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特許7629684積層体および光拡散制御フィルムの使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】積層体および光拡散制御フィルムの使用方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20250206BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20250206BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20250206BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20250206BHJP
   E06B 9/24 20060101ALN20250206BHJP
【FI】
G02B5/02 B
B32B7/023
G02B5/00 Z
G02B5/22
E06B9/24 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019197480
(22)【出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2021071566
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-08-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/156303(WO,A1)
【文献】特開2017-187770(JP,A)
【文献】特開2015-222441(JP,A)
【文献】特開2017-97067(JP,A)
【文献】特開2014-137575(JP,A)
【文献】特開平3-109501(JP,A)
【文献】特開2013-218261(JP,A)
【文献】特開2018-155536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 7/023
G02B 5/00 - 5/136
E06B 9/24 - 9/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外光が照射される環境下で使用される積層体であって、
フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有する光拡散制御フィルムと、
前記光拡散制御フィルムよりも外光入射側に位置する紫外線吸収層と
を備え、
前記光拡散制御フィルムが、ヒンダードアミン系化合物を含有し、
前記内部構造が、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造、および屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造の少なくとも一方を有し、
前記紫外線吸収層の波長380nmの光線透過率が、1%以下である
ことを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記光拡散制御フィルム中におけるヒンダードアミン系化合物の含有量が、0.01質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記光拡散制御フィルムが、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する組成物から得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記光拡散制御フィルムが、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記積層体が、ウィンドウフィルムであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記光拡散制御フィルムの両面側に紫外線吸収層を備えていることを特徴とする請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
前記積層体が、外光利用型表示体であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
光拡散制御フィルムを、外光が照射される環境下で使用され積層体に用いる使用方法であって、
前記光拡散制御フィルムが、
フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、
ヒンダードアミン系化合物を含有し、
前記内部構造が、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造、および屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造の少なくとも一方を有しており、
前記積層体が、前記光拡散制御フィルムよりも外光入射側に位置し、波長380nmの光線透過率が1%以下である紫外線吸収層を備える
ことを特徴とする光拡散制御フィルムの使用方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射角度に依存して入射光を拡散または透過させることができる光拡散制御フィルム、および当該光拡散制御フィルムを備えた積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、入射角度に依存して入射光を拡散または透過させることができる光拡散制御フィルムが知られている。かかる光拡散制御フィルムは、例えば、窓ガラスやキャッシュディスペンサーのタッチパネル等に貼着してプライバシーを保護する視野角制御フィルム、反射型液晶ディスプレイの光制御フィルム等としての利用が検討されている。また、上記の光拡散制御フィルムは、例えば、光拡散特性を有する面や鏡面反射面に対して文字や画像を印刷したり、あるいは、これらの面に対して文字や画像を印刷した透明または半透明のフィルムを貼合したりしてなる外光利用型の表示体、具体的には看板や標識としても利用が検討されている。
【0003】
上記のような光拡散制御フィルムの一例として、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造をフィルム内に有するものが存在する。より具体的には、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に沿って交互に配置してなるルーバー構造を有する光拡散制御フィルムや、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の柱状物を林立させてなるカラム構造を有する光拡散制御フィルム等が存在する。
【0004】
上述したような光拡散制御フィルムとして、特許文献1には、所定のウレタン(メタ)アクリレート化合物と、芳香族骨格を有する所定の(メタ)アクリル酸エステル化合物と、所定の光重合開始剤を含有する光拡散制御フィルム用樹脂組成物を硬化してなる光拡散制御フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6414883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、上記の光拡散制御フィルムが所定の条件下で液状化することを見出した。そこで、本発明は、液状化が抑制された光拡散制御フィルムおよび当該光拡散制御フィルムを備えた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、外光が照射される環境下で使用される積層体であって、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有する光拡散制御フィルムと、前記光拡散制御フィルムよりも外光入射側に位置する紫外線吸収層とを備え、前記光拡散制御フィルムが、ヒンダードアミン系化合物を含有することを特徴とする積層体を提供する(発明1)。
【0008】
上記発明(発明1)においては、上記構成を有する積層体中の光拡散制御フィルムがヒンダードアミン系化合物を含有することで、外光照射環境下で経時使用された場合であっても、当該光拡散制御フィルムが液状化することが抑制される。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記紫外線吸収層の波長380nmの光線透過率が30%以下であることが好ましい(発明2)。
【0010】
上記発明(発明1,2)においては、前記光拡散制御フィルム中におけるヒンダードアミン系化合物の含有量が、0.01質量%以上、10質量%以下であることが好ましい(発明3)。
【0011】
上記発明(発明1~3)においては、前記光拡散制御フィルムが、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する組成物から得られたものであることが好ましい(発明4)。
【0012】
上記発明(発明1~4)においては、前記光拡散制御フィルムが、紫外線吸収剤を含有することが好ましい(発明5)。
【0013】
上記発明(発明1~5)においては、前記積層体が、ウィンドウフィルムであってもよい(発明6)。
【0014】
上記発明(発明6)においては、前記光拡散制御フィルムの両面側に紫外線吸収層を備えていることが好ましい(発明7)。
【0015】
上記発明(発明1~5)においては、前記積層体が、外光利用型表示体であってもよい(発明8)。
【0016】
第2に本発明は、外光が照射される環境下で使用され、光拡散制御フィルムと、前記光拡散制御フィルムよりも外光入射側に位置する紫外線吸収層とを備えた積層体に用いられる前記光拡散制御フィルムであって、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、ヒンダードアミン系化合物を含有することを特徴とする光拡散制御フィルムを提供する(発明9)。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る光拡散制御フィルムおよび積層体によれば、光拡散制御フィルムの液状化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る光拡散制御フィルムにおける内部構造(カラム構造)の概略斜視図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る光拡散制御フィルムにおける内部構造(ルーバー構造)の概略斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る積層体(ウィンドウフィルム)の断面図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る積層体(外光利用型表示体)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔光拡散制御フィルム〕
