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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
G01L1/20 G
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021561864
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 NL2020050259
(87)【国際公開番号】W WO2020214037
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】19169780.4
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595115802
【氏名又は名称】ネーデルランセ オルハニサチエ フォール トゥーヘパスト-ナツールウェーテンシャッペルック オンデルズク テーエヌオー
【氏名又は名称原語表記】Nederlandse Organisatie voor toegepast-natuurwetenschappelijk onderzoek TNO
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ビュルホールン、マリア マテア アントネッタ
(72)【発明者】
【氏名】ザラー、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ファン デン ブランド、イェロン
(72)【発明者】
【氏名】ライテリ、ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】スミッツ、エドガー コンスタント ピーター
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-54768(JP,A)
【文献】特開2009-115472(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0272429(US,A1)
【文献】特開2015-232490(JP,A)
【文献】特開平10-214537(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103350(WO,A1)
【文献】特開2015-121455(JP,A)
【文献】登録実用新案第3009380(JP,U)
【文献】特開2007-132888(JP,A)
【文献】特開2007-163322(JP,A)
【文献】特開2001-208623(JP,A)
【文献】特開平5-197381(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0036814(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0364114(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0003906(US,A1)
【文献】特表2020-500314(JP,A)
【文献】特開2003-329521(JP,A)
【文献】特表2015-531877(JP,A)
【文献】特開平2-275603(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19533756(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20,5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキスタイルシートにラミネートされ、圧力検知テキスタイルシート(100)を形成する圧力センサ(1)であって、
第1の弾性キャリア(3)の面上にパターン(P)で配置された少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)と、
前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)をシャントするための電気抵抗性複合材料(E)から形成された電気抵抗層(4)であって、該電気抵抗層(4)が第2の弾性キャリア(5)の面上に配置された、電気抵抗層(4)と、
を備え、
前記第1及び第2の弾性キャリア(3、5)が、スペーサ(7)を挟んで積層されて、前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)が、前記スペーサ(7)によって規定されたギャップ(6)を挟んで前記電気抵抗層(4)に面するようにすることで、前記圧力センサにかかる力(F)に少なくとも部分的に対抗するガスが充填されたガス閉じ込め構造を規定するポケット構造(8)を形成することを特徴とし、前記ギャップ(6)を横切る方向にかかる前記力(F)を受けた際に、前記電気抵抗層(4)と前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)との間の前記ギャップ(6)を小さくして、受けた前記力に依存して接触領域(A)上で前記電気抵抗性複合材料(E)と接して前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)をシャントし、その結果として、前記導電性リード線間に圧力に依存する電気抵抗をもたらすように、前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を含む前記第1の弾性キャリア(3)及び前記電気抵抗層(4)を含む前記第2の弾性キャリア(5)が伸縮可能であることを特徴とし、前記ポケット構造(8)に、マイクロバンプのレリーフ構造と、前記ガスの前記対抗する力を低減するための開口部と、が設けられ、前記開口部が、前記ガスが前記ポケット構造から出ることを妨げるように寸法決めされており、前記マイクロバンプは、弾性的に圧縮可能であり、前記マイクロバンプのレリーフ構造は、山部及び谷部でパターンを形成するように配置されており、隣接するマイクロバンプの間の谷部は、前記導電性リード線の上に形成されており、前記マイクロバンプの山部は、隣接する導電性リード線の間の領域に形成されている、ことを特徴とする圧力センサ。
【請求項2】
前記開口部は、前記スペーサに形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記ポケット構造は、0.5~500マイクロメートルの範囲の前記キャリア間の高さと、0.5~2cmの範囲の幅と、を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記第1の弾性キャリア(3)、前記第2の弾性キャリア(5)及び前記スペーサ(7)は、100MPa未満の弾性率を有する弾性材料から形成され、前記弾性材料は、ポリウレタンポリマーである、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧力センサ(1)。
【請求項5】
前記電気抵抗性複合材料(E)は、弾性ポリマーマトリクス(U)中に導電性マイクロ粒子(M)の相互接続されたネットワークを含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧力センサ(1)。
【請求項6】
前記パターン(P)は、前記ギャップ(6)の閉鎖時に、徐々に且つ半径方向に、大きくなる前記電気抵抗層(4)と前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)との間の接触面積(A)を形成するように配置されている、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧力センサ(1)。
【請求項7】
前記ポケット構造は、前記力が加えられた際に前記ガス(G)を再分配するための複数の連結された区画を備える、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の圧力センサ(1)。
【請求項8】
前記電気抵抗層は、1キロオーム/cm~500キロオーム/cmの範囲のシート抵抗を示す、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧力センサ(1)。
【請求項9】
前記電気抵抗層は、30キロオーム/cmのシート抵抗を示す、ことを特徴とする請求項8に記載の圧力センサ(1)。
【請求項10】
前記第1の弾性キャリア(3)の前記面上にパターン(P)で配置された前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)のうちの空間的に分離された複数のものと、前記第2の弾性キャリア(5)の前記面上の前記電気抵抗層(4)のうちの空間的に分離された対応する複数のものとを備え、ガスで充填されたガス閉じ込め構造をそれぞれ規定する複数のポケット構造(8)を形成し、前記圧力センサがパッシブマトリクス構成で構成される、ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の圧力センサ(1)。
【請求項11】
前記複数のポケット構造の少なくとも第1の部分が、第1の感度範囲に従って寸法決めされており、複数の前記圧力センサの第2の部分が、前記圧力センサの全体の感度範囲を拡張するように前記第1の感度範囲とは異なる第2の感度範囲に従って寸法決めされている、ことを特徴とする請求項10に記載の圧力センサ(1)。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の圧力センサ(1)を備える、圧力分布検知製品(1000)。
【請求項13】
圧力検知テキスタイルシート上に圧力センサ(1)を製造する方法であって、
第1の弾性キャリア(3)を提供するステップ(21)、
第2の弾性キャリア(5)を提供するステップ(22)、
布シートを前記第1の弾性キャリア(3)及び前記第2の弾性キャリア(5)の1つ以上にラミネートするステップ、及び、
前記第1の弾性キャリア(3)の面上にパターン(P)で少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を設けるステップ(23)、
前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)をシャントするための電気抵抗層(4)を形成するために、前記第2の弾性キャリア(5)の面上に電気抵抗性複合材料(E)を堆積させるステップ(24)と、
スペーサ(7)を設けるステップ(25)と、
マイクロバンプのレリーフ構造を設けるステップと、
前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)が前記スペーサ(7)によって規定されたギャップ(6)を挟んで前記電気抵抗層(4)に面するように、前記スペーサ(7)を挟んで前記第1及び第2の弾性キャリア(3、5)を積層するステップ(26)であって、それにより前記圧力センサにかかる力(F)を少なくとも部分的に打ち消すガスが充填されたガス閉じ込め構造を規定する、ガス流量制限器を含むポケット構造(8)を形成するステップ(26)と、
