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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】熱伝導性シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20250206BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20250206BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20250206BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20250206BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20250206BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20250206BHJP
   D06M 11/74 20060101ALI20250206BHJP
   D06M 15/256 20060101ALI20250206BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20250206BHJP
   H01L 21/683 20060101ALN20250206BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20250206BHJP
【FI】
H01L23/36 M
C08L101/00
C08L27/12
C08K3/01
C08K7/06
C08J5/04 CEW
D06M11/74
D06M15/256
C09K5/14 E
H01L21/68 R
D06M101:40
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020215249
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022100950
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390005050
【氏名又は名称】ダイキンファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】内田 暁人
(72)【発明者】
【氏名】栗原 和也
(72)【発明者】
【氏名】波濤 航
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-023664(JP,A)
【文献】特開2012-148236(JP,A)
【文献】特開2014-062158(JP,A)
【文献】特開2015-067737(JP,A)
【文献】特開2015-048414(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013268(WO,A1)
【文献】特開2016-164209(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194972(WO,A1)
【文献】特開2002-038033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00- 5/20
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
H01L21/68
B32B 1/00- 43/00
H01L23/34- 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空隙を備える樹脂シートと、
少なくとも前記空隙の内部に配置された含フッ素エラストマーと、
熱伝導性材料と、を備え、
前記含フッ素エラストマーは、さらに前記樹脂シートの少なくとも一方の主面の、少なくとも一部を覆うように配置されており、
厚みが、0.05mm以上0.5mm以下である、熱伝導性シート。
【請求項2】
前記熱伝導性材料は、粒子状の熱伝導性材料を含み、
前記粒子状の熱伝導性材料の少なくとも一部は、前記樹脂シートに担持されている、請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
前記樹脂シートは、耐熱温度150℃以上の樹脂材料を含む、請求項1または2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
前記樹脂シートは、繊維構造体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
前記熱伝導性材料は、繊維状の炭素材料を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
前記含フッ素エラストマーは、さらに、前記樹脂シートの一方の主面を覆うように配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項7】
前記含フッ素エラストマーは、さらに、前記樹脂シートの両方の主面を覆うように配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項8】
前記熱伝導性シートの任意の5点における厚みの標準偏差は、0.020以下である、、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項9】
前記樹脂シートは、フッ素樹脂を含む樹脂材料により形成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項10】
半導体製造装置に用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱伝導性シート。
【請求項11】
空隙を備える樹脂シートを準備する工程と、
前記樹脂シートの前記空隙に含フッ素エラストマーを保持させる工程と、
前記含フッ素エラストマーを保持する前記樹脂シートをプレス成形して熱伝導性シートを得る工程と、を備え、
前記樹脂シートおよび前記含フッ素エラストマーの少なくとも一方は、熱伝導性材料を有し、
前記含フッ素エラストマーは、前記樹脂シートの空隙内部、および、前記樹脂シートの少なくとも一方の主面の、少なくとも一部を覆うように配置され、
前記熱伝導性シートの厚みが、0.05mm以上0.5mm以下である、熱伝導性シートの製造方法。
【請求項12】
前記樹脂シートを準備する工程では、粒子状の前記熱伝導性材料を担持する前記樹脂シートが準備される、請求項11に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種装置や電子機器の内部で発生する熱を外部に効率的に放出するため、発熱体と放熱体との間に熱伝導性シートが配置される場合がある。近年の電子機器の高密度化および小型化による、機器内部の高温化に伴い、より耐熱性が高く、熱伝導性の高いシートが求められている。特許文献1、2および3には、高耐熱性を有する含フッ素エラストマーと、含フッ素エラストマー中に分散された熱伝導性フィラーとを備える熱伝導性シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-140056号公報
