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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】電源監視装置及び制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/10 20060101AFI20250206BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20250206BHJP
   H02H 3/16 20060101ALI20250206BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20250206BHJP
   H02H 3/24 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
H02J1/10
B60R16/02 645C
H02H3/16 A
H02J1/00 304H
H02H3/24 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021182720
(22)【出願日】2021-11-09
(65)【公開番号】P2023070501
(43)【公開日】2023-05-19
【審査請求日】2023-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】森田 好宣
(72)【発明者】
【氏名】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】上月 保典
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-168538(JP,A)
【文献】特開2020-162368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/10
B60R 16/02
H02H 3/16
H02J 1/00
H02H 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気負荷(32)の制御を可能とする第1制御装置(41)及び第2制御装置(42)を備え、第1電源(10)から第1経路(LA1)を介して前記第1制御装置に電力を供給する一方、第2電源(16)から第2経路(LA2)を介して前記第2制御装置に電力を供給する制御システム(100)に適用され、
前記第1経路と前記第2経路とを接続する接続経路(LB)と、
前記接続経路に設けられた経路間スイッチ(SW)と、
前記接続経路において前記経路間スイッチに直列に設けられ、前記第1経路側から前記第2経路側への通電を電流制限した状態で許容するとともに、前記第2経路側から前記第1経路側への通電を阻止する電流制限素子(23)と、
前記経路間スイッチを閉鎖した状態で、前記第1経路での電圧低下を監視する監視部(21)と、
前記監視部により前記第1経路での電圧低下が生じたと判定された場合に、前記経路間スイッチを開放するスイッチ操作部(22)と、
を備える、電源監視装置(20)。
【請求項2】
前記電流制限素子として、前記第1経路側から前記第2経路側に向かう方向が順方向となるように設けられたダイオードを有する請求項1に記載の電源監視装置。
【請求項3】
前記接続経路に直列に設けられ、寄生ダイオードの向きが互いに逆となる一対の半導体スイッチ(SWA,SWB)を有し、
前記一対の半導体スイッチのうち一方の半導体スイッチ(SWA)が前記経路間スイッチであり、他方の半導体スイッチ(SWB)の寄生ダイオードが前記電流制限素子である、請求項1又は2に記載の電源監視装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電源監視装置(20)と、
前記第1制御装置及び前記第2制御装置と、
前記第1経路及び前記第2経路と、
を有する制御システム(100)であって、
前記第1制御装置は、制御指令値を算出する第1制御処理を実施し、その第1制御処理により算出された制御指令値により前記電気負荷が制御される一方、前記第2制御装置は、前記第1制御処理と並行して、制御指令値を算出する第2制御処理を実施し、
前記第1制御装置での異常発生時に、前記第2制御装置により算出された制御指令値により前記電気負荷が制御される、制御システム。
【請求項5】
前記第2制御装置が実施する前記第2制御処理と、前記第1制御装置が実施する前記第1制御処理とは、演算処理及び演算周期の少なくともいずれかが異なり、前記第2制御処理の処理負荷が前記第1制御処理の処理負荷よりも小さい、請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記電気負荷として、前記第1経路に接続される複数の第1経路側負荷(50A,51A,52A)を有し、
前記第1経路は、前記複数の第1経路側負荷に各々接続される分岐経路を有し、それら各分岐経路にヒューズ(FA)が設けられており、
前記第2制御装置は、
前記第1経路での電圧低下からの電圧復帰が生じたことを判定する判定部と、
前記電圧復帰が生じたと判定された場合に、前記経路間スイッチを閉鎖状態に戻すスイッチ制御部と、を有する、請求項4又は5に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源監視装置及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車両に適用され、この車両の各種装置に電力を供給する電源システムが知られている。また、電源システムにおいて、車両の運転時に、例えば電動ブレーキ装置や電動ステアリング装置など、車両の運転に必要な機能を実施する電気負荷に異常が発生した場合でも、その機能が失われないようにするために、電気負荷に電力を供給する電源として第1電源及び第2電源を有する電源システムが知られている。
【0003】
