液体の圧力は、例えば、導入圧と略同じ圧力である。不透過物質には、上述の低透過性物質以外に、ゼオライト膜12を透過しなかった高透過性物質が含まれていてもよい。第1回収部27により回収された不透過物質は、例えば、供給部26に循環されて、外筒22内へと再度供給されてもよい。
【0072】
次に、ゼオライト膜複合体の実施例について説明する。表1では、実施例1ないし7、並びに、比較例1および2にて調製される、ゼオライト膜形成用の原料溶液の組成(酸化物換算での組成)、および、水熱合成の条件を示している。
【0073】
【0074】
(実施例1)
コロイダルシリカ(日産化学社製スノーテックスS)、水酸化アルミニウム(シグマアルドリッチ社製)、水酸化ナトリウム(シグマアルドリッチ社製)、水酸化セシウム50%水溶液、イオン交換水を、モル比が10.8SiO2:1Al2O3:3Na2O:0.4Cs2O:110H2Oになるように100g調合し、シェイカーで1晩(12時間以上)混合した。得られたゲルに、別途準備したRHO型ゼオライトの粉末(種結晶生成時の種結晶である。)を0.1g添加した。当該ゲルを100℃で30時間加熱して水熱合成を行い、種結晶を得た。その後、直径10mm、長さ160mmの管状のジルコニア多孔質支持体に上記で得られた種結晶を塗布した。
【0075】
続いて、ゼオライト膜形成用の原料溶液(合成ゾル)として、コロイダルシリカ(日産化学社製スノーテックスS)、水酸化アルミニウム(シグマアルドリッチ社製)、水酸化ナトリウム(シグマアルドリッチ社製)、水酸化セシウム50%水溶液、イオン交換水を、モル比が10SiO2:1Al2O3:40Na2O:10Cs2O:2000H2Oになるように200g調合し、シェイカーで1晩混合した。超音波卓上粘度計(富士工業社製FCV-100H)を用いて、20℃における原料溶液の粘度を測定したところ、10mPa・sであった。種結晶を塗布したジルコニア支持体と、得られた原料溶液とをテフロン(登録商標)容器に入れ、100℃で10時間加熱して水熱合成を行い、支持体上にRHO型ゼオライト膜を形成した。その後、支持体およびゼオライト膜を水洗し、乾燥機で50℃にて1晩乾燥させ、ゼオライト膜複合体を得た。
【0076】
(実施例2)
原料溶液の組成を10SiO2:1Al2O3:100Na2O:10Cs2O:2000H2Oに変更した以外は実施例1と同様とした。原料溶液の粘度(20℃)は、5mPa・sであった。
【0077】
(実施例3)
原料溶液の組成を10SiO2:1Al2O3:10Na2O:10Cs2O:2000H2Oに変更した以外は実施例1と同様とした。原料溶液の粘度(20℃)は、20mPa・sであった。
【0078】
(実施例4)
原料溶液の組成を20SiO2:1Al2O3:40Na2O:10Cs2O:2000H2Oに変更した以外は実施例1と同様とした。原料溶液の粘度(20℃)は、12mPa・sであった。
【0079】
(実施例5)
原料溶液の組成を10SiO2:1Al2O3:40Na2O:10Cs2O:5000H2Oに変更した以外は実施例1と同様とした。原料溶液の粘度(20℃)は、7mPa・sであった。
【0080】
(実施例6)
原料溶液の組成を20SiO2:1Al2O3:10Na2O:1Cs2O:1000H2Oに変更し、水熱合成における合成温度を110℃に変更した以外は実施例1と同様とした。原料溶液の粘度(20℃)は、30mPa・sであった。
【0081】
(実施例7)
支持体を直径30mm、長さ160mmのモノリス形状のアルミナ多孔質支持体に変更した以外は実施例1と同様とした。原料溶液の粘度(20℃)は、10mPa・sであった。
【0082】
(比較例1)
支持体は実施例1と同様のジルコニア支持体を使用し、種結晶の塗布も実施例1と同様とした。原料溶液の組成は10.8SiO2:1Al2O3:3Na2O:0.4Cs2O:110H2Oとし、110℃で144時間加熱して水熱合成を行い、RHO型ゼオライト膜を得た。原料溶液の粘度(20℃)は、1200mPa・sであった。
【0083】
(比較例2)
