(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】アンモニアからオンデマンド水素
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20250206BHJP
【FI】
C01B3/04 B
(21)【出願番号】P 2022520208
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076704
(87)【国際公開番号】W WO2021063795
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-22
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】モーデンスン・ピーダ・ムルゴー
(72)【発明者】
【氏名】ラースン・カスパ・イミール
(72)【発明者】
【氏名】オースベアウ-ピーダスン・キム
(72)【発明者】
【氏名】クライン・ローバト
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/110268(WO,A1)
【文献】米国特許第06746650(US,B1)
【文献】実開平05-006120(JP,U)
【文献】特開2010-195642(JP,A)
【文献】特開昭52-018485(JP,A)
【文献】国際公開第2004/091773(WO,A1)
【文献】特表2021-525697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/02
B01J 35/00
B01J 32/00
B01J 15/00
B01J 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア分解反応条件下において、触媒の存在下、アンモニアを含む供給ガスから水素を製造するための反応器システムであって、
-アンモニアを含む供給ガスの供給;
-前記供給ガスのアンモニア分解反応を触媒するために配置された構造体触媒;ここで前記構造体触媒は、導電性材料のマクロ構造を含み、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性材料を支持している、
-前記構造体触媒を収容する圧力シェル;ここで前記圧力シェルは、前記供給ガスを入れるための入口と、生成物ガスを排出するための出口とを備え、前記入口は、前記供給ガスが前記構造体触媒の第1の端部から構造体触媒に入り、前記生成物ガスが前記構造体触媒の第2の端部から構造体触媒を出るように位置決めされている、
-前記構造体触媒と前記圧力シェルとの間の断熱層;
-前記構造体触媒と、前記圧力シェルの外側に配置された電源とに電気的に接続された少なくとも2つの導体;ここで、前記電源が、前記マクロ構造に電流を流すことによって前記構造体触媒の少なくとも一部を少なくとも300℃の温度まで加熱するように寸法決めされており、前記少なくとも2つの導体が、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1の端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒に接続され、前記構造体触媒が、電流を1つの導体から前記構造体触媒の第2の端部まで実質的に流し、前記少なくとも2つの導体の第2の導体に戻すように構成されている、
-水素を含む生成物流のための出口
を含む、前記反応器システム。
【請求項2】
前記電源が、前記構造体触媒の少なくとも一部を、少なくと
も700℃の温度に加熱するように寸法決めされている、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項3】
前記供給ガスが、さらに、H
2、N
2、またはArを含む、請求項1または2に記載の反応器システム。
【請求項4】
前記圧力シェルが2~30barの間の設計圧力を有する、請求項1~3のいずれか1つに記載の反応器システム。
【請求項5】
前記圧力シェルが30~200barの間の設計圧力を有する、請求項1~3のいずれか1つに記載の反応器システム。
【請求項6】
導電性材料の抵抗率が10
-5Ω・m~10
-7Ω・mの間である、請求項1~5のいずれか1つに記載の反応器システム。
【請求項7】
供給ガス
のアンモニア分解反応を触媒するために配置された構造体触媒を収容する圧力シェルを含む反応器システムにおいて、アンモニア分解反応条件下に触媒の存在下で、アンモニアを含む供給ガスを水素にアンモニア分解反応させ、但し、前記構造体触媒が、導電性材料のマクロ構造を含み、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性物質を支持しており;前記反応器システムが前記構造体触媒と前記圧力シェル間に熱絶縁を備えている方法であって、次のステップ;-前記供給ガスを加圧するステップ、
-前記加圧された供給ガスを、前記供給ガスが前記構造体触媒の第1の端部で前記構造体触媒に入るように配置された入口を通して前記圧力シェルに供給し、前記供給ガスを前記構造体触媒上でアンモニア分解反応させ、前記圧力シェルから生成物ガスを排出し、この際、前記生成物ガスが前記構造体触媒の第2の端部で前記構造体触媒から出るステップ;-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して電力を供給し、電流が前記マクロ構造を通って流れることを可能にし、それによって前記構造体触媒の少なくとも一部を少なくとも300℃の温度に加熱し、ここで
、少なくとも2つの導体は、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1の端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒と接続されており、かつ、電流を1つの導体から実質的に前記構造体触媒の第2の端部まで流しおよ
び少なくとも2つの導体のうちの第2の導体に戻すように、前記構造体触媒が構成され、それによって、前記供給ガスが構造体触媒上でアンモニア分解反応を行うために十分な温度まで構造体触媒の少なくとも一部を加熱し、それによって、前記供給ガスが構造体触媒上でアンモニア分解反応を行うために十分な温度まで構造体触媒の少なくとも一部を加熱するステップ;
-水素を含む生成物ガスを反応器システムから排出するステップ、
を含む前記方法。
【請求項8】
水素を含む生成物流をアップグレーディングユニットに供給し、それをアップグレードされた水素流とオフガス流とに分離するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アップグレーディングユニットからの生成物ガスまたはアップグレードされた水素流を、発電のために下流プラントに供給するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の反応器システムにおいて、アンモニアを含む供給ガスの金属触媒アンモニア分解反応を、第1の定常反応条件(A)から第2の定常反応条件(B)またはその逆に速やかに切り替える方法であって; 次のステップ
前記第1の定常反応条件(A)において
-前記供給ガスを第1の総流量で前記反応器システムに供給するステップ、および、
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して第1の電力を供給し、それによって前記導電性材料に第1の電流が流れるようにし、
それによって、前記構造体触媒の少なくとも一部を第1の温度まで加熱し、この温度で、前記第1の定常反応条件(A)下において前記供給ガスが前記構造体触媒上で第1の生成物ガス混合物に変換され;そして前記第1の生成物ガスを前記反応器システムから排出させるステップ、
そして、前記第2の定常反応条件(B)において
-前記供給ガスを第2の総流量で前記反応器システムに供給するステップ、および、
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して第2の電力を供給し、それによって前記導電性材料に第2の電流が流れるようにし、
それによって、前記構造体触媒の少なくとも一部を第2の温度まで加熱し;この温度で、前記第2の定常反応条件(B)下において前記供給ガスが前記構造体触媒上で第2の生成物ガス混合物に変換され;前記第2の生成物ガスを前記反応器システムから排出させるステップ、
を含み、
ここで、前記第2の電力は、前記第1の電力よりも大きく、および/または、前記第2の総流量は、前記第1の総流量よりも多い、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、アンモニア分解反応条件下で触媒の存在下にアンモニアを含む供給ガスから水素を製造するための反応システム及び工程を提供し、ここで、アンモニア分解反応のための熱は抵抗加熱によって提供されることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
背景
水素タンクは、時折必要とされる場合、または様々な需要に応じた水素貯蔵のための典型的な解決策である。しかし、このようなタンクで水素を貯蔵すると、火災や爆発の危険性がある。
【0003】
水素製造のために貯蔵しやすい反応物を使用し、オペレータの入力を最小限に抑えた比較的簡単な製造セットアップを使用する、より小さなプラントでのオンデマンド水素製造が必要とされている。
【0004】
吸熱触媒反応を実施するためのシステムおよび方法は、共同出願中の特許出願PCT/EP2019/062424に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
概要
そこで、第1の態様において、アンモニア分解反応条件下で触媒の存在下、アンモニアを含む供給ガスから水素を製造するための反応器システムが提供され、前記反応器システムは、以下を備える。
-アンモニアを含む供給ガスの供給;
-前記供給ガスのアンモニア分解反応を触媒するために配置された構造体触媒;ここで前記構造体触媒は、導電性材料のマクロ構造(巨視的構造)を含み、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性材料を支持している、
-前記構造体触媒を収容する圧力シェル;ここで前記圧力シェルは、前記供給ガスを入れるための入口と、生成物ガスを排出するための出口とを備え、前記入口は、前記供給ガスが前記構造体触媒の第1の端部から構造体触媒に入り、前記生成物ガスが前記構造体触媒の第2の端部で前記構造体触媒から出るように位置決めされている、
-前記構造体触媒と前記圧力シェルとの間の断熱層;
-前記構造体触媒と、前記圧力シェルの外側に配置された電源とに電気的に接続された少なくとも2つの導体;ここで、前記電源が、前記マクロ構造に電流を流すことによって前記構造体触媒の少なくとも一部を少なくとも300℃の温度まで加熱するように寸法決めされており、前記少なくとも2つの導体が、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1の端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒に接続され、前記構造体触媒が、電流を1つの導体から前記構造体触媒の第2の端部まで実質的に流し、前記少なくとも2つの導体の第2の導体に戻すように構成されている、
-水素を含む生成物流のための出口。
【課題を解決するための手段】
【0007】
さらなる態様において、触媒の存在下でアンモニア分解反応条件下において、アンモニアを含む供給ガスを水素にアンモニア分解反応させるための方法を提供し、供給ガスの前記アンモニア分解反応を触媒するために配置された構造体触媒を収容する圧力シェルを含む反応器システムにおいて、前記構造体触媒が導電性材料のマクロ構造を含み、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性材料を支持しており;前記反応器システムが前記構造体触媒と前記圧力シェルの間に熱絶縁を備えており;前記方法が以下のステップを含む;
-前記供給ガスを加圧するステップ
-前記加圧された供給ガスを、前記供給ガスが前記構造体触媒の第1の端部で前記構造体触媒に入るように配置された入口を通して前記圧力シェルに供給し、前記供給ガスを前記構造体触媒上でアンモニア分解反応させ、前記圧力シェルから生成物ガスを排出し、前記生成物ガスが前記構造体触媒の第2の端部で前記構造体触媒から出るステップ;
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する(複数の)電気伝導体を介して電力を供給し、電流が前記マクロ構造を通って流れることを可能にし、それによって前記構造体触媒の少なくとも一部を少なくとも300℃の温度に加熱し、前記少なくとも二つの導体は、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1の端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒と接続されており、かつ、電流を1つの導体から実質的に前記構造体触媒の第2の端部まで流し前記少なくとも2つの導体のうちの第2の導体に戻るように、前記構造体触媒が構成され、それによって、前記供給ガスが構造体触媒上でアンモニア分解反応を行うために十分な温度まで構造体触媒の少なくとも一部を加熱し、それによって、前記供給ガスが構造体触媒上でアンモニア分解反応を行うために十分な温度まで構造体触媒の少なくとも一部を加熱するステップ;