を含み、
前記ギャップ(6)を横切る方向にかかる力(F)を受けた際に、前記電気抵抗層(4)と前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)との間の前記ギャップ(6)を小さくして、受けた前記力に依存して接触領域(A)上で前記電気抵抗性複合材料(E)と接して前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を分流し、その結果として、前記導電性リード線間に圧力に依存する電気抵抗をもたらすように、前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を含む前記第1の弾性キャリア(3)及び前記電気抵抗層(4)を含む前記第2の弾性キャリア(5)が伸縮可能であることを特徴とし、前記ポケット構造(8)が、マイクロバンプのレリーフ構造と、前記ガスの対抗する力を低減するための開口部とを備え、前記開口部が、前記ガスが前記ポケット構造から出るのを妨げるように寸法決めされており、前記マイクロバンプは、弾性的に圧縮可能であり、
前記ポケット構造を形成するステップでは、前記マイクロバンプのレリーフ構造を、山部及び谷部でパターンを形成するように配置し、隣接するマイクロバンプの間の谷部を、前記導電性リード線の上に形成し、前記マイクロバンプの山部を、隣接する導電性リード線の間の領域に形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記スペーサは、0.5~500マイクロメートルの範囲の高さ(h)及び0.5~2cmの範囲の幅を有する、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線を堆積するステップ、前記電気抵抗性複合材料(E)を堆積するステップ、及び前記スペーサを堆積するステップのうち1つ以上は、印刷ステップを含む、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感圧抵抗に基づく力センサに関し、特に、メンブレン式抵抗に基づく圧力センサを備える弾性製品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
力検知抵抗器(FSR)センサは、通常、電極に直接接触する力依存性抵抗材料の層を一般に備える。そのような層を形成することができる、様々なFSRインクが知られている。一般的に、これらの材料は、パーコレーション閾値以下又はその前後の導電性フィラー粒子(カーボンナノチューブ、グラファイト)が混合された弾性マトリクス材料(例えば、PDMSのようなゴム)を備える。材料を圧縮すると、パーコレーション閾値が下がり、それに伴い、導電性フィラー粒子を介してマトリクス全体に新たな導電経路を形成することができる。特許文献1は、圧縮可能な(エラストマー)材料内に分散された(半)導電性粒子から形成されたFSR材料を開示する。その他の場合では、特許文献2に開示されているように、フィルム内の空隙を利用して、直接接触した材料の圧力に対する感度を高める。ここで、柔軟な検知材料は、カーボンナノチューブを含む。
【0003】
代わりに、特許文献3に記載されているように、FSRは、ギャップを介して分離された平行なメンブレン構造から形成される力センサに適用された電気抵抗材料を使用して構成されている。このような種類の装置では、2つの異なる動作(operation)モードを識別することができる。第1に、いわゆる「スルーモード」で、加えられた力は、電気抵抗材料を介して第1のメンブレン上の回路から第2のメンブレン上の別の回路に流れる電流に相関する。圧力が加えられると、回路間の抵抗変化によって記録され得る層が接触する。「貫通」型センサの欠点は、複雑な配線方法が、及び/又は組み立て時に更に高精度の位置合わせが必要となることである。更に、ギャップを挟んで両方の層に回路が必要となるため、「貫通」型センサは相互作用させることがより困難となる。特許文献4は、電気抵抗層メンブレンが櫛形のフィンガー回路の上に吊り下げられた「シャント」型の力センサを開示している。センサを押すと、櫛形回路が、電気抵抗層によって回避される。シャントモードの欠点は、力と抵抗との関係が不均一であるために、感度曲線が理想的ではないことの影響を一般に受けることであり、例えば、適用された力の小さな変化で大きな抵抗値の変化が観察される、反対に適用された力の大きな変化で小さな抵抗値の変化が観察されることがある。一般的に、高精度の製造技術を用いてフィンガー電極を形成することで解決される。その問題には、そのような技術が大量生産には好ましくないことが含まれる。特許文献5は、座面の力分布を検出するために採用され得るセンサを開示している。このセンサは、少なくとも1つの基板層と、基板層に対して動作可能に配置された複数のセンサ素子と、基板層上に配置された導電性トレースとを含む。スリット又はカットアウトを採用することで、センサは隣接するセンサとは独立して動くことができ、センサを不規則な形状の表面に適合させることができる。欠点には、スリット又はカットアウトを設けることは大量生産には好ましくないこと、及び硬いセンサ箔に違和感を覚えることが含まれる。更に、長期的な再現性を改善させた圧力センサを提供する必要性が残る。本発明は、繊維製品に組み込むことができる本明細書に記載の圧力センサを提供することにより、これらの欠点又は更なる欠点の少なくとも1つを解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3806471号明細書
【文献】米国特許第9278856号明細書
【文献】米国特許第5033291号明細書
【文献】米国特許第6909354号明細書
【文献】米国特許第6964205号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、テキスタイルシート上にラミネートされた圧力センサに関連する。圧力センサは、第1のキャリアの面上にパターン状に配置された少なくとも2つの隣接する導電性リード線と、少なくとも2つの隣接する導電性リード線を分流させるために複合材料で形成された電気抵抗層と、を備え、電気抵抗層は、第2のキャリアの面上に配置されている。第1及び第2の弾性キャリアは、少なくとも2つの隣接する導電性リード線がスペーサによって規定されたギャップを介して電気抵抗層に面するように、スペーサを挟んで積層され、圧力センサに及ぼされる力(F)に少なくとも部分的に対抗するガスが充填されたガス閉じ込め構造を規定するポケット構造を形成する。第1のキャリアは少なくとも2つの隣接する導電性リード線を含み、第2のキャリアは電気抵抗層を含む。キャリアは、ギャップを横切る方向にかかる力(F)を受けると、電気抵抗層と少なくとも2つの隣接する導電性リード線との間のギャップが小さくなり、受けた力に依存して接触領域(A)上で抵抗性複合材料(E)を用いて少なくとも2つの隣接する電気伝導性リードを分流させるように、伸縮可能である。これにより、導電性リード線の間に圧力に依存する電気抵抗が発生する。ポケット構造は、マイクロバンプのレリーフ構造と、ガスの抵抗する力を低減するための開口部とを備え、開口部は、ガスがポケットから出るのを妨げるように寸法決めされている。伸縮自在の第1のキャリアと伸縮自在の第2のキャリアは、それぞれの導電性リード線と抵抗層とを含み、面内及び/又は面外で力を受けると互いに向かって屈曲することができ、接触すると少なくとも2つの隣接する導電性リードを分流することができる。隣接する導電性リード線及び/又は電気抵抗層を伸縮可能な材料から形成することにより、接触した導電性リード線及び層が変形して、電極に向かって圧力に依存する導電性を形成する。その結果、少なくとも2つの隣接する導電性リード線の間の電気抵抗も、圧力に依存する。
【0006】
上述したように、センサはキャリア間のポケットを備える。初期分離距離、つまり、ポケットの初期第1の寸法(厚さ)、つまり、ギャップを横切る初期距離は、静止状態、つまり、初期位置、例えば外力を加えていない状態でのキャリア間の距離によって定義されてもよい。従って、スペーサの厚さは、ギャップの垂直方向のオフセットを定義することができる。ポケットの幅、つまり、キャリアに沿うポケットの寸法は、セパレータの対向する側壁部分によって定義されてもよい。代わりに、ポケットの幅は、隣接するスペーサの側壁部分の間で定義されてもよい。更に、ポケットの幅は、キャリアが支持されていない距離を定義してもよい。キャリアの弾性率は、力の除去時にギャップを復元することに寄与する。上述したように、開口部を含むポケットは、キャリア間のガス閉じ込め構造を規定しており、この構造には、及ぼされた力を少なくとも部分的に打ち消すガスが充填されている。ガス閉じ込め構造は、少なくともガスの流れを制限し、好ましくはセンサ構造内のガスの総量を固定し、例えば、構造内から構造外の体積へのガスの流れを制限すると理解することができる。制限されたガスの流れは、センサの圧力検知イベントの時間枠内の制限されたガスの流れを含むと理解してよい。ガスは、空気、例えば、周辺の空気を含むと理解することができる。発明者らは、キャリア間の分離距離が減少し、それに伴ってポケットの容積が減少すると、ポケット内に閉じ込められたガスの圧縮及び/又はポケットからのガスの移動が生じることを見出した。理論にとらわれることなく、発明者らは、このような圧縮及び/又はポケットからのガスの移動が、例えばガス制限孔を介して、少なくとも部分的に及ぼされる力を打ち消し、膜の変位を減衰させると考えている。更に、発明者らは、センサ層の一方又は両方に微細構造のバンプを含むことで、圧力の分散が可能となり、バンプの頂部内での部分的な分流が可能となることを見出した。ガスは、微細構造のバンプの間の窪みに存在している可能性がある。
【0007】
発明者らは、キャリア間の分離距離が減少する、例えば、外力を受けてキャリア間の距離が縮まることで、気体の圧縮が起きることを発見した。圧力センサに伸縮可能な第1及び第2のキャリアと伸縮可能なスペーサとを設けることで、センサ全体を伸縮可能及び/又は柔軟にすることができる。特に、テキスタイルに適用する場合、センサは、好ましくは、低いヤング率と厚みとを有し、張力下での適合性を確保する。センサの伸縮性をテキスタイルの伸縮性に合わせることで、ユーザにとって、例えば、圧力センサを含むテキスタイル製品を着用する人にとって、快適性を向上させることができる。多くのテキスタイルは、長さ方向に少なくとも5%、更に少なくとも10%以上の伸縮性を有している。好ましくは、センサの厚さは5mmを超えない。テキスタイル製品に適用するために、厚さは好ましくは薄く、例えば、2mmより少なく、又は更に例えば約1mmより薄く、又は約0.5mmより薄く、例えば、0.5~0.1mmの範囲である。圧力センサの最小の厚さは、キャリア、リード線、シャント層、及びギャップを横切る距離、つまり、ポケットの高さ及び/又はスペーサの厚さを組み合わせた厚さによって制限される。テキスタイルという言葉は、織布に限定して解釈されるべきではなく、テキスタイルは、革のような他の種類の布、及び/又はラテックスのようなゴムも含むことが理解されるであろう。
