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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/16 20060101AFI20250206BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20250206BHJP
   F16C 33/32 20060101ALI20250206BHJP
   F16C 33/34 20060101ALI20250206BHJP
   F16C 33/62 20060101ALI20250206BHJP
   B60K 17/12 20060101ALI20250206BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20250206BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20250206BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20250206BHJP
   H02K 5/173 20060101ALI20250206BHJP
   H02K 11/02 20160101ALI20250206BHJP
【FI】
H02K5/16
F16C19/06
F16C33/32
F16C33/34
F16C33/62
B60K17/12
F16H1/06
B60K7/00 ZHV
B60L3/00 J
H02K5/173 A
H02K11/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020198769
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086641
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2023-11-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 研介
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰吾
(72)【発明者】
【氏名】秋山 清和
(72)【発明者】
【氏名】山田 崇
(72)【発明者】
【氏名】福塚 隆司
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147512(JP,A)
【文献】特開2000-244180(JP,A)
【文献】特開2014-147293(JP,A)
【文献】特開2007-016846(JP,A)
【文献】特開2014-019336(JP,A)
【文献】特表2019-531679(JP,A)
【文献】実開昭58-183070(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K1/00-6/12
7/00-8/00
16/00
17/10-17/26
B60L1/00-3/12
7/00-13/00
15/00-58/40
F16C19/00-19/56
33/30-33/66
F16H1/00-1/26
H02K5/00-5/26
11/00-11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)の駆動輪(3)にインバータ(4)で制御される回転機(10)の駆動力を動力伝達経路(A)により伝達する車両用動力伝達装置であって、
上記回転機の回転機軸(S1)を含む複数の回転軸(S1,S2,S3,S4)と、
上記複数の回転軸の間でそれぞれ動力伝達がなされる複数の動力伝達部(16,24,25)と、
接地機構(14,14A,14B,14C,14D,14E,14F,14G,14H,14I)と、
を備え、
上記回転機軸は、上記動力伝達経路上に位置する出力側の軸端部(S1a)が上記接地機構を介して上記車両の車体(2)に接地されている、車両用動力伝達装置(101,102,103,104,105,109,115,116,117,118,119,120,121,126,127)。
【請求項2】
上記複数の回転軸には、上記駆動輪を駆動する駆動軸(S4)が含まれており、
上記複数の動力伝達部は、上記回転機の駆動力を複数のギアを介して上記駆動軸に機械的に伝達する、請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
上記複数のギアには遊星ギア(G5)が含まれている、請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項4】
上記回転機は、上記回転機軸が上記駆動輪に一体的に繋がるように構成されたインホイールモータである、請求項1~3のいずれか一項に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項5】
上記複数の回転軸には、上記駆動輪を駆動する駆動軸(S4)が含まれており、
上記回転機軸の両方の軸端部のそれぞれに上記駆動軸が連結されている、請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項6】
上記接地機構は、導電性を有するブラシ(14a)と、上記ブラシを上記回転機軸の上記軸端部の周面に押し付けるように加圧する弾性体(14b)と、を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項7】
上記接地機構は、上記弾性体を第1弾性体(14b)としたとき、上記ブラシとグランド(10b)との間に介装された導電性を有する第2弾性体(14g)を有し、上記第2弾性体は、上記ブラシと上記グランドとを電気的に接続し且つ上記ブラシと上記グランドを互いに離間する方向に弾性付勢する、請求項6に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項8】
上記第1弾性体である第1バネと上記第2弾性体である第2バネとの少なくとも一方は、バネ伸縮方向の断面形状が非円形となるように構成されている、請求項7に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項9】
上記接地機構は、上記ブラシがグランド(10b)に直に接触しており、上記弾性体を第1弾性体(14b)としたとき、上記ブラシと上記グランドの少なくとも一方を上記ブラシと上記グランドとの間の接触圧が強まる方向に弾性付勢する第2弾性体(14g)を有する、請求項6に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項10】
上記接地機構は、導電性を有するブラシ(14a)と、上記ブラシと上記回転機軸の上記軸端部との間に介装された導電性を有する弾性体(14b)と、を有し、上記弾性体とグランド(10b)が上記ブラシを介して電気的に接続されており、
上記ブラシは、上記グランドあるいは上記弾性体に対して上記回転機軸の中心軸線(M)上で接する接点を有し、上記弾性体によって上記接点における接触圧が強まる方向に弾性付勢される、請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項11】
車両(1)の駆動輪(3)にインバータ(4)で制御される回転機(10)の駆動力を動力伝達経路(A)により伝達する車両用動力伝達装置であって、
複数の回転軸(S1,S2,S3,S4)と、
上記複数の回転軸を回転可能に支持する複数のベアリング(15,21,22,23)と、
上記複数の回転軸の間でそれぞれ動力伝達がなされる複数の動力伝達部(16,24,25)と、
上記複数の回転軸の少なくとも1つである対象回転軸を上記車両の車体(2)に接地する接地機構(14)と、
を備え、
上記動力伝達経路を構成する減速機(20)が設けられており、上記減速機の減速機軸(S2,S3)が上記対象回転軸とされ、
上記複数のベアリングには、外輪(15a)と、内輪(15b)と、上記外輪と上記内輪との間に転動可能に保持される複数の転動体(15c)と、を有する絶縁ベアリングが含まれており、上記絶縁ベアリングは、上記外輪と上記内輪と上記複数の転動体とのうちの少なくとも1つが電気絶縁材料からなる、車両用動力伝達装置(110,111,112,113,114,122,123,124,125)。
【請求項12】
上記対象回転軸は、上記動力伝達経路上に位置しない部位であって、両方の軸端部のうち上記動力伝達経路から当該軸端部に設けられている上記ベアリングまでの距離が短い方の軸端部が上記接地機構を介して上記車体に接地されている、請求項11に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項13】
上記接地機構は、上記対象回転軸に電気的に接続されたアース線(14e)によって構成されている、請求項11または12に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項14】
