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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】中空構造体
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/26 20060101AFI20250206BHJP
   B22D 25/02 20060101ALI20250206BHJP
   B22D 21/04 20060101ALN20250206BHJP
   B22D 17/00 20060101ALN20250206BHJP
【FI】
B29C45/26
B22D25/02 C
B22D21/04 A
B22D17/00 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021059832
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156243
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】内藤 真哉
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-084949(JP,A)
【文献】特開平01-099823(JP,A)
【文献】特表2018-519200(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165414(WO,A1)
【文献】特開2013-174156(JP,A)
【文献】特開平05-023407(JP,A)
【文献】登録実用新案第3130339(JP,U)
【文献】特開2018-100445(JP,A)
【文献】特開2018-176337(JP,A)
【文献】特開2021-037609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00
B22D 25/02
B22D 21/04
B22D 17/00
B25J 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造体本体と、
前記中空構造体本体に設けられ、中心開口を有するジョイント部と、
を有し、
前記中空構造体本体は、前記ジョイント部との境界近傍であって、前記中空構造体本体の延出方向と対向する領域に側面開口部を有
前記中空構造体本体は、
前記ジョイント部から一体に延出し、前記中心開口の開口方向から前記開口方向とは異なる方向に延出方向を変える接続部と、
前記開口方向とは異なる前記延出方向に延出する延出部と、
を有し、
前記側面開口部は、前記接続部の前記延出部の延出方向と対向する領域に設けられており、
前記接続部の内壁面において、前記側面開口部の近傍から前記延出方向と同じ方向に延びるリブを有する、中空構造体。
【請求項2】
前記リブは、前記側面開口部を挟んで対向する二つの壁状リブであって、前記ジョイント部の中心開口まで延びている、請求項に記載の中空構造体。
【請求項3】
中空構造体本体と、
前記中空構造体本体に設けられ、中心開口を有するジョイント部と、
を有し、
前記中空構造体本体は、前記ジョイント部との境界近傍であって、前記中空構造体本体の延出方向と対向する領域に側面開口部を有し、
前記中空構造体本体は、前記側面開口部と対向する位置に、前記ジョイント部から延出する補強壁を有する、中空構造体。
【請求項4】
中空構造体本体と、
前記中空構造体本体に設けられ、中心開口を有するジョイント部と、
を有し、
前記中空構造体本体は、前記ジョイント部との境界近傍であって、前記中空構造体本体の延出方向と対向する領域に側面開口部を有し、
前記側面開口部に他の中空構造体が接続されない、中空構造体。
【請求項5】
前記ジョイント部に設けられた複数の貫通孔において、前記貫通孔の開口方向に前記中空構造体本体が存在する場合、前記貫通孔を筒状に囲むように、前記ジョイント部から開口方向に延出する凹部を有する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の中空構造体。
【請求項6】
前記中空構造体本体は、前記ジョイント部の外径よりも狭幅である、請求項1からまでのいずれか1項に記載の中空構造体。
【請求項7】
前記中空構造体本体は、前記ジョイント部から漸次幅広に延出する領域を有している、請求項1からまでのいずれか1項に記載の中空構造体。
【請求項8】
前記中空構造体本体は、前記ジョイント部から漸次幅狭に延出する領域を有している、請求項1からまでのいずれか1項に記載の中空構造体。
