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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】レーザ加工機
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/70 20140101AFI20250206BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
B23K26/70
B23Q11/08 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021173106
(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公開番号】P2023062919
(43)【公開日】2023-05-09
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 立
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晃一
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】実開平5-340(JP,U)
【文献】実開平4-118955(JP,U)
【文献】特開2004-114258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/70
B23Q 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビームをワークに照射してレーザ加工を行う加工機本体と、
前記加工機本体に設けられる本体カバーと、を備え、
前記本体カバーは、
前記加工機本体の周囲を覆うパーテーション本体と、
前記パーテーション本体の側面部に設けられた開口部を開閉するスライドドアと、を含み、
前記スライドドアは、
前記スライドドアを駆動する駆動部と、
前記駆動部が発生する駆動力によって移動して、前記開口部の一端部と前記開口部の中間部との間を開閉する第1ドアと、
前記第1ドアと連動して移動するとともに、作業者の手動操作によって前記第1ドアに対して相対的に移動する第2ドアと、を有し、
前記第2ドアは、
前記第1ドアが前記中間部まで閉じられた状態において前記第1ドアに対して相対的に移動することで、前記中間部と前記開口部の他端部との間を開閉する
レーザ加工機。
【請求項2】
前記加工機本体は、
前記ワークが載置されるパレットを含み、
前記パレットは、
前記スライドドアの開閉方向と直交する方向に沿って移動自在に構成され、前記スライドドアの下方において前記加工機本体から引き出し可能である
請求項1記載のレーザ加工機。
【請求項3】
前記第1ドアの位置及び前記第2ドアの位置を検知するセンサ部と、
前記センサ部の検知結果に基づいて、前記駆動部を制御する制御装置と、をさらに備える
請求項1又は2記載のレーザ加工機。
【請求項4】
前記作業者の入力操作に応じて、前記第1ドアの開閉を指示する操作信号を出力する操作部をさらに有し、
前記制御装置は、前記センサ部の前記検知結果と、前記操作部から出力される前記操作信号とに基づいて、前記駆動部を制御する
請求項3記載のレーザ加工機。
【請求項5】
前記駆動部は、
出力軸にピニオンが取り付けられた駆動モータと、
前記第1ドアに配置されて、前記ピニオンの回転運動を前記第1ドアの直線運動へと変換するラックと、
前記ピニオンと前記ラックとが歯合する歯合状態と、前記ピニオンと前記ラックとが離間する離間状態とを切り替えるために、前記駆動モータを移動させるアクチュエータと、を有し、
前記制御装置は、
前記歯合状態に設定した後に、前記第1ドアの開閉に必要な回転数である通常回転数で前記駆動モータを動作させ、
前記駆動モータを停止させた後に、前記離間状態に設定する
請求項3又は4記載のレーザ加工機。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記通常回転数よりも低い回転数で前記駆動モータを動作させた後に、前記歯合状態に設定し、前記歯合状態に設定した後に、前記通常回転数で前記駆動モータを動作させる
請求項5記載のレーザ加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
板金などの板状のワークに対して切断加工を行う加工機として、レーザビームを用いて加工を行うレーザ加工機が知られている。レーザ加工機は、ワークにレーザビームを照射することで、熱エネルギーによってワークを切断する。レーザビームによる周囲への影響を抑制する、及び加工時に発生するガス及び粉塵等が周囲に飛散しないようにするとの観点から、レーザ加工を行う加工機本体の周囲は、本体カバーによって覆われている。
【0003】
特許文献1には、加工機本体を本体カバー(防塵室)内に密閉する構成が開示されている。本体カバーには、ワークを搬入するための開口部である搬入口と、搬入口を自動で開閉するドアが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-10380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本体カバーの開口部を開閉するドアは、ワークを搬入したり、ワークから切り出されたパーツを取り出したりする際に開閉される。また、このドアは、パーツの寸法を測定したり、パーツの加工品質を確認したりするために、加工動作を一時的に停止させた状態で開閉されることもある。ドアの開閉は様々な状況で発生するため、ドアの開閉を自動で行う場合には、物体等の挟み込みに十分留意する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のレーザ加工機は、レーザビームをワークに照射してレーザ加工を行う加工機本体と、加工機本体に設けられる本体カバーと、を備え、本体カバーは、加工機本体の周囲を覆うパーテーション(Partition)本体と、パーテーション本体の側面部に設けられた開口部を開閉するスライドドアと、を含んでいる。スライドドアは、スライドドアを駆動する駆動部と、駆動部が発生する駆動力によって移動して、開口部の一端部と開口部の中間部との間を開閉する第1ドアと、第1ドアと連動して移動するとともに、作業者の手動操作によって第1ドアに対して相対的に移動する第2ドアと、を有し、第2ドアは、第1ドアが中間部まで閉じられた状態において第1ドアに対して相対的に移動することで、中間部と開口部の他端部との間を開閉する。
【0007】