上記複数のベアリングがいずれも上記絶縁ベアリングである、請求項11~13のいずれか一項に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項15】
上記回転機のロータ(11)と一体回転する第1導体(17)と、
上記回転機のステータ(12)に直接的或いは間接的に固定され上記第1導体に対して回転機軸(S1)の軸線方向に対向配置される第2導体(18)と、
上記第1導体の対向面(17a)と上記第2導体の対向面(18a)との間に形成される静電容量形成部(19)と、
を備える、請求項11~14のいずれか一項に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項16】
車両(1)の駆動輪(3)にインバータ(4)で制御される回転機(10)の駆動力を動力伝達経路(A)により伝達する車両用動力伝達装置であって、
上記回転機の回転機軸(S1)を含む複数の回転軸(S1,S2,S3,S4)と、
上記複数の回転軸の間でそれぞれ動力伝達がなされる複数の動力伝達部(16,24,25)と、
接地機構(14,14C,14D,14E,14F,14H,14I)と、
を備え、
上記複数の回転軸の少なくとも1つである対象回転軸は、上記動力伝達経路に繋がる部位のうち上記回転機軸の出力側から上記動力伝達経路の下流側までの領域内に位置する接地部が上記接地機構を介して上記車両の車体(2)に接地されており、
上記接地機構は、導電性を有するブラシ(14a)と、上記ブラシを上記対象回転軸の周面に押し付けるように加圧する第1弾性体(14b)と、上記ブラシとグランド(10b)との間に介装された導電性を有する第2弾性体(14g)と、を有し、上記第2弾性体は、上記ブラシと上記グランドとを電気的に接続し且つ上記ブラシと上記グランドを互いに離間する方向に弾性付勢する、車両用動力伝達装置(101,102,103,104,105,106,107,108,117,118,119,120,126,127)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動車両においては、モータを動力源とする動力伝達経路をインバータに起因するインバータノイズが伝搬することが知られている。このインバータノイズは、例えば、パワーケーブルとモータコイルを経てモータロータに伝わり、更に、モータロータからドライブシャフトを経てタイヤにより絶縁されたサスペンションに伝播する。このインバータノイズが伝播する要因は動力伝達経路上の回転軸で軸電圧の高周波成分が生じることにある。この軸電圧の高周波成分が動力伝達経路をドライブシャフトへと伝播すると、ラジオ受信に影響を与える電磁ノイズ(ラジオノイズ)が生じる要因になる。
【0003】
下記の特許文献1には、電気自動車の電磁ノイズ抑制装置が開示されている。この電磁ノイズ抑制装置は、電動機の回転機軸で生じる軸電圧により発生する電磁ノイズを低減するために、回転機軸をブラシ或いはオイルシール等の手段で接地する接地構造を備えている。この接地構造は、回転機軸の減速機側を出力側としたとき、出力側とは反対側である非出力側の接地位置で接地を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-244180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の接地構造を採用する場合、軸電圧の高周波成分を抑制するのが難しく、これにより電磁ノイズの高周波成分を低減できないという問題が生じ得る。この要因として、回転軸が持つインダクタンスにより軸電圧の高周波成分が漏れること、接地構造を構成するバネや導線のインダクタンスにより高周波帯のインピーダンスが増大することなどが挙げられる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、電磁ノイズの高周波成分を低減することができる車両用動力伝達装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
車両(1)の駆動輪(3)にインバータ(4)で制御される回転機(10)の駆動力を動力伝達経路(A)により伝達する車両用動力伝達装置であって、
上記回転機の回転機軸(S1)を含む複数の回転軸(S1,S2,S3,S4)と、
上記複数の回転軸の間でそれぞれ動力伝達がなされる複数の動力伝達部(16,24,25)と、
接地機構(14,14A,14B,14C,14D,14E,14F,14G,14H,14I)と、
を備え、
上記回転機軸は、上記動力伝達経路上に位置する出力側の軸端部(S1a)が上記接地機構を介して上記車両の車体(2)に接地されている、車両用動力伝達装置(101,102,103,104,105109,115,116,117,118,119,120,121,126,127)、
にある。
【0008】
本発明の別態様は、
車両(1)の駆動輪(3)にインバータ(4)で制御される回転機(10)の駆動力を動力伝達経路(A)により伝達する車両用動力伝達装置であって、
複数の回転軸(S1,S2,S3,S4)と、
上記複数の回転軸を回転可能に支持する複数のベアリング(15,21,22,23)と、
上記複数の回転軸の間でそれぞれ動力伝達がなされる複数の動力伝達部(16,24,25)と、
上記複数の回転軸の少なくとも1つである対象回転軸を上記車両の車体(2)に接地する接地機構(14)と、
を備え、
上記動力伝達経路を構成する減速機(20)が設けられており、上記減速機の減速機軸(S2,S3)が上記対象回転軸とされ、
上記複数のベアリングには、外輪(15a)と、内輪(15b)と、上記外輪と上記内輪との間に転動可能に保持される複数の転動体(15c)と、を有する絶縁ベアリングが含まれており、上記絶縁ベアリングは、上記外輪と上記内輪と上記複数の転動体とのうちの少なくとも1つが電気絶縁材料からなる、車両用動力伝達装置(110,111,112,113,114,122,123,124,125)、
にある。
また、本発明のさらなる別態様は、
車両(1)の駆動輪(3)にインバータ(4)で制御される回転機(10)の駆動力を動力伝達経路(A)により伝達する車両用動力伝達装置であって、
上記回転機の回転機軸(S1)を含む複数の回転軸(S1,S2,S3,S4)と、
上記複数の回転軸の間でそれぞれ動力伝達がなされる複数の動力伝達部(16,24,25)と、
接地機構(14,14C,14D,14E,14F,14H,14I)と、
を備え、
上記複数の回転軸の少なくとも1つである対象回転軸は、上記動力伝達経路に繋がる部位のうち上記回転機軸の出力側から上記動力伝達経路の下流側までの領域内に位置する接地部が上記接地機構を介して上記車両の車体(2)に接地されており、
上記接地機構は、導電性を有するブラシ(14a)と、上記ブラシを上記対象回転軸の周面に押し付けるように加圧する第1弾性体(14b)と、上記ブラシとグランド(10b)との間に介装された導電性を有する第2弾性体(14g)と、を有し、上記第2弾性体は、上記ブラシと上記グランドとを電気的に接続し且つ上記ブラシと上記グランドを互いに離間する方向に弾性付勢する、車両用動力伝達装置(101,102,103,104,105,106,107,108,117,118,119,120,126,127)、
にある。
【発明の効果】
【0009】
上記の一態様において、車両用動力伝達装置は、複数の回転軸と、複数の動力伝達部と、接地機構と、を備える。複数の回転軸の間で複数の動力伝達部のそれぞれにおいて動力伝達がなされる。各動力伝達部において、1つの回転軸と別の回転軸との間での動力伝達が行われる。複数の回転軸の少なくとも1つである対象回転軸は、動力伝達経路に繋がる部位のうち回転機軸の出力側から動力伝達経路の下流側までの領域内に位置する接地部が接地機構を介して車両の車体に接地されている。
【0010】
ここで、回転機軸の非出力側を接地機構で接地とする場合には、インバータに起因する軸電圧の高周波成分が動力伝達経路の下流側へ漏れるのを抑制するのが難しい。そこで、対象回転軸を上記のような接地部で接地することによって、軸電圧の高周波成分が動力伝達経路の下流側へ漏れるのを抑制することが可能になり、電磁ノイズの高周波成分を低減できる。
【0011】
上記の別態様において、車両用動力伝達装置は、複数の回転軸と、複数のベアリングと、複数の動力伝達部とを備える。複数の回転軸の間で複数の動力伝達部のそれぞれにおいて動力伝達がなされる。各動力伝達部において、1つの回転軸と別の回転軸との間での動力伝達が行われる。複数の回転軸は、複数のベアリングによって回転可能に支持される。複数のベアリングには、外輪と内輪と複数の転動体とのうちの少なくとも1つが電気絶縁材料からなる絶縁ベアリングが含まれている。このような絶縁ベアリングは、ベアリングの絶縁破壊が発生するのを防ぐのに有効である。これにより、軸電圧の高周波成分が動力伝達経路の下流側へ漏れるのを抑制することが可能になり、電磁ノイズの高周波成分を低減できる。
