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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】ブレード養生方法およびブレード養生袋
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/50 20160101AFI20250206BHJP
   E04G 21/30 20060101ALI20250206BHJP
   E04G 23/08 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
F03D80/50
E04G21/30 Z
E04G23/08 Z
E04G23/08 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021101835
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000810
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2024-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515310951
【氏名又は名称】未来テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 英夫
(72)【発明者】
【氏名】小村 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】金 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】石坂 修
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 匠
【審査官】所村 陽一
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/50
E04G 21/30
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転倒させる発電用風車のブレードを養生するブレード養生方法であって、
下向きの状態の前記ブレードの下端部に、筒状の胴部と前記胴部の一端に形成された底部とを備えた袋体を前記胴部を折り畳んだ状態で被せる袋体取付工程と、
前記袋体が取り付けられた前記ブレードが上向きになるように前記ブレードを回転させる回転工程と、
前記袋体を展開させて前記ブレードを覆う袋体展開工程と、を備え、
前記袋体取付工程では、前記袋体の前記胴部の他端の開口部から前記ブレードを挿通させて、前記ブレードの先端部に取り付けられた係止部に前記袋体を係止する
ことを特徴とするブレード養生方法。
【請求項2】
前記袋体取付工程では、前記袋体の底部を前記ブレードの先端部に固定する
ことを特徴とする請求項1に記載のブレード養生方法。
【請求項3】
前記袋体は、折り畳み状態を維持する紐状の維持部材を備えており、
前記袋体展開工程では、折り畳み状態を解除した後に前記袋体を展開させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレード養生方法。
【請求項4】
前記袋体取付工程は、高所に移動可能なゴンドラまたは足場に乗った作業員が行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のブレード養生方法。
【請求項5】
転倒させる発電用風車のブレードを養生するブレード養生方法であって、
折り畳まれた筒状の胴部と前記胴部の一端に形成された底部とを備えた袋体の前記胴部の他端の開口部側に繋がる紐状の引揚部材を前記ブレードの基端部または前記ブレードを支持する回転支持部に掛け止める引揚部材掛止工程と、
前記引揚部材を引っ張り前記袋体を引き揚げることで下向きの状態の前記ブレードを前記袋体で覆う袋体引揚工程と、を備え、
袋体引揚工程では、前記開口部側が上方に引っ張られ前記胴部が折畳み状態から展開し、下向きの状態の前記ブレードの下端部から前記開口部が基端部まで上昇して、前記袋体が前記ブレードを覆う
ことを特徴とするブレード養生方法。
【請求項6】
前記ブレードを覆った状態で前記ブレードの基端部側となる前記袋体の開口部を閉じる開口部閉塞工程を、さらに備えた
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のブレード養生方法。
