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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 W
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021036760
(22)【出願日】2021-03-08
(65)【公開番号】P2022136925
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】横田 求
(72)【発明者】
【氏名】小原 悠司
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-176618(JP,A)
【文献】特開2019-075886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インダクタ、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子から構成された1相のコンバータと、
前記上側スイッチング素子をONとOFFとの間で切り替え、前記下側スイッチング素子をONとOFFとの間で切り替える制御部と
を備えたDC/DCコンバータであって、
前記制御部は、前記DC/DCコンバータの出力電圧が前記DC/DCコンバータの入力電圧よりも電圧閾値以上低くなると、前記上側スイッチング素子をONにすることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
インダクタ、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子から構成された1相のコンバータと、
前記上側スイッチング素子をONとOFFとの間で切り替え、前記下側スイッチング素子をONとOFFとの間で切り替える制御部と、
を備えたDC/DCコンバータであって、
前記制御部は、
前記DC/DCコンバータの出力電圧が前記DC/DCコンバータの入力電圧よりも電圧閾値以上低くなり、且つ、
前記インダクタに流れる直流電流が電流閾値以上になると、
前記上側スイッチング素子をONすることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項3】
複数の前記1相のコンバータを備え、
前記DC/DCコンバータは、多相のDC/DCコンバータであることを特徴とする請求項1または2に記載のDC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリ等の電源から供給される電圧を昇圧または降圧するDC/DCコンバータを経由してモータ駆動装置に電力供給を行う電源システムが知られている。当該電源システムには、モータに流れるリップル電流を吸収して電源電圧を安定化させるため、大容量の電源安定化コンデンサが設けられている。
【0003】
電源安定化コンデンサは、バッテリの負荷であるモータ駆動装置に並列接続される。特許文献1には、電源投入時などに、電源安定化コンデンサに予備充電を行うプリチャージ回路が開示されている。プリチャージ回路は、電源投入時などに、電源安定化コンデンサに向けて、電源から過大な突入電流が流れることを回避する。これにより、電源システム内のDC/DCコンバータ内に配置された半導体素子などが故障することを防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-336609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の電源システムでは、プリチャージ回路が予備充電を行った後、モータ駆動装置に電力を供給している際にモータ駆動装置が突然停止すると、電源安定化コンデンサの電圧が電源電圧よりも低い場合には電源から電源安定化コンデンサに電流が流れ込む。
【0006】
この際、DC/DCコンバータ内のスイッチング素子はOFFしている。このため、電源から電源安定化コンデンサに流れ込む電流は、スイッチング素子に寄生するボディダイオードを通ることになる。この電流通過によりボディダイオードは発熱してしまう。
【0007】
