(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】配光制御装置及び配光制御方法
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/12 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
B60Q1/12 100
(21)【出願番号】P 2024540759
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2022031274
(87)【国際公開番号】W WO2024038567
(87)【国際公開日】2024-02-22
【審査請求日】2024-07-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中本 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】井上 悟
(72)【発明者】
【氏名】武安 政明
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-225618(JP,A)
【文献】特開平11-078675(JP,A)
【文献】特開平07-132773(JP,A)
【文献】特開2005-313805(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2298603(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報を用いて車両からの配光を制御する配光制御装置であって、
前記地図情報に基づいて、前記車両が将来走行する曲路での走行軌跡を推定する走行軌跡推定部と、
前記走行軌跡のうち、前記車両が走行すべき目標位置を設定する目標位置設定部と、
前記車両の前方方向と、前記車両から前記目標位置への方向との間の第1角度を算出する第1角度算出部と、
前記曲路の内周部分に予め対応付けられた内側基準位置を取得する内側基準位置取得部と、
前記車両の前記前方方向と、前記車両から前記内側基準位置への方向との間の第2角度を算出する第2角度算出部と、
前記第1角度と前記第2角度との差が閾値未満である場合に前記目標位置及び前記内側基準位置に基づいて前記車両の第1前照灯の照射を制御し、前記差が前記閾値以上である場合に前記目標位置に基づいて前記第1前照灯の照射を制御し、かつ、前記内側基準位置に基づいて前記車両の第2前照灯の照射を制御する照射制御部と
を備える、配光制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配光制御装置であって、
前記内側基準位置は、前記曲路の手前の予め定められた地点に位置する前記車両から見た前記内周部分の端の位置、または、前記予め定められた地点に位置する前記車両と当該端とを通る直線上の位置である、配光制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の配光制御装置であって、
前記直線上の前記位置は、前記直線と前記走行軌跡との交点の位置、または、前記直線と前記曲路の外周部分との交点の位置である、配光制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の配光制御装置であって、
前記目標位置設定部は、
前記車両が、前記走行軌跡のうちの前記内側基準位置に対応する基準対応位置に達する前に、前記目標位置と前記車両との間の距離を小さくする、配光制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の配光制御装置であって、
前記目標位置設定部は、
前記車両が、前記走行軌跡のうちの前記内側基準位置に対応する基準対応位置を超えて離れるにつれて、前記目標位置と前記車両との間の距離を大きくする、配光制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の配光制御装置であって、
前記内側基準位置は、
前記曲路の前記内周部分に予め対応付けられた第1内側基準位置と、
前記曲路の前記内周部分に予め対応付けられ、前記車両に関して前記第1内側基準位置よりも遠い第2内側基準位置と
を含み、
前記目標位置設定部は、
前記第1内側基準位置に基づく前記目標位置である第1目標位置と、前記第2内側基準位置に基づく前記目標位置である第2目標位置との間の距離が閾値未満である場合、前記第1目標位置を設定するための第1注視時間の変化が完了する前に、前記第2目標位置を設定するための第2注視時間を、前記第1注視時間と同じ時間から変化させる、配光制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の配光制御装置であって、