本発明の一態様のレーザ加工機によれば、第2ドアが開口部の他端部に到達することで、スライドドアが全閉状態となる。第1ドアの開閉は自動で行われるが、第2ドアの開閉は作業者の手動操作となる。これにより、第2ドアが開口部の他端部に到達する動作を作業者に委ねることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、作業者自身が第2ドアを手動操作することができるので、物体等の挟み込みの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態に係るレーザ加工機を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、レーザ加工機本体の要部及びパレットの正規位置を示す図である。
図3図3は、レーザ加工機本体の要部及びパレットの引出位置を示す図である。
図4図4は、第1ドアを駆動する駆動部を示す図である。
図5図5は、スライドドアの動作範囲を示す説明図である。
図6図6は、スライドドアの制御系を示すブロック図である。
図7図7は、スライドドアの開動作の第1態様を説明するタイミングチャートである。
図8図8は、スライドドアの開動作の第1態様を説明するタイミングチャートである。
図9図9は、スライドドアの閉動作の第1態様を説明するタイミングチャートである。
図10図10は、スライドドアの閉動作の第1態様を説明するタイミングチャートである。
図11図11は、スライドドアの開動作の第2態様を説明するタイミングチャートである。
図12図12は、スライドドアの開動作の第2態様を説明するタイミングチャートである。
図13図13は、スライドドアの閉動作の第2態様を説明するタイミングチャートである。
図14図14は、スライドドアの閉動作の第2態様を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本実施形態に係るレーザ加工機について説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るレーザ加工機の構成を模式的に示す斜視図である。まず、本実施形態に係るレーザ加工機1の概要を説明する。このレーザ加工機1は、レーザビームをワークに照射してレーザ加工を行う加工機本体10と、加工機本体10に設けられる本体カバー60と、を備えている。本体カバー60は、加工機本体10の周囲を覆うパーテーション本体70と、パーテーション本体70の側面部に設けられた開口部OPを開閉するスライドドア80と、を含んでいる。スライドドア80は、スライドドア80を駆動する駆動部と、駆動部が発生する駆動力によって移動して、開口部OPの後端部(一端部)Po1と開口部OPの中間部Po3との間を開閉する第1ドア81と、第1ドア81と連動して移動するとともに、作業者の手動操作によって第1ドア81に対して相対的に移動する第2ドア82と、を有している。第2ドア82は、第1ドア81が中間部Po3まで閉じられた状態において第1ドア81に対して相対的に移動することで、中間部Po3と開口部OPの前端部(他端部)Po2側との間を開閉する。
【0012】
以下、図1乃至図3を参照し、本実施形態に係るレーザ加工機の詳細を説明する。図2は、レーザ加工機本体の要部及びパレットの正規位置を示す図である。図3は、レーザ加工機本体の要部及びパレットの引出位置を示す図である。本明細書では、水平方向において直交する左右方向及び前後方向と、左右方向及び前後方向それぞれに直交する上下方向とを方向の定義として用いる。
【0013】
図1に示すように、レーザ加工機1は、加工機本体10と、本体カバー60とを備えている。
【0014】
図2及び図3に示すように、加工機本体10は、基台11と、サイドフレーム12と、ヘッド駆動機構15と、加工ヘッド30と、パレット50とを備えている。
【0015】
基台11は、概ね直方体状に構成されており、床面などの設置面に設置される。
【0016】
サイドフレーム12は、基台11の前縁部及び後縁部にそれぞれ配置されている。前縁部及び後縁部のサイドフレーム12は、互いに平行に配置されている。
【0017】
ヘッド駆動機構15は、加工ヘッド30をワークの面内方向に沿って移動する機構である。ヘッド駆動機構15は、X軸キャリッジ16と、Y軸キャリッジ19とを備えている。
【0018】
X軸キャリッジ16は、門型形状を有している。X軸キャリッジ16は、一対のサイドフレーム12によって支持されており、サイドフレーム12に沿って移動可能に構成されている。X軸キャリッジ16は、サイドフレーム12に設けられたX軸キャリッジ駆動部(図示せず)によって駆動され、左右方向に移動する。
【0019】
Y軸キャリッジ19は、X軸キャリッジ16に配置されている。Y軸キャリッジ19は、は、X軸キャリッジ16によって支持されており、X軸キャリッジ16に沿って移動可能に構成されている。Y軸キャリッジ19は、X軸キャリッジ16に設けられたY軸キャリッジ駆動部(図示せず)によって駆動され、前後方向に移動する。
【0020】
加工ヘッド30は、ワークの上方からレーザビームを照射して、ワークに対してレーザ加工を行う。加工ヘッド30には、図示しないプロセスファイバを介して、レーザ発振器110から射出されたレーザビームが伝送されている。加工ヘッド30へと伝送されたレーザビームは、加工ヘッド30の内部に設けられた光学系を経て、加工ヘッド30の先端部に設けられた開口からワークに照射される。
【0021】
加工ヘッド30は、Y軸キャリッジ19に固定されている。X軸キャリッジ駆動部及びY軸キャリッジ駆動部を駆動して、X軸キャリッジ16及びY軸キャリッジ19を移動させることにより、加工ヘッド30をワークの面内方向と平行な左右方向及び前後方向にそれぞれ移動させることができる。
【0022】
加工ヘッド30は、ヘッド駆動機構15による移動を通じて、予め定められた加工範囲の中で、レーザ加工を行うことができる。本実施形態のレーザ加工機1は、小さいサイズのワークを想定した装置であり、加工範囲は、最大で4'×4'(1219mm×1219mm)サイズのワークを加工することができる範囲に設定されている。
【0023】
パレット50は、一対のサイドフレーム12によって水平に支持されている。パレット50には、ワークが載置される。パレット50は、左右方向に横長に形成されている。パレット50の左右方向の長さは、加工機本体10の左右方向の長さとほほ同じである。パレット50には、最大で4'×8'(1219mm×2438mm)サイズのワークを載置することができる。すなわち、パレット50には、加工範囲よりも大きなサイズのワークを載置することができる。
【0024】
パレット50は、枠体51と、複数のスキッド52と、複数のクランプ部53とを備えている。
【0025】
枠体51は、上面視において左右方向に横長となる略矩形のフレーム部材である。
【0026】