本発明の一態様は、上記課題に鑑みたものであり、DC/DCコンバータ内の発熱を低減することができるDC/DCコンバータを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るDC/DCコンバータは、インダクタ、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子から構成された1相のコンバータと、前記上側スイッチング素子をONとOFFとの間で切り替え、前記下側スイッチング素子をONとOFFとの間で切り替える制御部とを備え、前記制御部は、予め定められた判定条件が満たされると、前記上側スイッチング素子をONにする。
【0009】
上記構成において、DC/DCコンバータが搭載された電気自動車に異常が発生し、電気自動車がブースト制御を停止した場合、DC/DCコンバータの出力電圧が入力電圧よりも低いと、DC/DCコンバータの入力側から出力側に直流電流が流れてしまう。
【0010】
上記構成によれば、予め定められた判定条件が満たされた場合、制御部は、上側スイッチング素子をONにする。それにより、DC/DCコンバータの入力側から出力側に流れる直流電流は、上側スイッチング素子の寄生ダイオードであるボディダイオードには流れず、ボディダイオードよりも抵抗の小さい、上側スイッチング素子のチャネル部分を流れることになる。それゆえ、DC/DCコンバータによれば、DC/DCコンバータ内の発熱を低減することができる。
【0011】
前記制御部は、前記インダクタに流れる直流電流が電流閾値以上になると、前記上側スイッチング素子をONすることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、制御部は、DC/DCコンバータのインダクタに流れる直流電流を計測することにより、予め定められた判定条件が満たされるか否かを判定することができる。
【0013】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータの出力電圧が前記DC/DCコンバータの入力電圧よりも電圧閾値以上低くなると、前記上側スイッチング素子をONすることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、制御部は、DC/DCコンバータの出力電圧と入力電圧とを計測することにより、予め定められた判定条件が満たされるか否かを判定することができる。
【0015】
前記制御部は、前記DC/DCコンバータの出力電圧が前記DC/DCコンバータの入力電圧よりも電圧閾値以上低くなり、且つ、前記インダクタに流れる直流電流が電流閾値以上になると、前記上側スイッチング素子をONしても良い。
【0016】
複数の前記1相のコンバータを備え、前記DC/DCコンバータは、多相のDC/DCコンバータであることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、多相のDC/DCコンバータであっても、DC/DCコンバータ内の発熱を低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、DC/DCコンバータ内の発熱を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係るDC/DCコンバータが搭載された電気自動車の概略構成図である。
図2】上記DC/DCコンバータの制御処理のフローチャートを示す。
図3】上記電気自動車がプリチャージを行う際における電流経路を説明するための図である。
図4】上記電気自動車がブースト制御を開始した際における電流経路を説明するための図である。
図5】上記電気自動車がブースト制御を開始した際における上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子の動作を説明する図である。
図6】上記電気自動車がブースト制御を開始した際における上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子の他の動作を説明する図である。
図7】上記電気自動車がブースト制御を停止した際における電流経路を説明するための図である。
図8】本発明の実施形態2に係るDC/DCコンバータが搭載された電気自動車の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、詳細に説明する。
【0021】
<電気自動車の構成>
図1は、本実施形態1に係るDC/DCコンバータ1が搭載された電気自動車の概略構成図である。本実施形態1では、DC/DCコンバータ1が電気自動車に搭載されるDC/DCコンバータである実施形態を例として説明する。