-水素を含む生成物ガスを反応器システムから排出するステップ。
【0008】
さらなる態様において、本明細書に記載の反応器システムにおいて、アンモニアを含む供給ガスの金属触媒アンモニア分解反応を、第1の定常反応条件(A)から第2の定常反応条件(B)またはその逆に迅速に切り替える方法が提供され、前記方法は、以下のステップを含む;
前記第1の定常反応条件(A)において
-前記供給ガスを第1の総流量で前記反応器システムに供給するステップ、および、
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して第1の電力を供給し、それによって前記導電性材料に第1の電流が流れるようにし、
それによって、前記構造体触媒の少なくとも一部を第1の温度まで加熱し、この温度で、前記第1の定常反応条件(A)下において前記供給ガスが前記構造体触媒上で第1の生成物ガス混合物に変換され;そして前記第1の生成物ガスを前記反応器システムから排出させるステップ、
そして、前記第2の定常反応条件(B)において
-前記供給ガスを前記反応器システムに第2の総流量で供給するステップ、および、
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して第2の電力を供給し、それによって前記導電性材料に第2の電流が流れるようにし、
それによって、前記構造体触媒の少なくとも一部を第2の温度まで加熱し;この温度で、前記第2の定常反応条件(B)下において前記供給ガスが前記構造体触媒上で第2の生成物ガス混合物に変換され;前記第2の生成物ガスを前記反応器システムから排出させるステップ;
ここで、前記第2の電力が前記第1の電力より大きく;および/または前記第2の総流量が前記第1の総流量より多く、ここで、この反応器システムは、前記第2の電力が前記第1の電力より大きく、および/または前記第2の総流量は前記第1の流量より高い。
【0009】
本発明のさらなる態様は、以下の詳細な説明、実施例および添付の特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図に関する凡例
図1aは、マクロ構造のアレイを含む構造体触媒を備えた本発明の反応器システムの一実施形態の断面を示す図である。
【0011】
図1bは、
図1aの反応器システムから圧力シェルおよび断熱層の一部を取り除いた状態を示す。
【0012】
【0013】
図3aおよび
図3bは、構造体触媒を含む本発明反応器システムの一実施形態を通る概略断面図である。
【0014】
図4および
図5は、それぞれ上方および側方から見た、マクロ構造が配列された構造体触媒の実施形態を示す図でである。
【0015】
図6は、本発明の構造体触媒の一実施形態を示す図である。
【0016】
図7および
図8は、コネクタを有する構造体触媒の実施形態を示す図である。
【0017】
図9は、実質的に純粋なNH
3原料を使用した場合の28bargでのH
2、N
2およびNH
3の平衡組成を温度の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
電気加熱アンモニア分解は、アンモニア分解触媒を急速に加熱し、オンデマンドで水素を製造するための手段を提供する。これにより、例えば化学プラントにおいて、他の触媒層のスタートアップまたはシャットダウンに必要な水素を迅速に製造することができる。化学プラントで水素が必要とされるのは、プラントの安全停止が発動され、敏感な機器や材料が保護雰囲気で保護される必要があるトリップ企画のときが多い。敏感な材料の例としては触媒材料である。また、本方法は、水素製造のために貯蔵しやすい反応物を使用し、オペレータの入力を最小限に抑えた比較的簡単な製造設定を用いて、小規模なプラントでオンデマンド水素製造を可能にする。また、本方法は、風力や太陽光などの再生可能な電力源からの変動する電気エネルギーの利用可能性に応じてオンデマンドで水素を製造するための手段を提供するものである。
【0019】
本技術は、電気加熱式反応器により、コンパクトな設計でアンモニアから水素をオンデマンドで製造する方法を示す。
【0020】
アンモニアの分解反応は、次のように要約される。
【化1】
であり、ΔH
R=251kJ/molである。一般的に、触媒活性物質としてルテニウム(Ru)触媒が使用される。しかし、FeやCoの活性相もしばしば使用される。
【0021】
モノリス触媒を用いたコンパクトな電気炉は、運転が容易で、必要なときに簡便な作動原理で水素を製造することができる。このため、比較的安価なプラントで、必要な量だけ水素を製造でき、水素の貯蔵もほとんど必要なく、水素の輸送も削減または完全に排除することができる。シンプルな反応装置とアンモニア分解プロセスの簡便な操作により、水素の取り扱いのリスクを低減する非局所的なプラントでの水素製造が利点となる。
【0022】
さらに、電気を熱源として使用するため、迅速な起動と停止が可能となる(数分単位)。このように、待機状態から水素生産へ、またはその逆へとほぼ瞬時に切り替わるため、水素の貯蔵の必要性が低くなる。
【0023】
したがって、アンモニア分解反応条件下において触媒の存在下、アンモニアを含む供給ガスから水素を製造するための反応器システムが提供され、この反応器システムは以下を備える。
-アンモニアを含む供給ガスの供給
-前記供給ガスのアンモニア分解反応を触媒するために配置された構造体触媒;ここで前記構造体触媒は導電性材料のマクロ構造を含み、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性材料を支持している、
-前記構造体触媒を収容する圧力シェル;ここで前記圧力シェルは、前記供給ガスを入れるための入口と、生成物ガスを排出するための出口とを備え、前記入口は、前記供給ガスが前記構造体触媒の第1の端部から構造体触媒に入り、前記生成物ガスが前記構造体触媒の第2の端部で前記構造体触媒から構造体触媒の外に出るように位置決めされている、
-前記構造体触媒と前記圧力シェルとの間の断熱層;
-前記構造体触媒と、前記圧力シェルの外側に配置された電源とに電気的に接続された少なくとも2つの導体;ここで、前記電源が、前記マクロ構造に電流を流すことによって前記構造体触媒の少なくとも一部を少なくとも300℃の温度まで加熱するように寸法決めされており、前記少なくとも2つの導体が、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1の端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒に接続され、前記構造体触媒が、電流を1つの導体から前記構造体触媒の第2の端部まで実質的に流し、前記少なくとも2つの導体の第2の導体に戻すように構成されている、
-水素を含む生成物流のための出口。
【0024】
反応器システムのレイアウトは、入口で加圧された供給ガスを反応器システムに供給し、このガスを反応器システムの圧力シェルに導くことを可能にする。圧力シェルの内部においては、断熱層と不活性材料の構成が、供給ガスを構造体触媒に通して、触媒材料と接触させ、触媒活性材料がアンモニア分解反応を促進させるように配置されている。さらに、構造体触媒の加熱により、吸熱反応に必要な熱を供給する。加熱された構造体触媒からの生成物ガスは、反応器システムの出口に導かれる。
【0025】
触媒活性物質と導電性物質が近接しているため、抵抗加熱された導電性物質からの近接した熱伝導により、触媒活性物質を効率的に加熱することができる。このように、外部熱源から熱伝導、対流、輻射によってエネルギーを供給するのではなく、物体自体の内部でエネルギーを供給することが抵抗加熱工程の重要な特徴である。さらに、反応器システムの最も高温な部分は、反応器システムの圧力シェル内にあることになる。好ましくは、構造体触媒の少なくとも一部が少なくとも300℃、好ましくは少なくとも700℃の温度に達するように、電源部および構造体触媒は寸法決めされる。導電性材料の表面積、セラミックコーティングで被覆された導電性材料の割合、セラミックコーティングの種類および構造、ならびに触媒活性触媒材料の量および組成は、所定の動作条件における特定の反応に合わせて調整することができる。
【0026】
導電性材料は、好適には、マクロ構造である。本明細書で使用する場合、「マクロ構造」という用語は、拡大装置なしで、肉眼で見えるほど大きい構造を示すことを意味する。マクロ構造の寸法は、典型的には、センチメートルまたはメートルさえも範囲内である。マクロ構造の寸法は、有利には、構造体触媒を収容する圧力シェルの内側寸法に少なくとも部分的に対応するようにされ、断熱層および導体のためのスペースを節約することができる。2mまたは5mなどのメートルの範囲の外寸の少なくとも1つを有するマクロ構造のアレイを提供するために、2つ以上のマクロ構造が連結されてもよい。このような2つ以上のマクロ構造は、「マクロ構造のアレイ」と表記されることがある。この場合、マクロ構造のアレイの寸法は、有利には、構造体触媒を収容する圧力シェルの内側寸法に少なくとも部分的に対応するように製造される(断熱層のためのスペースを節約する)。考えられるマクロ構造物のアレイは、0.1~10m3またはそれ以上の体積を占めることができる。構造体触媒は、単一のマクロ構造またはマクロ構造のアレイを含むことができ、マクロ構造(または複数のマクロ構造)は、触媒活性物質を支持するセラミックコーティングを支持することができる。マクロ構造のアレイでは、マクロ構造は互いに電気的に接続されてもよいが、しかしながら、代替的に、マクロ構造は互いに電気的に接続されていない。したがって、構造体触媒は、互いに隣接して配置された2つ以上のマクロ構造から構成されることができる。マクロ構造(または複数のマクロ構造)は、押出成形および焼結された構造であってもよく、3Dプリントされた構造であってもよい。3Dプリントされたマクロ構造は、その後の焼結を伴って、または伴わずに提供されることができる。
【0027】
マクロ構造の物理的寸法は、任意の適切な寸法であってよく、したがって、高さは、マクロ構造の幅よりも小さくてもよく、またはその逆であってもよい。
【0028】
マクロ構造はセラミックコーティングを支持し、セラミックコーティングは触媒活性材料を支持する。「セラミックコーティングを支持するマクロ構造」という用語は、マクロ構造の表面の少なくとも一部において、マクロ構造がセラミックコーティングによって被覆されていることを示すことを意味している。したがって、この用語は、マクロ構造の表面のすべてがセラミックコーティングによって被覆されていることを意味するものではなく、特に、マクロ構造の少なくとも導体に電気的に接続されている部分は、その上にコーティングを有しない。コーティングは、構造中に孔を有するセラミック材料であり、これにより、触媒活性材料をコーティング上およびコーティングの内部に支持することができる。有利には、触媒活性材料は、約2nm~約250nmの範囲のサイズを有する触媒活性粒子を含む。
【0029】
好ましくは、マクロ構造は、粉末状の金属粒子とバインダーの混合物を押出成形によって、押出構造にし、その後押出し構造体を焼結することによって製造されており、それによって体積当たりの幾何学的表面積が高い材料が提供される。好ましくは、押出し構造体を還元雰囲気中で焼結して、マクロ構造を提供する。あるいは、マクロ構造は、粉末床溶融または直接エネルギー堆積プロセスなどの、その後の焼結を必要としない金属付加製造溶融プロセス、すなわち3Dプリントプロセスで3Dプリントされる。このような粉末床溶融または直接エネルギー堆積プロセスの例としては、レーザービーム、電子ビーム、またはプラズマ3Dプリントプロセスがある。別の選択肢として、マクロ構造は、バインダーに基づく金属付加製造プロセスによって3D金属構造として製造され、その後、マクロ構造を提供するために、非酸化性雰囲気において第1の温度T1(T1>1000℃)で焼結されてもよい。
【0030】
酸化性雰囲気中で2回目の焼結の前に、マクロ構造上に触媒活性物質を含むセラミックコーティングを施し、セラミックコーティングとマクロ構造の間に化学結合を形成させる。あるいは、2回目の焼結の後に、触媒活性物質をセラミックコーティングに含浸させることもできる。セラミックコーティングとマクロ構造の間に化学結合が形成されると、電気的に加熱されたマクロ構造とセラミックコーティングによって支持された触媒活性材料の間の熱伝導率が特に高くなり、熱源と構造体触媒の触媒活性材料が密接かつほぼ直接的に接触できるようになる。熱源と触媒活性物質が近接しているため、熱伝達が効果的に行われ、構造体触媒を非常に効率的に加熱することができる。したがって、反応器システム容積あたりのガス処理量の観点から、反応器システムをコンパクトにすることができ、したがって、構造体触媒を収容する反応器システムもコンパクトにすることができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、「3Dプリント」および「3D印刷」という用語は、金属付加製造プロセスを示すことを意味する。このような金属付加製造プロセスは、コンピュータ制御下で材料を構造体に接合して3次元物体を作成する3Dプリントプロセスを対象とし、ここで、構造体は、例えば焼結によって固化されてマクロ構造を提供されることになる。さらに、このような金属付加製造プロセスには、粉末床溶融プロセスや直接エネルギー堆積プロセスなど、その後の焼結を必要としない3Dプリントプロセスも含まれる。このような粉末床溶融または直接エネルギー堆積プロセスの例としては、レーザービーム、電子ビームまたはプラズマ3Dプリントプロセスが挙げられる。