【0012】
以上のごとく、上記の各態様によれば、電磁ノイズの高周波成分を低減できる車両用動力伝達装置を提供することができる。
【0013】
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1にかかる車両の概要を示す平面図。
図2】実施形態1の車両用動力伝達装置の模式図。
図3】実施形態1の車両用動力伝達装置において回転機の周辺部の軸方向についての断面図。
図4図1中の動力伝達経路の上流側の等価回路を示す図。
図5図4において電磁ノイズが伝播する状態を示す図。
図6】実施形態2について図1に対応した平面図。
図7】実施形態3について図1に対応した平面図。
図8】実施形態4について図1に対応した平面図。
図9】実施形態5について図1に対応した平面図。
図10】実施形態6の車両用動力伝達装置の模式図。
図11】実施形態7の車両用動力伝達装置の模式図。
図12】実施形態8の車両用動力伝達装置の模式図。
図13】実施形態9の車両用動力伝達装置について図3に対応した断面図。
図14図13中の接地機構の断面図。
図15】実施形態10の車両用動力伝達装置の模式図。
図16図15中の回転機の回転機軸に適用されるベアリングの軸方向についての断面図。
図17】比較例である動力伝達経路の上流側の等価回路においてベアリングの絶縁破壊状態を示す図。
図18図15中の動力伝達経路の上流側の等価回路において軸電圧の経路を示す図。
図19】実施形態11の車両用動力伝達装置の模式図。
図20】実施形態12の車両用動力伝達装置の模式図。
図21】実施形態13の車両用動力伝達装置の模式図。
図22】実施形態14の車両用動力伝達装置の模式図。
図23】実施形態15の車両用動力伝達装置の接地機構の断面図。
図24図23中の竹の子バネの斜視図。
図25】実施形態16の車両用動力伝達装置の接地機構の断面図。
図26】実施形態17の車両用動力伝達装置の接地機構の断面図。
図27】実施形態18の車両用動力伝達装置の接地機構の断面図。
図28】実施形態19の車両用動力伝達装置について図3に対応した断面図。
図29図28のXXIX-XXIX線矢視断面図。
図30】実施形態20の車両用動力伝達装置の接地機構について図29に対応した断面図。
図31図30の接地機構について回転機軸が第1回転方向に回転するときの様子を示す断面図。
図32図30の接地機構について回転機軸が第1回転方向に回転するときの様子を示す断面図。
図33】実施形態21の車両用動力伝達装置の接地機構について図29に対応した断面図。
図34】実施形態22の車両用動力伝達装置にかかる回転機の断面図。
図35図34のXXXV-XXXV線矢視断面図。
図36】実施形態23の車両用動力伝達装置にかかる回転機の断面図。
図37図36のXXXVII-XXXVII線矢視断面図。
図38】実施形態24の車両用動力伝達装置にかかる回転機の断面図。
図39】実施形態25の車両用動力伝達装置にかかる回転機の断面図。
図40】実施形態26の車両用動力伝達装置について図3に対応した断面図。
図41図40中の接地機構の拡大図。
図42図41のXLII-XLII線矢視断面図。
図43】実施形態27の車両用動力伝達装置の接地機構について図42に対応した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、電力変換装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、典型的には、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載され、直流電力と交流電力との間で電力変換を行う車載用電力変換装置に好適に適用される。
【0016】
なお、本明細書では、特に断わらない限り、回転軸の軸方向である第1方向を矢印Xで示し、回転軸の径方向である第2方向を矢印Yで示し、第1方向と第2方向の両方に直交する第3方向を矢印Zで示すものとする。
【0017】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1に係る車両1は、車体2と、左右の駆動輪3と、インバータ4と、バッテリ5と、回転機10と、減速機20と、を備える電動車両である。
【0018】
回転機10は、モータの機能と発電機の機能を兼ね備えたモータジェネレータとして構成されている。回転機10は、モータ軸である回転機軸(以下、「回転軸」といもいう。)S1と、回転機軸S1と一体回転する回転子としてのロータ11と、コイル13が巻き線された固定子としてのステータ12と、を備えている。回転機S1を回転可能に支持するベアリング(後述のベアリング15)は、接地機構14及びケース10a(図3を参照)を介して車体2に電気的に接続されている。回転機10は、インバータ4により制御される。
【0019】
インバータ4は、回転機10の3相(U相、V相、W相)のいずれかの電極に接続された複数のスイッチング素子(図示省略)を有する半導体モジュールであり、電力変換を行うためのものである。インバータ4は、回転機10のコイル13に電気的に接続され、且つハーネス6を介してバッテリ5に電気的に接続されている。
【0020】
減速機20は、回転機10の駆動力を駆動輪3に伝達するためのものである。減速機20には、3つの回転軸S2,S3,S4が設けられている。回転軸S2は、3つの回転軸S2,S3,S4の中で、回転機10側を上流とし駆動輪3側を下流として形成される動力伝達経路Aの最上流に設けられている。回転軸S3は、動力伝達経路Aにおいて回転軸S2と回転軸S4との間に設けられている。回転軸S4は、ディファレンシャルギアG5と2つの駆動輪3を繋ぐように設けられており、駆動輪3を駆動する駆動軸(ドライブシャフト)として構成されている。この減速機20は変速機とも称呼される。
【0021】
図2に示されるように、実施形態1の車両用動力伝達装置(以下、単に「動力伝達装置」ともいう。)100は、車両1の駆動輪3にインバータ4で制御される回転機10の駆動力を動力伝達経路Aにより伝達する装置である。動力伝達経路Aは、減速機20によって構成される。
【0022】
動力伝達装置100は、4つの回転軸S1,S2,S3,S4と、4つのベアリング15,21,22,23と、3つの動力伝達部16,24,25と、接地機構14と、を備えている。
【0023】
回転機10の回転機軸S1は、第1方向Xに延びており、軸受けである2つのベアリング15により回転可能に支持されるように構成されている。
【0024】
回転軸S2は、回転機軸S1の軸線上で第1方向Xに延びており、軸受けである2つのベアリング21により回転可能に支持されている。回転軸S2は、動力伝達部16を介して回転機軸S1に繋がっており、回転機軸S1と一体回転するように構成されている。回転軸S2の軸周には、第1ギアG1が設けられている。
【0025】
動力伝達部16は、スプライン結合によるものである。スプライン結合は、特に図示しないものの、回転機軸S1及び回転軸S2のいずれか一方をスプライン軸として、このスプライン軸の軸周に設けられた外歯が、回転機軸S1及び回転軸S2のいずれか他方に軸端部に設けられたスプライン穴に挿入されて内歯に係合することによって、回転機軸S1と回転軸S2が一体回転可能に結合される形態をいう。このようなスプライン結合は、ギア係合による動力伝達部のように静電容量を持つ結合構造に対して、静電容量を持たない結合構造である。
【0026】
回転軸S3は、回転軸S2と平行な位置で第1方向Xに延びており、軸受けである2つのベアリング22により回転可能に支持されている。回転軸S3の軸周には、回転軸S2の第1ギアG1と噛み合う第2ギアG2と、第2ギアG2と平行に配置された第3ギアG3と、が設けられている。このため、回転軸S2と回転軸S3は、第1ギアG1と第2ギアG2とのギア係合を利用した係合部である動力伝達部24を介して互いに繋がっている。
【0027】
回転軸S4は、回転軸S3と平行な位置で第1方向Xに延びており、軸受けである2つのベアリング23により回転可能に支持されている。回転軸S4の軸周には、回転軸S3の第3ギアG3と噛み合う第4ギアG4が設けられている。このため、回転軸S3と回転軸S4は、第3ギアG3と第4ギアG4とのギア係合を利用した係合部である動力伝達部25を介して互いに繋がっている。
【0028】
2つの動力伝達部24,25はいずれも、ギア係合を利用したものであり、スプライン係合を利用した動力伝達部16とは異なり静電容量を持つ。即ち、2つの動力伝達部24,25のそれぞれにおいて、互いに噛み合う2つのギアの間に大きな静電容量が形成された状態が生じる。2つの回転軸S1,S2は、3つの動力伝達部16,24,25の中で動力伝達部24,25よりも動力伝達経路A(図1を参照)の上流側に位置する上流側回転軸である。
【0029】
動力伝達経路Aにおいて、3つの動力伝達部16,24,25は、回転機10の駆動力を4つのギアG1,G2,G3を介して回転軸(駆動軸)S4に機械的に伝達するように構成されている。