【0022】
図1に示すように、電気自動車は、DC/DCコンバータ1と、高電圧電源2と、給電制御部3と、コンタクタ4と、プリチャージ回路5と、蓄電コンデンサ7と、インバータ8と、モータ9と、を備える。
【0023】
高電圧電源2は、コンタクタ4またはプリチャージ回路5を経由してDC/DCコンバータ1に直流電圧を供給する。例えば、高電圧電源2は、200Vの直流電圧をDC/DCコンバータ1に供給する。
【0024】
給電制御部3は、コンタクタ4をONまたはOFFにする。また、給電制御部3は、プリチャージ回路5に含まれるコンタクタ51をONまたはOFFにする。なお、プリチャージ回路5の詳細については後述する。
【0025】
給電制御部3がコンタクタ4をONにし、コンタクタ51をOFFにすると、高電圧電源2からコンタクタ4を通してDC/DCコンバータ1に電流が流れる。また、給電制御部3がコンタクタ4をOFFにし、コンタクタ51をONにすると、高電圧電源2からプリチャージ回路5を通してDC/DCコンバータ1に電流が流れる。また、給電制御部3がコンタクタ4をOFFにし、コンタクタ51をOFFにすると、高電圧電源2からDC/DCコンバータ1に電流は流れない。
【0026】
コンタクタ4は、例えば、リレー式電磁開閉器である。
【0027】
プリチャージ回路5は、高電圧電源2の起動時、高電圧電源2からDC/DCコンバータ1に突入電流が流れるのを防止するための回路である。プリチャージ回路5は、上述のコンタクタ51と、コンタクタ51に直列接続された抵抗52とを含む。コンタクタ51は、例えば、リレー式電磁開閉器である。
【0028】
DC/DCコンバータ1に突入電流が流れ込むと、DC/DCコンバータ1内の半導体素子が故障するおそれがある。このため、高電圧電源2の起動時、給電制御部3がコンタクタ4をOFFにし、コンタクタ51をONにすることにより、高電圧電源2からDC/DCコンバータ1に流れる直流電流をプリチャージ回路5を経由させる。当該直流電流は、プリチャージ回路5の抵抗52を流れることになり、当該直流電流の電流値は、抵抗52の抵抗値の分だけ低下する。それゆえ、プリチャージ回路5によれば、DC/DCコンバータ1に突入電流が流れ込むことを防止することができる。
【0029】
DC/DCコンバータ1は蓄電コンデンサ7を充電する。蓄電コンデンサ7は放電することによりインバータ8に直流電流を供給する。
【0030】
インバータ8は、蓄電コンデンサ7から供給された直流電流を交流電流に変換する。
【0031】
モータ9は、インバータ8から交流電流が供給されることにより駆動する。なお、図1の例では、モータ9を1つとしているが複数であってもよい。
【0032】
<DC/DCコンバータの機能構成>
DC/DCコンバータ1は、高電圧電源2から供給された直流電圧を変換する回路である。例えば、高電圧電源2の直流電圧が200Vである場合、DC/DCコンバータ1は、当該200Vの直流電圧を450Vの直流電圧に変換する。また、DC/DCコンバータは、高電圧電源2から供給された直流電圧を降圧することもできる。
【0033】
DC/DCコンバータ1は、第1入力端子T1と、第2入力端子T2と、インダクタL1と、上側スイッチング素子Fu1と、下側スイッチング素子Fd1と、平滑コンデンサCと、第1出力端子T3と、第2出力端子T4と、制御部10とを備える。なお、DC/DCコンバータ1は、第1電圧計D1と、第2電圧計D2と、電流計E1とを更に備えていても良い。
【0034】
第1入力端子T1は、コンタクタ4またはプリチャージ回路5を介して、高電圧電源2の正極端子に接続される。第2入力端子T2は、高電圧電源2の負極端子に接続される。
【0035】
インダクタL1と上側スイッチング素子Fu1と下側スイッチング素子Fd1とは、1相のコンバータを構成する。上側スイッチング素子Fu1は、例えば、MOS-FET(Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)である。また、下側スイッチング素子Fd1は、例えば、MOS-FETである。
【0036】
インダクタL1の一方の端子は、第1入力端子に接続され、他方の端子は、上側スイッチング素子Fu1のソースに接続されている。インダクタL1は、高電圧電源2から供給された直流電流を蓄電または放電する。
【0037】
上側スイッチング素子Fu1のゲートは、制御部10に接続され、ドレインは、第1出力端子T3に接続されている。
【0038】
