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特許7629913選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質を用いてがん患者における好中球/リンパ球比を正常化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質を用いてがん患者における好中球/リンパ球比を正常化する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4738 20060101AFI20250206BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250206BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20250206BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20250206BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
A61K31/4738
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/7068
A61K45/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022523242
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-15
(86)【国際出願番号】 US2020055498
(87)【国際公開番号】W WO2021076565
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】62/915,865
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503345477
【氏名又は名称】コーセプト セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリーンシュタイン、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】クストディオ、ジョーセフ
(72)【発明者】
【氏名】シェパード、ステイシー
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/183947(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/049255(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/141365(WO,A1)
【文献】CANCER RESEARCH,2016年,Vol. 76, Issue 4, Supplement,Abstract PD3-02
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61P 35/00
A61K 31/4738
A61K 39/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有し、好中球/リンパ球比(NLR)が3より大きいがん患者におけるNLRを低下させるための医薬であって、
前記医薬は、有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を含み、
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであるか、
【化1】

又は、
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンである、前記医薬。
【化2】
【請求項2】
腫瘍を有し、好中球/リンパ球比(NLR)が3より大きいがん患者におけるNLRを低下させるための医薬であって、
前記医薬は、有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を含み、
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであるか、
【化3】

又は、
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-4-イル)メタノンである、前記医薬。
【化4】
【請求項3】
前記がん患者の前記好中球/リンパ球比(NLR)が約3又はそれ以下まで低下する、請求項1又は請求項2に記載の医薬。
【請求項4】
腫瘍を有し、好中球/リンパ球比(NLR)が3より大きいがん患者におけるNLRを低下させるための医薬であって、
前記医薬は、前記がん患者に有効量のがん治療を行うこと及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を投与することを含み、それにより前記がん患者のNLRが低下する方法において使用され、
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであるか、
【化5】

又は、
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンである、前記医薬。
【化6】
【請求項5】
腫瘍を有し、好中球/リンパ球比(NLR)が3より大きいがん患者におけるNLRを低下させるための医薬であって、
前記医薬は、前記がん患者に有効量のがん治療を行うこと及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を投与することを含み、それにより前記がん患者のNLRが低下する方法において使用され、
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンであるか、
【化7】