【0032】
反応器システムは炉を必要としないので、反応器全体のサイズを大幅に縮小することができる。
【0033】
導電性材料は、Fe、Ni、Cu、Co、Cr、Al、Siまたはそれらの合金を含む。このような合金は、Mn、Y、Zr、C、Co、Moまたはそれらの組み合わせなどのさらなる元素を含むことができる。好ましくは、導電性材料は、Fe、Cr、Alまたはそれらの合金を含む。このような合金は、Si、Mn、Y、Zr、C、Co、Moまたはそれらの組み合わせなどのさらなる元素を含んでいてもよい。好ましくは、触媒活性材料は、2nm~250nmのサイズを有する粒子である。好ましくは、導体および導電性材料は、導電性材料とは異なる材料で作られている。導体は、例えば、鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、銀、またはそれらの合金であってよい。セラミックコーティングは電気絶縁材料であり、通常、約100μm、例えば10~500μmの範囲の厚さを有することになる。
【0034】
導電性材料は、導電性材料全体で電気伝導性を達成し、それによって構造体触媒全体で熱伝導性を達成し、特に触媒材料の加熱を提供するために、有利にはコヒーレントまたは一貫して内部接続された材料である。コヒーレントまたは一貫して内部接続された材料によって、導電性材料内の電流の均一な分布、ひいては構造体触媒内の熱の均一な分布を確保することが可能である。この文章を通して、「コヒーレント」という用語は、凝集性と同義であり、したがって、一貫して内部接続している、または一貫して結合している材料を指すことを意味する。構造体触媒がコヒーレントまたは一貫して内部接続された材料であることの効果は、構造体触媒の材料内の連結性、ひいては導電性材料の導電性の制御が得られることである。なお、導電性材料の一部にスリットを設けたり、導電性材料内に絶縁材料を実装するなどの導電性材料のさらなる改良が行われたとしても、導電性材料は、コヒーレントまたは一貫して内部接続された材料と示されることに注意されたい。
【0035】
構造体触媒上のガス流は、構造体触媒を通る電流経路と軸方向または同軸方向、電流経路に垂直方向、または電流経路に対して他の適切な方向を有していてもよい。
【0036】
アンモニア分解反応は非常に吸熱的である。供給物中のアンモニアの許容可能な転化率に達するためには、典型的には600~700℃を超える高温が必要である。
【0037】
アンモニア分解反応への供給原料は、好ましくは、アンモニアの実質的に純粋流である。
【0038】
「導電性」という用語は、20℃で10-5~10-8Ω・mの範囲の電気抵抗率を有する材料を示すことを意味する。したがって、電気的に導電性である材料は、例えば、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、または金属の合金のような金属である。さらに、「電気絶縁性」という用語は、20℃で10Ω・mを超える電気抵抗率、例えば20℃で109~1025Ω・mの範囲にある材料を示すことを意味する。
【0039】
反応器システムが、構造体触媒と圧力シェルとの間に断熱層を含む場合、構造体触媒と圧力シェルとの間の適切な熱的および電気的絶縁が得られる。圧力シェルと構造体触媒との間に断熱層が存在することにより、圧力シェルの過剰な加熱を回避し、周囲への熱損失を低減することができる。構造体触媒の温度は、少なくともその一部で、約1300℃まで達することがあるが、構造体触媒と圧力シェルとの間に断熱層を使用することによって、圧力シェルの温度を、例えば500℃または100℃の著しく低い温度に保つことができ、これは、典型的な建設鋼材が一般に1000℃を超える温度での耐圧用途に適さないことから有利となる。さらに、圧力シェルと構造体触媒との間の断熱層は、断熱層が電気絶縁性でもあるので、反応器システム内の電流の制御を補助する。断熱層は、セラミック、不活性材料、繊維材料、レンガ、またはガスバリアなどの固体材料の1つまたは複数の層、またはそれらの組み合わせであり得る。したがって、パージガスまたは閉じ込められたガスが断熱層を構成する、またはその一部を形成することも考えられる。
【0040】
さらに、「断熱材料」という用語は、約10W・m-1・K-1以下の熱伝導率を有する材料を示すことを意味することに留意されたい。断熱材料の例は、セラミック、レンガ、アルミナベースの材料、ジルコニアベースの材料、および類似のものである。
【0041】
有利には、構造体触媒、断熱層、圧力シェル、および/または反応器システム内の他の構成要素の間の関連する隙間(ギャップ)は、不活性材料、例えば不活性ペレットの形態で充填される。そのような隙間は、例えば、構造体触媒の下側と圧力シェルの底部との間の隙間、および構造体触媒の側面と圧力シェルの内側を覆う断熱層との間の隙間である。不活性材料は、例えば、ペレットまたはタイルの形態のセラミック材料であってもよい。不活性材料は、反応器システムを通るガス分布の制御、および構造体触媒を通るガス流の制御を補助する。さらに、不活性材料は、通常、熱を遮断する効果を有する。
【0042】
圧力シェルは、好適には2bar~30barの間の設計圧力を有する。実際の運転圧力は、吸熱反応、プラントの大きさなどによって決定される。反応器システムの最も高温の部分は電気伝導性材料であり、断熱層によって囲まれ、反応器システムの圧力シェル内にあるので、圧力シェルの温度は、最大プロセス温度(最大工程温度)よりもかなり低く保つことができる。これにより、構造体触媒に400℃、あるいは700℃、あるいは1100℃、あるいは1300℃までの最大プロセス温度を有する一方で、圧力シェルの設計温度を例えば500℃または300℃、好ましくは200℃または100℃の相対的に低い温度とすることができる。材料強度は、これらの温度のうち低い方(上に示した圧力シェルの設計温度に相当)で高くなる。これは、化学反応器を設計する際に利点をもたらす。好適には、圧力シェルは、2bar~30barの間、または30~200barの間の設計圧力を有する。工程の経済性と熱力学的制限の間の妥協点として、30bar前後が好ましい。
【0043】
導電性材料の抵抗率は、好適には、10-5Ω・m~10-7Ω・mとの間である。抵抗率がこの範囲にある材料は、電源で通電したときに、構造体触媒を効率的に加熱することができる。グラファイトは20℃で約10-5Ω・m、カンタルは20℃で約10-6Ω・m、ステンレスは20℃で約10-7Ω・mの抵抗率を有する。導電性材料は、例えば、20℃で約1.5・10-6Ω・mの抵抗率を持つFeCr合金で作ることができる。
【0044】
典型的には、圧力シェルは、プロセスガスを入れるための入口と、生成物ガスを排出するための出口とを備え、入口は圧力シェルの第1の端部の近傍に位置し、出口は圧力シェルの第2の端部の近傍に位置し、少なくとも二つの導体は両方とも、出口よりも入口に近い構造体触媒の位置で構造体触媒に接続されている。入口ガスが生成物ガスよりも低い温度を有するため少なくとも二つの導体は反応器システムの実質的に冷たい部分に配置することができ、導電性材料が化学反応の進行により消費される熱のため材料の最も上流部分で冷たくなり、加熱された構造体触媒上のガスの経路に沿って加熱された構造体触媒によってさらに加熱される前に、入口を通して供給される供給ガスが少なくとも二つの導体を冷却できる。導体と構造体触媒との間の接続を保護するために、導電性材料を除くすべての導電性要素の温度を下げておくことが有利である。導電性材料を除く導体および他の導電性要素の温度が比較的低い場合、導電性材料を除く導体および他の導電性要素に適した材料に関する制限があまり存在しない。導電性要素の温度が上昇すると、その抵抗率が上昇するため、反応器システム内の導電性材料以外の部分が不必要に加熱されないようにすることが望ましい。「導電性材料を除く導電性要素」という用語は、導電性の構造体触媒自体を除き、構造体触媒に電源を接続するために配置された関連する導電性要素を示すことを意味する。
【0045】
留意すべきは、本発明のシステムは、任意の適切な数の電源と、電源(または複数の電源)と構造体触媒の導電性材料(または複数の導電性材料)とを接続する任意の適切な数の導体を含むことができることである。
【0046】
好適には、少なくとも2つの導体は、少なくとも2つの導体が圧力シェルから電気的に絶縁されるように、フィッティング内の圧力シェルを介して導かれる。フィッティングは、部分的に、プラスチックおよび/またはセラミック材料であってよい。用語「フィッティング」は、2つのハードウェアを耐圧構成で機械的に接続することができる装置を意味するものである。それによって、少なくとも2つの導体がそれを通して導かれているにも関わらず、圧力シェル内の圧力は維持され得る。フィッティングの非限定的な例は、電気絶縁フィッティング、誘電体フィッティング、電力圧縮シール、圧縮フィッティング、またはフランジであってもよい。圧力シェルは、典型的には、側壁、端部壁、フランジ、および場合によってはさらなる部品から構成される。「圧力シェル」という用語は、これらの部品のいずれかをカバーすることを意味する。
【0047】
圧力シェルは、冷却ガスが前記圧力シェル内の少なくとも1つの導体の上、周囲、近傍または内部に流れることを可能にするために、フィッティングの少なくとも1つに近傍にまたはそれと組み合わせた1つまたは複数の入口を更に含むことができる。これにより、導体は冷却され、その結果、フィッティングが受ける温度は低く保たれる。冷却ガスが使用されない場合、導体は、反応器システムへの供給ガス、印加電流による導体の抵抗加熱、および/または、構造体触媒からの熱伝導によって加熱されることができる。冷却ガスは、例えば、水素、アルゴン、窒素、アンモニアまたはそれらの混合物であり得る。圧力シェルへの進入時の冷却ガスの温度は、例えば、約50℃、200℃、または250℃であってもよい。実施形態において、冷却ガスが導体(複数の導体)を通って流れ導体(複数の導体)を内側から冷却することができるように、導体(複数の導体)は中空である。フィッティングの温度を低く、例えば100~200℃程度に保つことで、漏れにくい構成にすることが容易になる。典型的には、反応物の1つなどの供給ガスの一部が、冷却ガスとして圧力シェルに供給される。別の実施形態においては、供給ガスの一部または供給ガスと同じ組成のガスが冷却ガスとして使用される。
【0048】
反応器システムは、構造体触媒と熱交換関係にある内側管をさらに備えてもよく、内側管または管を通って流れる生成物ガスが構造体触媒上を流れるガスと熱交換関係にあるが、構造体触媒から電気的に分離されるように、内側管は構造体触媒から生成物ガスを引き抜くように適合されている。これは、ここではバヨネット式反応器システムと呼ばれるレイアウトである。このレイアウトにおいては、内側管内の生成物ガスが、構造体触媒上を流れるプロセスガスの加熱を補助する。内側管と構造体触媒の間の電気的絶縁は、内側管と構造体触媒の間の隙間または距離、あるいは内側管と構造体触媒の周りに装填された不活性材料の形でガスとすることができる。ガスは、アップフロー方向またはダウンフロー方向に構造体触媒を通過することができる。
【0049】
構造体触媒と少なくとも2つの導体との間の接続は、機械的接続、溶接接続、ろう付け接続、またはこれらの組み合わせであってもよい。構造体触媒は、導電性材料と少なくとも2つの導体との間の電気的接続を促進するために、構造体触媒に物理的および電気的に接続された末端部分を含んでいてもよい。「機械的接続」という用語は、電流が構成要素間を流れることができるように、2つの構成要素がねじ接続またはクランプによって機械的に一緒に保持される接続を示すことを意味する。
【0050】
導電性材料のアレイに配置された導電性材料は、互いに電気的に接続されていてもよい。2つ以上の導電性材料間の接続は、機械的接続、クランプ、はんだ付け、溶接、またはこれらの接続方法の任意の組み合わせによるものであってもよい。各導電性材料は、電気的接続を容易にするために、末端部分を含んでいてもよい。2つ以上の導電性材料は、直列接続または並列接続で電源に接続されてもよい。2つ以上の導電性材料間の電気的接続は、有利には、2つ以上の導電性材料が単一の首尾一貫したまたは一貫した内部接続された材料として作用するように、2つ以上の導電性材料間の接続面に沿って首尾一貫して(コヒーレントであり)均一であり;ここに、2つ以上の導電性材料全体の均一な電気伝導性が促進される。代替的に、または追加的に、構造体触媒は、互いに電気的に接続されていない導電性材料のアレイを含むことができる。その代わりに、2つ以上の電気伝導性材料は、圧力シェル内に一緒に配置されるが、互いに電気的に接続されることはない。この場合、構造体触媒は、したがって、電源に対して並列に接続された導電性材料を含む。
【0051】