【文献】特開2014-61617号公報
【文献】特開2015-67737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱伝導性シートは、一般的に、発熱体や放熱体との密着性が高く、また、薄いほど好ましい。これらの場合、フーリエの法則に従って発熱体と放熱体との間の熱流量が増加し、熱伝達性も向上するためである。しかし、特許文献1、2および3に記載された組成で、厚みが均一で薄く、さらには大面積の熱伝導性シートを成型することは困難である。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、均一な厚みを有する熱伝導性シートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、空隙を備える樹脂シートと、少なくとも前記空隙の内部に配置された含フッ素エラストマーと、熱伝導性材料と、を備える、熱伝導性シートが提供される。
【0007】
本発明において、含フッ素エラストマーは、樹脂シートの空隙に保持されており、樹脂シートと一体になっている。そのため、含フッ素エラストマーを含むにもかかわらず、得られる熱伝導性シートは、均一な厚みを有する。これにより、熱伝導性シートと発熱体および/または放熱体との密着性が高まる。その結果、本発明に係る熱伝導性シートは、熱伝導性に加えて、優れた熱伝達性を発揮する。さらに、薄い熱伝導性シートを得ることもできる。
【0008】
熱伝導性とは、一つの物体内において、高温部から低温部に熱が移動する現象をいう。熱伝達性とは、二つ以上の物体間において、高温部から低温部に熱が移動する現象をいう。
【0009】
前記熱伝導性材料は、粒子状の熱伝導性材料を含んでいてよい。粒子状の前記熱伝導性材料の少なくとも一部は、前記樹脂シートに担持されていてよい。
【0010】
前記樹脂シートは、耐熱温度150℃以上の樹脂材料を含んでいてよい。
【0011】
前記樹脂シートは、繊維構造体であってよい。
【0012】
前記熱伝導性材料は、繊維状の炭素材料を含んでいてよい。
【0013】
前記含フッ素エラストマーは、さらに、前記樹脂シートの一方の主面を覆うように配置されてよく、両方の主面を覆うように配置されてよい。
【0014】
前記熱伝導性シートの厚みは、0.05mm以上1.0mm以下であってよい。
【0015】
前記熱伝導性シートは、半導体製造装置に好適に用いられる。
【0016】
また、本発明によれば、空隙を備える樹脂シートを準備する工程と、前記樹脂シートの前記空隙にフッ素エラストマーを保持させる工程と、前記含フッ素エラストマーが保持された前記樹脂シートをプレス成形する工程と、を備え、樹脂シートおよび前記含フッ素エラストマーの少なくとも一方は、熱伝導性材料を有する、熱伝導性シートの製造方法が提供される。
【0017】
本発明において、空隙を備える樹脂シートが用いられる。そのため、含フッ素エラストマーはその空隙に保持されて、樹脂シートと一体化される。よって、均一な厚みを有する熱伝導性シートが得られる。
【0018】
前記樹脂シートを準備する工程では、粒子状の前記熱伝導性材料を担持する樹脂シートが準備されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、均一な厚みを有する熱伝導性シートおよびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る熱伝導性シートを模式的に示す断面図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る熱伝導性シートを模式的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る熱伝導性シートの一部を拡大して示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る熱伝導性シートの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
含フッ素エラストマーは、高耐熱性を有するため、熱伝導性シートの材料として好適である。一方で、含フッ素エラストマーは高い溶融粘度を有しているため、溶融していても広がり難い。よって、含フッ素エラストマーを、均一な厚みのシートに成形することは困難である。熱伝導性シートの厚みが不均一であると、熱伝導性シートと発熱体および/または放熱体との密着性は低下し易く、優れた熱伝達性が得られ難い。
【0022】
さらに、含フッ素エラストマーは、シート状に成形された後、加熱により加硫される。加熱後、冷却される際、シートは収縮して、変形(例えば、湾曲)する場合がある。シートの変形によっても、シートと発熱体および/または放熱体との密着性は低下する。
【0023】
熱伝達性の指標である熱流量Qは、フーリエの法則に従って、以下の式により表わされる。熱流量Qが大きいほど、熱伝達性に優れる。
Q=k×A×ΔT/d
(式中、kは熱伝導性シートの熱伝導率(W/m・K)、Aは熱伝導性シートの接触面積(m)、ΔTは温度差(K)、dは熱伝導性シートの厚み(m)である。)
【0024】
上記式からわかるように、熱伝達性は、熱伝導性シートと発熱体および/または放熱体との接触面積、すなわち両者の密着性に大きく影響される。熱伝導性シートの密着性が高くなるほど、熱伝達性は向上する。さらに、熱伝導性シートの厚みdが小さくなるほど、熱伝達性は向上する。
【0025】
本実施形態では、含フッ素エラストマーとともに、空隙を有する樹脂シートが用いられる。樹脂シートの空隙に含フッ素エラストマーを配置することにより、含フッ素エラストマーは、樹脂シートと一体化する。その結果、熱伝導性シートの厚みが均一になる。均一な厚みの熱伝導性シートは、発熱体および/または放熱体との密着性に優れるため、優れた熱伝達性を有する。
【0026】
本実施形態に係る熱伝導性シートの任意の5点における厚みの標準偏差は、例えば、0.020以下になり得る。上記標準偏差は、0.015以下が好ましい。任意の5点は、互いに3cm以上離間するように設定される。熱伝導性シートの厚みは、デジタルダイヤルゲージ(例えば、株式会社ミツトヨ製、デジマチックインジケーター)により測定できる。樹脂シートの厚みも同様に測定できる。
【0027】
含フッ素エラストマーは樹脂シートと一体化するため、樹脂シートの厚みに応じて、様々な厚みの熱伝導性シートを得ることができる。例えば、0.3mm以下の薄い熱伝導性シートを得ることもできる。上記フーリエの法則によれば、熱伝導性シートが薄いほど、熱伝達性は向上する。さらに、大面積の熱伝導性シートを得ることも可能である。熱伝導性シートの面積が大きくなるほど、発熱体および/または放熱体との接触面積も大きくなり得る。本実施形態によれば、例えば、500mm四方で厚み0.1mm前後の、薄く大判でさらに均一な熱伝導性シートを得ることができる。
【0028】
樹脂シートは、また、熱伝導性シートの形状を規制する。そのため、熱伝導性シートの変形が抑制される。加えて、樹脂シートによって、熱伝導性シートの熱膨張が抑制され易くなる。さらには、樹脂シートによって、熱伝導性シートの耐久性も向上する。
【0029】
[熱伝導性シート]