【0008】
本開示の第2の態様は、圧力センサの製造方法に関する。好ましくは、本発明の第1の態様及び本明細書に記載の任意の実施形態の圧力センサである。本方法は、第1のキャリア、第2のキャリア、及びスペーサを提供することを含む。本方法は、キャリアの面、例えば第1のキャリアの面上に、少なくとも2つの隣接する導電性リード線をパターンで提供することを更に含む。他方のキャリアの面、例えば第2のキャリアの面上に、複合材料を堆積させて導電層を形成する。この導電層は、少なくとも2つの隣接する導電性リード線を分流させるのに適した導電率を有している。導電性リード線を提供し、電気抵抗層を堆積させた後、本方法は、少なくとも2つの隣接する導電性リード線がスペーサによって規定されたギャップを挟んで電気抵抗層に面するように、スペーサを挟んで第1及び第2のキャリアを積層することを含み、ギャップは、及ぼされる力を少なくとも部分的に打ち消すガスで充填されたキャリア間のガス閉じ込め構造を規定するポケットである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の装置、システム及び方法のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の請求項及び添付の図面からよりよく理解されるであろう。
【0010】
図1A図1Aは、圧力センサの一実施形態の斜視図を模式的に示す。
図1B図1Bは、静止状態及び圧縮下の圧力センサの実施形態の側面断面図を模式的に示す。
図2A図2Aは、圧縮下の圧力センサの一実施形態の側面断面図におけるガスの再分配を模式的に示す。
図2B図2Bは、圧縮下の圧力センサの一実施形態の側面断面図におけるガスの再分配を模式的に示す。
図3A図3Aは、静止状態及び伸張時の複合材料を通る電気伝導経路の側面断面図を模式的に示す。
図3B図3Bは、複合材料のパーコレーション閾値を模式的に表す。
図4A図4Aは、平行及び螺旋状の櫛形電極設計の実施形態を模式的に表す。
図4B図4Bは、平行及び螺旋状の櫛形電極設計の実施形態を模式的に表す。
図4C図4Cは、平行及び螺旋状の電極設計の実施形態について、力に依存した接触面積の変化を模式的に示す。
図5A図5Aは、平行及び螺旋状の電極設計を備える圧力センサの実施形態について、記録された力-電力トレースを表す。
図5B図5Bは、平行及び螺旋状の電極設計を備える圧力センサの実施形態について、記録された力-電力トレースを表す。
図6A図6Aは、電気抵抗層のエンボス加工を模式的に示す。
図6B図6Bは、エンボス加工された電気抵抗層の顕微鏡写真を示す。
図6C図6Cは、エンボス加工された電気抵抗層を備える圧力センサの実施形態の側面断面図を模式的に示す。
図6D図6Dは、エンボス加工された電気抵抗層を備える圧力センサの実施形態において、力に依存し測定したリード線間の抵抗値を示す。
図7A図7Aは、圧力検出素子の実施形態の側面断面図を模式的に示す。
図7B図7Bは、圧力検出テキスタイルシートの実施形態の斜視図を模式的に示す。
図7C図7Cは、圧力センサのアレイを備える圧力検出テキスタイルシートの写真を表す。
図8A図8Aは、圧力センサのアレイを備えるマットレスの実施形態の斜視図を模式的に示す。
図8B図8Bは、圧力センサの製造方法の実施形態を模式的に示す。
図9A図9Aは、圧力センサの実施形態のリード線間で測定された抵抗値を示す。
図9B図9Bは、パッシブマトリクス構成の圧力センサのアレイについて、電気的スキームを模式的に説明する。
図10図10は、パッシブマトリクス構成の圧力センサのアレイを備える圧力分布検出製品の写真を表す。
図11A図11Aは、外力が加えられた状況での、微細構造のレリーフパターンを備える場合と備えない場合との圧力センサの模式的な実施形態である。
図11B図11Bは、外力が加えられた状況での、微細構造のレリーフパターンを備える場合と備えない場合との圧力センサの模式的な実施形態である。
図12A図12Aは、多数の実施形態の圧力センサの圧力センサ応答を比較するものである。
図12B図12Bは、多数の実施形態の圧力センサの圧力センサ応答を比較するものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特定の実施形態を説明するために使用される用語は、本発明を限定することを意図しない。本明細書で使用されているように、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに他を示す場合を除き、複数形も含むことを意図する。「及び/又は」の用語は、関連してリストアップされた項目の1つ以上の任意及び全ての組み合わせを含む。「備える」及び/又は「備えている」という用語は、記載された特徴の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴の存在又は追加を排除するものではないことが理解されるであろう。更に、ある方法の特定のステップが他のステップに続くものと言及される場合、他が指定されない限り、他のステップの後に直接続く、又は特定のステップを実施する前に1つ以上の中間ステップを実施することができることが理解されるであろう。同様に、構造又は部品間の接続が記載されている場合、この接続は、他に特定されていない限り、直接若しくは中間の構造又は部品を介して成立し得ることが理解されるであろう。
【0012】
本明細書で使用されているように、パーコレーション閾値は、ランダムシステムにおける長距離連結性の形成であるパーコレーション理論に関連した数学的概念と解釈することができる。閾値を超えると、巨大な連結成分がシステムサイズのオーダーで一般に存在する。パーコレーション閾値を軽く超える誘電体マトリクスに対する微粒子の体積比を提供することで、微粒子が電極ギャップの大きさのオーダーで誘電体マトリクス全体に連結成分を形成することが保証され得る。これは、例えば、0.3(30%)vol%を超える、好ましくは0.5vol%を超える比較的高い充填密度を微粒子にもたらすことによって一般に達成することができる。望ましい最小比率は、センサ材料の導電性又は抵抗性の挙動から実験的に測定することもできる。例えば、誘電体マトリクスに対する微粒子の比率は、センサ材料の導電率が材料の純粋な体積抵抗の導電率に近づくように十分に高いことが好ましい。一般的な材料では、これは、誘電体マトリクスに対する微粒子の体積比が30%を超えることに相当する。
【0013】
圧力センサで使用するためのエラストマー材料及び伸縮性層及び/又は伸縮性材料は、本質的に不可逆的に機能を失うことなく、少なくとも第1の方向に沿って少なくとも規定の量だけ伸縮可能であると理解することができる。換言すると、伸縮性又は弾性材料(層)は、ある方向に沿った初期寸法からその初期寸法の倍数である寸法まで伸縮することができる材料(層)であると理解することができる。例えば、少なくとも20%の伸縮性を持つと定義されたキャリアは、元の寸法の1.2倍の延伸寸法に延伸することができる。本明細書で使用されているように、「本質的に機能を失うことなく伸縮可能」とは、引き裂くことなく伸縮可能であることを含むと理解することができる。更に、第1の方向に伸縮可能な材料(層)は、直交する第2の方向に圧縮可能であると理解することができる。
【0014】
本明細書で使用されているように、シャント層のような電気抵抗層及び/又は電気抵抗材料は、電気絶縁体と銅を含む金属のような良好な導電体との間の導電性を備える材料及び/又は層を含むと理解することができる。電気抵抗層は、適度な抵抗率、例えば、1kΩ/cm~500kΩ/cmの範囲のシート抵抗率、例えば、5kΩ/cm又は200kΩ/cmのシート抵抗率、好ましくは、10kΩ/cm~100kΩ/cmの範囲のシート抵抗率、例えば、約30kΩ/cm又は約50kΩ/cmのシート抵抗率を有すると理解することができる。電気抵抗層(シャント層)について、「本質的に機能を失うことなく伸縮可能」とは、例えばギャップを横切る方向にかかる力を受けた際に、電気伝導性を不可逆的に失うことなく、20%までの面内変形に対応可能であることを含む。
【0015】
以下、本発明の実施形態を示す添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図面では、システム、部品、層、及び領域の絶対的お及び相対的なサイズは、明確にするために誇張されている場合がある。実施形態は、本発明の場合により理想的な実施形態及び中間構造の模式図及び/又は断面図を参照して説明することができる。本明細書及び図面では、類似の番号は全体的に類似の要素を指す。相対的な用語及びその派生語は、その時点で説明されているような方向性、又は議論中の図面に示されているような方向性を指すように解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明の便宜のためのものであり、特に他が示されていない限り、システムを特定の方向性で構築又は操作することを要求するものではない。
【0016】
定義されたポケット構造は、対向する導電性リード線と電気抵抗層(シャント層)との単一のペアに限定されないことに留意されたい。ポケット構造は、複数のセンサの間に広がっていてもよく、つまり、複数のリード線とシャント層とがポケット構造を共有してもよい。更に、ポケット構造は、第1の区画で圧力を受けているガスが他の区画に再分配されることができるような、相互に接続された複数の区画から構成されていてもよい。
【0017】
図1Aは、圧力センサ1の実施形態の分解斜視図を模式的に示す。本実施形態は、例えば図示するように、櫛形フィンガーパターンPにおける2つの隣接する導電性リード線2を含む第1の弾性キャリア3と、FSR電気抵抗層4を含む第2の弾性キャリア5とを備え、第1及び第2のキャリアは、スペーサ7によって分離されている。明確にするため、第2のキャリア5は、電気抵抗層4が視認できるように透明に描かれている。
【0018】
図1Bは、初期状態の、例えば外力Fがない状態の圧力センサ1と、外力Fがある状態の圧力センサ1’の側面断面図を模式的に示す。
【0019】
本発明の第1の態様に従って、図示の圧力センサ1は、第1のキャリア3の面上にパターンPで配置された2つの隣接する導電性リード線2と、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2を分流させるための複合材料Eから形成された電気抵抗層4と、を備える。該電気抵抗層4は、第2のキャリア5の面上に配置される。第1及び第2のキャリア3,5は、隣接する導電性リード線がスペーサ7によって規定されたギャップ6を挟んで電気抵抗層4に対向するように、スペーサ7を挟んで積層されている。
【0020】
