(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】二液硬化型組成物セット、熱伝導性硬化物及び電子機器
(51)【国際特許分類】
C08G 59/20 20060101AFI20250206BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20250206BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20250206BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20250206BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20250206BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20250206BHJP
【FI】
C08G59/20
C08K3/01
C08G59/50
C08L63/00 C
C09K5/14 E
H01L23/36 M
(21)【出願番号】P 2022555438
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2021036402
(87)【国際公開番号】W WO2022075213
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020168548
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 正雄
(72)【発明者】
【氏名】久米 雅士
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/097852(WO,A1)
【文献】特開平10-189838(JP,A)
【文献】特開昭55-090554(JP,A)
【文献】特表2003-528198(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107325782(CN,A)
【文献】特開昭60-179417(JP,A)
【文献】特開平09-296114(JP,A)
【文献】特開2011-151280(JP,A)
【文献】特開平06-321518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
H01L
C08L
C08K
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ基含有基を有するエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1、及び熱伝導性フィラーB1を含む第一剤と、
アミノ基含有基を有するアミノ変性オルガノポリシロキサンA2、及び熱伝導性フィラーB2を含む第二剤と、を備え、
熱伝導性フィラーB1の含有量は、上記エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の含有量100重量部に対して
、400~3000重量部であり、
熱伝導性フィラーB2の含有量は、上記エポキシ変性オルガノポリシロキサンA2の含有量100重量部に対して
、400~3000重量部であ
り、
前記熱伝導性フィラーB1及び熱伝導性フィラーB2が、熱伝導率が10W/m・K以上を示す、酸化アルミニウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、酸化マグネシウム、銅、銀、ダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも一種以上を含む、
二液硬化型組成物セット。
【請求項2】
前記エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の1分子中におけるエポキシ基の官能基当量が、100~11000g/molである、
請求項1に記載の二液硬化型組成物セット。
【請求項3】
前記アミノ変性オルガノポリシロキサンA2の1分子中におけるアミノ基の官能基当量が、100~8000g/molである、
請求項1又は2に記載の二液硬化型組成物セット。
【請求項4】
前記第二剤における前記アミノ変性オルガノポリシロキサンA2が、両末端に水酸基含有基を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
【請求項5】
少なくとも末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも末端又は側鎖にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンを含まない前記第一剤、及び、
少なくとも末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも末端又は側鎖にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンを含まない前記第二剤、を備える、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
【請求項6】
ASTM D5470に準拠して測定した、前記第一剤と前記第二剤の混合物の硬化後の熱伝導率が、1.0W/mk以上である、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
【請求項7】
熱伝導性放熱材料として使用される、
請求項1~
6のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セットにおける、第一剤と第二剤の混合物から得られる、
硬化物。
【請求項9】
熱伝導性放熱材料として使用される、
請求項
8に記載の硬化物。
【請求項10】
電子部品と、請求項
9に記載の硬化物と、前記電子部品及び前記硬化物を収容する筐体と、を備え、