又は、
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-4-イル)メタノンである、前記医薬。
【化8】
【請求項6】
前記がん患者の前記好中球/リンパ球比(NLR)が約3又はそれ以下まで低下する、請求項又は請求項に記載の医薬。
【請求項7】
前記がん治療を行うこと、及び非ステロイド性選択的GRAを投与することは、前記患者の腫瘍量の減少に効果的である、請求項4~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
前記NLRの低下は、好中球/リンパ球比が3より大きい、がん治療を受けている患者において、がん治療に対する応答を増強するのに効果的であり、前記増強は、本医薬の投与を行わない場合の応答と比べての増強であり、
前記方法は、
前記がん患者に有効量のがん治療を行うこと及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を投与することを含み、
それにより前記がん患者のNLRが低下し、前記がん患者のがん治療に対する応答が増強される、
請求項4~7のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項9】
前記がん治療は化学療法剤の投与を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
前記化学療法剤は、微小管阻害剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の医薬。
【請求項11】
前記化学療法剤はプリナブリン(plinabulin)及びタキサンから選択される微小管阻害剤である、請求項に記載の医薬。
【請求項12】
前記化学療法剤はnab-パクリタキセルである、請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
前記がん治療は免疫療法剤の投与を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
前記免疫療法剤は、PD-1、PD-L1、CTKA4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択されるタンパク質標的に対する抗体を含む、請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
前記がん治療は、がん放射線療法、増殖因子阻害剤の投与、及び抗血管新生因子の投与のうちの1又は複数を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
前記化学療法剤は代謝拮抗剤である、請求項9~12のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項17】
前記化学療法剤はゲムシタビンである、請求項16に記載の医薬。
【請求項18】
前記患者は前記がん治療及びGRA治療に部分奏効(partial response)を示し、ここで、前記部分奏効は、前記がん治療単独に対する前記患者の応答と比較した改善であり、
それにより前記がん患者のNLRが低下して、前記がん患者のがん治療に対する応答が増強される、
請求項8~17のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項19】
前記患者は前記がん治療及びGRA治療に完全奏効(complete response)を示し、こ
こで、前記完全奏効は、前記がん治療単独に対する前記患者の応答と比較した改善であり、
それにより前記がん患者のNLRが低下して、前記がん患者のがん治療に対する応答が増強される、
請求項8~17のいずれか1項に記載の医薬。
【請求項20】
前記がん患者の前記NLRは、前記非ステロイド性選択的GRAの少なくとも7日間の投与の後に低下する、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
がんは、異常細胞の無制御な増殖及び転移により特徴付けられる多様な疾患群である。がんは、米国及び世界中における主たる死亡原因である。がん細胞では、細胞分裂及び/又は細胞間情報交換を制御する経路は、細胞増殖の制御及び限定におけるこれらの制御機構の効果が機能しなくなるように、又は迂回されるように変化するようになる。突然変異及び自然選択の連続的な繰り返しを通して、(通常は単一の突然変異細胞から生じた)一群の異常細胞は、他の細胞に対する選択的増殖の利点をもたらす追加の突然変異を蓄積し、それにより細胞集団において優勢である細胞型に進化する。がん細胞がさらに進化すると、その一部が局所浸潤性となり、続いてがん細胞の発生組織以外のコロニー形成組織に転移する。この特性により、腫瘍細胞集団の不均一性と共に、がんを治療及び根絶が特に困難な病気にする。
【0002】
好中球絶対数とリンパ球絶対数との比率は、好中球/リンパ球比(NLR)と称される。NLRは、複数のがん治療において、化学療法への応答の予後又は予測となる(An et al., “Elevated neutrophil to lymphocyte ratio predicts survival in advanced pancreatic cancer” Biomarkers. 15(6):516-522, 2010; Proctor et al., “A derived neutrophil to lymphocyte ratio predicts survival in patients with cancer” Br J Cancer. 107(4):695-699, 2012; Xue et al., “Neutrophil-to-lymphocyte ratio for predicting palliative chemotherapy outcomes in advanced pancreatic cancer patients” Cancer Med. 3(2):406-15, 2014; Stotz et al., “Increased neutrophil-lymphocyte ratio is a poor prognostic factor in patients with primary operable and inoperable pancreatic cancer. Br J Cancer” 109(2):416-421, 2013; Teo et al., “Prognostic role of neutrophil-to-lymphocyte ratio in advanced pancreatic ductal adenocarcinoma: impact of baseline fluctuation and changes during chemotherapy” Tumori. 99(4):516-522, 2013; Wang et al., “Comparison of the prognostic values of various inflammation-based factors in patients with pancreatic cancer” Med Oncol. 29(5):3092-3100, 2012)。NLRはまた、免疫癌療法とも呼ばれる、PD-1の阻害剤などのチェックポイント阻害剤への応答の予測となる(Sacdalan et al., “Prognostic utility of baseline neutrophil-to-lymphocyte ratio in patients receiving immune checkpoint inhibitors: a review and meta-analysis” OncoTargets and Therapy. 11:955-65, 2018)。転移性腎細胞癌患者において、がん治療によるNLRの低下は、NLRが低下しなかった患者と比較して、より良い治療結果に関連していた(Lalani et al., J. ImmunoTherapy Cancer 6:5 (2018))。リンパ球1個当たり3個の好中球の閾値以下(NLR<3)の好中球/リンパ球比は、通常、低いまた正常であると見なされる。3未満のNLRは、複数のがん治療においてより良好な治療成績に関連している。反対に、高いNLRは、より不良な治療成績に関連している。これらの全身性の測定は、腫瘍生物学におけるそれぞれの細胞型の役割と一致している。すなわち、腫瘍関連好中球が腫瘍進行を媒介するが(Hurt et al. “Cancer-promoting mechanisms of tumor-associated neutrophils” Am J Surg. 214(5):938-944, 2017)、腫瘍浸潤リンパ球は腫瘍除去を促進する(Mahmoud et al., “Tumor-infiltrating CD8+ lymphocytes predict clinical outcome in breast cancer” J Clin Oncol. 29(15):1949-55, 2011)。したがって、NLRを約3又はそれ以下である正常値まで低下させることは、複数のがん治療における治療成績を向上させると期待されるだろう。
【0003】
グルココルチコイド受容体(GR)は、複数の遺伝子の転写を制御する核内ホルモン受容体である。GRはまた、細胞型特異的アポトーシス(Saffar et al., “The Molecular Mechanisms of Glucocorticoids-Mediated Neutrophil Survival” Current Drug Targets. 12(4): 556-562, 2011)、及び辺縁部(すなわち、リンパ節及び脾臓)と循環血液の間の細胞輸送に関与する遺伝子の制御(Burton et al., “Regulation of L-selectin and CD18 on bovine neutrophils by glucocorticoids: effects of cortisol and dexamethasone” J Leukocyte Biol. 57(2):317-25, 1995)の2種類の既述の機序を介して血液の細胞構成を制御する。合成GR作動物質(agonist)であるデキサメタゾンは、循環好中球を増加させ、循環リンパ球を減少させる(Mishler and Emerson, “Development of Neutrophilia by serially increasing doses of dexamethasone” Br J Hematol. 36(2):249-57, 1977)。クッシング病の一次病因である、内在性GR作動物質であるコルチゾールの過剰な産生は、循環好中球を増加させ、循環リンパ球を減少させる(de la Balze et al., “Differential blood counts in certain adrenal cortical disorders (Cushing's syndrome, Addison's disease and panhypopituitarism)” J Clin Endocrinol Metab. 6:312-9, 1946; Masri-Iraqi et al., “Elevated white blood cell counts in Cushing’s disease: association with hypercortisolism” Pituitary. 17:436-440, 2014; Tatsi et al., “Decreased lymphocytes and increased risk for infection are common in endogenous pediatric Cushing syndrome. Pediatric Res. 83(2):431-437, 2018)。(松果体の腫瘍性領域の外科的切除によることが多い)コルチゾールレベルがクッシング患者において正常化されると、循環好中球が減少し、循環リンパ球が増加する(Masri-Iraqi, 2014)。したがって、過剰な生理学的GR受容体活性化作用はNLRを上昇させることが示されてきた。
【0004】
GRを介したシグナル伝達経路は、免疫系の種々の構成成分が関与する動的な生物学的効果を有しており、それらのインビボでの効果は予測不能である。例えば、グルココルチコイドは、炎症性サイトカインの抑制、抗炎症性サイトカインの促進、樹状細胞の阻害、ナチュラルキラー細胞の抑制、制御性T細胞の促進、及びT細胞アポトーシスの誘導などの免疫抑制効果と、免疫増強効果の両方を有することが報告されている。Hinrichs et al., “Glucocorticoids do not inhibit antitumor activity of activated CD8+ T cells.” J. Immunother. 28 (6): 517-524 (2005)を参照。がん細胞上のGRを介したシグナル伝達経路は同様に理解しづらい。一方、GRシグナル伝達経路の活性化により、特定の種類のがん細胞、例えば、悪性リンパ系がんにおいて、アポトーシスが誘導されると考えられている(例えば、Schlossmacher et al., “Glucocorticoid receptor-mediated apoptosis: mechanisms of resistance in cancer cells” J. Endocrinol. 211:17-25 (2011)を参照)。一方、GRシグナル伝達経路を阻害する薬剤が、上皮由来のがん細胞の殺傷において、化学療法作用を増強することができることも報告されている(例えば、米国特許第9,149,485号を参照).
【0005】
GR拮抗作用のNLRに対する効果は、たとえあったとしても、知られていない。健康な男性へのミフェプリストン(RU-486としても知られている)の投与は、好中球又はリンパ球の血中存在量を変化させない(Laue, 1990)。アジソン病患者は、しばしば、正常より低い血清コルチゾールレベルを有するが、これらの患者は正常な好中球の存在量(de la Balze, “Differential blood counts in certain adrenal cortical disorders (Cushing's syndrome, Addison's disease and panhypopituitarism)” J Clin Endocrinol Metab. 6:312-9, 1946)及び機能(Bancos et al., “Primary adrenal insufficiency is associated with impaired natural killer cell function: a potential link to increased mortality” Eur J Endocrinol. 176(4):471-480, 2017)を有する。
【0006】
したがって、GR拮抗作用のNLRに対する効果は、たとえあったとしても、知られておらず、がん治療におけるNLRの予後値を利用する治療を含む、改善されたがん治療の必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
出願人は、好中球/リンパ球比(NLR)を正常化する方法を開示する。がん患者に関して、正常より高いNLR(3より大きい)は、予後不良を予測する。NLRの低下はがん治療の治療成績の向上に関連している。がん患者におけるNLRを正常値(すなわち、約3未満)まで低下させると、これらの患者の予後が改善され、患者のがん治療への応答が改善され、がん療法の治療成績を向上させ、腫瘍量を減少させることができ、腫瘍除去を促進することができる。上述のように、ミフェプリストンは健康な対象において好中球又はリンパ球の存在量を変化させないので、健康な対象におけるNLRに影響しない(Laue, 1990)。驚くべきことに、本明細書に開示されるように、非ステロイド性GRAの投与は、がん治療を受けているがん患者におけるNLRの低下に効果的であった。
【0008】
本明細書に開示される方法は、NLRが3より大きいがん患者を選択すること、及び、例えばレラコリラント(relacorilant)などの非ステロイド性グルココルチコイド受容体拮抗物質(glucocorticoid receptor antagonist)(GRA)を、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者におけるNLRを正常化する(低下させる)ためのがん治療と組み合わせて投与することを含む。本明細書に開示される方法は、レラコリラントなどの非ステロイド性GRAを、NLRが高いがん患者を治療するためのがん治療と組み合わせて投与することを含む。本明細書に開示される方法は、レラコリラントなどの非ステロイド性GRAを、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者におけるがん治療への応答を増強するためのがん治療と組み合わせて投与することを含む。本明細書に開示される方法は、レラコリラントなどの非ステロイド性GRAを、腫瘍又は複数種の腫瘍を有し、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者の腫瘍量を減少させるためのがん治療と組み合わせて投与することを含む。本明細書に開示される方法は、レラコリラントなどの非ステロイド性GRAを、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者における腫瘍除去を促進するためのがん治療と組み合わせて投与することを含む。本明細書に開示される方法は、レラコリラントなどの非ステロイド性GRAを、NLRが高いがん患者の健康を改善するためのがん治療と組み合わせて投与することを含む。本明細書に開示される方法は、レラコリラントなどの非ステロイド性GRAを、nab-パクリタキセルなどのタキサンを組み合わせて、NLRを低下させるため、患者のタキサンへの応答を改善するため、及びがん患者の健康を改善するために、NLRが高いがん患者に投与することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、がん治療は、化学療法剤(例えば、nab-パクリタキセルなどのタキサン、ゲムシタビン、又は他の化学療法剤)の投与を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、がん治療は、免疫療法剤(例えば、例えばPD-1、PD-L1、CTKA4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択されるタンパク質標的に対する抗体などのチェックポイント阻害剤、又は他の免疫療法)の投与を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、がん治療は、放射線療法(例えば、腫瘍へのイオン化放射線の誘導、放射性医薬組成物の注入、放射線源の埋め込み、又は他の放射線療法)を行うことを含んでいてもよい。がん治療は、手術及び他のがん治療を含んでいてもよく、これらのがん治療の組み合わせを含んでいてもよい。
【0010】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、非ステロイド性GRAは縮合アザデカリン構造を含む非ステロイド化合物である。いくつかの実施形態では、縮合アザデカリン構造を含む化合物は、米国特許第7,928,237号及び米国特許第8,461,172号に記載及び開示される化合物である。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む化合物は、米国特許第8,859,774号に記載及び開示される化合物である。いくつかの実施形態では、オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む化合物は、米国特許第10,047,082号に記載及び開示される化合物である。これら特許、並びに本明細書で説明される全ての特許、特許出願、特許公報、及び刊行物の内容全体は、上記のものも下記のものも、その全体が参照により本願発明に取り込まれる。
【0011】
いくつかの実施形態では、例えば、非ステロイド性GRAは、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン化合物(例えば、米国特許第8,859,774号に開示される化合物)である。具体的な実施形態では、非ステロイド性GRAは、「レラコリラント」として、及び「CORT125134」(米国特許第8,859,774号の実施例18)としても知られる、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである。
【化1】
【0012】
レラコリラントは、ステロイド性化合物であるミフェプリストンとは化学的に異なっている。ミフェプリストンとは異なり、レラコリラントはプロゲステロン受容体に拮抗しない。したがって、レラコリラント(及び、例えば米国特許第8,859,774号、米国特許第7,928,237号、米国特許第8,461,172号、及び米国特許第10,047,082号、並びに本明細書に引用される他の特許などに開示される他の縮合アザデカリン化合物)は、グルココルチコイド受容体に選択的に拮抗する手段を提供する。NLRに対するレラコリラントの効果はこれまで記載されていない。
【0013】
いくつかの場合では、選択的非ステロイド性GRAは経口投与される。いくつかの場合では、選択的非ステロイド性GRAは、注射、注入、経皮塗布、噴霧された懸濁液、又はエアロゾルスプレーにより投与される。
【0014】
いくつかの場合では、非ステロイド性選択的GRAの有効量は、1日当たり1~100mg/kgの1日用量である。いくつか実施形態では、非ステロイド性選択的GRAの用量は、1日当たり1mg/kg、2mg/kg、4mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、14mg/kg、16mg/kg、18mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、又は100mg/kgの1日用量である。いくつかの場合では、GRAは、1週間以上、2週間以上、3週間以上、4週間以上、5週間以上、6週間以上、7週間以上、8週間以上、9週間以上、10週間以上、11週間以上、12週間以上、13週間以上、14週間以上、15週間以上、16週間以上、17週間以上、18週間以上、19週間以上、20週間以上、25週間以上、30週間以上、35週間以上、40週間以上、45週間以上、50週間以上、55週間以上、60週間以上、65週間以上、70週間以上、75週間以上、80週間以上、又はがんが悪化(疾患が進行)するまで投与される。
【0015】
本願方法は、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者におけるNLRを正常化する(低下させる)改善された方法、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者におけるがん治療への応答を増強する(例えば、タキサン(例えば、nab-パクリタキセル)化学療法に対するNLRが高いがん患者の応答を改善する)改善された方法、腫瘍又は複数種の腫瘍を有し、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者の腫瘍量を減少させる改善された方法、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者における腫瘍除去を促進する改善された方法、及びNLRが高い、がん治療を受けているがん患者の健康を改善する改善された方法を提供する。本願方法は、がん治療を改善及び増強することにより、疾患の進行を遅らせることにより、患者の寿命及び生存期間、生活の質、並びに他の有益な健康転帰を改善することにより、患者に利点をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】健康な対象の好中球/リンパ球比(NLR)に対するレラコリラントの効果。健康な対象の試験のための投与及び評価のスケジュール。(A)単回投与用量漸増(SAD)プレドニゾン投与計画。(B)複数回投与用量漸増(MAD)プレドニゾン投与計画。(C)図の説明。
図2】進行性固形腫瘍を有する患者:セグメントI 継続投与計画、パート1:用量設定、パート2:投与延長。「CORT125134」はレラコリラントを示す。「PK採取」は、薬物動態測定のために採取した血液試料(「採取」)を示す。「CORT125134」はレラコリラントを示す。
図3】進行性固形腫瘍を有する患者:セグメントII 間欠投与計画:パート1及びパート2。「PK採取」は、薬物動態測定のために採取した血液試料(「採取」)を示す。「CORT125134」はレラコリラントを示す。
図4】レラコリラントの非存在下及び存在下で、25ミリグラム(mg)のプレドニゾンを投与された9人の健康な対象におけるNLRが測定された。500mgのレラコリラントの単回投与は、健康な対象において、25mgのプレドニゾンのNLRに対する効果を減弱させた。
図5】レラコリラントの非存在下及び存在下で、プレドニゾンを投与された健康な対象におけるNLRが測定された。250mgのレラコリラントの複数回投与(1日当たり250mgの連続14日間)は、25mgのプレドニゾン単独と比較して、25mgのプレドニゾンの効果を減弱させた。
図6】250mgのレラコリラントの複数回投与(1日当たり250mgの連続14日間)は、プレドニゾンの前に連続14日間のプラセボ対照を投与された健康な対象において測定されたNLRと比較して、25mgのプレドニゾンのNLRに対する効果を減弱させた。
図7A】健康な対象におけるNLRと比較して、多くのがん患者においてNLRは上昇している。
図7B】250mgのレラコリラント単独は健康な対象におけるNLRを変化させない。
図8】AUC(右)又Cmax(左)は、進行性固形腫瘍を有する患者において、7日間のレラコリラント単独の間のNLRの変化に関連していた。
図9】レラコリラント+nab-パクリタキセルの8日間の投与は、固形腫瘍患者におけるNLRを低下させる。
図10】ベースラインNLRが3より大きい、進行性固形腫瘍を有する患者におけるNLRの変化(右側のグラフに示す)と比較した、ベースラインNLRが3以下である、進行性固形腫瘍を有する患者におけるNLRの変化(左側のグラフに示す)を示す図である。
図11】レラコリラント+nab-パクリタキセルによる治療に対する完全奏効を達成した卵巣がん患者において、(7日間のレラコリラント単独の後)NLRが低下した。
図12】進行性疾患(PD)、安定状態(SD)、及び部分奏効又は完全奏効(PR/CR)患者における、第1周期の最初の8日間(左)又は15日間(右)のベースラインからのNLRの変化(log単位)を示す図である。横線は中間値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.序論
本明細書に開示される方法は、NLRが3より大きいがん患者を選択すること、及び、例えばレラコリラント(relacorilant)などの非ステロイド性グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者におけるNLRを正常化する(低下させる)ためのがん治療と組み合わせて投与することを含む。好中球/リンパ球比(NLR)は、健康な個体において観察されるNLRと比較して、がん患者において通常上昇している。3より大きいNLRは過大であり、がんを患う患者においてしばしば見られる値である。より健康な値(例えば、約3又はそれ以下)へのNLRの回復は、がん治療への有益な応答の指標である。より健康な値(例えば、約3又はそれ以下)へのNLRの回復は、NLRの正常化を示さないがん患者と比較して、がん治療に対する治療成績の向上に関連している。NLRが3より大きい、がん治療を受けているがん患者におけるNLRを正常化する(低下させる)ことは、がん治療を補助し、がん治療の治療成績を向上させ、腫瘍又は複数種の腫瘍を有するがん患者の腫瘍量を減少させることができ、腫瘍又は複数種の腫瘍を有するがん患者の腫瘍除去を促進することができ、あるいは、がん治療への有益な応答の達成を補助すると考えられている。がん化学療法又は他のがん治療と組み合わせた、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリンGRAなど、例えばレラコリラント(「CORT125134」又は「RELA」とも呼ばれる)などの非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)の投与によるコルチゾール活性の拮抗作用は、がん患者の治療において、及び治療が行われているがん患者におけるNLR値の低下において、効果的であると考えられている。出願人は、本明細書において、内在性コルチゾール活性の拮抗作用が、レラコリラントとNab-パクリタキセル(NP又はnab-pac)による併用治療への応答に関連していることを開示する。出願人は、本明細書において、内在性コルチゾール活性の拮抗作用が、レラコリラントとNab-パクリタキセルによる併用治療への応答に関連していることを開示する。
【0018】
内在性コルチゾールを含むグルココルチコイドは、DUSP1(「dual specificity phosphatase 1」)及びSGK1(「serum/glucocorticoid regulated kinase 1」)などの細胞生存経路を制御する遺伝子の上方制御を介して化学療法抵抗性を増進させる(DUSP1:受入番号 NM_004417.2、NSID番号 NM_004417.2:987;SGK1:受入番号 NM_005627.2、NSID番号 NM_005627.2:1790)。非ステロイド性選択的GRAであるレラコリラントは、コルチゾールの効果に拮抗する。レラコリラント+NPは、第1相試験において、事前のタキサン治療において進行した患者を含む、抵抗性の進行性固形腫瘍を有する患者の19/49(39%)において、16週目又は16週以降に疾患制御を達成した。コルチゾール活性のバイオマーカーは、健康な対象におけるプレドニゾン投与に続いて定義され、レラコリラント+Nab-パクリタキセルを投与されている固形腫瘍を有する患者において評価された。
【0019】
方法:
リンパ球及び好中球の存在量は、標準的な識別全血球計算試験を用いて決定された。
【0020】
結果:
健康な対象(n=9)において、25ミリグラム(mg)のプレドニゾンの投与により好中球/リンパ球比(NLR)が実際に4.7倍増加した。レラコリラントの同時投与によりこの効果が減弱された(reversed)。がん患者において、NLRはベースライン時に顕著に上昇したが、レラコリラントにより正常化された。
【0021】
これらの結果は、レラコリラントが健康な対象においてプレドニゾンによるNLRの誘導を減弱させることを示す。がん患者におけるNLRの上昇は、レラコリラントにより低下した。このことは、がん患者における内在性グルココルチコイド受容体(GR)活性の上昇と一致し、且つ上昇を示唆している。
【0022】
これらの結果は、レラコリラントなどの非ステロイド性選択的GRAの投与が、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者における高NLRを正常化する(低下させる)のに効果的であったことを示す。したがって、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者への非ステロイド性選択的GRAの投与は、そのようながん患者における高NLRを正常化し(低下させ)、がんの治療を増強し、それにより患者に臨床的有用性を提供することができる。
【0023】
したがって、好中球/リンパ球比(NLR)が3より大きいがん患者を治療するための本願方法は、患者のNLRを低下させ、がん患者の治療を増強するのに効果的である。いくつかの実施形態では、がん治療は、化学療法、免疫療法、放射線療法、抗血管新生剤の投与、増殖因子阻害剤の投与、及び手術を含んでいてもよい。前記方法は、がん治療を促進し、がん患者の予後を改善し、疾患の進行を遅らせ、がん患者の寿命及び生存期間を改善し、患者の生活の質を改善し、並びに患者に他の有益な健康転帰、有益な臨床効果、及び他の利点を提供し得る。
【0024】
B.定義
本明細書で使用される「対象」又は「患者」との用語は、ヒト又は非ヒト生物をいう。したがって、本明細書に記載される方法及び組成物は、ヒト疾患及び動物疾患に適用可能である。ある実施形態では、対象は「患者」、すなわち、疾患又は症状に対する医療ケアを受けている生きているヒトである。これには、病状の徴候について調査中である、明確な病気を有していない人も含まれる。いくつかの場合では、対象は1種類又は複数種類のがんを同時に患っていてもよい。がんとしては、これらに限定されないが、前立腺がん、乳がん、腎細胞癌、メラノーマ、膵がん、副腎皮質がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮内膜(又は子宮)がん、外陰がん、大腸がん、頭頸部がん、肺がん、肉腫、肝細胞腫瘍、神経膠芽腫、神経内分泌腫瘍、膀胱がん、胆嚢がん/胆管細胞癌、胃がん、及び中皮腫が挙げられる。
【0025】
がんは、異常細胞の無制御な増殖及び/又は伸展により特徴付けられる。通常、生検が採取され、疑われる症状を確認するために生検由来の細胞又は組織が顕微鏡で検査される。いくつかの場合では、診断を検証するために細胞のタンパク質、DNA、及びRNAについて追加の試験を行う必要がある。
【0026】
本明細書で使用される「腫瘍」との用語及び「がん」との用語は互換的に使用され、いずれも過剰な細胞分裂により生じる組織の異常増殖をいう。周辺の組織に浸潤する、及び/又は転移可能な腫瘍は「悪性」といわれる。転移しない腫瘍は「良性」といわれる。
【0027】
本明細書で使用される「腫瘍量」又は「腫瘍負荷量」は、一般に、所与の時間における対象の体内における、がん細胞の数、腫瘍の大きさ、又はがんの量をいう。腫瘍量は、例えば、腫瘍特異的遺伝子マーカーの発現を測定すること、及び本明細書の以下に開示される多数の既知の生化学的方法又は画像検査法によって腫瘍の大きさを測定することにより、検出され得る。
【0028】
本明細書で使用される「チェックポイントタンパク質」との用語は、特定の種類の細胞、例えばT細胞及び特定の腫瘍細胞の表面に存在し、チェックポイントシグナル伝達経路を誘導して免疫応答の調節をもたらすことができるタンパク質をいう。一般に知られているチェックポイントタンパク質としては、CTLA4、PD-1、PD-L1、LAG3、B7-H3、B7-H4、TIM3、CD160、CD244、VISTA、TIGIT、OX-40、CD137、及びBTLAが挙げられる(Pardoll, 2012, Nature Reviews Cancer 12:252-264; Baksh, 2015, Semin Oncol. 2015 Jun;42(3):363-77)。このうち、CTLA4、PD-1、及びPD-L1は、最もよく研究されており、これらのタンパク質を標的とする治療は、他のチェックポイントタンパク質を標的とする治療よりも臨床的により先進的である。
【0029】
本明細書で使用される「PD-1」との用語は、免疫グロブリンスーパーファミリーの細胞表面膜タンパク質である、プログラム細胞死タンパク質1(CD279としても知られている)をいう。PD-1は、B細胞、T細胞、及びNK細胞により発現される。PD-1の主要な役割は、感染に応じた炎症中の周辺組織におけるT細胞の活性を制限すること、及び自己免疫を制限することである。PD-1の発現は、活性化されたT細胞上で誘導され、PD-1はその内在性リガンドのうちの一つに結合すると、刺激性キナーゼを阻害することによりT細胞の活性を阻害するように機能する。PD-1はまた、TCR「停止シグナル」を阻害するように機能する。PD-1は、Treg細胞(制御性T細胞)上で高度に発現しており、リガンドの存在下でそれらの増殖を増加させ得る(Pardoll, 2012, Nature Reviews Cancer 12:252-264)。
【0030】
本明細書で使用される「PD-L1」との用語は、PD-1のリガンドである、プログラム細胞死1リガンド1(CD274及びB7-H1としても知られている)をいう。PD-L1は、活性化されたT細胞、B細胞、骨髄系細胞、マクロファージ、及び腫瘍細胞上に存在する。PD-1に対する内在性のリガンドは2種類(PD-L1及びPD-L2)存在するが、抗腫瘍療法は抗PD-L1に注目してきた。PD-1とPD-L1との複合体はCD8+T細胞の増殖を阻害し、免疫応答を低減させる(Topalian et al., 2012, N. Engl J. Med. 366:2443-54; Brahmer et al., 2012, N. Engl J. Med. 366:2455-65)。
【0031】
本明細書で使用される「CTLA4」との用語は、T細胞上で独占的に発現する免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CD152としても知られている)をいう。CTLA4は、T細胞の活性化を阻害するよう機能し、ヘルパーT細胞活性を阻害し、制御性T細胞の免疫抑制活性を増強することが報告されている。CTL4-Aの正確な作用機序は研究中であるが、CTL4-Aは、抗原提示細胞上のCD80及びCD86への結合においてCD28を打ち負かし、T細胞へ能動的に阻害シグナルを伝達することにより、T細胞の活性化を阻害すると示唆されている(Pardoll, 2012, Nature Reviews Cancer 12:252-264)。
【0032】
本明細書で使用される「チェックポイント阻害剤」との用語は、1又は複数のチェックポイントタンパク質により誘導される免疫抑制経路を調節する、抗体及び小分子を含む任意の分子をいう。チェックポイント阻害剤は、通常、少なくとも1種類のチェックポイントタンパク質に対する抗体(「CIA」)である。そのような抗体は、チェックポイントタンパク質の免疫抑制活性を遮断することができる。例えばPD-1、CTLA4、及びPD-L1に対する抗体など、多数のそのような抗体ががんの治療において効果的であることが示されている。しかしながら、チェックポイント阻害剤は、1又は複数のチェックポイントタンパク質により誘導される免疫抑制経路を遮断する、小分子の非タンパク質化合物(「CIC」)であってもよい。
【0033】
本明細書で使用される「抗体」との用語は、全長抗体及び抗体の「抗原結合部分」も含む。本明細書で使用される「抗原結合部分」との用語は、抗原(例えばPD-1)に特異的に結合する能力を保持している抗体の1又は複数の断片をいう。抗体の「抗原結合部分」との用語に包含される結合断片の例としては、(i)VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン、及びCH1ドメインからなる一価の断片である、Fab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価の断片である、F(ab’)2断片、(iii)VLドメイン及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546)、及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン(VL及びVH)は別個の遺伝子にコードされるが、組換え法を用いて、これらがVL領域及びVH領域が対合して一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖として作成されることを可能にする合成リンカーにより、これらは連結され得る(単鎖Fv(scFv)としても知られている; 例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426; and Huston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; 及びOsbourn et al. 1998, Nature Biotechnology 16: 778を参照)。そのような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」との用語に包含されることを意図している。完全なIgG分子又は他のアイソタイプをコードする発現ベクターを産生するため、特定のscFvの任意のVH配列及びVL配列が、ヒト免疫グロブリン定常領域のcDNA又はゲノム配列と連結され得る。VH及びVIはまた、タンパク質化学又は組換えDNA技術を用いるFab、Fv、又は他の免疫グロブリン断片の産生においても用いられ得る。二重特異性抗体(diabody)などの単鎖抗体の他の形態も包含される。二重特異性抗体は、同一鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるようなリンカーを用いて、VHドメインとVLドメインが単鎖ペプチドで発現され、これによりこれらのドメインがもう一方の相補ドメインと対合されて2つの抗原結合部位がつくられる、二重特異的な抗体である(例えば、Holliger, P., et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak, R. J., et al. (1994) Structure 2:1121-1123を参照)。
【0034】
抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであってもよく、異種抗体、同種抗体、若しくは同系抗体であってもよく、又はこれらの改変形態(例えば、ヒト化抗体、キメラ抗体など)であってもよい。チェックポイントタンパク質に対する抗体は、1種類又は複数種類のチェックポイントタンパク質に特異的に又は実質的に特異的に結合する。「モノクローナル抗体」との用語は、抗原の特定のエピトープと免疫応答することが可能な抗原結合部位を1種類のみ含む抗体分子の集団をいう。一方、「ポリクローナル抗体」及び「ポリクローナル抗体組成物」との用語は、特定の抗原と相互作用することが可能な複数種類の抗原結合部位を含む抗体分子の集団をいう。モノクローナル抗体組成物は、通常、免疫応答する特定の抗原に対する単一の結合親和性を示す。
【0035】
本明細書で使用される「チェックポイントタンパク質に対して効果的な抗体」との用語は、チェックポイントタンパク質に結合し、免疫応答の抑制におけるチェックポイントタンパク質の機能に拮抗し得る抗体をいう。例えば、PD-1に対する抗体は、PD-1に結合し、例えばPD-1とPD-L1との相互作用を阻害することにより、免疫応答におけるPD-1の抑制機能を阻害し得る抗体をいう。いくつかの場合では、抗体は、2種類のチェックポイントタンパク質に対するもの、すなわち、2種類のチェックポイントタンパク質に結合し、それらの機能を抑制する能力を有するものであってもよい。
【0036】
本明細書において「好中球」との用語は、医学分野において一般に認められたものとして用いられ、哺乳類の血液中に最も大量に存在する顆粒球をいう。好中球(neutrophil)は好中性白血球(neutrocyte)としても知られている。免疫系の一部として、好中球は、血液中に存在する外来細胞及び異物を貪食する。好中球の細胞質は、ヘマトキシリン・エオシン染色で処理された場合に中間のピンク色に染色される。好中球は、通常、桿状核又は分葉核を有する。
【0037】
本明細書において「リンパ球」との用語は、医学分野において一般に認められたものとして用いられ、リンパ液中の細胞の大部分を形成する白血球細胞をいう。リンパ球は、ナチュラルキラー細胞、T細胞、及びB細胞を含む。血液試料がライト染色で染色された場合、リンパ球は、好酸性の細胞質がほとんどない、濃染色される大きな核を示す。
【0038】
本明細書で使用される「好中球/リンパ球比」及び「NLR」との用語は、対象から得た血液試料における、リンパ球細胞の数で割った好中球細胞の数の比をいう。
【数1】

健康な対象のNLRは約3又はそれ以下である。3より大きいNLR値は、高NLR値であるとみなされる。NLRはまた、以下の式により、ベースラインからのNLR変化率(%CfB)として表されてもよい。
【数2】

したがって、ベースラインからのNLR増減率についてこの式を用いる場合、0%未満の任意のNLR %CfBはNLRの低下であり、0%より大きい任意のNLR %CfBはNLRの上昇である。NLRはまた、以下の式を用いて、ベースラインからの倍率変化(CfB倍率)として表されてもよい。
【数3】

