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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 451
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020205630
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092746
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】324012246
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】岡戸 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】村松 風子
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120342(JP,A)
【文献】特開2012-192601(JP,A)
【文献】特開2013-136171(JP,A)
【文献】特開2005-028690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
2/165-2/20
2/21 -2/215
B41M 5/00
5/50 -5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体物の表面に沿って設けられる媒体であって、収縮または膨張可能な前記媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
制御装置と、
を備え、
前記媒体は、インクが吐出される印刷エリアを有し、前記立体物の表面形状に対応するように収縮または膨張されるように構成され、
前記制御装置は、
前記立体物の表面形状に対応するために予め設定された前記媒体の部分ごとの収縮・膨張率が記憶された記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記媒体の部分ごとの前記収縮・膨張率に基づいて、前記印刷エリアを複数の分割エリアに分割する分割部と、
前記収縮・膨張率に基づいて、収縮の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が少なくなり、膨張の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が多くなるように、前記分割エリアごとに単位面積当たりのインク吐出量である分割インク吐出量を決定する決定部と、
前記分割エリアごとの単位面積当たりのインク吐出量が、前記分割インク吐出量となるように、前記媒体の前記印刷エリアに前記インクヘッドからインクを吐出させる印刷部と、
を備え
前記インクヘッドは、
第1の色のインクを吐出する第1インクヘッドと、
前記第1の色とは異なる第2の色のインクを吐出する第2インクヘッドと、
を有し、
前記記憶部には、
前記収縮・膨張率が0%のときの単位面積当たりの前記第1の色のインクの吐出量である第1基準吐出量と、
前記収縮・膨張率が0%のときの単位面積当たりの前記第2の色のインクの吐出量である第2基準吐出量と、
前記分割エリアごとの前記収縮・膨張率に応じた、前記第1の色のインクにおける前記第1基準吐出量に対する第1補正値と、
前記分割エリアごとの前記収縮・膨張率に応じた、前記第2の色のインクにおける前記第2基準吐出量に対する第2補正値と、
が記憶され、
前記決定部は、前記第1基準吐出量と、前記分割エリアごとの前記収縮・膨張率に応じた前記第1補正値とに基づいて、前記分割エリアごとに前記第1の色のインクにおける前記分割インク吐出量を決定し、かつ、前記第2基準吐出量と、前記分割エリアごとの前記収縮・膨張率に応じた前記第2補正値とに基づいて、前記分割エリアごとに前記第2の色のインクにおける前記分割インク吐出量を決定し、
所定の前記収縮・膨張率に対する前記第1補正値と前記第2補正値は異なる値である、プリンタ。
【請求項2】
前記第1補正値および前記第2補正値は、前記収縮・膨張率において、収縮の割合が大きい程、0よりも大きく1以下の範囲で小さい値が設定され、かつ、膨張の割合が大きい程、1以上の範囲において大きい値が設定されるように構成され、
前記決定部は、前記第1基準吐出量と、前記分割エリアごとの前記収縮・膨張率に応じた前記第1補正値とを乗算することで、前記分割エリアごとに前記第1の色のインクにおける前記分割インク吐出量を決定し、前記第2基準吐出量と、前記分割エリアごとの前記収縮・膨張率に応じた前記第2補正値とを乗算することで、前記分割エリアごとに前記第2の色のインクにおける前記分割インク吐出量を決定する、請求項に記載されたプリンタ。
【請求項3】
立体物の表面に沿って設けられる媒体であって、収縮または膨張可能な前記媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
制御装置と、
を備え、
前記媒体は、インクが吐出される印刷エリアを有し、前記立体物の表面形状に対応するように収縮または膨張されるように構成され、
前記制御装置は、
前記立体物の表面形状に対応するために予め設定された前記媒体の部分ごとの収縮・膨張率が記憶された記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記媒体の部分ごとの前記収縮・膨張率に基づいて、前記印刷エリアを複数の分割エリアに分割する分割部と、
前記収縮・膨張率に基づいて、収縮の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が少なくなり、膨張の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が多くなるように、前記分割エリアごとに単位面積当たりのインク吐出量である分割インク吐出量を決定する決定部と、
前記分割エリアごとの単位面積当たりのインク吐出量が、前記分割インク吐出量となるように、前記媒体の前記印刷エリアに前記インクヘッドからインクを吐出させる印刷部と、
を備え、
前記媒体の前記印刷エリアは、
第1濃淡エリアと、
前記第1濃淡エリアよりも色が薄い第2濃淡エリアと、
を有し、