複数のスキッド52は、パレット50に載置されるワークを支持する。複数のスキッド52は、左右方向にかけて間隔を空けて配置されている。個々のスキッド52は、前後方向に延在する板状の部材であり、鋼などの金属材料、例えば軟鋼から構成されている。スキッド52は、前後方向と平行に配置され、スキッド52の両端は、枠体51に対して固定されている。枠体51に固定されたスキッド52は、例えば鉛直に起立している。
【0027】
個々のスキッド52は、それぞれが上方に向かって突出する複数の突出部を備えている。複数の突出部は、スキッド52の上端部に、前後方向にかけて間隔を空けて設けられている。個々の突出部は、上下方向に沿って縦長となる板体であり、上端部に向かう程に幅が狭くなるような山形の形状を有している。ワークは、スキッド52の頂部、すなわち個々の突出部の頂点において支持される。
【0028】
複数のクランプ部53は、スキッド52によって支持されるワークを固定する。複数のクランプ部53は、枠体51に固定されている。
【0029】
加工機本体10は、制御装置100、及びレーザ発振器110をさらに有している。制御装置100は、レーザ加工機1の動作を制御する。制御装置100は、箱形の筐体、この筐体の内部に収容される回路基板などで構成されている。レーザ発振器110は、レーザビームを生成し、加工ヘッド30に対してレーザビームを供給する。レーザ発振器110は、箱形の筐体、この筐体の内部に収容される電子部品及び電機部品などで構成されている。
【0030】
制御装置100及びレーザ発振器110は、加工機本体10の基台11に配置されている。具体的には、図3に示すように、制御装置100は、基台11の右端下方に配置され、基台11に固定されている。図2及び図3に示すように、レーザ発振器110は、基台11の右端上方に配置され、基台11に固定されている。レーザ発振器110は、制御装置100の上方に配置されており、レーザ発振器110と制御装置100との間には隙間となる空間部が形成されている。
【0031】
図1に示すように、加工機本体10は、操作部120をさらに有している。操作部120は、レーザ加工機1を動作させるために、作業者が入力操作を行うための装置である。例えば、操作部120は、ディスプレイ上に表示される情報に従って入力操作を行うことができるタッチパネル、キーボードなどを主体に構成されている。作業者は、操作部120を操作することで、レーザ加工機1に対して様々な情報を入力することができる。また、作業者は、ディスプレイに表示される情報から、レーザ加工機1に関する様々な情報を把握することができる。
【0032】
このような構成の加工機本体10においては、図2及び図3に示すように、パレット50は、サイドフレーム12に固定されたガイド部材(図示せず)を介して、左右方向へ移動自在に支持されている。ガイド部材は、パレット50の枠体51に設けられたレールを摺動自在に支持することで、パレット50の直線運動をガイドする。
【0033】
パレット50の左端には、作業者がパレット50を移動させるために把持する把手部(図示せず)が設けられている。作業者は、把手部を把持してパレット50を左右方向に動かすことで、正規位置と引出位置との間でパレット50を移動させることができる。
【0034】
図2に示すように、パレット50が加工機本体10の最も右奥に位置する場合、パレット50の位置は正規位置となる。パレット50が正規位置にある場合、パレット50の左側半分ほどの領域が加工範囲に含まれた状態となる。パレット50の残りの領域(右側の領域)は、制御装置100とレーザ発振器110との間に形成される空間部に進入している。
【0035】
図3に示すように、パレット50を左方向へと引き出すと、パレット50は正規位置から引出位置まで移動する。パレット50が引出位置にある場合、パレット50の左側の領域は、加工機本体10の基台11よりも外側に飛び出した状態となる。また、パレット50が引出位置にある場合、パレット50の右側半分ほどの領域が加工範囲に含まれた状態となる。このため、パレット50を正規位置と引出位置とで切り替えることで、パレット50に載置される最大サイズのワーク、例えば4'×8'サイズのワークの全域を加工することができる。
【0036】
図1に示すように、本体カバー60は、加工機本体10に設けられている。本体カバー60は、レーザビームによる周囲への影響を抑制したり、加工時に発生するガス及び粉塵が周囲に飛散することを抑制したりする役割を担っている。本体カバー60は、パーテーション本体70と、スライドドア80とを含んでいる。
【0037】
パーテーション本体70は、加工機本体10の周囲を覆う部材である。パーテーション本体70は、固定壁71と、可動壁75とで構成されている。
【0038】
固定壁71は、加工機本体10の後側面とその周縁部を覆っている。可動壁75は、加工機本体10の前側面、上面、右側面を覆っている。可動壁75は、テレスコピック(telescopic)構造によって、左右方向に沿って伸縮可能に構成されている。可動壁75が左側へと引き出されると可動壁75が伸び、加工機本体10は可動壁75によって覆われた状態となる。一方、可動壁75が右側へと押し込まれると可動壁75が縮み、加工機本体10が外部へと現れた状態となる。
【0039】
パーテーション本体70の左側面には、開口部OPが設けられている。作業者は、開口部OPを介して、パーテーション本体70によって囲まれた空間内及び加工機本体10に対してアクセスすることができる。
【0040】
スライドドア80は、開口部OPを開閉する。スライドドア80は、第1ドア81と第2ドア82とを含んでいる。スライドドア80は、第1ドア81と第2ドア82とが協働することで、開口部OPの後端部Po1(以下「開口後端部Po1」という)から、開口部OPの前端部Po2(以下「開口前端部Po2」という)までの間を開閉する。
【0041】
第1ドア81は、固定壁71によって支持されており、前後方向に沿って移動可能に構成されている。第1ドア81は、駆動部が発生する駆動力によって前後方向に移動することができる。
【0042】
図4は、第1ドアを駆動する駆動部を示す図である。スライドドア80は、駆動モータ85と、アクチュエータ86と、ラック87とをさらに含んでいる。駆動モータ85、アクチュエータ86及びラック87は、スライドドア80を駆動する駆動部を構成している。
【0043】
駆動モータ85は、スライドドア80を駆動する駆動源である。駆動モータ85は、アクチュエータ86に固定されている。駆動モータ85は、例えばサーボモータである。駆動モータ85の出力軸には、第1ドア81の背面に前後方向に沿って配置されたラック87と歯合するピニオン(図示せず)が設けられている。これにより、第1ドア81は、駆動モータ85が発生する駆動力によって前後方向に移動する。
【0044】