前記電子部品及び前記筐体が、前記硬化物を介して接触している、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二液硬化型組成物セット、熱伝導性硬化物及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
室温硬化型の液状シリコーンゴムは、広い温度範囲で安定した性能を発揮することから、パソコンのCPU(中央処理装置)や自動車のバッテリー。LEDデバイス等、電気・電子機器の信頼性を向上させる目的で使用される。具体的には各電子基材の封止材やシール材、ポッティング材、コーティング材、放熱材として使用されている。
【0003】
室温硬化型の液状シリコーンゴムは、主に一液タイプと二液タイプに分類され、二液タイプはさらに縮合反応型と付加反応型に分けられる。
【0004】
縮合反応型は、空気中の湿気により組成物が硬化することで、硬化途上で接触する各種基材に対して優れた接着性を発揮することができる。特に、チタン系の縮合反応用触媒により脱アルコール縮合して硬化する組成物は、硬化時に不快臭の発生や金属類の腐食がないことから、電気・電子機器等のシール材やコーティング材として好適である。
【0005】
一方、縮合反応型は、空気中の湿気と接触する部分から徐々に硬化するために、均一硬化するためには長い時間が必要であり、また、硬化途上でアウトガスを発生させることから、密閉される用途には適さないという問題がある。
【0006】
付加反応型は、硬化による収縮率が低く、均一反応性が高く、また、アウトガスが発生しないことから、電気・電子機器等の封止材や放熱材として好適である。
【0007】
一方、付加反応型は、貴金属である白金触媒が必要であるが、白金触媒は温度に敏感であり、高温環境下での輸送により触媒活性が失活する問題がある。また、基材上に窒素含有化合物、硫黄含有化合物、リン含有化合物、スズ含有化合物、硫黄、ハンダフラックス等の硬化阻害物質やアルコール、水、カルボン酸などにより硬化不良を生じるという問題がある。
【0008】
上記のとおり、縮合反応型と付加反応型には、それぞれに長所と短所があり、用途や目的によって使い分がなされ、また、短所を克服する改良検討が報告されている。
【0009】
例えば、特許文献1では、アルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサンと低級アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンの混合物、ケイ素原紙結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン、アルコキシシラン、ヒドロシリル化反応用触媒からなる組成物により、硬化阻害を生じることなく均一に硬化し、優れた接着性を有する組成物が記載されている。
【0010】
特許文献2では、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンと、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金触媒、接着性付与剤からなる組成物により、硬化阻害物質の影響を受けにくく、優れた接着性を有する付加反応型シリコーンゴム組成物が記載されている。
【0011】
また、特許文献3、4では、上記縮合反応型や付加反応型以外のシリコーン系組成物として、シリコーン変性エポキシ樹脂と反応性官能基を有するシリコーン化合物による樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開平8-269337号公報
【文献】特開2006-22284号公報
【文献】特開平10-017776号公報
【文献】特開昭55-90554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
二液縮合反応型と二液付加反応型の液状シリコーンゴムは、上記のとおり、それぞれに長所と短所があり、両者の短所を克服した室温硬化型の液状シリコーンゴムの開発が望まれていた。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、硬化反応に湿気が不要で、均一硬化性が高く、また、白金触媒を必要とせず、硬化阻害が生じにくい二液硬化型組成物セット、及び当該二液硬化型組成物セットから得られる硬化物または熱伝導性硬化物、並びに当該熱伝導性硬化物を備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
エポキシ基含有基を有するエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1、及び熱伝導性フィラーB1を含む第一剤と、
アミノ基含有基を有するアミノ変性オルガノポリシロキサンA2、及び熱伝導性フィラーB2を含む第二剤と、を備える、
二液硬化型組成物セット。
〔2〕
前記エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の1分子中におけるエポキシ基の官能基当量が、100~11000g/molである、
〔1〕に記載の二液硬化型組成物セット。
〔3〕
前記アミノ変性オルガノポリシロキサンA2の1分子中におけるアミノ基の官能基当量が、100~8000g/molである、
〔1〕又は〔2〕に記載の二液硬化型組成物セット。
〔4〕
前記第二剤における前記アミノ変性オルガノポリシロキサンA2が、両末端に水酸基含有基を有する、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
〔5〕
前記熱伝導性フィラーB1及び熱伝導性フィラーB2が、熱伝導率が10W/m・K以上を示す、酸化アルミニウム、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、酸化マグネシウム、銅、銀、ダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも一種以上を含む、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