前記分割部は、前記第1濃淡エリアでは、前記収縮・膨張率が第1分割間隔で分割されるように、前記第1濃淡エリアを複数の前記分割エリアに分割し、前記第2濃淡エリアでは、前記収縮・膨張率が前記第1分割間隔よりも小さい第2分割間隔で分割されるように前記第2濃淡エリアを複数の前記分割エリアに分割する、プリンタ。
【請求項4】
立体物の表面に沿って設けられる媒体であって、収縮または膨張可能な前記媒体を支持する支持台と、
前記支持台に支持された前記媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
制御装置と、
を備え、
前記媒体は、インクが吐出される印刷エリアを有し、前記立体物の表面形状に対応するように収縮または膨張されるように構成され、
前記制御装置は、
前記立体物の表面形状に対応するために予め設定された前記媒体の部分ごとの収縮・膨張率が記憶された記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記媒体の部分ごとの前記収縮・膨張率に基づいて、前記印刷エリアを複数の分割エリアに分割する分割部と、
前記収縮・膨張率に基づいて、収縮の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が少なくなり、膨張の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が多くなるように、前記分割エリアごとに単位面積当たりのインク吐出量である分割インク吐出量を決定する決定部と、
前記分割エリアごとの単位面積当たりのインク吐出量が、前記分割インク吐出量となるように、前記媒体の前記印刷エリアに前記インクヘッドからインクを吐出させる印刷部と、
を備え、
前記媒体の前記印刷エリアは、
単位面積当たりの前記収縮・膨張率の上限から下限までの範囲が第1範囲である第1印刷エリアと、
単位面積当たりの前記収縮・膨張率の上限から下限までの範囲が、前記第1範囲よりも広い第2範囲である第2印刷エリアと、
を有し、
前記分割部は、前記第1印刷エリアでは、前記収縮・膨張率が第3分割間隔で分割されるように、前記第1印刷エリアを複数の前記分割エリアに分割し、前記第2印刷エリアでは、前記収縮・膨張率が前記第3分割間隔よりも小さい第4分割間隔で分割されるように前記第2印刷エリアを複数の前記分割エリアに分割する、プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、媒体に対して印刷を行うプリンタが開示されている。この種のプリンタは、媒体を支持するプラテンと、インクを吐出するインクヘッドとを備えている。プラテンに支持された媒体に向かって、インクヘッドからインクを吐出することで、媒体に対して印刷が行われる。
【0003】
この種のプリンタでは、様々な種類の媒体を対象に印刷を行うことが可能である。プリンタの印刷対象の媒体の種類として、例えば特許文献2には、熱収縮フィルムが開示されている。この熱収縮フィルムは、例えばペットボトルなどの容器の表面に貼り付けられるラベルとして使用される。熱収縮フィルムは、所定の温度以上の熱が付与されることで収縮するものである。例えば印刷後、熱収縮フィルムが容器の表面に沿った形状になるように、熱収縮フィルムを部分的に熱で収縮させる。このことで、容器の表面に沿って熱収縮フィルムを貼り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-196537号公報
【文献】特開2013-111766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の熱収縮フィルムを容器の表面に貼り付ける際、プリンタで熱収縮フィルムに印刷を行った後で、印刷された熱収縮フィルムに対して熱を付与して部分的に収縮させる。このとき、熱収縮フィルムは、部分的に収縮されているため、収縮した部分と、収縮していない部分とで色のムラが発生することがあった。また、熱収縮フィルムの収縮した部分であっても、収縮率が異なる部分で色のムラが発生することがあった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、収縮または膨張可能な媒体に対して印刷を行った後、媒体を収縮または膨張させた場合であっても、色のムラが発生し難いプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプリンタは、支持台と、インクヘッドと、制御装置とを備えている。前記支持台は、媒体を支持する。前記インクヘッドは、前記支持台に支持された前記媒体にインクを吐出する。前記媒体は、立体物の表面に沿って設けられる媒体であって、収縮または膨張可能なものである。前記媒体は、インクが吐出される印刷エリアを有し、前記立体物の表面形状に対応するように収縮または膨張されるように構成されている。前記制御装置は、記憶部と、分割部と、決定部と、印刷部とを備えている。前記記憶部には、前記立体物の表面形状に対応するために予め設定された前記媒体の部分ごとの収縮・膨張率が記憶されている。前記分割部は、前記記憶部に記憶された前記媒体の部分ごとの前記収縮・膨張率に基づいて、前記印刷エリアを複数の分割エリアに分割する。前記決定部は、前記収縮・膨張率に基づいて、収縮の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が少なくなり、膨張の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が多くなるように、前記分割エリアごとに単位面積当たりのインク吐出量である分割インク吐出量を決定する。前記印刷部は、前記分割エリアごとの単位面積当たりのインク吐出量が、前記分割インク吐出量となるように、前記媒体の前記印刷エリアに前記インクヘッドからインクを吐出させる。
【0008】
上記プリンタによれば、収縮・膨張率において、収縮の割合が大きい媒体の部分である程、媒体が収縮することで印刷部分も収縮するため、印刷部分におけるインクの色の濃淡が、ユーザが所望する濃淡よりも濃くなる。そのため、収縮の割合が大きい媒体の部分において、印刷時の単位面積当たりのインク吐出量を少なくすることで、媒体および印刷部分が収縮された後において、インクの色の濃淡を、ユーザが所望する濃淡に近づけることができる。収縮・膨張率において、膨張の割合が大きい媒体の部分である程、媒体が膨張することで印刷部分も膨張するため、印刷部分におけるインクの色の濃淡が、ユーザが所望する濃淡よりも薄くなる。そのため、膨張の割合が大きい媒体の部分において、印刷時の単位面積当たりのインク吐出量を多くすることで、媒体および印刷部分が膨張された後において、インクの色の濃淡を、ユーザが所望する濃淡に近づけることができる。よって、収縮または膨張可能な媒体に対して印刷を行った後に、媒体を収縮または膨張させた場合であっても、印刷部分の濃淡をユーザの所望する濃淡に近づけることができるため、色のムラが発生し難い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るプリンタの斜視図である。