本実施形態に係る熱伝導性シートは、空隙を備える樹脂シートと、少なくとも当該空隙の内部に配置された含フッ素エラストマーと、熱伝導性材料と、を備える。
【0030】
熱伝導性シートの熱伝導率は特に限定されず、用途等に応じて適宜設定すればよい。熱伝導性シートの熱伝導率は、例えば、0.15W/m・K以上であってよく、0.20W/m・K以上が好ましく、0.25W/m・K以上がより好ましい。熱伝導性シートの熱伝導率は、熱拡散率と比熱と密度とを乗じることにより算出できる。熱伝導性シートの熱拡散率は、例えば、レーザーフラッシュ法により測定される。熱伝導性シートの比熱は、例えば、示差走査熱量分析法(DSC)により求められる。熱伝導性シートの密度は、例えば、アルキメデス法により求められる。
【0031】
JIS K 7120 熱重量測定方法(TG法)に準じて測定される、熱伝導シートの質量が1%変化するときの温度(以下、TG法における耐熱温度と称する場合がある。)は、300℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましい。これにより、熱伝導性シートを備える各種装置が長時間にわたり連続使用される場合でも、熱伝導性の低下が抑制され易くなる。
【0032】
熱伝導性シートの厚みは特に限定されず、用途等に応じて適宜設定される。熱伝導性シートの厚みは、例えば、1.0mm以下であってよく、0.5mm以下であってよい。熱伝導性シートの厚みは、例えば、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。熱伝導性シートの厚みは、0.05mm以上1.0mm以下が好ましい。熱伝導性シートの厚みは、試料の任意の5点における厚さの平均値である。任意の5点は、それぞれ3cm以上離間させることが望ましい。
【0033】
熱伝導性シートの大きさは特に限定されず、用途等に応じて適宜設定される。熱伝導性シートの短径あるいは直径は、100mm以上であってよい。
【0034】
熱伝導性シートの表面の硬度が低いほど、熱伝導性シートの密着性は向上し易い。密着性が高いほど、熱伝導性シートの熱伝達性は向上しやすい。ISO 14577に準拠して測定されるナノインデンテーション法による熱伝導性シートの表面のマルテンス硬度は、0.1MPa以上20MPa以下が好ましい。表面のマルテンス硬度は、圧子を、熱伝導性シートの表面から10mNの荷重で押し込んで測定される。
【0035】
熱伝導性シートの導電率は特に限定されず、用途等に応じて適宜設定される。導電性の熱伝導性シートの20℃における導電率は、例えば、1.00×10-6S/m以上であってよく、1.00×10-3S/m以上が好ましく、1.00×10-1S/m以上がより好ましい。導電率は、1.00×10-4S/m未満の場合はJIS K 6911に準じて測定され、また1.00×10-4S/m以上の場合はJIS K 7194に準じて測定される電気抵抗率から算出される。
【0036】
熱伝導性シートは、空隙を有していてもよい。熱伝導性シートの空隙は、樹脂シートの空隙および/または含フッ素エラストマーの空孔に由来する。ただし、シール性および熱伝導性の観点から、熱伝導性シートの空隙率は小さいことが望ましい。
【0037】
複数の熱伝導性シートを積層し、これを熱伝導性シートとして使用してもよい。複数の熱伝導性シートの構成は同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、導電性の熱伝導性シートと、絶縁性の熱伝導性シートとを積層してもよい。
【0038】
本実施形態に係る熱伝導性シートは熱伝達性および耐熱性に優れるため、高温になり得る各種装置や電子機器に用いることができる。特に、薄く大判な熱伝導性シートは、半導体製造装置に適している。半導体製造装置としては、例えば、基板を個片化するダイサー、ウエハエッチング装置、ウエハ洗浄装置、ウエハ乾燥装置が挙げられる。熱伝導性シートは、具体的には、基板を静電力で吸着保持する静電チャック等の発熱体と放熱体との間に好適に配置される。
【0039】
(樹脂シート)
樹脂シートは、複数の空隙(気孔)を有する。複数の空隙は連続していてもよいし、それぞれ独立していてもよい。含フッ素エラストマーが保持され易い点で、複数の空隙は連続していることが望ましい。
【0040】
樹脂シートは、熱伝導性シートに1枚あるいは2枚以上配置される。複数の樹脂シートは、同種であってよく、異種であってよい。
【0041】
樹脂シートの空隙率は特に限定されない。熱伝導性シートが十分な量の含フッ素エラストマーを保持できる点で、樹脂シートの空隙率は、例えば、30%以上であってよく、40%以上が好ましい。樹脂シートの空隙率は、例えば、95%以下であってよく、90%以下が好ましい。
【0042】
樹脂シートの空隙率は、以下の式により算出できる。
空隙率(%)=100(%)×{1-樹脂シートの質量G(g)/(樹脂シートの見かけの体積V(cm)×樹脂シートを構成する材料の密度ρ(g/cm))}
【0043】
樹脂シートの厚みは特に限定されず、用途等に応じて適宜設定される。樹脂シートの厚みは、例えば、1.0mm以下であってよく、0.5mm以下であってよい。強度の観点から、樹脂シートの厚みは、0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。
【0044】
樹脂シートとしては、例えば、樹脂を含む材料により形成される多孔質体、発泡体および繊維構造体が挙げられる。多孔質体は、相分離法、延伸法、エッチング法などにより得られる。なかでも、空隙率の制御が比較的容易である点で、繊維構造体が好ましい。加えて、繊維構造体には、各種表面処理(例えば、導電処理、制電処理等)を容易に施すことができる。繊維構造体としては、例えば、不織布、織物および編物が挙げられる。なかでも、不織布が好ましい。
【0045】
繊維構造体の単位面積当たりの質量は特に限定されない。繊維構造体の単位面積当たりの質量は、例えば、20g/m以上600g/m以下であってよい。繊維構造体を構成する繊維の太さは特に限定されない。繊維構造体を構成する繊維の周方向に沿った断面の直径は、例えば、10μm以上200μm以下であってよい。
【0046】
樹脂シートの材料は、樹脂と、必要に応じて種々の添加剤とを含む。樹脂シートの材料は、さらに熱伝導性材料を含んでいてもよい。樹脂は、樹脂シートの材料の50質量%以上であってよく、70質量%以上であってよく、80質量%以上であってよい。
【0047】
樹脂シートは、耐熱性の観点から、耐熱温度150℃以上の樹脂材料を含むことが好ましい。このような樹脂材料は、いわゆるスーパーエンジニアリングプラスチックとして知られている。樹脂材料の耐熱温度は、200℃以上が好ましい。耐熱温度は、例えば、UL746B規格に準じて測定される数値である。UL746B規格において、耐熱温度は、10万時間で一定の温度で大気中に暴露したときに、初期の物性値が半減する温度である。
【0048】
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミドおよび液晶ポリマーが挙げられる。なかでも、耐熱性および耐ラジカル性に優れる点で、フッ素樹脂が好ましい。
