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  • 特許-車両制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/03 20060101AFI20250206BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20250206BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20250206BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20250206BHJP
   B60W 50/023 20120101ALI20250206BHJP
【FI】
B60R16/03 A
H02J7/00 303C
H02J7/02 J
H02M3/00 C
B60W50/023
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020094007
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187284
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】松野 智久
(72)【発明者】
【氏名】矢島 聡
(72)【発明者】
【氏名】寺西 憲
(72)【発明者】
【氏名】石附 純
(72)【発明者】
【氏名】武田 文紀
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-320807(JP,A)
【文献】特開2020-036464(JP,A)
【文献】特開2016-213966(JP,A)
【文献】特開2011-010508(JP,A)
【文献】国際公開第2018/154860(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0029474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/03
H02J 7/00
H02J 7/02
H02M 3/00
B60W 50/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両制御装置であって、
強電バッテリの電力を降圧するDCDCコンバータと、
前記DCDCコンバータに接続されたスイッチングデバイスと、
前記DCDCコンバータと前記スイッチングデバイスとの間に接続され、前記DCDCコンバータにより降圧された電力が供給される第1補機用バッテリ及び第1コントローラと、
前記スイッチングデバイスを介して前記DCDCコンバータに接続される第2補機用バッテリ及び第2コントローラと、を備え、
前記第1コントローラは、前記車両を起動する機能を有し、
前記第1コントローラは前記車両を自動で停止させる機能をさらに有し、
前記第2コントローラは前記車両を少なくとも自動で停止させる機能を有する一方で、前記第2コントローラが実現する機能は前記第1コントローラが実現する機能より少ない
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記第1補機用バッテリは鉛蓄電池である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第2補機用バッテリはリチウムイオン電池である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第1コントローラは少なくとも前記車両を自動で加速、減速させる機能または前記車両を自動で操舵する機能のうちいずれか一方の機能を有する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記スイッチングデバイスは、前記第1補機用バッテリ及び前記第2補機用バッテリの電圧が等しいときに自身の開閉状態をオフからオンに切り替える
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メイン電源に異常が発生した場合に高度運転支援を実現するシステムが知られている(特許文献1)。特許文献1に記載された発明は、メイン電源に異常が発生した場合に高度運転支援システムを実現する電気負荷をサブ電源からの電力供給で作動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-218013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明はサブ電源(補機用バッテリ)に異常が発生した場合について考慮されていない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、補機用バッテリに異常が発生した場合であってもシステムの機能を実現可能な車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両制御装置は、DCDCコンバータと、スイッチングデバイスと、DCDCコンバータとスイッチングデバイスとの間に接続される第1補機用バッテリ及び第1コントローラと、スイッチングデバイスを介してDCDCコンバータに接続される第2補機用バッテリ及び第2コントローラと、を備える。第1コントローラは車両を起動する機能を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、補機用バッテリに異常が発生した場合であってもシステムの機能を実現しうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置1のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
