(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-05
(45)【発行日】2025-02-14
(54)【発明の名称】測定装置用のインジケーター
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20250206BHJP
A61B 5/0531 20210101ALI20250206BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B5/0531
(21)【出願番号】P 2024526451
(86)(22)【出願日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2023020969
(87)【国際公開番号】W WO2023238854
(87)【国際公開日】2023-12-14
【審査請求日】2024-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2022092504
(32)【優先日】2022-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113908
【氏名又は名称】マルホ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】野口 聡
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-169787(JP,A)
【文献】特開平05-092011(JP,A)
【文献】特表2013-505093(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0259285(US,A1)
【文献】特表2010-524579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0096753(US,A1)
【文献】特表2022-503989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0047175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体にスライド可能に支持されている計測補助ユニットと、そして
前記計測補助ユニットにスライド可能に支持されているセンサー部と
を備えた測定装置に設けられるインジケーターにおいて、
前記筐体の側面部に形成された窓部と、
前記窓部の内部でスライド可能に支持され、前記計測補助ユニットに連結されている第1の表示部と、
前記窓部の内部でスライド可能に支持され、前記センサー部に連結されている第2の表示部とを有しており、そして
前記第1の表示部のスライド方向およびスライド量は、前記計測補助ユニットのスライド方向およびスライド量と一致しており、
前記第2の表示部のスライド方向およびスライド量は、前記センサー部のスライド方向およびスライド量と一致するように構成されていることを特徴とする測定装置用のインジケーター。
【請求項2】
前記第1の表示部および前記第2の表示部は、それぞれに少なくとも2種以上の異なる表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる領域を有していることを特徴とする請求項1に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項3】
前記第1の表示部は、前記筐体に対して前記計測補助ユニットが第1の位置に存在することを示す第1の表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる第1の領域と、前記筐体に対して前記計測補助ユニットが第2位置に存在することを示す第2の表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる第2の領域とを有しており、そして
前記第2の表示部は、前記筐体に対して前記センサー部が第3の位置に存在することを示す第3の表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる第3の領域と、前記筐体に対して前記センサー部が第4の位置に存在することを示す第4の表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる第4の領域とを有していることを特徴とする請求項2に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項4】
前記窓部の中の表示が前記第1の領域と前記第3の領域との組み合わせであるとき、前記センサー部が待機状態であることを示し、
前記窓部の中の表示が前記第2の領域と前記第3の領域との組み合わせであるとき、前記センサー部が接触状態であることを示し、そして
前記窓部の中の表示が前記第2の領域と前記第4の領域との組み合わせであるとき、前記センサー部が測定開始状態であることを示すように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項5】
前記測定装置は、
前記センサー部の先端部に、被測定者の肌の水分量を測定するための電極が設けられており、
前記計測補助ユニットは、
前記筐体にスライド可能に支持されているスライダー部と、
被測定者の肌に押し当てるための案内面と、前記案内面の中に配置された前記電極を出し入れするための開口部とを有し、前記スライダー部に着脱可能に連結されているカバー部とから構成し、そして
前記電極を前記スライダー部から離反させるように前記センサー部を付勢する第1の付勢手段と、
前記案内面を前記筐体から離反させるように前記スライダー部を付勢する第2の付勢手段とを備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の測定装置用のインジケーター。
【請求項6】
前記測定装置は、
前記案内面が被測定者の肌により押圧されるにつれて、最初は前記案内面のみが前記筐体へ向けて移動し、次に前記案内面および前記電極が前記筐体へ向けて移動するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項7】
前記測定装置は、
前記案内面が被測定者の肌により押圧されるにつれて、前記案内面および前記電極が前記筐体へ向けて移動した後、さらに、前記電極のみが前記筐体へ向けて移動するように構成されていることを特徴とする請求項
6に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項8】
前記測定装置は、
前記案内面が被測定者の肌により押圧されるにつれて、前記案内面および前記電極が前記筐体へ向けて移動する動作以降、前記センサー部の先端部に生じる単位面積当たりの押圧力が、前記案内面に生じる単位面積当たりの押圧力と同じであるか、または前記案内面に生じる単位面積当たりの押圧力よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項