本発明の一実施形態に係る光拡散制御フィルムは、後述する積層体、すなわち、外光が照射される環境下で使用され、光拡散制御フィルムと、当該光拡散制御フィルムよりも外光入射側に位置する紫外線吸収層とを備えた積層体に用いられる光拡散制御フィルムである。本実施形態に係る光拡散制御フィルムは、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有しており、ヒンダードアミン系化合物を含有している。上記内部構造は、規則的内部構造であることが好ましく、詳細は後述する。
【0020】
本発明者らは、従来の光拡散制御フィルムが上記の積層体に用いられた場合、外光照射環境下での経時使用により当該光拡散制御フィルムが液状化することを見出した。本実施形態に係る光拡散制御フィルムは、上記のようにヒンダードアミン系化合物を含有することで、上記の積層体にて外光照射環境下で経時使用された場合であっても、液状化することが抑制される。
【0021】
ここで、本明細書における「外光」は、対象物(ここでは積層体)の外側から当該対象物に入射される光であって、直射日光、天空光、地物反射光の他、各種照明又はデバイスの光を含み、ガラスやプラスチック等の透光部材を透過した光も含まれる。
【0022】
ヒンダードアミンとは、アミノ基の両隣に置換基を有するアミンをいう。本実施形態におけるヒンダードアミン系化合物は、下記一般式(I)
【化1】

(式中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。)
からなる骨格を少なくとも1つ含む化合物であることが好ましい。
【0023】
本実施形態におけるヒンダードアミン系化合物は、上記一般式(I)におけるRが、アルキル基であることが好ましく、特に炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、さらにはメチル基であることが好ましい。すなわち、本実施形態におけるヒンダードアミン系化合物は、N-アルキル基骨格を有するものであることが好ましく、特にN-C~Cアルキル基骨格を有するものであることが好ましく、さらにはN-CH骨格を有するものであることが好ましい。かかる骨格を有するヒンダードアミン系化合物は、光拡散制御フィルムの液状化抑制効果に優れる。
【0024】
本実施形態におけるヒンダードアミン系化合物は、上記一般式(I)からなる骨格を1個または2個以上有することが好ましく、1~10個有することがより好ましく、特に1~7個有することが好ましく、さらには1~4個有することが好ましく、1~2個有することが最も好ましい。上記一般式(I)からなる骨格は、ヒンダードアミン系化合物の末端に存在してもよいし、側鎖に存在してもよいし、末端および側鎖に存在してもよい。ヒンダードアミン系化合物が上記一般式(I)からなる骨格を1個または2個有する場合には、それらを側鎖に有することが好ましい。
【0025】
なお、ヒンダードアミン系化合物が上記一般式(I)からなる骨格を2個以上有する場合、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0026】
本実施形態におけるヒンダードアミン系化合物は、上記一般式(I)からなる骨格における4位の炭素原子に、-COO-骨格の酸素原子が結合している化合物が好ましい。
【0027】
本実施形態におけるヒンダードアミン系化合物としては、下記構造式(A)
【化2】

(式中、nは1以上の整数である。)
で示される化合物、または下記構造式(B)
【化3】

(式中、mは1以上の整数である。)
で示される化合物であることが特に好ましい。
【0028】
上記構造式(A)で示される化合物におけるnは、1~20であることが好ましく、特に3~15であることが好ましく、さらには5~10であることが好ましい。
【0029】
上記構造式(B)で示される化合物におけるmは、1~20であることが好ましく、特に3~15であることが好ましく、さらには5~10であることが好ましい。上記式中、Rは、アルキル基であることが好ましく、特に炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、さらにはメチル基であることが好ましい。
【0030】
上記構造式(A)で示される化合物および上記構造式(B)で示される化合物は、それぞれ単独で使用することもできるが、混合して使用することが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る光拡散制御フィルム中におけるヒンダードアミン系化合物の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、特に0.2質量%以上であることが好ましく、さらには0.4質量%以上であることが好ましい。これにより、光拡散制御フィルムの液状化抑制効果がより優れたものとなる。一方、ヒンダードアミン系化合物の含有量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、特に5質量%以下であることが好ましく、さらには2質量%以下であることが好ましい。これにより、得られる光拡散制御フィルムの変角ヘイズ角度範囲を広いものとすることができる。
【0032】
本実施形態に係る光拡散制御フィルムは、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する組成物(以下「光拡散制御組成物C」という。)から得られたものであることが好ましい。本実施形態に係る光拡散制御フィルムは、特に上記光拡散制御組成物Cを硬化させたものであることが好ましく、その場合、高屈折率成分および低屈折率成分は、それぞれ、1個または2個の重合性官能基を有するものであることが好ましい。このような光拡散制御組成物Cを用いることで、後述する規則的内部構造を良好に形成し易くなる。
【0033】
光拡散制御組成物Cは、エーテル結合を有する成分を含有することが好ましく、当該エーテル結合を有する成分は、ポリエーテルウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましい。光拡散制御フィルムに対して微弱な紫外線が長時間照射された場合、フィルム構成分中のエーテル結合が切断され、液状化が発生し易くなると考えられる。本実施形態に係る光拡散制御フィルムでは、ヒンダードアミン系化合物が存在することで、上記エーテル結合の切断が阻害され、液状化の発生が効果的に抑制されると推定される。
【0034】
以下、光拡散制御組成物Cが、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分と、ヒンダードアミン系化合物とを含有し、高屈折率成分および低屈折率成分が、それぞれ、1個または2個の重合性官能基を有するものである場合について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0035】
1.各成分
(1)高屈折率成分
上記高屈折率成分の好ましい例としては、芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、特に複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等が挙げられる。これらの中でも、良好な規則的内部構造を形成し易いという観点から、(メタ)アクリル酸ビフェニルが好ましく、具体的には、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート等が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0036】
高屈折率成分の(重量平均)分子量は、2500以下であることが好ましく、特に1500以下であることが好ましく、さらには1000以下であることが好ましい。また、高屈折率成分の(重量平均)分子量は、150以上であることが好ましく、特に200以上であることが好ましく、さらには250以上であることが好ましい。高屈折率成分の(重量平均)分子量が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造を有する光拡散制御フィルムを形成し易くなる。なお、上記高屈折率成分が、分子構造に基づいて理論分子量を特定可能である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、当該理論分子量(重量平均分子量ではない分子量)を指すものとする。一方、上記高屈折率成分が、例えば高分子成分であることに起因して、上述した理論分子量が特定困難である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値として得られる重量平均分子量をいうものとする。なお、本明細書における重量平均分子量の測定方法は、当該GPC法により測定した標準ポリスチレン換算の値をいうものとする。
【0037】
高屈折率成分の屈折率は、1.45以上であることが好ましく、1.50以上であることがより好ましく、特に1.54以上であることが好ましく、さらには1.56以上であることが好ましい。また、高屈折率成分の屈折率は、1.70以下であることが好ましく、特に1.65以下であることが好ましく、さらには1.59以下であることが好ましい。高屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造および光拡散制御能を有する光拡散制御フィルムを形成し易くなる。なお、本明細書における屈折率とは、光拡散制御組成物Cを硬化する前における所定の成分の屈折率を意味し、また、当該屈折率は、JIS K0062:1992に準じて測定したものである。
【0038】