触媒活性物質を含む、または含まないセラミックコーティングは、ウォッシュコーティングによって導電性材料の金属表面に直接添加することができる。金属表面のウォッシュコーティングは周知のプロセスであり、その説明は、例えば、Cybulski,A.,and Moulijn,J.A.,“Structuredcatalystsandreactors”,MarcelDekker,Inc,NewYork,1998,Chapter3、および本明細書の参考文献に記載されている。セラミックコートは、導電性材料の表面に添加され、その後、触媒活性材料が添加されてもよく、代替的に、触媒活性材料を含むセラミックコートが、マクロ構造または導電性材料に添加されてもよい。セラミックコートは、例えば、Al、Zr、Mg、Ceおよび/またはCaを含む酸化物であってよい。例示的なコーティングは、カルシウムアルミネート(アルミン酸カルシウム)またはマグネシウムアルミニウムスピネルである。このようなセラミックコーティングは、La、Y、Ti、Kまたはそれらの組み合わせなどのさらなる元素を含んでいてもよい。セラミックコーティングは、電気絶縁材料であり、典型的には、約100μm、例えば10~500μmの範囲の厚さを有することになる。
【0052】
マクロ構造を押出して焼結するか、または3Dプリントすると、均一でコヒーレントな形状のマクロ構造が得られ、その後、セラミックコーティングで被覆(コーティング)することができる。
【0053】
導電性材料とセラミックコーティングは、セラミックコーティングと導電性材料の間に化学結合を形成するために、酸化性雰囲気中で焼結されてもよい。これにより、導電性材料とセラミックコーティングに支持された触媒活性材料の間の熱伝導率が特に高くなる。それによって、構造体触媒は触媒活性部位への熱伝達の点でコンパクトであり、構造体触媒を収容する反応器システムは、コンパクトにすることができ、主に化学反応の速度によって制限される。
【0054】
一実施形態において、構造体触媒は、導体間の電流経路を構造体触媒の最大寸法よりも大きな長さに増加させるように配置された少なくとも1つの電気絶縁性部品を有する。構造体触媒の最大寸法よりも大きな導体間の電流経路の提供は、導体間に配置され、構造体触媒のある部分を流れる電流を防止する電気絶縁性部品(複数の電気絶縁性部品)を設けることによってもよい。このような電気絶縁性部品は、電流経路を増加させるように配置され、したがって、構造体触媒を通る抵抗を増加させる。それによって、構造体触媒を通る電流経路は、例えば、構造体触媒の最大寸法よりも50%、100%、200%、1000%、あるいは10000%長くすることができる。
【0055】
さらに、このような電気絶縁性部品は、構造体触媒の第1の端部に第2の端部よりも近い1つの導体から、構造体触媒の第2の端部に向かって電流を導き、第2の端部よりも構造体触媒の第1の端部に近い第2の導体に戻すように配置される。好ましくは、電流は、構造体触媒の第1の端部から第2の端部へ流れ、第1の端部へ戻るように配置される。図に見られるように、構造体触媒の第1の端部は、その上端部である。
図5~7において「z」と示された矢印は、構造体触媒の長さに沿ったz軸を示す。構造体触媒全体の主要な電流経路は、電流経路の長さの大部分に沿って付随する電流密度ベクトルのz座標の正または負の値を有することになる。主要な電流経路とは、構造体触媒のマクロ構造を通る電子の経路のうち、最も高い電流密度を有する経路を意味する。また、主要な電流経路とは、構造体触媒のマクロ構造を通る最短の長さを持つ経路と理解することもできる。幾何学的に見ると、主要な電流経路は、マクロ構造のコヒーレント部分のガス流方向に垂直な面内の最大の電流密度ベクトルとして定量化できる。構造体触媒の底部では、図に示すように、電流は旋回し、ここで、付随する電流密度ベクトルのz座標はゼロとなる。
【0056】
本明細書において、コヒーレント部分という用語は、コヒーレント部分のすべての壁が同一平面内でコヒーレント部分の1つ以上の他の壁と幾何学的に接続されているマクロ構造の断面領域を示すことを意味する。
【0057】
実施形態において、構造体触媒は、前記構造体触媒の長さの少なくとも70%において、主要な電流経路の電流密度ベクトルが前記構造体触媒の長さに平行な非ゼロ成分値を有するように、前記構造体触媒を通して電流を導くように配置された少なくとも一つの電気絶縁性部品を備える。したがって、構造体触媒の長さの少なくとも70%において、電流密度ベクトルは、構造体触媒の長さに平行な正または負の成分値を有することになる。したがって、構造体触媒の長さの少なくとも70%、例えば90%または95%、すなわち
図5から10に見られるように構造体触媒のz軸に沿って、主要な電流経路の電流密度ベクトルはz軸に沿って正または負の値を有することになる。これは、構造体触媒の第一端部から第二端部に向かって電流が流され、その後、再び第一の端部に向かって電流が流されることを意味する。構造体触媒の第1端部に入るガスの温度と、構造体触媒の上で起こっている吸熱アンモニア分解反応とによって、構造体触媒から熱が吸収される。このため、構造体触媒の第1の端部は第2の端部よりも冷たいままであり、主要な電流経路の電流密度ベクトルが前記構造体触媒の長さに平行な非ゼロ成分値を有するようにすることによって、これは実質的に連続的に増加する温度プロファイルで行われ、制御可能な反応フロントを与える。実施形態においては、電流密度ベクトルは、前記構造体触媒の長さの70%、好ましくは80%、より好ましくは90%、さらに好ましくは95%で、前記構造体触媒の長さに平行な非ゼロ成分値を有する。なお、「構造体触媒の長さ」という用語は、ガス流の方向における構造体触媒の寸法を示すことを意味するものであることに留意されたい。図に示すような構造体触媒において、長さは、長手方向、すなわち、その最も長い寸法である。これは、いくつかの図において、zを示す矢印で示されている。
【0058】
絶縁部分の非限定的な例は、構造体におけるカット(切れ目)、スリット、または穴である。任意に、構造体のカットまたはスリットにおけるセラミックのような固体絶縁材料を使用することができる。固体絶縁材料が多孔質セラミック材料である場合、触媒活性材料は、有利には、例えば含浸によって、孔の中に組み込まれることができる。カット(切れ目)またはスリット内の固体絶縁材料は、カットまたはスリットの側面の構造体触媒の部分を互いに離すことを助ける。本明細書で使用する場合、「構造体触媒の最大寸法」という用語は、構造体触媒が取り上げる幾何学的形態の最大の内法寸法を示すことを意味する。構造体触媒が箱型である場合、最大の寸法は、1つの角から最も遠い角までの対角線であり、空間対角線とも表記されるであろう。
【0059】
構造体触媒を通る電流が、電流経路を増加させるように配置された電気絶縁性部品によって、構造体触媒を通る道をねじれたり巻いたりするように配置されても良いが、反応器システムを通るガスは、反応器システムの一つの端部で入口となり、反応器システムから出口となる前に構造体触媒上を一度通過することに留意されたい。反応器システム内のガスが構造体触媒および本触媒材料を確実に通過するように、構造体触媒と反応器システムの残りの部分との間の関連する隙間に、不活性材料が有利に存在する。
【0060】
構造体触媒を通るガス通路の長さは、好適には、1つの電極から構造体触媒を通り次の電極への電流の通路の長さよりも小さい。電流の通路の長さに対するガス通路の長さの比は、0.6未満、または0.3未満、0.1未満、あるいは0.002未満までであってよい。
【0061】
典型的には、構造体触媒は、構造体触媒を通る電流経路がジグザグ経路になるように配置された電気絶縁性部品を有する。ここで、「ジグザグ経路」および「ジグザグルート」という用語は、ある導体から別の導体への経路をたどる可変角度のコーナーを有する経路を示すことを意味している。ジグザグ経路は、例えば、上方に進み、旋回し、その後下方に進む経路である。ジグザグ経路は、1回の旋回で十分であっても、構造体触媒の中を何度も旋回し、上方に向かい、その後下方に向かう経路を有していてもよい。
【0062】
電流経路を増加させるために配置された絶縁部品は、必ずしも導電性材料上のセラミックコーティングに関係しないことに留意すべきである。このセラミックコーティングも電気絶縁性とみなされるが、導電性材料に接続された導体間の電流経路の長さを変化させるものではない。
【0063】
マクロ構造は、複数の平行なチャネル、複数の非平行なチャネル、および/または複数の迷路状のチャネルを有することこができ、チャネルはチャネルを規定する壁を有している。それにより、ガスに曝される構造体触媒の表面積ができるだけ大きい限り、マクロ構造のいくつかの異なる形態を使用することができる。好ましい実施形態において、そのような平行なチャネルは非常に小さい圧力損失を有する構造体触媒を提供するので、マクロ構造は平行なチャネルを有する。好ましい実施形態においては、平行な長手方向のチャネルは、マクロ構造の長手方向に歪んでいる。このようにすると、マクロ構造を流れるガスの分子は、壁と接触することなくチャネルをただ直線的に流れるのではなく、ほとんどがチャネル内の壁にぶつかる傾向がある。チャネルの寸法は、十分な抵抗率を持つマクロ構造を提供するために適切である必要がある。例えば、チャネルは、(チャネルに垂直な断面で見て)二次であり、1~3mmの間の正方形の辺の長さを有することができるが、約4cmまでの断面における最大範囲を有するチャネルが考えられる。壁は例えば0.2~2mm、例えば約0.5mmの厚さを有していてもよく、壁によって支持されたセラミックコーティングは10μm~500μm、例えば50μm~200μm、例えば100μmの厚さを有している。別の実施形態においては、構造体触媒のマクロ構造は、クロス波形である。
【0064】
一般に、マクロ構造が押出成形または3Dプリントされる場合、反応器システムの入口から出口への圧力損失は、触媒材料がペレットの形態である反応器に比べ、かなり低減され得る。
【0065】
好適には、反応器システムは、圧力シェル内の構造体触媒の上流に、第2の触媒材料の床をさらに備える。ここで、「上流」という用語は、供給ガスの流れ方向から見たものである。したがって、「上流」という用語は、ここでは、供給ガスが構造体触媒に到達する前に第2の触媒材料のベッドを通って導かれることを意味する。これにより、第二の触媒材料が供給流を予め調整するために配置され得る状況が提供される。第二触媒材料の床には特に加熱を行う必要はない;しかしながら、第二触媒材料の床が構造体触媒に近接している場合には、間接的に加熱することができる。あるいは、第二触媒材料を加熱してもよい。ここで使用される用語を明確にするために、用語「構造体触媒」は、第2および/または第3および/または第4触媒材料と区別するために、「第1触媒材料」と表記されることもあることに留意されたい。
【0066】
反応器システムは、マクロ構造のチャネルに装填される触媒ペレット、押出物または顆粒の形態の第3の触媒材料をさらに含んでもよい。この実施形態においては、反応器システムは、このように、マクロ構造のコーティング中に触媒活性材料を有するとともに、マクロ構造のチャネル内に触媒ペレット、押出物、または顆粒の形態の第3の触媒材料を有することになる。ペレットは、例えば、マクロ構造のチャネル内で互いに積み重なったペレットの単一列を形成するために、チャネルのサイズに緩く一致する寸法で調製される。あるいは、ペレット、押出物または顆粒は、各チャネル内に充填床を形成するために、チャネルのサイズよりもかなり小さい寸法で調製されてもよい。本明細書で使用される場合、用語「ペレット」は、ミリメートルまたはセンチメートルの範囲内の最大外形寸法を有する任意の明確な構造を示すことを意味し、「押出物」および「顆粒」は、ある範囲内に定義された最大外形寸法を有する触媒材料を定義することを意味する。
【0067】
第4の触媒材料の床が、圧力シェル内および構造体触媒の下流に配置されてもよい。そのような第4の触媒材料は、触媒ペレット、押出物または顆粒の形態であってよい。
【0068】
したがって、第1、第2、第3、および第4の触媒材料は、アンモニア分解反応に適した触媒材料であることができる。一実施形態においては、この触媒はRu/MgAl2O3である。別の実施形態においては、それは多孔質FeCoである。また、第2触媒材料、第3触媒材料、および第4触媒材料の組み合わせを反応器システムに含む構成では、各触媒材料の触媒は異なっていてもよい。
【0069】
マクロ構造の幾何学的表面積は、100~3000m2/m3、例えば、500~1100m2/m3であってよい。典型的には、マクロ構造の材料は、材料の抵抗加熱によって500W/m2~50000W/m2の熱流束を供給するように配置された材料として選択される。好ましくは、材料の抵抗加熱により、5kW/m2~12kW/m2、例えば8kW/m2~10kW/m2の熱流束が供給される。熱流束は、ガスにさらされる表面の幾何学的表面積あたりの熱として与えられる。
【0070】