【請求項7】
転倒させる発電用風車のブレードを養生するブレード養生袋であって、
折り畳み可能な筒状の胴部と前記胴部の一端に形成された底部とを備えた袋体と、前記袋体を前記ブレードの先端部に固定する固定部と、前記ブレードを覆った状態で前記ブレードの基端部側となる前記袋体の開口部を閉じる開口部閉塞部材と、を備えた
ことを特徴とするブレード養生袋。
【請求項8】
前記袋体は、蛇腹状に折り畳まれる
ことを特徴とする請求項7に記載のブレード養生袋。
【請求項9】
前記袋体の折り畳み状態を維持する紐状の維持部材をさらに備えた
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載のブレード養生袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電用風車のブレードを養生するブレード養生方法およびブレード養生袋に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電用風車の倒し方法が記載されている。かかる倒し方法は、塔の途中高さ位置を折り曲げるための折曲位置として設定する折曲位置設定工程と、塔の上端部に第1のワイヤの一端を固定し、第1のワイヤを折曲位置の近傍に設けられた中継部を通して下方に導いて取り付ける紐状体取付け工程と、塔の折曲位置で且つ曲げ方向とは反対側に切断部を形成する切断部形成工程と、塔の折曲位置より上部に対して曲げ方向に力を加えて折り曲げる動作を第2のワイヤを下方に引っ張りつつ行う曲げ工程と、を有し、曲げ工程をナセル及びブレードが所定の低位置に至るまで継続するものである。これにより、発電用風車の迅速かつ簡単な解体が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/092609号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の倒し方法では、発電用風車が転倒した際に、ブレードが地面に衝突して破損し、ブレードの材質であるガラス強化繊維が飛散する問題があった。そのため、ブレードを養生することが求められているが、発電用風車のブレードは高所に設置されているため、発電用風車の最上部においては大型クレーンを用いた高所作業が必要となり、多くの施工コストと作業手間を要する。
このような観点から、本発明は、発電用風車の最上部での高所作業が不要で施工コストと作業手間を低減できるブレード養生方法およびブレード養生袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための本発明は、転倒させる発電用風車のブレードを養生するブレード養生方法である。かかるブレード養生方法は、下向きの状態の前記ブレードの下端部に、筒状の胴部と前記胴部の一端に形成された底部とを備えた袋体を前記胴部を折り畳んだ状態で袋体を被せる袋体取付工程と、前記袋体が取り付けられた前記ブレードが上向きになるように前記ブレードを回転させる回転工程と、前記袋体を展開させて前記ブレードを覆う袋体展開工程と、を備え、前記袋体取付工程では、前記袋体の前記胴部の他端の開口部から前記ブレードを挿通させて、前記ブレードの先端部に取り付けられた係止部に前記袋体を係止することを特徴とする。
本発明に係るブレード養生方法によれば、最も高い位置での作業は袋体取付工程となるが、ブレードの下端部の高さとなり、発電用風車の最上部と比較して大幅に低い位置での作業となる。したがって、発電用風車の最上部での高所作業が不要となり、施工コストと作業手間の低減を図ることができる。
【0006】
本発明のブレード養生方法において、前記袋体取付工程では、前記袋体の底部を前記ブレードの先端部に固定することが好ましい。このような方法によれば、ブレードの最も低い位置で、袋体取付工程の作業を行うことができる。
本発明のブレード養生方法において、前記袋体は、折り畳み状態を維持する紐状の維持部材を備えており、前記袋体展開工程では、折り畳み状態を解除した後に前記袋体を展開させることが好ましい。このような方法によれば、回転工程中に袋体が展開することはない。また、ブレードを上向きにし、袋体の折り畳み状態を解除した後に安定した状態で袋体の展開を行うことができる。
本発明のブレード養生方法において、前記袋体取付工程は、高所に移動可能なゴンドラまたは足場に乗った作業員が行うことが好ましい。このような方法によれば、袋体取付工程を安全に行うことができる。
【0007】