前記車両の運転者が注意を向けている方向である注意方向を推定する注意方向推定部をさらに備え、
前記照射制御部は、
前記第1前照灯の照射範囲及び前記第2前照灯の照射範囲のうち、前記注意方向に対応する範囲の照度を上げる、配光制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の配光制御装置であって、
前記注意方向推定部は、
前記車両の室内の監視カメラの出力に基づいて前記注意方向である第1注意方向を推定し、前記車両の操舵角センサの出力に基づいて前記注意方向である第2注意方向を推定し、
前記照射制御部は、
前記第1注意方向及び前記第2注意方向が得られた場合に、前記第1注意方向に対して前記第2注意方向を優先して用いる、配光制御装置。
【請求項9】
請求項1に記載の配光制御装置であって、
前記車両の運転者が注意を向けている方向である注意方向を推定する注意方向推定部と、
前記注意方向に基づいて、前記注意方向に対応する位置に前記目標位置を近づける補正を行う補正部と
をさらに備える、配光制御装置。
【請求項10】
地図情報を用いて車両からの配光を制御する配光制御方法であって、
前記地図情報に基づいて、前記車両が将来走行する曲路での走行軌跡を推定し、
前記走行軌跡のうち、前記車両が走行すべき目標位置を設定し、
前記車両の前方方向と、前記車両から前記目標位置への方向との間の第1角度を算出し、
前記曲路の内周部分に予め対応付けられた内側基準位置を取得し、
前記車両の前記前方方向と、前記車両から前記内側基準位置への方向との間の第2角度を算出し、
前記第1角度と前記第2角度との差が閾値未満である場合に前記目標位置及び前記内側基準位置に基づいて前記車両の第1前照灯の照射を制御し、前記差が前記閾値以上である場合に前記目標位置に基づいて前記第1前照灯の照射を制御し、かつ、前記内側基準位置に基づいて前記車両の第2前照灯の照射を制御する、配光制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配光制御装置及び配光制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の将来の位置に基づいて、車両の前照灯(ヘッドライト)の配光を制御する技術が提案されている(例えば特許文献1,2)。このような技術によれば、運転者が確認したい位置が前照灯によって照射されるため、運転者は安心して車両を運転することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4127997号公報
【文献】特許第4403848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、車両の将来の位置を照射し続けることができても、車両が曲路を走行している間に、曲路の内周部分を照射しなくなるため、運転者は曲路の内周部分を確認しながら運転できないという問題があった。
【0005】
そこで、本開示は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、曲路の内周部分を照射する時間を長くすることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る配光制御装置は、地図情報を用いて車両からの配光を制御する配光制御装置であって、地図情報に基づいて、車両が将来走行する曲路での走行軌跡を推定する走行軌跡推定部と、走行軌跡のうち、車両が走行すべき目標位置を設定する目標位置設定部と、車両の前方方向と、車両から目標位置への方向との間の第1角度を算出する第1角度算出部と、曲路の内周部分に予め対応付けられた内側基準位置を取得する内側基準位置取得部と、車両の前方方向と、車両から内側基準位置への方向との間の第2角度を算出する第2角度算出部と、第1角度と第2角度との差が閾値未満である場合に目標位置及び内側基準位置に基づいて車両の第1前照灯の照射を制御し、差が閾値以上である場合に目標位置に基づいて第1前照灯の照射を制御し、かつ、内側基準位置に基づいて車両の第2前照灯の照射を制御する照射制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、第1角度と第2角度との差が閾値未満である場合に目標位置及び内側基準位置に基づいて車両の第1前照灯の照射を制御し、差が閾値以上である場合に目標位置に基づいて第1前照灯の照射を制御し、かつ、内側基準位置に基づいて車両の第2前照灯の照射を制御する。このような構成によれば、曲路の内周部分を照射する時間を長くすることができる。
【0008】
本開示の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両が曲路に進入する際の運転者の一般的な視線及び運転を説明するための図である。