水熱合成の条件を110℃で24時間に変更した以外は比較例1と同様の方法でゼオライト膜を形成した。
【0084】
(ゼオライト膜複合体の測定および評価)
実施例1ないし7、並びに、比較例1および2のゼオライト膜複合体に対して各種測定を行った。まず、ゼオライト膜の表面に対してX線回折法による測定(XRD測定)を行った。XRD測定では、リガク社製のX線回折装置(装置名:MiniFlex600)を用いた。XRD測定は、管電圧40kV、管電流15mA、走査速度0.5°/min、走査ステップ0.02°で行った。また、発散スリット1.25°、散乱スリット1.25°、受光スリット0.3mm、入射ソーラースリット5.0°、受光ソーラースリット5.0°とした。モノクロメーターは使用せず、CuKβ線フィルターとして0.015mm厚ニッケル箔を使用した。実施例1ないし7のゼオライト膜複合体では、いずれもXRDパターンにおける2θ=18.7°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の0.4倍以下となり、2θ=14.4°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の0.3倍以下となった。換言すると、RHO型ゼオライトの(310)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.4倍以下となり、(211)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.3倍以下となった。なお、既述の
図3は、実施例1のゼオライト膜複合体から得られたXRDパターンである。
【0085】
これに対し、比較例1および2のゼオライト膜複合体では、いずれもXRDパターンにおける2θ=18.7°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の0.4倍よりも大きくなり、2θ=14.4°付近のピーク強度が、2θ=8.3°付近のピーク強度の0.3倍よりも大きくなった。すなわち、RHO型ゼオライトの(310)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.4倍よりも大きくなり、(211)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.3倍よりも大きくなった。
【0086】
また、ゼオライト膜のケイ素/アルミニウムのモル比(Si/Al比)をEDS分析により測定した。EDS分析では、加速電圧を10kV以下とした。表2のように、実施例1ないし7、並びに、比較例1および2のゼオライト膜複合体では、いずれもケイ素/アルミニウムのモル比が1~10の範囲内であった。
【0087】
【0088】
また、各ゼオライト膜複合体に対して、ゼオライト膜および複合層の厚さの測定を行った。当該厚さの測定では、
図2を参照して説明したように、支持体におけるゼオライト膜の形成面に垂直な、ゼオライト膜複合体の断面が露出され、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて当該断面のSEM画像を取得した。SEM画像の倍率は、5000倍とした。続いて、SEM画像において当該形成面に沿う方向の一の測定位置近傍にて、深さ方向における複合層の両側の境界位置を特定した。そして、複合層におけるゼオライト膜側の境界位置と、ゼオライト膜とは反対側の境界位置との間の深さ方向の距離を、当該測定位置における複合層の厚さとして取得した。また、ゼオライト膜の表面の位置と、複合層におけるゼオライト膜側の境界位置との間の深さ方向の距離を、当該測定位置におけるゼオライト膜の厚さとして取得した。
【0089】
各ゼオライト膜複合体に対して、異なる10個の測定位置における複合層の厚さの平均値を求め、当該ゼオライト膜複合体における複合層の厚さとして決定した。同様に、10個の測定位置におけるゼオライト膜の厚さの平均値を求め、当該ゼオライト膜複合体におけるゼオライト膜の厚さとして決定した。表2では、ゼオライト膜の厚さおよび複合層の厚さも示している。