アクチュエータ86は、固定壁71のうち左側面を形成する壁面の裏面に設けられた裏面パネル72に固定されている。裏面パネル72は、スライドドア80が通過することができるように、固定壁71に対して一定の距離を隔てて配置されている。アクチュエータ86は、駆動モータ85を上下方向に沿って昇降する。アクチュエータ86は、例えばエアシリンダである。アクチュエータ86によって駆動モータ85が上昇端まで到達すると、駆動モータ85の出力軸に設けられたピニオンが、第1ドア81に設けられたラック87に対して歯合する(歯合状態)。一方、アクチュエータ86によって駆動モータ85が下降端まで到達すると、駆動モータ85の出力軸に設けられたピニオンは、第1ドア81に設けられたラック87から離間される(離間状態)。駆動モータ85が動作し、その出力軸が回転したとしても、離間状態では第1ドア81は移動しない。
【0045】
図1に示すように、第2ドア82は、第1ドア81によって支持されており、前後方向に沿って移動可能に構成されている。第2ドア82は、第1ドア81が前後方向に移動すると、この第1ドア81と連動して移動する。第1ドア81が前後方向に移動すれば、第2ドア82も第1ドア81と一緒に移動する。一方、作業者が第2ドア82を手動操作すると、具体的には、作業者が第2ドア82に対して前後方向に沿って力を加えると、第2ドア82は、作業者の操作力によって前後方向に移動することができる。
【0046】
なお、作業者が第2ドア82を手動操作したときに、第2ドア82の移動にともなって第1ドア81が移動してしまう虞がある。そこで、前後方向に一定の閾値以上の力が作用しない限り第1ドア81が静止したままとなるように、第1ドア81には、静止した状態を維持するための構造が採用されている。これにより、作業者が第2ドア82を押し引きしても、第1ドア81は静止したままとなり、第2ドア82のみが、第1ドア81に対して相対的に移動する。
【0047】
図5は、スライドドアの動作範囲を示す説明図である。第1ドア81は、第1ドア81が最も開いたときの位置である第1開端位置と、第1ドア81が最も閉じたときの位置である第1閉端位置との間を移動する。第1ドア81が第1閉端位置にある場合、第1ドア81の前端81aは、開口部OPの中間部Po3(以下「開口中間部Po3」という)に位置する。このとき、開口後端部Po1から開口中間部Po3までの範囲は、第1ドア81によって閉じられる。一方、第1ドア81が第1開端位置にある場合、第1ドア81の前端81aは、開口後端部Po1に位置する。このとき、開口後端部Po1から開口中間部Po3までの範囲は開放される(ただし、後述する第2ドア82の位置が、後述する第2開端位置に存在する場合に限る)。第1ドア81が第1開端位置と第1閉端位置との間を前後方向に移動することで、開口後端部Po1と開口中間部Po3との間の範囲が第1ドア81によって開閉される。
【0048】
第2ドア82は、第2ドア82が最も開いたときの位置である第2開端位置と、第2ドア82が最も閉じたときの位置である第2閉端位置との間を移動する。第2ドア82が第2閉端位置にある場合、第2ドア82の前端82aは、第1ドア81の前端81aから最も離れた位置に存在する。第1ドア81が開口中間部Po3まで閉じられている状態において第2ドア82が第2閉端位置にある場合には、開口中間部Po3から開口前端部Po2までの範囲は、第2ドア82によって閉じられる。このとき、第2ドア82は、ラッチ機構などの固定機構により閉状態が拘束される。一方、第2ドア82が第2開端位置にある場合、第2ドア82の前端82aは、第1ドア81の前端81aと概ね同じ位置に存在する。第1ドア81が開口中間部Po3まで閉じられている状態において第2ドア82が第2開端位置にある場合、開口中間部Po3から開口前端部Po2までの範囲は開放される。第1ドア81が開口中間部Po3まで閉じられた状態で、第2ドア82が第2開端位置と第2閉端位置との間を前後方向に移動することで、開口中間部Po3と開口前端部Po2との間の範囲が第2ドア82によって開閉される。なお、第2開端位置及び第2閉端位置のそれぞれは、第1ドア81を基準とする相対的な位置であり、第1ドア81が存在する位置によって第2開端位置及び第2閉端位置の絶対的な位置は相違する。
【0049】
第1ドア81及び第2ドア82は、それぞれ開端位置及び閉端位置に存在する以外にも、開端位置から閉端位置までの間の任意の位置で停止することができる。この場合、開口後端部Po1から開口前端部Po2までの範囲は、第1ドア81及び第2ドア82の開度に応じた割合で開放される。
【0050】
このように、スライドドア80は、第1ドア81と第2ドア82とが協働することで、開口後端部Po1と開口前端部Po2との間を開閉する。スライドドア80の開閉方向は、前後方向に対応しており、パレット50の引出方向に対して直交する。パレット50は、スライドドア80の下端よりも低い位置に配置されている。このため、パレット50が正規位置にあるときのみならず、パレット50が引出位置にあるときでも、スライドドア80の開閉を行うことができる。
【0051】
図6は、スライドドアの制御システムを示すブロック図である。以下、レーザ加工機1の制御システムのうち、スライドドア80の制御システムを説明する。スライドドア80の制御システムは、制御装置100を中心に構成されている。
【0052】
制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサ(Hardware Processor)と、メモリ(Memory)と、各種のインターフェース(Interface)とを有するコンピュータによって構成されている。メモリ、各種のインターフェースは、バスを介してハードウェアプロセッサに接続されている。ハードウェアプロセッサによってメモリに格納されたプログラムを実行させることにより、制御装置100が備える種々の機能が実現される。
【0053】
図4及び図6に示すように、制御装置100には、第1ドア81及び第2ドア82の位置を検知するセンサ部から、オン及びオフで識別されるセンサ信号が入力されている。センサ部は、第1センサ91、第2センサ93、及び第3センサ95を含んでいる。第1センサ91、第2センサ93、及び第3センサ95は、それぞれリミットスイッチなどで構成されている。
【0054】
図4に示すように、第1センサ91、第2センサ93、及び第3センサ95は、裏面パネル72に固定されている。すなわち、第1センサ91、第2センサ93、及び第3センサ95は、第1ドア81及び第2ドア82の移動に拘わらず、不動である。
【0055】
図4及び図5に示すように、第1センサ91は、第2ドア82に固定された第1ドグ90によってオンオフが切り替えられる。第2ドア82の前端82aが開口中間部Po3及びその近傍にある場合、第1センサ91は、第1ドグ90に反応してオンとなる。一方、第2ドア82の前端82aが開口中間部Po3から離れた位置にある場合、第1センサ91はオフとなる。第2ドア82の前端82aが開口中間部Po3及びその近傍に位置する状況としては、第1ドア81が開口中間部Po3まで閉じられている状態で第2ドア82が第2開端位置にある場合、或いは、第1ドア81が開口後端部Po1まで開かれている状態で第2ドア82が第2閉端位置にある場合などが該当する。