【
図2】実施の形態1に係る配光制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る配光制御装置で用いる各種位置及び各種角度を説明するための図である。
【
図4】実施の形態1に係る第1角度の算出を説明するための図である。
【
図5】実施の形態1に係る配光制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1に係る配光制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係る内側基準位置に関するタイムチャートを示す図である。
【
図8】実施の形態1に係る近接目標位置を説明するための図である。
【
図9】実施の形態1に係る近接目標位置を説明するための図である。
【
図10】実施の形態1に係る近接目標位置を説明するための図である。
【
図11】実施の形態1に係る配光制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態1に係る配光制御装置の動作例を示す図である。
【
図13】実施の形態1に係る配光制御装置の動作例を示す図である。
【
図14】実施の形態1に係る配光制御装置の動作例を示す図である。
【
図15】実施の形態1に係る配光制御装置の動作例を示す図である。
【
図16】実施の形態1に係る配光制御装置の動作例を示す図である。
【
図17】実施の形態1に係る配光制御装置の動作例を示す図である。
【
図18】実施の形態2に係る内側基準位置を説明するための図である。
【
図19】実施の形態2に係る配光制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図20】実施の形態2に係る配光制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図21】実施の形態2に係る内側基準位置に関するタイムチャートを示す図である。
【
図22】実施の形態2に係る内側基準位置に関するタイムチャートを示す図である。
【
図23】実施の形態3に係る配光制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図24】実施の形態3に係る配光制御装置の動作例を示す図である。
【
図25】実施の形態3に係る配光制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図26】実施の形態5に係る配光制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図27】実施の形態5に係る配光制御装置の動作を示すフローチャートである。
【
図28】実施の形態5に係る注意位置の算出を説明するための図である。
【
図29】実施の形態5に係る注意位置の算出を説明するための図である。
【
図30】実施の形態5に係る各種距離を説明するための図である。
【
図31】実施の形態5に係る補正後の注視時間の算出を説明するための図である。
【
図32】実施の形態5に係る各種位置を説明するための図である。
【
図33】実施の形態5に係る各種位置を説明するための図である。
【
図34】実施の形態5に係る各種位置を説明するための図である。
【
図35】その他の変形例に係る配光制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図36】その他の変形例に係る配光制御装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施の形態1>
まず、本実施の形態1に係る配光制御装置について説明する前に、車両が曲路に進入する際の運転者の一般的な視線及び運転について説明する。
図1は、車両が曲路に進入する際の運転者の一般的な視線及び運転を説明するための図である。
【0011】
<曲路進入開始時点>
運転者は、曲路のうち車両が1~3秒後に位置する範囲FRへの方向と、曲路進入前に運転者から見える曲路の内周部分IPへの方向との間の角度に基づいて、曲路の曲率を視覚的に判断する。運転者は、このような判断を行うために、範囲FR及び内周部分IPに視線を向ける。
【0012】
<曲路進入中>
運転者は、範囲FRを注視して操舵しつつ、曲路の外周部分OPに視線を向けることで、車両の将来の走行コースを認識する。運転者は、曲路進入開始時点の曲率の判断と、曲路進入中の走行コース認識とを行うためには、範囲FR、内周部分IP及び外周部分OPに視線を向ける必要がある。
【0013】