〔6〕
少なくとも末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも末端又は側鎖にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンを含まない前記第一剤、及び、
少なくとも末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも末端又は側鎖にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンを含まない前記第二剤、を備える、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
〔7〕
ASTM D5470に準拠して測定した、前記第一剤と前記第二剤の混合物の硬化後の熱伝導率が、1.0W/mk以上である、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
〔8〕
熱伝導性放熱材料として使用される、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セット。
〔9〕
〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の二液硬化型組成物セットにおける、第一剤と第二剤の混合物から得られる、
硬化物。
〔10〕
熱伝導性放熱材料として使用される、
〔9〕に記載の硬化物。
〔11〕
電子部品と、〔10〕に記載の硬化物と、前記電子部品及び前記硬化物を収容する筐体と、を備え、
前記電子部品及び前記筐体が、前記硬化物を介して接触している、
電子機器。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬化反応に湿気が不要で、均一硬化性が高く、また、白金触媒を必要とせず、硬化阻害が生じにくい二液硬化型組成物セット、及び当該二液硬化型組成物セットから得られる硬化物または熱伝導性硬化物、並びに当該熱伝導性硬化物を備える電子機器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0018】
[二液硬化型組成物セット]
本実施形態に係る二液硬化型組成物セットは、エポキシ基含有基を有するエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1、及び熱伝導性フィラーB1を含む第一剤と、アミノ基含有基を有するアミノ変性オルガノポリシロキサンA2、及び熱伝導性フィラーB2を含む第二剤と、を備える。
【0019】
従来の二液硬化型のシリコーン組成物は、縮合反応や付加反応を利用する。しかしながら、水酸基やアルコキシ基等を有するオルガノポリシロキサンを用いた縮合反応は、硬化に湿気が必要であり、反応副生成物(アウトガス)が発生する上、収縮率が高いという問題がある。一方で、ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンなどを用いた付加反応では、収縮率に優れアウトガスも発生せず、湿気も必要ないものの、白金触媒などの付加反応触媒が必要であり、共存する化合物によっては硬化阻害が生じるという問題がある。
【0020】
これに対して、本実施形態においては、上記のようにエポキシ基含有基を有するエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1とアミノ変性オルガノポリシロキサンA2とを用いることにより、白金触媒などの付加反応触媒が不要であり、硬化阻害も生じないうえ、硬化に湿気が必要なく、アウトガスも発生しない二液硬化型組成物セットを提供することができる。
【0021】
また、上記理由のため、本実施形態においては、第一剤及び第二剤が、共に、少なくとも末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンと、少なくとも末端又は側鎖にヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンを含まないことが好ましい。
【0022】
以下、第一剤及び第二剤に含まれる各成分について詳説する。
【0023】
<第一剤>
第一剤は、エポキシ基含有基を有するエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1、及び熱伝導性フィラーB1を含み、必要に応じて、ポリジメチルシロキサンC、オルガノシランD、着色剤E等の添加剤を含んでもよい。
【0024】
(エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1)
本実施形態のエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1は、末端又は側鎖にエポキシ基を有する置換基(エポキシ基含有基)を有する。エポキシ基を有するオルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサン分子におけるSi-R部分(ただし、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基である)のRの少なくとも一部がエポキシ基を有する置換基であるものである。
【0025】
エポキシ基含有基としては、特に制限されないが、例えば、下記式(a11)で表される脂肪族エポキシ基、下記式(a12)で表される脂環式エポキシ基が挙げられる。このなかでも、硬化反応性の観点からはグリシジル基などの脂肪族エポキシ基が好ましく、得られる硬化物のガラス転移点を高くする観点からはエチルシクロヘキセンオキシド基などの脂環式エポキシ基が好ましい。また、エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1は、脂肪族エポキシ基と脂環式エポキシ基の両方を有していてもよい。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【0026】
エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1は、直鎖状構造、分岐状構造、又は環状構造のいずれを有していてもよく、直鎖状構造と環状構造を組み合わせた構造又は分岐状構造と環状構造を組み合わせた構造を有していてもよい。このなかでも、液体としての取扱性の観点からは直鎖状構造が好ましく、得られる硬化物の機械物性の観点からは分岐状構造が好ましい。
【0027】
エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1におけるエポキシ基含有基の結合位置は、特に制限されず、末端又は側鎖であってもよいし、末端及び側鎖であってもよい。側鎖にエポキシ基含有基を有する場合には、エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1は、例えば、下記一般式(a1-1)又は(a1-2)で表される構成単位を有する。また、末端にエポキシ基含有基を有する場合には、エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1は、例えば、下記一般式(a1-3)で表される末端構造(但し、nが1以上のもの)を有する。さらに、エポキシ基含有基が結合していない構成単位としては、下記一般式(a1-4)で表される構成単位が挙げられる。なお、エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の有する構成単位は以下に限定されるもではなく、例えば、分岐状構造を有する場合には分岐型の構成単位を有していてもよい、環状構造を有する場合には末端構造を有しなくてもよい。
【化2】
(式中、Xは、各々独立して、エポキシ基含有基を示し、R
2は、各々独立して、炭素数1~12の置換又は非置換の炭化水素基、又はポリエーテル基を示し、nは0~3の整数を示す。)
【0028】
R2で示される置換又は非置換の炭化水素基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0029】
また、R2で示されるポリエーテル基としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレングリコール基(-(C2H4O)l-CH2H5,-(C2H4O)l-CH2H4OH)、ポリプロピレングリコール基(-(C3H6O)l-CH3H7,-(C3H6O)l-CH3H6OH)、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合基が挙げられる。なお、lは2~1000の整数を示す。
【0030】
このなかでも、エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1としては、側鎖にエポキシ基含有基を有する直鎖状構造のオルガノポリシロキサンが好ましい。このようなエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1を用いることにより、第一剤と第二剤の反応性がより向上する傾向にある。
【0031】
エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1のエポキシ基の官能基当量は、好ましくは100~11000g/molであり、より好ましくは200~6000g/molであり、さらに好ましくは250~5000g/molである。エポキシ基の官能基当量が上記範囲内であることにより、第一剤と第二剤の反応性がより向上し、均一反応性がより向上する傾向にある。
【0032】
また、エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の25℃における粘度は、好ましくは5~15000mm2/sであり、より好ましくは5~12000mm2/sであり、さらに好ましくは5~10000mm2/sである。粘度が上記範囲内であることにより、二液硬化型の組成物セットとしての取扱性がより向上する傾向にある。
【0033】
(熱伝導性フィラーB1)
熱伝導性フィラーB1は、例えば熱伝導率が10W/m・K以上のフィラーである。このような熱伝導性フィラーB1としては、特に制限されないが、例えば、酸化アルミニウム(以下、「アルミナ」ともいう)、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、酸化マグネシウム、ダイヤモンド、カーボン、インジウム、ガリウム、銅、銀、鉄、ニッケル、金、錫、金属ケイ素等が挙げられる。
【0034】
このなかでも、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、酸化マグネシウム、銅、銀、ダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも一種以上を含むことが好ましく、アルミナがより好ましい。このような熱伝導性フィラーB1を用いることにより、充填性が向上し、得られる硬化物の熱伝導率がより向上する傾向にある。これら熱伝導性フィラーB1は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
熱伝導性フィラーB1の平均粒径は、好ましくは0.1~120μmであり、より好ましくは0.1~60μmである。熱伝導性フィラーB1の平均粒径が上記範囲内であることにより、流動性や分散性、充填性がより向上する傾向にある。
【0036】