【0056】
第2センサ93は、第1ドア81に固定された第2ドグ92によってオンオフが切り替えられる。第1ドア81が第1開端位置にある場合、すなわち第1ドア81の前端81aが開口後端部Po1にある場合、第2センサ93は、第2ドグ92に反応してオンとなる。一方、第1ドア81が第1開端位置以外の位置にある場合には、第2センサ93はオフとなる。
【0057】
第3センサ95は、第1ドア81に固定された第3ドグ94によってオンオフが切り替えられる。第1ドア81が第1閉端位置にある場合、すなわち第1ドア81の前端81aが開口中間部Po3にある場合、第3センサ95は、第3ドグ94に反応してオンとなる。一方、第3センサ95は、第1ドア81が第1閉端位置以外の位置にある場合にはオフとなる。
【0058】
図6に示すように、制御装置100には、操作部120から出力される操作信号が入力されている。操作部120から出力される操作信号には、第1ドア81を開けるための入力操作をオンオフで示す開操作信号、第1ドア81を閉じるための入力操作をオンオフで示す閉操作信号が含まれる。
【0059】
制御装置100は、第1センサ91、第2センサ93、及び第3センサ95から出力されるセンサ信号、及び操作部120から出力される操作信号に基づいて、駆動モータ85及びアクチュエータ86の動作を制御する。
【0060】
以下、本実施形態に係るレーザ加工機1におけるスライドドア80の動作について説明する。
【0061】
<開動作の第1態様>
図7及び図8は、スライドドアの開動作の第1態様を説明するタイミングチャートである。この第1態様は、作業者が第2ドア82を手動操作することで、スライドドア80を全閉状態から全開状態まで動作させる一連の動作を示すものである。
【0062】
スライドドア80が全閉状態の場合、第1ドア81は第1閉端位置に、第2ドア82は第2閉端位置にある。すなわち、第1ドア81の前端81aは開口中間部Po3にあり、第2ドア82の前端82aは開口前端部Po2にある(図7の(a1)の状態)。
【0063】
まず、作業者は、ラッチ機構による拘束を解除しつつ、第2ドア82に対して後方向(開方向)に向かう力を加える手動操作を行い、第2ドア82を第2開端位置へ向けて移動させる。このとき、第1ドア81は静止したまま、第2ドア82のみが移動する(図7の(a2)の状態)。第2ドア82が第2開端位置に近づき、第2ドア82の前端82aが開口中間部Po3の近傍に到達すると(図7の(a3)の状態)、第1センサ91がオフからオンへと切り替わる。
【0064】
制御装置100は、第1センサ91がオンへと切り替わると、一定時間Ta1が経過した後にアクチュエータ86をオンする。アクチュエータ86のオンから時間Ta2が経過すると、アクチュエータ86が動作することで駆動モータ85が下降端から上昇を開始する。そして、アクチュエータ86のオンから時間Ta3が経過すると、駆動モータ85が上昇端へと到達する。これにより、駆動モータ85の出力軸に設けられたピニオンが、第1ドア81に設けられたラック87に対して歯合する。
【0065】
第1センサ91がオンへと切り替わってから一定時間Ta4(Ta4>Ta1)が経過すると、制御装置100は、駆動モータ85をオンする。駆動モータ85のオンに応じて、駆動モータ85が動作すると、駆動モータ85の出力軸が、第1ドア81を前後方向へと移動させるための設定速度に応じた回転数(通常回転数)で回転する。これにより、第1ドア81は、第1開端位置へ向かって移動を開始する。
【0066】
なお、制御装置100は、第1センサ91がオンへと切り替わってから一定時間Ta4が経過するタイミングよりも先行したタイミング、例えば時間Ta1が経過したタイミングで駆動モータ85をオンしてもよい。このとき、制御装置100は、駆動モータ85の出力軸が通常回転数よりも低い回転数で回転するように、駆動モータ85を制御する。したがって、アクチュエータ86が駆動モータ85を上昇端へと上昇させる際には、駆動モータ85が低い回転数で回転する。これにより、第1ドア81が予期せずに移動して、ピニオンの歯とラック87の歯とに位置ずれが生じていたとしても、ピニオンとラック87とを適切に歯合させることができる。そして、時間Ta4が経過すると、制御装置100は、駆動モータ85を通常回転数で動作させる。
【0067】
図8に示すように、第1ドア81が第1開端位置に向かって移動を開始すると、第1ドア81が第1閉端位置から離れるため、第3センサ95がオンからオフへと切り替わる。
【0068】
また、第2ドア82は、第1ドア81と連動して移動する。これにより、第2ドア82の前端82aが開口中間部Po3から離れるため、第1センサ91がオンからオフへと切り替わる。
【0069】
駆動モータ85のオンが継続している間、第1ドア81は、後方向へ向かって移動する(図8の(a4)の状態)。第1ドア81が移動している間、第2ドア82は、第1ドア81と連動して移動する。
【0070】
第1ドア81が第1開端位置に到達すると(図8の(a5)の状態)、第2センサ93がオフからオンへと切り替わる。
【0071】
制御装置100は、第2センサ93がオンに切り替わると、一定時間Ta5が経過した後に駆動モータ85をオフする。駆動モータ85のオフにより、駆動モータ85が停止するので、第1ドア81は停止する。このとき、第1ドア81の前端81aは開口後端部Po1に位置し、第2ドア82の前端82aも開口後端部Po1の近傍に位置する。
【0072】
第2センサ93がオンに切り替わってから一定時間Ta6(Ta5<Ta6)が経過すると、制御装置100は、アクチュエータ86をオフする。アクチュエータ86のオフから一定時間Ta7が経過すると、駆動モータ85が上昇端から下降を開始する。そして、アクチュエータ86のオフから時間Ta8が経過すると、駆動モータ85が下降端へと到達する。駆動モータ85の出力軸に設けられたピニオンは、第1ドア81に設けられたラック87から離間する。
【0073】
以上の動作により、スライドドア80が全閉状態から全開状態へと移行する。この動作において、制御装置100は、以下の通りの制御を行っている。すなわち、制御装置100は、第1ドア81が第1閉端位置にあるときに第2ドア82が第2開端位置へと到達したことを条件に、駆動モータ85を動作させ、これにより、第1ドア81を開口後端部Po1に向かって移動させる。そして、制御装置100は、第1ドア81が第1開端位置へと到達したことを条件に、駆動モータ85を停止させ、これにより、第1ドア81を停止させる。
【0074】