【0090】
実施例1ないし7では、いずれも複合層の厚さが、ゼオライト膜の厚さよりも小さくなったのに対し、比較例1および2では、複合層の厚さが、ゼオライト膜の厚さよりも大きくなった。また、いずれのゼオライト膜複合体も、ゼオライト膜の厚さが、5μm以下であった。一方、複合層の厚さは、実施例1ないし7では、1μm未満であったが、比較例1および2では、1μmよりも大幅に大きくなった。
【0091】
ゼオライト膜複合体の評価では、分離係数および水透過量を測定した。分離係数および水透過量は、上述の分離装置2において、水およびエタノールの混合液を供給部26から外筒22内のゼオライト膜複合体1に供給し、ゼオライト膜複合体1を透過して第2回収部28にて回収される透過物質(すなわち、透過液)から求めた。具体的には、分離係数は、第2回収部28にて回収される透過物質における水濃度(質量%)を、第2回収部28にて回収される透過物質におけるエタノール濃度(質量%)で除算した値(すなわち、水とエタノールとの分離比)とした。水透過量は、第2回収部28にて回収される透過物質における水の量から求めた。なお、供給部26から供給される混合液の温度は60℃とし、当該混合液における水およびエタノールの割合はそれぞれ50質量%とし、透過圧(透過側真空度)を50Torrとした。
【0092】
表2のように、比較例1および2のゼオライト膜複合体では、分離係数が800以下であった。これに対し、実施例1ないし7のゼオライト膜複合体では、いずれも分離係数が1500よりも大きくなり、緻密性が高いRHO型ゼオライト膜が得られた。また、実施例1ないし7では、水透過量(水フラックス)が1.3kg/m2h以上となり、高い水透過量も得られた。
【0093】
上述のように、実施例1ないし7の原料溶液では、比較例1および2の原料溶液に比べて、粘度が十分に低く、流動性が高められている。これにより、緻密なゼオライト膜を形成することが可能になったと考えられる。また、実施例1ないし7のゼオライト膜複合体では、比較例1および2のゼオライト膜複合体に比べて、複合層の厚さが小さくなった。この理由は、実施例1ないし7の原料溶液が種結晶に優先的に作用するためである、すなわち、種結晶が存在しない支持体の部位(例えば、気孔内)では、ゼオライトが生成されにくいためであると考えられる。一方、比較例1および2の原料溶液では、濃度が高く、種結晶が存在しない支持体の気孔内においても、ゼオライトが生成されやすい。なお、比較例2では、分離係数が極めて低いことから、隙間が多い粗なゼオライト膜が形成され、水透過量が比較的高くなったと考えられ、比較例1では、複合膜の厚さが大きいため、水透過量が低くなったと考えられる。
【0094】
以上に説明したように、ゼオライト膜複合体1は、多孔質の支持体11と、支持体11上に設けられ、RHO型ゼオライトからなるゼオライト膜12とを備える。ゼオライト膜12の表面をX線回折法により測定した場合に、RHO型ゼオライトの(310)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.4倍以下であり、(211)面に由来するピーク強度が、(110)面に由来するピーク強度の0.3倍以下である。このように、ゼオライト膜複合体1では、ゼオライト膜12が、(110)面に由来するピーク強度が高い配向膜となっており、多くの細孔の開口がゼオライト膜12の表面に位置する。その結果、分離性能および透過量が高いゼオライト膜複合体1を容易に提供することができる。
【0095】
好ましいゼオライト膜複合体1では、支持体11においてゼオライト膜12の一部が気孔内に入り込んでいる複合層13が設けられており、複合層13の厚さが、支持体11上のゼオライト膜12の厚さよりも小さい。これにより、高透過性物質の透過が複合層13において阻害されることが抑制され、高透過性物質の透過量をより高くすることができる。より好ましくは、ゼオライト膜12の厚さが、5μm以下であり、複合層13の厚さが、1μm以下である。このようなゼオライト膜複合体1では、高透過性物質の透過量をさらに高くすることができる。
【0096】