したがって、ベースラインからのNLR倍率変化についてこの式を用いる場合、1未満の任意のNLR CfB倍率はNLRの低下であり、1より大きい任意のNLR CfB倍率はNLRの上昇である。
【0039】
本明細書で使用されるNLRを「正常化する」との用語は、高い(3より大きい)NLR値を、NLR値3、好ましくはNLR値3以下へ低下させることをいう。最も好ましい実施形態では、NLRは3未満の値まで低下する。
【0040】
本明細書で使用される、例えば患者生存に関して用いられる、「生存」との用語は、患者の死亡前の、治療開始後の期間をいう。
【0041】
本明細書で使用される「無進行生存期間」との用語は、元々は腫瘍を有していた患者において、腫瘍が著しくは増殖(又は「進行」)しない治療開始後の期間をいう。
【0042】
本明細書で使用される「安定奏効」又は「安定奏効」との用語は、腫瘍がほぼ同じ大きさのままであるが、少量の増殖(通常、20%未満又は25%未満)又は(「部分奏効」であると認められるよりも少ない縮小ではあるが)少量の縮小のいずれかを含み得る、元々は腫瘍を有していた患者をいう。
【0043】
本明細書で使用される「部分奏効」(PR)との用語は、全腫瘍容積の(およそ)50%以上の減少があるがいくらかの残存疾患の所見がまだ残っている、元々は腫瘍を有していた患者をいう。いくつかの場合では、深い奏効にある残存疾患は、実際には死滅した腫瘍又は傷痕であってもよく、PRを有すると分類される少数の患者は実際はCRを有していてもよい。また、治療中に腫瘍の縮小を示す多くの患者は、継続的な治療によりさらに腫瘍の縮小を示し、CRを達成してもよい。
【0044】
本明細書で使用される「完全奏効」(CR)との用語は、検査、理学的検査、及び撮像により示される全ての検出可能な腫瘍が消滅した、元々は腫瘍を有していた患者をいう。
【0045】
本明細書で使用される「化学療法」との用語は、通常、がん治療に用いられる医学的処置をいう。化学療法としては、癌性組織又は癌性細胞に対して有毒な薬剤、又は癌性組織又は癌性細胞の増殖及び伸展を遅延又は低下させるよう作用する薬剤の使用が挙げられる。化学療法剤としては抗悪性腫瘍剤が挙げられ、天然化合物由来(例えば、タキソール)であってもよく、天然のホルモン、増殖因子、又は免疫学的活性分子の作用を模倣してもよく、又は低下若しくは阻害させてもよく、合成小分子であってもよく;抗体又は抗体複合体であってもよく;他の薬剤であってもよい。例示的な化学療法剤としては、これらに限定されないが、特に当技術分野で周知の、タキサン、タキソール、ドセタキセル、パクリタキセル、ゲムシタビン、アクチノマイシン、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、ブレオマイシン、シスプラチン、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、トラスツズマブ エムタンシン(カドサイラ(登録商標))、イマチニブ(グリベック(登録商標))、エリブリン(ハラヴェン(登録商標))、及びPARP阻害剤(「PARP」はポリADPリボースポリメラーゼの薬理学的阻害剤を表す)が挙げられる。
【0046】
本明細書で使用される「化合物」との用語は、固有の識別可能な化学構造の分子部分を表すために用いられる。分子部分(「化合物」)は、他の分子と結合していない、遊離種形態で存在していてもよい。化合物は、他の分子(群)と結合しているが、それでもなおその化学的同一性を保持している、より大きな集合体の一部として存在していてもよい。定義された化学構造(「化合物」)の分子部分が溶媒の分子(群)と結合している溶媒和化合物は、そのような結合形態の一例である。水和物は、結合している溶媒が水である溶媒和化合物である。「化合物」との記載は、遊離形態であるか結合形態であるかにかかわらず、(記載された構造の)分子部分自体をいう。
【0047】
本明細書で使用される「組成物」との用語は、前記化合物、それらの互変異性形態、それらの誘導体、それらの類似体、それらの立体異性体、それらの多形体、それらの薬学的に許容可能な塩、エステル、エーテル、代謝物、異性体の混合物、それらの薬学的に許容可能な溶媒和化合物及び薬学的に許容可能な組成物などの特定の成分を特定量で含む生成物、並びに前記特定量の特定の成分の組み合わせによって直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図されている。医薬組成物と関連するそのような用語は、活性成分(群)、及び担体を構成する不活性成分(群)を含む生成物、並びに2種類以上の任意の成分の組み合わせ、複合体形成、又は凝集によって、あるいは、1又は複数の成分の解離によって、1又は複数の成分の他の種類の反応又は相互作用によって、直接的又は間接的に生じる任意の生成物を包含することが意図されている。したがって、本発明の医薬組成物は、本発明の化合物とそれらの薬学的に許容可能な担体との混合により生成される任意の組成物を包含することが意図されている。
【0048】
本明細書で使用される「薬学的に許容可能な添加物」及び「薬学的に許容可能な担体」との用語は、薬剤投与に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、並びに等張剤及び吸収遅延剤などを含むことが意図されている。「薬学的に許容可能な添加物」及び「薬学的に許容可能な担体」との用語は、活性薬剤の対象への投与、及び対象による吸収を補助し、患者に対する顕著に有害な毒性効果を引き起こさずに本発明の組成物に含まれ得る物質をいう。薬学的に活性な物質に対してそのような溶剤及び薬剤を用いることは、当技術分野で周知である。任意の従来の溶剤又は薬剤が活性薬剤に不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用が意図されている。追加の活性化合物が組成物に取り込まれてもよい。薬学的に許容可能な添加物の非限定的な例としては、水、NaCl、生理食塩水、乳酸リンゲル液、通常のショ糖、通常のグルコース、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、及び着色剤などが挙げられる。当業者であれば、本発明において他の薬学的添加物も有用であることを認識し得る。
【0049】
本明細書で使用される「投与する」、「投与している」、「投与される」、又は「投与」との用語は、対象又は患者に化合物又は組成物を提供することをいう。投与は、経口投与によるものであってもよい(すなわち、対象は、化合物又は組成物を、丸剤、カプセル剤、液体、又は口経由での投与に適した他の形態として、口経由で受け取る)。経口投与は、頬側投与によるものであってもよい(化合物又は組成物が口内で、例えば舌下で、保持され、そこで吸収される)。投与は注射によるもの、すなわち、ニードル、マイクロニードル、加圧注射器、あるいは皮膚に穴を開けるか又は化合物若しくは組成物を対象の皮膚を強制的に通過させる他の手段を経由した化合物又は組成物の送達であってもよい。注射は静脈内注射(すなわち、静脈中への注射)、動脈内注射(すなわち、動脈中への注射)、腹腔内注射(すなわち、腹腔中への注射)、筋肉内注射(筋肉中への注射)、又は他の注射経路であってもよい。投与の経路としては、直腸投与、膣内投与、経皮投与、(例えば吸入による)肺経由の投与、(例えば化合物又は組成物を含むインプラントから皮膚中への吸収による)皮下投与、又は他の経路が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される「併用療法」との用語は、疾患を治療するために2種類以上の医薬品を対象に投与することをいう。2種類の薬剤は同時に投与されてもよく、治療期間の全期間又は一部の期間の間に任意の順番で連続的に投与されてもよい。2種類以上の薬剤は、同一の投与計画又は異なった投与計画に従って投与されてもよい。いくつかの場合では、一方の薬剤は定期的な治療計画に従って投与され、もう一方の薬剤は間欠的に投与される。いくつかの場合では、両方の薬剤が間欠的に投与される。いくつかの実施形態では、一方の医薬品(例えば、非ステロイド性SGRA)は毎日投与され、もう一方の医薬品(例えば、化学療法剤)は2日おき、3日おき、又は4日おきに投与される。
【0051】
本明細書で使用される「同時投与」との用語は、2種類の組成物を同時に、又は互いに短時間以内、例えば互いに約0.5時間以内、約1時間以内、約2時間以内、約4時間以内、約6時間以内、約8時間以内、約10時間以内、約12時間以内、約16時間以内、約20時間以内、又は約24時間以内に投与することをいう。
【0052】
本明細書で使用される「有効量」又は「治療量」との用語は、治療中の疾患の少なくとも1つの症状の治療、除去、又は軽減に効果的な医薬品の量をいう。いくつかの場合では、「治療的有効量」又は「有効量」は、検出可能な治療効果又は阻害効果を示すのに有用な機能性薬剤又は医薬組成物の量をいうことがある。効果は当技術分野で知られているに任意の分析により検出され得る。有効量は、患者における有益な応答をもたらすのに効果的な量であり得る。有効量は、抗腫瘍応答を引き起こすのに有効な量であり得る。有効量は、標的細胞の増殖阻害又は死をもたらす、レシピエント対象における液性免疫応答及び/又は細胞性免疫応答を引き起こすのに有効な量であり得る。本開示の目的のため、チェックポイント阻害剤の治療量は、腫瘍量を減少させるか、がんの改善に関連した他の所望の有益な臨床転帰をもたらし得る量である。
【0053】
本明細書で使用される「グルココルチコイド受容体調節物質(glucocorticoid receptor modulator)による治療について特定されない」又は「グルココルチコイド受容体拮抗物質(glucocorticoid receptor antagonist)による治療について特定されない」との表現は、脂肪肝を除く、グルココルチコイド受容体拮抗物質により効果的に治療可能となると医学界に認識されている任意の症状を患っていない患者をいう。当技術分野で知られており、グルココルチコイド受容体拮抗物質により効果的に治療可能となると医学界に認められている症状としては、インターフェロン-α治療に関連した精神病、精神病による大鬱、認知症、ストレス性疾患、自己免疫疾患、神経損傷、及びクッシング症候群が挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、「~から本質的になる」との用語は、唯一の活性成分は示された活性成分であり、一方で、製剤を安定化、保存などするためのものであるが示された活性成分の治療効果には直接関与しない他の化合物が含まれ得る、製剤中の組成物をいう。いくつかの実施形態では、「~から本質的になる」との用語は、活性成分及び活性成分の放出を容易にする構成成分を含む組成物をいうことがある。例えば、組成物は、長時間にわたる活性成分の持続放出を対象にもたらす1又は複数の構成成分を含み得る。いくつかの実施形態では、「~からなる」との用語は、活性成分及び薬学的に許容可能な担体又は添加剤を含む組成物をいう。
【0055】
本明細書で使用される「ステロイド」及び「ステロイド群」との用語、及びそれらを含むグルココルチコイド受容体拮抗物質との関連における「ステロイド骨格」との表現は、内在性のステロイド性グルココルチコイド受容体リガンドであるコルチゾールの基本構造の改変物を含むグルココルチコイド受容体拮抗物質をいう。ステロイド骨格の基本構造は式Iにより定められる。
【化2】
【0056】
「グルココルチコステロイド」(「GC」)又は「グルココルチコイド」との用語は、グルココルチコイド受容体に結合するステロイドホルモンをいう。グルココルチコステロイドは、通常、21個の炭素、環Aにα,β-不飽和ケトン、及び環Dに結合したα-ケトン基を有することにより特徴付けられる。これらはC-11、C-17、及びC-19での酸素化又は水素化の程度において異なっている(Rawn,“Biosynthesis and Transport of Membrane Lipids and Formation of Cholesterol Derivatives,” in Biochemistry, Daisy et al. (eds.), 1989, pg. 567を参照)。
【0057】
ミネラルコルチコイド受容体(MR)は、I型グルココルチコイド受容体(GRI)としても知られており、ヒトにおいてはアルドステロンにより活性化される。
【0058】
「コルチゾール」との用語は、副腎の束状帯により産生される天然のグルココルチコイドホルモン(ヒドロコルチゾンとしても知られている)をいう。コルチゾールは以下の構造を有する。
【化3】
【0059】
「ミフェプリストン」との用語は、以下の構造を有する、11β-(4-ジメチルアミノフェニル)-17β-ヒドロキシ-17α-(1-プロピニル)-エストラ-4,9-ジエン-3-オン)をいう。
【化4】

ミフェプリストンは、RU486、RU38.486、又は17-β-ヒドロキシ-11-β-(4-ジメチル-アミノフェニル)-17-α-(1-プロピニル)-エストラ-4,9-ジ-エン-3-オン)ともいわれる。ミフェプリストンは、グルココルチコイド受容体(GR)、プロゲステロン受容体(PR)、アンドロゲン受容体(AR)に結合するので、GR選択的ではない。
【0060】
「プレドニゾン」との用語は、以下の構造を有する、合成グルココルチコイドである17α,21-ジヒドロキシプレグナ-1,4-ジエン-3,11,20-トリオンをいう。
【化5】
【0061】
本明細書で使用される「グルココルチコイド受容体」(「GR」)との用語は、コルチゾール及び/又はコルチゾール類似体に特異的に結合する細胞内受容体のファミリーをいう。グルココルチコイド受容体は、コルチゾール受容体ともいわれる。この用語には、GRのアイソフォーム、組換え型GR、及び変異型GRが含まれる。「グルココルチコイド受容体」(「GR」)は、コルチゾール及び/又はデキサメタゾンなどのコルチゾール類似体に特異的に結合するII型GRをいう(例えば、Turner & Muller, J. Mol. Endocrinol. October 1, 2005 35 283-292を参照)。
【0062】
「グルココルチコイド受容体調節物質」(GRM)との用語は、作動物質(agonist)のGRへの結合に関連した任意の生物学的応答を調節する任意の化合物をいう。例えば、デキサメタゾンなどの作動物質として機能するGRMは、HepG2細胞(ヒト肝細胞癌細胞株、英国、ECACC)においてチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を増大させる。ミフェプリストンなどの拮抗物質として作用するGRMは、HepG2細胞においてチロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)の活性を低減させる。
【0063】
「グルココルチコイド受容体作動物質(Glucocorticoid receptor antagonist)」(GRA)は、作動物質のGRへの結合に関連した任意の生物学的応答を阻害する任意の化合物をいう。したがって、GR拮抗物質は、化合物がデキサメタゾンの効果を阻害する能力を測定することにより同定され得る。TAT活性は、A. Ali et al., J. Med. Chem., 2004, 47, 2441-2452により文献に概説されるように測定され得る。調節物質は、IC50(50%阻害濃度)が10マイクロモル未満である化合物である。以下の実施例1を参照のこと。
【0064】
本明細書で使用される「選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質」(SGRA)との用語は、作用物質へのGRの結合に関連した任意の生物学的応答を阻害する任意の組成物又は化合物をいう(阻害は化合物の非存在下での応答に対して決定される)。「選択的」であることにより、薬剤は、プロゲステロン受容体(PR)、ミネラルコルチコイド受容体(MR)、又はアンドロゲン受容体(AR)などの他の核受容体ではなく、GRに優先的に結合する。選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質は、MR、AR、又はPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方、又はMR、AR、及びPRに対する親和性の10倍以上(1/10のK値)である親和性でGRに結合することが好ましい。より好ましい実施形態では、選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質は、MR、AR、又はPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方、又はMR、AR、及びPRに対する親和性の100倍以上(1/100のK値)である親和性でGRに結合する。他の実施形態では、選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質は、MR、AR、又はPR、MRとPRの両方、MRとARの両方、ARとPRの両方、又はMR、AR、及びPRに対する親和性の1000倍以上(1/1000のK値)である親和性でGRに結合する。
【0065】
本明細書で使用される、GRAとの関連においての「非ステロイド性骨格」との表現は、4個の縮合環に結合された17個の炭素原子を含むステロイド骨格を有するコルチゾールと構造的相同性を共有していない、又は前記コルチゾールの改変ではない、GRAをいう。そのような化合物としては、部分的にペプチド性、擬ペプチド性、及び非ペプチド性の分子実体を含む、タンパク質の合成模倣物及び類似体が挙げられる。
【0066】
非ステロイド性選択的GRA化合物としては、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン構造(ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン骨格とも呼ばれることがある)を含む化合物及びオクタヒドロ縮合アザデカリン構造(オクタヒドロ縮合アザデカリン骨格とも呼ばれることがある)を含む化合物を含む、縮合アザデカリン構造(縮合アザデカリン骨格とも呼ばれることがある)を含む化合物が挙げられる。縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性選択的GRA化合物としては、米国特許第7,928,237号及び同第8,461,172号に記載及び開示されるものが挙げられる。ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性選択的GRA化合物としては、米国特許第8,859,774号、米国特許第9,273,047号、米国特許第9,707,223号、及び米国特許第9,956,216号に開示されるものが挙げられる。オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性選択的GRA化合物としては、米国特許第10,047,082号に記載及び開示されるものが挙げられる。上記及び下記において、本明細書に開示される全ての特許、特許公報、及び特許出願は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0067】
ある実施形態では、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン化合物(「レラコリラント」及び「CORT125134」としても知られている米国特許第8,859,774号の実施例18)である。
【化6】
【0068】
ある実施形態では、ヘテロアリール-ケトン縮合アザデカリンGRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ 3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノン化合物(「CORT113176」と呼ばれる米国特許第8,859,774号の実施例1)である。
【化7】
【0069】
ある実施形態では、オクタヒドロ縮合アザデカリンGRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノン化合物(「エキシコリラント」又は「CORT125281」と呼ばれる米国特許第10,047,082号の実施例2C)である。
【化8】
【0070】
ある実施形態では、オクタヒドロ縮合アザデカリンGRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-4-イル)メタノン*化合物(「CORT125329」と呼ばれる米国特許第10,047,082号の実施例2AJ)である。
【化9】
【0071】
本発明の化合物の記載は、当業者に知られている化学結合の原則に限定される。したがって、ある基が1又は複数の数の置換基により置換されていてもよく、そのような置換基は、化学結合の原則に従い、且つ本質的に不安定ではない化合物、及び/又は水性条件、中性条件、又は生理学的条件などの周囲条件下で不安定である可能性があると当業者に知られているであろう化合物を産生するように選択される。
【0072】
C.グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)
一般に、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者におけるNLRの正常化は、任意の化学構造又は作用機序の有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)の投与により達成され得る。
【0073】
ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性選択的GRAとしては、米国特許第8,859,774号に開示されるように調製され得る、米国特許第8,859,774号に記載されるものが挙げられ、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。そのような例示的GRAはSGRAであってもよい。いくつかの場合では、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含むGRAは以下の構造を有しているか、又はその塩若しくは異性体である。
【化10】