下側スイッチング素子Fd1のゲートは、制御部10に接続され、ドレインは、インダクタL1の他方の端子及び上側スイッチング素子のソースに接続され、ソースは、第2入力端子T2及び第2出力端子T4に接続されている。
【0039】
上側スイッチング素子Fu1には、ソースとドレインの間にはボディダイオードBu1が形成されている。ボディダイオードBu1は、上側スイッチング素子Fu1の寄生ダイオードである。上側スイッチング素子Fu1を流れる電流は、上側スイッチング素子Fu1がONしているときには、ボディダイオードBu1ではなく、ボディダイオードBu1よりも抵抗の小さいチャネル部分を流れる電流となり、上側スイッチング素子Fu1がOFFしているときには、ボディダイオードBu1を流れる電流となる。
【0040】
下側スイッチング素子Fd1には、ソースとドレインの間にはボディダイオードBd1が形成されている。ボディダイオードBd1は、下側スイッチング素子Fd1の寄生ダイオードである。下側スイッチング素子Fd1を流れる電流は、下側スイッチング素子Fd1がONしているときには、ボディダイオードBd1ではなく、ボディダイオードBd1よりも抵抗の小さいチャネル部分を流れる電流となり、下側スイッチング素子Fd1がOFFしているときには、ボディダイオードBd1を流れる電流となる。
【0041】
上側スイッチング素子Fu1は、制御部10からゲートにHレベルのゲート信号Gu1が入力されるとONする。一方、上側スイッチング素子Fu1は、制御部10からゲートにLレベルのゲート信号Gu1が入力されるとOFFする。
【0042】
下側スイッチング素子Fd1は、制御部10からゲートにHレベルのゲート信号Gd1が入力されるとONする。一方、下側スイッチング素子Fd1は、制御部10からゲートにLレベルのゲート信号Gd1が入力されるとOFFする。
【0043】
平滑コンデンサCは、第1出力端子T3と第2出力端子T4との間に接続されている。平滑コンデンサCは、第1出力端子T3と第2出力端子T4との間に出力される出力電圧Voutを平滑する。
【0044】
第1電圧計D1は、第1入力端子T1と第2入力端子T2との間に接続されている。第1電圧計D1は、第1入力端子T1と第2入力端子T2との間の入力電圧Vinを計測する。第1電圧計D1は、計測結果H1を制御部10に出力する。
【0045】
第2電圧計D2は、第1出力端子T3と第2出力端子T4との間に接続される。第2電圧計D2は、第1出力端子T3と第2出力端子T4との間の出力電圧Voutを計測する。第2電圧計D2は、計測結果H2を制御部10に出力する。
【0046】
電流計E1は、インダクタL1と第1入力端子T1との間に接続されている。電流計E1は、インダクタL1に流れる直流電流I1を計測する。電流計E1は、計測結果J1を制御部10に出力する。
【0047】
<DC/DCコンバータの制御処理>
図2は、DC/DCコンバータ1の制御処理のフローチャートを示す。図1に示した電気自動車の高電圧電源2が起動されると、DC/DCコンバータ1の制御が開始される。
【0048】
ステップS101:
電気自動車は、蓄電コンデンサ7を蓄電するためプリチャージを行う。より具体的には、給電制御部3は、コンタクタ4をOFFにし、コンタクタ51をONにする。制御部10は、上側スイッチング素子Fu1をOFFにし、下側スイッチング素子Fd1をOFFにする。なお、プリチャージに大電流が必要となる場合には、制御部10は、上側スイッチング素子Fu1をONにしても良い。次にステップS102に進む。
【0049】
ここで、電気自動車がプリチャージを行う際における電流経路について説明する。
【0050】
図3は、電気自動車がプリチャージを行う際における電流経路を説明するための図である。
【0051】
電気自動車がプリチャージを行う際、DC/DCコンバータ1は、直流電流I1を蓄電コンデンサ7に蓄電させる。
【0052】
図3に示すように、高電圧電源2からDC/DCコンバータ1を経由して蓄電コンデンサ7に直流電流I1が流れる。直流電流I1の経路には、電流経路R1と電流経路R2がある。
【0053】
電流経路R1は、上側スイッチング素子Fu1のボディダイオードBu1を直流電流I1が流れる経路である。電流経路R1は、上側スイッチング素子Fu1がOFFしているときに対応する経路である。電流経路R2は、上側スイッチング素子Fu1のチャネル部分を直流電流I1が流れる経路である。上側スイッチング素子Fu1がONしているときに対応する経路である。
【0054】