一実施形態においては、構造体触媒は、第1の熱流束を生成するように配置された第1の部分と、第2の熱流束を生成するように配置された第2の部分とを備え、第1の熱流束は第2の熱流束より低く、第1の部分は第2の部分より上流にある。ここで、「第1の部分が第2の部分の上流にある」という用語は、反応器システムに供給されるガスが第2の部分に到達する前に第1の部分に到達することを示すことを意味する。構造体触媒の第1の部分および第2の部分は、触媒活性材料を支持するセラミックコーティングを支持する2つの異なるマクロ構造であってもよく、2つの異なるマクロ構造は、所定の電流および電圧に対して異なる熱流束を生成するように配置されてもよい。例えば、構造体触媒の第1の部分は大きな表面積を有し、構造体触媒の第2部分はより小さな表面積を有することができる。これは、構造体触媒の第2の部分に、第1部分の断面積よりも小さな断面積を持つ構造体触媒を設けることによって達成することができる。あるいは、構造体触媒の第1の部分を通る電流経路は、構造体触媒の第2の部分を通る電流経路よりも直線的であってもよく、したがって、電流は、構造体触媒の第1の部分を通るよりも第2の部分を通る方がよりねじれ、巻かれ、それによって電流は、第1の部分よりも構造体触媒の第2の部分においてより多くの熱を発生させる。前述のように、マクロ構造にスリットやカット(切れ目)を入れると、電流経路がマクロ構造内をジグザグに流れるようになる場合がある。構造体触媒の第1部分と第2部分は、異なる熱流束を供給できるように、異なる電流と電圧を受ける可能性があることに留意すべきである。しかしながら、第1および第2の部分の異なる熱流束は、上記に示されるような第1および第2部分の異なる物理的特性のために、第1および第2の部分を通して/第2部分の上に同じ電流および電圧を供給することによっても達成され得る。さらなる実施形態において、構造体触媒は、第3の熱流束を生成するように配置された第3の部分を備え、第3の熱流束は、第1および/または第2の熱流束より低く、第3の部分は、第1および/または第2の部分の下流にある。
【0071】
圧力シェル/反応器システムから出るガスの所定の温度範囲は、200~1300℃の範囲である。構造体触媒からの生成物ガス出口温度は、構造体触媒の直下または最下流の表面で測定される。測定技術としては、熱電対(電圧降下による)、抵抗温度検出器、または赤外線検出を用いることができる。測定点は、構造体触媒から分離され、下流の不活性ガス/触媒に埋め込まれるか、または絶縁性の表面被覆を有する表面上に直接存在することができる。
【0072】
前記反応器システム内の構造体触媒は、好適には、構造体触媒を通る水平断面の面積換算直径と構造体触媒の高さとの比が、0.1~2.0の範囲にあるものである。なお、反応器システムを通る断面の面積換算直径とは、断面の面積と同等の面積を有する円の直径と定義される。面積換算直径と構造体触媒の高さとの比が0.1~2.0である場合、構造体触媒を収容する圧力シェルは、水蒸気メタン改質用の現行の管状改質器などの他の吸熱反応用の反応器システムに比べて比較的小さくすることができる。
【0073】
典型的には、ガスは反応器システム内をアップフロー方向またはダウンフロー方向に流れるので、ガスは構造体触媒内のチャネルをその高さに沿って流れる。構造体触媒が多数のアレイまたはマクロ構造のアレイを含む場合、アレイ内の個々のマクロ構造は、横に並べて、互いの上に、またはそれらの組み合わせで配置されてもよい。構造体触媒が2つ以上のマクロ構造を含む場合、構造体触媒の寸法は、2つ以上のマクロ構造の寸法であることが強調される。したがって、一例として、構造体触媒が、それぞれが高さhを有する2つのマクロ構造を互いの上に置いて構成される場合、構造体触媒の高さは2hである。
【0074】
構造体触媒の体積は、導電性材料の発熱量に相関する所望の供給変換率および/または反応器システムからの温度を考慮して選択される。
【0075】
好適には、反応器システムの高さは0.5~7m、より好ましくは0.5~3mである。反応器システムの高さの例示的な値は、5m未満、好ましくは2m未満、さらには1mの高さである。反応器システムの寸法と反応器システム内の構造体触媒の寸法は相関する。もちろん、圧力シェルと断熱層は、反応器システムを構造体触媒自体よりも多少大きくさせる。
【0076】
反応器システムは、水素を含む生成物流を受け取り、アップグレードされた水素流とオフガス流とに分離するように配置されたアップグレードユニットをさらに含んでいてもよい。
【0077】
供給ガスの前記アンモニア分解を触媒するために配置された構造体触媒を収容する圧力シェルを含む反応器システムにおいて、アンモニアを含む供給ガスを、アンモニア分解触媒などの触媒の存在下、アンモニア分解反応条件下において、水素への反応を実施するための方法が提供され、前記構造体触媒が導電性材料のマクロ構造を含み、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性材料を支持しており;前記構造体触媒と前記圧力シェルとの間に熱絶縁を備える前記反応器システムが提供される。
【0078】
前記方法は、以下のステップを含む。
-前記供給ガスを加圧するステップ
-前記加圧された供給ガスを、前記供給ガスが前記構造体触媒の第1の端部で前記構造体触媒に入るように配置された入口を通して前記圧力シェルに供給し、前記供給ガスを前記構造体触媒上でアンモニア分解反応させ、前記圧力シェルから生成物ガスを排出し、前記生成物ガスが前記構造体触媒の第2の端部で前記構造体触媒から出るステップ;
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する(複数の)電気伝導体を介して電力を供給し、電流が前記マクロ構造を通って流れることを可能にし、それによって前記構造体触媒の少なくとも一部を少なくとも300℃の温度に加熱し、前記少なくとも二つの導体は、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1の端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒と接続されており、かつ、電流を1つの導体から実質的に前記構造体触媒の第2の端部まで流し前記少なくとも2つの導体のうちの第2(の導体)に戻るように、前記構造体触媒が構成され、それによって、前記供給ガスが構造体触媒上でアンモニア分解反応を行うために十分な温度まで構造体触媒の少なくとも一部を加熱するステップ;
-水素を含む生成物ガスを反応器システムから排出するステップ。
【0079】
上記のシステムのすべての詳細は、可能な限り、上記の方法に関連するものである。
【0080】
1つの態様において、供給ガスは、2~30bar(バール)の間の圧力に加圧される。供給ガスは、30~200barの間の圧力に加圧されてもよい。好適には、構造体触媒の少なくとも一部は、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも700℃まで加熱される。構造体触媒が加熱される最高温度は、約1400℃である。
【0081】
方法の一態様においては、前記冷却ガスが少なくとも1つの導体上を流れるようにするために、圧力シェルを通る入口から冷却ガスを流入させるステップをさらに含む。
【0082】
この方法は、水素を含む生成物流をアップグレードユニットに供給し、アップグレードされた水素流とオフガス流とに分離するステップをさらに含むことができる。アップグレードユニットは、構造体触媒上を通過する前にオフガス流がリサイクルされ供給ガスの供給と混合されるように配置されることができる。
【0083】
アップグレーディングユニット(改良ユニット)は、圧力スイング吸着ユニット(PSA)、温度スイング吸着ユニット(TSA)、もしくは膜、または、その組み合わせを含むことができる。PSAまたはTSAの構成は、アップグレーディングユニットを出る高圧流として水素を分離する一方で、オフガスは低圧であるため、好ましい解決策である。好ましい実施形態においては、アップグレーディングユニットは、実質的に純粋なH2のアップグレーディング流と実質的に純粋なN2のオフガスを生成するように構成される。
【0084】
一実施形態においては、本方法は、前記アップグレードユニットからのアップグレードされた水素流を、電気的製造のための下流プラントに供給するステップをさらに含む。電気的製造プラントは、一実施形態においては、固体酸化物燃料電池またはガスエンジンであり得る。これにより、アンモニアをエネルギーベクトルとして使用する際に、エネルギー貯蔵のための技術を使用することができる。
【0085】
したがって、本明細書に記載の反応器システムにおいて、アンモニアを含む供給ガスの金属触媒アンモニア分解反応を、第1の定常反応条件(A)から第2の定常反応条件(B)またはその逆に迅速に切り替えるための方法が提供される。
【0086】
定常状態に達することは、中心プロセスパラメータ(供給流量、出口温度、反応物変換率など)が、その後の時間の所定のプロセスパラメータの平均プロセス値の±15%以内の値に到達したときと定義される。
【0087】
本発明の条件AまたはBは、アンモニアと水素、窒素、または酸素の何れかを含む供給原料を300Nm3/h~100000Nm3/hの総流量で、構造体触媒からの生成物ガス出口温度を5barg~150bargの圧力で300~1300℃の温度までバランス良く電力で(電気力均衡によって)加熱するシステムの触媒を加熱する状態を含むものである。原料はモノリスを通過する際に、反応の平衡化に向けて反応する。
【0088】
本発明の実施形態においては、本方法は、供給原料が28.2bargの圧力で150℃の温度を有し、103Nm3/hの総流量で、100%mのNH3からなる、初期反応条件Aを含む。44kWの第1の電力を供給すると、30.1%のNH3、17.5%のN2、および52.4%のH2からなるほぼ平衡であるガスが、28.1bargの圧力、300℃の温度を有し158Nm3/hの総流量で生成される。103kWの第2の電力を適用しながら約90分間にわたって条件Bに切り替えると、28.1bargの圧力で680℃の温度を有する205Nm3/hの総流量で0.7%のNH3、24.8%のN2及び74.5%のH2からなるほぼ平衡であるガスが生成される。
【0089】
本発明の実施形態において、本方法は、供給原料が、16.5bargの圧力で150℃の温度を有する1004Nm3/hの総流量で96.1%のNH3、1.0%のN2、および2.9%のH2からなる初期反応条件Aを含む。927kWの第1の電力を供給すると、0.6%のNH3、24.8%のN2、74.5%のH2からなるほぼ平衡であるガスが、16.4bargの圧力で625℃の温度で、1957Nm3/hの総流量で生成される。約25分間、1578kWの第2電力を供給し、条件Bに切り替えて全供給流量を1739Nm3/hに増加させると、0.7%のNH3、24.8%のN2、および74.4%H2からなるほぼ平衡であるガスが、圧力16.4barで605°Cの温度を有し、3386Nm3/hの全流量で生成される。
【0090】
用語「逆」は、本発明において第2の反応条件(B)から第1の反応条件(A)に切り替えるときと同様に、第1の反応条件(A)から第2の反応条件(B)に切り替える場合を意味するために使用される。注目すべきことは、条件AからBへの切り替えは、システムのプロセス値が定常状態の条件の85%以内に到達したときに完了したとみなされることである。
【0091】
反応器システムは上記の通りであり;すなわち、アンモニアを含む供給ガスの反応を触媒するように配置された構造体触媒を収容する圧力シェルを備え、前記構造体触媒は導電性材料のマクロ構造を含み、前記マクロ構造はセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングは触媒活性材料を支持しており、前記反応器システムは前記構造体触媒と前記圧力シェルとの間に熱絶縁を提供されていることを特徴とする、反応器システムである。反応器システムに関連して上述した全ての詳細は、本技術に関連するものである。
【0092】
本発明のこの態様の方法は、以下のステップを含む。
前記第1の定常反応条件(A)において
-前記供給ガスを第1の総流量で前記反応器システムに供給するステップ、および、
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して第1の電力を供給し、それによって前記導電性材料に第1の電流が流れるようにし、
それによって、前記構造体触媒の少なくとも一部を第1の温度まで加熱し、この温度で、前記第1の定常反応条件(A)下において前記供給ガスが前記構造体触媒上で第1の生成物ガス混合物に変換され;そして前記第1の生成物ガスを前記反応器システムから排出させるステップ、
そして、前記第2の定常反応条件(B)において
-前記供給ガスを前記反応器システムに第2の総流量で供給するステップ、および、
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して第2の電力を供給し、それによって前記導電性材料に第2の電流が流れるようにし、
それによって、前記構造体触媒の少なくとも一部を第2の温度まで加熱し;この温度で、前記第2の定常反応条件(B)下において前記供給ガスが前記構造体触媒上で第2の生成物ガス混合物に変換され;前記第2の生成物ガスを前記反応器システムから排出させるステップ。
【0093】
前記第1および第2の定常反応条件(A)および(B)を達成するために、前記第2の電力が前記第1の電力より大きく;および/または前記第2の総流量が前記第1の総流量より多くなる。
【0094】
注目すべきは、総流量が増加すると、冷却供給ガスの入力が増加するため、構造体触媒が冷却され、第2の定常反応条件(B)が達成されるように反応性が減少することである。流量が大きく変化すると、プロセスに必要なエネルギーが変化する。
【0095】
総流量の変化には、組成の変化がない総流量の変化や、リサイクル流量の増加や供給原料の一部を変更するような組成の変化が含まれる場合がある。