式中、
は、R1aからそれぞれ独立に選択される1~4個の基で置換されていてもよい、N、O、及びSからなる群からそれぞれ独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環のヘテロアリール環であり、
1aはそれぞれ、水素、C-Cアルキル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、-CN、N-オキシド、C-Cシクロアルキル、及びC-Cヘテロシクロアルキルからなる群から独立に選択され、
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、及びヘテロアリール環からなる群から選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環及びヘテロアリール環は、N、O、及びSからなる群からそれぞれ独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環である、
はそれぞれ、水素、C-Cアルキル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cアルキル-C-Cアルコキシ、-CN、-OH、-NR2a2b、-C(O)R2a、-C(O)OR2a、-C(O)NR2a2b、-SR2a、-S(O)R2a、-S(O)2a、C3-8シクロアルキル、及びC-Cヘテロシクロアルキルからなる群から独立に選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は1~4個のR2C基で置換されていてもよい、
あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR基が結合してオキソ基(=O)を形成し、
あるいは、2個のR基が結合して、N、O、及びSからなる群からそれぞれ独立に選択される1~3個のヘテロ原子を有する5~6員環のヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は1~3個のR2d基で置換されていてもよい、
2a及びR2bは、水素及びC-Cアルキルからなる群からそれそれ独立に選択され、
2cはそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、-CN、及び-NR2a2bからなる群からそれそれ独立に選択され、
2dはそれぞれ、水素及びC-Cアルキルからなる群からそれそれ独立に選択されるか、又は同じ環原子に結合している2個のR2d基が結合して(=O)を形成し、
は、1~4個のR3a基でそれぞれ置換されていてもよい、フェニル及びピリジルからなる群から選択され、
3aはそれぞれ、水素、ハロゲン、及びC-Cハロアルキルからなる群から独立に選択され、
下付き文字nは0~3の整数である
【0074】
オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む例示的な非ステロイド性選択的GRAの例としては、米国特許第10,047,082号に開示されるように調製され得る、米国特許第10,047,082号に記載されるものが挙げられ、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。そのような例示的GRAはSGRAであってもよい。いくつかの場合では、オクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含むGRAは以下の構造を有しているか、又はその塩若しくは異性体である。
【化11】