図1に示すように車両制御装置1は、駆動用バッテリ10と、DCDCコンバータ11と、補機用バッテリ12(第1補機用バッテリ)と、第1コントローラ13と、スイッチングデバイス14と、リレー15と、補機用バッテリ16(第2補機用バッテリ)と、第2コントローラ17とを備える。
【0011】
車両制御装置1は、自動運転機能を備える車両に搭載される。本実施形態における自動運転は、ユーザの操作によらず、加速、操舵、減速に係る操作のうち、全ての操作が自動で行われるものとして説明するがこれに限定されない。自動運転は加速、操舵、減速に係る操作のうち、少なくとも2つの操作が自動で行われ、残る操作はユーザによって行われるものであってもよい。あるいは自動運転は加速、操舵、減速に係る操作のうち、少なくとも1つの操作が自動で行われ、残る操作はユーザによって行われるものであってもよい。
【0012】
駆動用バッテリ10は、主にモータ(不図示)の電源として用いられる駆動用のバッテリである。駆動用バッテリ10は複数の電池モジュールから構成される大容量の二次電池である。駆動用バッテリ10は強電バッテリと呼ばれる場合もある。
【0013】
駆動用バッテリ10とスイッチングデバイス14との間にはDCDCコンバータ11が接続される。DCDCコンバータ11は、駆動用バッテリ10の電力を降圧して補機用バッテリ12及び補機用バッテリ16に電力を供給する。図1の矢印は電力が供給される方向を示す。
【0014】
DCDCコンバータ11とスイッチングデバイス14との間には補機用バッテリ12及び第1コントローラ13が接続される。補機用バッテリ12は、車両に搭載された電装品の電源として用いられる。補機用バッテリ12は12V~15Vの電圧で作動する鉛蓄電池(LAB:Lead Acid Battery)である。補機用バッテリ12が電力を供給する対象となる電装品は、一例としてナビゲーション装置、オーディオ装置などである。また補機用バッテリ12は電装品だけでなく第1コントローラ13にも電力を供給する。
【0015】
第1コントローラ13は、いわゆるECU(Electronic Control Unit)であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを有する電子制御ユニットである。第1コントローラ13に組み込まれたソフトウェアを実行することによって様々な機能が実現する。
【0016】
機能の一つとして、車両を起動する機能が挙げられる。具体的には第1コントローラ13は、ユーザが乗車する前にユーザが所持するインテリジェンスキーから発信された信号を受信したとき、車両を起動させる機能を有する。ここでいう起動とは一例として電装品を利用可能な状態にすることを意味する。ユーザが乗車する前に車両を起動させることにより、ユーザは乗車後すぐにナビゲーション装置、オーディオ装置などを利用することができる。なお、インテリジェンスキーから発信された信号を用いて車両を起動させることをAUTOACCと呼ぶ場合がある。
【0017】
起動の定義は上述のものに限定されない。車両を起動するとは車両を走行可能状態にすると定義されてもよい。ユーザがブレーキペダルを踏みながら電源スイッチを押したとき、所定の信号が第1コントローラ13に送信される。この信号を受信した第1コントローラ13は車両を走行可能状態にする。なお第1コントローラ13は起動状態を維持する機能を有する。
【0018】
また他の機能として、電装品を制御する機能が挙げられる。具体的には第1コントローラ13は、ユーザの入力に応じてナビゲーション装置、オーディオ装置などを制御する機能を有する。
【0019】
また他の機能として、自動運転機能が挙げられる。具体的には第1コントローラ13は、予め設定された経路に沿って自動走行するように、カメラなどによって取得された情報を用いてアクセルアクチュエータ、ステアリングアクチュエータ、ブレーキアクチュエータなどの各種アクチュエータを制御する機能を有する。これにより自動運転が実現する。なお第1コントローラ13は少なくとも車両を自動で加速、減速させる機能または車両を自動で操舵する機能のうちいずれか一方の機能を有してもよい。
【0020】
また他の機能として、緊急の停止機能が挙げられる。具体的には第1コントローラ13は何らかの異常を検出した場合、予め設定された経路とは異なる経路を設定し、路肩などに自動で車両を停車させる機能を有する。
【0021】
図1に示すように補機用バッテリ16及び第2コントローラ17はスイッチングデバイス14を介してDCDCコンバータ11に接続される。補機用バッテリ16は補機用バッテリ12と同様に電装品の電源として用いられる。また12V~15Vの電圧で作動する点も補機用バッテリ12と同じであるが、補機用バッテリ16は鉛蓄電池ではなく、リチウムイオン電池(LiB:Lithium-ion Battery)である。補機用バッテリ16は電装品だけでなく第2コントローラ17にも電力を供給する。補機用バッテリ12及び補機用バッテリ16は弱電バッテリと呼ばれる場合もある。
【0022】