図2】カバーが開いた状態のプリンタの正面図である。
図3】実施形態に係るプリンタのブロック図である。
図4】媒体が貼り付けられた立体物の一例を示す正面図である。
図5】熱で収縮する前の媒体を示す図である。
図6】熱で部分的に収縮される媒体に印刷を行う手順を示したフローチャートである。
図7】補正値テーブルを示す図である。
図8】他の実施形態における、熱で収縮される前の媒体を示す図である。
図9】他の実施形態における、媒体が貼り付けられた立体物の一例を示す正面図である。
図10】他の実施形態における補正値テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るプリンタの実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。
【0011】
図1図2は、それぞれ本実施形態に係るプリンタ10の斜視図、正面図である。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれプリンタ10の前、後、左、右、上、下を示している。また、符号X、Yは、それぞれ副走査方向、主走査方向を示している。例えば、主走査方向Yは左右方向であり、副走査方向Xは前後方向である。ただし、これら方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、プリンタ10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0012】
図2に示すように、プリンタ10は、媒体5にインクを吐出して、媒体5に対して印刷を行う装置である。なお、本実施形態では、プリンタ10は、インクジェット式のプリンタであるが、印刷の方式は特に限定されない。プリンタ10は、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタである。ただし、プリンタ10は、いわゆるロールtoロールタイプのプリンタであってもよい。
【0013】
図1に示すように、プリンタ10は、ケース11と、カバー12と、操作パネル13とを備えている。ケース11は、例えば直方体形状であり、内部空間を有している。当該内部空間において印刷が行われる。図2に示すように、ケース11の前部には開口15が形成されている。カバー12は、開口15を開閉自在にケース11に支持されている。カバー12は、後端を軸に回転可能に構成されている。図1に示すように、カバー12の前部および上部には、例えば透明のアクリル板によって形成された窓16が設けられている。
【0014】
操作パネル13は、ケース11に設けられている。操作パネル13は、ユーザが印刷に関する操作を行うパネルである。操作パネル13には、例えば印刷に関する情報が表示される表示画面13a、および、印刷に関する情報をユーザが設定するための入力ボタン13bが備えられている。
【0015】
次に、プリンタ10の内部構成について説明する。図2に示すように、プリンタ10は、ガイドレール18と、キャリッジ20と、インクヘッド22と、光照射装置26と、キャリッジ移動機構28(図3参照)とを備えている。
【0016】
ガイドレール18は、ケース11の内部空間においてケース11に固定されている。ガイドレール18は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ20は、ガイドレール18に摺動自在に係合している。キャリッジ20は、ガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動可能である。
【0017】
インクヘッド22は、キャリッジ20に設けられている。インクヘッド22の数は特に限定されないが、ここでは4つである。インクヘッド22は、後述する支持台40に支持された媒体5に向かってインクを吐出する。インクヘッド22は、支持台40よりも上方に配置されている。4つのインクヘッド22は、主走査方向Yに並んで配置されている。図示は省略するが、各インクヘッド22の底面には、インクを吐出する複数のノズルが形成されている。
【0018】
本実施形態では、インクヘッド22から吐出されるインクは、光(例えば紫外線や赤外線)が照射されると硬化が促進される光硬化性インクである。ただし、インクヘッド22から吐出されるインクの種類は特に限定されず、例えば溶剤または水性インクであってもよい。また、4つのインクヘッド22から吐出されるそれぞれのインクの色も特に限定されず、いわゆるプロセスカラーインクや、クリアインク、ホワイトインクなどの特色インクなどであってもよい。本実施形態では、インクヘッド22から吐出されるインクは、プロセスカラーインクである。以下の説明では、インクヘッド22は、シアンインクを吐出する第1インクヘッド22Cと、マゼンタインクを吐出する第2インクヘッド22Mと、イエローインクを吐出する第3インクヘッド22Yと、ブラックインクを吐出する第4インクヘッド22Kとを有している。ここでは、シアンインクが第1の色のインクの一例であり、マゼンタインクが第1の色とは異なる第2の色のインクの一例である。
【0019】
本実施形態では、インクヘッド22は、可撓性を有するインクチューブ(図示せず)を介して、ケース11内に収容されたインクカートリッジ23と連通している。インクカートリッジ23には、インクヘッド22から吐出される色のインクが収容されている。
【0020】
図2に示すように、光照射装置26は、インクヘッド22から吐出されたインクに光(例えば紫外線や赤外線)を照射する装置であり、キャリッジ20に設けられている。本実施形態では、光照射装置26は、キャリッジ20の左右の両側に設けられているが、キャリッジ20の左右の一方側のみに設けられていてもよい。光照射装置26は、支持台40に支持された媒体5に吐出されたインクに光を照射するように構成されている。
【0021】