その後、運転者は、車両を旋回させるように運転する。車両が内周部分IP付近を超えるまでは、運転者は内周部分IP注視して、内周部分IPを基準に車両を旋回させつつ、範囲FRのうち内周部分IPに近い部分を注視する。車両が内周部分IP付近を超えると、運転者は曲路の奥側を注視する。
【0014】
以上のことから、車両が曲路を走行する際には、前照灯によって、車両前方のうち内周部分IPに近い部分と、内周部分IPとが照射され、付随的に外周部分OPが照射されることが好ましい。以下で説明する本実施の形態1に係る配光制御装置によれば、そのような照射が可能となっている。
【0015】
図2は、本実施の形態1に係る配光制御装置12の構成を示すブロック図である。
図3は、配光制御装置12で用いる各種位置及び各種角度を説明するための図である。
【0016】
図2の配光制御装置12は、例えば車両に搭載されており、地図情報記憶部1と、位置情報検出部2と、第1前照灯10と、第2前照灯11とに通信可能に接続されている。
【0017】
地図情報記憶部1は、地図情報を記憶する。地図情報記憶部1に記憶される地図情報は、サーバからの地図情報によって適宜更新されてもよい。位置情報検出部2は、例えば、GSNN(Global Navigation Satellite System)衛星からの信号に基づいて、車両の位置を示す位置情報を検出する。
【0018】
第1前照灯10及び第2前照灯11のそれぞれは、車両の前照灯である。第1前照灯10の照射方向と、第2前照灯11の照射方向とは個別に制御可能である。本実施の形態1では、ロービームを照射可能な図示しない第3前照灯が、車両に設けられており、第1前照灯10及び第2前照灯11は、曲路近傍で点灯及び消灯される。なお、第1前照灯10及び第2前照灯11は、第1前照灯10及び第2前照灯11の照射範囲の形状を変更可能なADB(Adaptive Driving Beam)機能を有していてもよい。また、第1前照灯10及び第2前照灯11は、ADB機能を有するハイビーム前照灯の機能を流用してもよい。
【0019】
配光制御装置12は、情報取得部3と、走行軌跡推定部4と、内側基準位置取得部5と、目標位置設定部である近接目標位置設定部6と、第1角度算出部7と、第2角度算出部8と、照射制御部9とを備える。
【0020】
情報取得部3は、地図情報記憶部1から地図情報を取得し、位置情報検出部2から車両の位置を示す位置情報を取得する。以下で説明するように、配光制御装置12は、情報取得部3で取得された地図情報及び位置情報に基づいて、車両からの配光、つまり第1前照灯10及び第2前照灯11の配光を制御することが可能となっている。
【0021】
走行軌跡推定部4は、情報取得部3で取得された地図情報に基づいて、
図3に示すように、車両21が将来走行する曲路での走行軌跡ILを推定する。走行軌跡ILは、例えば、地図情報の道路のうち、車両21が走行する道路の中央に設定される。走行軌跡ILは、例えば、道路の一般的なデータ形式にならって、ノードとリンクとで表される。本実施の形態1では、情報取得部3で取得された位置情報で示される車両21と、情報取得部3で取得された地図情報の曲路と間の距離が、一定範囲(例えば50m~100m)になった場合に、走行軌跡推定部4は走行軌跡ILを推定する。
【0022】
内側基準位置取得部5は、内側基準位置を取得する。本実施の形態1では、内側基準位置取得部5は、情報取得部3で取得された地図情報及び位置情報に基づいて、内側基準位置を取得する。内側基準位置は、地図情報における曲路の内周部分に予め対応付けられた位置であり、
図3の位置TP、または、位置ETPである。
【0023】
位置TPは、曲路の手前の予め定められた地点に位置する車両21から見た、曲路の内周部分の端の位置である。曲路の手前の予め定められた地点は、例えば車両21が曲路に進入する2~3秒前の地点である。曲路が内周側に白線を有する場合、位置TPは白線上の位置である。
【0024】
位置ETPは、曲路の手前の予め定められた地点に位置する車両21と端の位置TPとを通る直線(方向24の矢印に対応)上の位置である。位置ETPは、直線と走行軌跡ILとの交点の位置、または、直線と曲路の外周部分との交点の位置であり、曲路が外周側に白線を有する場合、位置ETPは白線上の位置である。
【0025】
位置TPと位置ETPとは一対一の関係にあり、位置TP及び位置ETPの一方が定まると、他方が必然的に定まる。このため、地図情報には位置TP及び位置ETPのいずれかが定められていればよく、内側基準位置取得部5は、内側基準位置として、位置TP及び位置ETPのいずれかを、地図情報から取得すればよい。以下の説明では、位置TPを内側基準位置TPと記す。また、位置ETPを位置TPと区別しない場合には、内側基準位置TPと記し、位置ETPを位置TPと区別する場合には内側基準位置ETPと記す。
【0026】
近接目標位置設定部6は、