前記課題を解決するための第二の本発明は、転倒させる発電用風車のブレードを養生するブレード養生方法であって、折り畳まれた筒状の胴部と前記胴部の一端に形成された底部とを備えた袋体の前記胴部の他端の開口部側に繋がる紐状の引揚部材を前記ブレードの基端部または前記ブレードを支持する回転支持部に掛け止める引揚部材掛止工程と、前記引揚部材を引っ張り前記袋体を引き揚げることで下向きの状態の前記ブレードを前記袋体で覆う袋体引揚工程と、を備え、袋体引揚工程では、前記開口部側が上方に引っ張られ前記胴部が折畳み状態から展開し、下向きの状態の前記ブレードの下端部から前記開口部が基端部まで上昇して、前記袋体が前記ブレードを覆うことを特徴とする。
本発明のブレード養生方法によれば、引揚部材掛止工程を地上から遠隔で行い、袋体引揚工程で引揚部材を地上から引っ張ることで、発電用風車の最上部での高所作業が不要となり、施工コストと作業手間の低減を図ることができる。
本発明のブレード養生方法において、前記ブレードを覆った状態で前記ブレードの基端部側となる前記袋体の開口部を閉じる開口部閉塞工程を、さらに備えたことが好ましい。このような方法によれば、袋体の開口部が閉塞されるので、ブレードの破片が袋体の外部に飛散することを抑制できる。
【0008】
前記課題を解決するための第三の本発明は、転倒させる発電用風車のブレードを養生するブレード養生袋である。かかるブレード養生袋は、折り畳み可能な筒状の胴部と前記胴部の一端に形成された底部とを備えた袋体と、前記袋体を前記ブレードの先端部に固定する固定部と、前記ブレードを覆った状態で前記ブレードの基端部側となる前記袋体の開口部を閉じる開口部閉塞部材と、を備えたことを特徴とする。
本発明のブレード養生袋によれば、下向きのブレードの下端部に、折り畳んだ状態の袋体を被せて容易に取り付けることができる。この取付作業は、ブレードの下端部の高さで行うことなり、発電用風車の最上部と比較して大幅に低い位置での作業となる。したがって、発電用風車の最上部での高所作業が不要となり、施工コストと作業手間の低減を図ることができる。また、袋体を閉塞できるので、ブレードの破片が袋体の外部に飛散することを抑制できる。
【0009】
本発明のブレード養生袋において、前記袋体は、蛇腹状に折り畳まれるものが好ましい。このような構成によれば、袋体をブレードに被せた状態で、円滑に展開させることができる。
本発明のブレード養生袋において、前記袋体の折り畳み状態を維持する紐状の維持部材をさらに備えたものが好ましい。このような構成によれば、袋体の折り畳み状態を維持した状態でブレードを回転させることができる。また、ブレードを上向きにし、袋体の折り畳み状態を解除した後に袋体を展開することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブレード養生方法およびブレード養生袋によれば、発電用風車の最上部での高所作業が不要となり、施工コストと作業手間の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一の実施形態に係るブレード養生方法を示した図であって、(a)は袋体取付工程を示した発電用風車の正面図、(b)は回転工程を示した正面図、(c)は袋体展開工程を示した正面図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係るブレード養生袋を示した斜視図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係るブレード養生袋を示した図であって折り畳み状態を示した斜視図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係るブレード養生袋を示した図であって折り畳み状態を示した正面図である。
図5】本発明の第一の実施形態に係るブレード養生方法を示した図であって、袋体展開工程を示した正面図である。
図6】本発明の第一の実施形態に係るブレード養生方法を示した図であって、開口部閉塞工程を示した正面図である。
図7】発電用風車の転倒状態を示した側面図である。塔状建造物の転倒状態を示した平面図である。
図8】本発明の第二の実施形態に係るブレード養生方法を示した図であって、(a)は引揚部材掛止工程を示した発電用風車の正面図、(b)は袋体引揚工程を示した発電用風車の正面図である。