センサは、図示する導電性要素の向き及び配置に限定するように解釈されるものではないことを理解されたい。例えば、圧力センサ1は、第1のキャリア3上に設けられた電気抵抗層4と、第2のキャリア5上に設けられた少なくとも2つの隣接する導電性リード線2と、を備えるように構成されることもできる。
【0021】
図示の実施形態において、電気抵抗層を含む第2のキャリア5は、ギャップ6を横切る方向に及ぼされる力Fを受けて、電気抵抗層4と少なくとも2つの隣接する電気伝導性リード線2との間のギャップ6を縮小し、少なくとも2つの隣接する電気伝導性リード線2を分流して、リード線間に「Z」と記された電気回路を閉じるように、伸縮可能である。回路の総合抵抗率は、リード線のバルク抵抗率と、電気抵抗層4(シャント層)のバルク抵抗率と、リード線とシャント層の間の接触抵抗の合計であると理解することができる。なお、全体の抵抗率は、電気抵抗層4とリード線との間に接触が形成される面積Aに応じて変化する。ギャップ6は、キャリアの間のポケット8によって形成される。ポケットの高さ「h」は、ギャップを横切る距離を定義する。ポケット8の幅「w」は、スペーサ7の対向する側壁部分の間の距離によって定義される。ポケットにはガス「G」が充填されており、使用時には加えられた力Fを少なくとも部分的に打ち消す。ポケットの幅は、キャリアがスペーサによって支えられていない支点間距離を定義する。静止状態では、例えば、外部からの力を受けていない状態では、ガスはキャリアをギャップ上で分離した状態に保つことに寄与する。
【0022】
いくつかの好ましい実施形態において、ガスは、加えられた力が解放された際に、圧力センサ1に含まれている1つ以上の層(キャリア)を分離するのに寄与する。
【0023】
伸縮可能なキャリアの一方には、少なくとも2つの隣接する導電性リード線が設けられる。これらのリード線は、長さにわたって距離を置いて配置された一対の隣接する導電性リード線から形成されることができ、パターン「P」によって定義された形状に形成されることができる。このパターンは、距離を隔てて平行に隣接する少なくとも2つのリード線を含む。パターンは、櫛形のフィンガー電極設計も含むことができる。代替的に、パターンは、複数の隣接する導電性リード線、例えば、距離を隔てた3、4、又はそれ以上のリード線を規定してもよい。更に代わりに、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2は、隣接する部分が互いに距離を置いて蛇行する単一の導電性トラックによって形成されてもよい。
【0024】
導電性リード線は、導電性材料を含む組成物から形成されることが理解されるだろう。
この組成物は、電気的絶縁性材料と、導電性粒子のような導電性材料と、の混合物から形成されてもよい。好適な実施形態において、この混合物は、マトリクスを形成する高分子の伸縮可能なバインダと、導電性粒子の導電性ネットワークと、から形成される。好ましくは、導電性粒子は、金属粒子及び金属ナノ粒子、金属含有粒子及びナノ粒子、グラファイト粒子及びナノ粒子、カーボン粒子及びナノ粒子、カーボンナノワイヤ、導電性ポリマー粒子及びナノ粒子、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、銀含有粒子、銀粒子、銅粒子、銅含有粒子、銀ナノワイヤ、銅ナノワイヤ、グラファイト粒子、カーボン粒子、及びそれらの混合物からなる群から選択され、更に好ましくは、グラファイト粒子、カーボン粒子、及びそれらの混合物から選択される。混合物は、任意に、導電性ポリマーのような他の導電性材料、又は安定剤のような他の添加剤を含むことができることが理解されるだろう。
【0025】
いくつかの実施形態において、導電性リード線は、少なくとも2つの隣接する導電性リード線の間の抵抗率を測定するための装置に接続するためのタブ11(図4Bを参照)を含む。いくつかの好ましい実施形態において、タブは、少なくとも一部が誘電体材料で覆われており、タブ及び/又はリード線の短絡を防止する。
【0026】
上述したように、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2を含む第1のキャリア3と、電気抵抗層4(シャント層)を含む第2のキャリア5と、の少なくとも一方、好ましくは両方が、伸縮可能である。圧力センサ1に、導電性リード線と、それぞれ抵抗層とを含む少なくとも1つの伸縮可能なキャリアを設けることで、センサの長期的な信頼性を向上させることができる。センサに伸縮可能な部品を設けることで、圧力測定の再現性を更に改善することができる。少なくとも2つの隣接する導電性リード線2を含む伸縮可能な第1のキャリア3と、電気抵抗層4とを含む伸縮可能な第2のキャリア5と、伸縮可能なスペーサとを備えることにより、これらの利点を更に向上することができる。
【0027】
上述したように、ポケットの高さ「h」は、ギャップを横切る距離を定義する。ポケット8の幅「w」は、スペーサ7の対向する側壁部分の間の距離によって定義される。好適な実施形態において、ポケットの高さ「h」は、好ましくは0.5~200ミクロンの範囲にあり、より好ましくは5~50ミクロンの範囲にあり、幅は0.5cmより大きく、好ましくは1~2cmである。ポケット内にガスを閉じ込める(ガス流量制限を設ける)ことにより、及び/又はポケットの寸法を最適化する、例えばスペーサの厚さ、形状、及び/又は寸法を最適化することにより、弾性キャリアのたるみを低減する、及び/又は力を加えた後の回復を改善することができる。
【0028】
更に、発明者らは、所定のキャリア剛性について、ギャップの高さ及び/又はポケットの幅を使用して応答条件を調整できることを発見した。短いギャップと比較して、長いギャップは、力を加えた際に、電気抵抗層4がリード線2を分流するまでに、まず比較的大きな距離を克服する必要があるため、比較的大きな力に対してより感度が高くなる。更に、より多くのガスが封入されると、加えられた力に対してより高い逆圧が発生する可能性がある。リード線2が比較的抵抗層の近くに配置されているセンサは、小さな力の領域でより感度が高くなる。同様に、ポケットの幅が広いセンサは、ポケットの幅がより狭いセンサと比較して、小さな力の条件での感度が比較的高くなる。換言すると、距離が長い場合の対向するキャリアを接触させるために必要な力Fは、ギャップを閉じるためにキャリアの単位長さあたりの伸びが必要となる、距離が短い場合のそれと比べてより小さくなる。
【0029】
いくつかの好適な実施形態において、スペーサは、高さ「h」及び幅「w」を備える開口を定義する環状スペーサである。環状スペーサは、内周、例えばリング/正方形の形状を有すると理解することができる。任意に、図2Aに示すように、ポケットは、電気抵抗層4と導電性リード線とが互いに接触する幅よりも大きい寸法とされてもよい。任意に又は付加的に、ポケットは、例えば図2Bに示すような複数の相互接続された区画を備えてもよい。このようにして、ポケット内に設けられた体積により、ガスGを再分配して反力を低減することができる。
【0030】
図1Aに示すスペーサ7は、流量制限を形成する側壁に開口部7’を有する。流量制限は、例えば、小さな開口部、例えば、材料、例えば、キャリアの自然な多孔を含む多孔、を備え、流量制限がガスの流れを妨げるように、例えば、使用時に加えられる圧力が加えられるタイムスケール(例えば、数十秒まで、例えば、30秒)で加えられる圧力に少なくとも対抗するためにガスがポケット内に留まる限り、ガスの流れを阻害する。換言すると、外力が加えられると、仮に小さな開口部が設けられていても、ガス閉じ込め構造内の圧力は平衡圧力から遠ざかる。理論に拘束されることを望むものではないが、発明者らは、ポケット内のガスが加えられた力に対抗する能力及び/又はギャップ上でキャリアを分離する能力は、キャリアが内側へ屈曲する際にポケット内のガスの圧力が増加することに関係すると考えている。換言すると、ポケットの容積を減少させると、ポケット内の圧力の増加が、容積の減少を少なくとも部分的に打ち消す。
【0031】
いくつかの好適な実施形態において、導電性リード線2、電気抵抗層4、及び第1及び第2のキャリア3、5のうちの1つ以上が弾性的に伸縮可能である。弾性的に伸縮可能なキャリア、弾性的に伸縮可能な導電性リード線、及び/又は弾性的に伸縮可能な層4を使用することは、使用時に、及ぼされる力を打ち消し、及び/又はポケット構造内のガスを再分配することに貢献することができる。弾性的に伸縮可能なキャリアの使用は、使用時に、力Fの解放時にキャリアの形状を復元することに寄与する、例えば、ギャップ上でキャリアを分離するのに役立つことができる。好ましくは、導電性リード線2、電気抵抗層4、及び第1及び第2のキャリア3、5の1つ以上は、0.001~1GPaの範囲のヤング率、より好ましくは0.01~0.2GPaの範囲のヤング率、例えば、約10(10^2)MPa又は10(10^1)MPaのヤング率を有する。
【0032】
他の又は更に好適な実施形態では、第1のキャリア、第2のキャリア、及びスペーサの1つ以上が、熱可塑性ポリマーを含む組成物から形成されている。有利には、熱可塑性ポリマー材料は、一緒に融着されてもよい。例えば、熱可塑性ポリマーシートは、圧力及び熱を加えることによって共に積層されてもよい。また、熱可塑性ポリマーを含む組成物を使用することによって、熱の影響下で、簡単な処理工程でキャリア及び/又はスペーサを互いに対して固定することができる。詳細は後述するが、熱可塑性ポリマーを含む組成物を用いることで、圧力センサ1の製造が簡略化される。熱可塑性ポリマーを含む組成物を使用することで、テキスタイルシート及びテキスタイル製品のような、更なるキャリア、層及び物品にセンサを接着又は統合することを含む、更なる製造ステップにおける複雑さをより軽減することができる。いくつかの好適な実施形態において、1つ以上のキャリアが、テキスタイルと同様の柔軟性及び伸縮性を有することができる。圧力センサは、テキスタイルに適用されてもよく、例えば、テキスタイルに接着されてもよい。熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む組成物を有するキャリアが好適であることが発見された。いくつかの実施形態において、1つ以上のキャリアは、TPU層、例えばTPUシートである。いくつかの実施形態では、通常の使用下で1%未満の残留歪みを有するTPU基板を使用する。適切なTPU基板は、これらに限るものではないが、DuPont社のTE-11C及びDelstar社のEU095を含む。偏見に反して、発明者らは驚くべきことに、TPUベースの材料、例えば低残留歪みを有するTPU材料が、圧力センサのキャリアとしてうまく使用できることを発見した。更に、TPUを含む製品、例えばテキスタイルは、ユーザにとって、例えば着用者にとって快適な、例えば柔らかい感触であることができる。熱可塑性ポリマーを含むキャリア、例えばTPUキャリアから形成された圧力センサ1は、更に耐水性であってもよい。更に、熱可塑性ポリマーを含むキャリアを備える圧力センサ、又はそのようなセンサを含むテキスタイル製品は、圧力検知機能を損なうことなく洗濯可能であってもよい。例えば、本発明者らは、上述したTPUキャリアで形成された本発明に係る圧力センサが、圧力感知機能を損なうことなく、30℃で20回まで洗濯機で洗えることを発見した。