式中、
は、R1aからそれぞれ独立に選択される1~4個の基で置換されていてもよい、ピリジン及びチアゾールからなる群から選択され、
1aはそれぞれ、水素、C-Cアルキル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、N-オキシド、及びC-Cシクロアルキルからなる群から独立に選択され、
環Jは、フェニル、ピリジン、ピラゾール、及びトリアゾールからなる群から選択され、
はそれぞれ、水素、C-Cアルキル、ハロゲン、C-Cハロアルキル、及び-CNからなる群から独立に選択され、
3aはFであり、
下付き文字nは0~3の整数である。
【0075】
D.選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質の同定
非ステロイド性試験化合物が非ステロイド性選択的GRA(非ステロイド性SGRA)であるかどうか決定するため、最初に、化合物はGRに結合して、GR介在性の活性を阻害する能力について測定分析され、その化合物がグルココルチコイド受容体拮抗物質であるかを決定される。化合物は、グルココルチコイド受容体拮抗物質であると確認された場合、化合物が非GRタンパク質(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、又はミネラルコルチコイド受容体など)と比較してGRに特異的に結合可能であるかを決定するための選択性試験を受ける。ある実施形態では、SGRAは、十分に高い親和性で、例えば、非GRタンパク質よりも10倍以上高い親和性で、GRに結合する。SGRAは、非GRタンパク質への結合と比べて、GRへの結合について100倍、1000倍、又はそれ以上の選択性を示してもよい。
【0076】
i.結合
試験化合物がグルココルチコイド受容体に結合する能力は、種々の分析を用いて、例えば、試験化合物が、グルココルチコイド受容体への結合について、デキサメタゾンなどのグルココルチコイド受容体リガンドと競合する能力をスクリーニングすることにより測定され得る。当業者は、そのような競合的結合分析を実施するための多くの方法が存在することを認識するであろう。いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体は、標識グルココルチコイド受容体リガンドとプレインキュベートされ、次に、試験化合物と接触される。この種類の競合的結合分析はまた、本明細書において結合置換分析といわれることがある。グルココルチコイド受容体に結合した標識リガンドの量の減少は、結合試験化合物がグルココルチコイド受容体に結合することを示す。いくつかの場合では、標識リガンドは蛍光標識化合物(例えば、蛍光標識ステロイド又は蛍光標識ステロイド類似体)である。あるいは、試験化合物のグルココルチコイド受容体への結合は、標識試験化合物を用いて直接的に測定され得る。後者の種類の分析は、直接結合分析とよばれる。
【0077】
直接結合分析及び競合結合分析はいずれも種々の異なる形式で用いられ得る。前記形式は免疫測定法及び受容体結合分析において用いられるものと同じであってもよい。競合結合分析及び直接結合分析を含む、結合分析についての異なった形式の記載に関しては、それぞれが参照により本明細書に取り込まれる、Basic and Clinical Immunology 7th Edition (D. Stites and A. Terr ed.) 1991; Enzyme Immunoassay, E.T. Maggio, ed., CRC Press, Boca Raton, Florida (1980);及び“Practice and Theory of Enzyme Immunoassays,” P. Tijssen, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Elsevier Science Publishers B.V. Amsterdam (1985)を参照のこと。
【0078】
固相競合結合分析において、例えば、試料化合物は、固体表面に結合した結合剤上の特異的結合部位について、標識分析物と競合し得る。この種類の形式において、標識分析物はグルココルチコイド受容体リガンドであってもよく、結合剤は固相に結合したグルココルチコイド受容体であってもよい。あるいは、標識分析物は標識グルココルチコイド受容体であってもよく、結合剤は固相グルココルチコイド受容体リガンドであってもよい。捕捉剤に結合した標識分析物の濃度は、結合分析における試験化合物の競合能力と反比例している。
【0079】
あるいは、競合結合分析は液相で行われてもよく、当技術分野で知られている種々の技術を用いて、結合した標識タンパク質を未結合の標識タンパク質から分離してもよい。例えば、結合リガンドと過剰な結合リガンドとを区別する、又は結合試験化合物と過剰な未結合試験化合物とを区別するためのいくつかの手段が開発されている。これらには、ショ糖勾配中での沈降、ゲル電気泳動法、又はゲル等電点電気泳動法;受容体-リガンド複合体の硫酸プロタミンによる沈殿又はヒドロキシアパタイト上への吸着;及びデキストランコーティングチャコール(DCC)上への吸着又は固定化抗体への結合による未結合化合物若しくは未結合リガンド除去による結合複合体の同定が含まれる。分離に続いて、結合したリガンド又は試験化合物の量が決定される。
【0080】
あるいは、分離ステップが必要とされない同種結合分析が行われてもよい。例えば、グルココルチコイド受容体上の標識は、グルココルチコイド受容体のそのリガンド又は試験化合物への結合により変化されてもよい。標識グルココルチコイド受容体におけるこの変化は、標識から発せられるシグナルの減少又は増加をもたらし、結合分析の最後の標識の測定により結合状態のグルココルチコイド受容体の検出又は定量が可能となる。多種多様の標識が使用され得る。化合物はいくつかの方法のうちのいずれかにより標識されてもよい。有用な放射性標識としては、H、125I、35S、14C、又は32Pを取り込んだものが挙げられる。有用な非放射性標識としては、フルオロフォア、化学発光剤、燐光剤、及び電気化学発光剤などを取り込んだものが挙げられる。蛍光剤は、蛍光異方性測定法及び/又は蛍光偏光法などのタンパク質構造のシフトを検出するために用いられる分析技術において特に有用である。標識の選択は要求される感受性、化合物との複合化の容易性、安定性要求、及び利用可能な測定手段に依存する。使用可能な種々の標識システム及びシグナル発生システムの概要は、全ての目的についてその全体が参照により本明細書取り込まれる米国特許第4,391,904号を参照のこと。標識は、当技術分野で周知の方法により、所望の分析構成成分に直接的又は間接的に連結されてもよい。いくつかの場合では、試験化合物は、GRに対して既知の親和性を有する蛍光標識リガンド(例えば、ステロイド又はステロイド類似体)の存在下でGRと接触され、標識リガンドの蛍光偏光を測定することにより結合標識リガンド又は遊離標識リガンドの量が推定される。
【0081】
ii.活性
1)HepG2チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)分析
GRに対する所望の結合親和性を示した化合物は、GR介在性活性を阻害する活性について試験される。化合物は通常、試験化合物がデキサメタゾンによるチロシンアミノトランスフェラーゼ活性の誘導を阻害する能力を評価する、チロシンアミノトランスフェラーゼ分析(TAT分析)を受ける。実施例1参照。本明細書に開示される方法に適したGR調節物質は、10マイクロモル未満のIC50(50%阻害濃度)を有する。他の分析は、これらに限定されないが以下に記載されるものを含み、化合物のGR調節活性を確認するためにも開発され得る。
【0082】
2)細胞をベースとした分析
グルココルチコイド受容体を含む細胞全体又は細胞分画が関与する細胞をベースとした分析も、試験化合物のグルココルチコイド受容体への結合又は活性調節を分析するために用いられ得る。本明細書に開示される方法に用いられ得る例示的な細胞の種類としては、例えば、好中球、単球、マクロファージ、好酸球、好塩基球、マスト細胞、及びリンパ球(T細胞及びB細胞など)などの白血球、白血病細胞、バーキットリンパ腫細胞、(マウス乳癌ウイルス細胞を含む)腫瘍細胞、内皮細胞、線維芽細胞、心臓細胞、筋肉細胞、乳腺腫瘍細胞、卵巣がん細胞腫、子宮頸癌、神経膠芽腫、肝臓細胞、腎臓細胞、及び神経細胞を含む任意の哺乳類細胞、並びに酵母を含む真菌細胞が挙げられる。細胞は初代細胞、腫瘍細胞、又は他の種類の不死化細胞株であり得る。当然ながら、グルココルチコイド受容体は、内在型のグルココルチコイド受容体を発現しない細胞で発現され得る。
【0083】
いくつかの場合では、グルココルチコイド受容体の断片及びタンパク質融合体は、スクリーニングに用いられ得る。グルココルチコイド受容体リガンドと結合について競合する分子が所望される場合、用いられるGR断片はリガンド(例えば、デキサメタゾン)に結合可能な断片である。あるいは、グルココルチコイド受容体に結合する分子を同定するための標的として、GRの任意の断片が用いられ得る。グルココルチコイド受容体断片は、例えば、20アミノ酸以上、30アミノ酸以上、40アミノ酸以上、50アミノ酸以上、グルココルチコイド受容体の1アミノ酸を除いた全てを含むタンパク質までの任意の断片を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、グルココルチコイド受容体活性化により引き起こされるシグナル伝達の低減は、グルココルチコイド受容体拮抗物質を同定するために用いられる。グルココルチコイド受容体のシグナル伝達活性は、多くの方法で決定され得る。例えば、シグナル伝達活性を決定するために下流の分子事象がモニタリングされ得る。下流の事象としては、グルココルチコイド受容体の刺激の結果として生じる活性化又は兆候が挙げられる。未改変細胞における転写活性化及び拮抗作用の機能評価において有用な例示的な下流事象としては、多数のグルココルチコイド応答配列(GRE)依存性遺伝子(PEPCK、チロシンアミノトランスフェラーゼ、アロマターゼ)の上方制御が挙げられる。さらに、グルココルチコイド介在性下方制御を示す骨芽細胞におけるオステオカルシン発現、PEPCK及びグルコース-6-ホスフェート(G-6-Pase)のグルココルチコイド介在性上方制御を示す初代肝細胞など、GR活性化に対して感受性がある特定の細胞型が用いられてもよい。GRE介在性遺伝子発現は、周知のGRE制御性配列(例えば、レポーター遺伝子コンストラクトの上流に遺伝子導入されたマウス乳癌ウイルス細胞プロモーター(MMTV))を用いる遺伝子導入細胞株においても実証されてきた。有用なレポーター遺伝子コンストラクトの例としては、ルシフェラーゼ(luc)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)が挙げられる。転写抑制の機能評価は、単球又はヒト皮膚線維芽細胞などの細胞株において行われ得る。有用な機能分析としては、IL-1β刺激性IL-6発現、コラゲナーゼ、シクロオキシゲナーゼ-2、及び種々のケモカイン(MCP-1、RANTES)の下方制御、LPS刺激性サイトカイン放出(例えば、TNFα)、又は遺伝子導入細胞株におけるNFkB転写因子又はAP-1転写因子により制御される遺伝子の発現を測定する分析が挙げられる。
【0085】
全細胞分析において試験される化合物は、細胞毒性分析においても試験され得る。細胞毒性分析は、認知された効果が、どの程度非グルココルチコイド受容体結合細胞効果によるものであるのかを決定するために用いられる。例示的な実施形態では、細胞毒性分析は、恒常的活性型細胞を試験化合物と接触させることを含む。細胞活性の任意の減少は、細胞毒性効果を示す。
【0086】
3)追加分析
本明細書に開示される方法において利用される組成物を同定するために用いられ得る多くの分析の他の例は、インビボでのグルココルチコイド活性に基づく分析である。例えば、推定GR調節物質が、グルココルチコイドにより刺激される、細胞のDNA中への3H-チミジンの取り込みを阻害する能力を評価する分析が用いられ得る。あるいは、推定GR調節物質は、肝細胞腫組織培養GRへの結合について3H-デキサメタゾンと競合する(例えば、Choi, et al., Steroids 57:313-318, 1992を参照)。別の例として、推定GR調節物質が、3H-デキサメタゾン-GR複合体の核結合を阻害する能力が用いられ得る(Alexandrova et al., J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 41:723-725, 1992)。推定GR調節物質をさらに同定するために、(Jones, Biochem J. 204:721-729, 1982に記載されるような)受容体結合動態によってグルココルチコイド作動物質とグルココルチコイド調節物質とを区別可能な動態分析も用いられ得る。
【0087】
他の実例において、Daune, Molec. Pharm. 13:948-955, 1977、及び米国特許第4,386,085号に記載される分析が抗グルココルチコイド活性を同定するために用いられ得る。簡潔言うと、副腎摘出されたラットの胸腺細胞が、種々の濃度の試験化合物(推定GR調節物質)と共にデキサメタゾンを含む栄養培地中で培養される。この細胞培養物にH-ウリジンが添加され、さらに培養され、ポリヌクレオチド中への放射性標識の取り込みの程度が測定される。グルココルチコイド作動物質は、取り込まれるH-ウリジンの量を低減させる。したがって、GR調節物質はこの効果と対抗するであろう。
【0088】
iii.選択性
上記で選択されたGR拮抗物質は、次に、それらがSGRAであるかどうかを決定するための選択性分析を受ける。通常、選択性分析には、インビトロでグルココルチコイド受容体に結合する化合物を非グルココルチコイド受容体タンパク質への結合の程度について試験することが含まれる。上記のように、選択性分析は、インビトロ又は細胞に基づいた系において実施されてもよい。結合は、抗体、受容体、及び酵素などの任意の適切な非グルココルチコイド受容体タンパク質に対して試験されてもよい。例示的な実施形態では、非コルチコイド受容体結合タンパク質は、細胞表面受容体又は核受容体である。他の例示的実施形態では、非グルココルチコイド受容体タンパク質は、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、アンドロゲン受容体、又はミネラルコルチコイド受容体などのステロイド受容体である。
【0089】
MRと比較したGRに対する拮抗物質の選択性は、当技術分野で知られている種々の分析を用いて測定され得る。例えば、特定の拮抗物質は、拮抗物質がMRと比較してGRに結合する能力を測定することにより同定され得る(例えば、米国特許第5,606,021号、同5,696,127号、同5,215,916号、及び同5,071,773号を参照)。そのような分析は、直接結合分析、又は既知のリガンドの存在下で精製GR又はMRへの競合的結合を評価することのいずれかを用いて行われ得る。例示的な分析において、グルココルチコイド受容体又はミネラルコルチコイド受容体(例えば、米国特許第5,606,021号を参照)を高レベルで安定的に発現する細胞が精製受容体源として用いられる。次に、受容体に対するリガンドの親和性が直接的に測定される。次に、MRと比較してGRについて10倍以上、100倍以上、しばしば1000倍以上高い親和性を示すこれらのGR調節物質は、本明細書に開示される方法における使用のために選択される。
【0090】
選択性分析はまた、GR介在性活性を阻害するがMR介在性活性は阻害しない能力を分析することを含んでいてもよい。そのようなGR特異的調節物質を同定する一つの方法は、拮抗物質がレポーターコンストラクトの活性化を阻害する能力を遺伝子導入分析を用いて評価することである(例えば、Bocquel et al, J. Steroid Biochem Molec. Biol. 45:205-215, 1993;米国特許第5,606,021号、同5,929,058号を参照)。例示的な遺伝子導入分析において、受容体をコードする発現プラスミド、及び受容体特異的調節エレメントに連結されたレポーター遺伝子を含むレポータープラスミドは、適切な受容体陰性宿主細胞中に同時遺伝子導入される。次に、遺伝子導入された宿主細胞は、受容体プラスミドのホルモン応答のプロモーター/エンハンサー配列を活性化可能な、コルチゾール又はその類似体などのホルモンの存在下及び非存在下で培養される。次に、遺伝子導入されて培養された宿主細胞は、レポーター遺伝子配列の産物の誘導(すなわち、存在)についてモニタリングされる。最後に、(発現プラスミド上の受容体DNA配列によりコードされ、遺伝子導入されて培養された宿主細胞中で産生される)ホルモン受容体タンパク質の発現及び/又はステロイド結合能力は、拮抗物質の存在下及び非存在でのレポーター遺伝子の活性を決定することにより測定される。化合物の拮抗物質活性は、GR受容体及びMR受容体の既知の拮抗物質と比較して決定されてもよい(例えば、米国特許第5,696,127号を参照)。次に、参照拮抗化合物に対して各化合物について観察された最大反応割合として有効性が報告される。次に、MR、PR、又はARと比較してGRに対して100倍以上、しばしば1000倍またはそれ以上の活性を示すGR調節物質は、本明細書に開示される方法における使用のために選択される。
【0091】
D.医薬組成物及び投与
いくつかの実施形態では、本発明は、NLRが高い、がん治療を受けている、がん患者におけるNLRを正常化するための医薬組成物であって、薬学的に許容可能な添加剤及びGRAを含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は薬学的に許容可能な添加剤及びSGRAを含む。好ましい実施形態では、医薬組成物は薬学的に許容可能な添加剤及び非ステロイド性SGRAを含む。
【0092】
非ステロイド性SGRAは、多種多様の経口投与剤形態、非経口投与剤形態、及び局所投与剤形態で調製及び投与され得る。経口調製物としては、患者による摂取に適した錠剤、丸剤、粉末剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、トローチ剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液などが挙げられる。非ステロイド性SGRAはまた、注射により、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、又は腹腔内に投与され得る。また、非ステロイド性SGRAは、吸入、例えば鼻腔内に投与され得る。さらに、非ステロイド性SGRAは、経皮的に投与され得る。したがって、本発明はまた、薬学的に許容可能な担体又は添加剤、及び非ステロイド性SGRAを含む医薬組成物を提供する。
【0093】
非ステロイド性SGRAから医薬組成物を調製するために、薬学的に許容可能な担体は固体又は液体のいずれであってもよい。固体形態の調製物としては、粉末剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシエ剤、坐薬、及び分散性顆粒が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、又はカプセル化材料としても機能する1又は複数の物質であってもよい。製剤化及び投与のための技術の詳細は、科学文献及び特許文献に十分に記載される(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co, Easton PA (「Remington」)の最新版を参照)。
【0094】
粉末では、担体は、微細化活性成分である非ステロイド性SGRAとの混合物である、微粉化固体である。錠剤では、活性成分は、必要な結合特性を有する担体と適切な割合で混合され、所望の形状及び大きさに圧縮される。
【0095】
粉末及び錠剤は、好ましくは、5%又は10%~70%の活性成分を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、及びココアバターである。「調製」との用語は、カプセル剤を提供する担体としてのカプセル化材料を用いた活性成分の製剤化を含むことを意図しており、カプセル剤は、他の担体を伴って又は他の担体を伴わずに活性成分が担体により囲まれており、それにより結合している。同様に、カシエ剤及びトローチ剤も含まれる。錠剤、粉末剤、カプセル剤、丸剤、カシエ剤、及びトローチ剤は、経口投与に適した固体製剤として用いられ得る。
【0096】
適切な固体添加剤は、炭水化物賦形剤及びタンパク質賦形剤であり、これらに限定されないが、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖;トウモロコシ、小麦、米、馬鈴薯、又は他の植物のデンプン:メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;及びアラビアゴム及びトラガントゴムを含むゴム;並びにゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質が挙げられる。所望される場合、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸の塩などの崩壊剤及び可溶化剤が添加されてもよい。
【0097】
糖衣剤の芯剤は、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタンを含んでいてもよい濃縮糖溶液、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物などの適切なコーティング剤と共に提供される。染料又は顔料は、製品の識別又は活性成分の量(すなわち、用量)を特徴付けるため、錠剤又は糖衣剤のコーティング剤に添加されてもよい。本明細書に開示される医薬調製物はまた、例えば、ゼラチンで作られた押し込み型カプセル剤、並びにゼラチンとグリセロール又はソルビトールなどのコーティング剤とで作られた軟密封カプセル剤を用いて経口的に用いられ得る。押し込み型カプセル剤は、ラクトース又はデンプンなどの賦形剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び、任意に安定化剤と混合されたGR調節物質を含み得る。軟カプセル剤では、GR調節化合物は、安定剤を用いて、又は安定剤を用いずに、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体中に溶解又は懸濁されてもよい。
【0098】
液体形態の調製物としては、溶液、懸濁液、及び乳濁液、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射のために、液体調製物は水性ポリエチレングリコール溶液中の溶液に製剤化され得る。
【0099】
経口での使用に適した水性溶液は、活性成分を水中に溶解し、所望により、適切な着色剤、香味剤、安定剤、及び増粘剤を添加することにより調製され得る。経口での使用に適した水性懸濁液は、天然ゴム又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントゴム及びアカシアゴムなどの粘調性材料、並びに天然のリン脂質(例えば、レシチン)、脂肪酸とアルキレンオキシドの縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、長鎖脂肪酸アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸とヘキシトールに由来する部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレイン酸)、又は脂肪酸とヘキシトール無水物に由来する部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸)などの分散剤又は湿潤剤と共に、微細化活性成分を水中に分散することにより作製され得る。水性懸濁液はまた、エチルp-ヒドロキシ安息香酸又はn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸などの1種類又は複数種類の保存剤、1種類又は複数種類の着色剤、1種類又は複数種類の香味剤、及びショ糖、アスパルテーム、又はサッカリンなどの1種類又は複数種類の甘味剤を含み得る。製剤はオスモル濃度について調整され得る。
【0100】
経口投与のために使用直前に液体形態の調製物に変換される固体形態の調製物も含まれる。そのような液体形態としては、溶液、懸濁液、及び乳濁液が挙げられる。これらの調製物は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工甘味料及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、及び可溶化剤などを含んでいてもよい。
【0101】
油懸濁液は、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、又はココナッツ油などの植物油中、又は液体パラフィンなどの鉱物油中、又はこれらの混合物中に非ステロイド性SGRAを懸濁することにより製剤化され得る。油懸濁液は、ミツロウ、固形パラフィン、又はセチルアルコールなどの増粘剤を含み得る。味の良い経口調製物を提供するために、グリセロール、ソルビトール、又はスクロースなどの甘味剤が添加され得る。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することにより保存され得る。注射可能な油性溶剤の例は、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照のこと。本明細書に開示される医薬製剤は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、上記の植物油若しくは鉱物油、又はこれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤としては、天然ゴム(アカシアゴム及びトラガントゴム)、天然リン脂質(例えば、大豆レシチン)、脂肪酸とヘキシトール無水物に由来するエステル又は部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレイン酸)、及びこれらの部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレイン酸)が挙げられる。乳化剤はまた、シロップ剤及びエリキシル剤の製剤において、甘味剤及び香味剤を含み得る。そのような製剤は、粘滑剤、保存剤、又は着色剤を含んでいてもよい。
【0102】
非ステロイド性SGRAは、経皮的に、局所経路により、アプリケータースティック、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、ペースト剤、ゼリー剤、ペイント剤、粉末剤、及びエアロゾルとして製剤化されて送達され得る。
【0103】
非ステロイド性SGRAはまた、体内での持続放出のための微粒子(microsphere)として送達され得る。例えば、微粒子は、皮下で持続放出する薬剤含有微粒子の皮内注射により(Rao, J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645, 1995を参照)、生分解性で注射可能なゲル製剤として(例えば、Gao Pharm. Res. 12:857-863, 1995を参照)、又は経口投与のための微粒子として(例えば、Eyles, J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674, 1997を参照)投与され得る。経皮経路及び皮内経路はいずれも、数週間から数カ月の間の一定な送達を提供する。
【0104】
本明細書に開示される医薬製剤は塩として提供されてもよく、これらに限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、酪酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などの多くの酸を用いて形成され得る。塩は、水性溶媒又は他のプロトン性溶媒中で可溶性である傾向があり、対応する遊離塩基の形態である。他の場合には、調製物は、pHの範囲が4.5~5.5である、1mM~50mM ヒスチジン、0.1%~2% スクロース、2%~7% マンニトール中の凍結乾燥粉末であってもよく、使用前に緩衝液と混合される。
【0105】
別の実施形態では、本明細書に開示される製剤は、例えば、リポソームに結合された又はオリゴヌクレオチドに直接結合させたリガンドであって、細胞の表面膜タンパク質受容体に結合してエンドサイトーシスを引き起こすリガンドを用いることにより、細胞膜と融合するか又は取り込まれるリポソームを用いて送達され得る。リポソームを用いることにより、特に、リポソーム表面が標的細胞特異的なリガンド、又は選択的に特定の器官を対象にするリガンドを有する場合、GR調節物質の送達をインビボで標的細胞中に集中させることができる(例えば、Al-Muhammed, J. Microencapsul. 13:293-306, 1996; Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708, 1995; Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587, 1989を参照)。
【0106】
医薬製剤は、好ましくは、単位剤形である。そのような形態において、製剤は活性成分である非ステロイド性SGRAを適切な量で含む単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージが個別の量の調製物を含む、パック入りの錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉末剤などの梱包された調製物であってもよい。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシエ剤、又はトローチ剤自体であってもよく、適切な数のこれらの梱包された形態のいずれかであってもよい。
【0107】
単位用量調製物の活性成分の量は異なっていてもよく、又は、0.1mg~10000mg、より典型的には、1.0mg~6000mg、最も典型的には、50mg~500mgに調整されてもよい。適切な用量としては、特定の用途及び活性成分の有効性によって、約1mg、約5mg、約10mg、約20mg、約30mg、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、約1800mg、約1900mg、又は約2000mgも挙げられる。所望により、組成物はまた、他の適合性のある治療剤を含むこともできる。
【0108】
医薬調製物は、好ましくは、単位剤形である。そのような形態において、調製物は、本発明の化合物及び組成物を適切な量で含む単位用量に分割される。単位剤形は、パッケージが個別の量の調製物を含む、パック入りの錠剤、カプセル剤、及びバイアル又はアンプル中の粉末剤などの梱包された調製物であってもよい。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシエ剤、又はトローチ剤自体であってもよく、適切な数のこれらの梱包された形態のいずれかであってもよい。
【0109】
非ステロイド性SGRAは、経口投与され得る。例えば、非ステロイド性SGRAは、本明細書に記載されるような丸剤、カプセル剤、又は液体形態で投与され得る。あるいは、非ステロイド性SGRAは、非経口投与により提供され得る。例えば、非ステロイド性SGRAは、(例えば、注射又は注入により)静脈内投与され得る。本明細書に記載される組成物、及びその医薬組成物又は医薬製剤の別の投与方法は、本明細書に記載される。
【0110】
いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAは、1回投与で投与される。別の実施形態では、非ステロイド性SGRAは、1回投与より多く、例えば、2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、6回投与、7回投与、又はそれ以上で投与される。いくつかの場合では、複数の投与が同等量である。別の場合では、複数の投与が異なる量である。用量は、投与の期間中、増加又は漸減し得る。量は、例えば、非ステロイド性SGRAの特性及び患者の特徴にしたがって変化することになる。
【0111】
任意の適切な非ステロイド性SGRA用量が、本明細書に開示される方法において使用されてもよい。投与される非ステロイド性SGRAの用量は、1日当たり約300ミリグラム(mg)以上、又は1日当たり約600mg以上、例えば、1日当たり約600mg、1日当たり約700mg、1日当たり約800mg、1日当たり約900mg、1日当たり約1000mg、1日当たり約1100mg、1日当たり約1200mg、又はそれ以上であり得る。例えば、非ステロイド性SGRAがレラコリラントである場合、非ステロイド性SGRA用量は、例えば、1日当たり50mg、1日当たり75mg、1日当たり100mg、1日当たり125mg、1日当たり150mg、1日当たり175mg、1日当たり200mg、1日当たり225mg、1日当たり250mg、1日当たり300mg、1日当たり350mg、1日当たり400mg、又は他の量のレラコリラントであってもよい。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAは、経口投与される。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAは、1回投与以上で投与される。言い換えれば、非ステロイド性SGRAは、1日当たり1回投与、2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、6回投与、7回投与、8回投与、9回投与、10回投与、又はそれ以上で投与され得る。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAは、1日当たり1回投与、2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、6回投与、7回投与、8回投与、9回投与、10回投与、又はそれ以上で経口投与される。
【0112】
対象は、1回投与又は複数投与において1回投与以上の非ステロイド性SGRAを、例えば、2~48時間の期間にわたって投与されてもよい。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAは、単回投与として投与される。別の実施形態では、非ステロイド性SGRAは1回投与以上、例えば、2回投与、3回投与、4回投与、5回投与、又はそれ以上の投与で、2~48時間の期間にわたって、例えば、2時間の期間、3時間の期間、4時間の期間、5時間の期間、6時間の期間、7時間の期間、8時間の期間、9時間の期間、10時間の期間、11時間の期間、12時間の期間、14時間の期間、16時間の期間、18時間の期間、20時間の期間、22時間の期間、24時間の期間、26時間の期間、28時間の期間、30時間の期間、32時間の期間、34時間の期間、36時間の期間、38時間の期間、40時間の期間、42時間の期間、44時間の期間、46時間の期間、又は48時間の期間投与される。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAは2~48時間の期間にわたって、2~36時間の期間にわたって、2~24時間の期間にわたって、2~12時間の期間にわたって、2~8時間の期間にわたって、8~12時間の期間にわたって、8~24時間の期間にわたって、8~36時間の期間にわたって、8~48時間の期間にわたって、9~36時間の期間にわたって、9~24時間の期間にわたって、9~20時間の期間にわたって、9~12時間の期間にわたって、12~48時間の期間にわたって、12~36時間の期間にわたって、12~24時間の期間にわたって、18~48時間の期間にわたって、18~36時間の期間にわたって、18~24時間の期間にわたって、24~36時間の期間にわたって、24~48時間の期間にわたって、36~48時間の期間にわたって、又は42~48時間の期間にわたって投与される。
【0113】
患者に必要とされ許容される投与量及び頻度によって、製剤の単回投与又は複数回投与が投与され得る。製剤は、疾患状態を効率的に治療するのに十分な量の活性薬剤を提供すべきである。したがって、ある実施形態では、非ステロイド性SGRAの経口投与のための医薬製剤は、1日当たり、体重1キログラム当たり(mg/kg/日)で約0.01~約150mgの1日量である。いくつかの実施形態では、1日量は、約1.0~約100mg/kg/日、約5~約50mg/kg/日、約10~約30mg/kg/日、約10~約20mg/kg/日である。経口投与、血流中への投与、体腔中又は器官内腔中への投与とは対照的に、特に、脳脊髄液(CSF)空間などの解剖学的に隔離された部位に薬剤が投与される場合、低い用量も用いられ得る。局所投与においては、実質的に高い用量が用いられ得る。非経口投与可能な製剤を調製するための実際の方法は、当業者に知られるか又は明らかとなり、上記のRemingtonなどの出版物により詳細に記載されている。Nieman, In "Receptor Mediated Antisteroid Action," Agarwal, et al., eds., De Gruyter, New York (1987)も参照のこと。
【0114】
NLRの低下のため、NLRが高いがん患者の治療のため、患者のがん治療を促進するため、がん患者の化学療法(例えば、NLRが高いがん患者のnab-パクリタキセルへの応答を改善するための、タキサンに関する治療など)を補助するため、若しくはがん患者の健康を改善するため、又はがん患者のがんの症状を改善するための非ステロイド性SGRAによる治療の期間は、対象の症状の重症度及び非ステロイド性SGRAに対する対象の応答によって異なり得る。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAは、約1週間~104週間(2年間)の期間、より典型的には、約6週間~80週間、最も典型的には、約9週間~60週間投与され得る。投与の適切な期間としては、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~104週間も挙げられる。投与の適切な期間としては、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、24週間、25週間、30週間、32週間、35週間、40週間、45週間、48週間、50週間、52週間、55週間、60週間、64週間、65週間、68週間、70週間、72週間、75週間、80週間、85週間、88週間、90週間、95週間、96週間、100週間、及び104週間も挙げられる。通常、非ステロイド性SGRAの投与は、臨床的に有意な低下又は改善が観察されるまで継続されるべきである。本発明の非ステロイド性SGRAによる治療は、2年間又はそれ以上の期間続けられてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAの投与は継続的でなく、投与が再開される1又は複数の期間に続いて、1又は複数の期間停止され得る。投与が停止する適切な期間としては、5~9週間、5~16週間、9~16週間、16~24週間、16~32週間、24~32週間、24~48週間、32~48週間、32~52週間、48~52週間、48~64週間、52~64週間、52~72週間、64~72週間、64~80週間、72~80週間、72~88週間、80~88週間、80~96週間、88~96週間、及び96~100週間が挙げられる。投与が停止する適切な期間としては、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、24週間、25週間、30週間、32週間、35週間、40週間、45週間、48週間、50週間、52週間、55週間、60週間、64週間、65週間、68週間、70週間、72週間、75週間、80週間、85週間、88週間、90週間、95週間、96週間、及び100週間も挙げられる。
【0116】
投与計画は、当技術分野で周知の薬物動態パラメーター、すなわち、吸収速度、バイオアベイラビリティ、代謝、及びクリアランスなども考慮している(例えば、Hidalgo-Aragones (1996) J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 58:611-617; Groning (1996) Pharmazie 51:337-341; Fotherby (1996) Contraception 54:59-69; Johnson (1995) J. Pharm. Sci. 84:1144-1146; Rohatagi (1995) Pharmazie 50:610-613; Brophy (1983) Eur. J. Clin. Pharmacol. 24:103-108;最新の上記Remingtonを参照)。最新技術により、臨床医が個々の患者についての投与計画、GR調節物質、及び治療される疾患又は症状を決定することが可能になる。
【0117】
非ステロイド性SGRAは、グルココルチコイド受容体の調節において有用なことが知られている他の活性薬剤と共に、又は単独では効果的でない可能性があるが活性薬剤の有効性に貢献する可能性がある補助薬剤と共に用いられ得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、同時投与としては、ある種類の活性薬剤である非ステロイド性SGRAを、第2の活性薬剤の0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、16時間、20時間、又は24時間以内に投与することを挙げられる。同時投与としては、2種類の活性薬剤を同時に、ほぼ同時に(例えば、互いに約1分以内、約5分以内、約10分以内、約15分以内、約20分以内、又は約30分以内)、又は任意の順番で連続的に投与することが挙げられる。いくつかの実施形態では、同時投与は、同時製剤化、すなわち、両方の活性薬剤を含む単一の医薬組成物を調製することにより行い得る。別の実施形態では、活性薬剤は別々に製剤化され得る。他の実施形態では、活性薬剤及び/又は補助薬剤は互いに連結又は結合されてもよい。
【0119】
非ステロイド性SGRAを含む医薬組成物が許容可能な担体中で製剤化された後、適切な容器中に移され、示された症状の治療についてラベルを付されてもよい。非ステロイド性SGRAの投与について、そのようなラベルは、例えば、投与の量、頻度、及び方法に関する説明を含み得る。
【0120】
本発明の医薬組成物は、塩として提供されてもよく、これらに限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、酪酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などの多くの酸を用いて形成され得る。塩は、水性溶媒又は他のプロトン性溶媒中で可溶性である傾向があり、対応する遊離塩基の形態である。他の場合には、調製物は、pHの範囲が4.5~5.5である、1mM~50mM ヒスチジン、0.1%~2% スクロース、2%~7% マンニトール中の凍結乾燥粉末であってもよく、使用前に緩衝液と混合される。
【0121】
別の実施形態では、本発明の組成物は、静脈内(IV)投与又は体腔中又は器官内腔中への投与などの非経口投与に有用である。投与のための組成物は、通常、薬学的に許容可能な担体中に溶解された本発明の組成物の溶液を含むことになる。用いられ得る許容可能な溶媒又は溶剤は、水、及び等張食塩水であるリンゲル液である。さらに、溶剤又は懸濁媒体として滅菌固定油を従来の方法で用いてもよい。この目的のため、合成モノグリセルド又は合成ジグリセリドを含む任意の無菌の固定油を用いることができる。さらに、注射剤の調製において、オレイン酸などの脂肪酸も同様に用いられ得る。これらの溶液は無菌であり、望ましくない物質を通常含まない。これらの製剤は、従来の周知の滅菌技術により滅菌されてもよい。製剤は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び乳酸ナトリウムなど、生理学的な状態に近づけるために必要とされる薬学的に許容可能な補助物質を含んでいてもよい。これらの製剤における本発明の組成物の濃度は多様であってもよく、選択された特定の投与方法及び患者の要求にしたがって、主に、液体の量、粘度、及び体重などに基づいて選択されることになる。IV投与のため、製剤は、無菌の注射可能な水性懸濁液又は油性懸濁液などの無菌の注射可能調製物であってもよい。この懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤を用いて周知技術にしたがって製剤化され得る。無菌の注射可能調製物は、1,3-ブタンジオールの溶液など、無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤又は溶剤中の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液であってもよい。
【0122】
E.がん治療
がん化学療法剤
いくつかの実施形態では、NLRが高い患者に行われるがん治療は、化学療法剤の投与を含んでいてもよい。NLRが高い、がん治療を受けているがん患者においてNLRを正常化する(低下させる)ための非ステロイド性SGRAとの併用に適した化学療法剤としては、がん細胞を死滅させる特性又はがん細胞の増殖を阻害する特性を有する薬剤が挙げられ、これらに限定されないが、微小管阻害剤(例えば、タキサン、ビンカアルカロイド、及びプリナブリン(plinabulin))、トポイソメラーゼ阻害剤及び代謝拮抗物質(例えば、それ自体で作用するヌクレオシド類似体、例えば、ゲムシタビン)、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗物質、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、アントラサイクリン、挿入剤、シグナル伝達経路を阻害することが可能な薬剤、アポトーシスを促進する薬剤、及びプロテオソーム阻害剤などが挙げられる。米国特許公開第20150218274号に開示されるもの、及び例えば、chemotherapy/what-is-chemotherapy/types-of-chemotherapy.aspxのページの「chemocare.com」ウェブサイトで開示されるものなどの他の抗がん剤もまた、本明細書に開示される方法の実施において用いられてもよい。
【0123】
微小管阻害剤としては、タキサン、ビンカアルカロイド、及びプリナブリンが挙げられる。がん患者を治療するために非ステロイド性SGRAと併用され得る例示的なタキサンとしては、これらに限定されないが、パクリタキセル及びドセタキセルが挙げられる。パクリタキセル剤の非限定的な例としては、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(Abraxis Bioscience社により販売されるABRAXANE)、ドコサヘキサエン酸結合パクリタキセル(DHA-パクリタキセル、Protarga社により販売されるTaxoprexin)、ポリグルタミン酸結合パクリタキセル(PG-パクリタキセル、パクリタキセルポリグルメクス、CT-2103、Cell Therapeutic社により販売されるXYOTAX)、腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)、ANG105(ImmunoGen社により販売される、3分子のパクリタキセルに結合しているAngiopep-2)、パクリタキセル-EC-1(erbB2-認識ペプチドEC-1に結合しているパクリタキセル;Li et al., Biopolymers (2007) 87:225-230を参照)、及びパクリタキセル-EC-1及びグルコース結合パクリタキセル(例えば、2’-パクリタキセルメチル2-コハク酸グルコピラノシル、Liu et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters (2007) 17:617-620を参照)が挙げられる。がん患者を治療するために非ステロイド性SGRAと併用され得る例示的なビンカアルカロイドとしては、これらに限定されないが、ビノレルビン酒石酸塩(Navelbine(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、及びビンデシン(Eldisine(登録商標));ビンブラスチン(ビンブラスチン硫酸塩としても知られている、ビンカロイコブラスチン及びVLB、Alkaban-AQ(登録商標)及びVelban(登録商標));及びビノレルビン(Navelbine(登録商標))が挙げられる。プリナブリンは、微小管の集合(例えば、重合)を阻害し、抗血管新生活性を有し(例えば、腫瘍の血管新生を低減させる)、アポトーシス及び有糸分裂増殖停止を誘導し得る小分子である。
【0124】
アルキル化剤は、細胞の静止期において最も活性がある。これらの種類の薬剤は細胞周期非特異的である。がん患者を治療するために非ステロイド性SGRAと併用され得る例示的なアルキル化剤としては、限定されないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレア及びトリアゼン:ウラシルマスタード(Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen Mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標))、クロルメチン(Mustargen(登録商標))、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イホスファミド(Mitoxana(登録商標))、メルファラン(Alkeran(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran(登録商標))、ピポブロマン(Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標))、トリエチレンメラミン(Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標))、トリエチレンチオホスホラミン、チオテパ(Thioplex(登録商標))、ブスルファン(Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標))、カルムスチン(BiCNU(登録商標))、ロムスチン(CeeNU(登録商標))、ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標))、及びダカルバジン(DTIC-Dome(登録商標))が挙げられる。他の例示的なアルキル化剤としては、限定されないが、オキサリプラチン(Eloxatin(登録商標));テモゾロミド(Temodar(登録商標)及びTemodal(登録商標));ダクチノマイシン(アクチノマイシン-Dとしても知られている、Cosmegen(登録商標));メルファラン(L-PAM、L-サルコリシン、及びフェニルアラニンマスタードとしても知られている、Alkeran(登録商標));アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても知られている、Hexalen(登録商標));カルムスチン(BiCNU(登録商標));ベンダムスチン(Treanda(登録商標));ブスルファン(Busulfex(登録商標)及びMyleran(登録商標));カルボプラチン(Paraplatin(登録商標));ロムスチン(CCNUとしても知られている、CeeNU(登録商標));シスプラチン(CDDPとしても知られている、Platinol(登録商標)及びPlatinol(登録商標)-AQ);クロラムブシル(Leukeran(登録商標));シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)及びNeosar(登録商標));ダカルバジン(DTIC、DIC、及びイミダゾールカルボキサミドとしても知られている、DTIC-Dome(登録商標));アルトレタミン(ヘキサメチルメラミン(HMM)としても知られている、Hexalen(登録商標));イホスファミド(Ifex(登録商標));プレドヌムスチン;プロカルバジン(Matulane(登録商標));メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード、ムスチン、及びメクロレタミン塩酸塩としても知られている、Mustargen(登録商標));ストレプトゾシン(Zanosar(登録商標));チオテパ(チオホスホアミド、TESPA、及びTSPAとしても知られている、Thioplex(登録商標));シクロホスファミド(Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標));及びベンダムスチンHCl(Treanda(登録商標))が挙げられる。
【0125】
抗腫瘍抗生物質は、土壌真菌であるストレプトマイセス属の種により産生される天然産物から得られる化学薬剤である。これらの薬剤は、細胞周期の複数の期において機能し、細胞周期特異的であると考えられている。これらに限定されないが、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、及びイダルビシン)、クロモマイシン(例えば、ダクチノマイシン及びプリカマイシン)、マイトマイシン、及びブレオマイシンを含むいくつかの種類の抗腫瘍抗生物質が存在する。
【0126】
代謝拮抗物質は、細胞周期特異的であるの種類化学療法である。細胞がこれらの代謝拮抗物質を細胞代謝中に取り込むと、細胞は分裂することができない。これらの種類の化学療法剤としては、メトトレキサートなどの葉酸拮抗物質;5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、カペシタビン、及びゲムシタビンなどのピリミジン拮抗物質;6-メルカプトプリン及び6-チオグアニンなどのプリン拮抗物質;クラドリビン、フルダラビン、ネララビン、及びペントスタチンなどのアデノシンデアミナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0127】
がん患者の治療において非ステロイド性SGRAと併用され得る例示的なアントラサイクリンとしては、例えば、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標)及びRubex(登録商標));ブレオマイシン(Lenoxane(登録商標));ダウノルビシン(ダウノルビシン塩酸塩、ダウノマイシン、及びルビドマイシン塩酸塩、Cerubidine(登録商標));リポソーム化ダウノルビシン(ダウノルビシンクエン酸塩リポソーム、DaunoXome(登録商標));ミトキサントロン(DHAD、Novantrone(登録商標));エピルビシン(Ellence);イダルビシン(Idamycin(登録商標)、Idamycin PFS(登録商標));マイトマイシン C(Mutamycin(登録商標));ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン;及びデスアセチルラビドマイシンが挙げられる。
【0128】
がん患者を治療において非ステロイド性SGRAと併用され得る例示的なプロテオソーム阻害剤としては、これらに限定されないが、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標));カルフィルゾミブ(PX-171-007、(S)-4-メチル-N--((S)-1-(((S)-4-メチル-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド-O)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPI-0052);イキサゾミブクエン酸エステル(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);及びO-メチル-N-[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(1S)-2-[(-2R)-2-メチル-2-オキシラニル]-2-オキソ-1-(フェニルメチル)エチル]-L-セリンアミド(ONX-0912)が挙げられる。
【0129】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、クロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、マンノスルファン ブスルファン、ダカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、アルトレタミン、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、ペメトレキセド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、SN-38、ARC、NPC、カンプトテシン、トポテカン、9-ニトロカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ルビフェン(rubifen)、ギマテカン(gimatecan)、ジフロモテカン(diflomotecan)、BN80927、DX-895 If、MAG-CPT、アムサクリン、エトポシド、エトポシドリン酸塩、テニポシド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、バッカチン III、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバッカチン III、10-デアセチルセファロマンニン、イリノテカン、アルブミン結合パクリタキセル、オキサリプラチン、カペシタビン、シスプラチン、ドセタキセル、イリノテカンリポソーム、及びエトポシド、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0130】
ある実施形態では、化学療法剤は、米国食品医薬品局(FDA)又は他の規制機関に承認された用量及びスケジュールを指針としてもよい用量及びスケジュールで投与され、実験的な最適化が行われる。いくつかの場合では、化学療法剤は約100mg~約1000mg、例えば、約200mg~約800mg、約300mg~約700mg、又は約400mg~約600mg、例えば約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、又は約700mgの用量で投与される。投与スケジュールは、例えば、毎週、5日に1回、4日に1回、1日おきから、毎日、1日2回、1日3回まで、異なっていてもよい。ある実施形態では、化学療法剤は、1日に約100mg~約600mg、例えば、1日に約100mg、約200mg、約260mg、約300mg、約400mg、又は約600mgで、治療期間の全期間又は一部の期間、1日おきに又は4日に1回、経口用量又は静脈内用量で投与される。いくつかの実施形態では、化学療法剤はタキサンであり、任意の標準的な用量、例えば、FDAにより承認されたタキサン用量で、本明細書に開示される方法にしたがって使用され得る。種々の実施形態では、タキサンはnab-パクリタキセルであり、1mの体表面積あたり、80mg~125mgの範囲の用量で、28日間周期ごとの1日目、8日目、及び15日目に30分かけて静脈内注入として投与される。
【0131】
さらに他の実施形態では、2種類以上の化学療法剤が、治療期間の全期間又は一部の期間に、同時に、又は任意の順番で連続的に投与されてもよい。2種類の薬剤が、同じ投与計画又は異なる投与計画にしたがって投与されてもよい。
【0132】
免疫療法剤
いくつかの実施形態では、NLRが高い患者に行われるがん治療は、免疫療法剤の投与を含んでいてもよい。NLRが高い、がん治療を受けているがん患者においてNLRを正常化する(低下させる)ための非ステロイド性SGRAとの併用に適した免疫療法剤としては、チェックポイントタンパク質に対する抗体が挙げられ、チェックポイント活性の小分子阻害剤が含まれる。例えば、PD-1、CTLA4、及びPD-L1に対する抗体など、多くのそのような抗体ががんの治療において効果的であることが既に示されている。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAと共に投与されるがん治療は、チェックポイント阻害剤の投与を含んでいてもよく、チェックポイント阻害剤はチェックポイント阻害剤抗体(CIA)であってもよい。
【0133】
抗PD-1抗体は、メラノーマ、非小細胞肺がん、膀胱がん、前立腺がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、三種陰性乳がん、白血病、リンパ腫、及び腎細胞がんの治療に用いられてきた。例示的な抗PD-1抗体としては、ペムブロリズマブ(ランブロリズマブ及びMK-3475としても知られている、Keytruda(登録商標)、Merck社)、ニボルマブ(BMS-936558としても知られている、Opdivo(登録商標)、Bristol Myers Squibb社)、セミプリマブ(Libtayo(登録商標)、Sanofi社)、スパルタリズマブ(PDR001、Novartis社)、AMP-224(AstraZeneca社)、AMP-514(MEDI0680、AstraZeneca社)、REGN2810(Regeneron社)、チスレリズマブ(BGB-A317、BeiGene社)、BGB-A317(BeiGene社)、ピディリズマブ(CT-011、Curetech LTD社)、JTX-4014(Jounce Therapeutics社)、カムレリズマ(SHR1210、Jiangsu HengRui Medicine Co.,Ltd.社)、シンチリマブ;(IBI308、Eli Lilly社)、トリパリマブ(JS001、Shanghai Junshi Biosciences社)、ドスタルリマブ(TSR-042、WBP-285、GlaxoSmithKline社)、及びINCMGA00012(MGA012、Incyte社及びMacrogenics社)が挙げられる。
【0134】
抗PD-L1抗体は、非小細胞肺がん、メラノーマ、結腸直腸がん、腎細胞がん、膵がん、胃がん、卵巣がん、乳がん、及び血液系腫瘍の治療に用いられてきた。例示的な抗PD-L1抗体としては、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Roche社)、アベルマブ(Bavencio(登録商標)、MSB0010718C、MerckKGaA社及びPfizer社)、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標)、AstraZeneca社)、MDX-1105(Bristol Myers Squibb社)、MEDI4736(Medimmune社)、MPDL3280A(Roche社)、BMS-936559(Bristol Myers Squibb社)、Cosibelimab(CK-301(Checkpoint Therapeutics社)及びエンバフォリマブ(KN035、「ナノボディ」(ラクダ抗体)、Tracon Therapeutics社)が挙げられる。
【0135】
抗CTLA4抗体は、メラノーマ、前立腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がんの治療の臨床試験において用いられてきた。抗CTL4Aの重要な特徴は、抗腫瘍効果の動態であり、最初の治療後、最大6か月の遅延期が生理学的応答に必要とされる。いくつかの場合、縮小が見られる前に、治療開始後に腫瘍の大きさが実際に増加する(Pardoll, 2012, Nature Reviews Cancer 12:252-264)。例示的な抗CTLA4 CIAとしては、イピリムマブ(Yervoy(登録商標)、Bristol Myers Squibb社)、及びトレメリムマブ(以前はチシリムマブ、CP-675,206、AstraZeneca社)が挙げられる。
【0136】
例えば、バリルマブ、ARGX-110、LAG3、LAG525、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、MEDI6383、MEDI6469、MOXR0916、及びTIM3などの他のチェックポイントタンパク質に対するCIAもまた、がんを治療するために本明細書に開示される非ステロイド性SGRAと併用されてもよい。
【0137】
本開示で使用されるCIAは、特に標的チェックポイントタンパク質(例えば、PD-1及びCTLA4)が異なるシグナル伝達系によって免疫応答を抑制する場合、異なるCIAとの組み合わせであってもよい。したがって、いずれかのチェックポイントタンパク質に対するCIAの組み合わせ、又は両方のチェックポイントタンパク質に対する単独のCIAにより、免疫応答の増強がもたらされることがある。
【0138】
CIAの生成
CIAは、当技術分野において周知の方法を用いて開発され得る。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)、及びColigan et al. (eds.), Current Protocols in Immunology, VOL. 1, pages 2.5.1-2.6.7 (John Wiley & Sons 1991)参照。モノクローナル抗体は、マウスに抗原(例えば、チェックポイントタンパク質又はそのエピトープ)を含む組成物を注射し、脾臓を取り出してBリンパ球を採取し、Bリンパ球をミエローマ細胞と融合してハイブリドーマを作成し、ハイブリドーマをクローニングし、前記抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、前記抗原に対する抗体を酸性する前記クローンを培養し、前記ハイブリドーマ培養物から前記抗体を単離することにより得ることができる。
【0139】
産生されたモノクローナル抗体は、種々の確立された技術によって、ハイブリドーマ培養物から単離及び精製され得る。そのような単離技術としては、プロテインAセファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、及びイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12 and pages 2.9.1-2.9.3. Also, see Baines et al., “Purification of Immunoglobulin G (IgG),” in Methods in Molecular Biology, VOL. 10, pages 79-104 (The Humana Press, Inc. 1992)参照。チェックポイントタンパク質に対する抗体を初期増加(initial raising)させた後、抗体を配列決定し、続いて、組換え技術により調製してもよい。ネズミ抗体及び抗体断片のヒト化及びキメラ化は、当業者に周知である。例えば、Leung et al. Hybridoma 13:469 (1994); 米国特許出願公開第20140099254号を参照。
【0140】
チェックポイントタンパク質を用いた抗原曝露に応答して特異的ヒト抗体を産生するように遺伝子操作されたトランスジェニックマウスを用いてヒト抗体が産生され得る。Green et al., Nature Genet. 7: 13 (1994), Lonberg et al., Nature 368:856 (1994)を参照。チェックポイントタンパク質に対するヒト抗体も、遺伝子又は染色体のトランスフェクション法、ファージディスプレイ技術、又はインビトロ活性化B細胞により構築され得る。例えば、McCafferty et al., 1990, Nature 348: 552-553; 米国特許第5,567,610号及び同第5,229,275号を参照。
【0141】
CIAの修飾
CIAは既存のCIAに対する保存的修飾を導入することによって産生されてもよい。例えば、修飾CIAは重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、及び/又は上記で産生された抗体のカウンターパートに相同なFc領域を含む。本明細書に開示される方法に用いられ得る修飾CIAは、チェックポイントシグナル伝達経路を阻害可能とする所望の機能的特性を保持していなければならない。
【0142】
CIAはまた、タンパク質修飾部位を改変することにより産生され得る。例えば、抗体の糖鎖付加部位を改変して糖鎖付加を欠く抗体を産生することができ、そのような改変されたCIAは、通常、抗原に対する抗体の親和性が増大している。抗体はまた、ポリエチレングリコール(PEG)と、1又は複数のPEG基が抗体に結合する条件下で反応させることによりペグ化され得る。ペグ化は、抗体の生物学的半減期を増加させ得る。そのような修飾を有する抗体はまた、チェックポイント経路を阻害する所望の機能的特性を保持する限り、本明細書に開示される選択的GR調性物質と併用され得る。
【0143】
ii.小分子の非タンパク質チェックポイント阻害化合物(「CIC」)
他の実施形態では、非ステロイド性SGRAと共に行われるがん治療は、チェックポイント阻害剤の投与を含んでいてもよく、チェックポイント阻害剤はCICであってもよい。CICは、チェックポイントタンパク質の免疫抑制機能に拮抗する小分子の非タンパク質化合物である。多くのCICが当技術分野で知られており、例えば、小分子チェックポイント阻害剤であるCA-170(Aurigene社)、ペプチドチェックポイント阻害剤であるAUNP12(Aurigene社及びLaboratoire Pierre-Fabre社)及びBMS-986189(Bristol Myers Squibb社)、並びに米国特許第9,872,852号、米国特許第9,422,339号、及び米国特許出願公開第2013-0022629号に開示されるものである。
【0144】
CICは、例えば、欧州特許出願公開第2360254号に開示されている、当技術分野で知られているコンビナトリアルライブラリー法において、多数のアプローチのいずれかを用いて同定され得る。コンビナトリアルライブラリーとしては、生物学的ライブラリー、空間的にアドレス可能な並列固相ライブラリー又は並列液相ライブラリー、デコンボリューション法を必要とする合成ライブラリー、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、及びアフィニティークロマトグラフィー選択を用いる合成ライブラリー法が挙げられる。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4種類のアプローチは、化合物のペプチドライブラリー、非ペプチドオリゴマーライブラリー、又は小分子ライブラリーに適用可能である(Lam, K. S. (1997) Anticancer Drug Des. 12:145)。
【0145】
放射線がん療法
がんを治療するために放射線が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、NLRが高い患者に行われるがん治療としては、放射線治療を行うこと(例えば、腫瘍へのイオン化放射線の誘導、放射性医薬組成物の注入、放射線源の埋め込み、又は他の放射線療法)が挙げられる。NLRを有し、がん治療を受けているがん患者におけるNLRを正常化するための非ステロイド性SGRAとの併用に適した放射線療法としては、腫瘍又はがん領域への放射線の誘導(「外部照射療法」又は「遠隔療法(teletherapy)」と呼ばれることもある)、腫瘍又はがん性領域又はその付近への放射線放出物質の埋め込み(「近接照射療法(brachytherapy)」と呼ばれることもある)、がん性腫瘍又はがん性領域への直接照射に効果的な放射性標識医薬組成物の投与(例えば、がん細胞で発現される、好ましくはがん細胞で過剰発現される、受容体を標的とする放射性標識リガンド)が挙げられる。
【0146】
抗血管新生がん療法
抗血管新生剤は新たな血管の形成を低減又は阻害し、がん治療に使用されてもよい。抗血管新生剤は、腫瘍への血液供給を制限することにより、腫瘍増殖を遅延する、阻害する、又は食い止める(reverse)と考えられている。いくつかの実施形態では、NLRが高い患者に行われるがん治療は、例えば、抗血管新生剤の投与を含む、抗血管新生療法を行うことを含んでいてもよい。抗血管新生剤は、例えばベバシズマブ(Avastin(登録商標))などの抗血管上皮細胞増殖因子(VEGF)の作用を阻害する抗体;カルボキシアミドトリアゾール、イトラコナゾール;アンジオポエチン-2;可溶性VEGF受容体、及びVEGFが結合して血管新生を促進し得る内在性VEGF受容体への結合及び活性化を低下させることができる他の「おとり(decoy)」分子;アンジオスタチン;エンドスタチン;インターフェロン-α、インターフェロン-β、及びインターフェロン-γ;血小板第4因子;バソスタチン;カルレティキュリン;プロラクチン;オステオポンチン;オステオネクチン及びBM-40としても知られている、システインに富む分泌タンパク質(SPARC);及びがんの治療に用いることができる他の血管新生阻害剤を含み、NLRが高い、がん治療を受けているがん患者においてNLRを正常化する(低下させる)ための本明細書に開示される方法において用いるための適切ながん治療である。
【0147】
増殖因子阻害剤療法
いくつかの実施形態では、NLRが高い患者に行われるがん治療は、増殖因子阻害剤の投与を含んでいてもよい。例えば、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、及び他のものを含む、増殖因子阻害剤の投与は、NLRが高いがん患者に行われるがん治療を含んでいてもよく、非ステロイド性SGRA及び増殖因子阻害剤の投与は、がん患者におけるNLRを正常化する(低下させる)、増殖因子療法を改善する、腫瘍量を減少させる又は腫瘍の除去を促進するのに効果的であり、患者に有益な臨床的利点を提供することがある。増殖因子阻害剤としては、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、アキシチニブ(Inlyta(登録商標))、ダサチニブ(Sprycel(登録商標))、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、イマチニブ(Glivec(登録商標))、ニロチニブ(Tasigna(登録商標))、パゾパニブ(Votrient(登録商標))、及びスニチニブ(Sutent(登録商標))など);プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ(Velcade(登録商標)など);ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(例えば、ボリノスタット(Zolinza(登録商標))及びパノビノスタット(Farydak(登録商標))など);ヘッジホッグ経路阻害剤(例えば、ビスモデギブ(Erivedge(登録商標)など);ホスファチジルイノシチド3キナーゼ(PIP3)阻害剤(例えば、イデラリシブ(Zydelig(登録商標)など);哺乳類(又は機械的)ラパマイシン標的(mTOR)阻害剤(例えば、テムシロリムス(Torisel(登録商標))及びエベロリムス(Afinitor(登録商標))など);及び他のものが挙げられる。
【0148】
外科的がん治療
いくつかの実施形態では、NLRが高い患者に行われるがん治療は、がんに対する外科治療を含んでいてもよい。手術は、腫瘍を有する患者の腫瘍量を減少させるため、腫瘍を除去、又は腫瘍の一部を除去することにより、がんを治療するために用いられてもよい。NLRが高いがん患者におけるNLRを正常化するための非ステロイド性SGRAの投与は、手術前に、手術中に、又は手術後に行われてもよく、患者のNLRの正常化に役立ち、がん患者の治療及び健康を改善し得る。
【0149】
F.併用療法
例えばNLRが高いがん患者におけるNLRを低下させるため、非ステロイド性SGRAと1又は複数のがん療法の種々の組み合わせが、がん患者の治療に用いられてもよい。「併用療法」又は「~との併用」は、これらの送達方法は本明細書に開示される範囲内ではあるが、複数の治療剤が同時に投与されなければならないこと、及び/又は同時送達のために製剤化されなければならないことを意味することを目的としていない。非ステロイド性SGRAと化学療法剤は、同じ投与計画又は異なる投与計画に従って投与され得る。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAと化学療法剤は、治療期間の全期間又は一部の期間の間に任意の順番で連続的に投与される。いくつかの実施形態では、非ステロイド性SGRAと抗癌剤は、同時又はほぼ同時(例えば、互いに約1分以内、約5分以内、約10分以内、約15分以内、約20分以内、又は約30分以内)に投与される。例えば非ステロイド性SGRAと化学療法剤の投与の場合、非ステロイド性SGRAを「A」、化学療法計画の一部として投与される抗癌剤又は抗癌化合物を「B」として、併用療法の非限定的な例は以下のようである。
【0150】
【表1】
【0151】
患者への治療化合物又は治療剤の投与は、もしある場合は治療の毒性を考慮して、そのような化合物の投与のための一般的なプロトコルに従うことになる。記載された治療と組み合わせて、外科的介入も適用されてもよい。
【0152】
本願方法は、手術、放射線、免疫療法、増殖因子阻害剤の使用、抗血管新生因子の使用、及び他の治療の使用、並びにこれらの組み合わせなどのがん治療の他の手段と組み合わせられ得る。
【0153】
G.NLRの制御における改善の評価
本明細書に開示される非ステロイド性SGRA療法は、NLRが高い(例えば、NLRが3以上である)がん患者におけるNLRを低下させ、そのようながん患者に有益な臨床治療成績を与える。例えば、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(「RECIST」)ガイドライン(Eisenhauer et al., “New Response Evaluation Criteria in Solid Tumours: Revised RECIST Guidelines (version 1.1) Eur. J. Cancer 45:228-247 (2009))に記載されるように、がん治療に対する応答を測定する方法は、がん治療分野の当業者に周知である。
【0154】
一つのアプローチとして、NLRは、がん患者から得られた血液試料中の好中球の数及びリンパ球の数を決定することにより測定される。非ステロイド性SGRA(例えば、レラコリラント)による治療後のNLRレベルの低下は、がん患者の有益な治療を提案することがある。
【0155】
本明細書に開示される治療を受ける患者は、様々な程度のNLR低下を示してもよい。いくつかの場合では、患者は、治療前に測定されたNLRの約10%の低下を示し得る。いくつかの実施形態では、NLRの高いがん患者のNLRは、治療前に測定されたNLRから、約15%、約20%、約25%、約30%、約33%、約35%、約40%、約45%、約50%、又はそれ以上、低下する。好ましい実施形態では、NLRが3以下に低下し、最も好ましい実施形態では、NLRは3未満に低下する。
【0156】
また、併用療法による所望の有益な又は所望の臨床結果は、例えば、腫瘍量の減少、周辺器官へのがん細胞の浸潤の低減(すなわち、ある程度の減速及び/又は停止);腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速及び/又は停止)、奏効率(RR)の上昇、奏効期間の延長、がんに関連する1又は複数の症状のある程度の軽減、疾患の治療に必要とされる他の薬物の用量の低減、疾患の進行の遅延、及び/又は患者の生存率の延長及び/又は生活の質の改善を含んでいてもよい。これらの効果を評価するための方法は周知であり、及び/又は例えば、cancerguide.org/endpoints.html及び上述のRECISTガイドラインに開示されている。
【0157】
上述の発明を明確な理解を目的として実例及び例により詳細に記載したが、本発明の開示の観点から、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、ある程度の変更及び改変が行われ得ることは、当技術分野の当業者に容易に明らかになるであろう。
【実施例
【0158】
以下の実施例は、限定する目的ではなく、説明の目的でのみ提供される。当業者は、変更又は改変により本質的に同じ結果を生じ得る、種々の重要でないパラメーターを容易に理解するだろう。
【0159】
実施例1.HepG2 チロシンアミノトランスフェラーゼ(TAT)アッセイ
以下のプロコールは、HepG2細胞(ヒト肝臓肝細胞癌細胞株;英国、ECACC)におけるデキサメタゾンによるTATの誘導を測定するためのアッセイを記載するものである。HepG2細胞は、10%(v/v) ウシ胎仔血清、2mM L-グルタミン、及び1%(v/v) NEAAが補充されたMEME培地を用いて、37℃、5%/95%(v/v) CO/空気で培養される。次にHepG2細胞は計数され、フェノールレッドを含まないRPMI 1640、チャコール処理済FBS、2mM L-グルタミン中で1ml当たり0.125×10個の細胞の濃度に調整され、200μl中、1ウェル当たり25,000個の細胞で、96ウェルの無菌組織培養マイクロタイタープレート中に播種され、37℃、5%COで24時間培養される。
【0160】
次に、増殖培地が除去され、アッセイ培地(フェノールレッドを含まないRPMI 1640、2mM L-グルタミン+10μM フォルスコリン)に置換される。次に、100nM デキサメタゾンの曝露に対して試験化合物がスクリーニングされる。次に、化合物は、10mM ストックから100%(v/v) ジメチルスルホキシド中に連続的に半ログ(half log)希釈される。次に、8点半ログ希釈曲線を作成し、続いてアッセイ培地中に1:100希釈して化合物濃度の10倍最終分析試料が生じ、これにより、0.1%(v/v) ジメチルスルホキシド中、10~0.003μMの範囲の化合物濃度の最終分析試料がもたらされる。
【0161】
試験化合物は、100nM デキサメタゾンの添加の前に、細胞と共に、マイクロタイタープレート中、37℃、5/95(v/v) CO/空気で30分間、次に、続いて、20時間プレインキュベートされ、最適なTATが誘導される。
【0162】
次に、タンパク質阻害剤カクテルを含む30μlの細胞溶解緩衝液を用いて、4℃で15分間、HepG2細胞が溶解される。次に、0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.4)中に5.4mM チロシンナトリウム塩、10.8mM αケトグルタル酸、及び0.06mM ピリドキサール5’-リン酸を含む、155μlの基質混合物が添加されてもよい。37℃で2時間のインキュベート後、15μlの10M 水酸化カリウム水溶液の添加により反応を終結させてもよく、プレートは37℃でさらに30分間インキュベートされた。TAT活性生成物は340nmのλでの吸光度により測定され得る。
【0163】
IC50値は、化合物濃度に対する(100nM デキサメタゾン TAT刺激で標準化した)阻害割合(%)をプロットし、4パラメーターのロジスティクス方程式にデータを適合させることより計算され得る。IC50値は、拮抗物質がデキサメタゾンに対する競合的阻害剤であると仮定して、Cheng-Prusoffの式を用いてKi(平衡解離定数)に変換され得る。
【0164】
実施例2.レラコリラントのNLR及びがん治療に対する効果
血液中の好中球/リンパ球比(NLR)は、健康な対象において、通常、3未満である(図7A)。しかしながら、この比は、図7Aにおいて示される固形腫瘍を有する患者についてのNLR値に示唆されるように、多くのがん患者で3を大きく超える。この実施例では、レラコリラント投与のNLRに対する効果が、健康な対象及びがん患者において決定された。そのようなレラコリラント投与の結果は、レラコリラント投与が、がん患者におけるNLRを低下させ、NLRを正常化させ得ることを示唆している。
【0165】
方法
健康な対象
健康な対象は、レラコリラントのNCT03508635試験に参加した。この試験における健康な対象の投与及び評価のスケジュールを示す図1に記載されるように、単回投与用量漸増コホート及び反復投与用量漸増コホート(SAD及びMAD)が投与及び分析された。図1の(A)は、試験の単回投与用量漸増(SAD)プレドニゾン投与計画を示す。図1の(B)は、試験の複数回投与用量漸増(MAD)プレドニゾン投与計画を示す。図1の(C)は、図の説明を示す。
【0166】
時間0(朝、投与前)、その後、2時間後、4時間後、8時間後、12時間後、及び24時間後に集中的なNLR試料採取を行った。投与前の朝に、単回のNLR試料を採取した。この実験のSAD部分は500mg用量を用いたが、MADは1日に1回の250mg用量を用いた。
【0167】
がん患者
がん患者は、以下の分類に基づいて、固形腫瘍を有する患者においてnab-パクリタキセルと併用されるレラコリラントの第1/2相試験である、NCT02762981試験に参加した
【0168】
含まれる重要な選択基準
・疾患が進行している、進行性又は転移性の固形腫瘍を有する年齢18歳以上の同意した患者
・進行性の状況において3ライン以下の前治療で治療されている。以前のnab-パクリタキセルは許容された。
・ECOG-PS(Eastern Cooperative Oncology GroupのPerformance Status)が0~1
・適切な腎臓、肝臓、骨髄の機能
・測定可能な又は評価可能な疾患
【0169】
特定の用量設定膵臓コホートに参加するについて、含まれる重要な選択基準
・組織学的に確定された膵臓腺がんの診断。膵臓神経内分泌腫瘍、すい臓のリンパ腫、又は膨大部がんの患者は適格性がない。
・試験薬物の最初の投与の14日前以内に測定されたCA19-9(又はCEA、CA19-9が上昇していない腫瘍ではCA-125)
・RECIST 1.1により測定可能な転移(非照射)巣
【0170】
含まれる重要な除外基準
・内科的症状又は内科的疾患(例えば、関節リウマチ、器官移植後の免疫抑制)に対する経口コルチコステロイドの慢性的又は頻繁に用いられる治療の必要性
【0171】
評価
腫瘍の評価は、第2周期の完了時及びその後の6~8週間ごとのスクリーニング時に、必要に応じて行われるRECIST(バージョン1.1)に基づく応答の確認と共に、腫行われた。
【0172】
患者はレラコリラントを毎日(図2を参照)又は間欠的に(図3を参照)投与され、nab-パクリタキセルが28日周期で投与された。図で用いられる略語:nab-Pac nab-パクリタキセル;PK 薬物動態
【0173】
レラコリラントの導入期(lead-in)は、7日間のレラコリラント単独(nab-パクリタキセルなし)での毎日の投与を含んでいた。
【0174】
薬物濃度決定のための検体採取
NCT02762981試験において、薬物濃度が決定された。レラコリラント投与の7日目の複数の時点で血液が採取された。採取の際、血液はEDTAでキレート化され、遠心分離され、血漿が一定分量に分割された。生化学分析はMicroConstants(米国、カルフォルニア州、サンディエゴ)により行われた。要するに、レラコリラント及び内部標準物質としてのその安定標識類似体、及び抗凝集剤としてのKEDTAを含むヒト血漿試料をクエン酸アンモニウム溶液を用いて緩衝し、2-ブタノール:ヘキサン(2.5:97.5、v/v)を用いて抽出した。試料をボルテックスで混合し、遠心分離し、下層部分を超低温フリーザーで凍結した。有機部分を無菌チューブに移し、窒素下4で蒸発させた。抽出物を乾燥させ、再構築し、ACE UltraCore SuperPhenylHexylカラムを用いた逆相HPLCにより分析した。移動相は、正イオン化モードのレクトロスプレーに設定されたZ-スプレー供給源/インターフェースにおいて加熱窒素を用いて噴霧された。イオン化化合物はMS/MSを用いて検出された。
【0175】
CBCのための検体採取
図1~3において特定されている日に血液が採取された。投与前の朝にも採血された。全血からの細胞は対比染色と共にインキュベートされ、細胞型が識別された。識別全血球計算(CBC)により、標準的な方法を用いて、好中球、リンパ球、単球、好酸球、及び好塩基球が数えられた。
【0176】
データ分析
NLRは、以下の式を用いて計算された。
【数4】