また、熱伝導性フィラーB1は、平均粒径の異なるフィラーを混合して用いてもよい。例えば、平均粒径が40~50μmである熱伝導性フィラー(B1-1)、及び平均粒径が1~10μmである熱伝導性フィラー(B1-2)を組み合わせて用いることがより好ましい。この場合、熱伝導性フィラー(B1-1)の含有量は、熱伝導性フィラーB1の総量に対して、好ましくは40~80質量%であり、より好ましくは50~70質量%である。また、熱伝導性フィラー(B1-1)の含有量は、熱伝導性フィラーB1の総量に対して、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは30~50質量%である。このような熱伝導性フィラーB1を用いることにより、流動性や分散性、充填性がより向上する傾向にある。なお、本実施形態における平均粒径は、D50(メジアン径)を意味するものとする。
【0037】
熱伝導性フィラーB1の含有量は、上記エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の含有量100重量部に対して、好ましくは400~3000重量部であり、より好ましくは600~2800重量部であり、更に好ましくは700~2600重量部である。熱伝導性フィラーの含有量が、上記エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の含有量100重量部に対して、400重量部以上であれば、得られる硬化物の熱伝導率がより良好となり、3000重量部以下であれば、流動性の低下をより効果的に抑え、塗布性を確保することができる。
【0038】
(ポリジメチルシロキサンC)
ポリジメチルシロキサンCは、第一剤の粘度や得られる硬化物の硬度を調整するために添加することができる。ポリジメチルシロキサンの粘度は特に制限されず、粘度の異なる複数種類のポリジメチルシロキサンを併用してもよい。
【0039】
ポリジメチルシロキサンCの含有量は、上記エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1とポリジメチルシロキサンの合計100重量部に対して、好ましくは0~80重量部である。
【0040】
(オルガノシランD)
オルガノシランDは、上記熱伝導性フィラーB1とエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1との濡れ性を調整するために添加することができる。このようなオルガノシランとしては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(d)で表されるオルガノシランが好適に用いられる。
R3
aR4
bSi(OR5)4-(a+b) (d)
(式中、R3は、各々独立して、炭素数1~15のアルキル基を示し、R4は、各々独立して、炭素数1~8の不飽和の一価の炭化水素基を示し、R5は、各々独立して、炭素数1~6のアルキル基を示し、aは1~3の整数であり、bは0~2の整数であり、a+bは1~3の整数である。)
【0041】
式(d)中、R3が示す炭素数1~15のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、3,3,3-トリフロロプロピル基、2-(パーフロロブチル)エチル基、2-(パーフロロオクチル)エチル基等が挙げられる。このなかでもR3は、炭素数6~12のアルキル基であることが好ましい。
【0042】
R4が示す炭素数1~8の不飽和の一価の炭化水素基としては、特に制限されないが、例えば、ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;2-フェニルエチル基、2-メチル-2-フェニルエチル基等のアラルキル基;、p-クロロフェニル基等のハロゲン化炭化水素基等が挙げられる。
【0043】
R5が示す炭素数1~6のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。このなかでも、R5はメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0044】
aは1~3の整数であり、好ましくは1である。bは0~2の整数であり、好ましくは0である。a+bは1~3の整数であり、好ましくは1である。
【0045】
上記オルガノシランDの含有量は、上記エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の含有量100重量部に対して、好ましくは0.01~30重量部であり、より好ましくは0.1~5.0重量部である。オルガノシランDの含有量が上記範囲内であれば、濡れ性を効果的に向上させることができる。
【0046】
(着色剤E)
着色剤Eとしては、特に制限されないが、例えば、任意の顔料が挙げられる。着色剤Eの含有量は、特に限定されず、例えば、第一剤及び後述する第二剤の合計100重量部に対して、好ましくは0.05~0.2重量部である。
【0047】
<第二剤>
第二剤は、アミノ基含有基を有するアミノ変性オルガノポリシロキサンA2及び熱伝導性フィラーB2を含み、必要に応じて、ポリジメチルシロキサンC、オルガノシランD、着色剤E等の添加剤を含んでもよい。
【0048】
(アミノ変性オルガノポリシロキサンA2)
本実施形態のアミノ変性オルガノポリシロキサンA2は、末端又は側鎖にアミノ基を有する置換基(アミノ基含有基)を有する。アミノ基を有するオルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサン分子におけるSi-R部分(ただし、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基である)のRの少なくとも一部がアミノ基を有する置換基であるものである。
【0049】
アミノ基含有基としては、特に制限されないが、例えば、下記式(a21)で表されるアミノ基が挙げられる。このようなアミノ基含有基は、1級アミノ基及び2級アミノ基であってもよいが、このなかでもR
6が水素原子である1級アミノ基が好ましい。
【化3】
(式中、R
6は、水素原子、又は水素原子がアミノ基に置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基を示し、R