図9】本発明の第二の実施形態に係るブレード養生方法の袋体引揚工程を示した発電用風車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第一の実施形態に係るブレード養生方法およびブレード養生袋について、添付した図面を参照しながら説明する。かかるブレード養生方法およびブレード養生袋は、発電用風車の解体時において、発電用風車を転倒させる際にブレードを養生するためのものである。図1は、本発明の第一の実施形態に係るブレード養生方法を示した図であって、(a)は袋体取付工程を示した発電用風車の正面図、(b)は回転工程を示した正面図、(c)は袋体展開工程を示した正面図である。
【0013】
図1に示すように、発電用風車1は、タワー2とナセル3とブレード4とを備えている。タワー2は、例えば鋼管にて構成された塔体であり、地盤5に固設された基礎部6に固定支持されている。ナセル3は、ブレード4の回転を利用して発電する装置であり、タワー2の上端部に設置されている。ナセル3は、ケーシングの内部に、動力回転軸と増速機とブレーキ装置と発電機とを備えて構成されている。ケーシングは、タワー2の上端部で、回転軸方向に沿って前後に突出している。増速機は、動力回転軸の回転数を増やす装置であって、複数のギヤを組み合わせて設けられている。ブレーキ装置は、メンテナンス時等に動力回転軸の回転を停止させる装置である。ブレード4は、ナセル3の前端部に設けられたハブに複数本(例えば3本)設けられ、ハブを中心に放射状に配置されている。
【0014】
まず、ブレード養生袋10の構成を説明する。図2乃至図4に示すように、本実施形態に係るブレード養生袋10は、転倒させる発電用風車1のブレード4を養生するものである。ブレード養生袋10は、袋体11と、固定部12と、開口部閉塞部材13と、折畳み状態維持部材14と、展開用牽引部材15とを備えている。
袋体11は、ブレード4を覆う長尺の部材であり、折り畳み可能となっている。袋体11は、例えば化繊の土木シートにて構成されている。袋体11は、断面矩形の四角筒状の胴部16と、胴部16の長手方向の一端に形成された底部17と、長手方向の他端に設けられた開口部18とを有している。
【0015】
胴部16の各側面には、山部と谷部が長手方向に沿って交互に形成されている。すなわち、胴部16は蛇腹状になっている。胴部16の各側面の幅方向中間部には、帯状の補強ベルト19が長手方向に沿って付設されている。補強ベルト19は、山部と谷部に沿って折り畳み可能に構成されており、胴部16の伸縮に追従して伸縮する。各山部の頂部に位置する補強ベルト19には、ロープ通し20がそれぞれ設けられている。ロープ通し20は、リング状に形成されており、折畳み状態維持部材14が挿通される。
底部17には、通気孔21が複数形成されている(図3参照)。通気孔21は、袋体11内の通気性を確保するためのものであって、施工時や運搬時の作業を行い易くする。通気孔21は、底部17の中央部に複数(本実施形態では4か所)形成されている。なお、袋体11が通気性を有する素材で形成されている場合には、通気孔21は設けなくてよい。
【0016】
固定部12は、袋体11をブレード4の先端部に固定する部位である。固定部12は、係止部材22からなる。係止部材22は、先端に係止部23を備えた紐状部材であって、係止部材22の基端部は、袋体11の胴部16の内側において、底部17側の端部に取り付けられている。図3に示すように、係止部23は、ブレード4の先端部に取り付けられる係止凸部24に掛け止められる。係止凸部24は、接着等によって、ブレード4の側面に後付けで固定される。係止凸部24は、先端部がブレード4の基端側に屈曲したL字形状を呈している。係止部材22は、二つ設けられており、胴部16の側面の内、互いに対向する一対の側面にそれぞれ取り付けられている。なお、係止凸部24は、L字形状に限定されるものではなく、アイボルト等のように、先端が大きく係止部23を係止可能な形状のものであればよい。
【0017】
開口部閉塞部材13は、図2図4および図6に示すように、ブレード4を覆った状態でブレード4の基端部側となる袋体11の開口部18を閉じる部材である。開口部閉塞部材13は、ロープ25とリング部材28とを備えて構成されている。ロープ25は、開口部18を囲う開口筒部26の外表面に沿って巻き付けられている。ロープ25は、開口筒部26の外表面に取り付けられたロープ掛止部材27を介して開口筒部26に掛け止められている。ロープ掛止部材27は、縦長の帯状部材であって、上下両端部が開口筒部26に固定されている。ロープ掛止部材27の中間部と開口筒部26との間に、ロープ25が挿通されている。ロープ25は、開口筒部26を二周回っており、開口部18を閉塞する作業を行う際に両端が地上に届く長さとなっている。