NLRはまた、以下の式を用いて、ベースラインからの変化率(CfB)として表されてもよい。
【数5】
【0177】
この式を用いると、0%未満の任意のNLR CfBはNLRの低下である。NLRはまた、以下の式を用いて、ベースラインからの倍率変化(CfB)として表されてもよい。
【数6】
【0178】
この式を用いると、1未満の任意のNLR CfB倍率はNLRの低下である。
【0179】
標準的なT検定を用いて統計的有意性を評価し、報告されたp値を再生した。Phoenix WinNonlin Version8.1(米国、ニュージャージー州、サターラ)を用いてCorcept Therapeuticsにより薬物動態分析が行われた。要するに、レラコリラントについて、AUC0-24及びCmaxを含む薬物動態パラメーターを、レラコリラント導入期の7日目のレラコリラントの投与に続く、24時間にわたる集中的なPK検体採取に基づいて、ノンコンパートメント解析法(モデル200)を用いて評価した。
【0180】
結果
レラコリラントは健康な対象においてプレドニゾンによるNLRの増加を阻害する
25mgプレドニゾンの単回投与は、9人の健康な対象においてNLRの急性の増加を引き起こした。NLRは、ベースライン時の2未満から、プレドニゾンの8時間後に6より大きい値に上昇した。NLRは24時間後にベースラインまで回復した。プレドニゾンと共に投与された500mgレラコリラントの単回投与は、このNLR効果を有意に鈍化させた(図4)。プレドニゾン単独に対する曲線の下の領域は54.6NLR*hrであったが、レラコリラントの単回投与により12.5NLR*hrまで減少した。
【0181】
1日当たり250mgのレラコリラントの14日間連続投与後のプレドニゾンのNLR効果についても評価した。2種類の対照を含めた。1種類目は、同じ対象において、25mgプレドニゾン単独での効果を評価した(-5日目、図5)。曲線の下の領域は、プレドニゾン単独の61.7NLR*hrから、プレドニゾン+レラコリラント(レラコリラントの14日間連続投与後に25mgプレドニゾンを投与)後に9.6NLR*hrまで減少した。2種類目は、異なる対象において、プラセボ(レラコリラントの代わり)の14日間連続投与後の25mgプレドニゾンの効果を評価した(図6)。曲線の下の領域は、プレドニゾン+プラセボの72NLR*hrから、プレドニゾン+レラコリラント(1日当たり250mgのレラコリラントの14日間連続投与後に25mgプレドニゾンを投与)後に9.6NLR*hrまで減少した。いずれかの対照と比較すると、14日間のレラコリラントの投与はプレドニゾンのNLR効果を有意に鈍化させた。
【0182】
レラコリラントは健康な対象においてNLRに影響しない
レラコリラントによるNLRの正常化は、内在性コルチゾールの拮抗作用により生じると考えられている。患者のコルチゾール活性が上昇している場合、レラコリラントはこの活性を正常化すると期待され得る。あるいは、レラコリラント単独で、正常な内在性コルチゾールの拮抗作用を介して、好中球減少(好中球の減少)又はリンパ球増加(リンパ球の増加)を引き起こし得る。これら2つの可能性を区別するため、内在性コルチゾールが正常である健康な対象におけるレラコリラント単独の効果を評価した。250mgのレラコリラントを連続14日間で14回投与した後、7人の健康な対象のコホートでNLRにおける変化は観察されなかった(図7)。ベースライン時にNLRが3より大きい健康な対象はいなかった。
【0183】
レラコリラント単剤後の進行性固形腫瘍を有する患者におけるNLRの変化
レラコリラント投与とNLRの関係を評価した。投与(AUC)及び7日目のCmaxを決定し、7日間の導入期については定常状態であると見なした。NLRはベースラインからの変化(CfB)として表現され、0%未満のCfBは、NLRがレラコリラント導入期の間に低下したことを示す。AUCが0~8000hr*ng/mlの範囲である患者において、曝露が増加するとNLRが低下する傾向がある(図8、左)。Cmaxが0~1000ng/mlの範囲である患者において同様の傾向が観察された(図8、右)。
【0184】
AUCが2011ng*hr/ml未満又はCmaxが442ng/ml未満であった患者は、いずれもこの期間にNLRの低下は認められなかった。反対に、AUCが2011~8000ng*hr/mlである患者の6/13(46%)、及びCmaxが442~1000ng/mlである患者の6/9(67%)において、NLRが低下した。AUCが3740~8000ng*hr/mlである患者についてのNLRの平均変化は-6.1%であり、NLRの低下が認められた。Cmaxが595~836ng/mlである患者についてのNLRの平均変化は-4.4%であり、NLRの低下を示していた。
【0185】
レラコリラント+nab-パクリタキセルは進行性固形腫瘍を有する患者のNLRを正常化する
NLRは、レラコリラント+nab-パクリタキセルの組み合わせの第1周期の1日目及び8日目に測定された。進行性固形腫瘍を有する35人~59人の患者が、第1周期の1日目にNLRが3より大きかった。これら59人の患者において、レラコリラント+nab-パクリタキセルの投与の8日後にNLRの有意な(p=0.012)低下が観察された(図9)。第1周期の1日目の平均NLRは4.4であり、第1周期の8日目に3.6まで低下した。
【0186】
NLRの低下は、ベースラインNLRが3より大きい患者において主に観察された。ベースラインNLRが3以下である24人の患者について、8日間の投与期間の間のNLRに有意な変化はなかった(図10、左)。ベースラインNLRが3より大きい35人の患者について、同じ投与期間にわたってNLRが有意に(p=0.029)低下した(図10、右)。ベースラインNLRが3より大きい患者について、第1周期の1日目の平均5.6は第1周期の8日目に4.5に低下した。
【0187】
レラコリラント+nab-パクリタキセルは完全奏効が認められる卵巣がん患者におけるNLRを低下させる
患者038-4004は、初期にはパクリタキセル+シスプラチンによる治療に感受性であった、再発性のステージIIIBの高悪性度の乳頭状漿液性卵巣がんを有する57歳の女性である。その後、彼女の疾患は3年後に再発し、続く2ラインの治療(ゲムシタビン+カルボプラチン+ベバシズマブ及びリポソーム化ドキソルビシン)の後に進行した。この患者は、レラコリラント+nab-パクリタキセルによる試験治療の最初の周期の後、腫瘍マーカーCA125の低下(1225.9単位/mLから63.7単位/mL)が認められ、2周期の治療の後にX線写真上は完全奏効を達成した。この患者は5カ月後に毒性のため試験治療を中断し、試験治療の開始から8カ月後に彼女の疾患は進行した。
【0188】
7日間のレラコリラントの導入期の間、患者038-4004は、NLRの5.5から2.5への低下が認められた(図11)。これは-46%のNLR変化を表している。免疫療法又は化学療法の治療成績についてのNLRの予測値を評価する腫瘍学研究において、5より大きいNLRは「高い」と常に解釈され、2.5以下のNLRは「低い」と常に解釈される(Sacdalan, 2018; Goldstein, 2015)。これはレラコリラントの導入期の間のベースラインからのNLR変化(CfB)が-55%(すなわち、55%の低下)であることを示している。
【0189】
NLR低下は腫瘍応答と関連している
NLRの変化は、RECIST基準により定義されるような異なるカテゴリーの腫瘍応答を有する患者間で比較された。患者は、RECIST基準により、進行性疾患(PD)、安定状態(SD)、及び部分奏効又は完全奏効(PR/CR)に分類された。PR/CRを有する患者は、第1周期の最初の8日間又は15日間においてNLRがより顕著の低下する傾向があった(図12)。進行性の疾患が認められる患者では、15日目での平均NLRは1日目のNLRより48%高かった。部分奏効又は完全奏効が認められる患者では、15日目での平均NLRは1日目のNLRより25%高かった。結論として、NLRの低下は、レラコリラント+nab-パクリタキセルへのより顕著な応答と関連している。
【0190】
結論
NLRの低下は、化学療法又は免疫療法により治療されたがん患者に対するより良好な治療結果を予測する。選択的GR拮抗物質であるレラコリラントは、プレドニゾンにより引き起こされるNLRの上昇を阻害する。レラコリラントの薬物動態パラメーターが至適範囲である患者は、レラコリラント単独での投与の7日後にNLRの低下が認められる傾向が強かった。レラコリラント+nab-パクリタキセルは、ベースラインNLRが高いがん患者におけるNLRを低下させた。レラコリラントは、健康な対象又はベースラインNLRが正常範囲であるがん患者においてはNLRへの影響はなかった。この観察は、これまで記載されていない。さらに、この観察は、コルチゾール活性の上昇が、進行性腫瘍患者におけるNLRの上昇の一因となっていることを示唆している可能性がある。
【0191】
本明細書に開示される結果は、レラコリラントの投与ががん患者におけるNLRを低下させ、がん患者におけるNLRを正常化し得ることを実証している。NLRが高いがん患者におけるこのようなNLRの低下は、そのような患者に治療効果をもたらすと考えられる。
【0192】
本願において引用される全ての特許、特許公開、特許出願、及び出版物は、個々の特許、特許公開、特許出願、又は出版物が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に参照により取り込まれると記された場合と同程度に、その全体が本明細書中に参照により取り込まれる。さらに、上述の発明を明確な理解を目的として実例及び例により詳細に記載したが、本発明の開示の観点から、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、ある程度の変更及び改変が行われ得ることは、当技術分野の当業者に容易に明らかになるであろう。
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1>
腫瘍を有し、好中球/リンパ球比(NLR)が3より大きいがん患者におけるNLRを低下させる方法であって、
前記がん患者に有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を投与することを含み、
それにより前記がん患者のNLRが低下する、
前記方法。
<2>
腫瘍を有し、好中球/リンパ球比(NLR)が3より大きいがん患者におけるNLRを低下させる方法であって、
前記がん患者に有効量のがん治療を行うこと及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を投与することを含み、
それにより前記がん患者のNLRが低下する、
前記方法。
<3>
前記がん患者の前記好中球/リンパ球比(NLR)が約3又はそれ以下まで低下する、<1>又は<2>に記載の方法。
<4>
前記がん治療を行うこと、及び非ステロイド性選択的GRAを投与することは、前記患者の腫瘍量の減少に効果的である、<2>又は<3>に記載の方法。
<5>
前記非ステロイド性選択的GRAは縮合アザデカリン構造を含む、<1>~<4>のいずれかに記載の方法。
<6>
前記非ステロイド性選択的GRAは、ヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造、又はその塩若しくは異性体を含む化合物であり、前記GRAは以下の式を有する、<1>~<4>のいずれかに記載の方法。
【化12】