【0030】
図2及び図3に示されるように、本実施形態では、接地機構14は、回転機10の回転機軸S1を対象回転軸として、この回転機軸S1の出力側の軸端部S1aを、ケース10aを介して車両1の車体2に電気的に接続するように構成されている。必要に応じて、4つの回転軸S1,S2,S3,S4のうちの少なくとも1つを対象回転軸にしてもよい。
【0031】
ここで、軸端部S1aは、回転機軸S1の第1方向Xの両方の軸端部S1a,S1bのうち減速機20側の軸端部であり、動力伝達経路A上に位置する部位である。このため、軸端部S1aは、動力伝達経路Aに繋がる部位のうち回転機軸S1の出力側から動力伝達経路Aの下流側までの領域内に位置する接地部であり、この接地部が接地機構14を介してケース10aに接地されている。
【0032】
「動力伝達経路Aに繋がる部位」には、対象回転軸の各部位のうち、動力伝達経路A上に位置する部位(以下、「第1の部位」という。)は勿論、この第1の部位を起点として上動力伝達経路Aから外れる方向に延びた部位であって動力伝達経路A上に位置しない、動力伝達経路A上から外れた部位(以下、「第2の部位」という。)をも包含される。このため、対象回転軸の第1の部位が接地機構14を介して接地されてもよいし、或いは、対象回転軸の第2の部位が接地機構14を介して接地されてもよい。
【0033】
図3に示されるように、接地機構14は、回転機10側の金属製のケース10aと減速機20側の金属製のケース20aとの間に介装されている。接地機構14は、導電性を有するブラシ14aと、ブラシ14aを第2方向Yについて回転機軸S1の軸端部S1aの周面に押し付けるように加圧する弾性体としてのバネ14bと、ブラシ14a及びバネ14bを収容する金属製のハウジング14cと、を備えている。
【0034】
ここで、図1の中の動力伝達経路AのうちシャフトS2までの等価回路は、図4のような等価回路によって示される。この等価回路において、インバータ4のスイッチング制御時に回転機軸S1で生じる軸電圧の高周波成分が動力伝達経路Aの下流へ漏洩するのを接地機構14によって防ぐことができる。このとき、この軸電圧の高周波成分(具体的には、インバータ4のスイッチング制御により接地後に残留するパルス状の軸電圧)によって発生した電磁ノイズ(インバータノイズ)の高周波成分は、図5に示されるように、動力伝達経路Aの下流へ伝播しないノイズ伝播経路Bを伝播する。
【0035】
実施形態1の動力伝達装置100によれば、回転機軸S1の軸端部S1aを接地部として、この接地部を接地機構14によって車体2に接地することで、軸電圧の高周波成分が動力伝達経路Aの下流側へ漏れるのを抑制することが可能になり、電磁ノイズの高周波成分を低減できる。
【0036】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明を省略する。
【0037】
(実施形態2)
図6に示されるように、実施形態2の動力伝達装置102は、減速機20の構成について、実施形態1の動力伝達装置101のものと相違している。
【0038】
動力伝達装置102の減速機20には、2つの回転軸S2,S4が設けられている一方で、実施形態1の回転軸S3(図2を参照)に相当する回転軸は省略されている。この減速機20は、回転軸S2に設けられているギアG1と回転軸S4に設けられているギアG4とが噛み合うように構成されている。
【0039】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0040】
実施形態2の動力伝達装置102によれば、実施形態1の場合に比べて減速機20の構造を簡素化することができる。
【0041】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0042】
(実施形態3)
図7に示されるように、実施形態3の動力伝達装置103は、回転機10が回転軸S4に直結されている点で、実施形態1の動力伝達装置101のものと相違している。
【0043】
回転機10の回転機軸S1は、その両方の軸端部S1a,S1bのそれぞれが遊星ギアG5を介して回転軸S4に繋がれている。接地機構14は、回転機軸S1の両方の軸端部S1aのそれぞれに設けられている。この場合、2つの接地機構14が使用される。
【0044】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0045】
実施形態3の動力伝達装置103によれば、遊星ギアG5を用いて動力伝達経路Aを構成する場合に、軸電圧の高周波成分が動力伝達経路Aの下流側へ漏れるのを抑制することが可能になる。
【0046】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0047】
(実施形態4)
図8に示されるように、実施形態4の動力伝達装置104は、回転機10が回転軸S4に直結されている点で、実施形態1の動力伝達装置101のものと相違している。この動力伝達装置104において、回転機10の回転機軸S1の両方の端部S1a,S1bのそれぞれにギアを介することなく回転軸S4が結合されており、且つ回転機軸S1の両方の端部のそれぞれに対して接地機構14が設けられている。
【0048】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0049】
実施形態4の動力伝達装置104によれば、回転機軸S1と回転軸S4との間のギアが省略されることで、電磁ノイズの高周波成分を低減する効果が高まる。
【0050】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0051】
(実施形態5)
図9に示されるように、実施形態5の動力伝達装置105において、2つの回転機10はいずれも、回転機S1が各駆動輪3に一体的に繋がるように構成されたインホイールモータとして構成されている。接地機構14は、回転機軸S1の両方の軸端部S1aのそれぞれに設けられている。この場合、2つの接地機構14が使用される。
【0052】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0053】
実施形態5の動力伝達装置105によれば、回転機10がインホイールモータである車両への適用が可能になる。
【0054】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0055】
(実施形態6)
図10に示されるように、実施形態6の動力伝達装置106は、接地機構14を設ける位置が実施形態1の動力伝達装置101のものと相違している。また、ベアリング15,21のみが、電気絶縁性を有する絶縁ベアリングによって構成されている。
【0056】
動力伝達装置106では、減速機20の回転軸S3を対象回転軸とし、この回転軸S3の第1方向Xの両方の軸端部S3a,S3bのうち一方の軸端部S3aを接地機構14に対する接地部としている。軸端部S3aは、動力伝達経路Aに繋がる部位のうち回転機軸S1の出力側から動力伝達経路Aの下流側までの領域内に位置する部位であるが、動力伝達経路A上に位置しない部位である。この軸端部S3aが接地機構14を介してケース20a接地されている。この軸端部S3aは、回転軸S3の両方の軸端部S3a,S3bのうち動力伝達経路Aから当該軸端部に適用されているベアリング22までの距離が短い方の軸端部である。
【0057】
ここで、回転軸S3とギアG2との境界にある動力伝達経路A上の基準位置Pから図中左側のベアリング22までの第1方向Xの距離d1と、基準位置Pから図中右側のベアリング22までの第1方向Xの距離d2と、を比較したとき、距離d1が距離d2を下回る。本実施形態では、回転軸S3の両方の軸端部S3a,S3bのうち距離d1を形成する図中左側のベアリング22によって支持される方の軸端部S3aを接地機構14でケース20aに対して接地する。
【0058】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0059】
実施形態6の動力伝達装置106によれば、回転軸S3の軸端部S3aを接地機構14でケース20aに対して接地することで、もう一方の軸端部S3bを接地機構14でケース20aに対して接地する場合に比べて、軸電圧に及ぼす回転軸S3のインダクタスLの影響を抑えることができ、電磁ノイズの高周波成分の低減量を増やすことができる。
【0060】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0061】
(実施形態7)
図11に示されるように、実施形態7の動力伝達装置107は、接地機構14を設ける位置が実施形態6の動力伝達装置106のものと相違している。
【0062】