【0033】
図3Aは、初期状態の複合材料Eと、長さΔLにわたって延伸された状態の複合材料E’を通る、破線と矢印とで示された電気伝導経路の断面図を模式的に示す。複合材料Eは、ポリマーマトリクスU中の導電性マイクロ粒子Mの相互接続されたネットワークを備える。
【0034】
圧力センサ1の好適な実施形態において、電気抵抗層4の複合材料Eは、例えば図3Aに示すように、ポリマーマトリクスU、好ましくは熱可塑性ポリマーマトリクス中の導電性マイクロ粒子Mの相互接続されたネットワークを備える。導電性マイクロ粒子Mは、導電性リード線に適した組成物を説明するセクションで前に挙げた他のタイプの導電性粒子と同様に、炭素質マイクロ粒子を含むと理解してよい。同様に、電気抵抗層4のための複合材料Eは、これらに限るものではないが、導電性ポリマー及び安定剤を含む更なる添加物を含むことができる。ポリマーマトリクスUに対する導電性微粒子Mの体積比は、導電性微粒子Mのパーコレーション閾値を超える。このようにして、電気抵抗層4のサイズのオーダーの長さを有する熱可塑性ポリマーマトリクスU全体に導電性経路を形成することができる。換言すると、導電性微粒子の大きさ及び量は、複合材料Eが導電性であるように選択される。
【0035】
図3Bは、ポリマーマトリクスUに導電性微粒子Mを分散させて形成された複合材料のパーコレーション閾値PTを模式的に表す。図では、複合材料の電気抵抗Rが、所定のサイズの導電性微粒子Mの体積量の関数としてプロットされている。低負荷時では、つまり、パーコレーション閾値以下では抵抗値が高い。この条件では、導電性粒子は隔離されたクラスターで存在していると考えられる。抵抗値は、マトリクスの特性に支配されると考えられる。負荷が高くなるにつれ、マトリクス内の粒子がより大きなクラスターを形成し始めるため、抵抗値が低下する。高負荷時では、粒子が相互接続されたクラスターがマトリックス全体に通路を形成するため、抵抗値はより低い値で安定する。
【0036】
いくつかの好適な実施形態、例えば、電気抵抗層を含むキャリアが10%、好ましくは20%まで伸縮可能であると定義されている実施形態では、複合材料Eが延伸された場合でも、熱可塑性ポリマーマトリックスUに対する導電性マイクロ粒子Mの体積比はパーコレーション閾値を上回る。延伸してもパーコレーション限界を上回る組成物を使用する利点には、導電性、例えば、電気抵抗層などの導電性が歪み(力/圧力)に強く依存せず、全面に均一であることが含まれる。圧力センサの抵抗率は、主に力に依存する接触面積と接触抵抗とに依存する。抵抗率は、有利には、センサに含まれる材料の固有の抵抗率から切り離すことができる(つまり、好ましくは、力に依存しない導電性を有する材料を使用する。好ましくは、電気抵抗層4は、1kΩ/cm~2kΩ/cm範囲のシート抵抗率、例えば5kΩ/cm又は200kΩ/cm、好ましくは10kΩ/cm~100kΩ/cmの範囲のシート抵抗率、例えば20kΩ/cm又は50kΩ/cmのシート抵抗率を有する。好適な実施形態において、圧力センサが提供され、電気抵抗層は、1~500kΩ/cmの範囲、好ましくは10kΩ/cm~100kΩ/cmの範囲、好ましくは約30kΩ/cmシート抵抗率を示す。
【0037】
発明者らは、使用時にシートの抵抗率を記載の範囲内にすることで、効率的な読み出し取りが容易になる、及び/又は力に依存する接触領域Aの抵抗を決定する精度が向上することを見出した。伸縮可能な電気抵抗層4を形成するために適した複合体は、マトリクスがウレタン系ポリマーを含み、導電性成分が炭素質、例えばグラファイト系粒子を含む伸縮可能なカーボンペーストを含む。そのような材料の例は、EMS CI-2051、Dupont PE671を含む。抵抗率は、例えば、追加の伸縮可能な誘電体又はカプセル化剤(例えば、Dupont PE773、EMS DI-7540)を加えることによって、指定された範囲内の値に調整することができる。発明者らは、伸縮性のあるシャント層(電気抵抗層)を含む例示的な実施形態が、14日間で2000回(cycle)を超えて繰り返し加えられる力を確実に且つ再現性よく測定できることを発見した。実験的証拠を示す図9Aを参照。驚くべきことに、ヒステリシス(外力を加えた時と離した時の接触面積の差)は悪化しないようである。
【0038】
図4Aは、2つの隣接する導電性リード線2について、パターンPの実施形態を模式的に表す。左側では、パターンは、平行な櫛形電極形状でレイアウトされている。右側では、螺旋状の電極形状である。図4Bは、読み出し手段に接続するためのワイヤ及びタブ11を含む、様々な寸法、電極幅及び間隔を有する平行な櫛形電極形状、及び螺旋状電極形状のためのパターンPの例示的な実施形態を表す。図4Cは、平行及び螺旋状電極の設計のための同様の寸法のパターンPの実施形態について、力Fに依存する接触面積Aの変化を模式的に示す。図5A及びBは、異なる寸法の数について平行電極及び螺旋状電極の設計を備える圧力センサの実施形態について、記録された力-電力トレースを表す。
【0039】
国際公開第2018/189516号は、平行櫛形フィンガー電極設計を使用するシャント型の圧力センサを開示する。そのような電極(例えば、図4A左)では、多数の導電性ストリップが共通電極から延び、平行なフィンガーのアレイを備える第1の電極を形成する。第2の電極のフィンガーは、第1の電極のフィンガーの間に延在する。
【0040】
好ましくは、ギャップの閉鎖時に、少なくとも2つの隣接する導電性リード線と電気抵抗層4との間に、徐々に増加する力依存の接触面積を形成するように配置された本発明に係る圧力センサのパターンPである。シャント型の圧力センサに平行な櫛形フィンガー電極設計を使用することの欠点は、これらが、例えば、接触面積の段階的な増加を含む不均一な力-抵抗関係に一般的に影響を受けることである。発明者たちは、これは、隣接する電極とシャント層との間の接触面積Aが不均一な変化になることが原因ではないかと発明者らは考えている。明確にするために、平行な櫛形フィンガー電極設計と、平行な電極を分流する柔軟な電気抵抗層とを備える圧力センサの実施形態について、加えられた力の関数としての接触面積の変化を模式的に示す図4C(左)を参照されたい。適切な力を加えると、電気抵抗層(図示せず)が電極に向かって屈曲し、A1と記された破線の円で記された初期接触(ポイント)領域が形成される。例えば、ますます大きな力を加えることによって、電気抵抗層が更に延び、接触面積が増加する。接触面積が徐々に増加し、例えばA1からA2を経てA3へと徐々に増加しても、層間の実際の電気的接触面積は滑らかに増加しない。接触面積に更に指が追加されることで、接触面積が急激に変化する。少なくとも2つの隣接する導電性リード線2の間の抵抗は、電気抵抗層4との接触面積に応じて変化するため、この効果はセンサの不均一な力-抵抗信号に反映される。図5Aは、様々な寸法の櫛形平行電極を有する圧力センサの実施形態について、記録された力-電流トレースを表す。曲線から理解できるように、櫛形平行電極を用いたセンサは、特定の力においてステップ状の応答を示す。
【0041】
少なくとも2つの隣接する導電性リード線を、シャント層との接触面積が徐々に増加するような設計にすることで、このような動作を軽減することができる。つまり、このような急激な変化の数や大きさを減らすことができる。また、フィンガーの幅を小さくすることで、つまり、より細かく、より間隔の狭いフィンガーを多く使用することで、この効果を軽減することができる。しかしながら、この方法では、大量生産の方法では達成できない精度が必要となる。例えば、幅が5mmの電極の設計は、50本のフィンガーと同じ幅のギャップとを持ち、この設計は、スクリーン印刷のような一般的な印刷技術では対応できない精度を必要とする。
【0042】
発明者らは、少なくとも2つの隣接する導電性リード線が螺旋状のパターンに配置された電極設計が、印刷技術との互換性を保ちつつ、徐々に増加する接触面積を形成できることを見出した。また、発明者らは、螺旋状の設計にすることで、適用される圧力の増加に伴う接触面積の急激な変化が起こりにくくなることを見出した。螺旋状では、2つ以上の電極が、互いに一定の距離で中心点の周りを螺旋状に回っている。図4C(右)は、2つの電極がそれぞれ、配線(図示せず)に接続する前に中心点の周りを1回転する様子を示す。接触面積がA1からA3に増加するにつれて、シャント層と電極とが接触する面積は滑らかに増加し、例えば、力を増加させても、接触領域の電極の数は一定である。電極の回転数は、所定の面積であれば、例えば5mmであれば、大きくすることができる。例えば、回転数は、0.5~50回、又はより多く100回までとすることができる。しかし、このような高精度は必要ではなく、本発明者らは、少ない回転数を有するパターンPが良好に機能し、且つ、スクリーン印刷のような大量生産方法にも適合することを見出した。従って、螺旋状パターンの回転数は、好ましくは0.5~10の範囲、例えば8、より好ましくは0.5~7の範囲、例えば5、最も好ましくは0.5~4の範囲、例えば1又は2である。図5Bは、様々な寸法の螺旋状平行電極を有する圧力センサの実施形態について、記録された力-電流トレースを示す。この曲線から理解できるように、螺旋状の電極を持つセンサは、図5Aの平行な櫛形のフィンガーを持つ構造とは対照的に、圧力の関数としてより滑らかで連続的な応答を示す。
【0043】