光拡散制御組成物C中における高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、25質量部以上であることが好ましく、特に40質量部以上であることが好ましく、さらには50質量部以上であることが好ましい。また、光拡散制御組成物C中における高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、400質量部以下であることが好ましく、特に300質量部以下であることが好ましく、さらには200質量部以下であることが好ましい。高屈折率成分の含有量がこれらの範囲であることで、形成される光拡散制御フィルムの規則的内部構造において、高屈折率成分に由来する領域と低屈折率成分に由来する領域とが所望の割合で存在するものとなる。その結果、所望の規則的内部構造を有する光拡散制御フィルムを形成し易くなる。
【0039】
(2)低屈折率成分
上記低屈折率成分の好ましい例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0040】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成されるものであることが好ましい。
【0041】
上記(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物の好ましい例としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等が挙げられる。これらの中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましく、特にイソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
【0042】
上記(b)ポリアルキレングリコールの好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0043】
なお、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、2300以上であることが好ましく、特に3000以上であることが好ましく、さらには4000以上であることが好ましい。また、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、19500以下であることが好ましく、特に14300以下であることが好ましく、さらには12300以下であることが好ましい。
【0044】
上記(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
上述した(a)~(c)の成分を材料としたウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って行うことができる。このとき(a)~(c)の成分の配合割合は、ウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成する観点から、モル比にて、(a)成分:(b)成分:(c)成分=1~5:1:1~5の割合とすることが好ましく、特に1~3:1:1~3の割合とすることが好ましい。
【0046】
低屈折率成分の重量平均分子量は、3000以上であることが好ましく、特に5000以上であることが好ましく、さらには7000以上であることが好ましい。また、低屈折率成分の重量平均分子量は、20000以下であることが好ましく、特に15000以下であることが好ましく、さらには13000以下であることが好ましい。低屈折率成分の重量平均分子量が上記範囲であることにより、所望の規則的内部構造を有する光拡散制御フィルムを形成し易くなる。
【0047】
低屈折率成分の屈折率は、1.59以下であることが好ましく、1.50以下であることがより好ましく、特に1.49以下であることが好ましく、さらには1.48以下であることが好ましい。また、低屈折率成分の屈折率は、1.30以上であることが好ましく、特に1.40以上であることが好ましく、さらには1.46以上であることが好ましい。低屈折率成分の屈折率が上記範囲であることで、所望の規則的内部構造および光拡散制御能を有する光拡散制御フィルムを形成し易くなる。
【0048】
(3)ヒンダードアミン系化合物
ヒンダードアミン系化合物としては、前述したものを使用することができる。また、光拡散制御組成物C中におけるヒンダードアミン系化合物の含有量は、光拡散制御フィルム中におけるヒンダードアミン系化合物の含有量と同様である。
【0049】
(4)紫外線吸収剤
光拡散制御組成物Cは、さらに紫外線吸収剤を含有することが好ましい。これにより、光拡散制御フィルムの液状化抑制効果がより優れたものとなる。
【0050】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系、サリチル酸エステル系等が挙げられ、1種を単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。上記の中でも、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物が好ましく、特にベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。これらの化合物は、前述した高屈折率成分および低屈折率成分との相溶性が良好であり、また、着色の程度も低い。
【0051】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸水和物、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン等が好ましく挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]フェニル)プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]フェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸-3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-アルキルエステル等が好ましく挙げられる。トリアジン系化合物としては、例えば、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール等が好ましく挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
光拡散制御組成物C中における紫外線吸収剤の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、特に0.02質量%以上であることが好ましく、さらには0.06質量%以上であることが好ましい。これにより、光拡散制御フィルムの液状化抑制効果がより優れたものとなる。一方、紫外線吸収剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、特に0.5質量%以下であることが好ましく、さらには0.1質量%以下であることが好ましい。これにより、光拡散制御組成物Cの紫外線照射による硬化が問題なく進行する。
【0053】
(5)その他の成分
前述した光拡散制御組成物Cは、高屈折率成分、低屈折率成分およびヒンダードアミン系化合物以外に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー(重合性官能基を3つ以上有する化合物)、光重合開始剤、酸化防止剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
【0054】
上述した添加剤の中でも、光拡散制御組成物Cは、光重合開始剤を含有することも好ましい。光拡散制御組成物Cが光重合開始剤を含有することで、所望の規則的内部構造を有する光拡散制御フィルムを効率的に形成し易いものとなる。
【0055】
光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン]等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
光重合開始剤を使用する場合、光拡散制御組成物C中の光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、0.2質量部以上とすることが好ましく、特に0.5質量部以上とすることが好ましく、さらには1質量部以上とすることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましく、特に15質量部以下とすることが好ましく、さらには10質量部以下とすることが好ましい。光拡散制御組成物C中の光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、光拡散制御フィルムを効率的に形成し易いものとなる。
【0057】
2.光拡散制御組成物の調製
光拡散制御組成物Cは、前述した高屈折率成分、低屈折率成分およびヒンダードアミン系化合物、ならびに、所望により光重合開始剤等のその他の添加剤を均一に混合することで調整することができる。
【0058】
上記混合の際には、40~80℃の温度に加熱しながら撹拌し、均一な光拡散制御組成物Cを得てもよい。また、得られる光拡散制御組成物Cが所望の粘度となるように、希釈溶剤を添加して混合してもよい。
【0059】
3.光拡散制御フィルムの内部構造
本実施形態における光拡散制御フィルムの内部構造は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えており、これにより、入射角度に依存して入射光を拡散または透過させることができる。
【0060】
本実施形態における光拡散制御フィルムの内部構造は、規則的内部構造であることが好ましい。具体的には、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の領域が、フィルム膜厚方向に、所定の長さで延在する規則的内部構造であることが好ましい。なお、かかる規則的内部構造は、屈折率が相対的に高い領域がフィルム膜厚方向に延在してなるものである点で、一方の相が他方の相中に明確な規則性なく存在してなる相分離構造や、海成分中にほぼ球状の島成分が存在してなる海島構造とは区別されるものである。
【0061】