<閉動作の第1態様>
図9及び図10は、スライドドアの閉動作の第1態様を説明するタイミングチャートである。この第1態様は、作業者が第2ドア82を手動操作することで、スライドドア80を全開状態から全閉状態まで動作させる一連の動作を示すものである。
【0075】
スライドドア80が全開状態の場合、第1ドア81は第1開端位置に、第2ドア82は第2開端位置にある。すなわち、第1ドア81の前端81aは開口後端部Po1にあり、第2ドア82の前端82aも開口後端部Po1に近接した位置にある(図9の(b1)の状態)。
【0076】
まず、作業者は、第2ドア82に対して前方向(閉方向)に向かう力を加える手動操作を行い、第2ドア82を第2閉端位置に向けて移動させる。このとき、第1ドア81は静止したまま、第2ドア82のみが移動する(図9の(b2)の状態)。第2ドア82が第2開端位置に近づき、第2ドア82の前端82aが開口中間部Po3の近傍に到達すると(図9の(b3)の状態)、第1センサ91がオフからオンへと切り替わる。
【0077】
制御装置100は、第1センサ91がオンへと切り替わったことを判断すると、上述した開動作の第1態様で示した手順と同様に、アクチュエータ86及び駆動モータ85をそれぞれオンする。
【0078】
図10に示すように、駆動モータ85のオンに伴って第1ドア81が第1閉端位置へ向かって移動を開始すると、第1ドア81が第1開端位置から離れるため、第2センサ93がオンからオフへと切り替わる。
【0079】
また、第2ドア82は、第1ドア81と連動して移動する。これにより、第2ドア82の前端82aが開口中間部Po3から離れるため、第1センサ91がオンからオフへと切り替わる。
【0080】
駆動モータ85のオンが継続している間、第1ドア81は、前方向へ向かって移動する(図10の(b4)の状態)。第1ドア81が移動している間、第2ドア82は、第1ドア81と連動して移動する。
【0081】
第1ドア81が第1閉端位置に到達すると(図10の(b5)の状態)、第3センサ95がオフからオンへと切り替わる。
【0082】
制御装置100は、第3センサ95がオンへと切り替わると、上述した開動作の第1態様で示した手順と同様に、アクチュエータ86及び駆動モータ85をそれぞれオフする。
【0083】
最後に、作業者は、第2ドア82に対して前方向に向かう力を加える手動操作を行い、第2ドア82を第2閉端位置まで押し込むと、ラッチ機構によって第2ドア82の閉状態が拘束される。第2ドア82が第2閉端位置に到達すると(図10の(b5)の状態)、作業者は、第2ドア82に対する閉操作を終了する。このとき、第1ドア81の前端81aは開口中間部Po3に位置し、第2ドア82の前端82aは開口前端部Po2に位置する。
【0084】
以上の動作により、スライドドア80が全開状態から全閉状態へと移行する。この動作において、制御装置100は、以下の通りの制御を行っている。すなわち、制御装置100は、第1ドア81が第1開端位置にあるときに第2ドア82が第2閉端位置へと到達したことを条件に、駆動モータ85を動作させ、これにより、第1ドア81を開口中間部Po3に向かって移動させる。そして、制御装置100は、第1ドア81が第1閉端位置へと到達したことを条件に、駆動モータ85を停止させ、これにより、第1ドア81を停止させる。
【0085】
このような一連の動作により、作業者は、スライドドア80を全開状態と全閉状態とで切り替えることができる。パレット50が正規位置にある場合、作業者は、スライドドア80の正面に立って、第2ドア82を手動操作で開閉することができる。そして、作業者が、第2ドア82を第2開端位置又は第2閉端位置まで手動で移動することで、第1ドア81を自動で開閉させることができる。これにより、第1ドア81及び第2ドア82を含むスライドドア80の開閉を行うことができる。また、パレット50が引出位置にある場合であっても、作業者はスライドドア80の前側或いは後側に立って、第2ドア82を開口部OPの半分程度だけ開閉すれば、その後は第1ドア81が自動で移動する。これにより、パレット50が引き出され、スライドドア80の正面に立つことが出来ない状況であったとしても、スライドドア80の開閉を簡単に行うことができる。
【0086】
<開動作の第2態様>
図11及び図12は、スライドドアの開動作の第2態様を説明するタイミングチャートである。この第2態様は、作業者が第2ドア82に対して手動操作を行い、且つ操作部120に対して入力操作を行うことで、スライドドア80を全閉状態から全開状態まで動作させる一連の動作を示すものである。
【0087】
スライドドア80が全閉状態の場合、第1ドア81は第1閉端位置に、第2ドア82は第2閉端位置にある。すなわち、第1ドア81の前端81aは開口中間部Po3にあり、第2ドア82の前端82aは開口前端部Po2にある(図11の(c1)の状態)。
【0088】
まず、作業者は、ラッチ機構による拘束を解除しつつ、第2ドア82に対して後方向(開方向)に向かう力を加える手動操作を行い、第2ドア82を一定量だけ後方向へと移動させる。このとき、第1ドア81は静止したまま、第2ドア82のみが移動する。第2ドア82の手動操作を終えると、作業者は、操作部120に対して、第1ドア81を開けるための入力操作を行う。これにより、操作部120から制御装置100に入力される操作信号(開操作信号)がオフからオンに切り替わる(図11の(c2)の状態)。
【0089】
制御装置100は、操作信号がオンへと切り替わると、上述した開動作の第1態様で示した手順と同様に、アクチュエータ86及び駆動モータ85をそれぞれオンする。
【0090】
駆動モータ85のオンに伴って駆動モータ85が動作すると、第1ドア81が第1開端位置へ向かって移動を開始する。第1ドア81が第1閉端位置から離れるため、第3センサ95がオンからオフへと切り替わる。
【0091】
駆動モータ85のオンが継続している間、第1ドア81は、後方向へ向かって移動する(図11の(c3)の状態)。第1ドア81が移動している間、第2ドア82は、第1ドア81と連動して移動する。
【0092】
図12に示すように、第1ドア81が第1開端位置に到達すると(図12の(c4)の状態)、第2センサ93がオフからオンへと切り替わる。
【0093】
制御装置100は、第2センサ93がオンに切り替わると、上述した開動作の第1態様で示した手順と同様に、駆動モータ85をオフする。駆動モータ85のオフにより、駆動モータ85が停止するので、第1ドア81は静止する。このとき、第1ドア81の前端81aが開口後端部Po1に存在し、第2ドア82の前端82aは開口後端部Po1と開口中間部Po3との間に存在する。
【0094】