式中、
は、R 1a からそれぞれ独立に選択される1~4個の基で置換されていてもよい、N、O、及びSからなる群からそれぞれ独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環のヘテロアリール環であり、
1a はそれぞれ、水素、C -C アルキル、ハロゲン、C -C ハロアルキル、C -C アルコキシ、C -C ハロアルコキシ、CN、N-オキシド、C -C シクロアルキル、及びC -C ヘテロシクロアルキルからなる群から独立に選択され、
環Jは、シクロアルキル環、ヘテロシクロアルキル環、アリール環、及びヘテロアリール環からなる群から選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環及びヘテロアリール環は、N、O、及びSからなる群からそれぞれ独立に選択される1~4個のヘテロ原子を有する5~6員環である、
はそれぞれ、水素、C -C アルキル、ハロゲン、C -C ハロアルキル、C -C アルコキシ、C -C ハロアルコキシ、C -C アルキル-C -C アルコキシ、CN、OH、NR 2a 2b 、C(O)R 2a 、C(O)OR 2a 、C(O)NR 2a 2b 、SR 2a 、S(O)R 2a 、S(O) 2a 、C -C シクロアルキル、及びC -C ヘテロシクロアルキルからなる群から独立に選択され、ここで、前記ヘテロシクロアルキル基は1~4個のR 2C 基で置換されていてもよい、
あるいは、同じ炭素に連結されている2個のR 基が結合してオキソ基(=O)を形成し、
あるいは、2個のR 基が結合して、N、O、及びSからなる群からそれぞれ独立に選択される1~3個のヘテロ原子を有する5~6員環のヘテロシクロアルキル環を形成し、ここで、前記ヘテロシクロアルキル環は1~3個のR 2d 基で置換されていてもよい、
2a 及びR 2b は、水素及びC -C アルキルからなる群からそれそれ独立に選択され、
2c はそれぞれ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C -C アルコキシ、C -C ハロアルコキシ、CN、及びNR 2a 2b からなる群からそれそれ独立に選択され、
2d はそれぞれ、水素及びC -C アルキルからなる群からそれそれ独立に選択されるか、又は同じ環原子に結合している2個のR 2d 基が結合して(=O)を形成し、
は、1~4個のR 3a 基でそれぞれ置換されていてもよい、フェニル及びピリジルからなる群から選択され、
3a はそれぞれ、水素、ハロゲン、及びC -C ハロアルキルからなる群から独立に選択され、
下付き文字nは0~3の整数である。
<7>
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである、<6>に記載の方法。
【化13】