図5Bから明らかなように、少なくとも2つの隣接する導電性リード線(例えば螺旋状)の寸法及び形状は、センサの感度範囲を調整するために使用することができる。例えば、「α」と記された一番上の曲線は、比較的低い力の第1の領域で高い感度、つまり傾きを示し、続いて比較的高い力の第2の領域で低い感度を示し、「β」と記された曲線は、示されている力の範囲でより均一な感度を示す。このようにパターンを変えることで、異なる感度を持つセンサ、及び/又は異なる力条件で最大の感度を持つセンサを作ることができる。パターンは、リード線の数の変化、リード線の幅の変化、リード線の間隔の変化、リード線の長さの変化、リード線の形状の変化のうち、1つ以上を含むように変化させることができる。例えば、螺旋状のパターンでは、外側に向かって細くなるような幅のリードを設けることができる。このようにして、力に依存する接触面積の最大増加量を、より大きな力に対して調整することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、更に、本発明は、隣接する少なくとも2つの導電性リード線2及び電気抵抗層4のうちの1つ以上が、バンプ及び窪みを備える表面粗さを有する圧力センサに関する。図6Aは、電気抵抗層のエンボス加工ステップを模式的に示す。このステップでは、電気抵抗層4を備えるキャリア、例えば第2のキャリア5が、金型12を用いてエンボス加工される。エンボス加工の後、高さのあるレリーフが電気抵抗層4にエンボス加工される。任意に、パターンはキャリア5にもエンボス加工されてもよい。代わりに、電気抵抗層は、予めエンボス加工されたキャリア上に設けられても。図6Bは、エンボス加工された電気抵抗層4の顕微鏡写真を示す。図6Cは、圧力センサ1の実施形態の側面断面図を模式的に示す。この実施形態は、例えば図示のように、櫛形フィンガーパターンPの2つの隣接する導電性リード線2を含む第1の弾性キャリア3と、FSR電気抵抗層4を含む第2の弾性キャリア5と、を備え、第1及び第2のキャリアは、スペーサ7によって分離され、ガスGを含むギャップ6及びポケット構造8を規定する。圧力センサ1の別の又は更なる好適な実施形態において、例えば図6Cに示すように、導電層4及び/又は少なくとも2つの隣接する導電性リード線2は、レリーフパターンが設けられている。好ましくは、レリーフは、1~50μmの範囲の高さを備え、例えば約20μmの高さを備える。高さのあるレリーフを設けることの利点は、低力条件での改善された精度及び/又は線形性を有するセンサを形成することができることである。発明者らは、突起による導電層4及び/又は導電性リード線2における付加的な表面積が、圧力センサにおける改善された線形性に寄与すると考える。また、接触面積だけでなく、接触抵抗もより強く接触による影響を受けるだろう。使用時において、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2及び電気抵抗層4の表面部分が、外部から加えられた力の影響下で接近して接触する場合、層の間にガスが閉じ込められることがある。このガスは、層間の効果的な接触形成を妨げることがある。レリーフは、ガスが構造体の窪み内に存在し、流れることを可能にする。図6D図11、及び図12を参照されたい。図6Dは、エンボス加工された電気抵抗層4を有する圧力センサ1のリード線間で測定された抵抗値を表す。低い力では、記録されたリード線間の抵抗値は高い。20kPa以上のより高い力では、電気抵抗層4がリード線を分流し、抵抗値は安定した低い値に低下する。図6Aに関連して説明したように、レリーフは、エンボス加工によって提供されてもよく、3D蒸着法及びアブレーション法を含む、このようなレリーフを提供するために適した他の方法によって提供されてもよい。
【0045】
図11A-Bは、2種類の圧力センサを模式的に示す。図11Aのセンサでは、電気抵抗層4にバンプ4’のレリーフ構造が設けられている。図11Bのセンサでは、レリーフを含まないが、それ以外は同一である。外力がゼロのとき、キャリア3及び5は、キャリアとスペーサ7の側壁との間に規定されたポケット構造8のギャップ6を挟んで分離される。このポケットにはガスGが充填されている。スペーサは、側壁に大きな隙間又は開口部を含まず、微細孔の形をした流量制限7’を備える。前述と同様に、キャリアとスペーサの側壁との間に規定されたポケットは、圧力センサにかかる外力を少なくとも部分的に打ち消すガスが充填されたガス閉じ込め構造を規定しており、ポケット内ではガスが最初は自由に再分配される。ポケットの外側への流れは制限される。このように、このポケット、及び本発明に係る全ての実施形態のポケットは、ガス流量制限を備えると理解することができる。ガス流量制限は、例えば外力が加わった際に、ガスがポケット構造から出るのを妨げる。図示のような実施形態において、導電層4は、マイクロパターン化されたレリーフ構造、例えばバンプ4’を備える。レリーフパターンは、代替的に又は付加的に、同じ効果を備えてリード線に提供されてもよいことが理解されるだろう。同様に、レリーフパターンは、それぞれの材料を堆積させた後に、例えばエンボス加工によって適切に提供されてもよいことが理解されるだろう。代替的に又は付加的に、レリーフパターンは、予めパターン化されたキャリア上に設ける、例えばオーバープリントすることができる。
【0046】
力が大きくなると、キャリア間の分離(ギャップ)が徐々に小さくなる。この場合では、キャリアの接近は、スペーサ7の圧縮にのみ関連する単純化された方法で、示されている。本明細書に開示されている他の実施形態と同様に、キャリアの屈曲もギャップの減少に寄与可能であることが理解されるだろう。キャリアが接触すると、少なくとも2つの隣接する導電性リード線は、電気抵抗層によって分流される。この図示された実施形態において、電気抵抗層4に設けられたレリーフパターンの頂部を介してリード線間に電流が流れる可能性がある。力の増加に伴い、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2と、電気抵抗層に設けられた微細構造との間の接触面積は、例えばバンプ4’及び/又は電気抵抗層4の圧縮に伴って、徐々に増加する。このように、接触面積(説明したように、センサの応答に直接関係する)は、リード線に接触するバンプの数と、そのようなバンプとリード線との接触面積との両方に依存する。両方とも圧力に依存するため、請求項に記載された種類の圧力センサは、改善された性能を示す、例えば、線形性の向上及び応答ウィンドウの拡大による利点を示すことがわかった。
【0047】
ガスがポケットから出ることを阻害する(妨げる)ことは、外部圧力が減少又は完全に除去されると、センサのキャリアを初期の分離された開始位置に戻すために貢献することが分かった。ガス流量制限を設けることにより、第1のセンサのポケットから環境(周辺)に向けて、及び/又は隣接する第2の圧力センサのポケットのポケットに向けて、ガスの再分配が緩和される。そのため、隣接するセンサ間のクロスカップリングが緩和される。ガス流量制限を設けることで、所定のセンサ内のヒステリシス、例えば、先行する圧力測定からのセンサの回復が不完全であることの結果としてのヒステリシス(この点に関して、図9A及びその説明も参照)を緩和することが更に分かった。
【0048】
微細構造のレリーフを設けることで、ポケット内のガス分布が改善されることが分かった。ポケット内のガスの流れが再分配されることで、特に低力条件において、センサの応答の線形性が向上すると考えられる。設けられたガス流量制限は、例えば微細孔を介して、過剰な圧力の制御された放出を可能にする過圧弁として理解できる。微細構造のレリーフパターンを有しないセンサについて、バンプとリード線との間の接触面積が徐々に増加することによる有益な効果は基本的にない(図11B参照)。
【0049】
本発明者らは、図12Aに示すように、センサの応答の線形性が向上することを実験的に確認した。この実験のため、2つの種類のセンサを製造した。第1の種類では、電気抵抗層4に微細構造のレリーフパターンが設けられていない(破線)。第2の種類のセンサ(連続線)は、電気抵抗層にバンプのレリーフパターンが設けられていることを除いて、第1の種類と同一である。加えられる圧力に応じて記録されたリード線間の電流から理解出来るように、バンプを備えるセンサは線形性が向上することが分かった。ポケット構造内の圧力分布(レリーフパターンを設けることによる)は、センサの応答性及び/又は線形性の向上に更に貢献すると考えられる。近接する電気抵抗層との間のスペースにガスが閉じ込められる可能性がある。このような空間に圧力が蓄積すると、例えば、有効な応答ウィンドウが制限される、及び/又はセンサの線形性が制限されるなど、センサの性能を制限する対向するキャリアへの更なる近接が妨げられると考えられる。更に、そのようなスペースに閉じ込められたガスの過剰な圧力は、例えばガス流量制限を介して放出されることができず、その結果、ヒステリシス効果につながる可能性のある、及び/又は更にセンサの永久的な損傷につながる可能性のある圧力が蓄積される。レリーフパターンを設けることで、対向するキャリアが接近するときに、ポケット内のガスの再分配が改善されると考えられ、これにより、ガスは微細構造のバンプの間の窪みに流れて留まり、バンプの頂部内で隣接するリード線の部分的な分流が可能となる。バンプの形状、寸法、及び/又は間隔は、隣接する導電性リード線の形状、寸法、及び/又は間隔に依存することが理解されるであろう。好ましくは、レリーフパターンは、リードのパターンPと一致しないパターンで提供される。好ましくは、バンプは、リード線との接触時に、少なくとも2つのバンプ(1つの窪み)がリード線上に存在し、ガスがリード線上を流れる(再分配される)ことができるような寸法になっている。
【0050】
図12Bは、3種類のセンサについて実験的に記録されたセンサ応答曲線(加えられる圧力の関数としての電流)を示す。すべてのセンサは、レリーフパターンの配置と寸法を除いて同一である。第1の種類のセンサ(「バンプなし」と記される)では、電気抵抗層は自然発生的な表面粗さだけを備える、つまり、明示的なレリーフ構造は設けられていない。センサの応答は、低圧での初期の比較的小さな応答の後、一定となることが分かった。比較的低い絶対的な応答は、ポケット構造内のガスの圧力分布が不均一であることに起因すると考えられ、例えば、隣接するリード線間に溜まったガスの圧力により、リードと電気抵抗層との接触が妨げられ、電気抵抗層とリード線との間の接触面積が徐々に増加するのを妨げていると考えられる。50μmの寸法(幅)を有するバンプが設けられたセンサでは、より広い圧力範囲で直線的な応答が得られた。100μmのより広い幅のバンプを有するセンサは、リード線とバンプとの相対的な寸法と間隔に関係があると考えられる中間的な挙動を示すことが分かった。すなわち、比較的大きなバンプは、ガスがポケット全体に再分配されるのにあまり効果的ではなく、例えば、この特定のセンサに備えられた隣接するリード線の間にガスが部分的に閉じ込められることを防ぐことができないことになる。
【0051】
更なる態様によれば、本発明は、圧力検知素子に関する。図7Aは、圧力検知素子10の実施形態の側面断面図を模式的に示す。いくつかの実施形態において、例えば図示のように、接着層9、例えばホットメルト接着剤が、圧力センサ1の面に設けられている。接着層は、圧力センサ1を更なる製品、例えば、床材部品又はテキスタイル製品に接着するために適することができる。代わりに、圧力検知素子10は、人及び/又は動物の皮膚の領域に適用するために適していてもよい。このような用途では、接着層9は、好ましくは皮膚適合性の感圧接着剤であることが理解されるであろう。
【0052】