この電源システムとして、例えば特許文献1では、第1電源に接続された第1負荷を含む第1系統と、第2電源に接続された第2負荷を含む第2系統と、を有するものが開示されている。この装置では、各系統を接続する接続経路に系統間スイッチが設けられており、一方の系統で短絡が発生し、接続経路を通じて短絡電流が流れた場合に、制御装置により系統間スイッチは開状態とされる。これにより、短絡が発生していない他方の系統の負荷により車両の運転に必要な機能が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-62727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、第1系統及び第2系統においてそれぞれ制御装置を設けることで、制御装置を冗長化する構成が考えられる。この場合、系統ごとに制御装置を設けることにより、仮にいずれかの電源の蓄電電力の低下が生じても、各制御装置での電源失陥が生じることが抑制される。しかしながら、例えばいずれかの系統で地絡異常が生じると、両系統における電源にそれぞれ大電流が流れる。この場合、地絡が生じてから系統間スイッチが開放されるまでに、第1系統及び第2系統での電圧低下が生じると、車両における各負荷の制御に支障が生じることが懸念される。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、地絡異常の発生時において車両の運転に影響が及ぶことを抑制できる電源監視装置及び制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の手段は、電気負荷の制御を可能とする第1制御装置及び第2制御装置とを備え、第1電源から第1経路を介して前記第1制御装置に電力を供給する一方、第2電源から第2経路を介して前記第2制御装置に電力を供給する制御システムに適用され、前記第1経路と前記第2経路とを接続する接続経路と、前記接続経路に設けられた経路間スイッチと、前記接続経路において前記経路間スイッチに直列に設けられ、前記第1経路側から前記第2経路側への通電を電流制限した状態で許容するとともに、前記第2経路側から前記第1経路側への通電を阻止する電流制限素子と、前記経路間スイッチを閉鎖した状態で、前記第1経路での電圧低下を監視する監視部と、前記監視部により前記第1経路での電圧低下が生じたと判定された場合に、前記経路間スイッチを開放するスイッチ操作部と、を備える。
【0008】
第1制御装置及び第2制御装置を備え、第1電源から第1経路を介して第1制御装置に電力を供給する一方、第2電源から第2経路を介して第2制御装置に電力を供給する制御システムでは、電気負荷の制御機能としての冗長性を付与することができるとともに、例えば第1電源をメイン電源として用いつつ電源系の冗長性を付与することができる。また、第1経路と第2経路とを接続する接続経路に、経路間スイッチと電流制限素子とを直列に設けたため、第1電源から第2電源及び第2制御装置への電力供給が可能となっている。
【0009】
また、第1電源側の第1経路と第2電源側の第2経路とを接続経路で接続する構成において、仮に第2経路で地絡が生じると、その第2経路での電圧低下とともに、第1経路でも同様に電圧低下が生じ、第1経路及び第2経路での電圧低下により電気負荷の制御に支障が生じることが懸念される。
【0010】
この点、監視部が、経路間スイッチを閉鎖した状態で、第1経路での電圧低下を監視し、スイッチ操作部が、監視部により第1経路での電圧低下が生じたと判定された場合に経路間スイッチを開放するようにした。この場合、第2経路での地絡により第2経路での電圧低下が生じても、電流制限素子によって、第2経路で地絡が生じてから経路間スイッチが開放されるまでに、経路間スイッチに大電流が流れることが抑制され、第1経路での電圧低下が抑制される。そのため、第1経路での電圧低下に伴う第1電源側での電源失陥が生じる前に経路間スイッチを開放することができ、ひいては電気負荷の制御に支障が生じることを抑制することができる。
【0011】
一方、第1経路で地絡が生じた場合には、その第1経路で電圧低下が生じるが、電流制限素子によって第2経路での電圧低下が抑制される。これにより、やはり電気負荷の制御に支障が生じることを抑制することができる。
【0012】
第2の手段では、前記電流制限素子として、前記第1経路側から前記第2経路側に向かう方向が順方向となるように設けられたダイオードを有する。
【0013】
上記構成では、電流抑制素子としてのダイオードを、第1経路側から第2経路側に向かう方向が順方向となるように接続経路に設けるようにした。この場合、ダイオードの電流制限機能により、電流制限した状態で第1経路側から第2経路側への通電が許容されるとともに、ダイオードの整流機能により、第2経路側から第1経路側への通電が阻止される。これにより、第1経路及び第2経路のいずれで地絡が生じても、電気負荷の制御に支障が生じることを抑制することができる。
【0014】
第3の手段では、前記接続経路に直列に設けられ、寄生ダイオードの向きが互いに逆となる一対の半導体スイッチを有し、前記一対の半導体スイッチのうち一方の半導体スイッチが前記経路間スイッチであり、他方の半導体スイッチの寄生ダイオードが前記電流制限素子である。
【0015】
接続経路において、一対の半導体スイッチがback to back又はnose to noseに接続されている構成では、一対の半導体スイッチのうち一方の半導体スイッチが経路間スイッチとして機能し、他方の半導体スイッチの寄生ダイオードが電流制限素子として機能する。これにより、第1経路及び第2経路のいずれで地絡が生じても、電気負荷の制御に支障が生じることを抑制することができる。また、仮に一方の半導体スイッチを閉鎖し、他方の半導体スイッチを開放した状態において、第1経路での電圧低下に伴い一方の半導体スイッチが開放されたとしても、その後に少なくとも他方の半導体スイッチを閉鎖することにより、第2電源から第1制御装置に電力を供給することができる。
【0016】
第4の手段では、上記の電源監視装置と、前記第1制御装置及び前記第2制御装置と、前記第1経路及び前記第2経路と、を有する制御システムであって、前記第1制御装置は、制御指令値を算出する第1制御処理を実施し、その第1制御処理により算出された制御指令値により前記電気負荷が制御される一方、前記第2制御装置は、前記第1制御処理と並行して、制御指令値を算出する第2制御処理を実施し、前記第1制御装置での異常発生時に、前記第2制御装置により算出された制御指令値により前記電気負荷が制御される。
【0017】
電気負荷の制御では、第1制御装置が、制御指令値を算出する第1制御処理を実施し、その第1制御処理により算出された制御指令値により電気負荷が制御される一方、それに並行して、第2制御装置が、制御指令値を算出する第2制御処理を実施する。これにより、仮に第1電源側での電圧低下に伴い第1制御装置の動作が停止しても、第2制御装置による制御への移行を直ちに行わせることができる。つまり、第1制御装置及び第2制御装置は、互いに並行に制御処理を実施しており、第1制御装置が電源失陥した際において、第2制御装置での起動のためのイニシャル処理等の完了を待つこと無く、直ちに第2制御装置により算出された制御指令値を用いて電気負荷の制御を実施できる。これにより、第1経路及び第2経路での電圧低下により電気負荷の制御に支障が生じることを好適に抑制することができる。
【0018】
第5の手段では、前記第2制御装置が実施する前記第2制御処理と、前記第1制御装置が実施する前記第1制御処理とは、演算処理及び演算周期の少なくともいずれかが異なり、前記第2制御処理の処理負荷が前記第1制御処理の処理負荷よりも小さい。
【0019】