図3に示すキャリッジ移動機構28は、キャリッジ20をガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動させる機構である。本実施形態では、キャリッジ移動機構28は、図示は省略するが、例えばガイドレール18の左右の両端部の周囲に設けられた左右のプーリと、左右のプーリに巻き掛けられたベルトと、一方のプーリに接続されたキャリッジモータとを備えている。ベルトには、キャリッジ20が固定されている。キャリッジモータが駆動することで、一方のプーリが回転し、左右のプーリの間でベルトが走行する。このことで、キャリッジ20がガイドレール18に沿って主走査方向Yに移動すると共に、インクヘッド22および光照射装置26も主走査方向Yに移動する。
【0022】
本実施形態では、図2に示すように、プリンタ10は、支持台40と、支持台移動機構41とを備えている。支持台40は、媒体5を支持する。言い換えると、支持台40上に媒体5が載置されている。支持台40は、ガイドレール18、キャリッジ20、インクヘッド22および光照射装置26よりも下方に配置されている。
【0023】
支持台移動機構41は、支持台40を副走査方向Xに移動させる機構である。支持台移動機構41は、図示は省略するが、例えば副走査方向Xに延びた一対のレールと、一対のレールに摺動自在に係合する摺動部材と、摺動部材に接続されたフィードモータとを備えている。摺動部材には、支持台40が載置されている。本実施形態では、フィードモータが駆動することで、摺動部材が一対のレールに沿って副走査方向Xに移動する。摺動部材の移動に伴い、支持台40が副走査方向Xに移動する。なお、本実施形態では、支持台移動機構41は、支持台40を昇降可能に構成されている。
【0024】
本実施形態では、図3に示すように、キャリッジ移動機構28および支持台移動機構41を総称して、移動機構45という。移動機構45は、インクヘッド22と支持台40とを相対的に主走査方向Yおよび副走査方向Xに移動させる機構である。移動機構45は、キャリッジ移動機構28と、支持台移動機構41とを有している。
【0025】
本実施形態では、プリンタ10は、制御装置50を備えている。制御装置50は、印刷に関する制御を行う。制御装置50の構成は特に限定されない。制御装置50は、例えばマイクロコンピュータである。制御装置50は、例えばI/Fと、CPUと、ROMと、RAMと、記憶装置と、を備えている。制御装置50は、ケース11の内部に設けられている。ただし、制御装置50は、ケース11の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置50は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0026】
制御装置50は、移動機構45に通信可能に、かつ、電気的に接続されている。詳しくは、制御装置50は、キャリッジ移動機構28および支持台移動機構41に通信可能に、かつ、電気的に接続されている。制御装置50は、キャリッジ移動機構28によるキャリッジ20の主走査方向Yへの移動を制御し、かつ、支持台移動機構41による支持台40の副走査方向Xへの移動と昇降を制御する。また、制御装置50は、インクヘッド22および光照射装置26に通信可能に、かつ、電気的に接続されている。制御装置50は、インクヘッド22によるインクの吐出のタイミングやインクの吐出量を制御し、かつ、光照射装置26による光の照射の制御を行う。
【0027】
以上、本実施形態に係るプリンタ10の構成について説明した。ところで、図4に示すように、印刷対象となる媒体5として、例えば所定の立体物8の表面に設けられる(例えば貼り付けられる)媒体5が存在する。この種の媒体5は、プリンタ10によって印刷された後、立体物8の表面の形状に沿って、熱で収縮される。ここでは、熱で収縮された媒体5の部分の印刷部分も収縮されるため、熱で収縮される前と比較して、媒体5の単位面積当たりのインクの吐出量が多くなる。その結果、熱で収縮された媒体5の部分の印刷部分では、熱で収縮される前と比較して、インクの色が濃くなる傾向にある。そのため、このように部分的に媒体5を熱で収縮させて使用される媒体5において、仮に印刷エリアAR10の全てに対して単位面積当たりのインクの吐出量を一律にすると、熱で収縮した後の印刷部分に濃淡ができる、すなわち色のムラができることがあった。そこで、本実施形態では、印刷後に媒体5を熱で収縮させた後であっても、媒体5に行われた印刷に色のムラができ難くすることを実現する。
【0028】
ここで、図4に示すように、熱で部分的に収縮された媒体5が貼り付けられる対象の立体物8は、表面に所定の形状を有するものである。言い換えると、立体物8は、表面に凹凸の形状を有する。なお、立体物8の具体的なものは特に限定されるものではない。立体物8として、例えばペットボトル、食品トレイ(例えばプラスチック製のトレイ)、袋(例えばアルミニウム製のパウチ状のレトルト袋)、ビン(例えばガラス製のビン)、容器(例えば化粧品の容器、洗剤などの生活用品の容器、コップなど)が挙げられる。なお、以下では、図4に示すように、立体物8の一例としてペットボトルを挙げて説明する。
【0029】
立体物8の表面に沿って設けられる媒体5は、収縮可能なものである。ここでは、媒体5は、熱が付与されることで収縮するものである。ここで、媒体5に付与される熱の温度は、媒体5に吐出されたインクが溶けない程度の温度であり、例えば60℃~120℃である。本実施形態では、媒体5は、いわゆる熱収縮フィルムである。媒体5を形成する材料として、例えばポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。本実施形態では、媒体5は、立体物8であるペットボトルの表面に貼り付けられるラベルとして機能する。
【0030】
本実施形態では、媒体5は、印刷エリアAR10を有している。印刷エリアAR10は、インクヘッド22からのインクが吐出されるエリアである。なお、本実施形態では、印刷エリアAR10は、矩形状のエリアであり、実際にインクが吐出されるエリアの周囲のインクが吐出されないエリアを含んでいてもよい。
【0031】
本実施形態では、熱によって収縮される媒体5を印刷するために、図3に示すように、プリンタ10の制御装置50は、記憶部52と、分割部54と、決定部56と、印刷部58とを備えている。制御装置50の各部52、54、56、58は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置50の各部52、54、56、58は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。本実施形態では、制御装置50の各部52、54、56、58は、ケース11の内部に設けられた基板などによって実現されている。ただし、制御装置50の各部52、54、56、58の一部または全部は、ケース11の外部に設置されたコンピュータによって実現されてもよい。なお、記憶部52と、分割部54と、決定部56と、印刷部58の具体的な制御などは後述する。