ロープ25がロープ掛止部材27から下方に折り下げられる部分には、両側から延びるロープ25を束ねるリング部材28が設けられている。リング部材28にはロープ25が挿通されており、地上からロープ25を引っ張ると、下方向に引っ張る力が開口筒部26の周方向の力(開口筒部26を絞る力)に変換され、開口部18の閉塞作業が行い易くなるという作用効果を得られる。リング部材28は、支持紐30に支持されており、支持紐30は、開口筒部26の外表面に固定された支持リング29に掛け止められている。支持紐30は、一端がリング部材28に接続され、他端が地上まで延在する。閉塞する作業を行う際に、支持紐30を地上から引っ張ると、リング部材28が支持リング29側に引き上げられる(図6参照)。リング部材28は、ロープ掛止部材27の高さまで引き上げられ、ロープ25の引っ張り力の方向変換が円滑に行われる。
【0018】
折畳み状態維持部材14は、図2および図4に示すように、袋体11を折り畳んだ状態で維持するための紐状の部材であって、袋体11の胴部16の側面に設けられた一対のロープ31a,31bにて構成されている。各ロープ31a,31bの一端部は、開口筒部26の外側表面に固定され、その一端部から延在する部分は、胴部16の山部の頂部に設けられた複数のロープ通し20に挿通している。一方のロープ31aは、最も底部17側に位置するロープ通し20から延出し、他端部が地上に至る長さを有している。他方のロープ31bは、最も底部17側に位置するロープ通し20から延出し、他端部が一方のロープ31aと蝶結びができる長さを有している。ロープ31a,31bの一端部を底部17側に引っ張って、袋体11を折り畳み、ロープ31a,31bの他端部同士を蝶結びする。これによって、開口筒部26が底部17に近付いた状態で、折畳み状態が維持される。折畳み状態を解除する際には、地上から一方のロープ31aの他端部を引っ張って、蝶結びをほどくことで、ロープ31による開口筒部26の維持が解除され、袋体11が展開可能となる。
袋体11は蛇腹状態で畳んでおくと展開が容易となる。蛇腹の断面は偶数個の辺の多角形で構成され、隣り合う辺の山は互い違いに山谷に折りたたまれる。ロープ31は、蛇腹体の山部に設置されたロープ通し20に挿通されているので、ロープ通し箇所を山になるように畳むことで畳むのか容易となる。ロープ31で絞ると蛇腹の形状で袋体11が畳まれることになる。
【0019】
展開用牽引部材15は、図2および図4に示すように、袋体11を展開させる際に開口筒部26を地上から引っ張る部材であって、係止部材32とロープ33とを備えている。係止部材32は、帯状部材からなり、基端部が開口筒部26の外側表面に固定されている。係止部材32の先端部は環状に折り曲げられており、ロープ33を係止する部分となっている。ロープ33は、一端部が係止部材32に結ばれ、他端部は地上に至る部材である。ロープ33を地上から引っ張ることで、開口筒部26が下方に引き寄せられ、袋体11が展開し、ブレード4を覆う。
【0020】
次に、第一の実施形態に係るブレード養生方法を説明する。かかるブレード養生方法は、転倒させる発電用風車1のブレード4を養生する方法であって、第一回転工程と、袋体取付工程と、第二回転工程と、袋体展開工程と、開口部閉塞工程とを備えている。
第一回転工程は、養生対象のブレード4の先端が下方に向くように、ブレード4を回転させる工程である。第一回転工程では、ブレード4が垂直になる位置までブレード4を回転させて固定する。なお、元からブレード4が下方に向いた状態で停止している場合には、第一回転工程は省略可能である。
【0021】
袋体取付工程は、下向きの状態のブレード4の下端部に、ブレード養生袋10を被せて取り付ける工程である。図1の(a)に示すように、袋体取付工程では、ゴンドラに乗った作業員が行う。ゴンドラは、下向きの状態のブレード4の下端部の高さに届くものであればよい。袋体取付工程では、まず、ブレード4の下端部の側面に係止凸部24を固定する。その後、袋体11が折り畳まれた状態のブレード養生袋10をブレード4の下側から被せて、固定部12の係止部材22を係止凸部24に係止する(図3参照)。
【0022】
第二回転工程は、袋体が取り付けられた前記ブレードが上向きになるように前記ブレードを回転させる工程である。第二回転工程は、第一回転工程が省略された場合、単に回転工程と称することがある。図1の(b)に示すように、第二回転工程では、ブレード4を180度回転させて固定する。このとき、ブレード養生袋10は、折畳み状態維持部材14によって折畳み状態が維持されている。したがって、ブレード4の回転中に袋体11が展開することなく、安定した状態でブレード4を回転させることができる。