7は、炭素数1~6のアルキル基を示す。)
【0050】
R6は、水素原子又は水素原子がアミノ基に置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基を示す。R6が水素原子の場合、式(a21)で表されるアミノ基は3-アミノプロピル基のような末端に1級アミノ基を有する。また、R6が炭素数1~6のアルキル基の場合、式(a21)で表されるアミノ基は2級アミノ基を有する。さらに、R6が水素原子がアミノ基に置換された炭素数1~6のアルキル基の場合、式(a21)で表されるアミノ基はアミノエチルアミノプロピル基のように、1級アミノ基と2級アミノ基を有する基や、複数の1級アミノ基を有する基又は複数2級アミノ基を有する基となる。
【0051】
アミノ変性オルガノポリシロキサンA2は、直鎖状構造、分岐状構造、又は環状構造のいずれを有していてもよく、直鎖状構造と環状構造を組み合わせた構造又は分岐状構造と環状構造を組み合わせた構造を有していてもよい。このなかでも、液体としての取扱性の観点からは直鎖状構造が好ましく、得られる硬化物の機械物性の観点からは分岐状構造が好ましい。
【0052】
アミノ変性オルガノポリシロキサンA2におけるアミノ基含有基の結合位置は、特に制限されず、末端又は側鎖であってもよいし、末端及び側鎖であってもよい。側鎖にアミノ基含有基を有する場合には、アミノ変性オルガノポリシロキサンA2は、例えば、下記一般式(a2-1)又は(a2-2)で表される構成単位を有する。また、末端にアミノ基含有基を有する場合には、アミノ変性オルガノポリシロキサンA2は、例えば、下記一般式(a2-3)で表される末端構造(但し、mが1以上のもの)を有する。さらに、アミノ基含有基が結合していない構成単位としては、下記一般式(a2-4)で表される構成単位が挙げられる。なお、アミノ変性オルガノポリシロキサンA2の有する構成単位は以下に限定されるもではなく、例えば、分岐状構造を有する場合には分岐型の構成単位を有していてもよい、環状構造を有する場合には末端構造を有しなくてもよい。
【化4】
(式中、Yは、各々独立して、アミノ基含有基を示し、R
8は、各々独立して、炭素数1~12の置換又は非置換の炭化水素基を示し、mは0~3の整数を示す。)
【0053】
R8で示される置換又は非置換の炭化水素基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられる。
【0054】
このなかでも、アミノ変性オルガノポリシロキサンA2としては、末端又は側鎖にアミノ基含有基を有する直鎖状構造のオルガノポリシロキサン、あるいは、末端に水酸基を有し側鎖にアミノ基含有基を有する直鎖状構造のオルガノポリシロキサンが好ましい。このようなアミノ変性オルガノポリシロキサンA2を用いることにより、第一剤と第二剤の反応性がより向上する傾向にある。
【0055】
アミノ変性オルガノポリシロキサンA2のアミノ基の官能基当量は、好ましくは100~8000g/molであり、より好ましくは200~6000g/molであり、より好ましくは300~4000g/molであり、よりさらに好ましくは300~2000g/molである。アミノ基の官能基当量が上記範囲内であることにより、第一剤と第二剤の反応性がより向上し、均一反応性がより向上する傾向にある。
【0056】
また、アミノ変性オルガノポリシロキサンA2の25℃における粘度は、好ましくは5~2000mm2/sであり、より好ましくは5~1750mm2/sであり、さらに好ましくは5~1500mm2/sである。粘度が上記範囲内であることにより、二液硬化型の組成物セットとしての取扱性がより向上する傾向にある。
【0057】
また、アミノ変性オルガノポリシロキサンA2は、ケイ素原子に水酸基が結合した水酸基含有基をさらに有することが好ましい。水酸基含有基の結合位置は、特に制限されず、末端又は側鎖であってもよいし、末端及び側鎖であってもよい。このなかでも、両末端にアミノ基含有基を有する直鎖状構造のアミノ変性オルガノポリシロキサンA2が好ましい。このようなアミノ変性オルガノポリシロキサンA2を使用することにより、エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1との相溶性がより向上し、均一反応性がより向上する傾向にある。
【0058】
(熱伝導性フィラーB2)
熱伝導性フィラーB2は、例えば熱伝導率が10W/m・K以上のフィラーであり、熱伝導性フィラーB1と同様のものが挙げられる。このなかでも、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、金属アルミニウム、酸化マグネシウム、銅、銀、ダイヤモンドからなる群より選ばれる少なくとも一種以上を含むことが好ましい。このような熱伝導性フィラーB2を用いることにより、充填性が向上し、得られる硬化物の熱伝導率がより向上する傾向にある。これら熱伝導性フィラーB2は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0059】
また、熱伝導性フィラーB2の平均粒径及び含有量についても、熱伝導性フィラーB1と同様とすることができ、上記熱伝導性フィラーB1に関する記載は、熱伝導性フィラーB2に読み替えて適用することができる。
【0060】
(添加剤)
その他、第二剤に含まれ得る、ポリジメチルシロキサンC、オルガノシランD、及び着色剤Eの種類や含有量は、上述した第一剤と同様であり、第一剤におけるこれらに関する記載は第二剤に関するものとして読み替えて適用することができるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0061】
なお、第二剤としての熱伝導性フィラー、ポリジメチルシロキサン、オルガノシラン、着色剤と、第一剤としての熱伝導性フィラー、ポリジメチルシロキサン、オルガノシラン、着色剤とは、同種のものであっても異種のものであってもよい。
【0062】
<第一剤と第二剤の比率>