上記の規則的内部構造の一例としては、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をフィルム膜厚方向に林立させてなるカラム構造が挙げられる。また、別の例としては、屈折率が異なる複数の板状領域をフィルム面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造が挙げられる。
【0062】
(1)カラム構造
図1は、上記カラム構造を概略的に示す斜視図である。図1に示されるように、カラム構造11Aでは、屈折率が相対的に高い柱状物111が厚さ方向に複数林立し、その周囲を、屈折率が相対的に低い領域112が埋める構造となっている。なお、図1では、柱状物111が、カラム構造11A内の厚さ方向全域に存在するものとして描かれているものの、カラム構造11Aの厚さ方向の上端部および下端部の少なくとも一方に、柱状物111が存在しないものとなっていてもよい。
【0063】
このようなカラム構造11Aを有する光拡散制御フィルムに入射された光は、所定の入射角度範囲内となる場合、所定の開き角をもって強く拡散しながら光拡散制御フィルムから出射される。一方、入射光が上記入射角度範囲外の角度による入射となる場合、拡散することなく透過するか、または、入射角度範囲内の入射光の場合よりも弱い拡散を伴って出射されるものとなる。なお、カラム構造11Aによって生じる拡散光は、光拡散制御フィルム表面と平行に造影体を配置する場合、いずれの方向にも広がりを有する、円形状もしくは略円形状(楕円形状など)となる。一方、上記入射角度範囲外の入射光による、上記の弱い拡散の場合は、三日月状の拡散光となる。
【0064】
カラム構造11Aにおいては、屈折率が相対的に高い柱状物111の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域112の屈折率との差が、0.01~0.3であることが好ましい。
【0065】
上述した柱状物111は、光拡散制御フィルムの一方の面から他方の面に向かって拡径する構造を有していることが好ましい。このような構造を有する柱状物111は、一方の面から他方の面に向かって直径がほぼ変化しない柱状物と比較して、柱状物の軸線方向と平行な光の進行方向を変更させ易くなり、これにより、光拡散制御フィルムが効果的に光を拡散させることが可能となる。
【0066】
また、柱状物111を、軸線方向に水平な面で切断したときの断面における、直径の最大値は、0.1~10μmであることが好ましい。なお、柱状物111の軸線方向と垂直な面で切断したときの断面形状については、特に限定されるものではないが、例えば、円、楕円、多角形、異形等とすることが好ましい。
【0067】
カラム構造11Aにおいては、隣接する柱状物111間の距離が、0.1~10μmであることが好ましい。
【0068】
また、カラム構造11Aでは、柱状物111が、光拡散制御フィルムの厚さ方向に対して水平に林立していてもよいし、一定の傾斜角にて林立していてもよい。一定の傾斜角にて林立するときの傾斜角、すなわち、カラム構造11Aの柱状物111の軸線と、光拡散制御フィルム表面の法線とがなす鋭角側の角度は、1~50°であることが好ましい。
【0069】
なお、以上のカラム構造11Aの規則的内部構造に係る寸法や所定の角度等は、光学デジタル顕微鏡を用いてカラム構造11Aの断面を観察することにより測定することができる。
【0070】
(2)ルーバー構造
図2は、上記ルーバー構造を概略的に示す斜視図である。図2に示されるように、ルーバー構造11Bでは、屈折率が相対的に高い板状領域113が、フィルム面に沿った一方向に交互に配置されており、それらの間を、屈折率が相対的に低い領域114が埋める構造となっている。なお、図2では、板状領域113が、ルーバー構造11B内の厚さ方向全域に存在するものとして描かれているものの、ルーバー構造11Bの厚さ方向の上端部および下端部の少なくとも一方に、板状領域113が存在しないものとなっていてもよい。
【0071】
このようなルーバー構造11Bを有する光拡散制御フィルムに入射された光は、その入射角度に応じて、拡散しながら光拡散制御フィルムから出射されるか、または拡散することなく透過するものとなる。なお、ルーバー構造11Bを有する光拡散制御フィルムは、板状領域113の配列方向に垂直な方向に対する拡散が生じ易いという性質を有する。
【0072】
ルーバー構造11Bにおいては、屈折率が相対的に高い板状領域113の屈折率と、屈折率が相対的に低い領域114の屈折率との差が、0.01~0.3であることが好ましい。
【0073】
ルーバー構造11Bにおいては、個々の板状領域113の厚さ(配列方向の幅)が、0.1~10μmであることが好ましい。
【0074】
ルーバー構造11Bでは、板状領域113が、その配列方向に沿って傾斜していてもよいし、傾斜を有さず、フィルム法線方向と一致するように配列していてもよい。配列方向に沿って傾斜する場合における傾斜角、すなわち板状領域113の片面と光拡散制御フィルムの法線とがなす鋭角側の角度は、1~60°であることが好ましい。
【0075】
なお、以上のルーバー構造11Bの内部構造に係る寸法や所定の角度等は、光学デジタル顕微鏡を用いてルーバー構造11Bの断面を観察することにより測定することができる。
【0076】
(3)その他の内部構造
本実施形態に係る光拡散制御フィルムの内部構造は、上述したカラム構造11Aおよびルーバー構造11B以外の構造を有していてもよい。例えば、光拡散制御フィルムは、内部構造として、上述したカラム構造11Aにおける柱状物111が、光拡散制御フィルムの厚さ方向の途中において屈曲してなる構造を有していてもよい。また、光拡散制御フィルムは、内部構造として、上述したルーバー構造11Bにおける板状領域113が、光拡散制御フィルムの厚さ方向の途中において屈曲してなる構造を有していてもよい。さらに、本実施形態に係る光拡散制御フィルムの内部構造は、傾斜角度が異なったり、屈曲角度が異なったり、屈曲の有無が異なったりする柱状物111の領域または板状領域113を、光拡散制御フィルムの厚さ方向に2つ以上有する構造であってもよい。あるいは、本実施形態に係る光拡散制御フィルムは、カラム構造11Aおよびルーバー構造11Bや、上述した屈曲を有する構造を任意の組み合わせで積層してなる内部構造を有したものであってもよい。
【0077】
(4)光拡散制御フィルムの厚さ方向における内部構造の割合
本実施形態に係る光拡散制御フィルムは、前述した通り、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を厚さ方向に延在するように備えた内部構造を有するものであることが好ましい。ここで、当該内部構造の厚さ方向に延在する割合としては、光拡散性をより効率的なものとする観点から、光拡散制御フィルム厚さの10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。なお、上限値は制約がなく、100%、すなわち、厚さ方向全てに内部構造が形成されていてもよい。
【0078】
4.光拡散制御フィルムの物性等
(1)厚さ
本実施形態に係る光拡散制御フィルムの厚さは、下限値として、20μm以上であることが好ましく、特に40μm以上であることが好ましく、さらには60μm以上であることが好ましい。光拡散制御フィルムの厚さの下限値が上記であることで、所望の光拡散制御能を発揮し易いものとなる。また、光拡散制御フィルムの厚さは、上限値として、700μm以下であることが好ましく、特に400μm以下であることが好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。光拡散制御フィルムの厚さの上限値が上記であることで、打痕や潰れの発生を抑制し易いものとなる。
【0079】
(2)変角ヘイズ角度範囲
光拡散制御フィルムにおける内部構造が前述したカラム構造11A又はその変形構造である場合、拡散フィルムの片方の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定される最大ヘイズ値の90%を閾値とし、当該閾値以上のヘイズ値を示す入射角度の角度範囲(変角ヘイズ角度範囲)は、5~100°であることが好ましい。
【0080】
また、光拡散制御フィルムにおける内部構造が前述したルーバー構造11B又はその変形構造である場合、拡散フィルムの片方の表面に対して、当該表面の法線方向を0°として-70°~70°の入射角度で光線を照射したときに測定される最大ヘイズ値の60%を閾値とし、当該閾値以上のヘイズ値を示す入射角度の角度範囲(変角ヘイズ角度範囲)は、5°以上であることが好ましく、特に10°以上であることが好ましく、さらには30°以上であることが好ましい。上記変角ヘイズ角度範囲が5°以上であることで、良好な光拡散制御能を達成し得る入射光の角度範囲がより広いものとなる。なお、上記変角ヘイズ角度範囲の上限値については特に限定されず、例えば、100°以下であってよく、特に80°以下であってよく、さらには50°以下であってもよい。
【0081】
なお、上記変角ヘイズ角度範囲の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0082】
5.光拡散制御フィルムの製造方法
本実施形態に係る光拡散制御フィルムの製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、工程シートの片面に、前述した光拡散制御フィルム用の組成物、好ましくは光拡散制御組成物Cを塗布し、塗膜を形成する。上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、光拡散制御フィルムを形成することができる。また、上記活性エネルギー線照射の前または後に、上記塗膜における工程シートとは反対側の面に、剥離シートの片面(特に剥離面)を貼合し、工程シートまたは剥離シート越しに、上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射し、上記塗膜を硬化させてもよい。
【0083】
上記塗布の方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等が挙げられる。また、光拡散制御組成物Cは、必要に応じて溶剤を用いて希釈してもよい。
【0084】
なお、上記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0085】