第1制御装置で異常が発生していない場合に、第1制御処理で算出された制御指令値を用いて電気負荷が制御される構成では、第2制御処理は、第1制御処理と同一の演算処理又は演算周期で行われる必要がない。上記構成では、第2制御処理と第1制御処理とは、演算処理及び演算周期の少なくともいずれかが異なり、第2制御処理の処理負荷が第1制御処理の処理負荷よりも小さくなるようにした。これにより、第1制御装置の制御に加えて、第2制御装置の制御が並行して行われる場合において、第2制御装置における制御処理の簡素化を図ることができる。
【0020】
第6の手段では、前記電気負荷として、前記第1経路に接続される複数の第1経路側負荷を有し、前記第1経路は、前記複数の第1経路側負荷に各々接続される分岐経路を有し、それら各分岐経路にヒューズが設けられており、前記第2制御装置は、前記第1経路での電圧低下からの電圧復帰が生じたことを判定する判定部と、前記電圧復帰が生じたと判定された場合に、前記経路間スイッチを閉鎖状態に戻すスイッチ制御部と、を有する。
【0021】
第1経路において、複数の第1経路側負荷ごとに分岐経路が設けられ、かつその分岐経路ごとにヒューズが設けられている構成では、第1経路におけるいずれかの第1経路側負荷で地絡により過剰電流が流れることで当該第1経路側負荷への電力の入出力が遮断される。そして、ヒューズの遮断に伴い第1電源の電圧が上昇に転じることにより、経路間スイッチが閉鎖状態に戻される。これにより、第1電源の電圧が復帰した後において、第2電源から第1電源への切替を適正に行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の制御システムの全体構成図。
図2】第1処理の手順を示すフローチャート。
図3】第2処理の手順を示すフローチャート。
図4】運転支援中に第2系統で地絡が生じた場合におけるタイムチャート。
図5】運転支援中に第1系統で地絡が生じた場合におけるタイムチャート。
図6】第2実施形態の制御システムの全体構成図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る電源監視装置を車載の制御システム100に適用した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。制御システム100は、車両の運転を制御するシステムである。
【0024】
図1に示すように、制御システム100は、2つの電源系統を有しており、一方の電源系統である第1系統ES1には、第1電源としての電源装置10が設けられている。また、他方の電源系統である第2系統ES2には、第2電源としての蓄電池16が設けられている。
【0025】
電源装置10及び蓄電池16は、一般負荷30及び特定負荷32に電力を供給する電源である。電源装置10は、高圧蓄電池11と、DCDCコンバータ(以下、単にコンバータ)12と、蓄電池13とを備える。以下、蓄電池13を第1蓄電池13と呼び、蓄電池16を第2蓄電池16と呼ぶ。高圧蓄電池11は、第1蓄電池13及び第2蓄電池16の定格電圧(例えば12V)よりも高い電圧(例えば数百V)を出力可能な蓄電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池である。コンバータ12は、高圧蓄電池11から供給される電力を降圧して一般負荷30及び特定負荷32に供給する電圧生成部である。第1蓄電池13は、例えば鉛蓄電池である。また、第2蓄電池16は、例えばリチウムイオン蓄電池からなる蓄電装置である。
【0026】
一般負荷30は、車両において運転に用いられない電気負荷(以下、単に負荷)であり、例えばエアコン、オーディオ装置、パワーウィンドウ等である。
【0027】
一方、特定負荷32は、車両の運転に用いられる少なくとも1つの機能を実施する負荷であり、例えば車両を操舵する電動パワーステアリング装置50、車輪に制動力を付与する電動ブレーキ装置51、車両周囲の状況を監視する走行監視装置52等である。
【0028】
特定負荷32は、機能毎に冗長さが付与された構成となっており、第1負荷34と第2負荷36とを有することで、それら負荷34,36のいずれか一方で異常が発生した場合でも各機能の全てが失われないようになっている。具体的には、電動パワーステアリング装置50は、第1ステアリングモータ50Aと第2ステアリングモータ50Bとを有している。電動ブレーキ装置51は、第1ブレーキ装置51Aと第2ブレーキ装置51Bとを有している。走行監視装置52は、カメラ52Aとレーザレーダ52Bとを有している。第1ステアリングモータ50Aと第1ブレーキ装置51Aとカメラ52Aとが、第1負荷34に相当し、第2ステアリングモータ50Bと第2ブレーキ装置51Bとレーザレーダ52Bとが、第2負荷36に相当する。本実施形態では、特定負荷32に含まれる複数の負荷により、車両の運転支援を行う運転支援装置38が構成されている。なお、本実施形態において、第1負荷34が「第1経路側負荷」に相当する。
【0029】
第1負荷34と第2負荷36とは、機能毎に冗長に設けられており、第1負荷34と第2負荷36とが協働して各機能を実現するものであるが、それぞれ単独でも各機能の一部を実現可能なものである。例えば電動パワーステアリング装置50では、第1ステアリングモータ50Aと第2ステアリングモータ50Bとにより車両の自由な操舵が可能であり、操舵速度や操舵範囲等に一定の制限がある中で、各ステアリングモータ50A,50Bにより車両の操舵が可能である。
【0030】
ECU40は、上述した特定負荷32を用いて、ACC(Adaptive Cruise Control)、PCS(Pre-Crash Safety)等の運転支援制御を実施可能である。運転支援制御には、ACCのように、ドライバの操作負担を軽減する負担軽減制御と、PCSのように、車両と車両の周囲に存在する物体との衝突の回避又は衝突被害を軽減する安全制御とが含まれる。
【0031】
ECU40は、車両の走行モードを、運転支援制御を用いる支援モードと、運転支援制御を用いない通常モードとに切り替え可能であり、車両は各走行モードによる走行が可能となっている。ECU40は、ドライバの切替指示により、支援モードと通常モードとを切り替える。支援モードは、例えば車両の自動運転時に用いられる走行モードであり、通常モードは、例えば車両の手動運転時に用いられる走行モードである。
【0032】
ECU40は、報知部44、IGスイッチ45及び入力部46に接続されている。報知部44は、視覚または聴覚的にドライバに報知する装置であり、例えば車室内に設置されたディスプレイやスピーカである。IGスイッチ45は、車両の起動スイッチである。ECU40は、IGスイッチ45の開閉状態を監視する。入力部46は、ドライバの操作を受け付ける装置であり、例えばハンドル操作入力装置、シフトレバー操作入力装置、アクセルペダル操作入力装置、ブレーキペダル操作入力装置、及び音声入力装置である。
【0033】