【請求項9】
前記側面開口部の縁のうち、前記ジョイント部の側の縁は、前記ジョイント部の面に平行に設けられている、請求項1からまでのいずれか1項に記載の中空構造体。
【請求項10】
前記中空構造体本体と前記ジョイント部は、樹脂組成物による射出成形体である請求項1からまでのいずれか1項に記載の中空構造体。
【請求項11】
前記中空構造体本体と前記ジョイント部は、金属材料の鋳造品である請求項1からまでのいずれか1項に記載の中空構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスファーニチャー分野、ステーショナリー分野、産業機器分野においては、中空構造体からなる中空フレームを構成部材とした製品が知られている。中空構造体として、一般的に、鉄系材料などの金属材料の成形加工品が用いられてきた。一方、中空フレーム等の中空構造体の動作高速化や小型化を目的として、樹脂材料の成形加工品とすることで軽量化を図っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、繊維強化プラスチックから構成されるリンク構造体を用いて軽量化を行った技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-195998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような繊維強化プラスチック製リンク構造体は、繊維強化プラスチックと金属製の取付座とが、ウレタン系接着剤やエポキシ系接着剤等の接着剤あるいは上記接着剤と機械締結とを併用した接合法により接合された複合体であるため、製造工程が煩雑であった。また、駆動源(例えば、駆動用モーター)からのトルクを伝達する際に繊維強化プラスチックと金属製の取付座との接合部分が破壊してしまう懸念があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、他の構造体との接続部分の破壊リスクを低減し軽量性に優れ、かつ内部へのアクセスを容易にした中空構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明によれば、
中空構造体本体と、
前記中空構造体本体に設けられ、中心開口を有するジョイント部と、
を有し、
前記中空構造体本体は、前記ジョイント部との境界近傍であって、前記中空構造体本体の延出方向と対向する領域に側面開口部を有する、
中空構造体が提供される。
[2]前記中空構造体本体は、
前記ジョイント部から一体に延出し、前記中心開口の開口方向から前記開口方向とは異なる方向に延出方向を変える接続部と、
前記開口方向とは異なる前記延出方向に延出する延出部と、
を有し、
前記側面開口部は、前記接続部の前記延出部の延出方向と対向する領域に設けられている、[1]に記載の中空構造体が提供される。
[3]前記接続部の内壁面において、前記側面開口部の近傍から前記延出方向と同じ方向に延びるリブを有する、[2]に記載の中空構造体が提供される。
[4]前記リブは、前記側面開口を挟んで対向する二つの壁状リブであって、前記ジョイント部の中心開口まで延びている、[3]に記載の中空構造体が提供される。
[5]前記中空構造体本体は、前記側面開口部と対向する位置に、前記ジョイント部から延出する補強壁を有する、[1]から[4]までのいずれか1つに記載の中空構造体が提供される。
[6]前記ジョイント部に設けられた複数の貫通孔において、前記貫通孔の開口方向に前記中空構造体本体が存在する場合、前記貫通孔を筒状に囲むように、前記ジョイント部から開口方向に延出する凹部を有する、[1]から[5]までのいずれか1つに記載の中空構造体が提供される。
[7]前記中空構造体本体は、前記ジョイント部の外径よりも狭幅である、[1]から[6]までのいずれか1つに記載の中空構造体が提供される。
[8]前記中空構造体本体は、前記ジョイント部から漸次幅広に延出する領域を有している、[1]から[7]までのいずれか1つに記載の中空構造体が提供される。
[9]前記中空構造体本体は、前記ジョイント部から漸次幅狭に延出する領域を有している、[1]から[7]までのいずれか1つに記載の中空構造体が提供される。
[10]前記側面開口部の縁のうち、前記ジョイント部の側の縁は、前記ジョイント部の面に平行に設けられている、[1]から[9]までのいずれか1つに記載の中空構造体が提供される。
[11]前記中空構造体本体と前記ジョイント部は、樹脂組成物による射出成形体である、[1]から[10]までのいずれか1つに記載の中空構造体が提供される。