袋体展開工程は、ブレード養生袋10の袋体11を展開させて、ブレード4を覆う工程である。袋体展開工程では、まず、図4に示すように、蝶結びされた折畳み状態維持部材14のロープ31,31のうち、地上まで延在した一方のロープ31を地上から引っ張り、蝶結びをほどく。これによって、ブレード養生袋10の開口筒部26が下方に移動できるようになり、袋体11が展開可能となる。
その後、図5に示すように、展開用牽引部材15のロープ33を地上から引っ張り、開口筒部26がブレード4の基端部(下端部)に位置するまで下方に引き寄せる。これによって、ブレード養生袋10の袋体11が展開し、ブレード4を覆う。
【0023】
開口部閉塞工程は、ブレード4を覆った状態でブレード4の基端部側となる袋体11の開口部18を閉じる工程である。開口部閉塞工程では、図2および図6に示すように、まず、支持紐30を地上から引っ張り、リング部材28をロープ掛止部材27の高さまで引き上げる。その後、地上より開口部閉塞部材13のロープ25の両端部を引っ張り、開口筒部26を外側から締め付ける。このとき、ロープ25を引っ張った下向きの力は、リング部材28を介して水平方向に変換され、開口筒部26を効率的に締め付けることができる。
以上の作業で1本のブレード4の養生が完了する。他の2本のブレード4についても前記と同様の工程を行い、ブレード4の養生を行う。
【0024】
ブレード4の養生が完了した後は、図7に示すように、発電用風車1を転倒させる。このとき、ブレード4は、地面に衝突して破損することが想定されるが、本実施形態においては、ブレード4をブレード養生袋10で覆っているので、ブレード4の材料の破片が周囲へ飛散することを抑制できる。さらに、開口部閉塞部材13で開口部18を閉じているので、開口部18からのブレード4の材料の破片の飛散を防止でき、破片の飛散抑制効果がより一層高くなる。
【0025】
本実施形態のブレード養生方法によれば、ブレード養生袋10を設置するに際して、最も高い位置での作業は袋体取付工程となるが、袋体取付工程はブレード4の下端部の高さでの作業である。したがって、発電用風車1の最上部と比較して大幅に低い位置での作業となる。つまり、発電用風車1の最上部での高所作業が不要となり、施工コストと作業手間の低減を図ることができる。
また、袋体取付工程では、袋体11の底部17を固定部12でブレード4の先端部に固定しているので、ブレード4の最も低い位置で、袋体11の取付作業を行うことができる。さらに、袋体11の取付作業は、高所に移動可能なゴンドラまたは足場に乗った作業員が行っているので、袋体取付工程を安全に行うことができる。
【0026】
次に、図8および図9を参照しながら、第二実施形態に係るブレード養生方法を説明する。まず、本実施形態のブレード養生方法に用いられるブレード養生袋50の構成を説明する。図8に示すように、ブレード養生袋50は、折畳み可能な袋体にて構成されており、胴部51と、胴部51の長手方向の一端に形成された底部52と、長手方向の他端に設けられた開口部53とを有している。胴部51の側面には、山部と谷部が長手方向に沿って交互に形成されている。すなわち、胴部51は蛇腹状になっており、袋体が折り畳み可能となっている。ブレード養生袋50は、折り畳まれた状態で運搬され、ブレード4に設置される際に展開される。
【0027】
袋体の開口部53側には、引揚部材54が接続されている。引揚部材54は、一端部が袋体に繋がる紐状の部材であって、中間部がブレード4の基端部またはナセル3の先端部に設けられたハブ(ブレード4を支持する回転支持部)に掛け止められる。ハブに掛け止められた引揚部材54は、ハブで下方に折り返され、他端部が地上に向かって延在する。引揚部材54は、ハブの高さ寸法の略2倍の長さ寸法を有しており、地上に折り畳まれた状態で載置されたブレード養生袋50から延在し、ハブで折り返されて、他端部が地上まで届く長さになっている。
袋体の開口部53側には、袋体の開口部53を閉じる開口部閉塞部材(図示せず)が設けられている。開口部閉塞部材は、第一実施形態の開口部閉塞部材13と同じ構成であるため、説明を省略する。
【0028】
本実施形態に係るブレード養生方法は、回転工程と、引揚部材掛止工程と、袋体引揚工程と、開口部閉塞工程とを、備えている。