ECU40は、特定負荷32を用いて運転支援制御を実施する制御装置として、第1制御装置41と第2制御装置42とを備えている。各制御装置41,42は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなる周知のマイクロコンピュータを備えており、CPUは、ROM内の演算プログラムを参照して種々の機能を実現する。つまり、ECU40は、特定負荷32の制御において冗長さが付与された構成となっており、第1制御装置41と第2制御装置42とを有することで、それら制御装置41,42のいずれか一方で異常が発生した場合でも特定負荷32の制御の全てが失われないようになっている。
【0034】
具体的には、運転支援中において、第1制御装置41は、運転支援制御における制御指令値を算出する第1制御処理を実施し、その第1制御処理により算出された制御指令値により特定負荷32を制御する。第2制御装置42は、第1制御処理と並行して、運転支援制御における制御指令値を算出する第2制御処理を実施する。つまり、第1制御装置41及び第2制御装置42は、互いに並行に運転支援の制御処理を実施している。なお、本実施形態では、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれでも地絡が生じていない正常状態において、第1制御処理により算出された制御指令値のみにより特定負荷32が制御され、第2制御処理により算出された制御指令値は特定負荷32の制御に用いられない。
【0035】
第1制御装置41と第2制御装置42とは、それぞれ単独で運転支援制御を実現可能なものである。例えば、第1制御装置41は、第1負荷34を用いて、単独で負担軽減機能及び安全機能を実施することが可能であり、第2制御装置42は、第2負荷36を用いて、単独で安全機能を実施することが可能である。なお、本実施形態では、第2制御装置42は、単独で負担軽減機能を実施することができない。つまり、第2制御装置42が実施する第2制御処理と、第1制御装置41が実施する第1制御処理とは、演算処理が異なり、第2制御処理の処理負荷が第1制御処理の処理負荷よりも小さくなっている。
【0036】
第1制御装置41と第2制御装置42とは、互いに通信可能に構成されており、相互に異常が発生しているか否かを監視する機能を有している。第1制御装置41は、第2制御装置42の異常を監視し、第2制御装置42と通信できなくなった場合に、第2制御装置42に異常が発生したと判定する。第2制御装置42は、第1制御装置41の異常を監視し、第1制御装置41と通信できなくなった場合に、第1制御装置41に異常が発生したと判定する。
【0037】
第1系統ES1では、電源装置10が、第1経路としての第1系統内経路LA1を介して一般負荷30と第1負荷34と第1制御装置41とに接続されている。本実施形態では、第1系統内経路LA1により接続された電源装置10、一般負荷30、第1負荷34及び第1制御装置41により、第1系統ES1が構成されている。
【0038】
また、第2系統ES2では、第2蓄電池16が、第2経路としての第2系統内経路LA2を介して第2負荷36と第2制御装置42とに接続されている。本実施形態では、第2系統内経路LA2により接続された第2蓄電池16、第2負荷36及び第2制御装置42により、第2系統ES2が構成されている。
【0039】
各系統内経路LA1,LA2は、接続経路LBにより互いに接続されており、その接続経路LBに経路間スイッチSWが設けられている。接続経路LBの一端は、第1系統内経路LA1の接続点PAに接続され、接続経路LBの他端は、第2系統内経路LA2の接続点PBに接続されている。本実施形態では、経路間スイッチSWとして、NチャネルMOSFET(以下、単にMOSFET)が用いられている。
【0040】
接続経路LBには、接続点PAの電圧を検出する電圧センサ28が設けられている。また、接続経路LBには、経路間スイッチSWに流れる電流を検出する電流センサ29が設けられている。
【0041】
第1系統内経路LA1は、第1負荷34に含まれる複数の負荷、一般負荷30、第1制御装置41、及び電源装置10に含まれるコンバータ12に分岐経路LCを介してそれぞれ接続されており、各分岐経路LCにヒューズFAが設けられている。ヒューズFAは、過剰電流が流れることで溶断し、対応する負荷等への電力の入出力を遮断する。なおヒューズFAは、溶断式のヒューズに限られず、例えば、過電流を検出した場合に電流を遮断する半導体ヒューズでもよければ、化学ヒューズでもよい。
【0042】
制御システム100は、監視部21及びスイッチ操作部22を有する。監視部21は、電圧センサ28に接続されており、電圧センサ28により検出された電圧値が所定の閾値電圧Vthよりも低下したことを判定する電圧判定回路が内蔵されたハード回路である。スイッチ操作部22は、監視部21及び経路間スイッチSWに接続されており、監視部21の判定結果に基づいて、経路間スイッチSWのゲート端子に入力される電圧を調整する電圧調整回路が内蔵されたハード回路である。スイッチ操作部22により経路間スイッチSWのゲート端子に入力される電圧が調整されることで、経路間スイッチSWの開閉状態が切り替えられる。
【0043】
例えば、監視部21は、ECU40により経路間スイッチSWが閉鎖された状態で、第1系統内経路LA1での電圧低下を監視する。監視部21により第1系統内経路LA1での電圧低下が生じたと判定された場合、スイッチ操作部22は、経路間スイッチSWを開放し、第1系統ES1と第2系統ES2とを電気的に絶縁する。これにより、第2系統内経路LA2での電圧低下により、第1系統内経路LA1でも同様に電圧低下が生じることが抑制される。
【0044】
しかし、第2系統内経路LA2で地絡が生じた場合には、地絡が生じてから経路間スイッチSWが開放されるまでに、経路間スイッチSWに大電流が流れる。この大電流により第1系統内経路LA1でも電圧低下が生じると、第1系統内経路LA1及び第2系統内経路LA2での電源失陥により運転支援制御を含む特定負荷32の制御に支障が生じることが懸念される。
【0045】
本実施形態では、接続経路LBにおいて経路間スイッチSWに直列に、電流制限素子としてのダイオード23が設けられている。ダイオード23は、第1系統内経路LA1側から第2系統内経路LA2側に向かう方向が順方向となるように設けられている。
【0046】
この場合、第2系統内経路LA2での地絡により第2系統内経路LA2での電圧低下が生じても、ダイオード23によって第1系統内経路LA1側から第2系統内経路LA2側への通電が電流制限される。そのため、第1系統内経路LA1での電圧低下が抑制され、第1系統内経路LA1での電源失陥が生じる前に経路間スイッチSWが開放されることで、特定負荷32の制御に支障が生じることを抑制することができる。
【0047】