塗膜に対する活性エネルギー線の照射は、形成しようとする内部構造に応じて、異なる態様により行う。例えば、前述したカラム構造11Aを形成する場合には、塗膜に対して、光線の平行度が高い平行光を照射する。ここで、平行光とは、発せられる光の方向が、いずれの方向から見た場合であっても広がりを持たない略平行な光を意味する。このような平行光は、例えば、レンズや遮光部材といった公知の手段を用いて用意することができる。照射の際には、コンベア等を用いて塗膜と工程シートとの積層体をその長手方向に移動させながら、上記平行光を照射することが好ましい。なお、上記平行光の照射角度を調整することで、カラム構造11A内に形成される柱状物111の傾斜角度を調整することもできる。
【0086】
活性エネルギー線として紫外線を用いてカラム構造11Aを形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~10mW/cmとすることが好ましい。なお、ここでいうピーク照度とは、塗膜表面に照射される活性エネルギー線が最大値を示す部分での測定値を意味する。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~200mJ/cmとすることが好ましい。
【0087】
また、活性エネルギー線として紫外線を用いてカラム構造11Aを形成する場合、上記積層体に対する、活性エネルギー線の光源の相対的な移動速度は、0.1~10m/分とすることが好ましい。
【0088】
一方、前述したルーバー構造11Bを形成する場合には、活性エネルギー線の光源として線状光源を用い、積層体表面に対して幅方向(TD方向)にはランダムかつ流れ方向(MD方向)には略平行な帯状(ほぼ線状)の光を照射する。なお、上記光の照射角度を調整することで、ルーバー構造11B内に形成される板状領域113の傾斜角度を調整することもできる。
【0089】
活性エネルギー線として紫外線を用い、ルーバー構造11Bを形成する場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~50mW/cmとすることが好ましい。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~300mJ/cmとすることが好ましい。また、上記積層体に対する、活性エネルギー線の光源の相対的な移動速度は、0.1~10m/分とすることが好ましい。
【0090】
なお、より確実な硬化を完了させる観点から、前述したような平行光や帯状の光を用いた硬化を行った後に、通常の活性エネルギー線(平行光や帯状の光に変換する処理を行っていない活性エネルギー線,散乱光)を照射することも好ましい。このとき、均一に硬化させる観点から、塗膜表面に対して、剥離シートを積層してもよい。
【0091】
〔積層体〕
本発明の一実施形態に係る積層体は、外光が照射される環境下で使用される積層体であって、フィルム内に屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた内部構造を有する光拡散制御フィルムと、当該光拡散制御フィルムよりも外光入射側に位置する紫外線吸収層とを備え、上記光拡散制御フィルムが、ヒンダードアミン系化合物を含有するものである。
【0092】
上記の構成を有する積層体は、外光照射環境下での経時使用によっても光拡散制御フィルムが液状化することが抑制され、また、当該光拡散制御フィルムが黄変することも抑制される。なお、光拡散制御フィルムよりも外光入射側に紫外線吸収層が存在しない場合には、光拡散制御フィルムの液状化という問題は発生せず、黄変だけが問題となる。
【0093】
本実施形態に係る積層体における光拡散制御フィルムは、前述した実施形態に係る光拡散制御フィルムである。
【0094】
紫外線吸収層の波長380nmの光線透過率は、30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、特に1%以下であることが好ましく、さらには0.1%以下であることが好ましく、0.05%以下であることが最も好ましい。一方、当該光線透過率の下限値は特に制約されず、0%であることが好ましい。また、可視光領域の高い透過率との両立の観点からは、0.001%以上であることが好ましく、0.005%以上であることがより好ましく、特に0.010%以上であることが好ましく、さらには0.015%以上であることが好ましい。紫外線吸収層の波長380nmの光線透過率が上記の範囲であると、従来の光拡散制御フィルムは外光照射環境下での経時によって液状化し易くなる。これは、微弱な紫外線が長時間光拡散制御フィルムに照射されて、光拡散制御フィルム中の所定の分子鎖が切断されることが原因と考えられる。一方、紫外線吸収層の波長380nmの光線透過率が上記の範囲であると、ヒンダードアミン系化合物の含有量が少量であっても光拡散制御フィルムの黄変を抑制することができるとともに、積層体の他の部材を紫外線から保護することができる。
【0095】
本実施形態における紫外線吸収層は、可視光領域の光線の透過性は高いことが好ましい。かかる観点から、紫外線吸収層の波長480nmの光線透過率は、60%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましく、さらには86%以上であることが好ましい。また、同観点から、紫外線吸収層の波長580nmの光線透過率は、60%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましく、さらには86%以上であることが好ましい。一方、紫外線吸収層の波長480nmの光線透過率の上限値および波長580nmの光線透過率の上限値は特に制約されず、100%であることが好ましい。また、紫外光領域の低い透過率との両立の観点からは、99%以下であることが好ましく、特に98%以下であることが好ましい。
【0096】
紫外線吸収層は、紫外線吸収剤を含有する粘着剤層であってもよいし、紫外線吸収剤を含有するプラスチックフィルムであってもよい。あるいは、それら同士の組み合わせ、または紫外線吸収剤を含有しない他の層との組み合わせであってもよい。
【0097】
紫外線吸収層が紫外線吸収剤を含有する粘着剤層である場合、当該粘着剤層を構成する粘着剤の種類は特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、当該粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を使用することができ、中でも、良好な粘着性および透明性を達成し易いアクリル系粘着剤が好ましい。紫外線吸収剤を含有するプラスチックフィルムとしても、プラスチックの種類は特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。
【0098】
紫外線吸収層の紫外線吸収剤としては、特に限定されず、前述した光拡散制御組成物Cが含有し得る紫外線吸収剤と同様のものを使用することができる。
【0099】
本実施形態に係る積層体は、外光照射環境下にて、光拡散の制御が必要とされる種々の用途に使用することができる。例えば、窓ガラス、キャッシュディスペンサーのディスプレイ、パソコンのモニター、スマートフォンのディスプレイ等に貼着してプライバシーを保護する視野角制御フィルム;反射型液晶ディスプレイ等に用いられる光制御フィルム;看板や標識等の外光利用型表示体などが挙げられる。上記の中でも、視野角制御を目的として窓ガラス等に貼付されるウィンドウフィルム、外光利用型表示体などに好適に使用することができる。
【0100】
本実施形態に係る積層体が窓ガラスに貼付されるウィンドウフィルムとして使用される場合、光拡散制御フィルムの両面側に紫外線吸収層を備えていることも好ましい。これにより、太陽光の紫外線および室内灯の紫外線のいずれをも吸収して、光拡散制御フィルムの黄変を効果的に抑制することができるとともに、所望の部材を紫外線から保護することができる。なお、上記の構成であっても、従来の光拡散制御フィルムは経時使用により液状化する。
【0101】
ここで、本実施形態に係る積層体の色に関する物性について説明する。
(1)XYZ(Yxy)表色系
本実施形態に係る積層体のCIE1931XYZ(Yxy)表色系により規定される明度Yは、40以上であることが好ましく、特に50以上であることが好ましく、さらには60以上であることが好ましい。なお、当該明度Yの上限値は特に制約されず、100であってもよいが、通常、90以下程度である。積層体の明度Yの下限値が上記であることにより、当該積層体の向こう側の対象物の視認性や当該積層体が有する装飾層の視認性が良好なものとなる。なお、この明度Yは、当該積層体に紫外線を1000時間照射(放射照度:75~700W/m)した場合も、上記範囲にあることが好ましい。
【0102】
本実施形態に係る積層体のCIE1931XYZ(Yxy)表色系により規定される色度xは、0.1以上であることが好ましく、特に0.2以上であることが好ましく、さらには0.3以上であることが好ましい。また、当該色度xは、0.8以下であることが好ましく、特に0.6以下であることが好ましく、さらには0.4以下であることが好ましい。一方、本実施形態に係る積層体のCIE1931XYZ(Yxy)表色系により規定される色度yは、0.1以上であることが好ましく、特に0.2以上であることが好ましく、さらには0.3以上であることが好ましい。また、当該色度yは、0.8以下であることが好ましく、特に0.6以下であることが好ましく、さらには0.4以下であることが好ましい。積層体の色度xおよび色度yが上記の範囲にあることにより、当該積層体は着色が少なく無色の度合いに優れたものということができる。なお、この色度xおよび色度yは、当該積層体に紫外線を1000時間照射(放射照度:75~700W/m)した場合も、上記範囲にあることが好ましい。
【0103】
(2)L*a*b*表色系
本実施形態に係る積層体のCIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*は、60以上であることが好ましく、特に70以上であることが好ましく、さらには80以上であることが好ましい。一方、当該明度L*の上限値は特に制約されず、100であってもよいが、通常98以下程度である。積層体の明度L*の下限値が上記であることにより、当該積層体の向こう側の対象物の視認性や当該積層体が有する装飾層の視認性が良好なものとなる。なお、この明度L*は、当該積層体に紫外線を1000時間照射(放射照度:75~700W/m)した場合も、上記範囲にあることが好ましい。
【0104】