7に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項9】
前記測定装置は、
前記筐体の内部に基部が固定されており、
前記基部にはスイッチが取り付けられており、そして
前記電極が前記筐体へ向けて所定の位置まで移動することにより、前記センサー部の後端部が前記スイッチをONの状態にするように構成されていることを特徴とする請求項
8に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項10】
前記測定装置は、
前記筐体の内部に基部が固定されており、
前記センサー部が前記基部と摺接する第1の円柱部を有し、前記基部は前記スライダー部と摺接する第2の円柱部を有しており、そして
前記第1の円柱部の中心軸および前記第2の円柱部の中心軸は同軸上に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項11】
前記測定装置は、
前記スライダー部が前記センサー部と摺接する開口部を有しており、そして
前記開口部の中心軸は前記第1の円柱部の中心軸と同軸上に配置されていることを特徴とする請求項
10に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項12】
前記測定装置は、
前記第1の付勢手段が第1の弦巻バネからなり、前記第2の付勢手段は第2の弦巻バネからなり、そして
前記第1の弦巻バネの中心軸と前記第2の弦巻バネの中心軸は同軸上に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の測定装置用のインジケーター。
【請求項13】
前記測定装置は、
前記筐体の内部に基部が固定されており、
前記第1の弦巻バネが前記基部と前記センサー部との間に配置され、前記第2の弦巻バネは前記基部と前記スライダー部との間に配置されていることを特徴とする請求項
12に記載の測定装置用のインジケーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの肌(皮膚)性状を測定するための肌性状測定装置等に用いられる測定装置用のインジケーターに関し、特にそれぞれが分離独立して移動することができる2つ以上の可動部品を備えている測定装置において、該可動部品がそれぞれどの状態の位置に存在するのかを簡単且つ信頼性の高い機構にて表示することができる測定装置用のインジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの肌(皮膚)の水分量や弾力等の性状を測定するための装置として、肌性状測定装置が知られている。その中で肌の水分量の測定は、一般的に1対の正極と負極とからなる電極を皮膚に押し当てて電流を流し、電極間の皮膚の電気伝導度(導電度)を測定することによって行われる。ところが、上述のような肌の水分量の測定方法では電極と皮膚との接触角や押圧力によって測定感度が異なるため、正確な肌の水分量を再現よく測定することが困難であるという問題があった。
【0003】
このため、電極と皮膚との押圧力を安定化させるため、例えば特開2003-169787号公報(特許文献1)に記載されているように、ヒトの皮膚に押し当てる電極を備えたセンサーをバネを介して可動的にケースに取り付け、該センサーに所定の押圧力がかかったときに使用者へ報知することで、一定の押圧力下での肌の水分量の測定を促すようにした肌水分測定装置が開発されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の肌水分測定装置は、センサーと皮膚との接触角を安定化させることができないだけでなく、センサーにより押圧された部分の皮膚が変形すると共にその周辺部の皮膚も広域にわたって変形する。このため、測定部分の皮膚の弾力は、センサーにより押圧された皮膚の変形による弾力の変化のみならず、その周辺部の皮膚が変形することにより生じる引張応力等の影響も受けることになり極めて不安定になるという問題があった。すなわち、特許文献1に記載の肌水分測定装置は、装置側のセンサーによる押圧力を一定化、安定化させても、ヒト側の水分量を測定するのに必要な皮膚の弾力を安定させなければ、正確な肌の水分量を再現よく測定することができないという問題があった。
【0005】
他方、電極と皮膚との接触角や押圧力を安定化させるため、例えば特開2001-046344号公報(特許文献2)に記載されているように、ヒトの皮膚に押し当てる電極を一定の面積を有するプローブ端面に環状に配置し、該プローブ端面をバネを介して押圧することにより皮膚の水分量を測定する肌性状測定プローブが開発されている。
【0006】
しかし、特許文献2に記載の肌性状測定プローブは、電極を配置したプローブ端面が広い面積を有する平面で形成されているため、例えばヒトの腕のように殆ど平面部分を有しておらず、その大半が曲面から形成されているような部位については、プローブ端面を肌へ押し込んでもプローブ端面および電極内において圧力分布を生じる結果、電極に生じる押圧力が不均一、不安定となり正確な皮膚の水分量を再現よく測定することができないという問題があった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の肌水分測定装置では、電極を備えたセンサーとケースとの相対位置を表示する手段によりセンサーの適切な押圧力を使用者へ教える表示手段が開発されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の表示手段は、電極を備えたセンサーがヒトの肌に対して適切な押し当て角度で押し付けられていないような場合、実際には適切な押圧力でないにも拘らず、ケースに対してセンサーが所定の位置にさえ移動すれば適切な押圧力に到達したものとして表示してしまうため、センサー部の押し込み不良等に起因する測定不良を防ぐことができないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-169787号公報
【文献】特開2001-046344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、ヒトの肌(皮膚)性状を測定するための肌性状測定装置等の測定装置において、簡単な機構により、センサー部の押し当て角度やセンサー部の押圧力など、少なくとも2種類以上の状態の進行度合いをそれぞれに表示することができる測定装置用のインジケーターを提供することを目的とする。
【0011】