回転工程は、養生対象のブレード4の先端が下方に向くように、ブレード4を回転させる工程である。なお、元からブレード4が下方に向いた状態で停止している場合には、回転工程は省略可能である。
【0029】
引揚部材掛止工程は、引揚部材54をブレード4の基端部またはブレード4を支持する回転支持部(ハブ)に掛け止める工程である。引揚部材掛止工程では、引揚部材54の先端部(ブレード養生袋50とは反対側となる他端部)にドローン55等のUAV(Unmanned aerial vehicle)を取り付ける。そして、ドローン55を引揚部材54の先端部と共に、回転支持部の上方まで上昇させて回転支持部の上部を跨いだ後に地上まで下降させるか、もしくは、空中から引揚部材端部を落下させる。これによって、引揚部材54が、回転支持部に掛け止められる。
なお、ドローン55の荷揚能力が引揚部材54の重量を下回る場合は、より軽い引揚部材に引揚部材54を連結し、ドローン55によって軽い引揚部材を掛け止めた後に、軽い引揚部材を引っ張って、順次、太い径の引揚部材を引き上げて、袋体を揚重するようにしてもよい。また、引揚部材54を係止するものは、ドローン55に限定されるものではなく、クレーンや長尺の棒状部材を用いて行ってもよい。
【0030】
袋体引揚工程は、引揚部材54を引っ張ることにより、ブレード養生袋50(袋体)を引き揚げ、下向きの状態のブレード4をブレード養生袋50で覆う工程である。袋体引揚工程では、引揚部材54の先端部からドローン55を取り外し、引揚部材54を地上から引っ張る。これによって、ブレード養生袋50の開口部53側が上方に引っ張られ折畳み状態から展開していく。ブレード養生袋50の展開が終了した後も、引揚部材54を続けて引っ張り、ブレード養生袋50を地上から引き揚げる。このとき、ブレード養生袋50の開口部53が、下向きのブレード4の下端部に位置するように、地上からブレード養生袋50の位置調整を行う。ブレード養生袋50の開口部53がブレード4の基端部まで上昇して、ブレード養生袋50がブレード4を覆うまで、引揚部材54の引っ張りを継続する。
【0031】
開口部閉塞工程は、ブレード4を覆った状態でブレード4の基端部側となる袋体の開口部53を閉じる工程である。開口部閉塞工程では、第一実施形態と同様に、支持紐とロープを地上から引っ張り、開口筒部を外側から締め付けることで、開口部53を閉じる。
以上の作業で1本のブレード4の養生が完了する。他の2本のブレード4についても前記と同様の工程を行い、ブレード4の養生を行う。
【0032】
第二実施形態のブレード養生方法によれば、ブレード養生袋50をブレード4に設置するに際して、ドローン55を用いて引揚部材54を回転支持部に掛け止めて、引揚部材54の先端部を地上から引っ張っているので、高所での作業が不要となる。したがって、施工コストと作業手間の低減を図ることができる。また、ブレード養生袋50の構成は、第一実施形態のブレード養生袋10よりも簡略化できるので、製造コストを低減できる。
第二実施形態においては、ブレード4をブレード養生袋50で覆っているので、第一実施形態と同様に、ブレード4の材料の破片が周囲へ飛散するのを抑制することができる。さらに、ブレード4にブレード養生袋50を被せた後に開口部53を閉じているので、破片の飛散抑制効果がより一層高くなる。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、ブレード養生袋10に固定された紐状の係止部材22の先端に設けられた係止部23を、ブレード4の先端部に取り付けられた係止凸部24に掛け止めることで、ブレード養生袋10をブレード4に固定しているがこれに限定されるものではない。例えば、袋体11の底部17にボルト孔を形成し、ブレード4の先端部に直接ボルト止めするようにしてもよい。
また、前記実施形態では、展開用牽引部材15のロープ33を地上から引っ張り、ブレード養生袋10を展開させているが、これに限定されるものではない。例えば、開口筒部26に重りを取り付けておき、折畳み状態を解除した後に、重りの重量でブレード養生袋10を展開させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 発電用風車
4 ブレード
10 ブレード養生袋
11 袋体
12 固定部
13 開口部閉塞部材
14 折畳み状態維持部材
15 展開用牽引部材
18 開口部
50 ブレード養生袋
54 引揚部材
55 ドローン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9