動力伝達装置107の接地機構14は、回転軸S3の両方の軸端部S3a,S3bのうち動力伝達経路Aから当該軸端部に適用されているベアリング22までの距離が短い方の軸端部S3bをケース20aに対して接地するように構成されている。動力伝達経路A上の基準位置Pから図中右側のベアリング22までの第1方向Xの距離d1と、基準位置Pから図中左側のベアリング22までの第1方向Xの距離d2と、を比較したとき、距離d1が距離d2を下回る。
【0063】
その他の構成は、実施形態6と同様である。
【0064】
実施形態7の動力伝達装置107によれば、回転軸S3の軸端部S3bを接地機構14でケース20aに対して接地することで、もう一方の軸端部S3aを接地機構14でケース20aに対して接地する場合に比べて、軸電圧に及ぼす回転軸S3のインダクタスLの影響を抑えることができ、電磁ノイズの高周波成分の低減量を増やすことができる。
【0065】
その他、実施形態6と同様の作用効果を奏する。
【0066】
(実施形態8)
図12に示されるように、実施形態8の動力伝達装置108は、接地機構14を設ける位置が実施形態6の動力伝達装置106のものと相違している。
【0067】
動力伝達装置108の接地機構14は、減速機20の回転軸S2を対象回転軸として、この回転軸S2を動力伝達経路A上に位置しない部位である軸端部S2bでケース20aに対して接地するよう構成されている。軸端部S2bは、回転軸S2の両方の軸端部S2a,S2bのうち動力伝達経路Aから当該軸端部に適用されているベアリング21までの距離が短い方の軸端部である。
【0068】
ここで、回転軸S2とギアG1との境界にある動力伝達経路A上の基準位置Qから図中右側のベアリング21までの第1方向Xの距離d3と、基準位置Qから図中左側のベアリング21までの第1方向Xの距離d4と、を比較したとき、距離d3が距離d4を下回る。本実施形態では、回転軸S2の両方の軸端部S2a,S2bのうち距離d3を形成する図中右側のベアリング21によって支持される方の軸端部S2bを接地機構14でケース20aに対して接地する。
【0069】
その他の構成は、実施形態6と同様である。
【0070】
実施形態8の動力伝達装置108によれば、回転軸S2の軸端部S2bを接地機構14でケース20aに対して接地することで、もう一方の軸端部S2aを接地機構14でケース20a接地する場合に比べて、軸電圧に及ぼす回転軸S2のインダクタスLの影響を抑えることができ、電磁ノイズの高周波成分の低減量を増やすことができる。
【0071】
その他、実施形態6と同様の作用効果を奏する。
【0072】
(実施形態9)
図13に示されるように、実施形態9の動力伝達装置109は、接地機構14の構造について、実施形態1の動力伝達装置101のものと相違している。
【0073】
図14の第2方向Yの断面図に示されるように、接地機構14は、導電性を有するブラシ14aと、ブラシ14aを保持する金属製のハウジング14cと、を備えている。ブラシ14aは、回転機軸S1の周方向の全体に摺接するリング状のリング型ブラシである。ハウジング14cは、第3方向Zに複数設けられたネジ止め部14dによって回転機10のケース10aに固定されている。
【0074】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0075】
実施形態9の動力伝達装置109によれば、接地機構14にリング型ブラシを用いることで、省スペースでの接地が可能になり、接地機構14の体格を小さくできる。また、ピグテールのような導線などが不要であるため、低インダクタンスでの接地が可能になる。
【0076】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0077】
(実施形態10)
図15に示されるように、実施形態10の動力伝達装置110は、実施形態1の動力伝達装置101に対して、接地機構14を用いる点で一致し、接地機構14に加えて絶縁ベアリングを用いる点で相違している。この動力伝達装置110は、接地機構14と絶縁ベアリングを併用したものである。
【0078】
動力伝達装置110の接地機構14は、回転機軸S1の軸端部S1bをケース10aに対して接地するように設けられている。また、回転機軸S1に適用されているベアリング15と、回転軸S2に適用されているベアリング21は、ともに電気絶縁性を有する絶縁ベアリングとして構成されている。
【0079】
図16に示されるように、ベアリング15は、外輪15aと、内輪15bと、外輪15aと内輪15bとの間に保持器15dによって転動可能に保持される複数の転動体15cと、外輪15aと内輪15bとの間の空間をシールするシール部材15eと、を備えている。ベアリング15は、外輪15aと内輪15bと複数の転動体15cとのうちの少なくとも1つが電気絶縁材料からなるように構成されている。なお、特に図示しないものの、ベアリング21もベアリング15と同様の構造になっている。
【0080】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0081】
実施形態10の動力伝達装置110によれば、ベアリング15,21を絶縁ベアリングとすることによって、回転軸S1,S2に電荷がチャージされた場合でも、絶縁破壊による放電を防ぐことが可能になる。これにより、軸電圧の高周波成分(具体的には、ベアリングの絶縁破壊により接地後に残留するパルス状の軸電圧)が動力伝達経路Aの下流側へ漏れるのを抑制することが可能になり、電磁ノイズの高周波成分を低減できる。また、絶縁ベアリングを用いることで、ブラシを用いる場合に生じ得るブラシ摩耗の問題を考慮する必要がないという利点がある。
【0082】
この動力伝達装置110では、ベアリング15,21の電気絶縁材料として、樹脂やカーボンに比べて、耐久性及び絶縁率に優れたセラミックスを用いるのが好ましい。さらに好ましくは、アルミナセラミックスを用いる。アルミナセラミックスは、絶縁率が高く且つ安価であるため汎用性に優れている。
【0083】
ここで、図17に示されるように、比較例の動力伝達経路A’においてベアリング15,21の絶縁破壊が生じた絶縁破壊状態では、ベアリング15,21の放電によって軸電圧の高周波成分が発生して動力伝達経路A’の下流側へ伝播する。なお、図17では、ベアリング15,21の放電をスイッチで等回路化している。
【0084】
これに対して、本実施形態によれば、図18に示されるように絶縁ベアリングに接地機構14を併用することによって、軸電圧の経路が接地機構14側に形成されるため、軸電圧の高周波成分の発生を防いで電磁ノイズ高周波成分を低減することが可能になる。
【0085】
それに加えて、回転機軸S1に接地機構14を設けることによって、回転機軸S1に回転数センサのような機器が設けられている場合には、この機器に電磁ノイズが伝播するのを防ぐことが可能になる。
【0086】
なお、複数のベアリング15,21,22,23の全てを絶縁ベアリングにすることも可能であるが、コストを抑えるためには、本実施形態の動力伝達装置110のように、ベアリング15,21のみを絶縁ベアリングにすれば足りる。
【0087】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0088】
(実施形態11)
図19に示されるように、実施形態11の動力伝達装置111は、接地機構14を備えていない点、及び回転軸S1,S2,S3,S4に設けられている全てのベアリング15,21,22,23が絶縁ベアリングとして構成されている点で、実施形態10の動力伝達装置110と相違している。
【0089】
ここで、動力伝達経路Aでは各ギアが寄生容量をもって別のギアに電気的に接続されており、回転軸S1,S2,S3,S4の軸電圧は、回転機軸S1、回転軸S2、回転軸S3、回転軸S4の順で小さくなる。このとき、インバータ4(図1を参照)の出力次第では、電磁ノイズの高周波成分が回転軸S4に到達するまでの間に軸電圧の高周波成分が所望のレベルまで低下する場合も想定される。そこで、実施形態10では、このような場合を考慮し、接地機構14を省略したうえで、ベアリング15,21,22,23の全てを、実施形態1のベアリング15(図16)と同様の構成を有する絶縁ベアリングとしている。
【0090】
その他の構成は、実施形態10と同様である。
【0091】
実施形態11の動力伝達装置111によれば、回転機軸S1で生じた軸電圧の高周波成分が残りの回転軸S2,S3,S4との間で分圧されるため、接地機構14が不要になる。この場合、接地機構14を省略することによりコスト低減効果が得られるという利点がある。
【0092】
その他、実施形態10と同様の作用効果を奏する。
【0093】
(実施形態12)
図20に示されるように、実施形態12の動力伝達装置112は、接地機構14を設ける位置が実施形態10の動力伝達装置110のものと相違している。
【0094】
動力伝達装置112の接地機構14は、回転軸S3の両方の軸端部S3a,S3bのうちの軸端部S3bをケース20aに対して接地するように構成されている。
【0095】
その他の構成は、実施形態10と同様である。
【0096】