図3に示すように、走行軌跡ILのうち、車両が走行すべき目標位置である近接目標位置FPを設定する。本実施の形態1では、近接目標位置設定部6は、内側基準位置TPに関する後述のタイムチャートに従って、走行軌跡IL上に近接目標位置FPを設定する。近接目標位置FPは、車両21の位置に応じて変化する。
【0027】
第1角度算出部7は、
図3に示すように、車両21の前方方向22と、車両21から近接目標位置FPへの方向23との間の第1角度θpを算出する。第1角度θpは車両21の位置に応じて変化する。
【0028】
図4は、第1角度θpの算出を説明するための図である。第1角度算出部7は、地図上の車両21の位置(x(t),y(t))と、地図上の近接目標位置FPの位置(x(t+Ti),y(t+Ti))とから、車両21から近接目標位置FPへの方向23とY軸との間の偏角を算出する。なお、Tiは後述する注視時間である。
【0029】
車両21の前方方向22とY軸との間の偏角θtは、例えば車両21の操舵角センサまたはヨーレートセンサで算出される。そこで、第1角度算出部7は、車両21の前方方向22と、車両21から近接目標位置FPへの方向23との間の第1角度θpを、次式(1)によって算出する。
【0030】
【0031】
第2角度算出部8は、
図3に示すように、車両21の前方方向22と、車両21から内側基準位置TPへの方向24との間の第2角度θtpを算出する。第2角度θtpは車両21の位置に応じて変化する。なお、第2角度θtpを算出は、第1角度θpの算出と同様に行えばよい。
【0032】
照射制御部9は、第1角度θpと第2角度θtpとの差Δθを、次式(2)によって算出する。
【0033】
【0034】
照射制御部9は、差Δθが、閾値θth未満である場合に、近接目標位置FP及び内側基準位置TPに基づいて車両21の第1前照灯10の照射を制御する。この制御により、第1前照灯10は、近接目標位置FP及び内側基準位置TP、または、近接目標位置FP及び内側基準位置TPの周辺を照射する。
【0035】
一方、照射制御部9は、差Δθが閾値θth以上である場合に、近接目標位置FPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、かつ、内側基準位置TPに基づいて車両21の第2前照灯11の照射を制御する。この制御により、第1前照灯10は、近接目標位置FPまたはその周辺を照射し、第2前照灯11は、内側基準位置TPまたはその周辺を照射する。
【0036】
<動作>
図5は、本実施の形態1に係る配光制御装置12の一部の動作を示すフローチャートである。
図5の動作は、情報取得部3、走行軌跡推定部4、内側基準位置取得部5、近接目標位置設定部6、第1角度算出部7、及び、第2角度算出部8によって主に行われる。
【0037】
図5のステップS1にて、情報取得部3は、車両の位置を示す位置情報を取得する。ステップS2にて、情報取得部3は地図情報を取得する。
【0038】
ステップS3にて、走行軌跡推定部4は、ステップS1の位置情報で位置が示される車両と、ステップS2の地図情報が示す曲路との間の距離が、一定範囲(例えば50m~100m)内であるか否かを判定する。距離が一定範囲内であると判定された場合には処理がステップS4に進み、距離が一定範囲内でないと判定された場合には処理がステップS1に戻る。
【0039】
ステップS4にて、走行軌跡推定部4は、地図情報に基づいて走行軌跡ILを推定する。
【0040】
ステップS5にて、内側基準位置取得部5は、情報取得部3で取得された地図情報及び位置情報に基づいて、地図情報の曲路のうち、位置情報が示す車両の位置に最も近い曲路の内周部分を特定する。そして、内側基準位置取得部5は、地図情報の当該内周部分に予め対応付けられた内側基準位置TPを取得する。
【0041】
ステップS6にて、情報取得部3は、時刻tでの車両の位置情報を取得する。その後、処理がステップS7,S8に進む。
【0042】
ステップS7にて、第2角度算出部8は、ステップS5の内側基準位置TPと、ステップS6の位置情報と、車両21の前方方向22とに基づいて、
図3の第2角度θtpを算出する。その後、
図11のステップS31に進む。
【0043】
ステップS8にて、近接目標位置設定部6は、時刻tでの車速情報Vsを取得する。例えば、近接目標位置設定部6は、単位時間当たりのステップS6の位置情報の変化を、車速情報Vsとして取得してもよいし、図示しない車速センサの信号に基づいて車速情報Vsを取得してもよいし、デフォルトの車速情報Vsを取得してもよい。
【0044】
ステップS9にて、近接目標位置設定部6は、ステップS6の位置情報とステップS8の車速情報Vsとに基づき、内側基準位置TPに関する後述のタイムチャートに従って、走行軌跡IL上に車両21が走行すべき近接目標位置FPを設定する。近接目標位置FPの設定については後で詳細に説明する。