作業者は、操作部120に対して、第1ドア81を開けるための入力操作を終了する。これにより、操作部120から制御装置100に入力される操作信号(開操作信号)がオンからオフに切り替わる。操作信号がオンからオフへと切り替わると、制御装置100は、上述した開動作の第1態様で示した手順と同様に、アクチュエータ86をオフする。
【0095】
最後に、作業者は、第2ドア82に対して後方向(開方向)に向かう力を加える手動操作を行い、第2ドア82を第2開端位置に向かって移動させる(図12の(c5)の状態)。そして、第2ドア82を第2閉端位置まで押し込むと、ラッチ機構によって第2ドア82の閉状態が拘束される。第2ドア82が第2開端位置に到達すると、作業者は、第2ドア82に対する手動操作を終了する。このとき、第1ドア81の前端81aは開口後端部Po1に位置し、第2ドア82の前端82aも開口後端部Po1の近接に位置する。
【0096】
以上の動作により、スライドドア80が全開状態から全閉状態へと移行する。この動作において、制御装置100は、以下の通りの制御を行っている。すなわち、制御装置100は、操作部120に対する、第1ドア81を開けるための入力操作を条件として、駆動モータ85を動作させ、これにより、第1ドア81を開口後端部Po1に向かって移動させる。そして、制御装置100は、第1ドア81が第1開端位置へと到達したことを条件に、駆動モータ85を停止させ、これにより、第1ドア81を停止させる。
【0097】
<閉動作の第2態様>
図13及び図14は、スライドドアの閉動作の第2態様を説明するタイミングチャートである。この第2態様は、作業者が第2ドア82に対して手動操作を行い、且つ操作部120に対して入力操作を行うことで、スライドドア80を全開状態から全閉状態まで動作させる一連の動作を示すものである。
【0098】
スライドドア80が全開状態の場合、第1ドア81は第1開端位置に、第2ドア82は第2開端位置にある。すなわち、第1ドア81の前端81aは開口後端部Po1にあり、第2ドア82の前端82aも開口後端部Po1に近接した位置にある(図13の(d1)の状態)。
【0099】
まず、作業者は、操作部120に対して、第1ドア81を閉じるための入力操作を行う。これにより、操作部120から制御装置100に入力される操作信号(閉操作信号)がオフからオンに切り替わる(図13の(d1)の状態)。
【0100】
制御装置100は、操作信号がオンへと切り替わったことを判断すると、上述した開動作の第1態様で示した手順と同様に、アクチュエータ86及び駆動モータ85をそれぞれオンする。
【0101】
駆動モータ85のオンに伴って駆動モータ85が動作すると、第1ドア81が第1閉端位置に向かって移動を開始する。第1ドア81が第1開端位置から離れるため、第2センサ93がオンからオフへと切り替わる。
【0102】
駆動モータ85のオンが継続している間、第1ドア81は、前方向へ向かって移動する(図13の(d2)の状態)。第1ドア81が移動している間、第2ドア82は、第1ドア81と連動して移動する。
【0103】
第1ドア81が第1閉端位置に到達すると(図13の(d3)の状態)、第3センサ95がオフからオンへと切り替わる。
【0104】
制御装置100は、第3センサ95がオンへと切り替わると、上述した開動作の第1態様で示した手順と同様に、駆動モータ85をオフする。駆動モータ85のオフにより、駆動モータ85が停止するので、第1ドア81は停止する。このとき、第1ドア81の前端81aは開口中間部Po3に位置し、第2ドア82の前端82aも開口中間部Po3の近傍に位置する。
【0105】
作業者は、操作部120に対して、第1ドア81を閉めるための入力操作を終了する。これにより、操作部120から制御装置100に入力される操作信号(閉操作信号)がオンからオフに切り替わる。操作信号がオンからオフへと切り替わると、制御装置100は、上述した開動作の第1態様で示した手順と同様に、アクチュエータ86をオフする。
【0106】
最後に、作業者は、第2ドア82に対して前方向に向かう力を加える手動操作を行い、第2ドア82を第2閉端位置まで移動させる。このとき、第1ドア81は移動せず、第2ドア82のみが移動する(図14の(d4)の状態)。第2ドア82が第2閉端位置に到達すると(図14の(d5)の状態)、作業者は、第2ドア82に対する閉操作を終了する。このとき、第1ドア81の前端81aは開口中間部Po3に位置し、第2ドア82の前端82aは開口前端部Po2に位置する。
【0107】
以上の動作により、スライドドア80が全開状態から全閉状態へと移行する。この動作において、制御装置100は、以下の通りの制御を行っている。すなわち、制御装置100は、操作部120に対する、第1ドア81を閉じるための入力操作を条件として、駆動モータ85を動作させ、これにより、第1ドア81を開口中間部Po3に向かって移動させる。そして、制御装置100は、第1ドア81が第1閉端位置へと到達したことを条件に、駆動モータ85を停止させ、これにより、第1ドア81を停止させる。
【0108】
このような一連の動作により、作業者は、スライドドア80を全開状態と全閉状態とで切り替えることができる。パレット50が引出位置にあり、小柄な作業者が第2ドア82を第2開端位置又は第2閉端位置まで動かすことができないような場合であっても、操作部120に対する入力操作を利用することで、第1ドア81及び第2ドア82を含むスライドドア80の開閉を行うことができる。これにより、パレット50が引き出され、スライドドア80の正面に立つことが出来ない状況であったとしても、スライドドア80の開閉を簡単に行うことができる。
【0109】
なお、開動作及び閉動作の第2態様は、パレット50が正規位置にある場合に適用してもよいことは勿論である。また、開動作の第1態様の後、閉動作の第2態様を行ってもよい、開動作の第2態様の後、閉動作の第1態様を行ってもよい。また、開動作及び閉動作の第2態様では、第1センサ91のセンサ信号を利用しないため、図11乃至図14では第1センサ91のセンサ信号を便宜上オフで示した。しかしながら、開動作及び閉動作の第2態様において、第1センサ91の実際のセンサ信号を利用してもよい。
【0110】
このように本実施形態のレーザ加工機1によれば、第2ドア82の前端82aが開口前端部Po2に到達することで、スライドドア80が全閉状態となる。第1ドア81の開閉は自動で行われるが、第2ドア82の開閉は作業者の手動操作となる。これにより、第2ドア82の前端82aが開口前端部Po2に到達する動作を作業者の手動操作に委ねることができる。これにより、作業者自身が第2ドア82の移動状態を確認することができるので、物体等の挟み込みを抑制することができる。
【0111】