更に別の態様によれば、本発明は、テキスタイル100上にラミネートされた圧力検知シートに関する。図6Bは、テキスタイル100上にラミネートされた圧力検知シートの実施形態の透視図を模式的に示す。いくつかの実施形態において、圧力センサは、テキスタイルシートに接着、例えば、糊付けされてもよい。好ましくは、テキスタイルへの接着は、熱可塑性ポリマーを用いて達成される。熱可塑性の接着剤を使用して、センサをテキスタイルシートに融着させる、例えば、ラミネートすることができる。そのような接着剤は、DuPont社のTE-11Cフィルム又はBemis社のST604のようなTPUフィルムに予め塗布されている。図7Cは、圧力センサ1のアレイを備えるテキスタイルにラミネートされた圧力検知シート(圧力検知テキスタイルシート)の写真を表す。図示されている実施形態では、テキスタイルはキャリアを形成し、キャリアの上に電気抵抗層4を備える圧力検知シートがラミネートされる。読み出し装置に接続するためのタブ11は、周辺位置に設けられる。好ましい実施形態では、例えば、図7Cに示すように、圧力検知テキスタイルシート100は、複数の圧力センサ、好ましくはアレイ状の圧力センサを備える。複数の、例えばアレイを使用することで、ユーザはシートにかかる圧力分布を測定することができる。例えば、テキスタイルシートの表面に置かれたアイテムから生じる圧力分布である。間隔を空けたセンサの2Dアレイを提供することで、力や圧力を繊維シート上の空間的な位置に相関させることができる。いくつかの実施形態において、例えば、図9B及び10を参照して示すように、センサ1はパッシブマトリックス構成に構成される。例えばパッシブマトリクス構成で、間隔を空けて配置された圧力センサのアレイを備える圧力検知テキスタイルシート100は、テキスタイルシート上に配置された物品の形状及び/又はサイズを識別するために使用することができる。いくつかの実施形態では、2Dアレイのセンサは、0.1~10cmの範囲の距離、好ましくは0.5~5cmの範囲、例えば1又は2cmの距離で間隔を空けて配置される。
【0053】
他の又は更なる実施形態において、圧力検知テキスタイルシート100の圧力センサ1は、異なる寸法である。異なる寸法のセンサを備えるアレイは、単一の圧力センサよりも大きな力検知条件にわたって力を検知することができる。異なる寸法の圧力センサ1を有する圧力検知テキスタイルシート100は、広い圧力範囲にわたって力を測定することを可能にすることができる。従って、圧力検知テキスタイルシート100は、テキスタイルシート上で進ませた物、例えば、物品の重量、又は人の身体部分の重量を識別するために使用することができる。異なる寸法のセンサは、本明細書で説明したように、異なる検知範囲を有してもよい。異なる寸法のセンサとは、ポケットの寸法が、例えば幅が異なること、レリーフの高さが異なること、電極の幅、間隔、隣接する電極間の間隔を含む少なくとも2つの隣接する導電性リード線の設計が異なること、のうち1つ以上を含むと理解することができる。有利なことに、挙げられた変形は、本明細書で以下に説明する製造方法に容易に組み込むことができる。任意に、アレイは、ポケットの高さが異なる、つまりギャップを横切る距離が異なるセンサを備えてもよい。
【0054】
図8Aは、圧力センサのアレイを構成するマットレス(matrass)1000の実施形態の透視図を模式的に示す。更に別の態様によれば、本発明は、圧力センサ1を備える製品及び/又は圧力検知テキスタイルシート100を備える製品に関する。一実施形態において、圧力分布検知製品1000は、圧力検知テキスタイルシート100を備える。好ましくは、製品1000は、異なる寸法のセンサを備える圧力検知テキスタイルシートを備える。例えば、製品は、圧力センサ(1)のアレイを有する圧力検知シート(100)で覆われたマットレススであってもよい。このようなマットレスは、マットレラスの上にいる人の存在を検出するために使用することができる。更に、そのようなマットレスは、マットレス上の人の位置及び/又は向き、例えば、座っているか又は横になっているか、及び/又は向き、例えば、横になっている間の向きを検出するために使用することができる。例えば、マットレスは、マットレス上の物体の存在を検出する、例えばマットレス上に横たわっている人を検出するための第1のセンサセットと、例えば、製品上の人の心拍又は呼吸の動きを検出するなど、人がマットレスに及ぼす力の小さな変化、例えば変動を検知するための第2のセンサセットとを有するアレイを備えてもよい。本発明は、本明細書に記載された圧力センサとの統合から恩恵を受ける他の製品にも関連することが理解されるであろう。これらの製品は、これらに限るものではないが、寝具のシーツ及び毛布、スポーツウェア等の衣料品、腕時計のストラップ等の宝飾品、シート、カーシート及びクッション等の家具及び椅子張り、カーペット等の床材を含む。
【0055】
更に別の態様によれば、本発明は、圧力センサ、好ましくは本明細書で上述したような圧力センサを製造する方法に関するものである。一実施形態において、例えば図8Bに示すように、本方法は、第1のキャリア3を提供するステップ21と、第2のキャリアを提供するステップ22と、第1のキャリア3の面上にパターンPで少なくとも2つの隣接する導電性リード線2を提供するステップ23と、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2を分流するための電気抵抗層4を形成するために第2のキャリア5の面上に複合材料Eを堆積させるステップ24と、スペーサ7を提供するステップ25と、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2がスペーサ7によって規定されたギャップ6を挟んで電気抵抗層4に面するように、スペーサ7を挟んで第1及び第2のキャリア3、5を積層するステップと、を備える。積層するステップは、接着を含むことができる。センサに関連して上述したように、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2を含む第1のキャリア3及び/又は電気抵抗層4を含む第2のキャリア5は、ギャップ6を横切る方向に作用する力Fを受けたときに、電気抵抗層4と少なくとも2つの隣接する導電性リード線2との間のギャップ6を小さくして、少なくとも2つの隣接する導電性リード線2を力に依存する接触領域Aにわたって分流させるように、伸張可能である。ギャップ6は、キャリア間のポケット8によって形成され、ガスが充填されている。ポケットは、キャリア間のガス閉じ込め構造を定義しており、この構造には、及ぼされる力Fを少なくとも部分的に打ち消すガスが充填されている。本方法は、記載されたステップの順序に限定して解釈されるものではないことが理解されるであろう。例えば、スペーサ7は、導電性リード線2、電気抵抗層4をそれぞれ設ける前に、キャリアの1つに設けてもよい。
【0056】
リード線及び層5を含む導電性材料は、上述の仕様に従って層を提供するのに適した任意の方法によって提供されることができる。一実施形態において、リード線及び/又は電気抵抗層4は、これに限定するものではないが、リソグラフィ法を含む既知の微細加手段によって提供されてもよい。好ましくは、リード線及び/又は電気抵抗層だけでなく、スペーサも、局所的な堆積法によって提供される。任意に、スペーサは、例えばワッシャのような別個のプリフォーム品として提供されてもよい。好ましくは、スペーサは、リード線及び/又は電気抵抗層と同様の局所堆積手段を用いて提供されてもよい。代わりに、スペーサ7は、第1及び/又は第2のキャリアにパターンをエンボス加工することによって提供されてもよい。
【0057】
センサに関連して上述したように、導電性リード線は、導電性材料を含む組成物から形成されていることが理解されるであろう。更に、導電性リード線2及び/又は電気抵抗層4は、そのような材料と溶媒との混合物、例えばdupont PE873、EMS CI-1036のような伸縮可能な導電性インクであるインク「I」から形成されてもよいことが理解されるだろう。このインクは、溶媒の除去時に、記載されているような導電性組成物を形成するように選択されてもよい。
【0058】
好適な実施形態において、少なくとも2つの隣接する導電性リード(2)を提供するステップ、及び/又は複合材料(E)を提供するステップ、及び/又はスペーサを提供するステップは、印刷、好ましくはスクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、LIFT印刷又はインクジェット印刷を含む。有利には、印刷方法は、低コストでの大量製造を可能にする方法の拡張性を改善する。例えば、複数の隣接する導電性リード線を、寸法又は設計が相互に異なる及び/又はキャリアの広い領域にわたって、1回の印刷工程で提供することができる。ここで、複数のセンサ又はセンサ、例えば、センサのアレイを構成するテキスタイルシートを1つのプロセスで製造することができる。加えて、層の印刷はロール・トゥ・ロール方式で行うことができ、更にコストを削減する。
【0059】
第1の及び第2のキャリア3、5とスペーサ7との1つ以上、好ましくは全てが熱可塑性ポリマーを含む組成物で形成されている別の又は更なる好適な実施形態では、積層することは、ラミネートすることを含む。積層することは、本明細書に記載されているように、構成要素と層とを積層して配置し、その後、積層体を熱可塑性ポリマーの溶融温度に加熱することを含む。一般的には、加熱中に力を加えて、積層体内の部品間の接触を確実にする。キャリア及び/又はスペーサを融合させることで、例えばスペーサを貼り付けるための別の接着ステップを不要とすることができる。層を融合することで、例えば、連続した接着工程の間の位置合わせなど、位置合わせ工程の数を更に減らすことができる。有利なことに、ラミネート加工の設定は、ポケットにガスを入れるように配置されている。ガスが充填されたポケットを形成するためのラミネート方法は、これらに限定するものではないが、柔軟なキャリアがスペーサで囲まれた空間に屈曲しないように硬い圧力プレートを使用する方法、又は、エラストマーが載置されるような硬いライナーホイルを使用する方法を含む。代わりに、積層時にスペーサ(ポケット)で囲まれた空間に対応する位置で圧力プレートが積層体に圧力をかけないような寸法と位置とを有する開口部を備える圧力プレートを使用することができる。ラミネート加工は、加熱されたメンブレンプレスタイプのラミネータ、ホットプレスラミネータ又はロールラミネーターを用いて行うことができる。有利なことに、ガス流量制限を備えるポケット構造は、製造プロセス中に対向するキャリア間の分離距離を維持するため、ラミネート加工のような高スループット及び/又は低コストの製造方法を使用することができる。
【0060】
別の又は更なる実施形態において、圧力センサの製造方法は、レリーフパターンを有する導電層4を提供すること、例えばエンボス加工すること、又はまたはレリーフパターン、例えば予め印刷された又は予めエンボス加工されたレリーフパターンを有するキャリア上に導電層をオーバープリントすることを更に含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、圧力センサの製造方法は、感圧接着剤(PSA)組成物をセンサの外側の表面に設けること、好ましくは印刷することを更に含む。
【0062】
更に別の態様によれば、本発明は、圧力検知テキスタイルシート100を製造する方法に関連する。特に、本明細書に記載の圧力センサ1を含む圧力検知テキスタイルシート100である。当該方法は、本明細書で上述したような圧力センサ1を製造するためのステップと、布(テキスタイル)シートを提供するステップと、を含む。任意に、圧力センサ1は、布(テキスタイル)シートに接着されてもよい。好ましくは、布シートは、熱可塑性ポリマー、例えば、上述の熱可塑性ポリウレタンポリマーを含む組成物から形成される。熱可塑性ポリマーを含む組成物から形成されたテキスタイル(布)シートは、説明したラミネーションプロセスで使用されてもよい。従って、圧力センサ1は、テキスタイルシートにラミネートされてもよい。