【0096】
一実施形態において、前記第1反応条件Aと前記第2反応条件Bにおける総ガス供給流量の比(A:B)は、少なくとも1:10である。条件Aと条件Bとの間の切り替えは、結果として、生成物ガスの生成量を大幅に増加/減少させることを可能にする。これは、本発明が、例えば、エネルギーグリッドからの過剰な電気エネルギーが利用可能であり、このようにして化学エネルギーとして貯蔵することができるエネルギー貯蔵に用いられる場合、またはその逆に、電気エネルギーが他の場所で必要とされるときにグリッドにおける電気エネルギーの利用可能性を増加させる場合には有利となる。さらに、本実施形態は、本発明を使用して、下流工程が要求する期間において大量の生成物ガスを供給することができ、それ以外の場合は本発明を待機状態で動作させることが可能である。これは、生成物ガスに対する継続的な需要がない場合に有利である。
【0097】
別の実施形態においては、反応条件Bにおける構造体触媒からの生成物ガス出口温度は、反応条件Aにおける構造体触媒からの生成物ガス出口温度よりも50℃~800℃高く、例えば100℃~500℃高い、好ましくは150℃~400℃高い。これにより、反応器システムを低温状態から運転条件まで迅速に立ち上げることができる。これは、システムの起動の状況において有利であり、起動手順は、以下を含むステップを含む:
・非凝縮ガス中で加熱プロセス機器を、フル稼働時のプラントの定常状態の条件の凝縮点以上の温度まで加熱するステップ、
・供給ガス成分を加圧するステップ、
・第1の電力を印加しながら、原料ガス成分を反応器システムに供給するステップ、
・2回目の通電により、より高い運転温度へ切り替えるステップ。
このように、起動手順のすべてのステップは比較的高速に行われる。
【0098】
反応条件Bにおける構造体触媒からの生成物ガス出口温度は、反応条件Aにおける構造体触媒からの生成物ガス出口温度よりも通常50℃より高くならない(生成物ガス出口温度よりも通常50℃までしか高くならない)。このため、システムからの生成物ガス組成を大きく変えることなく、条件AとBの間を迅速に変更することが可能である。このようにして、反応器システムの下流工程のための生成物ガスに対する要求は、これらの化学的環境に大きく干渉することなく、異なる量で容易に供給することができる。
【0099】
一実施形態において、反応条件AとBとの間の切り替えは、前記第1総流量から前記第2総流量にガス供給総流量を徐々に変更することと、前記導電性材料にかかる印加電位を前記第1の電力から前記第2の電力に同時に徐々に変更することとを含む。このようにして、移行段階においても、生成物ガス組成をほぼ一定に保つことができる。一実施形態において、前記段階的な変化は、前記構造体触媒からの生成物ガス出口温度をほぼ一定に保つために、前記電力を増加させながら流量を小刻みに増加させるような方法で行われる。
【0100】
実施形態において、反応器システムは、圧力シェルを出るガスの温度が所定の範囲にあることを保証するために、および/または供給ガスの変換が所定の範囲にあることを保証するために、電源を制御するように配置された制御システムを更に備える。電源の制御は、電源からの電気出力の制御である。電源の制御は、例えば、電源からの電圧および/または電流の制御として、電源がオンまたはオフされるか否かの制御として、またはこれらの組み合わせとして実施され得る。構造体触媒に供給される電力は、交流または直流の形態とすることができる。
【0101】
一実施形態によれば、比例-積分-微分(PID)コントローラは、構造体触媒からの生成物ガス出口温度のプロセス値のフィードバック読みに基づいて、電位を制御する。
【0102】
本明細書に記載の方法は、条件AとBとの間の迅速な切り替えを可能にする。したがって、好適には、反応条件AとBとの間の切り替えは、3時間未満、例えば2時間未満、例えば60分未満、好ましくは30分未満、さらに好ましくは15分未満の期間にわたって行われる。
【0103】
一実施形態においては、反応条件AとBとの間の切り替えは、構造体触媒に第2の電力を供給することを含む。これは好適には、総流量を本質的に一定に保ちながら行われる。
【0104】
一つの態様において、反応条件AとBとの間の切り替えは、前記反応条件AとBとの間の遷移状態を含み;前記遷移状態は、電力がオフにされる第1の期間と、それに続いて、前記構造体触媒に条件Bの前記第2の電力が供給される第2の期間とを含む。これにより、定常状態をより早く確立することができる。
【0105】
一つの態様において、前記反応条件AとBとの間の切り替えは、前記反応条件AとBとの間の遷移状態を含み;前記遷移状態は、前記構造体触媒に第3の電力が供給される第1の期間と、それに続いて、前記構造体触媒に前記条件Bの第2の電力が供給される第2の期間とを含み、前記第3の電力は前記第2の電力より大きい。これにより、定常状態をより早く確立することができる。
【0106】
本方法においては、水素を含む生成物ガスに対して実施されるさらなるステップ、例えば、精製、加圧、加熱、冷却などを含み、この発明の反応器システムの下流に適用するための最終生成物ガスを提供することができる。
【0107】
さらに、本方法のステップが書かれている順序は、2つ以上のステップが同時に行われてもよいという点で、必ずしも本方法のステップが行われる順序ではないこと、または順序が上記に示されたものとは異なってもよいことに留意すべきである。
【0108】
実施形態において、本方法は、圧力シェルの上流にあるガスを少なくとも2barまでの圧力に加圧するステップを含む。選択された操作圧力は、吸熱反応および周囲の方法のステップにおける反応器の統合によって定義される。
【0109】
本発明による方法の実施形態において、反応器系に入れる供給ガスの温度は、100℃~400℃の間である。しかしながら、全ての実施形態において、供給ガスの温度および圧力は、供給ガスが露点以上であることを保証するように調整される。
【0110】
本発明の方法の実施形態において、構造体触媒の最高温度が200℃~1300℃の間にあるように、構造体触媒は加熱される。使用される温度は、吸熱反応に依存することになる。構造体触媒の最高温度は、導電性材料の材料に依存し、したがって、導電性材料が1380℃~1490℃(実際の合金に依存する)の温度で溶融するFeCr合金の場合、最高温度は、導電性材料の融点が約1400℃であれば約1300℃など、融点に近づくと材料が柔らかく延性になるため、融点よりやや低くすべきである。最高温度は、さらに、触媒材料、コーティングおよび触媒活性材料の耐久性によって制限されてもよい。
【0111】
実施形態において、本発明による方法は、冷却ガスが少なくとも1つの導体および/またはフィッティング上を流れることを可能にするために、圧力シェルを通る入口から冷却ガスを注入するステップをさらに含む。冷却ガスは、有利には、水素、窒素、アンモニア、または少なくとも1つの導体の周囲の領域またはゾーンを冷却するのに適した他の任意のガスであってよい。供給ガスの一部は、冷却ガスとして圧力シェルに供給されることができる。
【0112】
本発明による実施形態においては、本方法は、冷却ガスが少なくとも1つの導体および/またはフィッティング上を流れるようにするために、圧力シェルを通る入口から冷却ガスを注入するステップをさらに含む。冷却ガスは、任意の適切なガスであってよく;そのようなガスの例は、水素、窒素、アンモニア、メタンまたはそれらの混合物である。冷却ガスは、導体(複数の導体)を流れ、その中からそれを(それらを)冷却することができる;この場合、導体(複数の導体)は、その中/それたの中を流れる冷却ガスを収容するために、中空である必要がある。
【0113】
反応のための触媒材料は、Fe(Fe3O4またはFeOから製造)、FeCo、Ru/Al2O3、Ru/ZrO2、Fe/Al2O3、FeCo/Al2O3、Ru/MgAl2O3、またはCoSn/Al2O3であってもよい。触媒活性材料は、Ru、Rh、Fe、Co、Ir、Os、またはそれらの組み合わせであってもよく、セラミックコーティングは、Al2O3、ZrO2、MgAl2O3、CaAl2O3、またはその組み合わせ、および潜在的にY、Ti、La、またはCeの酸化物と混合されていてもよい。反応器の最高温度は、300~1300℃の間であってもよい。供給ガスの圧力は、2~180bar、好ましくは約25barであってもよい。実施形態において、前記マクロ構造は、ZrO2およびAl2O3混合物のセラミックコーティングを支持するFeCrAlの合金から製造され、触媒活性物質としてRuを有する。
【0114】
図面の詳細な説明
図中、同様の参照番号は、同様の要素を示す。
【0115】
図1aは、本発明による反応器システム100の一実施形態を通る断面図である。反応器システム100は、マクロ構造5のアレイとして配置された構造体触媒10を備える。アレイ内の各マクロ構造5は、触媒活性物質を含浸させたセラミックコーティングでコーティングされている。反応器システム100はさらに、電源(図示せず)および構造体触媒10、すなわちマクロ構造のアレイに接続された導体40、40’を含む。導体40、40’は、構造体触媒を収容する圧力シェル20の壁を通り、圧力シェルの内側にある絶縁材料30を通り、フィッティング50を介して導かれている。導体40’は、導体接触レール41によって、マクロ構造のアレイ5に接続されている。
【0116】
実施形態においては、電源は、26Vの電圧と1200Aの電流を供給する。別の実施形態においては、電源は、5Vの電圧と240Aの電流を供給する。電流は、電気伝導体40、40’を介して導体接触レール41に導かれ、電流は、一方の導体接触レール41、例えば
図1aにおいて左側に見られる導体接触レールから、他方の導体接触レール41、例えば
図1aにおいて右側に見られる導体接触レールまで、構造体触媒10内を流れる。電流は、交流電流であることができ、例えば両方向に交互に流れるものであってもよく、直流であり、二方向のいずれかに流れるものであってもよい。
【0117】
マクロ構造物5は、導電性材料からできている。特に好ましいのは、アルミニウムと鉄とクロムとからなる合金カンタルである。構造体触媒5にコーティングされたセラミックコーティング、例えば酸化物には、触媒活性物質が含浸されている。導体40、40’は、鉄、アルミニウム、ニッケル、銅またはそれらの合金のような材料からできている。
【0118】
運転中、アンモニアを含む供給ガスは、矢印11で示すように、反応器システム100に上方から入る。水素を含む生成物流は、矢印12で示すように、その下部から反応器システムを出る。
【0119】
図1bは、圧力シェル20および断熱材料30の層の一部を除去した
図1aの反応器システム100を示し、
図2は、反応器システム100の一部を拡大した図である。
図1bおよび
図2では、導体40’と導体接触レール41との接続が、
図1aよりも明確に示されている。さらに、導体40がフィッティング50で圧力シェルの壁を貫通して導かれ、圧力シェル内で1つの導体40が3つの導体40’に分割されていることが分かる。なお、導体40’の数は、3つよりも小さい、あるいは3つよりも大きいなど、任意の適切な数であってよい。
【0120】
図1a、1bおよび2に示す反応器システムにおいて、導体40、40’は、構造体触媒を収容する圧力シェル20の壁を通り、圧力シェルの内側にある絶縁材料30を通って、フィッティング50を経由して導かれる。アンモニア分解反応のための供給ガスは、矢印11で示すように、反応器システム100の上側にある入口を介して反応器システム100に流入し、変換された生成物流は、矢印12で示すように、反応器システム100の下側にある出口を介して反応器システム100を出る。さらに、1つ以上の追加の入口(
図1a~
図2には示されていない)が、有利には、フィッティング50の近傍に、またはフィッティング50と組み合わせて存在する。そのような追加の注入口は、冷却ガスが圧力シェル内の少なくとも1つの導体の上、周囲、近傍、または内部に流れて、フィッティングの加熱を減少させることを可能にする。冷却ガスは、例えば、水素、窒素、メタンまたはそれらの混合物であり得る。圧力シェルへの進入時の冷却ガスの温度は、例えば約100℃であってもよい。
【0121】
図1a~
図2に示す反応器システム100では、構造体触媒10の下側と圧力シェルの底部との間に不活性物質(
図1a~
図2には示されていない)が有利に存在する。さらに、不活性材料は、有利には、マクロ構造5の構造体触媒10の外側の側面と絶縁材料30との間に存在する。したがって、絶縁材料30の一方の側面は、圧力シェル20の内側に面し、絶縁材料30の他方の側面は、不活性材料に面する。不活性材料は、例えばセラミック材料であり、ペレットの形態であってもよい。不活性材料は、反応器システム100にわたる圧力損失を制御し、反応器システム100を通るガスの流れを制御することを補助し、その結果、ガスが構造体触媒10の表面上を流れるようにする。
【0122】
図3aおよび3bは、構造体触媒10’を含む本発明の反応器システム100’、100’’の一実施形態に従う断面の模式図である。構造体触媒10’は、触媒活性物質を支持するセラミックコーティングを有する単一のマクロ構造から構成されてもよく、または2つ以上のマクロ構造を含んでもよい。反応器システム100’、100’’の各々は、圧力シェル20と、構造体触媒10’と圧力シェル20の間の断熱層80を含む。構造体触媒10’と断熱層または圧力シェル20との間の隙間を埋めるために、不活性材料90を使用することができる。