ステップS102:
電気自動車は、ブースト制御を開始する。ブースト制御は、モータ9を回転させるための電源をインバータ8に供給する制御である。より具体的には、給電制御部3は、コンタクタ4をONにし、コンタクタ51をOFFにする。制御部10は、上側スイッチング素子Fu1をOFFにし、下側スイッチング素子Fd1をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。なお、モータ9に加わる負荷が高負荷である場合には、制御部10は、上側スイッチング素子Fu1もPWM制御しても良い。ただし、制御部10は、上側スイッチング素子Fu1のON期間と下側スイッチング素子Fd1のOFF期間とが一致し、上側スイッチング素子Fu1のOFF期間と下側スイッチング素子Fd1のON期間とが一致するように、上側スイッチング素子Fu1をPWM制御する。次にステップS103に進む。
【0055】
ここで、電気自動車がブースト制御を開始した際における電流経路について説明する。
【0056】
図4は、電気自動車がブースト制御を開始した際における電流経路を説明するための図である。
【0057】
電気自動車は、プリチャージにより蓄電コンデンサ7に電力が蓄えられた段階でブースト制御を開始する。ブースト制御は、DC/DCコンバータ1の出力電圧Voutを蓄電コンデンサ7に蓄電させる。このとき、制御部10は、下側スイッチング素子Fd1をPWM制御する。モータ9が低負荷のときには、制御部10は、上側スイッチング素子Fu1をOFFにする。モータ9が高負荷のときには、制御部10は、上側スイッチング素子Fu1もPWM制御する。
【0058】
図4に示すように、直流電流I1の経路には、電流経路R3と電流経路R4と電流経路R5がある。
【0059】
電流経路R3は、下側スイッチング素子Fd1のチャネル部分を直流電流I1が流れる経路である。電流経路R3は、下側スイッチング素子Fd1がONしているときに対応する経路である。電流経路R4は、上側スイッチング素子Fu1のボディダイオードBu1を直流電流I1が流れる経路である。電流経路R4は、下側スイッチング素子Fd1がOFFしており、上側スイッチング素子Fu1がOFFしているときに対応する経路である。電流経路R5は、上側スイッチング素子Fu1のチャネル部分を直流電流I1が流れる経路である。上側スイッチング素子Fu1がONしているときに対応する経路である。
【0060】
図5は、電気自動車がブースト制御を開始した際における上側スイッチング素子Fu1及び下側スイッチング素子Fd1の動作を説明する図である。図5は、モータ9に加わる負荷が低負荷である場合に対応する。
【0061】
図5に示すように、上側スイッチング素子Fu1は、時間t10から時間t14までの期間においてOFFである。一方、下側スイッチング素子Fd1は、時間t10から時間t11までの期間においてONであり、時間t11から時間t12までの期間においてOFFであり、時間t12から時間t13までの期間においてONであり、時間t13から時間t14までの期間においてOFFである。時間t10から時間t11までの期間と時間t12から時間t13までの期間とは同一である。時間t11から時間t12までの期間と時間t13から時間t14までの期間とは同一である。すなわち、制御部10は、下側スイッチング素子Fd1を下記のDuty比に基づきPWM制御する。
【0062】
Duty比:(時間t10から時間t11までの期間)/(時間t10から時間t12までの期間)。
【0063】
図6は、電気自動車がブースト制御を開始した際における上側スイッチング素子Fu1及び下側スイッチング素子Fd1の他の動作を説明する図である。図6は、モータ9に加わる負荷が高負荷である場合に対応する。
【0064】
図6に示すように、上側スイッチング素子Fu1は、時間t20から時間t21までの期間においてOFFであり、時間t21から時間t22までの期間においてONであり、時間t22から時間t23までの期間においてOFFあり、時間t23から時間t24までの期間においてONである。時間t20から時間t21までの期間と時間t22から時間t23までの期間とは同一である。時間t21から時間t22までの期間と時間t23から時間t24までの期間とは同一である。すなわち、制御部10は、上側スイッチング素子Fu1を下記のDuty比に基づきPWM制御する。
【0065】
Duty比:(時間t21から時間t22までの期間)/(時間t21から時間t23までの期間)。
【0066】
