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  • 特許-網針および網針の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】網針および網針の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 75/00 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
A01K75/00 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021128529
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2023023225
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】597128716
【氏名又は名称】日軽産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】若井 幸一
(72)【発明者】
【氏名】山野寺 英樹
(72)【発明者】
【氏名】木綿 利哉
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開平8-54(JP,U)
【文献】特開2001-148963(JP,A)
【文献】実開昭61-78894(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 73/12-77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸が巻かれる糸巻部と、
前記糸巻部の先端側に形成され先細りとなる先端部と、
前記糸巻部の後端側に形成され糸が係止される糸巻端部と、
前記先端部において板厚方向に貫通する孔部と、
前記孔部において前記糸巻部から延設される糸掛け用突起部と、を有する網針であって、
アルミニウム合金で一体形成されており、
表面および前記表面の反対側となる裏面の表面粗さがRa1.0以下であり、
前記糸巻部、前記先端部、前記糸巻端部、前記孔部および前記糸掛け用突起部を構成する角部が曲面になっていることを特徴とする網針。
【請求項2】
前記角部の曲率半径が0.3mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の網針。
【請求項3】
前記板厚が2~10mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の網針。
【請求項4】
糸が巻かれる糸巻部と、
前記糸巻部の先端側に形成され先細りとなる先端部と、
前記糸巻部の後端側に形成され糸が係止される糸巻端部と、
前記先端部において板厚方向に貫通する孔部と、
前記孔部において前記糸巻部から延設される糸掛け用突起部と、を有する網針の製造方法であって、
アルミニウム合金製の板材をレーザーにより切断し、中間部材を成形する第1工程と、
前記中間部材をバレル研磨により研磨する第2工程と、を含み、
前記第2工程では、表面および前記表面の反対側となる裏面の表面粗さがRa1.0以下となるように設定するとともに、前記糸巻部、前記先端部、前記糸巻端部、前記孔部および前記糸掛け用突起部を構成する角部が曲面となるように設定することを特徴とする網針の製造方法。
【請求項5】
前記第2工程では、前記角部の曲率半径が0.3mm以上となるように設定することを特徴とする請求項4に記載の網針の製造方法。
【請求項6】
前記第1工程では、圧延材を切断して前記板材を成形することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の網針の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網針および網針の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タモ網や漁網を編んだり、修復したりするときに使用される網針が知られている(特許文献1)。従来の網針は、竹製、木製、樹脂製、またはステンレス製であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平8-54号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
竹製、木製、又は樹脂製の網針は、経年劣化によって、材質や形状が変化し易くなるという問題がある。網針の材質や形状が変化すると、網針と漁網等との摩擦が大きくなったり、漁網等に引っ掛かり易くなったりするため作業性が低下するほか、破損が生じやすくなる。また、ステンレス製の網針は、加工が困難であるとともに加工コストが嵩むという問題がある。
【0005】
このような観点から、本発明は、耐久性の向上を図るとともに、容易に製造することができる網針および網針の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、糸が巻かれる糸巻部と、前記糸巻部の先端側に形成され先細りとなる先端部と、前記糸巻部の後端側に形成され糸が係止される糸巻端部と、前記先端部において板厚方向に貫通する孔部と、前記孔部において前記糸巻部から延設される糸掛け用突起部と、を有する網針であって、アルミニウム合金で一体形成されており、表面および前記表面の反対側となる裏面の表面粗さがRa1.0以下であり、前記糸巻部、前記先端部、前記糸巻端部、前記孔部および前記糸掛け用突起部を構成する角部が曲面になっていることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、アルミニウム合金製であるため、竹製、木製、又は樹脂製と比べて材質や形状が変化しづらく耐久性を高めることができる。また、漁網等を編んだり、修復したりする際、漁網等との摩擦の増大や、引っ掛かりを防ぐことができるため、作業性が低下することがない。また、アルミニウム合金製であるため、ステンレス製と比較して軟らかく加工が容易となり、加工コストを低減できる。また、アルミニウム合金製であるため、比較的軽量で、リサイクル性にも優れる。