本発明者等は、ヒトの肌(皮膚)性状を測定するための肌性状測定装置等の測定装置の構成について鋭意検討を重ねた結果、センサー部の押し当て角度やセンサー部の押圧力など状態を検出する際にそれぞれの状態に応じて可動する部品があれば、該可動部品のそれぞれに機械的に接続した表示部を設け、1つの窓の中に整列させて表示すれば上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、筐体と、筐体にスライド可能に支持されている計測補助ユニットと、そして計測補助ユニットにスライド可能に支持されているセンサー部とを備えた測定装置に設けられるインジケーターにおいて、筐体の側面部に形成された窓部と、窓部の内部でスライド可能に支持され、計測補助ユニットに連結されている第1の表示部と、窓部の内部でスライド可能に支持され、センサー部に連結されている第2の表示部とを有しており、そして第1の表示部のスライド方向およびスライド量は計測補助ユニットのスライド方向およびスライド量と一致しており、第2の表示部のスライド方向およびスライド量はセンサー部のスライド方向およびスライド量と一致するように構成されていることを特徴とする測定装置用のインジケーターが提供される。
【0013】
本発明の測定装置用のインジケーターは、例えば肌性状測定装置のように、被測定者の肌性状を測定するためのセンサー部と、該センサー部を案内するための計測補助ユニットのような2つの可動部品をそれぞれ分離独立して有している場合、計測補助ユニットの動きを表示する第1の表示部と、センサー部の動きを表示する第2の表示部とを別々に備えたインジケーターを設けることで、目視により、計測補助ユニットおよびセンサー部がそれぞれどの状態の位置に存在するのかを容易に把握することができ、計測補助ユニットのカバー部の押し込み不良等による人為的な測定ミスを未然に防止することができ、例えば計測補助ユニットおよびセンサー部の押し込み不足により測定が開始されなかったような場合、使用者へ、測定が開始されなかった原因(押し込み不足であること)を容易に認知させることができる。また、第1の表示部および第2の表示部は機械的に計測補助ユニットおよびセンサー部と連動して動くので、構造が単純で電源を必要とせず、極めて信頼性が高いという利点もある。
【0014】
本発明の測定装置用のインジケーターは、第1の表示部および第2の表示部が、それぞれに少なくとも2種以上の異なる表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる領域を有していることが好ましい。
【0015】
また、本発明の測定装置用のインジケーターは、第1の表示部が、筐体に対してカバー部が第1の位置に存在することを示す第1の表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる第1の領域と、筐体に対してカバー部が第2位置に存在することを示す第2の表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる第2の領域とを有し、そして第2の表示部は、筐体に対してセンサー部が第3の位置に存在することを示す第3の表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる第3の領域と、筐体に対してセンサー部が第4の位置に存在することを示す第4の表示色、模様またはそれらの組み合わせからなる第4の領域とを有していることがより好ましい。
【0016】
また、本発明の測定装置用のインジケーターは、窓部の中の表示が第1の領域と第3の領域との組み合わせであるとき、センサー部が待機状態であることを示し、窓部の中の表示が第2の領域と第3の領域との組み合わせであるとき、センサー部が接触状態であることを示し、そして窓部の中の表示が第2の領域と第4の領域との組み合わせであるとき、センサー部が測定開始状態であることを示すように構成することが好ましい。また、窓部の中の第2の表示部が第3の領域と第4の領域を同時に(第3の領域と第4の領域の境目)を表示しているような場合は、センサー部が正しい位置、適切な押圧力になるまで十分に押し込まれていないことを使用者に教えることができる。
【0017】
本発明によれば、計測補助ユニットと直結し、少なくとも2種以上の異なる色、模様またはそれらの組み合わせで区分けされた第1の表示部と、センサー部と直結し、少なくとも2種以上の異なる色、模様またはそれらの組み合わせで区分けされた第2の表示部とを一つの窓部の中に表示しているので、肌性状測定装置の複数の状態を、色、模様等の表示とその組み合わせで容易に識別することが可能になり、計測補助ユニットのカバー部およびセンサー部の押し込み不良等による人為的な測定ミスをより確実に防止することができるようになる。
【0018】
特に本発明の測定装置用のインジケーターは、センサー部が被測定者の肌に対して斜めに押し付けられたような場合、カバー部の案内面が邪魔をしてセンサー部の先端部は被測定者の肌に接触することができず、或いは、少なくとも後述するスイッチをONの状態にするまで移動することができない。このため、窓部の中の表示が第2の領域と第4の領域との組み合わせまで進まず、センサー部が適切に押し付けられていないことを使用者に的確に教えることができる。
【0019】
本発明のインジケーターにおいて、測定装置は、センサー部の先端部に被測定者の肌の水分量を測定するための1対の正極と負極とからなる電極を設け、計測補助ユニットは、筐体にスライド可能に支持されているスライダー部と、被測定者の肌に押し当てるための案内面と該案内面の中に配置されたセンサー部の先端部の電極を出し入れするための開口部とを有し、且つスライダー部に着脱可能に連結されているカバー部とから構成し、そしてセンサー部の先端部の電極をスライダー部から離反させるようにセンサー部を付勢する第1の付勢手段と、案内面を前記筐体から離反させるようにスライダー部を付勢する第2の付勢手段とを備えるように構成してもよい。また、上述の測定装置は、測定対象が皮膚であれば、動物の皮膚であってもその水分量や弾力等の皮膚性状を測定することができる。
【0020】
また、この場合、センサー部の先端部の電極は被測定者の肌の水分量の測定精度を向上させるために複数配置することが好ましい。
【0021】
さらに、本発明のインジケーターにおいて、測定装置は、案内面が被測定者の肌により押圧されるにつれて、最初は案内面のみが筐体へ向けて移動し、次に案内面およびセンサー部の先端部の電極が筐体へ向けて移動するように構成することが好ましい。
【0022】
本発明では、測定装置が上述したような構成を有することで、測定装置のカバー部の案内面が被測定者の肌により押圧されるにつれて、センサー部の先端部の電極が被測定者の肌に接触する前に、該先端部よりも広い接触面積を有している案内面が被測定者の肌に接触する。このため、本発明では、先ずカバー部が被測定者の肌面に対する押し当て角度が直角になるように誘導され、次にセンサー部の先端部の電極が被測定者の肌に接触するときは、該センサー部の先端部の電極も、カバー部により被測定者の肌面に対する押し当て角度が直角になるように案内されるので、被測定者の肌性状を適切な接触態様にて測定することができるようになる。
【0023】
本発明では、測定装置のカバー部の案内面が被測定者の肌により押圧されるにつれて、案内面およびセンサー部の先端部の電極が筐体へ向けて移動した後、さらに、センサー部の先端部の電極のみが筐体へ向けて移動するように構成することが好ましい。
【0024】