第2コントローラ17は第1コントローラ13と同様に電子制御ユニットである。本実施形態において、第2コントローラ17は第1コントローラ13と比較して実現する機能は少ない。換言すれば、第2コントローラ17に組み込まれたソフトウェアの数は、第1コントローラ13に組み込まれたソフトウェアより少ない。第2コントローラ17及び第1コントローラ13に共通する機能として、どちらのコントローラも緊急の停止機能を有する。ただし第2コントローラ17は第1コントローラ13とは異なり、車両を起動する機能は有さない。
【0023】
補機用バッテリ12及び第1コントローラ13は、補機用バッテリ16及び第2コントローラ17から見て上流側に配置される。
【0024】
スイッチングデバイス14と補機用バッテリ16との間にはリレー15が接続される。リレー15のオンオフは任意のコントローラによって制御される。つまり、リレー15のオンオフ制御を行うECUは第1コントローラ13でもよく、第2コントローラ17でもよく、その他のECUであってもよい。
【0025】
スイッチングデバイス14には第1コントローラ13及び第2コントローラ17とは異なるECUが組み込まれており、このECUはDCDCコンバータ11から見て下流側の回路の電圧(以下単に回路電圧とよぶ)を監視する。下流側の回路とは、DCDCコンバータ11から電力が供給される方向に配置された回路をいう。下流側の回路電圧に異常が検出された場合、スイッチングデバイス14は自身の開閉状態をオンからオフに切り替えて回路を遮断する。この遮断により補機用バッテリ16及び第2コントローラ17は下流側の回路から切り離される。なお、下流側の回路電圧に異常が検出された場合とは、例えば下流側の回路電圧が閾値を超えた場合をいう。この閾値はフェイルセーフの観点に基づいて設定されればよい。
【0026】
次にスイッチングデバイス14をオフからオンにするための条件を説明する。補機用バッテリ12及び補機用バッテリ16の電圧が等しいときにスイッチングデバイス14はオンとなる。場面としては例えば、車両が起動した際に補機用バッテリ12及び補機用バッテリ16の電圧が徐々に上昇する。そして補機用バッテリ12及び補機用バッテリ16の電圧が等しくなったとき(例えば両者の電圧が定格電圧になったとき)、スイッチングデバイス14はオンとなる。ここで、「補機用バッテリ12及び補機用バッテリ16の電圧が等しい」とは、完全な同一に限定されない。「補機用バッテリ12及び補機用バッテリ16の電圧が等しい」とは、実質的に同一(ほぼ同一と見なせる)ということを意味する。
【0027】
(作用効果)
補機用バッテリ12(鉛蓄電池)は、自身に異常が発生しているか否かの自己判断を行うことが難しい。このため本実施形態では補機用バッテリ12を補機用バッテリ16よりも上流側に、つまり、DCDCコンバータ11とスイッチングデバイス14との間に配置した。このように配置することにより、補機用バッテリ12に異常が発生したとしても第1コントローラ13にはDCDCコンバータ11から電力が供給される。よって補機用バッテリ12に異常が発生したとしても第1コントローラ13が有する機能の停止は回避される。例えば一例として車両が起動しなくなることが防止される。このように本実施形態によれば補機用バッテリ12に異常が発生したとしてもシステムの機能停止は回避される。
【0028】
また本実施形態では補機用バッテリを2つ構成することにより冗長な構成とした。さらに2つの補機用バッテリには種類の異なる電池(鉛蓄電池、リチウムイオン電池)を採用した。これにより2つの補機用バッテリに同時に異常が発生するといった事態を回避できる可能性が高まる。
【0029】
また本実施形態では緊急の停止機能を有するコントローラを2つ構成することにより冗長な構成とした。これによりどちらか一方のコントローラに異常が発生した場合であってももう一方のコントローラで車両を自動で停止させることが可能となるため、自動運転における信頼性が担保される。
【0030】
また第1コントローラ13は車両を起動する機能の他に緊急の停止機能(車両を自動で停止させる機能)を有する。この緊急の停止機能については第2コントローラ17も有する。第2コントローラ17が実現する機能は第1コントローラ13が実現する機能より少なくなるように設計した。これにより第2コントローラ17が消費する電力は少なくなり、補機用バッテリ16は長持ちする可能性が高くなる。これは次のようなケースにおいて有用となる。自動運転中に第1コントローラ13に何らかの異常が発生し下流側の回路電圧に異常が検出されたと想定する。この場合スイッチングデバイス14がオンからオフに切り替わり、補機用バッテリ16及び第2コントローラ17は下流側の回路から切り離される。ここで上述したように第2コントローラ17は緊急の停止機能を有しており、さらに第2コントローラ17が消費する電力は少ない。よって自動運転中に補機用バッテリ16及び第2コントローラ17が下流側の回路から切り離されたとしても補機用バッテリ16のみで第2コントローラ17が消費する電力をまかなうことができる可能性が高まり、車両を自動で停止させることができる可能性が高まる。
【0031】
またスイッチングデバイス14は補機用バッテリ12及び補機用バッテリ16の電圧が等しいときに自身の開閉状態をオフからオンに切り替える。これによりオフからオンに切り替えたときの突入電流の発生を防止したり、突入電流の大きさを抑制したりできる。
【0032】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0033】
1 車両制御装置
10 駆動用バッテリ
11 DCDCコンバータ
12、16 補機用バッテリ
13 第1コントローラ
14 スイッチングデバイス
15 リレー
17 第2コントローラ
図1