図3aおよび3bにおいて、不活性材料90は点線領域で示されており、不活性材料90は、任意の適切な形態、例えば不活性ペレットの形態であってもよく、それは例えばセラミック材料製である。不活性材料90は、反応器システムを通る圧力降下を制御し、反応器システムを通るガスの流れを制御することを補助する。さらに、不活性材料は、典型的には、熱絶縁効果を有する。
【0123】
図3aおよび3bから、反応器システム100’、100’’は、構造体触媒10’と熱交換関係にある内側管15を更に含むことが分かる。内側管15は、内側管または管を通って流れる生成物ガスが構造体触媒上を流れるガスと熱交換関係にあるように、構造体触媒10’から生成物ガスを引き出すように適合されているが、内側管15は、断熱層80、不活性材料90、隙間(ギャップ)、または組み合わせのいずれかによって構造体触媒10’から電気的に絶縁されている。これは、バヨネット反応器システムと表記されるレイアウトである。このレイアウトでは、内側管内の生成物ガスが、マクロ構造上を流れるプロセスガスの加熱を補助する。
図3aおよび3bに示すレイアウトでは、供給ガスは、矢印11で示すように反応器システム100’、100’’に入り、矢印13で示すように構造体触媒10’に続いて入る。供給ガスが構造体触媒10’の上を通過する間、アンモニア分解反応を受ける。構造体触媒10’から出るガスは、少なくとも部分的に水素に変換される。少なくとも部分的に変換されたガスは、構造体触媒10’から矢印14で示すように内側管15に流れ込み、矢印12で示すように内側管から出る。内側管15と構造体触媒10’との間に断熱層80が存在しても、内側管15内のガスと構造体触媒10’内または構造体触媒10’の上流のガスとからいくらかの熱移動が行われることになる。
図3aおよび
図3bに示す実施形態においては、供給ガスは、構造体触媒10’を下方に、内側管15を上方に流れる;しかしながら、供給ガスが構造体触媒10’を上方に、内側管15を下方に流れるように、構成を上下逆にすることも考慮できる。
【0124】
図4および
図5は、それぞれ、上方から見たマクロ構造のアレイを含む構造体触媒の実施形態と、側面から見た構造体触媒の実施形態とを示す。
図4は、上方から見た、すなわち
図1aおよび
図1bの矢印11から見たマクロ構造5のアレイを含む構造体触媒10を示す。このアレイは、5つのマクロ構造5の6つの列、すなわち1a、1b、1c、1d、1eおよび1fを有する。各列のマクロ構造5は、同じ列のその隣接するマクロ構造(複数のマクロ構造)に接続され、各列の最も外側の2つのマクロ構造は、導体接触レール41に接続されている。マクロ構造の列の隣り合うマクロ構造5は、接続片3によって互いに接続されている。
【0125】
図5は、
図4のマクロ構造5の列を有する構造体触媒10を側面から見た図である。
図5から、各マクロ構造5は、
図4に見られる断面に対して垂直に長手方向に延びていることが分かる。各マクロ構造5には、その長手方向に沿ってスリット60が切り込まれている(
図5参照)。したがって、電源によって通電されると、電流は、導体接触レール41を介してマクロ構造5のアレイに入り、第1のマクロ構造5を通ってスリット60の下限まで下方に導かれ、その後、接続片3に向かって上方に導かれる。電流は、アレイ10におけるマクロ構造5の各列1a~1fの各マクロ構造5を介して、下方および上方に、対応するジグザグ経路を経由して導かれる。この構成は、有利には、構造体触媒10上の抵抗(耐性)を増加させる。
【0126】
図6は、本発明による構造体触媒10を透視した図である。構造体触媒10は、触媒活性物質を含浸させたセラミックコーティングで被覆されたマクロ構造を含む。構造体触媒内には、マクロ構造5の長手方向(
図6に矢印で示す「h」)に沿って延びるチャネル70があり、チャネルは壁75によって画定されている。
図6に示す実施形態においては、壁75は、矢印12で示すように流れの方向から見たときに、多数の平行な正方形のチャネル70を画定している。構造体触媒10は、上方から見たときに、縁の長さe1およびe2によって画定される実質的に正方形の周囲を有する。しかしながら、周囲は、円形または別の形状であることもできる。
【0127】
構造体触媒10の壁75は、マクロ構造上にコーティングされたセラミックコーティング、例えば酸化物でコーティングされた押し出し成形または3Dプリントされた材料である。図においては、セラミックコーティングは示されていない。セラミックコーティングには、触媒活性物質が含浸されている。セラミックコーティング、および、したがって触媒活性材料は、動作中にガス流が流れ、構造体触媒の加熱された表面および触媒活性材料と内部作用する構造体触媒10内のすべての壁上に存在する。
【0128】
したがって、アンモニア分解反応のための反応器システムにおける使用中、供給ガスは、チャネル70を通って流れ、構造体触媒の加熱された表面、およびセラミックコーティングによって支持された触媒活性材料と内部作用する。
【0129】
図6に示す構造体触媒10においては、スリット60が構造体触媒10に切り込まれている。このスリット60は、マクロ構造内で電流が、この例では下向きとそれに続く上向きに、ジグザグの経路を取ることを強制し、それによって電流経路、ひいては抵抗、ひいてはマクロ構造内で放散される熱を増大させる。マクロ構造内のスリット60は、スリット60の横断方向に電流が流れないようにするために、埋め込まれた絶縁材料で提供されてもよい。
【0130】
構造体触媒10内のチャネル70は、両端部が開口している。構造体触媒を反応器システムで使用する場合、供給ガスは、
図1aおよび1bの矢印11および12で示す方向に、ユニットを通って流れ、チャネル70の壁75との接触および熱放射によって加熱される。この熱により、所望のアンモニア分解反応が開始される。チャネル70の壁75は、例えば、0.5mmの厚さを有していてもよく、壁75にコーティングされたセラミックコーティングは、例えば、0.1mmの厚さを有することができる。矢印11および12(
図1aおよび1b参照)が、供給ガス流がダウンフローであることを示していても、反対の流れ方向、すなわちアップフローも考えられる。
【0131】
図7は、
図1aおよび
図1bの構造体触媒10を透視図で示し、コネクタ7を取り付けた状態を示している。コネクタ7は、それぞれ、構造体触媒10の一部を導体40に接続する。導体40は、いずれも電源(図示せず)に接続されている。コネクタ7のそれぞれは、構造体触媒の上部に接続されている。導体40が電源に接続されると、電流が導体を介して対応するコネクタ7に導かれ、構造体触媒10内を流れる。スリット60は、構造体触媒10の高さhに沿ったその長さ全体にわたって、横方向(
図7の水平方向)の電流の流れを妨げる。したがって、電流は、構造体触媒のスリット60に沿った部分で
図7に見られるように下向きに流れ、その後、
図7に見られるようにスリット60の下方で長手方向に横向きに流れ、最後に電流は構造体触媒の長手方向で上向きに流れ、他のコネクタ7に到達する。
図7のコネクタ7は、特にネジやボルトなどの機械的な締結手段によって構造体触媒に機械的に締結される。しかしながら、追加のまたは代替の締結手段も考えられる。一実施形態においては、電源は、3Vの電圧と400Aの電流を発生させる。コネクタ7は、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケル、銅またはそれらの合金のような材料で作られる。
【0132】
上記のように、構造体触媒10は、触媒活性物質を支持する、酸化物などのセラミックコーティングでコーティングされている。しかし、構造体触媒10のうち、コネクタ7に接続される部分は、酸化物でコーティングされてはならない。その代わりに、構造体触媒のマクロ構造は、マクロ構造とコネクタとの間の良好な電気的接続を得るために、コネクタ7に直接露出または接続される必要がある。
【0133】
コネクタ7および、ひいては導体40が構造体触媒10の同じ端部、すなわち
図7に見られるように上端部に接続される場合、構造体触媒10を収容する反応器システムに入る供給ガスは、コネクタ7および導体40を冷却することができるであろう。例えば、このような反応器システムに入る供給ガスは、200℃または400℃の温度を有することができ、したがって、コネクタ7および導体40がこの温度よりはるかに高い温度に到達しないようにすることができるだろう。
【0134】
図8は、コネクタ7’’を有する構造体触媒10’’の別の実施形態を示している。構造体触媒10’’’は、例えば、
図6に示すような構造体触媒である。コネクタ7’’’(図示せず)の各々は、その上側に、導体に接続するための3つの孔を有する。構造体触媒10’’’のスリット60(
図6参照)の内側には、電気絶縁材料61の一片がある。
【0135】
図9は、圧力28bargで純粋なアンモニアを原料とした場合の、アンモニア分解反応の熱力学的平衡を温度の関数として示したものである。この図は、反応システムの出口温度を上げると、生成ガスのアンモニア含有量が減少することで示されるように、アンモニアの転化率が上昇することを示している。これは、水素と窒素の混合ガスに選択的に変換される。300℃の出口温度では52%のH
2しか生成されないが、700℃に上げると75%のH
2が生成される。原料を目的の生成物に高転換するためには、高温が不可欠であり、本発明は、コンパクトで持続可能かつ効率的な方法でこれを達成するための解決法を提供するものである。
【0136】
なお、図中の構造体触媒は、z軸に垂直な方向から見て正方形の断面を持つチャネルとして示されているが、チャネルの断面は任意の適切な形状が可能である。したがって、構造体触媒のチャネルは、代替的に、例えば、三角形、六角形、八角形、または円形であり得るが、三角形、正方形、および六角形の形状が好ましい。
【0137】
本発明は、様々な実施形態および例の説明によって例示されてきたが、これらの実施形態および例がかなり詳細に記載されている一方で、添付の請求項の範囲をそのような詳細に制限すること、またはいかなる方法でも制限することは、出願人の意図するところではない。追加の利点および修正は、当業者には容易に想到されるものである。したがって、その広い局面における本発明は、示され、説明された特定の詳細、代表的な方法、および例示的な実施例に限定されるものではない。従って、出願人の一般的な発明概念の精神または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することができる。
【0138】
本発明の項目
1.アンモニア分解反応条件下において、触媒の存在下、アンモニアを含む供給ガスから水素を製造するための反応器システムであって、
-アンモニアを含む供給ガスの供給;
-前記供給ガスのアンモニア分解反応を触媒するために配置された構造体触媒;ここで前記構造体触媒は、導電性材料のマクロ構造を含み、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性材料を支持している、
-前記構造体触媒を収容する圧力シェル;ここで前記圧力シェルは、前記供給ガスを入れるための入口と、生成物ガスを排出するための出口とを備え、前記入口は、前記供給ガスが前記構造体触媒の第1の端部から構造体触媒に入り、前記生成物ガスが前記構造体触媒の第2の端部から構造体触媒を出るように位置決めされている、
-前記構造体触媒と前記圧力シェルとの間の断熱層;
-前記構造体触媒と、前記圧力シェルの外側に配置された電源とに電気的に接続された少なくとも2つの導体;ここで、前記電源が、前記マクロ構造に電流を流すことによって前記構造体触媒の少なくとも一部を少なくとも300℃の温度まで加熱するように寸法決めされており、前記少なくとも2つの導体が、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1の端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒に接続され、前記構造体触媒が、電流を1つの導体から前記構造体触媒の第2の端部まで実質的に流し、前記少なくとも2つの導体の第2の導体に戻すように構成されている、
-水素を含む生成物流のための出口
を含む、前記反応器システム。
【0139】
2.前記電源が、前記構造体触媒の少なくとも一部を、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも700℃の温度に加熱するように寸法決めされている、項目1に記載の反応器システム。
【0140】
3.前記供給ガスが、さらに、H2、N2、またはArを含む、項目1または2に記載の反応器システム。
【0141】
4.前記圧力シェルが2~30barの間の設計圧力を有する、項目1~3のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0142】
5.前記圧力シェルが30~200barの間の設計圧力を有する、項目1~3のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0143】
6.導電性材料の抵抗率が10-5Ω・m~10-7Ω・mとの間である、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0144】