実施形態12の動力伝達装置112によれば、ベアリング15を絶縁ベアリングとして絶縁破壊を防ぐことで、回転機軸S1をケース10aに対して接地する必要がない。そこで、本実施形態では、接地機構14を回転機軸S1に代えて減速機20の回転軸S3に適用して、この回転軸S3をケース20aに対して接地するようにしている。回転軸S3は回転機軸S1よりも回転数が低いため、接地機構14を回転機軸S1に適用する場合に比べて、ブラシ14a(図3を参照)の寿命を延ばすことができ、また電費を向上させることができる。なお、回転軸S3に代えて或いは加えて、減速機20の回転軸S2に接地機構14を適用することもできる。
【0097】
その他、実施形態10と同様の作用効果を奏する。
【0098】
(実施形態13)
図21に示されるように、実施形態13の動力伝達装置113は、接地機構14を設ける位置が実施形態12の動力伝達装置112のものと相違している。
【0099】
動力伝達装置113の接地機構14は、回転軸S3の両方の軸端部S3a,S3bのうち動力伝達経路Aから当該軸端部に適用されているベアリング22までの距離が短い方の軸端部S3bをケース20aに対して接地するように構成されている。動力伝達経路A上の基準位置Pから図中右側のベアリング22までの第1方向Xの距離d1と、基準位置Pから図中左側のベアリング22までの第1方向Xの距離d2と、を比較したとき、距離d1が距離d2を下回る。
【0100】
その他の構成は、実施形態12と同様である。
【0101】
実施形態13の動力伝達装置113によれば、回転軸S3の軸端部S3bを接地機構14でケース20aに対して接地することで、もう一方の軸端部S3aを接地機構14でケース20aに対して接地する場合に比べて、軸電圧に及ぼす回転軸S3のインダクタスLの影響を抑えることができ、電磁ノイズの高周波成分の低減量を増やすことができる。
【0102】
その他、実施形態12と同様の作用効果を奏する。
【0103】
(実施形態14)
図22に示されるように、実施形態14の動力伝達装置114は、接地機構14の構造が実施形態10の動力伝達装置110のものと相違している。
【0104】
動力伝達装置114の接地機構14は、アース線14eによって構成されている。回転軸S4に電気的に接続されている部位がアース線14eを介してケース20aに対して接地されている。
【0105】
その他の構成は、実施形態10と同様である。
【0106】
実施形態14の動力伝達装置114によれば、ブラシを用いる場合に生じ得るブラシ摩耗の問題を考慮する必要がない。このため、接地機構14の低コスト化を図ることができる。
【0107】
その他、実施形態10と同様の作用効果を奏する。
【0108】
(実施形態15)
図23に示されるように、実施形態15の動力伝達装置115は、接地機構14Aを有し、この接地機構14Aの構造が実施形態1の接地機構14(図3を参照)のものと相違している。
【0109】
接地機構14Aは、導電性を有するブラシ14aと、ブラシ14aを対象回転軸である回転機軸S1の周面に押し付けるように加圧する弾性体としてのバネ14bと、を有する。図24に示されるように、バネ14bは、ブラシ14aとグランド10bとの間に介装された導電性を有する竹の子バネである。このバネ14bは、典型的には、長方形断面の金属板を円錐状に巻くように加工することによって形成される。
【0110】
バネ14bは、ブラシ14aとグランド10bを電気的に接続して接地経路を形成するとともに、ブラシ14aとグランド10bを互いに離間する方向に弾性付勢する機能を果たす。これにより、ブラシ14aが回転機軸S1の周面に摺接するように押し付けられる。
【0111】
バネ14bは、バネ伸縮方向である第2方向Yの断面形状が長方形であり非円形となるように構成されている。このため、バネ14bは、一般的なコイルバネのように断面形状が円形であるものと相違している(図23を参照)。グランド10bは、ケース10aに電気的に接続された金属端子によって構成されている。
【0112】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0113】
実施形態15の動力伝達装置115によれば、バネ14bの断面積が一般的な接地配線(リード線)の断面積よりも大きいため、ブラシ14a及びグランド10bに対する接触面積を増やすことができ、インダクタンスを小さくすることができる。この場合、電磁ノイズの高周波成分に対する接地インピーダンスが小さくなるため、接地効果が大きくなり軸電圧の高周波成分を低減させるのに有効である。
【0114】
また、バネ14bに竹の子バネを用いることによって、断面形状が円形であるコイルバネに比べて、同じ線形(断面積)でのインダクタンスを小さくすることができ、軸電圧の高周波成分を低減する効果が高くなり、接地効果がより大きくなる。
【0115】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0116】
なお、接地機構14Aにおいて、必要に応じては、バネ14bに竹の子バネを用いることに代えて、竹の子バネと同様に断面形状が非円形である角バネを用いるようにしてもよい。
【0117】
(実施形態16)
図25に示されるように、実施形態16の動力伝達装置116は、接地機構14Bを有し、この接地機構14Bの構造が実施形態15の接地機構14Aのものと相違している。
【0118】
接地機構14Bは、バネ14bに加えて接地配線14fを有する。接地配線14fは、ブラシ14aとグランド10bを電気的に接続することにより、バネ14bとは別の接地経路を形成している。
【0119】
その他の構成は、実施形態15と同様である。
【0120】
実施形態16の動力伝達装置116によれば、接地機構14Bにおいて2つの接地経路が並列に形成されるため、実施形態15の場合に比べて、インダクタンスを小さくすることができる。
【0121】
その他、実施形態15と同様の作用効果を奏する。
【0122】
(実施形態17)
図26に示されるように、実施形態17の動力伝達装置117は、接地機構14Cを有し、この接地機構14Cの構造が実施形態15の接地機構14Aのものと相違している。
【0123】
接地機構14Cは、第1弾性体としてのバネ14bに加えて、第2弾性体としてのバネ14gを有する。この接地機構14Cでは、バネ14bが摺接用のコイルバネであり、バネ14gが接地用の板バネである。
【0124】
バネ14bは、ブラシ14aが回転機軸S1の周面に摺接するようにブラシ14aを弾性付勢する機能を果たす。このバネ14bは、断面形状が円形である。これに対して、バネ14gは、導電性を有し、ブラシ14aとグランド10bを電気的に接続して接地経路を形成する。このとき、バネ14gは、ブラシ14aとグランド10bを互いに離間する方向に弾性付勢することによって、接地状態を維持する機能を果たす。このバネ14gは、断面形状が非円形である。
【0125】
その他の構成は、実施形態15と同様である。
【0126】
実施形態17の動力伝達装置117によれば、接地機構14Cにおいて摺接用のバネ14bであるコイルバネと接地用のバネ14gである板バネとを併用することができる。
【0127】
その他、実施形態15と同様の作用効果を奏する。
【0128】
(実施形態18)
図27に示されるように、実施形態18の動力伝達装置118は、接地機構14Dを有し、この接地機構14Dの構造が実施形態17の接地機構14Cのものと相違している。
【0129】
接地機構14Dは、ブラシ14aと、2つのバネ14b,14gと、を有する。バネ14bが摺接用のコイルバネであり、バネ14gが接地用の竹の子バネ(図24を参照)である。バネ14gは、断面形状が非円形である。このバネ14gは、導電性を有し、第1方向Xの一端部がグランド10bに接触するとともに、第1方向Xの他端部が導電性を有する摺動端子14hを間に挟んでブラシ14aに電気的に接続されている。
【0130】
その他の構成は、実施形態17と同様である。
【0131】
実施形態18の動力伝達装置118によれば、接地機構14Dにおいて摺接用のバネ14bであるコイルバネと接地用のバネ14gである竹の子バネとを併用することができる。
【0132】
その他、実施形態17と同様の作用効果を奏する。
【0133】
なお、実施形態17及び18のそれぞれにおいて、バネ14bにコイルバネに代えて竹の子バネや角バネを用いることもできる。即ち、摺接用のバネ14bと接地用のバネ14gの両方に、断面形状が非円形のものを採用してもよい。
【0134】
(実施形態19)
図28に示されるように、実施形態19の動力伝達装置119は、接地機構14Eを有し、この接地機構14Eの構造が実施形態15の接地機構14Aのものと相違している。
【0135】
図29に示されるように、接地機構14Eは、ブラシ14aと、2つのバネ14b,14gと、保持部14iと、を有する。第1弾性体としてのバネ14bが摺接用のコイルバネであり、第2弾性体としてのバネ14gが接地用のコイルバネである。
【0136】