【0049】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、パーフルオロエチレン-プロペン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)およびエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が挙げられる。なかでも、PTFE、PFAおよびFEP等の完全にフッ素化されたパーフルオロ樹脂が好ましい。パーフルオロ樹脂は、耐熱性に特に優れている。パーフルオロ樹脂を使用することにより、例えば200℃以上、さらには300℃以上の高温下でも使用可能な熱伝導性シートを、容易に得ることができる。
【0050】
(含フッ素エラストマー)
含フッ素エラストマーは、熱伝導性シートの耐熱性に寄与する。含フッ素エラストマーの耐熱性に関して、JIS K 6262に準じて実施される圧縮永久ひずみ試験において、含フッ素エラストマーの圧縮永久ひずみが80%になるときの温度(以下、圧縮永久ひずみ試験における耐熱温度と称する場合がある。)は250℃以上が好ましく、280℃以上がより好ましい。含フッ素エラストマーの耐熱性に関して、JIS K 7120に準じて測定される熱重量測定方法(TG法)において、含フッ素エラストマーの重量が1%変化するときの温度(以下、TG法における耐熱温度と称する場合がある。)は380℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましい。これにより、例えば200℃以上、さらには300℃以上の高温下でも使用可能な熱伝導性シートを、容易に得ることができる。
【0051】
含フッ素エラストマーは、少なくとも樹脂シートの空隙内部に配置されている。含フッ素エラストマーは、上記空隙の少なくとも一部を埋めるように配置されていればよく、上記空隙の全部を埋めていてもよい。
【0052】
含フッ素エラストマーは、樹脂シートの空隙内部に加えて、樹脂シートの少なくとも一方の主面の、少なくとも一部を覆うように配置されていてもよい。これにより、熱伝導性シートの当該主面の硬度が、柔軟性のある含フッ素エラストマーと同等になって、熱伝導性シートの内部の硬度よりも低くなるため、密着性が向上し易くなる。
【0053】
なかでも、含フッ素エラストマーは、樹脂シートの一方の主面全体を覆うように配置されていることが好ましい。言い換えれば、熱伝導性シートの一方の主面側には、含フッ素エラストマーを含む一方、樹脂シートを含まないエラストマー領域が配置されていることが好ましい。この場合、熱伝導性シートの一方の主面側からは、樹脂シートは露出していない。
【0054】
上記の場合、熱伝導性シートの他方の主面側からは、樹脂シートが露出していてもよい。あるいは、当該他方の主面は、使用時に、熱伝導性シートの他方の主面側から樹脂シートが露出する程度に、含フッ素エラストマーによって覆われていてもよい。これにより、高温環境下での使用中に含フッ素エラストマーが軟化して、発熱体および/または放熱体に固着することが抑制される。よって、熱伝導性シートの剥離性が向上して、熱伝導性シートをスムーズに、かつ残留物の発生を抑制しながら除去することが可能になる。特に、半導体分野において、半導体製造装置を半導体の汚染源にしないことは重要である。そのため、残留物を生じ難い熱伝導性シートは、半導体製造装置の用途に適している。
【0055】
エラストマー領域は、熱伝導性シートの両方の主面側に配置されていてもよい。この場合、熱伝導性シートの両方の主面の硬度が、柔軟性のある含フッ素エラストマーと同等になって、熱伝導性シートの内部の硬度よりも低くなる。よって、熱伝導性シートと発熱体および放熱体双方との密着性が向上して、さらなる熱伝達性の向上が期待できる。
【0056】
エラストマー領域の厚みは特に限定されず、エラストマー領域が配置されている主面側から樹脂シートが露出しない程度、あるいは、使用時に、熱伝導性シートの他方の主面側から樹脂シートが露出しない程度であればよい。エラストマー領域の厚みは、例えば、熱伝導性シート全体の厚みの1/20以上3/4以下程度であればよく、1/10以上1/2以下が好ましい。具体的には、エラストマー領域の厚みは10μm以上200μm以下であればよく、20μm以上150μm以下が好ましい。熱伝導性シートの両方の主面側に配置されたエラストマー領域の厚みは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0057】
熱伝導性シートの少なくとも一方の主面に、10μm以上の一定の厚みを有し、含フッ素エラストマーを含む一方、樹脂シートを含まない領域が形成されている場合、含フッ素エラストマーは、樹脂シートの少なくとも一方の主面を覆うように配置されているとみなしてよい。
【0058】
エラストマー領域の厚みは、熱伝導性シートの厚み方向の断面から求められる。まず、上記断面の任意の点を通り、熱伝導性シートの厚み方向に沿った直線を引く。この直線のうち、樹脂シートから熱伝導性シートの主面までの最短の線分の長さを測定する。この線分の長さが、エラストマー領域の厚みである。
【0059】
エラストマー領域は、さらに熱伝導性材料を含むことが好ましい。これにより、熱伝導性はより向上する。
【0060】
熱伝導性シートにおいて、含フッ素エラストマーは、架橋していてもよいし、架橋していなくてもよい。機械的強度の観点から、含フッ素エラストマーは、熱伝導性シートにおいて架橋していることが好ましい。含フッ素エラストマーは、内部に空孔を有していてもよい。
【0061】
含フッ素エラストマーの量は特に限定されない。熱伝導性シートに占める含フッ素エラストマーの割合は、20質量%以上であってよく、40質量%以上が好ましい。含フッ素エラストマーの割合は、80質量%以下であってよく、60質量%以下が好ましい。
【0062】
含フッ素エラストマーは特に限定されない。含フッ素エラストマーとしては、例えば、特許第6463474号公報に記載された含フッ素エラストマーが挙げられる。
【0063】
含フッ素エラストマーは、部分フッ素化エラストマーであってよく、パーフルオロエラストマーであってよい。なかでも、耐熱性の観点から、パーフルオロエラストマーが好ましい。パーフルオロエラストマーは、さらにシアノ基(-CN)を含有していてもよい。
【0064】
部分フッ素化エラストマーとしては、例えば、ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴムが挙げられる。
【0065】
パーフルオロエラストマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)を原料モノマーとして含むパーフルオロエラストマーが挙げられる。
【0066】
(熱伝導性材料)
熱伝導性材料は、熱伝導性シートに熱伝導性を付与する。熱伝導性材料の熱伝導率は、特に限定されない。熱伝導性材料の熱伝導率は、熱伝導性シートの熱伝導率が例えば0.15W/m・K以上になるような値であればよい。放熱性の点で、熱伝導性材料の熱伝導率は10W/m・K以上が好ましく、50W/m・K以上がより好ましい。
【0067】
熱伝導性材料の含有量は特に限定されない。熱伝導性の観点から、熱伝導性材料の総量は、熱伝導性シートの0.1質量%以上であってよく、1質量%以上が好ましい。密着性の観点から、熱伝導性材料の総量は、熱伝導性シートの50質量%以下であってよく、30質量%以下が好ましい。