一方、第1系統内経路LA1で地絡が生じた場合には、その第1系統内経路LA1で電圧低下が生じても、ダイオード23によって第2系統内経路LA2側から第1系統内経路LA1側への通電が阻止され、第2系統内経路LA2での電圧低下が抑制される。これにより、やはり特定負荷32の制御に支障が生じることを抑制することができる。なお、本実施形態では、第1系統ES1と第2系統ES2との間に設けられた接続経路LB,経路間スイッチSW,ダイオード23,監視部21及びスイッチ操作部22により、電源監視装置20が構成されている。
【0048】
図2に、第1制御装置41が実施する第1処理のフローチャートを示す。第1制御装置41は、IGスイッチ45が閉鎖されると、所定周期で第1処理を繰り返し実施する。
【0049】
第1処理を開始すると、まずステップS10では、車両の走行モードが運転支援制御を用いる支援モードであるか否かを判定する。走行モードが運転支援制御を用いない通常モードである場合、ステップS11に進む。走行モードが支援モードである場合、ステップS21に進む。
【0050】
ステップS11では、支援モード実施の前提条件が成立しているか否かを判定する。支援モード実施の前提条件は、例えば第2蓄電池16の残存容量SAが、所定の容量閾値Sthよりも大きいことである。ここで残存容量SAは、例えば第2蓄電池16の蓄電状態を示すSOC(State Of Charge)であり、容量閾値Sthは、第2蓄電池16の電圧が動作下限電圧VLよりも所定値以上高い状態となる容量である。
【0051】
支援モード実施の前提条件が成立しておらず、支援モードへの切り替えができない場合、本処理を一旦終了する。支援モード実施の前提条件が成立しており、且つ入力部46を介してドライバから支援モードへの切替指示が入力された場合、ステップS12において、車両の走行モードを通常モードから支援モードに切り替え、本処理を一旦終了する。
【0052】
ステップS21では、異常フラグFgが「1」であるか否かを判定する。ここで異常フラグFgは、第2制御装置42に異常が発生していない場合に「0」に設定されており、第2制御装置42に異常が発生すると、「1」に設定される。異常フラグFgが「0」である場合、ステップS22に進む。異常フラグFgが「1」である場合、ステップS27に進む。
【0053】
ステップS22では、第2制御装置42に異常が発生しているか否かを判定する。第1制御装置41は、例えば第2制御装置42と通信できるか否かにより第2制御装置42に異常が発生しているか否かを判定する。第2制御装置42に異常が発生していない場合、第1,第2負荷34,36のいずれもが使用可能な状態であると判定する。この場合、ステップS23において、第1制御処理を実施し、第1制御処理により算出された制御指令値により第1,第2負荷34,36を制御し、本処理を一旦終了する。
【0054】
一方、第2制御装置42に異常が発生している場合、第2負荷36が使用不能な状態であると判定する。この場合、ステップS24において、第1制御処理を実施し、第1制御処理により算出された制御指令値により第1負荷34を制御する。つまり、支援モードにおいて、第1,第2負荷34,36を用いた運転支援制御から第1負荷34のみを用いた運転支援制御に切り替える。
【0055】
ステップS25では、異常フラグFgを「1」に切り替える。続くステップS26では、報知部44を介してドライバに運転支援制御を停止する旨を報知し、本処理を一旦終了する。
【0056】
ステップS27では、入力部46を介してドライバから通常モードへの切替指示が入力されたか否かを判定する。つまり、報知に応じたドライバの応答があったか否かを判定する。ドライバから切替指示が入力されていない場合、本処理を一旦終了する。一方、ドライバから切替指示が入力されている場合、ステップS28において、車両の走行モードを支援モードから通常モードに切り替え、本処理を一旦終了する。
【0057】
図3に、第2制御装置42が実施する第2処理のフローチャートを示す。第2制御装置42は、IGスイッチ45が閉鎖されると、所定周期で第2処理を繰り返し実施する。なお、第2処理の所定周期は、第1処理の所定周期と等しくてもよければ、異なっていてもよい。なお、本実施形態において、第1周期及び第2周期が「演算周期」に相当する。
【0058】
第2処理を開始すると、まずステップS31では、異常フラグFhが「1」であるか否かを判定する。ここで異常フラグFgは、第1制御装置41に異常が発生していない場合に「0」に設定されており、第1制御装置41に異常が発生すると、「1」に設定される。異常フラグFgが「0」である場合、ステップS32に進む。異常フラグFgが「1」である場合、ステップS41に進む。
【0059】
ステップS32では、第2制御処理を実施する。続くステップS33では、第1制御装置41に異常が発停しているか否かを判定する。第1制御装置41に異常が発生していない場合、第1,第2負荷34,36のいずれもが使用可能な状態であると判定する。この場合、第2制御処理により算出された制御指令値により第1,第2負荷34,36を制御することなく、本処理を一旦終了する。
【0060】
一方、第1制御装置41に異常が発生している場合、第1負荷34が使用不能な状態であると判定する。この場合、ステップS34において、第2制御処理により算出された制御指令値により第2負荷36を制御する。つまり、支援モードにおいて、第1制御装置41による第1,第2負荷34,36を用いた運転支援制御から、第2制御装置42による第2負荷36のみを用いた運転支援制御に切り替える。なお、第2制御装置42は、ACC等の負担軽減制御を実施することができないため、第1制御装置41に異常が発生していると判定された際に負担軽減制御が実施されている場合には、その負担軽減制御は停止される。
【0061】
ステップS35では、異常フラグFhを「1」に切り替える。続くステップS36では、報知部44を介してドライバに運転支援制御を停止する旨を報知し、本処理を一旦終了する。
【0062】
ステップS41では、入力部46を介してドライバから通常モードへの切替指示が入力されたか否かを判定する。ドライバから切替指示が入力されている場合、ステップS42において、車両の走行モードを支援モードから通常モードに切り替え、本処理を一旦終了する。
【0063】
一方、ドライバから切替指示が入力されていない場合、ステップS43において、電圧センサ28を用いて、第1系統内経路LA1での電圧低下からの電圧復帰が生じたか否かを判定する。第1系統ES1において、第1負荷34に含まれる複数の負荷及び一般負荷30の少なくとも1つで地絡が生じた場合、第1系統内経路LA1での電圧低下が生じる。その後、電源装置10から地絡が生じた負荷に過電流が流れることで、該負荷に対応するヒューズFAが溶断すると、第1電圧V1が閾値電圧Vthを超えて上昇し、第1系統内経路LA1で電圧復帰が生じる。
【0064】
第1系統内経路LA1で電圧復帰が生じた場合、ステップS44において、経路間スイッチSWを閉鎖状態に戻す。続くステップS45では、報知部44を介してドライバに電圧復帰を報知し、本処理を一旦終了する。なお、本実施形態において、ステップS43の処理が「判定部」に相当し、ステップS44の処理が「スイッチ制御部」に相当する。