ブラシ14aは、回転機軸S1の周面とグランド10bとのそれぞれに直に接触している。即ち、このブラシ14aは、回転機軸S1に対する接点Caと、グランド10bに対する接点Cbと、を有する。この場合、回転機軸S1がブラシ14aのみを介してグランド10bに接地される。接点Caは、ブラシ14aのうち、回転機軸S1側の一端部の端面に形成される。接点Cbは、ブラシ14aのうち、回転機軸S1側の一端部とハウジング10cの収容空間14j側の他端部との間の側面に形成される。
【0137】
グランド10bは、ケース10aに電気的に接続された金属導体によって構成され、保持部14iにより保持されている。バネ14gは、ブラシ14aをこのブラシ14aとグランド10bとの間の接触圧が強まる方向に弾性付勢している。なお、このバネ14gは、ブラシ14aに代えて或いは加えて、グランド10bをブラシ14aとグランド10bとの間の接触圧が強まる方向に弾性付勢するように構成されてもよい。
【0138】
その他の構成は、実施形態15と同様である。
【0139】
実施形態19の動力伝達装置119によれば、回転機軸S1をブラシ14aのみを介してグランド10bに接地することによって、ピグテールのような導線を使用して接地する場合に比べて回転機軸S1とグランド10bとの間の接地のインダクタンスが小さくなり、軸電圧の高周波成分を低減することが可能になる。
【0140】
その他、実施形態15と同様の作用効果を奏する。
【0141】
(実施形態20)
図30に示されるように、実施形態20の動力伝達装置120は、接地機構14Fを有し、この接地機構14Fの構造が実施形態19の接地機構14Eのものと相違している。
【0142】
接地機構14Fにおいて、バネ14gはハウジング14cの一部に構成された接地用の板バネ部であり、この板バネ部がブラシ14aをグランド10bに押し付けるように弾性付勢する。ここで、バネ14gは、ブラシ14aに対する接触が回転機軸S1とブラシ14aの接触のように摺動を伴うものではなく、また押し付け量が小さいため、コイルバネに代えて板バネ部を用いることができる。
【0143】
その他の構成は、実施形態19と同様である。
【0144】
実施形態20の動力伝達装置120によれば、バネ14gをハウジング14cの一部を利用して構成することによって部品点数を削減できる。
【0145】
その他、実施形態19と同様の作用効果を奏する。
【0146】
なお、上記の接地機構14Fでは、ハウジング14cは、収容空間14jの第3方向Zの寸法が、回転機軸S1の周面に対向する開口14kの第3方向Zの開口幅を上回るように構成されるのが好ましい(図30を参照)。
【0147】
図31に示されるように、回転機軸S1が第1回転方向D1に回転するとき、ブラシ14aは、回転機軸S1側の端部が図中左側に向かう荷重を受ける。このとき、ブラシ14aの回転機軸S1側の端部の動きがハウジング14cの開口縁部によって規制される一方で、ブラシ14aの収容空間14j側の端部が収容空間14jの右側壁面に干渉するのが防がれる。
【0148】
図32に示されるように、回転機軸S1が第2回転方向D2に回転するとき、ブラシ14aは、回転機軸S1側の端部が図中右側に向かう荷重を受ける。このとき、ブラシ14aの回転機軸S1側の端部の動きが保持部14iとの間に形成される接点Ccで規制される一方で、ブラシ14aの収容空間14j側の端部が収容空間14jの左側壁面に干渉するのが防がれる。保持部14iが導電性を有する場合には、グランド10bのみならず保持部14iとの間での電気的接続が形成される。
【0149】
従って、回転機軸S1の回転方向にかかわらず、ブラシ14aはその両端部の間に形成される接点Cbにおいてグランド10bとの間の電気的接続を維持することができ、ブラシ14aを介して回転機軸S1をグランド10bに安定的に接地することができる。
【0150】
(実施形態21)
図33に示されるように、実施形態21の動力伝達装置121は、接地機構14Gを有し、この接地機構14Gの構造が実施形態19の接地機構14Eのものと相違している。
【0151】
接地機構14Gにおいて、ブラシ14aは、回転機軸S1の軸線方向についてみたときの断面形状が略L字をなしている。このブラシ14aは、その一端部がバネ14bによって回転機軸S1から離れる方向に弾性付勢されることで、その他端部の端面が接点Caにおいて回転機軸S1の周面に接触するように構成されている。このブラシ14aの両端部の間の中間部は、接点Cbにおいてグランド10bに接触している。
【0152】
ブラシ14aは、所謂「てこの原理」を利用して回転機軸S1及びグランド10bに押し付けられる。この場合、ブラシ14aの一端部が力点となり、ブラシ14aの他端部と中間部のいずれか一方が支点となり、ブラシ14aの他端部と中間部のいずれか他方が作用点となる。バネ14bは、摺接用のバネと接地用のバネの両方を兼務している。このバネ14bによれば、回転機軸S1及びグランド10bのそれぞれに対するブラシ14aの接触圧がともに高まるようにブラシ14aが弾性付勢される。これにより、ブラシ14aを介して回転機軸S1をグランド10bに安定的に接地することができる。
【0153】
その他の構成は、実施形態19と同様である。
【0154】
実施形態21の動力伝達装置121によれば、実施形態19の場合に比べてバネの数を減らすことができる。
【0155】
その他、実施形態19と同様の作用効果を奏する。
【0156】
(実施形態22)
図34に示されるように、実施形態22の動力伝達装置122は、接地機構14を備えていない点で、実施形態1の動力伝達装置101と相違している。
【0157】
動力伝達装置122は、第1導体17と、第2導体18と、スペーサーSpと、静電容量形成部19と、を備える。
【0158】
第1導体17は、回転機10のロータ11(図2を参照)と一体回転するように回転機軸S1に設けられている。この第1導体17は、第1方向Xの厚みが一定である平板であり、且つ第1方向Xのついてみたときの形状が円形である円盤形状を有する(図35を参照)。これにより、第1導体17を小型化できる。
【0159】
第2導体18は、回転機10のステータ12に直接的或いは間接的に固定され、第1導体17に対して軸線方向である第1方向Xに対向配置されるように構成されている。この第2導体18は、第1導体17と同様に、第1方向Xの厚みが一定である平板であり、且つ第1方向Xのついてみたときの形状が円形である円盤形状を有する。これにより、第2導体18を小型化できる。
【0160】
第1導体17は、第2導体18に対して、第1方向Xを法線方向とする円形の対向面17aを有する。第2導体18は、第1導体17に対して、第1方向Xを法線方向とする円形の対向面18aを有する。2つの対向面17a,18aは、第1方向Xに垂直な平面であり、互いに平行配置されている。
【0161】
スペーサーSpは、2つの対向面17a,18aの間隔を定めるために、第1導体17とベアリング15との間に介装されている。このスペーサーSpによれば、2つの対向面17a,18aの間隔を所望の状態に設定するための作業を簡素化できる。なお、スペーサーSpの数は特に限定されるものではなく、必要に応じて1つ或いは複数のスペーサーSp設けることができる。
【0162】
静電容量形成部19は、第1導体17の対向面17aと第2導体18の対向面18aとの間に形成される。この静電容量形成部19によれば、2つの対向面17a,18aの間に誘電体19aが介装されることによって静電容量が形成される。このとき、2つの対向面17a,18aの間隔が小さくなるほど静電容量を大きくなる。誘電体19aの種類は特に限定されないが、静電容量を大きくするために、誘電体19aとしてグリスを用いることができる。
【0163】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0164】
実施形態22の動力伝達装置122によれば、回転機軸S1の軸方向(第1方向X)の振動が小さい場合、第1方向Xに垂直な2つの対向面17a,18aの間に静電容量を形成することによって、接地機構を使用しない場合でも、回転機軸S1で生じた軸電圧の高周波成分が動力伝達経路Aの下流側に伝播するのを抑制することができる。これにより、電磁ノイズの高周波成分の発生を防ぐことが可能になる。勿論、この動力伝達装置122において接地機構を付加してもよい。
【0165】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0166】
(実施形態23)
図36に示されるように、実施形態23の動力伝達装置123は、第1導体17及び第2導体18の構造について、実施形態22の動力伝達装置122のものと相違している。
【0167】
動力伝達装置123において、第1導体17は、第1方向Xに間隔を隔てて平行配置された複数(図36では2つ)の平板部17bを有し、第2導体18は、第1方向Xに間隔を隔てて平行配置された複数(図36では3つ)の平板部18bを有する。
【0168】