7.前記少なくとも2つの導体は、少なくとも2つの導体が圧力シェルから電気的に絶縁されるように、フィッティングにおいて圧力シェルを通して導かれる、前記項目のうちのいずれか1つに記載の反応器システム。
【0145】
8.前記圧力シェルは、冷却ガスが前記圧力シェル内の少なくとも1つの導体の上、周囲、近傍または内部に流れることを可能にするために、少なくとも1つのフィッティングの近傍にまたはそれと組み合わせた1つまたは複数の入口を更に含む、項目7に記載の反応器システム。
【0146】
9.前記反応器システムが、前記構造体触媒と熱交換関係にあるが前記構造体触媒から電気的に絶縁された内側管をさらに備え、前記内側管は、前記内側管を通って流れる生成物ガスが前記構造体触媒上を流れるガスと熱交換関係にあるように前記構造体触媒から生成物ガスを引き抜くように適合されている、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0147】
10.前記構造体触媒と前記少なくとも2つの導体との間の接続が、機械的接続、溶接接続、ろう付け接続、またはそれらの組み合わせである、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0148】
11.前記導電性材料が、3Dプリントまたは押し出しされ、かつ焼結されたマクロ構造を備え、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性材料を支持している、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0149】
12.前記構造体触媒は、互いに電気的に接続されたマクロ構造のアレイを備える、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0150】
13.前記構造体触媒が、前記少なくとも2つの導体間の主要な電流経路の長さを前記構造体触媒の最大寸法よりも長くするように配置された電気絶縁性部品を有する、前記項目のいずれかに1つに記載の反応器システム。
【0151】
14.前記構造体触媒は、前記構造体触媒の長さの少なくとも70%において、主要な電流経路の電流密度ベクトルが前記構造体触媒の長さに平行な非ゼロ成分値を有するように、前記構造体触媒を通して電流を導くように配置された少なくとも一つの電気絶縁性部品を有する、前記項目のいずれかに1つに記載の反応器システム。
【0152】
15.前記マクロ構造は、複数の平行なチャネル、複数の非平行なチャネル、および/または複数の迷路状のチャネルを有する、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0153】
16.前記反応器システムが、前記マクロ構造のチャネルに装填される触媒ペレット、押出物または顆粒の形態の第3の触媒材料をさらに含む、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0154】
17.前記反応器システムが、前記圧力シェル内の前記構造体触媒の下流に第4の触媒材料の床をさらに備える、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0155】
18.前記マクロ構造の材料は、材料の抵抗加熱によって500~50000W/m2の熱流束を生成するように配置された材料として選択される、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0156】
19.構造体触媒が、第1の熱流束を生成するように配置された第1の部分と、第2の熱流束を生成するように配置された第2の部分とを備え、第1の熱流束が第2の熱流束よりも低く、第1の部分が第2の部分の上流にある、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0157】
20.構造体触媒が、第3の熱流束を生成するように配置された第3の部分を備え、第3の熱流束が、第1の熱流束および/または第2の熱流束より低く、第3の部分が、第1の部分および/または第2の部分の下流にある、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0158】
21.前記反応器システムが、圧力シェルを出るガスの温度が所定の範囲にあることを保証するために、および/または供給ガスの変換が所定の範囲にあることを保証するために、電源を制御するように配置された制御システムをさらに備える、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0159】
22.前記反応器システム内の構造体触媒は、構造体触媒を通る水平断面の面積換算直径と構造体触媒の高さとの比が0.1~2.0の範囲にある、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0160】
23.前記反応器システムの高さが0.5~7m、より好ましくは0.5~3mである、前記項目のいずれか1つに記載の反応器システム。
【0161】
24.供給ガスの前記アンモニア分解反応を触媒するために配置された構造体触媒を収容する圧力シェルを含む反応器システムにおいて、アンモニア分解反応条件下に触媒の存在下で、アンモニアを含む供給ガスを水素にアンモニア分解反応させ、但し、前記構造体触媒が、導電性材料のマクロ構造を含み、前記マクロ構造がセラミックコーティングを支持しており、前記セラミックコーティングが触媒活性物質を支持しており;前記反応器システムが前記構造体触媒と前記圧力シェル間に熱絶縁を備えている方法であって、次のステップ;
-前記供給ガスを加圧するステップ、
-前記加圧された供給ガスを、前記供給ガスが前記構造体触媒の第1の端部で前記構造体触媒に入るように配置された入口を通して前記圧力シェルに供給し、前記供給ガスを前記構造体触媒上でアンモニア分解反応させ、前記圧力シェルから生成物ガスを排出し、この際、前記生成物ガスが前記構造体触媒の第2の端部で前記構造体触媒から出るステップ;
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して電力を供給し、電流が前記マクロ構造を通って流れることを可能にし、それによって前記構造体触媒の少なくとも一部を少なくとも300℃の温度に加熱し、ここで、前記少なくとも2つの導体は、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1の端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒と接続されており、かつ、電流を1つの導体から実質的に前記構造体触媒の第2の端部まで流しおよび前記少なくとも2つの導体のうちの第2の導体に戻すように、前記構造体触媒が構成され、それによって、前記供給ガスが構造体触媒上でアンモニア分解反応を行うために十分な温度まで構造体触媒の少なくとも一部を加熱し、それによって、前記供給ガスが構造体触媒上でアンモニア分解反応を行うために十分な温度まで構造体触媒の少なくとも一部を加熱するステップ;
-水素を含む生成物ガスを反応器システムから排出するステップ、
を含む前記方法。
【0162】
25.前記供給ガスが、2~30barの間の圧力に加圧される、項目24に記載の方法。
【0163】
26.前記供給ガスが、30~200barとの間の圧力に加圧される、項目24に記載の方法。
【0164】
27.構造体触媒の少なくとも一部が、少なくとも300℃、好ましくは少なくとも700℃、の温度に加熱される、項目24~26のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
28.前記冷却ガスが少なくとも1つの導体上を流れるようにするために、前記圧力シェルを通る入口を通して冷却ガスを流入させるステップをさらに含む、項目24~27のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
29.水素を含む生成物流をアップグレーディングユニットに供給し、アップグレードされた水素流とオフガス流とに分離するステップをさらに含む、項目24~28のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
30.前記方法は、前記生成物ガスまたは前記アップグレーディングユニットからのアップグレードされた水素流を、電気的製造のための下流プラントに供給するステップをさらに有する、項目29に記載の方法
【0168】
31.前記項目1~23のいずれか1つに記載の反応器システムにおいて、アンモニアを含む供給ガスの金属触媒反応を、第1の定常反応条件(A)から第2の定常反応条件(B)またはその逆に速やかに切り替える方法であって;前記方法は、以下のステップを含む、
前記第1の定常反応条件(A)において
-前記供給ガスを第1の総流量で前記反応器システムに供給するステップ、および、
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する電気伝導体を介して第1の電力を供給し、それによって前記導電性材料に第1の電流が流れるようにし、
それによって、前記構造体触媒の少なくとも一部を第1の温度まで加熱し、この温度で、前記第1の定常反応条件(A)下において前記供給ガスが前記構造体触媒上で第1の生成物ガス混合物に変換され;そして前記第1の生成物ガスを前記反応器システムから排出させるステップ、
そして、前記第2の定常反応条件(B)において
-前記供給ガスを前記反応器システムに第2の総流量で供給するステップ、および、
-前記圧力シェルの外側に配置された電源を前記構造体触媒に接続する(複数の)電気伝導体を介して第2の電力を供給し、それによって前記導電性材料に第2の電流が流れるようにし、
それによって、前記構造体触媒の少なくとも一部を第2の温度まで加熱し;この温度で、前記第2の定常反応条件(B)下において前記供給ガスが前記構造体触媒上で第2の生成物ガス混合物に変換され;前記第2の生成物ガスを前記反応器システムから排出させるステップ
ここで、前記第2の電力は、前記第1の電力よりも大きく、および/または、前記第2の総流量は、前記第1の総流量よりも多い。
【0169】
32.前記少なくとも2つの導体が、前記構造体触媒の前記第2の端部よりも前記構造体触媒の前記第1端部に近い前記構造体触媒上の位置で前記構造体触媒に接続され、電流を1つの導体から実質的に前記構造体触媒の第2の端部まで流し、前記少なくとも2つの導体のうちの第2(の導体)に戻るように、前記構造体触媒が構築されている、項目31に記載の方法。
【0170】
33.前記第1反応条件Aと前記第2反応条件Bにおける全ガス供給流量の比(A:B)が、少なくとも1:10である、項目31~32のいずれか1つに記載の方法。
【0171】
34.反応条件Bにおける構造体触媒からの生成物ガス出口温度が、反応条件Aにおける構造体触媒からの生成物ガス出口温度よりも50℃~600℃高い、例えば、100℃~500℃高い、好ましくは150℃~400℃高い、項目31~33のいずれか1つに記載の方法。
【0172】
35.反応条件AとBとの間の切り替えが、全ガス供給流量を前記第1の総流量から前記第2の総流量に徐々に変化させることと、前記導電性材料上の印加電位を前記第1の電力から前記第2の電力に同時に徐々に変化させることとを含む、項目31~34のいずれか1つに記載の方法。
【0173】
36.反応条件Bにおける構造体触媒からの生成物ガス出口温度が、反応条件Aにおける構造体触媒からの生成物ガス出口温度よりも50℃までしか高くならない、項目31~35のいずれか1つに記載の方法。
【0174】
37.比例積分微分(PID)コントローラが、構造体触媒からの生成物ガス出口温度のプロセス値のフィードバック読み取りに基づいて電位を制御する、項目31~36のいずれか1つに記載の方法。
【0175】
38.構造体触媒からの生成物ガス出口温度が、構造体触媒の直下または最下流の表面で測定される、項目31~37のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
39.反応条件AとBとの間の切り替えが、3時間未満、例えば2時間未満、例えば60分未満、好ましくは30分未満、さらに好ましくは15分未満の期間にわたって行われる、項目31~38のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
40.反応条件AとBとの間の切り替えが、構造体触媒に第2の電力を供給することを含む、項目31~39のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
41.反応条件AとBとの間の切り替えが、前記反応条件AとBとの間の遷移状態を含み;前記遷移状態が、電力がオフにされる第1の期間と、それに続いて、前記構造体触媒に条件Bの前記第2の電力が供給される第2の期間とを含む、項目31~40のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
42.前記反応条件AとBとの間の切り替えが、前記反応条件AとBとの間の遷移状態を含み;前記遷移状態が、前記構造体触媒に第3の電力が供給される第1の期間と、その後に前記構造体触媒に条件Bの第2の電力が供給される第2の期間を含み、前記第3の電力が前記第2の電力より大きい、項目31~41のいずれか1つに記載の方法。