【0068】
熱伝導性材料の形態は特に限定されない。例えば、熱伝導性材料は、樹脂シートの表面を少なくとも部分的に(好ましくは全部を)被覆する被膜であってもよいし、粒子状であってもよい。なかでも、熱伝導性シートの硬度上昇が抑制され易い点で、熱伝導性材料は、粒子状の熱伝導性材料(以下、熱伝導性フィラーと称す。)を含むことが好ましい。
【0069】
熱伝導性フィラーは、樹脂シートに担持されていてよい。樹脂シートは熱伝導性シートの骨格であるため、これに熱伝導性フィラーを担持させると、少量で伝熱の経路が形成され易くなる。上記の通り、半導体製造装置を半導体の汚染源にしないことは重要である。そのため、熱伝導性材料の使用量が低減された熱伝導性シートは、半導体製造装置の用途に適している。熱伝導性フィラーは、含フッ素エラストマー中に分散されていてもよい。この場合、多くの熱伝導性フィラーを分散させることができるため、熱伝導性が向上し易い。
【0070】
熱伝導性フィラーが樹脂シートに担持されている態様は、特に限定されない。熱伝導性材料は、樹脂シートに対して外添されていてもよく、内添されていてもよい。より詳細には、樹脂シートを形成する材料(代表的には樹脂材料)の表面に熱伝導性フィラーが付着していてもよく、樹脂シートを形成する材料の内部に熱伝導性フィラーが含有されていてもよく、その双方であってもよい。樹脂シートを形成する材料に熱伝導性フィラーを添加した後、樹脂シートに成形することにより、熱伝導性フィラーを当該材料の内部に含有させることができる。なかでも、樹脂シートを形成する材料の表面に熱伝導性フィラーが付着していることが好ましい。これにより、熱伝導性シートの熱伝導性および導電性が高くなり易い。
【0071】
熱伝導性フィラーは、樹脂シートに担持されているとともに、含フッ素エラストマー中に分散されていてもよい。この場合、熱伝導性フィラーの総量を抑制しながら、熱伝導性を向上することができる。
【0072】
熱伝導性フィラーの材質は特に限定されない。熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、金属、セラミックス、炭素材料が挙げられる。熱伝導性フィラーは、用途等に応じて適宜選択される。熱伝導性とともに導電性が要求される場合、例えば、金属および/または導電性の炭素材料により形成される熱伝導性フィラーが選択される。熱伝導性とともに絶縁性が要求される場合、例えば、セラミックスにより形成される熱伝導性フィラーが選択される。
【0073】
金属としては、例えば、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄およびこれらの合金が挙げられる。セラミックスは、例えば、金属元素、半金属元素および非金属元素の酸化物、炭化物、窒化物およびホウ化物である。具体的には、セラミックスとしては、結晶性シリカ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭化チタン、酸化チタン等が挙げられる。導電性の炭素材料としては、例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイル、カーボンナノツイスト、カーボンナノホーン、フラーレン、グラフェン、ダイヤモンド、グラファイト、カーボンブラックが挙げられる。熱伝導性フィラーは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0074】
熱伝導性フィラーの個々の形状は、全体として「粒子状」である限り、特に限定されない。本発明において「粒子状」とは、複数の固体(「粒子」と解される)の集合体を意味し、個々の粒子は互いに接触していても離れていてもよい。
【0075】
熱伝導性フィラーは、例えば、球状、繊維状、鱗片状である。なかでも、繊維状の熱伝導性フィラーが好ましい。繊維状の熱伝導性フィラーはまた、少量で熱伝導性を向上させ易い。熱伝導性フィラーが少量であると、熱伝導性シートからの脱落が抑制され易くなる。そのため、繊維状の熱伝導性フィラーは、特に半導体の製造装置に適している。含フッ素エラストマー中に分散させ易い点で、球状の熱伝導性フィラーが好ましい。球状の熱伝導性フィラーは、1以上、2未満のアスペクト比を有する。繊維状あるいは鱗片状の熱伝導性フィラーは、例えば、2以上、好ましくは30以上のアスペクト比を有する。
【0076】
繊維状の熱伝導性フィラーの平均長さは特に限定されない。繊維状の熱伝導性フィラーの長さは、例えば、1μm以上1000μm以下であってよく、5μm以上600μm以下が好ましく、50μm以上600μm以下がより好ましい。繊維状の熱伝導性フィラーの直径は特に限定されない。繊維状の熱伝導性フィラーの周方向に沿った断面の直径は、例えば、2nm以上150nm以下であってよく、5nm以上80nm以下が好ましい。繊維状の熱伝導性フィラーの長さおよび直径は、走査型電子顕微鏡(SEMあるいはFE-SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)により測定された、20個のサンプルの平均値である。
【0077】
繊維状の熱伝導性フィラーとしては、繊維状の炭素材料が好ましい。繊維状の炭素材料としては、例えば、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイル、カーボンナノツイスト、カーボンナノホーンが挙げられる。
【0078】
なかでも、カーボンナノチューブ(CNT)が好ましい。CNTとしては、単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ:SWNT)、2層カーボンナノチューブ(ダブルウォールカーボンナノチューブ:DWNT)または多層カーボンナノチューブ(MWNT:マルチウォールカーボンナノチューブ)であってよい。
【0079】
CNTは、従来の製造方法によって製造できる。製造方法としては、例えば、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザ蒸発法、CVD法などの気相成長法;気相流動法;一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco法;オイルファーネス法等が挙げられる。
【0080】
球状の熱伝導性フィラーの平均粒子径は特に限定されない。球状の熱伝導性フィラーの平均粒子径は、例えば、10nm以上1000nm以下であってよく、20nm以上300nm以下が好ましい。平均粒子径は、レーザ回折・散乱方式の粒度分布測定装置を用いた体積基準の粒度分布における、50%平均粒子径(D50)である。
【0081】
球状の熱伝導性フィラーとしては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが挙げられる。
【0082】
樹脂シートに担持される熱伝導性フィラーの量は、樹脂シートの0.01質量%以上であってよく、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。樹脂シートに担持される熱伝導性フィラーの量は、樹脂シートの50質量%以下であってよく、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0083】