【0045】
ステップS10にて、第1角度算出部7は、ステップS9の近接目標位置FPと、ステップS6の位置情報と、車両21の前方方向22とに基づいて、
図3の第1角度θpを算出する。その後、
図11のステップS31に進む。
【0046】
図6は、ステップS9の近接目標位置FPの設定を詳細に示すフローチャートである。
図7は、近接目標位置FPの設定で用いられる内側基準位置TPに関するタイムチャートを示す図である。
【0047】
図8は、車両21が、曲路に進入する前の近接目標位置FPを説明するための図であり、具体的には、車両21が基準対応位置CPに達するまでの時間Ttp[sec]が、-3秒よりも小さい場合の近接目標位置FPを説明するための図である。負の時間Ttpは、車両21が、基準対応位置CPに達するまでの時間を示し、正の時間Ttpは、車両21は、基準対応位置CPに達してから経過した時間を示す。
【0048】
図8の基準対応位置CPは、走行軌跡ILのうちの内側基準位置TPに対応する位置である。本実施の形態1では、基準対応位置CPは、内側基準位置TPから曲路の幅方向への直線と走行軌跡ILとの交点の位置である。なお、距離Ltp,Lfpは、走行軌跡IL上の距離であるが、
図8では便宜上ずらして図示されている。このことは、
図8の後の図でも同様である。
【0049】
図6のステップS21にて、近接目標位置設定部6は、内側基準位置TPに基づいて、
図8の基準対応位置CPを設定する。そして、近接目標位置設定部6は、位置情報が示す車両21の位置と、基準対応位置CPとに基づいて、車両21と基準対応位置CPとの間の距離Ltp(
図8参照)を算出する。なお、距離Ltpなどの各種距離は、地図情報のリンク長の積算値に基づいて算出可能である。
【0050】
ステップS22にて、近接目標位置設定部6は、
図5のステップS8の車速情報Vsと、ステップS21の距離Ltpとを、次式(3)に適用することにより、車両21が基準対応位置CPに達するまでの時間Ttpを算出する。
【0051】
【0052】
ステップS23にて、近接目標位置設定部6は、
図7のグラフであるタイムチャートから、ステップS22の時間Ttpに対応する注視時間Tiを取得する。なお、
図7のタイムチャートの横軸は時間Ttpであり、縦軸は注視時間Tiである。
【0053】
ステップS24にて、近接目標位置設定部6は、
図5のステップS8の車速情報Vsと、ステップS23の注視時間Tiとを、次式(4)に適用することにより、車両21と近接目標位置FPとの間の
図8の距離Lfpを算出する。
【0054】
【0055】
ステップS25にて、近接目標位置設定部6は、車両21から走行軌跡ILに沿って距離Lfpだけ離れた位置に近接目標位置FPを設定する。その後、
図6の動作、つまり
図5のステップS9の処理が終了する。
【0056】
次に、近接目標位置FPの変化について説明する。
図8には、車両21が基準対応位置CPに達するまでの時間Ttpが、-3秒よりも小さい場合の近接目標位置FPが図示されている。
図7のタイムチャートでは、-3秒よりも小さい時間Ttpには、一定(例えば2.5秒、つまり図中の矢印が付された時間)である注視時間Tiが対応付けられている。
【0057】
図9は、車両21が、曲路に進入する前の近接目標位置FPを説明するための図であり、具体的には、時間Ttpが、-3秒以上であり-1秒より小さい場合の近接目標位置FPを説明するための図である。
図7のタイムチャートでは、-3秒以上であり-1秒より小さい時間Ttpには、時間Ttp以下の注視時間Tiが対応付けられており、時間Ttpが大きくなるにつれて注視時間Tiは小さくなる。このため、
図9の期間では、車両21と近接目標位置FPとの間の距離Lfpは小さくなる。
【0058】
図10は、車両21が、車両が基準対応位置CPに進入する前の近接目標位置FPを説明するための図であり、具体的には、時間Ttpが-1秒である場合の近接目標位置FPを説明するための図である。
図7のタイムチャートでは、-1秒である時間Ttpには、1秒である注視時間Tiが対応付けられている。このため、
図10の時点では、近接目標位置FPと基準対応位置CPとが重なる。
【0059】
以上のことから本実施の形態1では、車両21が基準対応位置CPに達する前に、近接目標位置設定部6は、近接目標位置FPと車両21との間の距離Lfpを小さくするように構成されている。このため、車両21が基準対応位置CPに達する前では、近接目標位置FPは、概ね、基準対応位置CPに対して車両21側に設定される。
【0060】
図7のタイムチャートでは、-1秒以上であり0秒より小さい時間Ttpには、一定(例えば1秒)である注視時間Tiが対応付けられている。このため、この期間では、近接目標位置FPは、基準対応位置CPに対して車両21の逆側に設定される。