[12]前記中空構造体本体と前記ジョイント部は、金属材料の鋳造品である[1]から[10]までのいずれか1つに記載の中空構造体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、他の構造体との接続部分の破壊リスクを低減し軽量性に優れ、かつ内部へのアクセスを容易にした中空構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る、中空構造体の構造の一部を模式的に示した斜視図である。
図2】本実施形態に係る、中空構造体の構造の一部を模式的に示した平面図である。
図3】本実施形態に係る、中空構造体の構造の一部を模式的に示した正面図である。
図4】本実施形態に係る、中空構造体の構造の一部を模式的に示した底面図である。
図5】本実施形態に係る、中空構造体の構造の一部を模式的に示した左側面図である。
図6】本実施形態に係る、中空構造体の構造の一部を模式的に示した右側面図であって、図2のA1矢視に対応する図である。
図7】本実施形態に係る、図2のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0011】
図1は、本実施形態に係る中空構造体1の構造の一例を模式的に示した斜視図である。図2は、中空構造体1の平面図である。図3は中空構造体1の正面図である。図4は中空構造体1の底面図である。図5は中空構造体1の左側面図である。右側面図であって、図2のA1矢視に対応する図である。図6は中空構造体1の構造の一部を模式的に示した右側面図であって、図2のA1矢視に対応する図である。図7は、図2のA-A断面図である。
【0012】
<中空構造体1の概要>
中空構造体1は、中空構造体本体10と、中空構造体本体10の少なくとも一方の端に設けられたジョイント部50とを備える。中空構造体1は、オフィスファーニチャー分野、ステーショナリー分野、産業機器分野における製品に用いられる。中空構造体1は、樹脂組成物による射出成形体または金属材料の鋳造品として、中空構造体本体10とジョイント部50とが一体に設けられている。
本実施形態では、中空構造体本体10の図示で左側の端にジョイント部50が設けられ、さらに、ジョイント部50との境界近傍であって、中空構造体本体10の延出方向と対向する領域に側面開口部30を有する。側面開口部30により、他の構造体との接続部分(ジョイント部50や接続部20など)の破壊リスクを低減し軽量性に優れかつ中空構造体本体10内部へのアクセスを容易する。以下、具体的に説明する。
【0013】
<中空構造体本体10>
中空構造体本体10は、延出部11と、延出部11の一方の端に設けられた接続部20とを有する。接続部20は、延出部11の延在方向の向きを変換してジョイント部50に繋がる。延出部11と接続部20とは、実質的にシームレス状に(すなわち継ぎ目がない状態で)成形されている。
【0014】
<延出部11>
延出部11は、同径サイズで円筒状に直線状に所定長延出する中空体(「中空フレーム」ともいう)である。延出部11の肉厚は、要求される機械強度や使用される材料(すなわち樹脂組成物かアルミニウム合金か等)により定まる。
【0015】
また、延出部11の形状は中空フレームを形成できる構造であれば特に限定されるものではない。延出方向(すなわち軸線)は直線であってもよいし、湾曲していてもよい。また、延出部11の幅方向(延出方向と垂直な方向)の断面形状は、延出方向の全領域に亘って同一形状であってもよいし、異なっていてもよく、例えば、円形、楕円形、オバール形、半円形、または矩形のいずれかである。
また、延出部11は、外径が同径サイズで延出する構成に限らず、漸次幅広に延出する領域を有してもよいし、漸次幅狭に延出する領域を有してもよい。すなわち、上記断面形状の大きさが変化してもよい。なお、中空構造体1の機械強度や製造の容易さ、短手方向に加わる応力への耐性の点から、延出部11の断面形状は、円形、楕円形または矩形が好ましく用いられる。
【0016】
<接続部20>
接続部20は、略円筒形状であって、所定方向に延出方向を変える機能を有する。本実施形態では、接続部20は、中空構造体本体10のうちジョイント部50の上側を覆う領域であって、後述する補強壁40(図7参照)が設けられている位置より左側の領域をいう。
具体的には、接続部20はジョイント開口53を覆うように図示上方向に垂直に伸びる筒状を呈し、上側端部で湾曲して延出部11に連続して繋がる。この部分で、接続部20は、ジョイント部50のジョイント開口53の開口の向きを90度変える。接続部20において、延出部11との接続部分には補強壁40が設けられている。また、延出部11との接続部分と対向する領域、すなわち、補強壁40と対向する領域であって、上方向に垂直になっている領域には、接続部20の内外を連通する側面開口部30が設けられている。