含フッ素エラストマー中に分散される熱伝導性フィラーの量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、例えば、1質量部以上であってよく、2質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。含フッ素エラストマー中に分散される熱伝導性フィラーの量は、含フッ素エラストマー100質量部に対して、150質量部以下であってよく、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0084】
図1は、一実施形態に係る熱伝導性シートを模式的に示す断面図である。図2は、他の実施形態に係る熱伝導性シートを模式的に示す断面図である。図3は、一実施形態に係る熱伝導性シートの一部を拡大して示す断面図である。
【0085】
熱伝導性シート10Aおよび10Bはそれぞれ、空隙を備える樹脂シート11と、当該空隙の内部に配置された含フッ素エラストマー12と、熱伝導性材料(図示する態様では熱伝導性フィラー)13と、を備える。樹脂シート11は、複数の繊維111から構成される不織布である。熱伝導性材料(熱伝導性フィラー)13は、カーボンナノチューブ131とカーボンブラック132とを含む。カーボンナノチューブ131は、繊維111に担持されている。カーボンブラック132は、含フッ素エラストマー12中に分散している。
【0086】
図1の熱伝導性シート10Aの一方の主面10X側には、エラストマー領域10aが配置されている。エラストマー領域10aは、樹脂シート11の主面10Xを覆うように配置される含フッ素エラストマー12を含む一方、樹脂シート11を含まない。エラストマー領域10aは、熱伝導性材料を含んでいてもよい。エラストマー領域10aの厚みtxは、例えば、熱伝導性シート全体の厚みの1/5程度である。
【0087】
図2の熱伝導性シート10Bは、両方の主面10Xおよび10Y側にエラストマー領域10aが配置されていること以外、熱伝導性シート10Aと同様の構成を有する。各エラストマー領域10aの厚みtxおよびtyはそれぞれ、例えば、熱伝導性シート全体の厚みの1/6程度である。厚みtxおよびtyは、それぞれ同程度であってよく、異なっていてもよい。
【0088】
[熱伝導性シートの製造方法]
本実施形態に係る熱伝導性シートは、例えば、空隙を備える樹脂シートを準備する工程(準備工程)と、樹脂シートの空隙に含フッ素エラストマーを保持させる工程(保持工程)と、含フッ素エラストマーを保持する樹脂シートをプレス成形する工程(プレス工程)と、を備える方法により製造される。
【0089】
準備工程では、熱伝導性フィラーを担持する樹脂シートを準備してもよい。保持工程において、熱伝導性フィラーが分散された含フッ素エラストマーを用いてもよい。
【0090】
以下、熱伝導性シートの製造方法の一例を説明する。図4は、本実施形態に係る熱伝導性シートの製造方法を示すフローチャートである。
【0091】
(1)準備工程(S11)
空隙を備える樹脂シートを準備する。樹脂シートの詳細は上記の通りである。
【0092】
樹脂シートと、熱伝導性フィラーおよび/または含フッ素エラストマーとの密着性を向上させるため、樹脂シートには、シランカップリング処理またはプラズマ処理などが施されていてもよい。樹脂シートの内部には、熱伝導性材料が添加されていてもよい。
【0093】
樹脂シートに熱伝導性フィラーを担持させる方法は、特に限定されず、例えば、熱伝導性フィラーが分散された分散液を樹脂シートにコーティングするか、あるいは、熱伝導性フィラーが分散された分散液に樹脂シートを浸漬することにより得られる。分散液への浸漬は、複数回行われてもよい。分散液のコーティングは、樹脂シートの片面に対して行われてよく、両面に対して行われてもよい。その後、樹脂シートを乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、加熱乾燥、真空乾燥等であってよい。
【0094】
以下、カーボンナノチューブを樹脂シートの表面に担持させる方法を例に挙げて、担持工程を具体的に説明するが、本実施形態に係る担持工程はこれに限定されるものではない。
【0095】
まず、カーボンナノチューブを溶媒に分散させて、カーボンナノチューブ分散液を調製する。溶媒は特に限定されない。溶媒としては、例えば、水;エタノール、n-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素系溶媒が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、ケトン系溶媒が好ましい。
【0096】
溶媒の量は特に限定されない。溶媒中にカーボンナノチューブを均一に分散させやすい点で、溶媒の量は、カーボンナノチューブ100質量部に対して、20,000質量部以上1,000,000質量部以下が好ましく、30,000質量部以上300,000質量部以下がより好ましく、50,000質量部以上200,000質量部以下が特に好ましい。
【0097】
カーボンナノチューブ分散液には、分散剤が添加されてもよい。分散剤は特に限定されない。分散剤としては、例えば、アクリル系分散剤、ポリビニルピロリドン、ポリアニリンスルホン酸等の合成ポリマー、DNA、ペプチドおよび有機アミン化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。添加される分散剤の量は、カーボンナノチューブ、溶媒および分散剤の種類や量によって適宜設定される。分散剤の添加量は、例えば、カーボンナノチューブ100質量部に対して、100質量部以上6,000質量部以下が好ましく、200質量部以上3,000質量以下がより好ましく、300質量部以上1,000質量部以下が特に好ましい。
【0098】
次に、カーボンナノチューブ分散液に樹脂シートを浸漬する。その後、樹脂シートを乾燥させることにより、樹脂シートにカーボンナノチューブが担持される。乾燥条件は特に限定されず、カーボンナノチューブおよび溶媒の種類や量によって適宜設定される。
【0099】
(2)保持工程(S12)
樹脂シートの空隙に含フッ素エラストマーを保持させる。これにより、樹脂シートと含フッ素エラストマーとが一体化される。樹脂シートの空隙のすべてが含フッ素エラストマーにより埋められてもよいし、樹脂シートの空隙の一部が含フッ素エラストマーにより埋められてもよい。
【0100】
(2a)エラストマー組成物の調製
まず、含フッ素エラストマーを含むエラストマー組成物を調製する。エラストマー組成物は、例えば、含フッ素エラストマーと、架橋剤と、その他の添加剤と、溶剤と、を混合することにより調製される。エラストマー組成物は、溶剤に、含フッ素エラストマー等の成分を順次添加して、混合することにより調整されてもよいし、溶剤以外の成分を混合した後、得られた混合物と溶剤とを混合することにより調製されてもよい。エラストマー組成物は、また、含フッ素エラストマー、架橋剤およびその他の添加剤を含んだ市販のコンパウンドと、溶剤と、を混合することにより調製されてもよい。混合は、例えば、公知のニーダー、混練ロール、ミキサーを使用して行われる。エラストマー組成物において、含フッ素エラストマーは溶剤に溶解していてもよく、分散あるいは懸濁していてもよい。
【0101】