【0065】
また、第1系統内経路LA1において、電源装置10に含まれるコンバータ12で地絡が生じた場合、第1系統内経路LA1で電圧復帰が生じない。第1系統内経路LA1で電圧復帰が生じない場合、ステップS46において、第1制御装置41と通信できなくなってから、判定期間が経過したか否かを判定する。ここで判定期間は、第2蓄電池16のみにより支援モードでの車両の走行が可能な期間よりも所定期間だけ短い期間に設定されている。
【0066】
判定期間が経過している場合、ステップS42に進む。つまり、報知に応じたドライバの応答がなくても、車両の走行モードを支援モードから通常モードに切り替える。この場合、第2制御装置42は、支援モードにより安全な場所に車両を移動させた後に車両を停止させ、その後に車両の走行モードを支援モードから通常モードに切り替える。一方、判定期間が経過していない場合、本処理を一旦終了する。
【0067】
図4は、運転支援中に第2系統ES2で地絡が生じた場合における第1系統内経路LA1の第1電圧V1と第2系統内経路LA2の第2電圧V2との推移を示す。第1電圧V1は、第1系統内経路LA1と接続経路LBとの接続点PAの電圧であり、電圧センサ28により検出される電圧値に等しい。第2電圧V2は、第2系統内経路LA2と接続経路LBとの接続点PBの電圧である。
【0068】
図4において、(A)は、第1制御装置41の動作状態の推移を示し、(B)は、第2制御装置42の動作推移を示し、(C)は、経路間スイッチSWの開閉状態の推移を示し、(D)は、車両の走行モードの推移を示し、(E)は、異常フラグFgの推移を示す。
【0069】
また、(F)は、第1系統内経路LA1の第1電圧V1の推移を示し、(G)は、第2系統内経路LA2の第2電圧V2の推移を示し、(H)は、経路間スイッチSWに流れるスイッチ電流ISWの推移を示し、(I)は、第2蓄電池16の充放電電流である電池電流IBの推移を示す。スイッチ電流ISWは、第1系統内経路LA1側から第2系統内経路LA2側に向かって流れる電流を正とし、電流センサ29により検出される電流値に等しい。
【0070】
図4に示すように、時刻t1までのIGスイッチ45の開期間、つまり制御システム100の休止状態において、経路間スイッチSWが開放されており、第1制御装置41及び第2制御装置42は、動作停止状態とされている。
【0071】
時刻t1にIGスイッチ45が閉鎖されると、ECU40により経路間スイッチSWが閉鎖されるとともに、ECU40によりコンバータ12が動作状態に切り替えられる。これにより、第1電圧V1及び第2電圧V2が動作下限電圧VLを超えて上昇し、起動のためのイニシャル処理後、第1制御装置41及び第2制御装置42が動作状態となる。その後の時刻t2に、ドライバにより車両の走行モードが通常モードから支援モードへ切り替えられる。
【0072】
支援モードでの車両の走行中では、第1制御装置41により第1制御処理が実施されるとともに、第1制御処理と並行して、第2制御装置42により第2制御処理が実施される。そして、第1制御装置41により、第1制御処理で算出された制御指令値を用いて第1,第2負荷34,36が制御される。
【0073】
いずれか一方の系統ES1,ES2で地絡が生じた場合、第1電圧V1が閾値電圧Vthよりも低くなり、スイッチ操作部22により経路間スイッチSWが開放される。図4では、時刻t3に第2系統ES2で地絡が発生する。これにより、第2電圧V2が低下し、電池電流IBが増大する。時刻t4に、第2電圧V2が動作下限電圧VLまで低下すると、第2制御装置42は動作停止状態となる。その結果、第1制御装置41と第2制御装置42との間に通信異常が生じ、第1制御装置41により第2系統ES2で地絡が生じたと判定されると、異常フラグFgが「1」に設定されるとともにドライバに対して運転支援制御を停止する旨が報知される。
【0074】
また、スイッチ電流ISWが増大し、第1電圧V1も低下する。本実施形態では、接続経路LBにダイオード23が設けられているため、スイッチ電流ISWの増大が抑制され、これに伴って第1電圧V1の低下が抑制される。その結果、第1電圧V1の低下速度は、第2電圧V2の低下速度に比べて低くなり、経路間スイッチSWが開放される前に、第1電圧V1が動作下限電圧VLよりも低下してしまうことが抑制される。
【0075】
これにより、時刻t4において、第1,第2負荷34,36を用いた運転支援制御から、第1負荷34のみを用いた運転支援制御に切り替わる。第1制御装置41は、時刻t4よりも前から運転支援制御を実施しているため、上記のように運転支援制御が切り替わっても、運転支援制御に影響が及ぶことが抑制される。
【0076】
時刻t5に、第1電圧V1が閾値電圧Vthまで低下すると、スイッチ操作部22により経路間スイッチSWが開放される。その後、時刻t6に、ドライバにより車両の走行モードが支援モードから通常モードへ切り替えられる。
【0077】
図5は、運転支援中に第1系統ES1で地絡が生じた場合における第1電圧V1と第2電圧V2との推移を示す。なお、図5の(A)~(I)は、(E)が異常フラグFgの推移を示すことを除いて図4の(A)~(I)と同一である。また、図5における時刻t2までの推移は、図4と同一であるため、説明を省略する。
【0078】
図5では、時刻t13に第1系統ES1で地絡が発生する。これにより、第1電圧V1が低下し、時刻t14に、第1電圧V1が閾値電圧Vthまで低下すると、スイッチ操作部22により経路間スイッチSWが開放される。その後の時刻t15に、第1電圧V1が動作下限電圧VLまで低下すると、第1制御装置41は動作停止状態となる。その結果、第1制御装置41と第2制御装置42との間に通信異常が生じ、第2制御装置42により第1系統ES1で地絡が生じたと判定されると、異常フラグFhが「1」に設定されるとともにドライバに対して運転支援制御を停止する旨が報知される。
【0079】
また、第2蓄電池16により放電が開始され、第2電圧V2が低下する。本実施形態では、接続経路LBにダイオード23が設けられているため、スイッチ電流ISWが第2系統内経路LA2側から第1系統内経路LA1側に向かって流れることが阻止される。その結果、第2蓄電池16の低下速度は、第2系統ES2内での電力消費に対応した緩やかなものとなり、第1電圧V1が動作下限電圧VLよりも低下するのと略同時に第2電圧V2が動作下限電圧VLよりも低下してしまうことが抑制される。
【0080】
これにより、時刻t15において、第1制御装置41による運転支援制御から、第2制御装置42による運転支援制御に切り替わる。第2制御装置42は、時刻t14よりも前から第2制御処理を実施しており、運転支援制御実施のための準備処理が実施されているため、上記のように運転支援制御が切り替わっても、運転支援制御に影響が及ぶことが抑制される。