また、本発明のインジケーターにおいて、測定装置は、カバー部の案内面が被測定者の肌により押圧されるにつれて、案内面およびセンサー部の先端部の電極が筐体へ向けて移動する動作以降、センサー部の先端部に生じる単位面積当たりの押圧力が、案内面に生じる単位面積当たりの押圧力と同じであるか、または案内面に生じる単位面積当たりの押圧力よりも大きくなるように構成することが好ましい。
【0025】
本発明によれば、測定装置の案内面およびセンサー部の先端部の電極が筐体へ向けて移動する動作以降、案内面の開口部の中に露出した被測定者の肌は該開口部の縁部により固定されるので、均質で一定の弾力を保持するようになる。このため、上記の動作以降において、センサー部の先端部に生じる単位面積当たりの押圧力を、案内面に生じる単位面積当たりの押圧力と同じであるか、または案内面に生じる単位面積当たりの押圧力よりも大きくなるように構成することで、センサー部の先端部の電極は、案内面の押し込み量(押圧力)に拠らず、均質で一定の弾力に保持された被測定者の肌と優先して接触することが可能となり、肌性状を精度よく測定することができる。
【0026】
さらに、本発明のインジケーターにおいて、測定装置は、筐体の基部にスイッチを取り付け、そしてセンサー部の先端部の電極が筐体へ向けて所定の位置まで移動することにより、センサー部の後端部がスイッチをONの状態にするように構成することが好ましい。
【0027】
本発明によれば、測定装置のセンサー部先端部の電極が被測定者の肌面に対する押し当て角度が直角になるように案内され、そして被測定者の肌が均質で一定の弾力に保持された状態においてスイッチをONの状態とし、測定を開始するので、水分量や弾力等の肌性状を正確且つ安定して測定することができるようになる。
【0028】
本発明のインジケーターにおいて、測定装置は、第1,第2の付勢手段を簡単に支持し、コンパクトに配置できるように、センサー部には基部と摺接する第1の円柱部を設け、基部にはセンサー部と摺接する第2の円柱部を設け、そして第1の円柱部の中心軸および第2の円柱部の中心軸を同軸上に配置することが好ましい。
【0029】
さらに、測定装置のスライダー部がセンサー部と摺接する開口部を有している場合は、該開口部の中心軸をセンサー部の第1の円柱部の中心軸と同軸上に配置することがより好ましい。
【0030】
本発明のインジケーターにおいて、上述のように測定装置のセンサー部が第1の円柱部を有し、基部が第1の円柱部を有している場合、測定装置は、第1の付勢手段に第1の弦巻バネを用い、第2の付勢手段に第2の弦巻バネを用い、そして第1の弦巻バネの中心軸と第2の弦巻バネの中心軸を同軸上に配置することが好ましい。
【0031】
また、本発明のインジケーターにおいて、測定装置の第1の弦巻バネを基部とセンサー部との間に配置し、第2の弦巻バネを基部とスライダー部との間に配置することが好ましい。
【0032】
本発明のインジケーターにおいて、測定装置は、上述したようなヒューマンエラーの発生を極力少なくする目的で、計測補助ユニットのカバー部は、カバー部内のセンサー部およびセンサー部と被測定者の肌との接触状態を目視できるように透明または半透明とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、筐体と、筐体にスライド可能に支持されている計測補助ユニットと、そして計測補助ユニットにスライド可能に支持されているセンサー部とを備えた測定装置に設けられるインジケーターにおいて、筐体の側面部に形成された窓部と、窓部の内部でスライド可能に支持され、計測補助ユニットに連結されている第1の表示部と、窓部の内部でスライド可能に支持され、センサー部に連結されている第2の表示部とを有しており、そして第1の表示部のスライド方向およびスライド量は計測補助ユニットのスライド方向およびスライド量と一致しており、第2の表示部のスライド方向およびスライド量はセンサー部のスライド方向およびスライド量と一致するように構成されている測定装置用のインジケーターが提供される。
【0034】
本発明によれば、計測補助ユニット(カバー部およびスライダー部)の動きを表示する第1の表示部と、センサー部の動きを表示する第2の表示部とを別々に備えたインジケーターを設けることで、目視により、計測補助ユニットおよびセンサー部がそれぞれどの状態の位置に存在するのかを容易に把握することができ、計測補助ユニットのカバー部およびセンサー部の押し込み不良等による人為的な測定ミスを未然に防止することができる。
【0035】
また、本発明のインジケーターでは、測定装置は、センサー部の先端部に被測定者の肌の水分量を測定するための1対の正極と負極とからなる電極を設け、計測補助ユニットは、筐体にスライド可能に支持されているスライダー部と、被測定者の肌に押し当てるための案内面と該案内面の中に配置されたセンサー部の先端部の電極を出し入れするための開口部とを有し、且つスライダー部に着脱可能に連結されているカバー部とから構成し、そしてセンサー部の先端部の電極をスライダー部から離反させるようにセンサー部を付勢する第1の付勢手段と、案内面を前記筐体から離反させるようにスライダー部を付勢する第2の付勢手段とを備えるように構成してもよい。
【0036】
本発明のインジケーターでは、測定装置のセンサー部の先端部が被測定者の肌に接触する前に、該先端部よりも広い接触面積を有している計測補助ユニットの案内面が被測定者の肌に接触するので、先ず計測補助ユニットのカバー部が被測定者の肌面に対する押し当て角度が直角になるように誘導され、次にセンサー部の先端部も、カバー部により被測定者の肌面に対する押し当て角度が直角になるように案内される結果、被測定者の肌性状を適切な接触態様にて測定することができるようになる。
【0037】
また、本発明のインジケーターでは、測定装置の計測補助ユニットの案内面開口部の中に露出した被測定者の肌は該開口部の縁部により固定されるので、センサー部の先端部は、案内面の押し込み量(押圧力)に拠らず、均質で一定の弾力に保持された被測定者の肌と優先して接触することが可能となり、肌性状の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインジケーターに用いられる肌性状測定装置の全体を表した斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るインジケーターに用いられる肌性状測定装置の内部を部分的に表した断面図であり、(a)は肌性状測定装置の正面断面図、(b)は肌性状測定装置の側面断面図、(c)は肌性状測定装置の底面断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るインジケーターに用いられる肌性状測定装置のセンサー部の動作状態を表した断面図であり、(a)はセンサー部が待機状態の断面図、(b)及び(c)はセンサー部が接触状態の断面図、(d)はセンサー部が測定開始状態の断面図である。
【
図4】肌性状測定装置における本発明の一実施形態に係るインジケーターの動作状態を表した断面図であり、(a)はセンサー部が待機状態の断面図、(b)はセンサー部が接触状態の断面図、(c)はセンサー部が測定開始状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一実施形態に係る測定装置用のインジケーターについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例】