溶剤は特に限定されず、含フッ素エラストマーの種類、エラストマー組成物の性状に応じて、適宜選択される。溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系、アルコール系、エステル系、エーテル系、ハロゲン系の有機溶媒が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。溶剤の添加量は特に限定されず、保持の方法、エラストマー組成物の性状および粘度等に応じて、適宜設定される。
【0102】
エラストマー組成物の粘度は特に限定されず、保持の方法、樹脂シートの厚み等に応じて、適宜設定される。エラストマー組成物の20℃におけるB型粘度計で測定された粘度は、例えば、50mPa・s以上50,000mPa・s程度であってよい。
【0103】
架橋剤は特に限定されず、含フッ素エラストマーの組成等に応じて、適宜選択される。架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサメチレンジアミンなどのポリアミン化合物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパンなどのポリヒドロキシ化合物および1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0104】
架橋剤の配合量は特に限定されない。架橋剤の配合量は、例えば、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であってよく、0.1質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0105】
エラストマー組成物は、必要に応じて、架橋促進剤を含んでいてよい。架橋促進剤は特に限定されない。架橋促進剤としては、例えば、オニウム化合物が挙げられる。オニウム化合物としては、例えば、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミンおよび1官能性アミン化合物が挙げられる。
【0106】
架橋促進剤の配合量は特に限定されない。架橋促進剤の配合量は、例えば、含フッ素エラストマー100質量部に対して、0.01質量部以上8質量部以下であってよく、0.02質量部以上5質量部以下が好ましい。
【0107】
エラストマー組成物は、必要に応じて、架橋助剤を含んでいてよい。架橋助剤は特に限定されない。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′-m-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′-テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイト挙げられる。なかでも、架橋性及び放熱材料の物性が優れる点から、TAICが好ましい。
【0108】
架橋助剤の配合量は特に限定されない。架橋助剤の配合量は、例えば、含フッ素エラストマー100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下であってよく、0.1質量部以上5.0質量部以下が好ましい。
【0109】
エラストマー組成物には、必要に応じて、含フッ素エラストマー組成物に配合される通常の添加物、例えば、熱伝導性フィラー以外の添加剤(硫酸バリウム等)、加工助剤(ワックス等)、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤を配合することができる。
【0110】
熱伝導性フィラーが分散された含フッ素エラストマーは、例えば、エラストマー組成物を調製する際、含フッ素エラストマー等の成分とともに、熱伝導性フィラーを添加し、混合することにより得られる。
【0111】
(2b)樹脂シートへのエラストマー組成物の付与
次いで、樹脂シートにエラストマー組成物を付与する。付与の方法は特に限定されず、エラストマー組成物を樹脂シートにコーティングするか、あるいは、エラストマー組成物に樹脂シートを浸漬すればよい。コーティング法によれば、樹脂シートの表面にエラストマー領域が形成され易い。
【0112】
エラストマー組成物のコーティングは、樹脂シートの片面に対して行われてよく、両面に対して行われてもよい。浸漬方法は特に限定されず、真空下で行われる真空含侵法が用いられてもよく、真空下で加圧しながら行われる真空加圧含侵法が用いられてもよい。
【0113】
その後、樹脂シートを乾燥させる。これにより、樹脂シートの空隙内に含フッ素エラストマーが保持される。乾燥方法は特に限定されず、加熱乾燥、真空乾燥等であってよい。
【0114】
(3)プレス工程(S13)
含フッ素エラストマーを保持する樹脂シートを、プレス成形する。これにより、所望の厚みを有する熱伝導性シートが得られる。
【0115】
通常、含フッ素エラストマーのみをプレス成形によりシートに形成しても、その厚みはばらつき易い。そのため、シートの厚みを薄くすることも困難である。含フッ素エラストマーにより形成されるシートの厚みのばらつきは、シートが大きく、また薄くなるほど顕著になる。
【0116】
樹脂シートを用いることにより、プレス成形によって、含フッ素エラストマーを均一な厚みを有するシートに成形することができる。特に、薄く、さらには大判のシートを得ることもできる。
【0117】
プレス工程において、含フッ素エラストマーは架橋され得る。プレス工程の条件は特に限定されず、含フッ素エラストマーの架橋条件を考慮して適宜設定されてよい。含フッ素エラストマーは、例えば、150℃以上300℃以下の温度で、1分以上24時間以下加熱することにより架橋される。プレス工程の後、含フッ素エラストマーを架橋する工程を実施してもよい。
【0118】
得られた熱伝導性シートは、必要に応じて、切断、穴あけ加工等が施されて、各種装置や電子機器に搭載される。本実施形態に係る製造方法によれば、均一で薄く、さらには大面積の熱伝導性シートが得られるため、歩留まりが高く、また様々な用途に適用可能である。熱伝導性シートは、特に、半導体製造装置に好適に用いられる。
【実施例
【0119】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準である。混合部数は、いずれも固形分の質量である。
【0120】
[実施例1]
(i)樹脂シートの準備
PTFE製不織布(株式会社巴川製紙所製R-250、空隙率65%、単位面積当たりの質量190g/m、繊維の直径35.2μm、厚み0.25mm)を準備した。
【0121】
(ii)エラストマー組成物の調製
含フッ素エラストマー(TFE/パーフルオロ(メチルビニルエーテル)/シアノ基含有単量体=59.4/40.1/0.5(モル比)、圧縮永久ひずみ試験における耐熱温度300℃、TG法における耐熱温度420℃、ダイキン工業社製)100部、架橋剤(4,4’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[N1-フェニル-1,2-ベンゼンジアミン])0.8部、および、熱伝導性フィラー(カーボンブラック、Cancarb社製 Thermax N990、D50:280nm)23部を含む、混合物を得た。この混合物に、有機溶媒(FC770、スリーエム社製)を混合して、濃度4質量%のエラストマー組成物(粘度150mPa・s)を調製した。