本実施形態の二液硬化型組成物セットにおいて、第一剤におけるエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1と、第二剤におけるアミノ変性オルガノポリシロキサンA2の割合は、第一剤におけるエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1のエポキシ基の含有量および第二剤におけるアミノ変性オルガノポリシロキサンA2のアミノ基の含有量に応じて適宜設定することができる。
エポキシ基の含有量=エポキシ変性オルガノポリシロキサンA1の含有量/官能基当量
アミノ基の含有量 =アミノ変性オルガノポリシロキサンA2の含有量/官能基当量
【0063】
第一剤と第二剤の組み合わせが満たすエポキシ基の含有量/アミノ基の含有量は、好ましくは70/30~10/90であり、より好ましくは55/45~20/80である。エポキシ基の含有量及びアミノ基の含有量の比が上記範囲内であることにより、均一反応性が向上し、十分に架橋構造が形成された硬化物を得ることができる。
【0064】
<用途>
ASTM D5470に準拠して測定した、第一剤と第二剤の混合物の硬化後の熱伝導率は、好ましくは1.0W/mk以上であり、より好ましくは2.0W/mk以上である。このような本実施形態の二液硬化型組成物セットは、熱伝導性放熱材料として好適に使用することができる。
【0065】
[硬化物]
本実施形態に係る硬化物は、例えば、上述した二液硬化型組成物セットにおける第一剤及び第二剤を混合することにより得られる。より具体的には、硬化物(架橋硬化物)は、当該第一剤及び第二剤を混合して得られる混合物において、第一剤に含まれるエポキシ変性オルガノポリシロキサンA1のエポキシ基と、第二剤に含まれるアミノ変性オルガノポリシロキサンA2のアミノ基との付加反応が進行し、架橋結合を有する3次元網目構造を形成することにより、上記硬化物が得られる。
【0066】
本実施形態の硬化物は、第一剤及び第二剤を混合した後に、所望の形に成形してもよい。また、本実施形態に係る硬化物は熱伝導性フィラーを含むため熱伝導性放熱材料として好適に用いることができる。
【0067】
混合には、例えば、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー、ラインミキサー等の混合機が用いられ、例えば、万能混合撹拌機、ハイブリッドミキサー、トリミックス(井上製作所製)、スタティックミキサーを用いて混練する方法等が挙げられる。成形方法はドクターブレード法が好ましいが、樹脂の粘度によって押出法、プレス法、カレンダーロール法等を用いることができる。付加反応の進行における反応条件は、特に限定されないが、通常、室温(例えば25℃)から150℃、0.1~24時間で行われる。
【0068】
第一剤と第二剤の混合割合は、用いる第一剤及び第二剤の種類、及び使用目的に応じて適宜設定できるが、例えば、体積比で第一剤:第二剤=1.5:1.0~1.0:1.5であってよく、1.0:1.0であってよい。
【0069】
[電子機器]
本実施形態の電子機器は、電子部品と上記硬化物と電子部品及び硬化物を収容する筐体とを備え、電子部品及び筐体が前記硬化物を介して接触しているものである。
【0070】
ここで、電子部品としては、特に制限されないが、例えば、モーター、電池パック、車載電源システムに持つ売られる回路基板、パワートランジスタ、マイクロプロセッサ等の発熱する電子部品等が挙げられる。また、金属筐体としては、特に制限されないが、例えば、放熱や吸熱を目的として構成されたヒートシンクなどが挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を更に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
[第一剤]
以下に示す、A1成分~C1成分を、表1に記載の配合比(重量部)に基づき混合し、第一剤I-1~I~3を作製した。各成分の混合はハイブリッドミキサーARE-310(シンキー株式会社製、商品名)を用いて行った。
【0073】
<A1成分:オルガノポリシロキサン>
A1-1:DOWSIL BY 16-839 Fluid(ダウ・東レ株式会社製、商品名)、エポキシ変性オルガノポリシロキサン、25℃における粘度:6000mm2/s、エポキシ基の官能基当量:3700g/mol、脂環式タイプ(エチルシクロヘキセンオキシド基)、エポキシ基結合位置:側鎖
A1-2:DOWSIL BY 8411 Fluid(ダウ・東レ株式会社製、商品名)、エポキシ変性オルガノポリシロキサン、25℃における粘度:8000mm2/s、エポキシ基の官能基当量:3300g/mol、脂肪族タイプ(グリシジル基)、エポキシ基結合位置:側鎖
A1-3:DOWSIL SE 1885A(ダウ・東レ株式会社製、商品名)ビニル基を有するオルガノポリシロキサン(白金触媒含有)
【0074】
<B1成分:熱伝導性フィラー>
B1-1:球状アルミナ、平均粒径:45μm、DAW45S(デンカ株式会社製、商品名)、熱伝導率35W/mK
B1-2:球状アルミナ、平均粒径:5μm、DAW05(デンカ株式会社製、商品名)、熱伝導率35W/mK
【0075】
<C1成分:着色剤>
C1:レジノブラック#442(レジノカラー工業株式会社、商品名)
【0076】
【0077】
[第二剤]
以下に示す、A2成分~B2成分を、表2に記載の配合比(重量部)に基づき混合し、第二剤II-1~II-6を作製した。各成分の混合はハイブリッドミキサーARE-310(シンキー株式会社製、商品名)を用いて行った。
【0078】
<A2成分:オルガノポリシロキサン>
A2-1:DOWSIL BY 16-213(ダウ・東レ株式会社製、商品名)、アミノ変性オルガノポリシロキサン、25℃における粘度:60mm2/s、アミノ基の官能基当量:2700g/mol、一級アミン(3-アミノプロピル基)、アミノ基結合位置:側鎖