【0040】
<肌性状測定装置>
図1には、本発明の一実施形態に係るインジケーター8に用いられる肌性状測定装置1の全体を表した斜視図が示されている。また、
図2には、本発明の一実施形態に係るインジケーター8に用いられる肌性状測定装置1の内部を部分的に表した断面図が示されており、
図2(a)は肌性状測定装置1の正面断面図、
図2(b)は肌性状測定装置1の側面断面図、
図2(c)は肌性状測定装置1の底面断面図である。以下、本発明の一実施形態に係るインジケーター8に用いられる肌性状測定装置1の構成および動作態様について説明する。なお、本願明細書において上部、上端等の「上」とは、肌性状測定装置1を示した
図2の図面の上側を意味し、下部、下端等の「下」とは、肌性状測定装置1を示した
図2の図面の下側を意味している。
【0041】
[筐体]
図1,2を参照して理解されるように、本実施形態の肌性状測定装置1は使用者が片手で操作できる大きさのハンディタイプの測定装置であり、一方の端部が開口し、他方の端部には電源スイッチを備えたシリコン樹脂製の蓋部21が取り付けられた、横断面がトラック形状の筐体2を有している。筐体2の内部には基部20が固定されており、また、肌性状測定装置1の測定を制御するためのICチップ等が搭載された制御基板22や、制御基板22を駆動するための電池等の電源23が装着されている。筐体2の内部の電池等の電源23は、筐体2の側面の一部を取り外すことにより交換することができる。なお、筐体2の横断面の形状は必ずしもトラック形状である必要がなく、制御基板22や電源23等の必要機器を収容することができ、片手で操作可能であれば、矩形、多角形、円形、楕円形等の他の一般的な形状であってもよい。
【0042】
[基部]
基部20は、筐体2とは分離独立した別部品であってもよく、筐体2と一体的に形成された部品であってもよい。基部20は第1のフランジ部200と、第1のフランジ部200から下方へ延びた全部または一部が中空或いは中実の第2の円柱部201を有しており、第2の円柱部201の中心軸bは筐体2の中心軸(図示せず)と一致するように筐体2の内部に取り付けられている。また、第2の円柱部201の下端部には、後述する弦巻バネ等からなる第1の付勢手段6を押圧するための第2のフランジ部202が形成されている。なお、第2の円柱部201は必ずしも円柱状である必要がなく、後述する弦巻バネ等からなる第2の付勢手段7を支持するのに適していれば、角柱状、楕円柱状等であってもよい。
【0043】
[スライダー部]
筐体2の内周面にはスライダー部31がスライド可能に取り付けられており、その一部は筐体2の開口部から外部へ突出している。スライダー部31の一方の端部には、基部20の第2の円柱部201をスライド自在に通過させるための円形の開口部310が形成されており、他方の端部には、後述するセンサー部4をスライド自在に通過させるためのトラック形状の開口部311が形成されている。
【0044】
[カバー部]
スライダー部31の、筐体2の開口部から外部へ突出している部分にはカバー部30が取り付けられている。また、カバー部30とスライダー部31とは、カバー部30の開口端近傍の内周面に小さな円形状の凹部302を設け、外部へ突出したスライダー部31の側面には、該凹部302と係合する小さな半球形状の凸部312を設けることにより着脱自在に連結され、一体となって計測補助ユニット3を構成している(
図1参照)。
【0045】
カバー部30は、スライダー部31に取り付けられる側の端部が開口し、被測定者の肌に押し当てられる側の端部には平坦なトラック形状の案内面300が形成された筒体を形成している。また、案内面300の中央には、センサー部4の先端部40を出し入れするための小さなトラック形状の開口部301が形成されている。なお、案内面300の形状は必ずしもトラック形状である必要がなく、被測定者の肌に押し当てることにより、カバー部30の、被測定者の肌面に対する押し当て角度を直角に誘導するのに適した面積を確保可能であれば、矩形、多角形、円形、楕円形等の他の一般的な形状であってもよい。
【0046】
また、本実施形態では、計測補助ユニット3のカバー部30は、カバー部30内のセンサー部4およびセンサー部4と被測定者の肌との接触状態等を目視できるように透明または半透明の材料から形成されているが、必ずしも透明または半透明である必要がなく、不透明であってもよい。
【0047】
[センサー部]
計測補助ユニット3のカバー部30の内部には、センサー部4がスライダー部31の開口部311にスライド可能に支持されている。センサー部4は、基部20に取り付けられる側の端部に全部または一部が中空或いは中実の第1の円柱部42を有し、被測定者の肌に押し当てられる側の先端部40に平坦なトラック形状のセンシング面を有し、全体としては横断面がトラック形状の柱状形状を有している。なお、第1の円柱部42は、主として、後述する弦巻バネ等からなる第1の付勢手段6を支持するために機能するものであるので、必ずしも円柱状である必要がなく、第1の付勢手段6を支持するのに適し、基部20の第2の円柱部201とスライド可能に嵌合できるものであれば、角柱状、楕円柱状等であってもよい。
【0048】
また、本実施形態の肌性状測定装置1では、筐体2の基部20にスイッチ5が取り付けられており、そしてセンサー部4の先端部40が筐体2の基部20へ向けて所定の位置まで移動し、センサー部4の後端部がフォトスイッチの光を遮蔽することにより、またはスイッチを押圧することによりスイッチ5をONの状態とするように構成されている。
【0049】
本実施形態の肌性状測定装置1では、センサー部4の先端部40には、被測定者の肌の水分量を測定するために電極41が櫛歯状に配設されている(
図2(c)参照)。電極41は1対の正極と負極とから構成されており、本実施形態では、センサー部4の先端部40に3つの電極41が横1列に並べられている。このため、本実施形態では、電極41の面積を拡大することにより、被測定者の肌における局所的な水分量の違いの影響を少なくし、水分量の測定精度を向上させている。また、被測定者の3点の肌の水分量を測定し平均化することにより測定場所の違いによる肌性状の斑の影響を少なくし、水分量の測定精度を向上させてもよい。
【0050】
本実施形態の肌性状測定装置1は、肌(皮膚)の性状を測定する際に正確な押し当て角度や押圧力が要求される測定装置に適しており、その測定対象は肌の水分量に限られるものではない。例えば、図示しないが、本実施形態の肌性状測定装置1はセンサー部4に振動検出素子を設け、センサー部4によって所定の周波数で振動させたセンサー部4の先端部40を被測定者の肌(皮膚)に接触させ、その接触の前後の振動周波数をそれぞれ振動検出素子によって検出し、そして検出された周波数を制御基板で増幅することにより、肌(皮膚)との接触の前後の周波数の差に基づいて肌(皮膚)の弾力性を測定することもできる。