好ましくは、ゼオライト膜12におけるケイ素/アルミニウムのモル比が1~10である。これにより、ゼオライト膜12の親水性を向上することができ、水を高透過性物質とする場合における、ゼオライト膜複合体1の分離性能および透過量をより高くすることができる。換言すると、ゼオライト膜12を脱水膜として好適に用いることができる。
【0097】
ゼオライト膜複合体1の製造方法は、多孔質の支持体11上に、RHO型ゼオライトからなる種結晶を付着させる工程と、原料溶液に支持体11を浸漬し、水熱合成により種結晶からRHO型ゼオライトを成長させて支持体11上にゼオライト膜12を形成する工程とを備える。また、原料溶液において、ケイ素/アルミニウムのモル比が2~20であり、ナトリウム/アルミニウムのモル比が10~100であり、セシウム/アルミニウムのモル比が0.5~10であり、水/アルミニウムのモル比が500~5000である。これにより、分離性能および透過量が高いゼオライト膜複合体1を容易に提供することができる。
【0098】
また、上記原料溶液の20℃における粘度が、1~150mPa・sであることにより、分離性能および透過量が高いゼオライト膜複合体1をより確実に製造することができる。
【0099】
ところで、ゼオライト膜の緻密性を向上させるために、水熱合成を複数回繰り返すことが考えられるが、この場合、ゼオライト膜および複合層の厚さが大きくなり、透過量が低くなってしまう。これに対し、ゼオライト膜複合体1の製造方法では、上記のように原料溶液を調整することにより、ゼオライト膜12および複合層13の厚さを小さくしつつ、緻密なゼオライト膜12を形成することが可能となる。
【0100】
上記ゼオライト膜複合体1およびゼオライト膜複合体1の製造方法では様々な変形が可能である。
【0101】
ゼオライト膜複合体1において、ある程度の透過量が確保される場合には、複合層13の厚さが、支持体11上のゼオライト膜12の厚さ以上であってもよい。また、ゼオライト膜12の厚さが、5μmより大きくてもよく、複合層13の厚さが、1μmより大きくてもよい。
【0102】
ゼオライト膜12におけるケイ素/アルミニウムのモル比が、10より大きくてもよい。
【0103】
貫通孔を有する支持体11では、ゼオライト膜12が内周面または外周面のいずれに設けられてもよく、内周面および外周面の両方に設けられてもよい。
【0104】
ゼオライト膜複合体1が適切に製造可能であるならば、ゼオライト膜12の形成に用いられる原料溶液の20℃における粘度が、1~150mPa・sの範囲外であってもよい。また、ゼオライト膜複合体1は、上記製造方法以外の方法により製造されてもよい。
【0105】
ゼオライト膜複合体1は、支持体11およびゼオライト膜12に加えて、ゼオライト膜12上に積層された機能膜や保護膜をさらに備えていてもよい。このような機能膜や保護膜は、ゼオライト膜、シリカ膜または炭素膜等の無機膜であってもよく、ポリイミド膜またはシリコーン膜等の有機膜であってもよい。また、ゼオライト膜12上に積層された機能膜や保護膜には、水を吸着しやすい物質が添加されていてもよい。
【0106】
分離装置2および分離方法では、上記説明にて例示した浸透気化法以外に、蒸気透過法、逆浸透法、ガス透過法等によって混合物質の分離が行われてもよい。
【0107】
分離装置2および分離方法では、上記説明にて例示した物質以外の物質が、混合物質から分離されてもよい。
【0108】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0109】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のゼオライト膜複合体は、例えば、脱水膜として利用可能であり、さらには、水以外の様々な物質の分離膜や様々な物質の吸着膜等として、ゼオライトが利用される様々な分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
1 ゼオライト膜複合体
11 支持体
12 ゼオライト膜
13 複合層
S11~S13,S21,S22 ステップ