【0081】
図5では、第1系統ES1の第1ブレーキ装置51Aで地絡が生じた場合における各値の推移が実線で示されており、第1系統ES1のコンバータ12で地絡が生じた場合における各値の推移が実線で示されている。
【0082】
図5に実線で示すように、第1ブレーキ装置51Aで地絡が発生した場合、時刻t16に、第1ブレーキ装置51Aに接続されるヒューズFAが溶断されると、第1電圧V1が上昇する。その後の時刻t17に、第1電圧V1が動作下限電圧VLまで上昇すると、第1制御装置41は動作状態に復帰する。
【0083】
時刻t18に、第1電圧V1が閾値電圧Vthまで上昇すると、時刻t19に、第2制御装置42により電圧復帰が生じたと判定され、経路間スイッチSWが閉鎖状態に戻される。これにより、第2電圧V2が上昇するとともに、スイッチ電流ISWが流れ、第2蓄電池16への給電が再び可能となる。また、ドライバに対して電圧復帰した旨が報知される。図5に実線で示す例では、ドライバは、上記報知により、支援モードによる走行を継続することが可能と認識し、車両の走行モードを支援モードに維持する。
【0084】
図5に破線で示すように、コンバータ12で地絡が発生した場合、時刻t16に、コンバータ12に接続されるヒューズFAが溶断されても、電圧復帰が生じない。ドライバは、上記報知がされないことから、支援モードによる走行を継続することが不可能と認識し、判定期間が経過する前の時刻t20に、通常モードへの切替指示を入力する。
【0085】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0086】
監視部21が、経路間スイッチSWを閉鎖した状態で、第1系統内経路LA1での電圧低下を監視し、スイッチ操作部22が、運転支援中において、監視部21により第1系統内経路LA1での電圧低下が生じたと判定された場合に経路間スイッチSWを開放するようにした。この場合、第2系統内経路LA2での地絡により第2系統内経路LA2での電圧低下が生じても、ダイオード23によって、第2系統内経路LA2で地絡が生じてから経路間スイッチSWが開放されるまでに、経路間スイッチSWに大電流が流れることが抑制され、第1系統内経路LA1での電圧低下が抑制される。そのため、第1系統内経路LA1での電圧低下に伴う第1系統ES1での電源失陥が生じる前に経路間スイッチSWを開放することができ、ひいては運転支援制御を含む特定負荷32の制御に支障が生じることを抑制することができる。
【0087】
一方、第1系統内経路LA1で地絡が生じた場合には、その第1系統内経路LA1で電圧低下が生じるが、ダイオード23によって第2系統内経路LA2での電圧低下が抑制される。これにより、やはり特定負荷32の制御に支障が生じることを抑制することができる。
【0088】
特に、第1制御装置41及び第2制御装置42では、電力供給が瞬間的に停止した場合でも、復帰する際に起動のためのイニシャル処理を実施する必要があり、そのイニシャル処理を実施している期間において、特定負荷32の制御が停止される。本実施形態では、接続経路LBにダイオード23が設けられることで、いずれの系統内経路LA1,LA2で地絡が生じた場合でも第1制御装置41及び第2制御装置42への電力供給が停止することが抑制され、特定負荷32の制御に支障が生じることを抑制することができる。
【0089】
特定負荷32の制御では、第1制御装置41が第1制御処理を実施し、その第1制御処理の制御指令値により運転支援装置38を構成する各負荷が制御される。またそれに並行して、第2制御装置42が第2制御処理を実施する。これにより、仮に第1系統ES1での電圧低下に伴い第1制御装置41の動作が停止しても、第2制御装置42による制御への移行を直ちに行わせることができる。つまり、第1制御装置41及び第2制御装置42は、互いに並行に運転支援の制御処理を実施しており、第1制御装置41が電源失陥した際において、第2制御装置42での起動のためのイニシャル処理等の完了を待つこと無く、直ちに第2制御装置42により算出された制御指令値を用いて特定負荷32の制御を実施できる。これにより、第1系統内経路LA1及び第2系統内経路LA2での電圧低下により特定負荷32の制御に支障が生じることを好適に抑制することができる。
【0090】
第1制御装置41で異常が発生していない場合に、第1制御処理で算出された制御指令値のみを用いて特定負荷32が制御されるため、第2制御処理は、第1制御処理と同一の演算処理又は演算周期で行われる必要がない。本実施形態では、第2制御処理と第1制御処理とは、演算処理が異なり、第2制御処理の処理負荷が第1制御処理の処理負荷よりも小さくなるようにした。これにより、第1制御装置41の制御に加えて、第2制御装置42の制御が並行して行われる場合において、第2制御装置42における制御処理の簡素化を図ることができる。
【0091】
第1系統ES1では、第1負荷34に含まれる負荷等毎に分岐経路LCが設けられ、その分岐経路LCごとにヒューズFAが設けられている。そのため、第1系統内経路LA1における負荷等のいずれかで地絡が生じたことにより過剰電流が流れることで当該負荷等への電力の入出力が遮断される。そして、ヒューズFAの溶断に伴い第1電圧V1が上昇に転じることにより、経路間スイッチSWが閉鎖状態に戻される。これにより、第1電圧V1が復帰した後において、第2蓄電池16から電源装置10への切替を行わせることができ、第2蓄電池16への給電が可能となる。
【0092】
(第1実施形態の変形例)
監視部21は、電圧センサ28により検出された電圧値が閾値電圧Vthよりも低下したか否かを判定する電圧判定回路に代えて、電流センサ29により検出された電流値が閾値電流Ithよりも上昇したか否かを判定する電流判定回路を内蔵していてもよい。図4(H)に示すように、第2系統ES2で地絡が発生した場合には、時刻t5に、スイッチ電流ISWが閾値電流Ithまで上昇する。監視部21は、スイッチ電流ISWが閾値電流Ithまで上昇したことを判定し、スイッチ操作部22は、監視部21の判定結果に基づいて経路間スイッチSWを開放するようにしてもよい。
【0093】
一方、図5(H)に示すように、第1系統ES1で地絡が発生した場合には、スイッチ電流ISWが閾値電流Ithまで上昇しない。そのため、監視部21に電流判定回路が内蔵されている場合には、第1系統ES1で地絡が発生しても経路間スイッチSWが開放されない。
【0094】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図6を参照しつつ説明する。
【0095】
図6に示すように、接続経路LBに設けられた経路間スイッチSW及びダイオード23が、接続経路LBに直列に接続された第1スイッチSWAと第2スイッチSWBとにより構成されていてもよい。本実施形態では、第1,第2スイッチSWA,SWBとして、MOSFETが用いられている。
【0096】