【0008】
また、前記角部の曲率半径が0.3mm以上であることが好ましい。
かかる構成によれば、漁網等を編んだり、修復したりする際の作業性をより向上させることができる。
【0009】
また、前記板厚が2~10mmであることが好ましい。
かかる構成によれば、フィット感が向上して持ち易くなるため、漁網等を編んだり、修復したりする際の作業性をより向上させることができる。
【0010】
また、本発明は、糸が巻かれる糸巻部と、前記糸巻部の先端側に形成され先細りとなる先端部と、前記糸巻部の後端側に形成され糸が係止される糸巻端部と、前記先端部において板厚方向に貫通する孔部と、前記孔部において前記糸巻部から延設される糸掛け用突起部と、を有する網針の製造方法であって、アルミニウム合金製の板材をレーザーにより切断し、中間部材を成形する第1工程と、前記中間部材をバレル研磨により研磨する第2工程と、を含み、前記第2工程では、表面および前記表面の反対側となる裏面の表面粗さがRa1.0以下となるように設定するとともに、前記糸巻部、前記先端部、前記糸巻端部、前記孔部および前記糸掛け用突起部を構成する角部が曲面となるように設定することを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、アルミニウム合金製であるため、ステンレス製と比較して軟らかく加工が容易となり、加工コストを低減できる。また、第2工程のバレル研磨において、一の工程で表面粗さ及び角部の成形を行うことができ、容易に製造することができる。また、アルミニウム合金製であるため、竹製、木製、又は樹脂製と比べて材質や形状が変化しづらく耐久性を高めることができる。また、漁網等を編んだり、修復したりする際、漁網等との摩擦の増大や、引っ掛かりを防ぐことができるため、作業性を向上させることができる。また、アルミニウム合金製であるため、比較的軽量で、リサイクル性にも優れる。
【0012】
また、前記第2工程では、前記角部の曲率半径が0.3mm以上となるように設定することが好ましい。
かかる構成によれば、漁網等を編んだり、修復したりする際の作業性をより向上させることができる。
【0013】
また、前記第1工程では、圧延材を切断して前記板材を成形することが好ましい。
かかる構成によれば、鋳造や押出成形と比べて、成形型を作成する手間およびコストを削減できるため、より容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐久性の向上を図るとともに、容易に製造することができる網針および網針の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態の網針の斜視図である。
図2】本実施形態の網針の平面図である。
図3図1のIII-III視断面図である。
図4図1のIV-IV視断面図である。
図5図1のV-V視断面図である。
図6図1のVI-VI視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[構成]
図1は、本実施形態の網針1の斜視図であり、図2は、本実施形態の網針1の平面図である。網針1は、タモ網や漁網などを編んだり補修したりするために使用される器具である。網針1は、アルミニウム合金製で板状を呈しており、一体形成されている。アルミニウム合金の材質(種類)は、加工性や製造コストを考慮して適宜設定すればよい。網針1は、糸巻部2と、先端部3と、糸巻端部4と、糸掛け用突起部5とを備えている。網針1の厚さは、全体的に一定になっており、1~15mm、好ましくは2~10mmの範囲で用途に合わせて適宜設定すればよい。
【0017】
糸巻部2は、図示しない糸(網糸)が巻かれ、網針1の使用時に把持される部位である。先端部3は、糸巻部2の先端側に形成され先細りとなる部位である。先端部3には、板厚方向に貫通する孔部6が形成されている。孔部6は、先端部3と概ね同形状となるように切り欠かれている。
【0018】
糸巻端部4は、糸巻部2の後端側に形成され糸が係止される部位である。糸巻端部4は、網針1の後端部において後方に開放する凹部となっている。糸掛け用突起部5は、孔部6において糸巻部2から延設される部位である。糸掛け用突起部5は、糸巻部2の先端部から孔部6の幅方向中央において細長状に突出している。糸掛け用突起部5の先端は先細りとなっている。
【0019】
図1中、符号11は、網針1の表(おもて)面であり、符号12は、表面11の反対側となる裏面である。表面11及び裏面12は、いずれも平坦であり互いに平行になっている。網針1の表面11および裏面12の表面粗さ(面粗度)はRa1.0以下となっている。符号13,14は、網針1の一方側又は他方側において長手方向に亘って延設された側面である。
【0020】
また、糸巻部2、先端部3、糸巻端部4、糸掛け用突起部5および孔部6を構成する各角部(エッジ)が曲面になっている。より詳しくは、図3に示すように、表面11と側面13,14で構成された各角部、および、裏面12と側面13,14で構成された各角部が曲面になっている。つまり、先端部3を構成する各角部が曲面になっている。
【0021】
また、図4に示すように、表面11と孔部6の側面15,16とで構成された各角部、および、裏面12と孔部6の側面15,16とで構成された各角部が曲面になっている。
また、表面11と糸掛け用突起部5の側面17,18とで構成された各角部、および、裏面12と糸掛け用突起部5の側面17,18とで構成された各角部が曲面になっている。つまり、糸掛け用突起部5および孔部6を構成する各角部が曲面になっている。
【0022】