第2導体18の1つの平板部18bは、ケース10aとの共用部分によって構成されている。これにより、部品点数を削減できる。なお、必要に応じて、第2導体18とは別の要素がケース10aとの共用部分を有するようにしてもよい。
【0169】
第1導体17の平板部17bと第2導体18の平板部18bは、第1方向Xに交互に配置されている。このとき、平板部18b及びケース10aに対向する平板部17bの対向面が第1導体17の対向面17aとなり、平板部17bに対向する平板部18bの対向面が第2導体18の対向面18aとなる。従って、本実施形態では、4つの対向面17aと、3つの対向面18aが形成されており、複数個所(図36では4箇所)に静電容量形成部19が形成される。
【0170】
第1導体17は、内周部17cを有する。この内周部17cは、回転機軸S1の周面との接合部分であり、しかも実施形態22のスペーサーSpを構成するものである。このように、第1導体17の内周部17cをスペーサーSpとの共用部分とすることにより、スペーサーSpを専用部品とする場合に比べて部品点数を削減できる。なお、必要に応じて、第2導体18の一部を利用してスペーサーSpを構成してもよい。
【0171】
図37に示されるように、第1導体17は、回転機軸Sに相当する位置を境界として半割状に分割可能な2つの分割部品からなる。これにより、第1導体17の組付け作業を簡素化することができる。なお、必要に応じて、第1導体17を3つ以上の複数の分割部品によって構成したり、第2導体18を複数の分割部品によって構成したりすることもできる。
【0172】
その他の構成は、実施形態22と同様である。
【0173】
実施形態23の動力伝達装置123によれば、複数の対向面17a,18aを設けることによって静電容量形成部19が形成される箇所を増やすことができ、静電容量の大容量化を図ることができる。
【0174】
その他、実施形態22と同様の作用効果を奏する。
【0175】
(実施形態24)
図38に示されるように、実施形態24の動力伝達装置124は、第1導体17及び第2導体18の構造について、実施形態22の動力伝達装置122のものと相違している。
【0176】
動力伝達装置124において、第1導体17は、ロータ11自体によって構成されている。このため、第1導体17は、ロータ11との共用部分によって構成されている。第2導体18は、ロータ11を挟んで第1方向Xの両側に設けられている。2つの第2導体18は、回転機軸S1に設けられた回転数センサRとの共用部分によって構成されている。ロータ11の両面が、各第2導体18の対向面18aに向かい合う対向面17aになっている。
【0177】
その他の構成は、実施形態22と同様である。
【0178】
実施形態24の動力伝達装置124によれば、第1導体17をロータ11との共用部分によって構成し、第2導体18を回転数センサRとの共用部分によって構成することで、部品点数を削減できる。
【0179】
その他、実施形態22と同様の作用効果を奏する。
【0180】
(実施形態25)
図39に示されるように、実施形態25の動力伝達装置125は、第1導体17及び第2導体18の構造について、実施形態22の動力伝達装置122のものと相違している。
【0181】
動力伝達装置125において、第1導体17は、回転軸S2の軸周に設けられている第1ギアG1(図2を参照)によって構成されている。このため、第1導体17は、第1ギアG1との共用部分によって構成されている。第2導体18は、第1ギアG1を挟んで第1方向Xの両側に設けられている。第1ギアG1の両面が、各第2導体18の対向面18aに向かい合う対向面17aになっている。
【0182】
その他の構成は、実施形態22と同様である。
【0183】
実施形態25の動力伝達装置125によれば、第1導体17を第1ギアG1との共用部分によって構成することで、部品点数を削減できる。
【0184】
その他、実施形態22と同様の作用効果を奏する。
【0185】
(実施形態26)
図41に示されるように、実施形態26の動力伝達装置126は、接地機構14Hを有し、この接地機構14Hの構造が実施形態1の接地機構14(図3を参照)のものと相違している。
【0186】
接地機構14Hは、回転機軸S1の軸端部S1bとグランド10bとの間に設けられている。接地機構14Hは、導電性を有するブラシ14aと、ブラシ14aと軸端部S1bとの間に介装された導電性を有する弾性体であるバネ14bと、を有する。
【0187】
図41及び図42に示されるように、バネ14bは、導電性を有し且つ断面形状が非円形であり、第1方向Xに撓み変形可能な板バネである。このバネ14bは、回転機軸S1の軸端部S1bの端面に凹状に設けられた中空部S1cに嵌め込まれている。中空部S1cは、回転機軸S1と同心であり且つ回転機軸S1よりも小径の空間を形成している。バネ14bは、中空部S1cに嵌め込まれた状態では、回転機軸S1から第1方向Xの荷重を受けるため、回転機軸S1に確実に保持される。
【0188】
図41に示されるように、グランド10bは、ケース10aに軸端部S1bを覆うように設けられたカバーとして構成されている。このグランド10bは、導電性を有し、ブラシ14aを介してバネ14bに電気的に接続されている。
【0189】
ブラシ14aは、バネ14bに加締め固定されており、これによりバネ14bと一体化されたモジュールを形成している。このブラシ14aは、グランド10bに対して回転機軸S1の中心軸線M上で接する接点Cdを有する。このブラシ14aは、バネ14bによって接点Cdにおける接触圧が強まる方向に弾性付勢される。
【0190】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0191】
実施形態26の動力伝達装置126によれば、バネ14bを回転機軸S1の中空部S1cに嵌め込むことによって接地機構14Hに必要な配置スペースが少なくて済むため、装置を小型化できる。
【0192】
バネ14bとして、断面形状が非円形の板バネを用い、ブラシ14aに対する接触面積を増やすことで、低インダクタンス化が可能であり、これにより軸電圧の高周波成分を低減することができる。また、このような板バネは、ブラシ14aの摩耗量が比較的少なく、第1方向Xの押し付けストロークが比較的小さい構造において、一般的なコイルバネに置き換えて使用するのに有効である。
【0193】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0194】
(実施形態27)
図43に示されるように、実施形態27の動力伝達装置127は、接地機構14Iを有し、この接地機構14Iの構造が実施形態26の接地機構14Hのものと相違している。
【0195】
接地機構14Iにおいて、ブラシ14aは、ボルト部材BTによってグランド10bに分離可能に締結固定されている。このブラシ14aは、バネ14bに対して回転機軸S1の中心軸線M上で接する接点Ceを有する。このブラシ14aは、バネ14bによって接点Ceにおける接触圧が強まる方向に弾性付勢される。
【0196】
その他の構成は、実施形態26と同様である。
【0197】
実施形態27の動力伝達装置127によれば、接地機構14Hのブラシ14aをボルト部材BTによってグランド10bに締結固定することで、ブラシ14aをその摩耗に応じてグランド10bから外して交換することができる。これにより、接地機構14Hのメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0198】
その他、実施形態26と同様の作用効果を奏する。
【0199】
本発明は、上述の典型的な実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変形が考えられる。例えば、上述の各実施形態の特徴部分を適宜に組み合わせた変更例を実施することもできる。
【符号の説明】
【0200】
1…車両、2…車体、3…駆動輪、4…インバータ、10…回転機、10b…グランド、11…ロータ、12…ステータ、14,14A,14B,14C,14D,14E,14F,14G,14H,14I…接地機構、14a…ブラシ、14b…バネ(弾性体、第1弾性体)、14e…アース線、14g…バネ(第2弾性体)、15,21,22,23…ベアリング、15a…外輪、15b…内輪、15c…転動体、16,24,25…動力伝達部、17…第1導体、17a…対向面、18…第2導体、18a…対向面、19…静電容量形成部、20…減速機、101,102,103,104,105,106,107,108,109,110,111,112,113,114,115,116,117,118,119,120,121,122,123,124,125,126,127…車両用動力伝達装置、A…動力伝達経路、S1,S2,S3,S4…回転軸、S1…回転機軸、S4…駆動軸、G5…遊星ギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図30
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