一方、下側スイッチング素子Fd1は、時間t20から時間t21までの期間においてONであり、時間t21から時間t22までの期間においてOFFであり、時間t22から時間t23までの期間においてONであり、時間t23から時間t24までの期間においてOFFである。時間t20から時間t21までの期間と時間t22から時間t23までの期間とは同一である。時間t21から時間t22までの期間と時間t23から時間t24までの期間とは同一である。すなわち、制御部10は、下側スイッチング素子Fd1を下記のDuty比に基づきPWM制御する。
【0067】
Duty比:(時間t20から時間t21までの期間)/(時間t20から時間t22までの期間)。
【0068】
ステップS103:
電気自動車は、ブースト制御を停止する。より具体的には、制御部10は、上側スイッチング素子Fu1をOFFにし、下側スイッチング素子Fd1をOFFにする。なお、ステップS103におけるブースト制御停止は、電気自動車に異常が発生したことに起因する停止を意味する。電気自動車の異常とは、例えば、インバータ8またはモータ9が故障し、それらの動作を停止する状態をいう。電気自動車に発生する異常の具体的な例としては、(1)インバータ8が動作しない筈のタイミングにインバータ8が短絡故障するなどし、電流がインバータ8側に流れ込んでしまう状況、(2)ブースト制御の停止時、通常であればOFFする筈のコンタクタ4がOFFしない状況、が挙げられる。電気自動車は、電気自動車に異常が発生すると、ブースト制御を停止すると共に、DC/DCコンバータ1の制御も停止する。次にステップS104に進む。
【0069】
ここで、電気自動車がブースト制御を停止した際における電流経路について説明する。
【0070】
図7は、電気自動車がブースト制御を停止した際における電流経路を説明するための図である。
【0071】
図7に示すように、高電圧電源2からDC/DCコンバータ1を経由して蓄電コンデンサ7に直流電流I1が流れる。直流電流I1の経路は、電流経路R5である。電流経路R5は、上側スイッチング素子Fu1のチャネル部分を直流電流I1が流れる経路である。上側スイッチング素子Fu1がONしているときに対応する経路である。
【0072】
ステップS104:
制御部10には、第1電圧計D1から計測結果H1が入力され、第2電圧計D2から計測結果H2が入力される。制御部10は、計測結果H1から入力電圧Vinを取得し、計測結果H2から出力電圧Voutを取得する。そして、入力電圧Vinと出力電圧Voutとが判定条件を満たす場合には(ステップS104でYES)、次にステップS105に進む。一方、入力電圧Vinと出力電圧Voutとが判定条件を満たさない場合には(ステップS104でNO)、次にステップS106に進む。
【0073】
ここで、上述の判定条件とは、出力電圧Voutが入力電圧Vinよりも電圧閾値Th1以上低くなっている、との条件である。電圧閾値Th1は、例えば、10Vである。ただし、電圧閾値Th1は、DC/DCコンバータ1の最大電流の設計値や、DC/DCコンバータ1に搭載されるスイッチング素子のボディダイオードの定格等によるものである。
【0074】
ステップS105:制御部10は、上側スイッチング素子Fu1をONにする。なお、制御部10は、下側スイッチング素子Fd1のOFFを維持する。次に、ステップS106に進む。
【0075】
ここで、制御部10が上側スイッチング素子Fu1をONにした際における電流経路について説明する。
【0076】
図7は、制御部10が上側スイッチング素子Fu1をONにした際における電流経路を説明するための図である。
【0077】
図7に示すように、直流電流I1の経路は、電流経路R5である。電流経路R5は、上側スイッチング素子Fu1のチャネル部分を直流電流I1が流れる経路である。電流経路R5は、上側スイッチング素子Fu1がONしているときに対応する経路である。
【0078】
ステップS106:ブースト制御の開始要求があれば(ステップS106でYES)、ステップS102に戻る。それ以外の場合(ステップS106でNO)、本制御処理を終了する。
【0079】
<実施形態1の効果>