【0051】
[第1の付勢手段]
本実施形態の肌性状測定装置1では、センサー部4の第1の円柱部42が基部20の第2の円柱部201の内側にスライド可能に内挿されている。また、本実施形態の肌性状測定装置1は、センサー部4の先端部40をスライダー部31から離反させるようにセンサー部4を付勢する第1の付勢手段6を備えている。本実施形態では、第1の付勢手段6として第1の弦巻バネ6が用いられており、第1の弦巻バネ6は、基部20の第2の円柱部201の第2のフランジ部202と、センサー部4の上端部との間であって、センサー部4の第1の円柱部42の周りに配置することで、センサー部4により押圧可能に支持されている。
【0052】
なお、図示しないが、本実施形態では、第2の円柱部201の第2のフランジ部202を省略することで、センサー部4の第1の円柱部42を基部20の第2の円柱部201の外側にスライド可能に外挿させることもできる。この場合、第1の弦巻バネ6は、基部20の第2の円柱部201の下端部とセンサー部4の第1の円柱部42の内部の上端部との間であって第1の円柱部42の中に配置すれば、センサー部4により押圧可能に支持することができる。
【0053】
[第2の付勢手段]
本実施形態の肌性状測定装置1では、基部20の第2の円柱部201がスライダー部31上部の開口部310の中にスライド可能に通過している。また、本実施形態の肌性状測定装置1は、計測補助ユニット3のカバー部30の案内面300を筐体2から離反させるように、計測補助ユニット3のスライダー部31を付勢する第2の付勢手段7を備えている。本実施形態では、第2の付勢手段7として第2の弦巻バネ7が用いられており、第2の弦巻バネ7は、基部20の第2の円柱部201の第1のフランジ部200と、計測補助ユニット3のスライダー部31の上端部との間であって、基部20の第2の円柱部201の周りに配置することで、計測補助ユニット3のスライダー部31により押圧可能に支持されている。
【0054】
本実施形態の肌性状測定装置1では、第1の弦巻バネ6および第2の弦巻バネ7を簡単に支持し、コンパクトに配置できるように、センサー部4の第1の円柱部42の中心軸aは基部20の第2の円柱部201の中心軸bと同軸上に配置されており、さらに、計測補助ユニット3のスライダー部31上部の開口部310の中心軸cは、基部20の第2の円柱部201の中心軸bおよびセンサー部4の第1の円柱部42の中心軸aと同軸上に配置されている。
【0055】
このため、第1の円柱部42の周りに装着された第1の弦巻バネ6の中心軸(図示せず)も、第2の円柱部201の周りに装着された第2の弦巻バネ7の中心軸(図示せず)と同軸上に配置され、肌性状測定装置1をハンディサイズの極めてコンパクトな大きさに収めることができる。
【0056】
なお、本実施形態では、筐体2、基部20、カバー部30、スライダー部31、センサー部4に用いられる材料に特に限定がなく、樹脂材料、金属材料またはそれらを組み合わせた複合材料を用いることができるが、軽量で成形性に優れ、絶縁性にも優れている点から、硬質なプラスチック材料を用いることが好ましい。また、本実施形態では、第1の付勢手段6、第2の付勢手段7に用いられる材料に特に限定がなく、弾性を有する金属材料または弾性を有する樹脂材料それらを組み合わせた複合材料を用いることができるが、耐久性に優れている点から、弾性を有する金属材料を用いることが好ましい。
【0057】
[肌性状測定装置の動作]
図3には、本発明の一実施形態に係るインジケーター8に用いられる肌性状測定装置1のセンサー部4の動作状態を表した断面図が示されており、
図3(a)はセンサー部4が待機状態の断面図、
図3(b)及び
図3(c)はセンサー部4が接触状態の断面図、
図3(d)はセンサー部4が測定開始状態の断面図である。以下、本発明の一実施形態に係るインジケーター8に用いられる肌性状測定装置1の動作について説明する。
【0058】
(1)待機状態
図3(a)に示されるように、本実施形態の肌性状測定装置1において無負荷の状態、すなわち、計測補助ユニット3のカバー部30の案内面300を被測定者の肌(皮膚)9に押し付ける前の状態では、センサー部4の先端部40は、第1の付勢手段(第1の弦巻バネ)6により筐体2の基部20および計測補助ユニット3のスライダー部31から一番離れた位置に付勢され、カバー部30の案内面300も第2の付勢手段(第2の弦巻バネ)7により筐体2の基部20から一番離れた位置に付勢される。このとき、電極41を備えたセンサー部4の先端部40はカバー部30の中に収容された状態で保持されるので、センサー部4の先端部40はカバー部30により損傷等から保護され、また、先端部40の予期せぬ接触による誤作動も防止される。
【0059】
(2)肌への接触状態-1
図3(b)に示されるように、本実施形態の肌性状測定装置1において、計測補助ユニット3のカバー部30の案内面300を被測定者の肌9に押し付けると、最初は案内面300のみが筐体2の基部20へ向けて移動し、次に案内面300およびセンサー部4の先端部40が筐体2の基部20へ向けて移動する。
【0060】
その結果、本実施形態の肌性状測定装置1は、センサー部4の先端部40が被測定者の肌9に接触する前に、該先端部40よりも広い接触面積を有している案内面300が被測定者の肌9に接触するので、先ず計測補助ユニット3のカバー部30が被測定者の肌面に対する押し当て角度が直角になるように誘導され、次にセンサー部4の先端部40も、計測補助ユニット3のカバー部30により被測定者の肌面に対する押し当て角度が直角になるように案内された状態において被測定者の肌9と接触するようになる。このため、本実施形態の肌性状測定装置1は、被測定者の肌性状(肌の水分量)を適切な接触角度にて測定することができる。
【0061】
(3)肌への接触状態-2
本実施形態の肌性状測定装置1では、センサー部4の先端部40が被測定者の肌9と接触した以降、別言すれば、計測補助ユニット3のカバー部30の案内面300を被測定者の肌9に押し付けて、案内面300およびセンサー部4の先端部40が筐体2の基部20へ向けて移動する動作以降は、センサー部4の先端部40に生じる単位面積当たりの押圧力が、案内面300に生じる単位面積当たりの押圧力と同じであるか、または案内面300に生じる単位面積当たりの押圧力よりも大きくなるように設定されている。
【0062】
そのため、
図3(c)に示されるように、センサー部4の先端部40が被測定者の肌9と接触した以降、さらに、計測補助ユニット3のカバー部30の案内面300およびセンサー部4の先端部40を被測定者の肌9に押し付けると、先に計測補助ユニット3のスライダー部31が筐体2の基部20へ向けて移動し、スライド限313に到達することで移動できなくなる。その結果、スライダー部31がスライド限313に到達した以降は、センサー部4の先端部40のみが筐体2の基部20へ向けて移動するようになる。
【0063】