第1スイッチSWAには、寄生ダイオードとして第1ダイオードDAが並列接続されており、第2スイッチSWBには、寄生ダイオードとして第2ダイオードDBが並列接続されている。本実施形態では、第1,第2ダイオードDA,DBの順方向が逆方向となるように直列に接続されている。詳細には、第1,第2スイッチSWA,SWBはback to backに、つまり、第1,第2ダイオードDA,DBのアノードが互いに接続されており、第1ダイオードDAのカソードが第1系統ES1側となり、第2ダイオードDBのカソードが第2系統ES2側となるように接続されている。
【0097】
ECU40は、第1,第2スイッチSWA,SWBの開閉状態を切り替える。ECU40は、第1系統ES1及び第2系統ES2のいずれでも地絡が生じていない正常状態において、第1スイッチSWAを閉鎖し、第2スイッチSWBを開放する。これにより、第1スイッチSWAが、第1実施形態における経路間スイッチSWとして機能するとともに、第2ダイオードDBが、第1実施形態におけるダイオード23として機能する。
【0098】
また、第2制御装置42は、第1系統ES1のコンバータ12で地絡が生じた場合において、コンバータ12に接続されるヒューズFAが溶断した場合、少なくとも第1スイッチSWAを閉鎖する。これにより、第2蓄電池16からの電力供給により、第1制御装置41と第2制御装置42とによる運転支援制御を実施することができる。
【0099】
また、ECU40は、IGスイッチ45の開期間、つまり制御システム100の休止状態において、間欠的に、例えば1時間毎に第1,第2スイッチSWA,SWBを閉鎖する。これにより、システム停止状態において、第1制御装置41は所定周期で起動され、例えば第2蓄電池16を構成する各電池セルの充電状態の均等化処理を実施することができる。
【0100】
本実施形態では、接続経路LBにおいて、第1,第2スイッチSWA,SWBがback to backに接続されているため、一方のスイッチ(第1スイッチSWA)が経路間スイッチSWとして機能し、他方のスイッチ(第2スイッチSWB)の寄生ダイオードが電流制限素子としてのダイオード23として機能する。これにより、第1系統内経路LA1及び第2系統内経路LA2のいずれで地絡が生じても、運転支援制御を含む特定負荷32の制御に支障が生じることを抑制することができる。また、仮に電源装置10の停止に伴い第1スイッチSWAが開放されたとしても、その後に少なくとも第2スイッチSWBを閉鎖することにより、第2蓄電池16から第1制御装置41に電力を供給することができる。
【0101】
(第2実施形態の変形例)
第1,第2スイッチSWA,SWBはback to backに代えて、nose to noseに、つまり、第1,第2ダイオードDA,DBのカソードが互いに接続されるように接続されてもよい。
【0102】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、次のように実施されてもよい。
【0103】
各負荷34,36は、例えば以下の装置であってもよい。
【0104】
車両に走行用動力を付与する走行用モータとその駆動回路であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えば3相の永久磁石同期モータと3相インバータ装置である。
【0105】
制動時の車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ装置であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えば制動時のブレーキ油圧を独立に調整できるABSアクチュエータである。
【0106】
・各負荷34,36は、必ずしも同じ構成の組合せである必要がなく、同等の機能を異なる形式の機器で実現する組合せであってもよい。また、第1,第2負荷34,36は、それぞれが異なる負荷ではなく、同一の負荷であってもよい。つまり、第1,第2負荷34,36が、第1系統内経路LA1及び第2系統内経路LA2の両方から電力供給を受ける同一の負荷であってもよい。
【0107】
・各負荷34,36は、同一機能を実現するための構成要素であってもよい。この場合、第1,第2負荷34,36のそれぞれは、例えば電動パワーステアリング装置のアクチュエータと電動パワーステアリングECUである。この場合、電動パワーステアリングECUは、第1系統内経路LA1及び第2系統内経路LA2の両方から電力供給を受けてもよい。
【0108】
・第1電源の電圧生成部は、コンバータに限られず、オルタネータであってもよい。また、第1電源は、電圧生成部を有していなくてもよく、例えば第1蓄電池13のみを有していてもよい。
【0109】
・上記実施形態では、監視部及びスイッチ制御部が、各種回路が内蔵されたハード回路により構成されている例を示したが、これに限られない。CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等からなるマイクロコンピュータにより構成されていてもよい。
【0110】
・上記実施形態では、運転支援中の正常状態において、第1制御装置41により、第1制御処理で算出された制御指令値のみにより第1,第2負荷34,36が制御される例を示したが、これに限られない。例えば第1制御装置41により、第1制御処理で算出された制御指令値により第1負荷34が制御され、第2制御装置42により、第2制御処理で算出された制御指令値により第2負荷36が制御されるようにしてもよい。
【0111】
・上記実施形態では、第2制御装置42が実施する第2制御処理と、第1制御装置41が実施する第1制御処理とは、演算処理が異なる例を示したが、これに限られない。第2制御処理と第1制御処理とは、演算周期が異なっており、これにより、第2制御処理の処理負荷が第1制御処理の処理負荷よりも小さくなっていてもよい。
【0112】
・上記実施形態では、制御システム100が手動運転及び自動運転による走行が可能な車両に適用される例を示したが、これに限られない。完全自動運転車など自動運転による走行のみが可能な車両に適用されてもよければ、手動運転による走行のみが可能な車両に適用されてもよい。
【0113】
・上記実施形態では、第2電源がリチウムイオン蓄電池である例を示したが、これに限られない。第2電源は、例えば他の種類の蓄電池であってもよければ、電気二重層キャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0114】
10…発電装置、16…第2蓄電池、20…電源監視装置、21…監視部、22…スイッチ操作部、23…ダイオード、32…特定負荷、41…第1制御装置、42…第2制御装置、100…制御システム、LA1…第1系統内経路、LA2…第2系統内経路、LB…接続経路、SW…経路間スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6