【0017】
例えば図3図7を参照すると、ジョイント開口53の開口は上方向であるが、接続部20により延出部11の向き、即ち延出方向が水平方向(図3図7では右方向)になるように変換している。なお、変換する方向(角度)は、90度(すなわち水平)に限る趣旨ではない。例えば、図3図7において斜め上方向になるような角度(例えば45度)や、180度回転して下向きになるように変換してもよい。なお、樹脂組成物の射出成形や、アルミニウム合金等の鋳造による成形を想定した場合には、金型の抜きを考慮すると、変換角度は90度以内が好ましい。
接続部20の形状も、延出部11と同様に各種の形状とすることができる。ただし、機械強度(特に応力集中の抑制)や製造の容易の観点から、延出部11の形状から実質的に同一に連続する形状であることが好ましい。
【0018】
<側面開口部30>
側面開口部30は、接続部20において、上述のように延出部11の延出方向と対向する領域(図示左方向の領域)に設けられている。ここで延出部11の延出方向とは、延出部11が直線状に設けられている場合は、その直線方向である。延出方向が湾曲・屈曲している場合は、延出部11と接続部20との境界(より具体的には補強壁40の領域)における、延出部11の内部開口の向きとすることができる。
側面開口部30は、例えば図5に示すように、略矩形の形状を呈する。より具体的には、側面開口部30の側面開口の縁(矩形形状の辺)のうち、ジョイント部50の側のジョイント側辺31は、ジョイント部50のジョイント表面51に平行に設けられている。2本のジョイント対向側辺32は、ジョイント側辺31(すなわちジョイント表面51)に対して垂直に設けられている。ジョイント側辺31に対向する突出方向辺33は、若干凸状に湾曲して設けられている。このような構成により、他の構造体との接続部分に近い領域での応力集中を抑制でき、かつ中空構造体本体10の内部へアクセスするための側面開口部30を大きく確保できる。特に、ジョイント側辺31を直線状に設けることで、応力集中の抑制と側面開口部30の領域確保を効果的に実現できる。
【0019】
<ジョイント部50>
ジョイント部50は、図2の平面図に示すように、中央開口であるジョイント開口53を有して、上面視で接続部20の外側に所定幅突出するように環状に設けられている。すなわち、中空構造体本体10は、ジョイント部50の外径よりも狭幅ともいえる。なお、ジョイント部50の一部(図2では右側の一部)は、接続部20や延出部11により覆われている。
【0020】
ジョイント部50には、ジョイント表面51とジョイント裏面52を貫通する複数の貫通孔55、56、57が設けられている。ここでは、周方向に均等に離間した合計10箇所に貫通孔55、56、57が設けられている。貫通孔55、56、57は、モータ等の駆動源や他の構造体(以下、「他の構造体」という)との接続に用いられる。なお、貫通孔55、56、57には、例えば金属のカラーが設けられてもよい。
【0021】
ジョイント部50の貫通孔55、56、57において、貫通孔55、56、57の開口方向(ここでは上方向)に接続部20や延出部11の中空構造体本体10が存在する場合、貫通孔56、57を筒状に囲むように、ジョイント部50のジョイント表面51から開口方向(ここでは上方向)に延出する凹部(半筒状凹部21や筒状凹部22)を有する。
【0022】
接続部20の外形境界付近に設けられている二つの貫通孔56については、それらの周囲を半筒状に覆うように半筒状凹部21が、貫通孔56の開口方向に向けて凹状に設けられている。すなわち、半筒状凹部21は、接続部20の一部を貫通孔56の開口方向に開放するようにして設けられている。
【0023】
このような構成により、ジョイント部50に設けられる貫通孔56が接続部20により隠される位置にあっても、確実に利用することができ、ジョイント部50における他の構造体との締結を確実に行える。
【0024】
延出部11(延出部11と接続部20の境界領域)に完全に重なる領域に設けられている二つの貫通孔57については、それらの周囲を円筒状に覆うように筒状凹部22が、貫通孔57の開口方向に向けて凹状に設けられている。すなわち、筒状凹部22は、延出部11(延出部11と接続部20の境界領域)の一部を貫通孔57の開口方向に開放するようにして設けられている。
【0025】
このような構成により、ジョイント部50に設けられる貫通孔57が接続部20により隠される位置にあっても、確実に利用することができ、ジョイント部50における他の構造体との締結を確実に行える。また、図5図7に示すように、二つの筒状凹部22は離間しており、それらの間に接続部20の内部と延出部11の内部を連通させているため、内部に電線等を配索する場合でも十分な空間を確保できる。