【0032】
次に、本実施形態に係るプリンタ10を使用して、熱で部分的に収縮される媒体5に印刷を行う手順について図6のフローチャートに沿って説明する。
【0033】
まず図6のステップS101では、図3の分割部54は、図4および図5に示すように、媒体5の印刷エリアAR10を、媒体5に対する収縮率R10(図7参照)に基づいて複数の分割エリアAR20に分割する。ここで、収縮率R10とは、熱で収縮される媒体5の割合である。本実施形態では、図4に示すように、媒体5は、立体物8の表面に形状に沿うように熱で収縮される。媒体5は、部分ごとに異なる収縮率R10を有している。
【0034】
本実施形態では、図3の記憶部52には、媒体5の部分ごとの収縮率R10が予め記憶されている。ここでは、記憶部52に記憶されている収縮率R10の間隔は、所定の間隔である。所定の間隔は、例えば10%である。すなわち、10%刻みの収縮率R10に対応した媒体5の部分ごとの収縮率R10が記憶部52に記憶されている。本実施形態では、記憶部52には、媒体5の部分ごとに、1の位を四捨五入した収縮率R10が記憶されている。なお、媒体5の部分ごとの収縮率R10は、媒体5を張り付ける対象となる立体物8の表面の形状によって、予め設定されるものである。そのため、媒体5に印刷される前において、媒体5の部分ごとの収縮率R10は、既に設定されており、媒体5の部分ごとの収縮率R10に関する情報は、記憶部52に予め記憶されている。
【0035】
図4のペットボトルを一例とする立体物8に貼り付けられる媒体5では、印刷エリアAR10は、収縮率R10が0%の分割エリアAR21と、収縮率R10が10%の分割エリアAR22と、収縮率R10が20%の分割エリアAR23とを有している。ここでは、立体物8であるペットボトルの周方向の長さが短い部分に貼り付けられる媒体5の部分の収縮率R10は、大きくなる。ここでは、分割エリアAR21、AR22、AR23の順に、貼り付けられる立体物8の周方向の長さが短くなっている。
【0036】
分割部54は、媒体5の印刷エリアAR10を、媒体5の部分ごとの収縮率R10を所定の間隔ごとに分割する。ここで、所定の間隔は、10%であり、分割部54は、媒体5の印刷エリアAR10を、3つの分割エリアAR21、AR22、AR23に分割する。なお、所定の間隔は、10%に限定されるものではなく、立体物8の表面の形状によって適宜決定されるものであってもよい。例えば立体物8の表面の凹凸の差が大きい場合には、所定の間隔を小さくし、立体物8の表面の凹凸の差が小さい場合や、平面的な形状の場合には、所定の間隔を大きくしてもよい。
【0037】
次に、図6のステップS103では、図3の決定部56は、分割部54によって分割された分割エリアAR20ごとに、図7に示すように、単位面積当たりのインク吐出量(以下、分割インク吐出量V20という。)を決定する。ここで、分割インク吐出量V20は、収縮率R10が小さい、すなわち0%に近い程、多い吐出量となり、収縮率R10が大きい、すなわち0%から遠い程、少ない吐出量となる。すなわち、媒体5の収縮率R10に基づいて、収縮の割合が小さい程、分割インク吐出量V20が多くなり、収縮の割合が大きい程、分割インク吐出量V20が少なくなる。本実施形態では、分割インク吐出量V20は、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどの全ての色のインクに対するインク吐出量のことである。
【0038】
なお、分割エリアAR21、AR22、AR23ごとの分割インク吐出量V20の決定方法は特に限定されない。本実施形態では、図3の記憶部52には、図7に示すような基準吐出量V10、および、補正値テーブルTB10の補正値C10が記憶されている。基準吐出量V10は、収縮率R10が0%のときの単位面積当たりのインク吐出量のことである。ここでは、基準吐出量V10は、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどの全ての色のインクに対する、収縮率R10が0%のときの単位面積当たりのインク吐出量である。各分割エリアAR20における分割インク吐出量V20は、基準吐出量V10に基づいて決定される。
【0039】
図7に示すように、補正値テーブルTB10は、収縮率R10と補正値C10とを関連付けたテーブルである。補正値テーブルTB10の収縮率R10は、分割エリアAR20で設定されている収縮率R10である。補正値C10は、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた値である。ここでは、10%刻み、すなわち所定の間隔の収縮率R10のうちの1つの収縮率R10に対して1つの補正値C10が関連付けられている。ここでは、補正値C10は、0よりも大きく1以下の範囲の値が設定される。収縮率R10が0%のときの補正値C10は1.00であり、収縮率R10が高くなる程、補正値C10が小さくなる、すなわち0に近づくように設定されている。
【0040】
決定部56は、基準吐出量V10と、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた補正値C10とに基づいて、分割エリアAR20ごとに分割インク吐出量V20を決定する。本実施形態では、決定部56は、基準吐出量V10と補正値C10とを乗算することで、分割エリアAR20ごとに分割インク吐出量V20を決定する。分割エリアAR20ごとの分割インク吐出量V20は、「基準吐出量V10×補正値C10」の数式によって算出される。ここでは、図7に示すように、例えば基準吐出量V10は、0.5mg/cmであるとする。収縮率R10が0%、10%、20%のときの補正値C10は、それぞれ1.00、0,77、0.60である。そのため、収縮率R10が0%である分割エリアAR21の分割インク吐出量V20は、0.5×1.00=0.500mg/cmとなる。収縮率R10が10%である分割エリアAR22の分割インク吐出量V20は、0.5×0.77=0.385mg/cmとなる。収縮率R10が20%である分割エリアAR23の分割インク吐出量V20は、0.5×0.60=0.300mg/cmとなる。