本実施形態に係る積層体のCIE1976L*a*b*表色系により規定される色度a*の絶対値は、20以下であることが好ましく、特に10以下であることが好ましく、さらには8以下であることが好ましい。一方、当該色度a*の絶対値の下限値は特に制約されず、0であることが好ましい。一方、本実施形態に係る積層体のCIE1931XYZ(Yxy)表色系により規定される色度b*の絶対値は、40以下であることが好ましく、特に30以下であることが好ましく、さらには25以下であることが好ましい。また、当該色度b*の絶対値の下限値は特に制約されず、0であることが好ましい。積層体の色度a*および色度b*の上限値が上記であることにより、当該積層体は着色が少なく無色透明性に優れたものということができる。なお、この色度a*および色度b*は、当該積層体に紫外線を1000時間照射(放射照度:75~700W/m)した場合も、上記範囲にあることが好ましい。
【0105】
本実施形態に係る積層体においては、1000時間の紫外線照射(放射照度:75~700W/m)の前後における色度b*の差であるΔb*が、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、特に20以下であることが好ましい。これにより、紫外線照射による黄変が良好に抑制されているということができる。
【0106】
(3)黄色度・黄変度
本実施形態に係る積層体のJIS K7373:2006により規定される黄色度YIの絶対値は、60以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、特に40以下であることが好ましい。これにより、当該積層体は黄色度が小さく無色の度合いに優れたものということができる。
【0107】
また、本実施形態に係る積層体においては、紫外線を1000時間照射(放射照度:75~700W/m)する前と当該照射後における黄色度YIの差であるΔYIが、50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、特に30以下であることが好ましい。これにより、紫外線照射による黄変が良好に抑制されているということができる。
【0108】
以下、本実施形態に係る積層体の具体例として、視野角制御フィルムとしてのウィンドウフィルム、および外光利用型表示体(例えば、駅名標)を例に挙げて説明するが、本発明に係る積層体はこれらに限定されるものではない。
【0109】
1.ウィンドウフィルム
本実施形態に係る積層体の一例としてのウィンドウフィルムを図3に示す。図3に示すように、本実施形態におけるウィンドウフィルム2は、図中の上から順に、ハードコート層211付きの透明樹脂フィルム21aと、紫外線吸収剤入り粘着剤層22aと、透明樹脂フィルム21bと、光拡散制御フィルム1と、透明樹脂フィルム21cと、紫外線吸収剤入り粘着剤層22bとを備えて構成される。
【0110】
本実施形態におけるウィンドウフィルム2は、紫外線吸収剤入り粘着剤層22bを介して窓ガラス20等に貼付される。本実施形態では、ウィンドウフィルム2は窓ガラス20の内側に貼付され、したがって、太陽光は窓ガラス20を介してウィンドウフィルム2に入射する。ただし、当該ウィンドウフィルム2は窓ガラス20の外側に貼付されてもよい。
【0111】
光拡散制御フィルム1は、前述した実施形態に係る光拡散制御フィルム1である。本実施形態におけるウィンドウフィルム2では、光拡散制御フィルム1の内部構造がルーバー構造11B又はその変形構造であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0112】
本実施形態におけるウィンドウフィルム2では、紫外線吸収剤入り粘着剤層22aおよび紫外線吸収剤入り粘着剤層22bがそれぞれ紫外線吸収層に該当する。すなわち、本実施形態では、光拡散制御フィルム1の両面側に紫外線吸収層が存在する。
【0113】
紫外線吸収剤入り粘着剤層22a,22bの厚さは、所望の粘着力を発揮し、前述した波長380nmの光線透過率を満たす限り、特に限定されない。通常、当該厚さは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、特に10μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、特に30μm以下であることが好ましい。
【0114】
透明樹脂フィルム21a,21b,21cの材料は、公知の透明樹脂フィルムから適宜選択することができ、それぞれ同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。かかる透明樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ-1-ブテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエーテルサルフォン系樹脂;ポリエチレンサルファイド系樹脂;スチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;セルロースアセテート等のセルロース系樹脂等からなるフィルムもしくはそれらの積層フィルムなどが挙げられ、中でもポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0115】
透明樹脂フィルム21a,21b,21cのいずれか1または2以上は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。この場合、上記紫外線吸収剤入り粘着剤層22a,22bとともに、当該透明樹脂フィルムも本実施形態における紫外線吸収層となる。
【0116】
ハードコート層211は、公知の材料で形成することができ、その厚さも特に限定されず、一般的な厚さとすることができる。
【0117】
本実施形態におけるウィンドウフィルム2は、従来公知の方法によって製造することができ、特に限定されるものではない。
【0118】
本実施形態におけるウィンドウフィルム2を窓ガラスに貼付した場合、所定の角度からウィンドウフィルム2を見ると、ウィンドウフィルム2の向こう側が見えて、別の角度からウィンドウフィルム2を見ると、ウィンドウフィルム2の向こう側が見えない等の視野角を制御することができる。
【0119】
2.外光利用型表示体
本実施形態に係る積層体の一例としての外光利用型表示体(例えば、駅名標)を図4に示す。図4に示すように、本実施形態における外光利用型表示体3は、図中の上から順に、透明樹脂フィルム31aと、紫外線吸収剤入り粘着剤層32aと、装飾層33と、透明樹脂フィルム31bと、紫外線吸収剤入り粘着剤層32bと、透明樹脂フィルム31cと、光拡散制御フィルム1と、透明樹脂フィルム31dと、粘着剤層34aと、反射層35と、透明樹脂フィルム31eと、粘着剤層34bとを備えて構成される。なお、透明樹脂フィルム31cおよび/または透明樹脂フィルム31dは省略されてもよい。
【0120】
本実施形態における外光利用型表示体3は、粘着剤層34bを介して基材(フレーム部材)30等に貼付される。本実施形態では、太陽光は図中の上方から、すなわち、透明樹脂フィルム31a側から外光利用型表示体3に入射する。
【0121】
光拡散制御フィルム1は、前述した実施形態に係る光拡散制御フィルム1である。本実施形態における外光利用型表示体3では、光拡散制御フィルム1の内部構造がカラム構造11A又はその変形構造(例えば、途中で屈曲した柱状物を有するベントカラム構造と、直線状の柱状物を有するカラム構造との2層構造など)であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0122】
本実施形態における外光利用型表示体3では、紫外線吸収剤入り粘着剤層32aおよび紫外線吸収剤入り粘着剤層32bがそれぞれ紫外線吸収層に該当する。したがって、本実施形態では、光拡散制御フィルム1よりも外光入射側に少なくとも2層の紫外線吸収層が存在する。
【0123】
紫外線吸収剤入り粘着剤層32a,32bの厚さは、所望の粘着力を発揮し、前述した波長380nmの光線透過率を満たす限り、特に限定されない。通常、当該厚さは、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには15μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、特に30μm以下であることが好ましい。
【0124】
透明樹脂フィルム31a,31b,31c,31d,31eの材料は、公知の透明樹脂フィルムから適宜選択することができ、それぞれ同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。かかる透明樹脂フィルムとしては、例えば、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリ-1-ブテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリエーテルサルフォン系樹脂;ポリエチレンサルファイド系樹脂;スチレン系樹脂;アクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;セルロースアセテート等のセルロース系樹脂;フッ素系樹脂等からなるフィルムもしくはそれらの積層フィルムなどが挙げられる。
【0125】
上記の中でも、透明樹脂フィルム31aは、耐光性に優れたフッ素系樹脂フィルムであることが好ましい。透明樹脂フィルム31aの外光側の表面は、光沢があってもよいし、マット状になっていてもよい。透明樹脂フィルム31b,31eは、ポリ塩化ビニルフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。透明樹脂フィルム31c,31dは、ポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0126】
透明樹脂フィルム31a,31b,31c,31dのいずれか1または2以上は、紫外線吸収剤を含有していてもよく、特に透明樹脂フィルム31a,31bは、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。この場合、上記紫外線吸収剤入り粘着剤層32a,32bとともに、当該透明樹脂フィルムも本実施形態における紫外線吸収層となる。
【0127】