【0026】
ジョイント部50のジョイント開口53は、接続部20や延出部11の中空構造と連続しており、中空構造体1の内部に、電力線や信号線などのケーブル類を通すことができる。
なお、ジョイント部50のジョイント裏面52(またはジョイント表面51)には、必要に応じて金属プレート等の補強部材が貼り合わされていてもよい。補強部材を配することによって、中空構造体1を他の構造体と締結する際に作用する締付けトルクによる樹脂部材の破壊やクリープによる緩みを防止できる。金属プレートとしては、アルミニウム合金、チタン合金、銅合金、マグネシウム合金、ステンレス等を例示することができる。なお、金属プレートをジョイント裏面52等に貼り合わせる方法としては、例えば、中空構造体1の成形時に、金属プレートに熱可塑性樹脂をインサート成形する方法を用いることができる。
【0027】
<中空構造体1の内部構造>
中空構造体本体10は、内部構造として、接続部20と延出部11との境界領域に設けられた補強壁40と、接続部20の内部に設けられたリブ70とを有する。
【0028】
<補強壁40>
補強壁40は、側面開口部30と対向する位置において、すなわち、接続部20と延出部11との境界領域において、その境界を塞ぐような面でジョイント部50から中空構造体本体10の上面まで達するように延出する。補強壁40の中央付近には、接続部20と延出部11とを連通する補強壁開口41が設けられている。
補強壁40の位置は、正確に接続部20と延出部11との境界である必要は無く、接続部20側や延出部11側にずれた位置に設けられてもよく、また、複数箇所に設けられてもよい。このような構成により、中空構造体1に外力が作用したときに、強い応力が作用すると考えられる接続部20と延出部11との境界領域を補強でき、強度を高めることができる。また、補強壁開口41があることで、接続部20と延出部11との間の連通を確保でき、ケーブル等の配索が可能となる。また、補強壁開口41の大きさや形状、数を適宜設定することで、配索の整理を効果的に行うことができる。
【0029】
<リブ70>
図4図7に示すように、リブ70は、接続部20の内部において、側面開口部30の近傍から延出部11の延出方向と同じ方向に延びる壁状のリブ70を有する。具体的には、接続部20の側面開口部30の二つのジョイント対向側辺32の近傍の内壁面から、二つのリブ70が壁状に対向するように、延出部11(より具体的には補強壁40)に向けて延びている。
二つのリブ70により、ジョイント部50のジョイント開口53や接続部20の内部が、延出部11の延出方向と同じ方向に向けて延びる3つの空間に分離される。このような構成により、接続部20を補強でき、強度を高めることができる。また、リブ70の位置を適宜設定することで、配索の整理を効果的に行うことができる。なお、リブ70に開口を設けてもよい。
【0030】
<中空構造体1の材料>
中空構造体1は、例えば、樹脂組成物の射出成形体であったり、金属材料の鋳造品とされる。
【0031】
樹脂組成物が熱可塑性樹脂である場合、中空構造体1は、例えば射出成形法によって成形することができる。金属材料がアルミニウム合金である場合、例えばアルミダイキャスト法によって成形することができる。このような構成により、軽量性に優れるとともに所望の強度を有する中空構造体1を実現できる。また、中空構造体1は一体成形であることから、接着剤等を用いた他の構成の中空構造体に比べて、破壊リスクを抑制できる。
【0032】
アルミニウム合金としては、狭い湯口を高い流動性で通過させる観点から、例えばダイキャスト用アルミニウム合金であるADC1、ADC3、ADC5、ADC6、ADC10、ADC10Z、ADC12、ADC12Z等が挙げられる。
アルミニウム合金が用いられる構成される場合、中空構造体1は、例えば、キャビティが形成された金型と、内部空間を有するように略円筒状に形成され、その一方の端側で上記キャビティに連通する射出スリーブと、該射出スリーブ内に移動可能に配設されたプランジャーチップと、を備えた公知のダイキャストマシンを用いて、公知の条件で製造することができる。また、ダイキャスト品として、マグネシウム合金のダイキャスト品も採用することもできる。
【0033】
樹脂組成物(熱可塑性樹脂)が用いられる場合、射出成形法としては、公知の方法を制限なく使用できる。すなわち、中空構造体1は、例えば、移動型金型と固定型金型との間に形成されたキャビティに、必要に応じて上記金属プレート装着し、次いで、溶融状態にある熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物を射出充填し、次いで型開きし、必要に応じて用いたスライド、入れ駒類を除くことによって製造することができる。