<8>
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロ 3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンである、<6>に記載の方法。
【化14】

<9>
前記非ステロイド性選択的GRAは、オクタヒドロ縮合アザデカリン構造、又はその塩若しくは異性体を含み、前記GRAは以下の式を有する、<1>~<4>のいずれかに記載の方法。
【化15】

式中、
は、R 1a からそれぞれ独立に選択される1~4個の基で置換されていてもよい、ピリジン及びチアゾールからなる群から選択され、
1a はそれぞれ、水素、C -C アルキル、ハロゲン、C -C ハロアルキル、C -C アルコキシ、C -C ハロアルコキシ、N-オキシド、及びC -C シクロアルキルからなる群から独立に選択され、
環Jは、フェニル、ピリジン、ピラゾール、及びトリアゾールからなる群から選択され、
はそれぞれ、水素、C -C アルキル、ハロゲン、C -C ハロアルキル、及び-CNからなる群から独立に選択され、
3a はFであり、
下付き文字nは0~3の整数である。
<10>
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである、<9>に記載の方法。
【化16】

<11>
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-4-イル)メタノンである、<9>に記載の方法。
【化17】

<12>
前記がん治療は化学療法剤の投与を含む、<2>~<4>のいずれかに記載の方法。
<13>
前記化学療法剤は、微小管阻害剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、<12>に記載の方法。
<14>
前記化学療法剤はプリナブリン(plinabulin)及びタキサンから選択される微小管阻害剤である、<12>に記載の方法。
<15>
前記化学療法剤はnab-パクリタキセルである、<14>に記載の方法。
<16>
前記がん治療は免疫療法剤の投与を含む、<2>~<4>のいずれかに記載の方法。
<17>
前記免疫療法剤は、PD-1、PD-L1、CTKA4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択されるタンパク質標的に対する抗体の投与を含む、<16>に記載の方法。
<18>
前記がん治療は、がん放射線療法、増殖因子阻害剤の投与、及び抗血管新生因子の投与のうちの1又は複数を含む、<2>~<4>のいずれかに記載の方法。
<19>
前記NLRの低下は、好中球/リンパ球比が3より大きい、がん治療を受けている患者において、がん治療に対する応答を増強するのに効果的であり、前記増強は、本方法を行わない場合の応答と比べての増強であり、
前記方法は、
前記がん患者に有効量のがん治療を行うこと及び有効量の非ステロイド性選択的グルココルチコイド受容体拮抗物質(GRA)を投与することを含み、
それにより前記がん患者のNLRが低下し、前記がん患者のがん治療に対する応答が増強される、
<2>~<18>のいずれかに記載の方法。
<20>
前記非ステロイド性選択的GRAは縮合アザデカリン構造を含む、<19>に記載の方法。
<21>
前記非ステロイド性選択的GRAはヘテロアリールケトン縮合アザデカリン構造を含む、<19>又は<20>に記載の方法。
<22>
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである、<21>に記載の方法。
【化18】

<23>
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する(R)-(1-(4-フルオロフェニル)-6-((4-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-H-ピラゾロ 3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(ピリジン-2-イル)メタノンである、<21>に記載の方法。
【化19】

<24>
前記非ステロイド性選択的GRAはオクタヒドロ縮合アザデカリン構造を含む、<19>又は<20>に記載の方法。
<25>
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-メチル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(4-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)メタノンである、<24>に記載の方法。
【化20】

<26>
前記非ステロイド性選択的GRAは、以下の構造を有する((4aR,8aS)-1-(4-フルオロフェニル)-6-((2-イソプロピル-2H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)スルホニル)-4,4a,5,6,7,8,8a,9-オクタヒドロ-1H-ピラゾロ[3,4-g]イソキノリン-4a-イル)(チアゾール-4-イル)メタノンである、<24>に記載の方法。
【化21】

<27>
前記がん治療は化学療法剤の投与を含む、<19>又は<20>に記載の方法。
<28>
前記化学療法剤は、微小管阻害剤、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘導剤、代謝拮抗物質、有糸分裂阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、<27>に記載の方法。
<29>
前記化学療法剤はプリナブリン(plinabulin)及びタキサンから選択される微小管阻害剤である、<27>に記載の方法。
<30>
前記化学療法剤はnab-パクリタキセルである、<29>に記載の方法。
<31>
前記がん治療は免疫療法剤の投与を含む、<19>又は<20>に記載の方法。
<32>
前記免疫療法剤は、PD-1、PD-L1、CTKA4、LAG3、B7-H3、B7-H4、OX-40、CD137、及びTIM3から選択されるタンパク質標的に対する抗体の投与を含む、<31>に記載の方法。
<33>
前記がん治療は、がん放射線療法、増殖因子阻害剤の投与、及び抗血管新生因子の投与のうちの1又は複数を含む、<19>又は<20>に記載の方法。
<34>
前記化学療法剤は代謝拮抗剤である、<12>~<15>及び<27>~<30>のいずれかに記載の方法。
<35>
前記化学療法剤はゲムシタビンである、<34>に記載の方法。
<36>
前記患者は前記がん治療及びGRA治療に部分奏効(partial response)を示し、ここで、前記部分奏効は、前記がん治療単独に対する前記患者の応答と比較した改善であり、
それにより前記がん患者のNLRが低下して、前記がん患者のがん治療に対する応答が増強される、
<19>~<35>のいずれかに記載の方法。
<37>
前記患者は前記がん治療及びGRA治療に完全奏効(complete response)を示し、ここで、前記完全奏効は、前記がん治療単独に対する前記患者の応答と比較した改善であり、
それにより前記がん患者のNLRが低下して、前記がん患者のがん治療に対する応答が増強される、
<19>~<35>のいずれかに記載の方法。
<38>
前記がん患者の前記NLRは、前記非ステロイド性選択的GRAの少なくとも7日間の投与の後に低下する、<1>~<37>のいずれかに記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12