【0063】
明瞭且つ簡潔に説明するため、本明細書では特徴を同一又は別々の実施形態の一部として説明しているが、本発明の範囲は、説明されている特徴の全て又は一部を組み合わせた実施形態を含むことが理解されるだろう。例えば、環状スペーサについての実施形態を示しているが、同様の機能及び結果を達成するために、当業者が本開示の利点を備える代替方法を想定することもできる。議論され、示された実施形態の様々な要素は、信頼性、テキスタイルとの互換性、及び大量生産方法との互換性のような特定の利点を提供する。もちろん、上記の実施形態又はプロセスの任意の1つを、1つ以上の他の実施形態又はプロセスと組み合わせて、デザインと利点とを見つけて一致させる上での更なる改善を提供することができることを理解されたい。本開示は、圧力検知テキスタイルに特別な利点を提供し、一般的には、柔軟な基板に統合された圧力センサを有する任意のアプリケーションに適用できることを理解されたい。
【0064】
添付の特許請求の範囲を解釈する際には、「備える」という言葉は、所定の請求項に記載されたもの以外の要素又は行為の存在を排除するものではなく、要素の前にある「a」又は「an」という単語は、そのような複数の要素の存在を排除するものではなく、請求項における参照符号は、その範囲を限定するものではなく、いくつかの「手段」は、同じ又は異なる項目若しくは実施された構造又は機能によって表されることがあり、開示された装置又はその一部は、特に他が記載されていない限り、一緒に組み合わせる、更なる部分に分離することができることを理解すべきである。ある請求項が他の請求項を参照している場合、これはそれぞれの特徴の組み合わせによって達成される相乗的な利点を示している可能性がある。しかし、ある手段が相互に異なる請求項に記載されているという事実だけで、これらの手段の組み合わせも有利に使用できないことを示すものではない。従って、本実施形態は、文脈から明らかに除外されていない限り、各請求項が原則として先行する請求項を参照することができるように、請求項のすべての動作の組み合わせを含むことができる。
【0065】
[付記]
[付記1]
テキスタイルシートにラミネートされ、圧力検知テキスタイルシート(100)を形成する圧力センサ(1)であって、
第1の弾性キャリア(3)の面上にパターン(P)で配置された少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)と、
前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)をシャントするための抵抗性複合材料(E)から形成された電気抵抗層(4)であって、該電気抵抗層(4)が第2の弾性キャリア(5)の面上に配置された、電気抵抗層(4)と、
を備え、
前記第1及び第2の弾性キャリア(3、5)が、スペーサ(7)を挟んで積層されて、前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)が、前記スペーサ(7)によって規定されたギャップ(6)を挟んで前記電気抵抗層(4)に面するようにすることで、前記圧力センサにかかる力(F)に少なくとも部分的に対抗するガスが充填されたガス閉じ込め構造を規定するポケット構造(8)を形成することを特徴とし、前記ギャップ(6)を横切る方向にかかる前記力(F)を受けた際に、前記電気抵抗層(4)と前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)との間の前記ギャップ(6)を小さくして、受けた前記力に依存して接触領域(A)上で前記抵抗性複合材料(E)と接して前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)をシャントし、その結果として、前記導電性リード線間に圧力に依存する電気抵抗をもたらすように、前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を含む前記第1のキャリア(3)及び前記電気抵抗層(4)を含む前記第2のキャリア(5)が伸縮可能であることを特徴とし、前記ポケット構造(8)に、マイクロバンプのレリーフ構造と、前記ガスの前記対抗する力を低減するための開口部と、が設けられ、前記開口部が、前記ガスが前記ポケットから出ることを妨げるように寸法決めされている、ことを特徴とする圧力センサ。
【0066】
[付記2]
前記開口部は、前記スペーサに形成されている、ことを特徴とする付記1に記載の圧力センサ。
【0067】
[付記3]
前記ポケット構造は、0.5~500マイクロメートルの範囲の前記キャリア間の高さと、0.5~2cmの範囲の幅と、を有する、ことを特徴とする付記1又は2に記載の圧力センサ。
【0068】
[付記4]
前記第1のキャリア(3)、前記第2のキャリア(5)及び前記スペーサ(7)は、約100MPa未満の弾性率を有する弾性材料、特にポリウレタンポリマーを含む組成物から形成される、ことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1つに記載の圧力センサ(1)。
【0069】
[付記5]
前記電気抵抗性複合材料(E)は、弾性ポリマーマトリクス(U)中に導電性マイクロ粒子(M)の相互接続されたネットワークを含む、ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の圧力センサ(1)。
【0070】
[付記6]
前記パターン(P)は、前記ギャップ(6)の閉鎖時に、徐々に且つ半径方向に、大きくなる前記電気抵抗層(4)と前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)との間の接触面積(A)を形成するように配置されている、ことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1つに記載の圧力センサ(1)。
【0071】
[付記7]
前記ポケットは、前記力が加えられた際に前記ガス(G)を再分配するための複数の連結された区画を備える、ことを特徴とする付記1乃至6のいずれか1つに記載の圧力センサ(1)。
【0072】
[付記8]
前記電気抵抗層は、1キロオーム/cm~500キロオーム/cmの範囲の、好ましくは約30キロオーム/cmのシート抵抗を示す、ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか1つに記載の圧力センサ(1)。
【0073】
[付記9]
前記第1の弾性キャリア(3)の前記面上にパターン(P)で配置された前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)のうちの空間的に分離された複数のものと、前記第2の弾性キャリア(5)の前記面上の前記電気抵抗層(4)のうちの空間的に分離された対応する複数のものとを備え、ガスで充填されたガス閉じ込め構造をそれぞれ規定する複数のポケット構造(8)を形成し、好ましくは、前記圧力センサがパッシブマトリクス構成で構成される、ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1つに記載の圧力センサ(1)。
【0074】
[付記10]
前記複数のポケットの少なくとも第1の部分が、第1の感度範囲に従って寸法決め及び/又は形状決めされており、前記複数の圧力センサの第2の部分が、前記圧力センサの全体の感度範囲を拡張するように前記第1の感度範囲とは異なる第2の感度範囲に従って寸法決め及び/又は形状決めされている、ことを特徴とする付記9に記載の圧力センサ(1)。
【0075】
[付記11]
付記9又は10に記載の圧力センサを備える、圧力分布検知製品(1000)。
【0076】
[付記12]
圧力検知テキスタイルシート上に圧力センサ(1)を製造する方法であって、
第1の弾性キャリア(3)を提供するステップ(21)、
第2の弾性キャリア(5)を提供するステップ(22)、
布シートを前記第1のキャリア(3)及び/又は前記第2のキャリア(5)上にラミネートするステップ、及び、
前記第1のキャリア(3)の面上にパターン(P)で少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を設ける(23)ステップ、
前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)をシャントするための電気抵抗層(4)を形成するために、前記第2のキャリア(5)の面上に電気抵抗性複合材料(E)を堆積させるステップ(24)と、
スペーサ(7)を設けるステップ(25)と、
マイクロバンプのレリーフ構造を設けるステップと、
前記少なくとも2つ隣接する導電性リード線(2)が前記スペーサ(7)によって規定されたギャップ(6)を挟んで前記電気抵抗層(4)に面するように、前記スペーサ(7)を挟んで前記第1及び第2の弾性キャリア(3、5)を積層するステップ(26)であって、それにより前記圧力センサにかかる力(F)を少なくとも部分的に打ち消すガスが充填されたガス閉じ込め構造を規定する、ガス流量制限器を含むポケット構造(8)を形成するステップ(26)と、
を含み、
前記ギャップ(6)を横切る方向にかかる力(F)を受けた際に、前記電気抵抗層(4)と前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)との間の前記ギャップ(6)を小さくして、受けた前記力に依存して接触領域(A)上で前記抵抗性複合材料(E)と接して前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を分流し、その結果として、前記導電性リード線間に圧力に依存する電気抵抗をもたらすように、前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を含む前記第1のキャリア(3)及び前記電気抵抗層(4)を含む前記第2のキャリア(5)が伸縮可能であることを特徴とし、前記ポケット構造(8)が、マイクロバンプのレリーフ構造と、前記ガスの前記対抗する力を低減するための開口部とを備え、前記開口部が、前記ガスが前記ポケットから出るのを妨げるように寸法決めされている、ことを特徴とする方法。
【0077】
[付記13]
前記スペーサは、0.5~500マイクロメートルの範囲の高さ(h)及び0.5~2cmの範囲の幅を有する、ことを特徴とする付記12に記載の方法。
【0078】
[付記14]
前記少なくとも2つの隣接する導電性リード線(2)を堆積するステップ、及び/又は前記複合材料(E)を堆積するステップ、及び/又は前記スペーサを堆積するステップは、印刷ステップを含む、ことを特徴とする付記12又は13に記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B