【0041】
ただし、分割インク吐出量V20は、基準吐出量V10と補正値C10とを乗算することで算出されなくてもよい。例えば、所定の数式が記憶部52に予め記憶されており、所定の数式に基準吐出量V10と補正値C10とを代入することで、分割インク吐出量V20が算出されてもよい。この所定の数式は、立体物8の形状に応じて、実験などによって得られる数式であってもよい。
【0042】
このように分割エリアAR20ごとに分割インク吐出量V20を決定した後、図6のステップS105では、図3の印刷部58は、支持台40に支持された媒体5の印刷エリアAR10に印刷を行う。例えば記憶部52には、図示しない印刷画像データが記憶されている。印刷部58は、上記印刷画像データに基づいた画像を印刷エリアAR10に印刷する。ここでは、印刷部58は、まずインクヘッド22を主走査方向Yへ移動させるようにキャリッジ移動機構28(図3参照)を制御する。インクヘッド22が主走査方向Yに移動している間において、印刷エリアAR10の上を通過するときに、印刷部58は、インクヘッド22から印刷エリアAR10に向かってインクを吐出させて、1ライン分の印刷を行う。1ライン分の印刷の後、印刷部58は、支持台40を副走査方向Xに所定の距離移動させるように支持台移動機構41(図3参照)を制御する。支持台40を副走査方向Xに移動させた後、次の1ライン分の印刷を行う。以下、1ライン分の印刷と、支持台40の副走査方向Xの移動とを繰り返し行うことで、印刷エリアAR10に印刷画像データに含まれる画像を印刷することができる。
【0043】
本実施形態では、分割エリアAR20ごとに単位面積当たりのインク吐出量を調整する。印刷部58は、分割エリアAR20ごとの単位面積当たりのインク吐出量が、決定部56で決定された分割インク吐出量V20(図7参照)になるように、インクヘッド22からインクを吐出させるように制御する。具体的には、図7に示すように、決定部56で決定された分割エリアAR21、AR22、AR23の分割インク吐出量V20は、それぞれ0.500mg/cm、0385mg/cm、0.300mg/cmである。そのため、印刷部58は、分割エリアAR21のインク吐出量が、0.500mg/cmとなるようにインクヘッド22からのインクの吐出量を制御する。同様に、印刷部58は、分割エリアAR22のインク吐出量が0.385mg/cmとなるようにインクヘッド22からのインクの吐出量を制御し、かつ、分割エリアAR23のインク吐出量が0.300mg/cmとなるようにインクヘッド22からのインクの吐出量を制御する。
【0044】
このように、媒体5の印刷エリアAR10の印刷が完了した後、立体物8の表面の形状に沿って媒体5を部分的に熱で収縮させる。そして、部分的に熱で収縮された後の媒体5を立体物8の表面に貼り付ける。
【0045】
以上、本実施形態では、図4に示すように、媒体5は、立体物8の表面に設けられる媒体であって、熱で収縮可能なものである。媒体5は、インクが吐出される印刷エリアAR10を有し、立体物8の表面形状に対応するように部分的に収縮されるように構成されている。図3に示すように、制御装置50は、記憶部52と、分割部54と、決定部56と、印刷部58とを備えている。記憶部52には、立体物8の表面形状に対応するために予め設定された媒体5の部分ごとの収縮率R10(図7参照)が記憶されている。分割部54は、記憶部52に記憶された媒体5の部分ごとの収縮率R10に基づいて、図5に示すように、印刷エリアAR10を複数の分割エリアAR20に分割する。決定部56は、図7に示すように、収縮率R10に基づいて、収縮の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が少なくなるように、分割エリアAR20ごとに単位面積当たりのインク吐出量である分割インク吐出量V20を決定する。印刷部58は、分割エリアAR20ごとの単位面積当たりのインク吐出量が、分割インク吐出量V20となるように、媒体5の印刷エリアAR10にインクヘッド22からインクを吐出させる。
【0046】
このことによって、媒体5に対する収縮率R10において、収縮の割合が大きい媒体5の部分である程、媒体5が収縮することで印刷部分も収縮するため、印刷部分におけるインクの色の濃淡が、ユーザが所望する濃淡(言い換えると、媒体5に印刷された印刷画像データにおける画像の濃淡)よりも濃くなる。そのため、本実施形態では、収縮の割合が大きい媒体5の部分において、印刷時の単位面積当たりのインク吐出量を少なくすることで、媒体5および印刷部分が収縮された後において、インクの色の濃淡を、ユーザが所望する濃淡に近づけることができる。よって、収縮可能な媒体5に対して印刷を行った後に、媒体5を部分的に収縮させた場合であっても、印刷部分の濃淡をユーザの所望する濃淡に近づけることができるため、色のムラが発生し難い。
【0047】
本実施形態では、図3の記憶部52には、図7に示すように、基準吐出量V10と、補正値C10とが記憶されている。基準吐出量V10は、収縮率R10が0%のときの単位面積当たりのインク吐出量である。補正値C10は、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた、基準吐出量V10に対する補正値である。決定部56は、基準吐出量V10と、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた補正値C10とに基づいて、分割エリアAR20ごとに分割インク吐出量V20を決定する。このことによって、基準吐出量V10を補正値C10で補正した値を分割インク吐出量V20に決定することができるため、基準吐出量V10を基準にして、分割エリアAR20ごとに分割インク吐出量V20を決定し易い。
【0048】
本実施形態では、図7に示すように、補正値C10は、収縮率R10において、収縮の割合が大きい程、0よりも大きく1以下の範囲で小さい値が設定されるように構成されている。決定部56は、基準吐出量V10と、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた補正値C10とを乗算することで、分割エリアAR20ごとに分割インク吐出量V20を決定する。このことによって、基準吐出量V10と補正値C10とを乗算するという簡単な方法で、収縮の割合が大きい分割エリアAR20では、分割インク吐出量V20を少なくし、収縮の割合が小さい分割エリアAR20では、分割インク吐出量V20を多くすることができる。