紫外線吸収剤を含有する透明樹脂フィルム31a,31bの厚さは、紫外線吸収性および可視光透過性の両立の観点から、10μm以上であることが好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには80μm以上であることが好ましい。また、同観点から、当該厚さは、1000μm以下であることが好ましく、特に500μm以下であることがより好ましく、さらには200μm以下であることが好ましい。
【0128】
装飾層33としては、文字や図柄等により表示内容を表すことができるとともに、所望の光拡散効果を阻害しないものであれば特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、装飾層33は、透明樹脂フィルム31bの表面に、文字や図柄等を構成するインキを印刷したものであってもよい。
【0129】
装飾層13の厚さは、特に限定されないものの、例えば、10μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、1000μm以下であることが好ましく、特に500μm以下であることが好ましい。
【0130】
粘着剤層34a,34bを構成する粘着剤の種類は特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。例えば、当該粘着剤としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を使用することができ、中でも、良好な粘着性および透明性を達成し易いアクリル系粘着剤が好ましい。
【0131】
粘着剤層34a,34bの厚さは、十分な粘着性を達成できるものである限り特に限定されず、例えば1μm以上であることが好ましく、特に3μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましい。
【0132】
反射層35は、平滑な面を有する反射層(鏡面反射層)であってもよいし、再帰性反射する反射層であってもよい。鏡面反射層の場合、透明樹脂フィルム31eの表面に対して、例えば、金属を蒸着等することにより金属蒸着層として形成することができる。金属蒸着層としては、アルミニウム蒸着層、銀蒸着層、ステンレス蒸着層、銅蒸着層等が挙げられる。この場合の反射層35の厚さは、金属蒸着層として一般的な厚さとすることができる。
【0133】
再帰性反射する反射層の場合、例えば、反射面に多数のコーナーキューブが配置されたもの(コーナーキューブ型、プリズムレンズ型)、反射面に多数のガラスビーズが配置され、その上に空間を設けながら透明な樹脂フィルムで覆った構造を有するもの(カプセルレンズ型)、多数のガラスビーズが透明樹脂シート内に封入された構造を有するもの(封入レンズ型)、多数のガラスビーズが反射面に露出して配置されるもの(露出レンズ型)等を使用することができる。この場合の反射層35の厚さは、特に制限されず、例えば、0.01mm以上であってよく、特に0.1mm以上であってよい。また、当該厚さは、例えば、1mm以下であってよく、特に0.5mm以下であってよい。
【0134】
本実施形態における外光利用型表示体3は、従来公知の方法によって製造することができ、特に限定されるものではない。
【0135】
本実施形態における外光利用型表示体3を、例えば建植型駅名標(ホーム上、人の視線と同等の高さに設置される駅名標)として使用した場合、周囲に照明が設けられていない駅においても、夜間、列車からの光、特にドアから漏れる光を利用して、当該列車の乗客がその建植型駅名標を視認することができる。
【0136】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0137】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0138】
〔製造例1〕(ルーバー構造を有する光拡散制御フィルムの製造(1))
1.光拡散制御組成物の調製
ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアナートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、上記ポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部と、ヒンダードアミン系化合物(BASF社製,製品名「チヌビン292」)0.2質量部(0.18質量%)と、紫外線吸収剤としてのベンゾフェノン系化合物(BASF社製,製品名「チヌビン384-2」)0.08質量部(0.07質量%)とを配合した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御組成物を得た。
【0139】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0140】
2.光拡散制御フィルムの形成
得られた光拡散制御組成物を、工程シートとしての、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm;第1のPETフィルム)の片面に塗布し、塗膜を形成した。これにより、当該塗膜と工程シートとからなる積層体を得た。
【0141】
続いて、得られた積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における塗膜側の面が上側となるとともに、工程シートの長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、線状の高圧水銀ランプに集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「ECS-4011GX」)を設置した。当該装置は、帯状(ほぼ線状)に集光された紫外線を対象に照射することができる。なお、上記装置の設置の際には、上記高圧水銀ランプの長手方向と、コンベアの流れ方向とが直交するように上記紫外線照射装置を設置した。
【0142】
さらに、高圧水銀ランプの長手方向から眺めた場合において、積層体表面に対する法線を基準として、積層体に対して高圧水銀ランプから照射される紫外線の照射角度が10°となるように設定した。なお、ここにおける照射角度とは、積層体における高圧水銀ランプの直下の位置を基準として、コンベアの流れの下流側に向けて紫外線を照射した場合には、積層体表面に対する法線と当該紫外線とのなす鋭角をプラスの表記にて記載したものとし、コンベアの流れの上流側に向けて紫外線を照射した場合には、積層体表面に対する法線と当該紫外線とのなす鋭角をマイナスの表記にて記載したものとする。
【0143】
その後、コンベアを作動させて、上記積層体を1.0m/分の速度で移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度2.5mW/cm、積算光量40.0mJ/cmの条件で紫外線を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化させた(当該硬化を、便宜的に「一次硬化」という場合がある。)。
【0144】
続いて、積層体における塗膜側の面に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第2のPETフィルム)を積層した後、当該シートを介して、塗膜に対し、ピーク照度190mW/cm、積算光量180mJ/cmの条件で紫外線(散乱光)を照射することで、積層体中の塗膜を硬化させた(当該硬化を、便宜的に「二次硬化」という場合がある。)。なお、上述したピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス社製,製品名「アイ紫外線積算照度計UVPF-A1」)を上記塗膜の位置に設置して測定したものである。
【0145】
以上の一次硬化および二次硬化により、上述した塗膜が硬化してなる、厚さ200μmの光拡散制御フィルムが形成された。これにより、厚さ38μmの第2のPETフィルムと、光拡散制御フィルムと、厚さ50μmの第1のPETフィルム(工程シート)とがこの順に積層されてなる積層体を得た。なお、光拡散制御フィルムの厚さは、定圧厚さ測定器(宝製作所社製,製品名「テクロック PG-02J」)を用いて測定したものである。
【0146】
形成された光拡散制御フィルムの断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散制御フィルムの内部に、複数の板状領域をフィルム面に沿った一方向に交互に配置してなるルーバー構造が形成されていることが確認された。
【0147】
〔製造例2〕(ルーバー構造を有する光拡散制御フィルムの製造(2))
ヒンダードアミン系化合物の配合量を0.5質量部(0.46質量%)に変更する以外、製造例1と同様にして光拡散制御組成物を調製し、当該光拡散制御組成物を使用して、製造例1と同様にして光拡散制御フィルムの積層体を製造した。
【0148】
〔製造例3〕(ルーバー構造を有する光拡散制御フィルムの製造(3))
ヒンダードアミン系化合物の配合量を1質量部(0.92質量%)に変更する以外、製造例1と同様にして光拡散制御組成物を調製し、当該光拡散制御組成物を使用して、製造例1と同様にして光拡散制御フィルムの積層体を製造した。
【0149】
〔製造例4〕(ルーバー構造を有する光拡散制御フィルムの製造(4))
ヒンダードアミン系化合物の配合量を2質量部(1.82質量%)に変更する以外、製造例1と同様にして光拡散制御組成物を調製し、当該光拡散制御組成物を使用して、製造例1と同様にして光拡散制御フィルムの積層体を製造した。
【0150】
〔製造例5〕(ルーバー構造を有する光拡散制御フィルムの製造(5))
ヒンダードアミン系化合物およびベンゾフェノン系化合物を配合しない以外、製造例1と同様にして光拡散制御組成物を調製し、当該光拡散制御組成物を使用して、製造例1と同様にして光拡散制御フィルムの積層体を製造した。
【0151】
〔製造例6〕(ルーバー構造を有する光拡散制御フィルムの製造(6))
ヒンダードアミン系化合物を配合しない以外、製造例1と同様にして光拡散制御組成物を調製し、当該光拡散制御組成物を使用して、製造例1と同様にして光拡散制御フィルムの積層体を製造した。
【0152】
〔実施例1〕
製造例1で製造した光拡散制御フィルムの積層体(第2のPETフィルム/光拡散制御フィルム/第1のPETフィルム)における第1のPETフィルム側に、アクリル系粘着剤層(紫外線吸収剤なし,厚さ25μm)を積層した。
【0153】
次に、第1のポリ塩化ビニル樹脂(PVC)フィルム(紫外線吸収剤入り,厚さ80μm)の一方の面に、紫外線吸収剤入りのアクリル系粘着剤層(厚さ20μm)を積層した。