このように、センサー部4の先端部40が被測定者の肌9と接触し、計測補助ユニット3のカバー部30の案内面300およびセンサー部4の先端部40が筐体2の基部20へ向けて移動する動作以降、案内面300の開口部301の中に露出した被測定者の肌9は該開口部301の縁部により固定されるので、均質で一定の弾力を保持するようになる。このため、センサー部4の先端部40は、案内面300の押し込み量(押圧力)に拠らず、均質で一定の弾力に保持された被測定者の肌9と優先して接触することが可能となり、肌性状(肌の水分量)を精度よく測定することができるようになる。
【0064】
(4)測定開始状態
図3(d)に示されるように、本実施形態の肌性状測定装置1において、計測補助ユニット3のスライダー部31がスライド限313に到達した以降、さらに、センサー部4の先端部40を被測定者の肌9に押し付けると、センサー部4が僅かに筐体2の基部20および計測補助ユニット3のスライダー部31へ向けて移動し、スライド限に到達すると略同時に、センサー部4の後端部が筐体2の基部20に取り付けられたフォトスイッチの光を遮蔽することにより、またはスイッチを押圧することによりスイッチ5をONの状態にし、肌性状測定装置1による被測定者の肌性状(肌の水分量)の測定が開始される。
【0065】
その結果、本実施形態の肌性状測定装置1は、センサー部4の先端部40は被測定者の肌面に対する押し当て角度が直角になるように案内され、そして被測定者の肌9が均質で一定の弾力に保持された状態においてスイッチ5がONの状態となり、測定を開始するので、肌性状(肌の水分量)を正確且つ安定して測定することができる。なお、本実施形態の肌性状測定装置1は、測定対象がヒトの肌(皮膚)に限られず、動物の皮膚であってもその水分量等の皮膚性状を測定することができる。
【0066】
<測定装置用のインジケーター>
図4には、肌性状測定装置1における本発明の一実施形態に係るインジケーター8の動作状態を表した断面図が示されており、
図4(a)はセンサー部4が待機状態の断面図、
図4(b)はセンサー部4が接触状態の断面図、
図4(c)はセンサー部4が測定開始状態の断面図である。以下、
図1,2および4を参照して、肌性状測定装置1における本発明の一実施形態に係るインジケーター8の構成および動作態様について説明する。
【0067】
[インジケーターの構成]
図2を参照して理解されるように、本実施形態の肌性状測定装置1は、筐体2の側面部へ、計測補助ユニット3(カバー部30およびセンサー部4)の筐体2に対する相対位置を表示するためのインジケーター8を備えている。インジケーター8は、筐体2の側面部に開口した窓部80と、窓部80の内部でスライド可能に支持された第1の表示部81と、第1の表示部81に隣接して第1の表示部81と同じ方向にスライド可能に支持された第2の表示部82とを備えている。
【0068】
第1の表示部81は細長い棒状の部品であり、第1の連結部材810を介して計測補助ユニット3のスライダー部31に直接且つ一体的に接続されている。このため、本実施形態では、第1の表示部81のスライド方向およびスライド量は、計測補助ユニット3のカバー部30およびスライダー部31のスライド方向およびスライド量と一致するように構成されている。
【0069】
また、第1の表示部81において、窓部80から露出する側の表面は、筐体2に対して計測補助ユニット3のカバー部30が待機状態の位置(第1の位置)に存在することを示す第1の表示色で着色された第1の着色領域811と、筐体2に対して計測補助ユニット3のカバー部30がスライド限313に到達した状態の位置(第2位置)に存在することを示す第2の表示色で着色された第2の着色領域812とで色分けされている。なお、インジケーター8を適用する測定装置の性格により、表示する必要がある状態の位置が3つ以上存在する場合は、第1の表示部81をその位置の数に応じて色分けしてもよい。また、第1,第2の領域の種分けは、表示色のみならず、模様またはそれらの組み合わせを用いてもよい。
【0070】
また、第1の表示部81は必ずしもスライダー部31と直接且つ一体的に接続する必要がなく、例えばテコの原理を利用した他の連結部材(図示せず)を用いることにより、計測補助ユニット3のスライド量を拡大または縮小するように間接的に接続してもよい。また、第1の表示部81は、計測補助ユニット3と連結されていれば、カバー部30およびスライダー部31と分離独立した部品であってもよい。
【0071】
第2の表示部82も細長い棒状の部品であり、第2の連結部材820を介してセンサー部4に直接且つ一体的に接続されている。このため、本実施形態では、第2の表示部82のスライド方向およびスライド量は、センサー部4のスライド方向およびスライド量と一致するように構成されている。
【0072】
また、第2の表示部82において、窓部80から露出する側の表面は、筐体2に対してセンサー部4が待機状態の位置(第3の位置)に存在することを示す第3の表示色で着色された第3の着色領域821と、筐体2に対してセンサー部4が測定開始状態の位置(第4位置)に存在することを示す第4の表示色で着色された第4の着色領域822とで色分けされている。なお、インジケーター8を適用する測定装置の性格により、表示する必要がある状態の位置が3つ以上存在する場合は、第2の表示部82をその位置の数に応じて色分けしてもよい。また、第3,第4の領域の種分けは、表示色のみならず、模様またはそれらの組み合わせを用いてもよい。
【0073】
また、第2の表示部82も必ずしもセンサー部4と直接且つ一体的に接続する必要がなく、例えばテコの原理を利用した他の連結部材(図示せず)を用いることにより、センサー部4のスライド量を拡大または縮小するように間接的に接続してもよい。また、第2の表示部82は、センサー部4と連結されていれば、センサー部4と分離独立した部品であってもよい。
【0074】
本実施形態のインジケーター8は、その適用対象が水分量や弾力等の肌性状の測定装置1に限定されるものでなく、計測補助ユニット3(カバー部30とスライダー部31)とセンサー部4のように、それぞれが分離独立して移動することができる2つ以上の可動部品を備えていれば、他の測定装置にも適用することができる。また、可動部品が3つ以上存在する場合は、その数に応じて表示部を設ければよい。
【0075】
このように、本実施形態のインジケーター8は、少なくとも筐体2と、筐体2にスライド可能に支持されている計測補助ユニット3と、そして計測補助ユニット3にスライド可能に支持されているセンサー部4とを備えた測定装置であれば適用することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、インジケーター8の第1の表示部81、第1の連結部材810、第2の表示部82、第2の連結部材820に用いられる材料に特に限定がなく、樹脂材料、金属材料またはそれらを組み合わせた複合材料を用いることができるが、軽量で成形性に優れている点から、硬質なプラスチック材料を用いることが好ましい。
【0077】
[インジケーターの動作]
(1)待機状態