【0049】
<他の実施形態>
上記実施形態では、所定の間隔の収縮率R10(例えば10%の収縮率R10の間隔)で印刷エリアAR10が複数の分割エリアAR20に分割されていた。しかしながら、媒体5に印刷エリアAR10に印刷される画像の濃淡に応じて、分割エリアAR20に分割するための上記の収縮率R10の間隔が変更されてもよいし、媒体5が貼り付けられる立体物8の形状に応じて、上記の収縮率R10の間隔が変更されてもよい。
【0050】
図8に示すように、例えば媒体5Aの印刷エリアAR10に印刷された画像に所定の濃淡の差が生じている場合、濃淡が濃い媒体5Aの部分では、印刷エリアAR10の全体を一定のインク吐出量で画像を印刷した後で熱によって収縮したときであっても、濃淡の変化が目立ち難い。一方、濃淡が薄い媒体5Aの部分では、印刷エリアAR10の全体を一定のインク吐出量で画像を印刷した後で熱によって収縮したときには、濃淡の変化が目立ち易くなる。そこで、本実施形態では、濃淡が薄い媒体5Aの部分では、濃淡が濃い媒体5Aの部分に比べて、収縮率R10をより細分化し、より細かく分割エリアAR20に分割する。
【0051】
本実施形態では、図8に示すように、媒体5Aの印刷エリアAR10は、第1濃淡エリアAR31と、第1濃淡エリアAR31よりも色が薄い第2濃淡エリアAR32とを有している。ここでは、第2濃淡エリアAR32における平均の濃淡度合いは、第1濃淡エリアAR31における平均の濃淡度合いよりも薄い。
【0052】
ここでは、図3の分割部54は、第1濃淡エリアAR31では、収縮率R10が第1分割間隔で分割されるように、第1濃淡エリアAR31を複数の分割エリアAR20に分割する。分割部54は、第2濃淡エリアAR32では、収縮率R10が第2分割間隔で分割されるように、第2濃淡エリアAR32を複数の分割エリアAR20に分割する。ここで、第2分割間隔は、第1分割間隔よりも小さい。例えば第1分割間隔は、収縮率R10が10%の間隔であり、第2分割間隔は、収縮率R10が5%の間隔である。この場合、第1濃淡エリアAR31は、収縮率R10が10%刻みで分割エリアAR20に分割される。第2濃淡エリアAR32は、収縮率R10が5%刻みで分割エリアAR20に分割される。
【0053】
この実施形態の場合では、第2濃淡エリアAR32は、第1濃淡エリアAR31よりも色が薄いエリアであり、第1濃淡エリアAR31と比較して、収縮したときに濃淡の変化が目立ち易く、印刷の色のムラが顕著に現れ易い。そのため、第2濃淡エリアAR32では、第1濃淡エリアAR31と比較して、収縮率R10をより細かく分割するように、複数の分割エリアAR20に分割する。このことで、収縮したときに濃淡の変化が目立ち易い媒体5Aの部分であっても、分割インク吐出量V20を分割エリアAR20ごとに細かく調整することができるため、媒体5Aを収縮させた後において、色のムラを分かり難くすることができる。
【0054】
例えば図9のようなひょうたん型の立体物8Bのうち、立体物8Bの表面の凹凸の差が小さく、平面的である部分に貼り付けられる媒体5Bの部分では、印刷エリアAR10の全体を一定のインク吐出量で画像を印刷した後で熱によって収縮したときであっても、濃淡の変化が目立ち難い。一方、立体物8Bの表面の凹凸の差が大きい部分に貼り付けられる媒体5Bの部分では、印刷エリアAR10の全体を一定のインク吐出量で画像を印刷した後で熱によって収縮したとき、濃淡の変化が目立ち易い。そこで、本実施形態では、立体物8Bの表面の凹凸の差が大きい部分に貼り付けられる媒体5Bの部分では、収縮率R10をより細分化し、より細かく分割エリアAR20に分割する。
【0055】
本実施形態では、図9に示すように、媒体5Bの印刷エリアAR10は、第1印刷エリアAR41と、第2印刷エリアAR42とを有している。第1印刷エリアAR41において、単位面積当たりの収縮率R10の上限から下限までの範囲が第1範囲である。第2印刷エリアAR42において、単位面積当たりの収縮率R10の上限から下限までの範囲が第2範囲である。ここで、第2範囲は、第1範囲よりも広い。すなわち、第2印刷エリアAR42は、第1印刷エリアAR41と比べて、表面の凹凸の差が大きい立体物8Bの部分に貼り付けられる。
【0056】
本実施形態では、図3の分割部54は、第1印刷エリアAR41では、収縮率R10が第3分割間隔で分割されるように、第1印刷エリアAR41を複数の分割エリアAR20に分割する。分割部54は、第2印刷エリアAR42では、収縮率R10が第4分割間隔で分割されるように、第2印刷エリアAR42を複数の分割エリアAR20に分割する。ここで、第4分割間隔は、第3分割間隔よりも小さい。例えば第3分割間隔は、収縮率R10が10%の間隔であり、第4分割間隔は、収縮率R10が5%の間隔である。この場合、第1印刷エリアAR41は、収縮率R10が10%刻みで分割エリアAR20に分割される。第2印刷エリアAR42は、収縮率R10が5%刻みで分割エリアAR20に分割される。
【0057】
この実施形態の場合では、第2印刷エリアAR42は、第1印刷エリアAR41と比較して、凹凸の差が大きい立体物8Bの部分に貼り付けられるため、収縮したときに濃淡の変化が目立ち易く、印刷の色のムラが顕著に現れ易い。そのため、第2印刷エリアAR42では、第1印刷エリアAR41と比較して、収縮率R10をより細かく分割するように、複数の分割エリアAR20に分割する。このことで、収縮したときに濃淡の変化が目立ち易い媒体5Bの部分であっても、分割インク吐出量V20を分割エリアAR20ごとに細かく調整することができるため、媒体5Bを収縮させた後において、色のムラを分かり難くすることができる。
【0058】
上記実施形態では、分割エリアAR20ごとに、全ての色のインクに対して同じ分割インク吐出量V20が設定されていた。しかしながら、同じ分割エリアAR20において、インクの色ごとに分割インク吐出量V20が設定されていてもよい。すなわち、同じ分割エリアAR20において、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、および、ブラックインクのそれぞれに対して分割インク吐出量V20が決定されてもよい。
【0059】