【0034】
中空構造体1を射出成形法によって形成する場合、原料成分の熱可塑性樹脂は、樹脂成分としての熱可塑性樹脂を含み、必要に応じて添加剤をさらに含む熱可塑性樹脂組成物である。
熱可塑性樹脂としては、中空構造体1の機械的強度を向上できるという理由から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアリーレンエーテル系樹脂、ポリアリーレンスルフィド系樹脂、ABS樹脂、ポリアミド含有アロイから選択される一種または二種以上の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
これらの中でも、ポリアミド系樹脂およびポリエステル系樹脂がより好ましく、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。ポリアミド含有アロイとしてはポリアミド系樹脂とポリアリーレンエーテル系樹脂のアロイを好適例として挙げることができる。
【0035】
ポリアミド系樹脂の具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12のような脂肪族ポリアミドやポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミドのような半芳香族ポリアミド樹脂、メタキシリレンジアミンから得られるポリアミド樹脂等が挙げられる。これらのポリアミド系樹脂の中でも、メタキシリレンジアミンとアジピン酸から得られるポリアミド樹脂が特に好ましい。このようなポリアミド樹脂はナイロンMXD6と呼ばれ、例えば三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社からレニーTMの商品名で市販されている。
【0036】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、例えば、無機充填剤、難燃剤、難燃助剤、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃性改良剤および着色剤からなる群から選ばれる一種又は二種以上の添加剤を含有してもよい。
【0037】
無機充填剤としては、例えば、繊維状充填剤(ガラス繊維、カーボン繊維等)、粉粒状充填剤(カオリン、タルク等)、板状充填剤(マイカ等)等が挙げられる。これらの充填剤のうち、高い強度・剛性を有する点で、繊維状充填剤、特にガラス繊維(チョップドストランド等)が好ましい。これらの充填剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0038】
これらの充填剤は、収束剤または表面処理剤と組み合わせて使用してもよい。このような収束剤または表面処理剤としては、例えば、官能性化合物が挙げられる。上記官能性化合物としては、例えば、エポキシ系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等が挙げられる。
無機充填剤の量は、熱可塑性樹脂組成物中、例えば0~60重量%であり、好ましくは5~60重量%である。
【0039】
難燃剤としては、臭素化エポキシポリマー、デカブロモジフェニルエーテル等の公知のハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を制限なく使用可能であるが、ベース樹脂としてポリアミド系樹脂を用い、且つ成形体に黒色以外の色調が求められる場合はハロゲン化ビスイミドを好適な難燃剤として例示できる。難燃剤を使用する場合は、その含有量は熱可塑性樹脂組成物100質量部当たり、例えば0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部である。
【0040】
本実施形態において、一般的な着色剤を樹脂に配合することができる。本実施形態において使用される黒色系着色剤(黒色系顔料)として、例えば、カーボンブラック、グラファイト、チタンブラック、黒色酸化鉄等が挙げられる。これらのうち、分散性、発色性、コストの面からカーボンブラックが特に望ましい。黒色顔料は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0041】
また、非黒色系着色剤としては、上記黒色顔料以外のものであり、後述の無機顔料や有機顔料が挙げられる。これらの非黒色系着色剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。非黒色顔料としては、例えば、白色顔料(例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛等)、黄色顔料(例えば、カドミイエロー、黄鉛、チタンイエロー、ジンククロメート、黄土、黄色酸化鉄等)、赤色顔料(例えば、赤口顔料、アンバー、赤色酸化鉄、カドミウムレッド等)、青色顔料(例えば、紺青、群青、コバルトブルー等)、緑色顔料(例えば、クロムグリーン等)等が挙げられる。