図4(a)に示されるように、本実施形態の肌性状測定装置1において無負荷の状態、すなわち、計測補助ユニット3のカバー部30を被測定者の肌(皮膚)9に押し付ける前の状態では、計測補助ユニット3のカバー部30は筐体2から一番離れた第1の位置に存在し、計測補助ユニット3のスライダー部31と連結された第1の表示部81は、窓部80の中に、計測補助ユニット3のカバー部30が第1の位置に存在することを表す第1の表示色の第1の着色領域811を表示する。一方、センサー部4も筐体2から一番離れた第3の位置に存在し、センサー部4と連結された第2の表示部82は、窓部80の中に、センサー部4が第3の位置に存在することを表す第3の表示色の第3の着色領域821を表示する。
【0078】
その結果、肌性状測定装置1の窓部80の中には、センサー部4が待機状態であることを示す第1の着色領域811と第3の着色領域821との組み合わが表示されるので、使用者も目視により、センサー部4が待機状態であることを容易に把握することができる。
【0079】
(2)肌への接触状態
図4(b)に示されるように、本実施形態の肌性状測定装置1において、さらに計測補助ユニット3のカバー部30を被測定者の肌9に押し付けると、計測補助ユニット3のスライダー部31は筐体2の基部20へ向けて移動し、スライド限313である第2の位置に到達する。そのため、計測補助ユニット3のスライダー部31と連結された第1の表示部81は、窓部80の中に、計測補助ユニット3のカバー部30が第2の位置に到達したことを表す第2の着色領域812を表示する。
【0080】
一方、センサー部4は筐体2から一番離れた第3の位置を保持しながら、計測補助ユニット3のカバー部30がセンサー部4に対して相対的に後退することにより、被測定者の肌9と接触するようになる。そのため、センサー部4と連結された第2の表示部82は、窓部80の中に、センサー部4が第3の位置に保持されていることを表す第3の表示色の第3の着色領域821を表示する。
【0081】
その結果、肌性状測定装置1の窓部80の中には、センサー部4が被測定者の肌9と接触状態であることを示す第2の表示色の第2の着色領域812と第3の表示色の第3の着色領域821との組み合わが表示されるので、使用者も目視により、センサー部4は接触状態であるが測定を開始していないことを容易且つ的確に把握することができる。
【0082】
(3)測定開始状態
図4(c)に示されるように、本実施形態の肌性状測定装置1において、さらに計測補助ユニット3のカバー部30を被測定者の肌9に押し付けると、計測補助ユニット3のスライダー部31はスライド限313である第2の位置に保持されるので、計測補助ユニット3のスライダー部31と連結された第1の表示部81は、窓部80の中に、計測補助ユニット3のカバー部30が第2の位置に保持されていることを表す第2の表示色の第2の着色領域812を表示する。
【0083】
一方、センサー部4は筐体2の基部20へ向けて移動し、スライド限である第4の位置に到達すると略同時に、センサー部4の後端部が筐体2の基部20に取り付けられたフォトスイッチの光を遮蔽することにより、またはスイッチを押圧することによりスイッチ5をONの状態にする。そのため、センサー部4と連結された第2の表示部82は、窓部80の中に、センサー部4が第4の位置に到達し、スイッチ5をONの状態にしたことを表す第4の表示色の第4の着色領域822を表示する。
【0084】
その結果、肌性状測定装置1の窓部80の中には、センサー部4がスイッチ5をONの状態にすることで被測定者の肌性状(肌の水分量)の測定を開始したことを示す第2の着色領域812と第4の着色領域822との組み合わが表示されるので、使用者も目視により、センサー部4が被測定者の肌9に接触し測定を開始したことを容易且つ的確に把握することができる。なお、窓部80の中の第2の表示部83が第3の着色領域821と第4の着色領域822を同時に(第3の着色領821と第4の着色領822の境目)を表示しているような場合、使用者はセンサー部4が正しい位置、適切な押圧力になるまで十分に押し込まれていないことを容易に把握することができる。
【0085】
このように、本発明の一実施形態に係る肌性状測定装置用のインジケーター8は、計測補助ユニット3の動きを表示する第1の表示部81と、センサー部4の動きを表示する第2の表示部82とを別々に備えることで、目視により、計測補助ユニット3およびセンサー部4がそれぞれどの状態の位置に存在するのかを容易且つ的確に把握することができ、計測補助ユニット3のカバー部30およびセンサー部4の押し込み不良等による人為的な測定ミスを未然に防止することができ、例えば計測補助ユニット3およびセンサー部4の押し込み不足により測定が開始されなかったような場合、使用者へ、測定が開始されなかった原因(押し込み不足であること)を容易に認知させることができる。また、第1の表示部81および第2の表示部82は機械的に計測補助ユニット3およびセンサー部4と連動して動くので、構造が単純で電源を必要とせず、極めて信頼性が高いという利点もある。
【0086】
さらに、本実施形態の肌性状測定装置用のインジケーター8によれば、計測補助ユニット3と直結し、少なくとも2種以上の異なる色で色分けされた第1の表示部81と、センサー部4と直結し、少なくとも2種以上の異なる色で色分けされた第2の表示部82とを一つの窓部80の中に表示しているので、肌性状測定装置1の複数の状態を色の表示とその組み合わせで容易に識別することが可能になり、計測補助ユニット3のカバー部30およびセンサー部4の押し込み不良等による人為的な測定ミスをより確実に防止することができるようになる。
【0087】
特に本実施形態のインジケーター8は、センサー部4が被測定者の肌9に対して斜めに押し付けられたような場合、計測補助ユニット3カバー部30の案内面300が邪魔をしてセンサー部4の先端部40は被測定者の肌9に接触することができず、或いは少なくともスイッチ5をONの状態にするまで移動することができない。このため、窓部80の中の表示が第2の着色領域812と第4の着色領域822との組み合わせまで進まず、センサー部4が適切に押し付けられていないことを使用者に的確に教えることができる。
【符号の説明】
【0088】
1・・・・・肌性状測定装置
2・・・・・筐体
20・・・・基部
200・・・第1のフランジ部
201・・・第2の円柱部
202・・・第2のフランジ部
21・・・・蓋部
22・・・・制御基板
23・・・・電源
3・・・・・計測補助ユニット
30・・・・カバー部
300・・・案内面
301・・・開口部
302・・・凹部
31・・・・スライダー部
310,311・・・開口部
312・・・凸部
313・・・スライド限
4・・・・・センサー部
40・・・・先端部
41・・・・電極
42・・・・第1の円柱部
5・・・・・スイッチ
6・・・・・第1の付勢手段(第1の弦巻バネ)
7・・・・・第2の付勢手段(第2の弦巻バネ)
8・・・・・インジケーター
80・・・・窓部
81・・・・第1の表示部
810・・・第1の連結部材
811・・・第1の着色領域
812・・・第2の着色領域
82・・・・第2の表示部
820・・・第2の連結部材
821・・・第3の着色領域
822・・・第4の着色領域
9・・・・・被測定者の肌(皮膚)
a・・・・・第1の円柱部の中心軸
b・・・・・第2の円柱部の中心軸
c・・・・・開口部の中心軸