なお、閉動作の第1態様で示すように、第2ドア82を手動操作で閉じた後に、第1ドア81を自動で閉じる場合には、第1ドア81の移動に伴って、第2ドア82の前端82aが開口前端部Po2に到達する。この場合、第2ドア82の前端82aが開口前端部Po2に到達する動作は、作業者の手動操作によって実行される訳ではない。しかしながら、本実施形態に係るレーザ加工機1は、スライドドア80が開口後端部Po1から開口前端部Po2へと到達する動作の全てを自動で行うものでない。第1ドア81及び第2ドア82のうち、第2ドア82を閉じる動作には、作業者の手動操作が必要となる。これにより、作業者は、第2ドア82を手動操作で閉じる際に、開口部OPの状態を実際に確認することができる。したがって、開口部OPの状態を実際に確認した上で、第1ドア81を自動で閉じることができるので、物体等の挟み込みを抑制することができる。
【0112】
本実施形態のレーザ加工機1において、加工機本体10は、ワークが載置されるパレット50を含んでいる。パレット50は、スライドドア80の開閉方向と直交する方向、本実施形態では左右方向に沿って移動自在に構成され、スライドドア80の下方において加工機本体10から引き出し可能に構成されている。
【0113】
本実施形態のレーザ加工機1によれば、パレット50が引き出された状態でも、スライドドア80によって開口部OPを開閉することができる。パレット50が引出位置に引き出されたままの場合、スライドドア80はパレット50の上方を横断するように移動することとなる。したがって、例えばレーザ加工機1が第1ドア81及び第2ドア82の開閉をそれぞれ手動操作で行うような構成であれば、開口部OPの全部に亘ってスライドドア80の手動操作を行わなければならない。このため、スライドドア80の前側に立ってスライドドア80を手動操作した後、パレット50を迂回して、スライドドア80の後側に立ってもう一度スライドドア80を手動操作しなければならない、という煩雑な操作が予想される。しかしながら、本実施形態のレーザ加工機1によれば、第1ドア81の開閉を自動で行うことができるので、作業者が手動操作を行うのは第2ドア82のみとなる。このことは、作業者がスライドドア80に対して手動操作を行う範囲が小さくなることを意味する。そのため、スライドドア80の前側又は後側から第2ドア82を手動操作するだけで、開口部OPの全域を開閉することができる。これにより、パレット50を迂回するように回り込む必要もないので、スライドドア80の開閉に伴う作業者の負担を軽減することができる。
【0114】
本実施形態のレーザ加工機1において、レーザ加工機1は、第1ドア81の位置及び第2ドア82の位置を検知するセンサ部と、センサ部の検知結果に基づいて、駆動部を制御する制御装置100と、をさらに備えている。
【0115】
この構成によれば、第1ドア81の位置及び第2ドア82の位置に応じて、第1ドア81の開閉動作を行うことができる。これにより、スライドドア80による開口部OPの開閉を適切に行うことができる。
【0116】
本実施形態のレーザ加工機1において、レーザ加工機1は、作業者の入力操作に応じて、第1ドア81の開閉を指示する操作信号を出力する操作部120をさらに有している。そして、制御装置100は、センサ部の検知結果と、操作部120から出力された操作信号とに基づいて、駆動部を制御している。
【0117】
この構成によれば、第1ドア81の位置及び第2ドア82の位置に加え、操作部120に対する作業者の入力操作に応じて、第1ドア81の開閉動作を行うことができる。これにより、スライドドア80による開口部OPの開閉を適切に行うことができる。
【0118】
本実施形態のレーザ加工機1において、駆動部は、出力軸にピニオンが取り付けられた駆動モータ85と、第1ドア81に配置されて、ピニオンの回転運動を直線運動へと変換するラック87と、駆動モータ85を昇降させて、ピニオンとラック87とが歯合する歯合状態と、ピニオンとラック87とが離間する離間状態とを切り替えるアクチュエータ86と、を有している。制御装置100は、歯合状態に設定した後に、第1ドア81の開閉に必要な回転数である通常回転数で駆動モータ85を動作させる。一方で、制御装置100は、駆動モータ85を停止させた後に、離間状態に設定する。
【0119】
この構成によれば、駆動モータ85が動作する期間に限り、ピニオンとラック87とが歯合状態となり、駆動モータ85が停止している期間においては、ピニオンとラック87とが離間状態となる。すなわち、レーザ加工機1は、ピニオンとラック87とが常に歯合する構成を採用していない。スライドドア80の開閉を予定しない状況において、作業者がスライドドア80に寄りかかるなどの要因で、スライドドア80に意図しない外力が作用することがある。このとき、ピニオンとラック87とが常に歯合する構成となっている場合、外力によって第1ドア81が前後方向に移動することで、駆動モータ85の出力軸を回転させてしまう事態が発生する。しかしながら、本実施形態の構成によれば、ピニオンとラック87とが離間状態となっているので、外力を受けて第1ドア81が前後方向に移動したとしても、停止している駆動モータ85の出力軸が回転することを抑制することができる。これにより、駆動モータ85及び電気回路の故障といった不都合な事態が発生することを抑制することができる。
【0120】
本実施形態のレーザ加工機1において、制御装置100は、通常回転数よりも低い回転数で駆動モータ85を動作させた後に歯合状態に設定し、歯合状態に設定した後に通常回転数で駆動モータを動作させている。
【0121】
この構成によれば、アクチュエータ86を動作させて、ピニオンとラック87とを離間状態から歯合状態へと切り替わる際には、駆動モータ85が通常回転数よりも低い回転数で回転している。これにより、第1ドア81が予期せずに移動して、ピニオンの歯とラック87の歯とに位置ずれが生じていたとしても、ピニオンが回転しながらラック87へと当接することで、ピニオンとラック87とを適切に歯合させることができる。
【0122】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0123】
1 レーザ加工機
10 加工機本体
11 基台
12 サイドフレーム
15 ヘッド駆動機構
16 X軸キャリッジ
19 Y軸キャリッジ
30 加工ヘッド
50 パレット
51 枠体
52 スキッド
53 クランプ部
60 本体カバー
70 パーテーション本体
71 固定壁
72 裏面パネル
75 可動壁
80 スライドドア
81 第1ドア
81a 前端
82 第2ドア
82a 前端
85 駆動モータ
86 アクチュエータ
87 ラック
90 第1ドグ
91 第1センサ
92 第2ドグ
93 第2センサ
94 第3ドグ
95 第3センサ
100 制御装置
110 レーザ発振器
120 操作部
OP 開口部
Po1 開口部OPの後端部(開口後端部)
Po2 開口部OPの前端部(開口前端部)
Po3 開口部OPの中間部(開口中間部)
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