【0042】
また、有機顔料として、例えば、アゾ系、アゾメチン系、メチン系、インダスロン系、アントラキノン系、ピランスロン系、フラバンスロン系、ベンゼンスロン系、フタロシアニン系、キノフタロン系、ペリレン系、ペリノン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ピルールピロール系、キナクリドン系等が挙げられる。
【0043】
非黒色系着色剤の配合量は、熱可塑性樹脂組成物100質量部あたり、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.3~18質量部であり、さらに好ましくは0.5~15質量部である。
【0044】
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記無機充填剤、難燃剤および着色剤の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を配合することができる。各種添加剤としては、例えば、銅系熱安定剤、リン系熱安定剤等の熱安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等の酸化防止剤、離型剤、耐侯性改良剤、造核剤、発泡剤、耐衝撃改良剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤等が挙げられる。その他の添加剤を併用する場合は、その配合量は樹脂組成物100質量部当たり例えば0.01~10質量部、好ましくは0.05~5質量部である。
【0045】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0046】
本実施形態の特徴を纏めると次の通りである。
(1)本実施形態の中空構造体1は、
中空構造体本体10と、
中空構造体本体10に設けられ、ジョイント開口53(中心開口)を有するジョイント部50と、を有し、
中空構造体本体10は、ジョイント部50との境界近傍であって、中空構造体本体10の延出方向と対向する領域に側面開口部30を有する。
(2)中空構造体本体10は、
ジョイント部50から一体に延出し、ジョイント開口53の開口方向から開口方向とは異なる方向に延出方向を変える接続部20と、
その開口方向とは異なる延出方向に延出する延出部11と、を有し、
側面開口部30は、接続部20の延出部11の延出方向と対向する領域に設けられている。
(3)接続部20の内壁面において、側面開口部30の近傍から前記延出方向と同じ方向に延びるリブを有する。
(4)リブ70は、側面開口部30を挟んで対向する二つの壁状リブであって、ジョイント部50のジョイント開口53まで延びている。
(5)中空構造体本体10は、側面開口部30と対向する位置に、ジョイント部50から延出する補強壁40を有する。
(6)ジョイント部50に設けられた複数の貫通孔55、56、57において、貫通孔56、57の開口方向に中空構造体本体10(接続部20)が存在する場合、貫通孔56、57を筒状に囲むように、ジョイント部50から開口方向に延出する凹部(半筒状凹部21、筒状凹部22)を有する。
(7)中空構造体本体10は、ジョイント部50の外径よりも狭幅である。
(8)中空構造体本体10は、ジョイント部50から漸次幅広に延出する領域を有してもよい。
(9)中空構造体本体10は、ジョイント部50から漸次幅狭に延出する領域を有してもよい。
(10)側面開口部30の縁のうち、ジョイント部50の側の縁(ジョイント側辺31)は、ジョイント部50の面(ジョイント表面51)に平行に設けられている。
(11)中空構造体本体10とジョイント部50は、樹脂組成物による射出成形体であってもよい。
(12)中空構造体本体10とジョイント部50は、金属材料の鋳造品であってもよい。
【0047】
1 中空構造体
10 中空構造体本体
11 延出部
20 接続部
21 半筒状凹部
22 筒状凹部
30 側面開口部
31 ジョイント側辺
32 ジョイント対向側辺
33 突出方向辺
40 補強壁
41 補強壁開口
50 ジョイント部
51 ジョイント表面
52 ジョイント裏面
53 ジョイント開口
55、56、57 貫通孔
70 リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7