A2-2:DOWSIL BY 16-853U(ダウ・東レ株式会社製、商品名)、アミノ変性オルガノポリシロキサン、25℃における粘度14mm2/s、アミノ基の官能基当量450g/mol、一級アミン(3-アミノプロピル基)、アミノ基結合位置:末端
A2-3:DOWSIL BY 16-892(ダウ・東レ株式会社製、商品名)、アミノ変性オルガノポリシロキサン、25℃における粘度1400mm2/s、アミノ基の官能基当量1900g/mol、一級アミン及び二級アミン(アミノエチルアミノプロピル基)、アミノ基結合位置:側鎖、両末端OH含有
A2-4:DOWSIL SE 1885B(ダウ・東レ株式会社製、商品名)ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンの混合物
A2-5:DOWSIL BY 8428 Fluid(ダウ・東レ株式会社製、商品名)、カルビノール変性オルガノポリシロキサン、25℃における粘度140mm2/s、官能基当量1600g/mol
A2-6:DOWSIL BY 16-880 Fluid(ダウ・東レ株式会社製、商品名)カルボキシル変性オルガノポリシロキサン25℃における粘度2500mm2/s、官能基当量3300g/mol
【0079】
<B2成分:熱伝導性フィラー>
B2-1:球状アルミナ、平均粒径:45μm、DAW45S(デンカ株式会社製、商品名)
B2-2:球状アルミナ、平均粒径:5μm、DAW05(デンカ株式会社製、商品名)
【0080】
【0081】
<熱伝導率>
株式会社日立テクノロジー社製の樹脂材料熱抵抗測定装置を用い、ASTM D5470に準拠した方法により、熱伝導性硬化物の熱伝導率を測定した。具体的には、第一剤及び第二剤を各実施例および比較例に記載の体積比で混合して得られた混合物を、0.2mm、0.5mm及び1.0mmの厚さにそれぞれ成形し、得られたそれぞれの成形物を25℃で24時間保持して硬化反応を進行させ、熱伝導性硬化物を得た。得られた熱伝導性硬化物に対し、測定面積10mm×10mmでそれぞれの熱抵抗値を測定した。熱抵抗値を縦軸とし、熱伝導性硬化物の厚さを横軸として得られる直線の傾きを算出し、熱伝導性硬化物の熱伝導率とした。
【0082】
[平均粒径の測定]
熱伝導性フィラーの平均粒径は、島津製作所製「レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-20」(商品名)を用いて測定を行った。評価サンプルは、ガラスビーカーに50mlの純水と測定する熱伝導性フィラー粉末を5g添加して、スパチュラを用いて撹拌し、その後超音波洗浄機で10分間、分散処理を行った。分散処理を行った熱伝導性フィラー粉末の溶液を、スポイトを用いて、装置のサンプラ部に一滴ずつ添加して、吸光度が安定したところで測定を行った。レーザー回折式粒度分布測定装置では、センサで検出した粒子による回折/散乱孔の光強度分布のデータから粒度分布を計算する。平均粒径は、測定される粒子径の値に相対粒子量(差分%)を掛け、相対粒子量の合計(100%)で割って求められる。なお、平均粒径は粒子の平均直径であり、極大値又はピーク値である累積重量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。なお、D50は、出現率が最も大きい粒子径になる。
【0083】
[硬化物]
上記で得られた第一剤及び第二剤を、表3及び表4に示す組合せおよび体積比で混合して混合物を得た。得られた混合物を150℃で1時間保持して硬化反応を進行させ、硬化物を得た。なお、硬化反応における各評価を以下の方法に従って実施した。評価結果を表3及び表4にまとめて示す。
【0084】
<均一反応性の評価>
上記第一剤及び第二剤を混合した混合物を厚さ5mm、縦横2cm程度に成形し、150℃で1時間保持して硬化反応を進行させ、硬化物を得た。得られた硬化物の場所による硬化状態の違いを確認し、硬化物全体で硬化反応が均一に進行しているかどうか(均一反応性)を以下の基準で評価した。
(評価基準)
◎:完全に硬化し、中央部と端部の硬さが同等であった
〇:完全に硬化したが、中央部が端部よりも少し柔らかかった
×:硬化しなかった
【0085】
<高温安定性の評価>
上記第一剤及び第二剤をそれぞれ60℃の乾燥機で7日間加熱状態で保管した。加熱保管後の第一剤及び第二剤を上記と同様の手法にて混合し、150℃で1時間保持して硬化反応を進行させた。その際の硬化状態を確認し、第一剤及び第二剤が加熱保管後においても硬化性能を有するかどうか(高温安定性)を以下の基準で評価した。
(評価基準)
〇:硬化した
×:硬化しなかった
【0086】
【0087】
【0088】
上記表3,4から明らかなように、実施例1~6の本発明の二液硬化型組成物セットは、混合性および均一反応性が良く、保存安定性に優れていた。
【0089】
比較例1は白金触媒による付加反応型の二液硬化型組成物セットであるため、高温保存により触媒が失活し保存安定性が劣っていた。
【0090】
比較例2はエポキシ変性オルガノポリシロキサンとカルビノール変性オルガノポリシロキサンとの混合物であるが、硬化物が形成されず、評価できなかった。
【0091】
比較例3はエポキシ変性オルガノポリシロキサンとカルボキシル変性オルガノポリシロキサンとの混合物であるが、硬化物が形成されず、評価できなかった。
【0092】
実施例5および実施例6は第二剤のアミノ変性オルガノポリシロキサンの種類が異なること以外は略同条件である実施例1および実施例3よりも均一反応性が良好であった。実施例5および実施例6では第二剤に両末端OH変性のアミノ変性オルガノポリシロキサンを使用している点が実施例1および実施例3と相違している。このことから、使用するアミノ変性オルガノポリシロキサンは両末端OH変性であるものがより好ましいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の二液硬化型熱伝導性グリース用組成物は、第一剤と第二剤を混合して硬化させることで熱伝導性の硬化物、特には、発熱体と金属筐体とを熱的に結合して用いる熱伝導性グリースの材料として産業上の利用可能性を有する。