また、図5に示すように、表面11と側面13,14で構成された各角部、および、裏面12と側面13,14で構成された各角部が曲面になっている。また、図1に示すように、表面11と孔部6の側面21,21とで構成された各角部、および、裏面12と孔部6の側面21,21とで構成された各角部が曲面になっている。また、表面11と側面22(糸巻部2の後側の端面)とで構成される角部、および、裏面12と側面22とで構成される角部が曲面になっている。つまり、糸巻部2を構成する各角部が曲面になっている。
【0023】
また、図6に示すように、表面11と側面13,14とで構成された各角部、および、裏面12と側面13,14とで構成された各角部が曲面になっている。また、表面11と糸巻端部4の側面19,20とで構成される各角部、および、裏面12と、糸巻端部4の側面19,20とで構成される各角部が曲面になっている。
【0024】
また、図1に示すように、表面11と端面23,23とで構成される各角部、および、裏面12と端面23,23とで構成される各角部が曲面になっている。端面23は、網針1の後端の面である。また、端面23と側面13とで構成される角部、端面23と側面14とで構成される角部が曲面になっている。また、端面23と糸巻端部4の側面19,20とで構成される各角部が曲面になっている。つまり、糸巻端部4を構成する各角部が曲面になっている。
【0025】
本実施形態では、上記した各角部(エッジ)は断面視した場合に円弧状を呈し、曲率半径が0.3mm以上となっている。当該角部が0.3mm未満であると網と接触して網が切れやすくなるとともに、角部も摩耗しやすくなる。なお、各角部は、曲面で形成されていればよく、断面視した場合に楕円形、二次曲線形であってもよい。
【0026】
[製造方法]
次に、網針の製造方法について説明する。本実施形態に係る網針の製造方法では、準備工程と、第1工程と、第2工程とを行う。
【0027】
準備工程は、アルミニウム合金製の板材を形成する工程である。準備工程では、回転する一対のローラ(図示略)間にアルミニウム合金の塊を通し、圧延して板状に加工し、アルミニウム合金製の板材(圧延材)を形成する。
【0028】
第1工程は、レーザー加工で中間部材を成形する工程である。第1工程では、アルミニウム合金製の板材をレーザーにより切断し、網針1の外形と同等の中間部材を成形する。
【0029】
第2工程は、中間部材をバレル研磨により研磨する工程である。バレル研磨は、バレル槽内に研磨石(メディア)、ワーク(中間部材)、コンパウンド(潤滑剤)、水などを装入し、外部から与えた運動により相対運動差(摩擦)やフリー圧接を発生させてワークを研磨する加工法である。バレル研磨には、例えば、回転式、振動式、遠心式、流動式があるが、本実施形態では、いずれの方式も適用可能である。また、使用するメディアやコンパウンドの種類や、使用時間などは適宜設計できる。
【0030】
つまり、第2工程では、網針1の表面11及び裏面12の表面粗さがRa1.0以下となり、かつ、各角部の曲率半径が0.3mm以上となるようにバレル研磨の条件を設定する。以上により、網針1が完成する。
【0031】
[使用方法]
次に、網針1の使用方法について説明する。まず、糸の一端を糸掛け用突起部5に掛止めしつつ、糸を糸巻端部4と孔部6との間で往復して巻回する。これにより、糸巻部2の長手方向に糸が何重にも巻回される。次に、糸巻部2の糸を繰り出しながら、先端部3から縦糸又は隣り合う網孔に上下に交互に通していく。これにより、漁網等を編んだり、修復したりすることができる。
【0032】
[作用効果]
以上説明した本実施形態に係る網針1によれば、アルミニウム合金製であるため、竹製、木製、又は樹脂製と比べて材質や形状が変化しづらく耐久性を高めることができる。また、漁網等を編んだり、修復したりする際、漁網等との摩擦の増大や、引っ掛かりを防ぐことができるため、長期間に亘って作業性を維持させることができる。また、網針1がアルミニウム合金製であるため、ステンレス製と比較して軟らかく加工が容易となり、加工コストを低減できる。また、アルミニウム合金製であるため、比較的軽量で、リサイクル性にも優れる。
【0033】
また、網針1の板厚が2~10mmであることが好ましい。かかる構成によれば、網針1のフィット感が向上して持ち易くなるため、漁網等を編んだり、修復したりする際の作業性をより向上させることができる。
【0034】
また、バレル研磨により、一度の工程で上記した表面粗さ、角部の曲率半径を有する網針1を製造できる。これにより、製造コストを低減することができる。また、バレル研磨により、レーザー加工により生じたバリを容易に除去することができる。また、圧延材を切断して板材を成形することにより、鋳造や押出成形と比べて、成形型を作成する手間およびコストを削減できるため、より容易に製造することができる。また、レーザー加工であるため、糸掛け用突起部5および孔部6のような複雑な形状でも容易に加工することができるとともに、サイズ変更や形状変更などのカスタマイズにも対応し易い。
【0035】
[実施例]
出願人は、上記製造方法によって、網針1の4種類のサンプル[1]~[4]を製造した。サンプル[1]は、表面粗さがRa0.88であり、角部の曲率半径が0.54mmである。サンプル[2]は、表面粗さがRa0.55であり、角部の曲率半径が0.43mmである。サンプル[3]は、表面粗さがRa0.60であり、角部の曲率半径が0.36mmである。サンプル[4]は、表面粗さがRa0.55であり、角部の曲率半径が0.47mmである。サンプル[1]~[4]のいずれにおいても所望レベル以上の耐久性が確認された。また、サンプル[1]~[4]使用時において、各角部での漁網等の引っ掛かりを回避でき、スムーズに作業を行うことができた。
【0036】
[変形例]
(a):側面13~22及び端面23の表面粗さがRa1.0以下であってもよい。
(b):その他、本発明の構成要素について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 網針
2 糸巻部
3 先端部
4 糸巻端部
5 糸掛け用突起部
6 孔部
11 表(おもて)面
12 裏面
13~22 側面
23 端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6