図10は、他の実施形態における補正テーブルTB10Cを示す図である。この場合、図3の記憶部52に記憶されている基準吐出量V10は、図10に示すように、収縮率R10が0%のときの単位面積当たりのシアンインクの吐出量である第1基準吐出量V11と、収縮率R10が0%のときの単位面積当たりのマゼンタインクの吐出量である第2基準吐出量V12とを有している。更に、基準吐出量V10は、収縮率R10が0%のときの単位面積当たりのイエローインクの吐出量である第3基準吐出量V13と、収縮率R10が0%のときの単位面積当たりのブラックインクの吐出量である第4基準吐出量V14とを有している。
【0060】
本実施形態では、図10に示すように、収縮率R10ごとに、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクのそれぞれに対して補正値C10が設定されている。ここでは、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクの補正値を、それぞれ第1補正値C11、第2補正値C12、第3補正値C13、第4補正値C14とする。補正値C10は、第1補正値C11と、第2補正値C12と、第3補正値C13と、第4補正値C14とを有している。第1補正値C11、第2補正値C12、第3補正値C13、第4補正値C14は、それぞれ分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクにおける補正値である。また、第1補正値C11~第4補正値C14は、それぞれ第1基準吐出量V11~第4基準吐出量V14に対する補正値である。同じ収縮率R10において、第1補正値C11~第4補正値C14は、全てが同じ値であってもよいし、一部または全部が異なる値であってもよい。
【0061】
本実施形態では、図3の決定部56は、第1基準吐出量V11と、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた第1補正値C11とに基づいて、第1基準吐出量V11と第1補正値C11とを乗算することで、分割エリアAR20ごとにシアンインクにおける分割インク吐出量V20を決定し、かつ、第2基準吐出量V12と、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた第2補正値C12とに基づいて、第2基準吐出量V12と第2補正値C12とを乗算することで、分割エリアAR20ごとにマゼンタインクにおける分割インク吐出量V20を決定する。同様に、決定部56は、第3基準吐出量V13と、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた第3補正値C13とに基づいて、第3基準吐出量V13と第3補正値C13とを乗算することで、分割エリアAR20ごとにイエローインクにおける分割インク吐出量V20を決定し、かつ、第4基準吐出量V14と、分割エリアAR20ごとの収縮率R10に応じた第4補正値C14とに基づいて、第4基準吐出量V14と第4補正値C14とを乗算することで、分割エリアAR20ごとにブラックインクにおける分割インク吐出量V20を決定する。
【0062】
以上のように、本実施形態では、同じ分割エリアAR20であっても、インクの色ごとに補正値C10(第1補正値C11~第4補正値C14)が設定されており、インクの色ごとに分割インク吐出量V20を決定する。このことで、インクの色の特性に応じて、インクの色ごとに分割インク吐出量V20を調整することができるため、媒体5Bを収縮させた後において、色のムラがより分かり難くすることができる。
【0063】
上記各実施形態では、媒体5、5A、5B(以下、単に媒体5をいう。)は熱で収縮可能なものであった。しかしながら、媒体5は膨張可能なものであってもよい。例えば媒体5は熱が付与されると膨張するものであってもよい。この場合、上記各実施形態において、収縮は、膨張に置き換えられる。例えば収縮率R10は、膨張率R10に置き換えられる。この場合、媒体5は、インクが吐出される印刷エリアAR10を有し、立体物8の表面形状に対応するように膨張されるように構成されている。制御装置50の記憶部52は、立体物8の表面形状に対応するために予め設定された媒体5の部分ごとの膨張率R10が記憶されている。分割部54は、記憶部52に記憶された媒体5の部分ごとの膨張率R10に基づいて、印刷エリアAR10を複数の分割エリアAR20に分割する。決定部56は、膨張率R10に基づいて、膨張の割合が大きい程、単位面積当たりのインク吐出量が多くなるように、分割エリアAR20ごとに単位面積当たりの分割インク吐出量V20を決定する。本実施形態では、補正値C10は1以上の範囲であり、膨張率R10が大きい程、補正値C10は大きくなる。すなわち、膨張率R10が大きい程、媒体5の部分におけるインク吐出量は、多くなる。
【0064】
本実施形態であっても、膨張率R10において、膨張の割合が大きい媒体5の部分である程、媒体5が膨張することで印刷部分も膨張するため、印刷部分におけるインクの色の濃淡が、ユーザが所望する濃淡よりも薄くなる。そのため、膨張の割合が大きい媒体5の部分において、印刷時の単位面積当たりのインク吐出量を多くすることで、媒体5および印刷部分が膨張された後において、インクの色の濃淡を、ユーザが所望する濃淡に近づけることができる。よって、膨張可能な媒体5に対して印刷を行った後に、媒体5を膨張させた場合であっても、印刷部分の濃淡をユーザの所望する濃淡に近づけることができるため、色のムラが発生し難い。
【0065】
本実施形態では、補正値C10は、膨張率R10において、膨張の割合が大きい程、1以上の範囲において大きい値が設定されているように構成されている。決定部56は、基準吐出量V10と、分割エリアAR20ごとの膨張率R10に応じた補正値C10とに基づいて、基準吐出量V10と補正値C10とを乗算することで、分割エリアAR20ごとに分割インク吐出量V20を決定する。このことによって、基準吐出量V10と補正値C10とを乗算するという簡単な方法で、膨張の割合が大きい分割エリアAR20では、分割インク吐出量V20を多くし、膨張の割合が小さい分割エリアAR20では、分割インク吐出量V20を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0066】
5 媒体
8 立体物
22 インクヘッド
40 支持台
50 制御装置
52 記憶部
54 分割部
56 決定部
58 印刷部
AR10 印刷エリア
AR20 分割エリア
C10 補正値
R10 収縮率(膨張率)
V10 基準吐出量
V20 分割インク吐出量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10