電気自動車に異常が発生し、電気自動車がブースト制御を停止した場合、出力電圧Voutが入力電圧Vinよりも低いと、高電圧電源2からDC/DCコンバータ1に直流電流が流れてしまう。この際、上側スイッチング素子Fu1はOFFしているので、当該直流電流は、上側スイッチング素子Fu1のボディダイオードBu1を流れてしまう。DC/DCコンバータ1によれば、上述の判定条件が満たされた場合、すなわち、出力電圧Voutが入力電圧Vinよりも電圧閾値Th1以上低くなっている場合、制御部10は、上側スイッチング素子Fu1をONにする。それにより、高電圧電源2からDC/DCコンバータ1に流れる直流電流は、ボディダイオードBu1よりも抵抗の小さいチャネル部分を流れることになる。当該直流電流がボディダイオードBu1を流れるときの発熱は、当該直流電流が上側スイッチング素子Fu1のチャネル部分を流れるときの発熱よりも大きい。それゆえ、DC/DCコンバータ1によれば、DC/DCコンバータ1内の発熱を低減することができる。
【0080】
<変形例1>
本変形例1と上記実施形態1とは、図2のステップS104にて用いる判定条件のみが相違する。
【0081】
本変形例1では、図2のステップS104にて用いる判定条件として、インダクタL1に流れる直流電流I1が電流閾値Th2以上である、との条件を用いる。電流閾値Th2は、例えば、10Aである。ただし、電流閾値Th2は、DC/DCコンバータ1の最大電流の設計値や、DC/DCコンバータ1に搭載されるスイッチング素子のボディダイオードの定格等によるものである。
【0082】
<変形例2>
本変形例2と上記実施形態1とは、図2のステップS104にて用いる判定条件のみが相違する。
【0083】
本変形例2では、図2のステップS104にて用いる判定条件として、上記実施形態1の判定条件と上記変形例1の判定条件の両方が満たされる、との条件を用いる。
【0084】
本変形例2によれば、上記実施形態1の判定条件または上記変形例1の判定条件のいずれか一方のみを用いて判定した場合よりも、図2のステップS104の判定処理の判定精度を向上させることができる。また、本変形例2によれば、上記実施形態1の判定条件または上記変形例1の判定条件のいずれか一方のみを用いて判定した場合よりも、高電圧電源2からDC/DCコンバータ1に流れてしまう直流電流の見落としを防止することができる。
【0085】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0086】
図8は、本実施形態2に係るDC/DCコンバータ1Nが搭載された電気自動車の概略構成図である。DC/DCコンバータ1NがDC/DCコンバータ1と異なる点は、DC/DCコンバータ1が1相のコンバータを備えているのに対し、DC/DCコンバータ1Nは多相のコンバータを備えている点である。
【0087】
具体的には、図8に示すように、DC/DCコンバータ1Nは、インダクタL1と上側スイッチング素子Fu1と下側スイッチング素子Fd1とから構成された第1相のコンバータと、インダクタL2と上側スイッチング素子Fu2と下側スイッチング素子Fd2とから構成された第2相のコンバータと、インダクタL3と上側スイッチング素子Fu3と下側スイッチング素子Fd3とから構成された第3相のコンバータと、・・・、インダクタLnと上側スイッチング素子Funと下側スイッチング素子Fdnとから構成された第n相のコンバータとを備えている。ここで、第n相の「n」は、2以上の整数である。
【0088】
各相のコンバータを構成するインダクタ、上側スイッチング素子及び下側スイッチング素子の各機能及び各動作は、DC/DCコンバータ1のインダクタL1、上側スイッチング素子Fu1及び下側スイッチング素子Fd1の各機能及び各動作と同様であるので、それらの説明は繰り返さない。ただし、上述の図5及び図6に示したPWM制御に関しては、各相間においてパルスの位相がお互いにシフトされる。
【0089】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1、1N DC/DCコンバータ
2 高電圧電源
3 給電制御部
4、51 コンタクタ
5 プリチャージ回路
7 蓄電コンデンサ
8 インバータ
9 モータ
10 制御部
52 抵抗
Bu1、Bd1 ボディダイオード
D1 第1電圧計
D2 第2電圧計
E1 電流計
Fu1、Fu2、Fu3、Fun 上側スイッチング素子
Fd1、Fd2、Fd3、Fdn 下側スイッチング素子
L1、L2、L3、Ln インダクタ
T1 第1入力端子
T2 第2入力端子
T3 第1出力端子
T4 第2出力端子
Th1 電圧閾値
Th2 電流閾値
Vin 入力電圧
Vout 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8