【0122】
(iii)エラストマー組成物の樹脂シートへの保持工程
PTFE製不織布の一方の表面に、上記のエラストマー組成物をフィルムアプリケータで塗布した。その後、80℃で12時間乾燥して、エラストマー組成物をPTFE製不織布の一方の表面側の空隙内部に保持させた。次いで、上記と同様にして、PTFE製不織布の他方の表面側の空隙に、エラストマー組成物を保持させた。
【0123】
(iv)プレス成形
エラストマー組成物を保持するPTFE製不織布を、200mm×200mmの金型に設置し、荷重45kgf/cm、温度180℃で30分間、プレス成形した。このようにして、熱伝導性シートA1を得た。熱伝導性シートA1から、100mm×100mmの評価サンプルa1を切り出した。
【0124】
熱伝導性シートA1に占める含フッ素エラストマーの割合は、49.4質量%であった。また、熱伝導性材料の総量は、熱伝導性シートA1の11.4質量%であった。熱伝導性シートA1の両面には、それぞれエラストマー領域(各厚み53~59μm)が形成されていた。熱伝導性シートA1のTG法における耐熱温度は420℃であった。
【0125】
[実施例2]
実施例1のエラストマー組成物の保持工程(iii)において、PTFE製不織布の一方の表面にのみ、エラストマー組成物を塗工したこと以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性シートA2およびその評価サンプルa2(100mm×100mm)を得た。
【0126】
得られた熱伝導性シートA2に占める含フッ素エラストマーの割合は、45.7質量%であった。熱伝導性材料の総量は、熱伝導性シートA2の10.5質量%であった。熱伝導性シートA2の片面には、エラストマー領域(厚み110μm)が形成されていた。熱伝導性シートA2のTG法における耐熱温度は420℃であった。
【0127】
[実施例3]
実施例2のPTFE製不織布に替えて、CNTが担持されたPTFE製不織布を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、熱伝導性シートA3およびその評価サンプルa3(100mm×100mm)を得た。熱伝導性シートA3のTG法における耐熱温度は420℃であった。
【0128】
樹脂シートは、CNT(カーボンナノチューブ、大陽日酸株式会社製、CNT粉末グレードDL、周方向に沿った断面の直径5nm~20nm、長さ150μm~600μm)を含む分散液に、実施例2で用いたPTFE製不織布を浸漬し、その後、乾燥することにより得られた。CNTの担持量は、担持前のPTFE製不織布の1.1質量%であった。
【0129】
熱伝導性シートA3に占める含フッ素エラストマーの割合は、48.3質量%であった。熱伝導性材料の総量は、熱伝導性シートA3の11.1質量%であった。熱伝導性シートA3の片面には、エラストマー領域(厚み98μm)が形成されていた。
【0130】
[比較例1]
樹脂シートを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性シートB1およびその評価サンプルb1(100mm×100mm)を得た。ただし、プレス成形(4)の際、含フッ素エラストマーは200mm×200mmの金型の隅にまで広がることができなかった。得られた熱伝導性シートB1のサイズは、170mm×180mm程度であった。熱伝導性シートB1のTG法における耐熱温度は420℃であった。
【0131】
[評価]
実施例1~3および比較例1で得られた評価サンプルa1~a3およびb1に対して、以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0132】
(a)厚みの測定
評価サンプルの5点の厚みをそれぞれ測定した。測定地点は、四隅近傍(右回りにa点からd点)および中心(e点)の5点であり、それぞれ3cm以上離間している。その測定値の平均値および標準偏差を算出した。
【0133】
(b)他の部材に対する固着力の測定
評価サンプルから50mm×50mmの試験片を切り出した。この試験片を、SUS304製の板で圧縮し、そのまま250℃で16時間加熱した。室温まで冷却した後、熱伝導シートとSUS304製の板とを引き剥がした。引き剥がすのに要した力を、万能試験機(日本計測システム株式会社製、HIT-L)を用いて測定した。
【0134】
(c)熱伝導率の測定
評価サンプルの熱拡散率と、DSC法により求められた評価サンプルの比熱と、アルキメデス法により求められた評価サンプルの密度と、を乗じて、熱伝導率を算出した。熱拡散率は、レーザーフラッシュ法を用いて、以下の条件下で測定した。
【0135】
(熱拡散率)
測定機器:アルバック理工社製TC-7000
熱拡散率の決定方法:ハーフタイム法
測定温度:室温25℃
【0136】
(d)導電率の測定
導電率が1.00×10-4S/m未満の場合はJIS K 6911に準じて、1.00×10-4S/m以上の場合はJIS K 7194に準じて、評価サンプルの電気抵抗率を測定した。この電気抵抗率から、導電率を算出した。
【0137】
(e)硬度の測定
ISO 14577に準拠して測定されるナノインデンテーション法により、評価サンプルの両表面のマルテンス硬度を測定した。具体的には、評価サンプルの両方の表面に対し、圧子を10mNの荷重で押し込んだ。その押し込み深さから、マルテンス硬度を得た。
【0138】
【表1】
【0139】
実施例1から実施例3の熱伝導性シートA1、A2およびA3は、厚みが薄く均一である。一方、比較例1では樹脂シートを用いなかったため、得られた熱伝導性シートB1は全体的に厚く、厚みのばらつきが大きい。
【0140】
実施例1から実施例3の樹脂シートを備える熱伝導性シートA1、A2およびA3は、比較例1の熱伝導性シートB1に比して、他の部材に対する固着力が小さかった。特に、実施例2および実施例3の片面にのみエラストマー領域を備えた熱伝導性シートA2およびA3の固着力は小さい。つまり、熱伝導性シートA1、A2およびA3は、剥離性に優れているため、熱伝導性シートをスムーズに、かつ残留物の発生を抑制しながら除去することができる。
【0141】
実施例3の熱伝導性シートA3は、熱伝導性フィラーの総量が多く、さらに樹脂シートに熱伝導性フィラーを担持させたため、最も高い熱伝導率および導電率を示した。
【0142】
実施例1から実施例3の熱伝導性シートA1、A2およびA3はいずれも、エラストマー領域を有する面のマルテンス硬度が低い。そのため、熱伝導性シートと発熱体および/または放熱体との密着性が高く、熱伝達性のさらなる向上が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明の熱伝導性シートは、高熱伝達性および高耐熱性を有しているため、特に、半導体製造装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0144】
10A、10B 熱伝導性シート
10X、10Y 主面
10a エラストマー領域
11 樹脂シート(不織布)
111 繊維
12 含フッ素エラストマー
13 熱伝導性材料(熱伝導性フィラー)
131 カーボンナノチューブ
132 カーボンブラック
図1
図2
図3
図4