【0154】
また、第2のPVCフィルム(紫外線吸収剤なし,厚さ50μm)の一方の面に、反射層として、アルミニウム層(ナノオーダー厚)を蒸着した。そして、当該PVCフィルムにおける反射層とは反対側の面に、アクリル系粘着剤層(紫外線吸収剤なし,厚さ25μm)を積層した。
【0155】
さらに、フッ素系樹脂フィルム(紫外線吸収剤入り,厚さ100μm)の一方の面に、紫外線吸収剤入りのアクリル系粘着剤層(厚さ20μm)を積層した。
【0156】
上記の各構成体を積層し、上から順に、フッ素系樹脂フィルム、紫外線吸収剤入りのアクリル系粘着剤層、第1のPVCフィルム、紫外線吸収剤入りのアクリル系粘着剤層、第2のPETフィルム、光拡散制御フィルム、第1のPETフィルム、アクリル系粘着剤層、反射層、第2のPVCフィルム、およびアクリル系粘着剤層からなる、疑似外光利用型表示体としての積層体を得た(図4参照、ただし装飾層は無し)。
【0157】
〔実施例2〕
光拡散制御フィルムとして、製造例2で得られたものを使用する以外、実施例1と同様にして疑似外光利用型表示体としての積層体を製造した。
【0158】
〔実施例3〕
光拡散制御フィルムとして、製造例3で得られたものを使用する以外、実施例1と同様にして疑似外光利用型表示体としての積層体を製造した。
【0159】
〔実施例4〕
光拡散制御フィルムとして、製造例4で得られたものを使用する以外、実施例1と同様にして疑似外光利用型表示体としての積層体を製造した。
【0160】
〔比較例1〕
光拡散制御フィルムとして、製造例5で得られたものを使用する以外、実施例1と同様にして疑似外光利用型表示体としての積層体を製造した。
【0161】
〔比較例2〕
光拡散制御フィルムとして、製造例6で得られたものを使用する以外、実施例1と同様にして疑似外光利用型表示体としての積層体を製造した。
【0162】
〔比較例3〕
製造例6で得られた光拡散制御フィルムの積層体(第2のPETフィルム/光拡散制御フィルム/第1のPETフィルム)を、比較例3とした。
【0163】
〔試験例1〕(光線透過率の測定)
実施例および比較例で使用した紫外線(UV)吸収剤入り粘着剤層をガラス板に貼付し、これをサンプルとした。当該サンプルについて、紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光光度計(島津製作所社製,製品名「UV-3600」)を使用して光線透過率(%)を測定した。その結果に基づく、波長380nm、波長480nmおよび波長580nmの光線透過率を表1に示す。
【0164】
実施例および比較例で使用した第1のPVCフィルムについて、上記と同様にして光線透過率(%)を測定した。その結果に基づく、波長380nm、波長480nmおよび波長580nmの光線透過率を表1に示す。
【0165】
実施例および比較例で使用したフッ素系樹脂フィルムについて、上記と同様にして光線透過率(%)を測定した。その結果に基づく、波長380nm、波長480nmおよび波長580nmの光線透過率を表1に示す。
【0166】
実施例1~4および比較例1~2で作製した、フッ素系樹脂フィルム、紫外線吸収剤入り粘着剤層、第1のPVCフィルムおよび紫外線吸収剤入り粘着剤層の積層体(上から4層分の積層体)を、当該粘着剤層を介してガラス板に貼付し、これをサンプルとした。当該サンプルについて、上記と同様にして光線透過率(%)を測定した。その結果に基づく、波長380nm、波長480nmおよび波長580nmの光線透過率を表1に示す。
【0167】
〔試験例2〕(変角ヘイズ角度範囲の測定)
実施例および比較例にて使用した光拡散制御フィルムについて、変角ヘイズメーター(東洋精機製作所社製,製品名「ヘイズガードプラス、変角ヘイズメーター」)を用いて、ヘイズ値(%)を測定した。具体的には、光拡散制御フィルムの積層体(第2のPETフィルム/光拡散制御フィルム/第1のPETフィルム)における第2のPETフィルム側の面に対し、その法線に対する入射角度を、光拡散制御フィルムの長手方向に沿って-70°~70°の範囲(法線から±70°の範囲)で変えながら光線を照射し、それぞれの入射角度ごとにヘイズ値(%)を測定した。測定条件の詳細は、次の通りとした。
光源:C光源
測定径:φ18mm
積分球開口径:φ25.4mm
【0168】
続いて、上記で測定された結果について、入射角度の測定範囲(-70°~70°)のうち、ヘイズ値が60%以上となった入射角度の範囲を特定し、さらに当該範囲の端点となる2つの角度の差を算出し、これを60%以上のヘイズ値をもたらす角度範囲(変角ヘイズ角度範囲)とした。その結果を表2に示す。
【0169】
〔試験例3〕(Yxy及びL*a*b*の測定)
実施例および比較例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体について、紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光光度計(島津製作所社製,製品名「UV-3600」)を使用し、CIE1931XYZ(Yxy)表色系により規定される明度Y、色度xおよび色度y、ならびにCIE1976L*a*b*表色系により規定される明度L*、色度a*および色度b*を測定した。結果を表2に示す。
【0170】
また、実施例および比較例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体に対し、JIS A1439:2016に準拠して、63±3℃(ブラックパネル温度)、50%RHの雰囲気下、紫外線フェードメーター(Fade)(スガ試験機社製,製品名「U48」)を使用して紫外線を1000時間照射した(放射照度:500±100W/m2)。その後の積層体について、上記と同様にして明度Y、色度xおよび色度y、ならびに明度L*、色度a*および色度b*を測定した。また、当該紫外線照射の前後における色度b*の差であるΔb*を算出した。結果を表3に示す。
【0171】
一方、実施例および比較例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体に対し、JIS A1439:2016に準拠して、63±3℃(ブラックパネル温度)、50%RHの雰囲気下、サンシャインウェザーメーター(SWOM)(スガ試験機社製,製品名「S80」)を使用して紫外線を1000時間照射した(放射照度:78.5W/m)。その後の積層体について、上記と同様にして明度Y、色度xおよび色度y、ならびに明度L*、色度a*および色度b*を測定した。また、当該紫外線照射の前後における色度b*の差であるΔb*を算出した。結果を表4に示す。
【0172】
〔試験例4〕(YIの測定)
実施例および比較例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体について、分光色差計(日本電色工業社製,製品名「SE6000」)を使用し、JIS K7373:2006に準拠して、黄色度YIを測定した。結果を表2に示す。
【0173】
また、実施例および比較例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体に対し、試験例3と同様にして紫外線フェードメーター(Fade)を使用して紫外線を1000時間照射した。その後の積層体について、上記と同様にして黄色度YIを測定した。また、当該紫外線照射の前後における黄色度YIの差である黄変度ΔYIを算出した。結果を表3に示す。
【0174】
一方、実施例および比較例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体に対し、試験例3と同様にしてサンシャインウェザーメーター(SWOM)を使用して紫外線を1000時間照射した。その後の積層体について、上記と同様にして黄色度YIを測定した。また、当該紫外線照射の前後における黄色度YIの差である黄変度ΔYIを算出した。結果を表4に示す。
【0175】
〔試験例5〕(液状化抑制の評価)
実施例および比較例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体に対し、試験例3と同様にして紫外線フェードメーター(Fade)を使用して紫外線を1000時間照射した。次いで、当該積層体を分解し、光拡散制御フィルムの液状化を調べた。そして、以下の評価基準に基づいて、液状化抑制の評価を行った。結果を表3に示す。
【0176】
一方、実施例および比較例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体に対し、試験例3と同様にしてサンシャインウェザーメーター(SWOM)を使用して紫外線を1000時間照射した。次いで、当該積層体を分解し、光拡散制御フィルムの液状化を調べた。そして、以下の評価基準に基づいて、液状化抑制の評価を行った。結果を表4に示す。
【0177】
<液状化抑制の評価基準>
◎…液状化が全く発生していなかった。
〇…光拡散制御フィルムをPETフィルムとの間で剥がすと、光拡散制御フィルム表面に若干のベタツキが見られた。
×…全体的に液状化していた。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【0180】
【表3】
【0181】
【表4】
【0182】
表3及び4から分かるように、実施例で得られた疑似外光利用型表示体としての積層体は、長時間の紫外線照射による光拡散制御フィルムの液状化および黄変が十分に抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明に係る光拡散制御フィルムおよび積層体は、例えば、視野角制御を目的としたウィンドウフィルムや、所定の角度からの視認性を向上させた外光利用型表示体などに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0184】
1…光拡散制御フィルム
11A…カラム構造
111…屈折率が相対的に高い柱状物
112…屈折率が相対的に低い領域
11B…ルーバー構造
113…屈折率が相対的に高い板状領域
114…屈折率が相対的に低い領域
2…ウィンドウフィルム
211…ハードコート層
21a,21b,21c…透明樹脂フィルム
22a,22b…紫外線吸収剤入り粘着剤層
20…窓ガラス2
3…外光利用型表示体
31a,31b,31c,31d,31e…透明樹脂フィルム
32a,32b…紫外線吸収剤入り粘着剤層
33…装飾層
34a,34b…粘着剤層
35…反射層
30…基材(フレーム部材)
図1
図2
図3
図4