【0061】
図7のタイムチャートでは、0秒以上である時間Ttpには、時間Ttpが大きくなるにつれて注視時間Tiが大きくなるように注視時間Tiが対応付けられている。このため、この期間では、車速情報Vsが一定であれば、車両21と近接目標位置FPとの間の距離Lfpは大きくなる。つまり本実施の形態1では、車両21が基準対応位置CPを超えて離れるにつれて、近接目標位置設定部6は、近接目標位置FPと車両21との間の距離Lfpを大きくするように構成されている。
【0062】
図11は、本実施の形態1に係る配光制御装置12の残部の動作を示すフローチャートである。
図11の動作は、照射制御部9によって主に行われる。
【0063】
ステップS31にて、照射制御部9は、
図5のステップS7で算出した第2角度θtpと、
図5のステップS10で算出した第1角度θpとの差Δθを、上述した式(2)によって算出する。
【0064】
ステップS32にて、照射制御部9は、ステップS31の差Δθが閾値θth未満であるか否かを判定する。差Δθが閾値θth未満であると判定された場合には処理がステップS33に進み、差Δθが閾値θth以上であると判定された場合には処理がステップS34に進む。
【0065】
ステップS33にて、照射制御部9は、近接目標位置FP及び内側基準位置TPに基づいて第1前照灯10の照射を制御する。これにより、第1前照灯10は、近接目標位置FP及び内側基準位置TPを照射する。その後、処理がステップS35に進む。
【0066】
ステップS34にて、照射制御部9は、近接目標位置FPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、かつ、内側基準位置TPに基づいて第2前照灯11の照射を制御する。これにより、第1前照灯10は、近接目標位置FPを照射し、第2前照灯11は、内側基準位置TPを照射する。その後、処理がステップS35に進む。
【0067】
ステップS35にて、照射制御部9は、車両21が基準対応位置CPを通り過ぎたか否かを判定する。車両21が基準対応位置CPを通り過ぎたと判定された場合には、処理がステップS36に進み、車両21が基準対応位置CPを通り過ぎていないと判定された場合には、処理が
図5のステップS6に戻る。
【0068】
ステップS36にて、照射制御部9は、第2前照灯11を消灯する。
【0069】
ステップS37にて、照射制御部9は、車両21が、曲路でない直線道路を走行しているか否かを判定する。直線道路を走行しているか否かは、車両が一定距離走行するごとの第1角度θpが、連続して閾値以下であるか否かによって判定されてもよいし、位置情報と地図情報とに基づいて判定されてもよい。直線道路を走行していると判定された場合には、処理がステップS38に進み、直線道路を走行していないと判定された場合には、処理がステップS39に進む。
【0070】
ステップS38にて、照射制御部9は、第1前照灯10を消灯する。その後、
図11の動作を終了する。この後、
図5の動作が適宜開始される。
【0071】
ステップS39にて、ステップS6,S8,S9と同様の処理が行われた後、照射制御部9は、近接目標位置FPに基づいて第1前照灯10の照射を制御する。これにより、第1前照灯10は、近接目標位置FPを照射する。その後、処理がステップS37に戻る。なお、ステップS38及びステップS39のループ処理が行われている間に、別の曲路が検出された場合には、処理がステップS4に戻ってもよい。
【0072】
図12~
図15のそれぞれは、本実施の形態1に係る配光制御装置12の動作例を示す図である。
図12~
図15のいずれの状態でも、車両21からロービームが照射されており、ロービームの照射範囲は一点鎖線で示されている。また、
図12~
図15では、第1前照灯10の照射範囲10aと、第2前照灯11の照射範囲11aとが図示されている。
【0073】
図12及び
図13は、車両21が曲路に進入する前の配光制御装置12の動作を示し、
図13の状態は
図12の状態よりも後の状態である。
図12の状態では、配光制御装置12は、走行軌跡ILの直線部分上に近接目標位置FPを設定し、内側基準位置TPを取得する。
図12の状態では、配光制御装置12は、近接目標位置FP及び内側基準位置TPに基づいて第1前照灯10の照射を制御する。
図12の状態では、近接目標位置FP及び内側基準位置TPは、第1前照灯10によって照射され、
図13の状態では、近接目標位置FP、内側基準位置TP及び内側基準位置ETPは、第1前照灯10によって照射される。なお、
図12の状態からしばらくの間、車両21と近接目標位置FPとの間の距離は小さくなる。
【0074】
図14は、車両21が基準対応位置CPに進入する前の、配光制御装置12の動作を示す。
図14の状態では、差Δθが閾値θth以上となり、配光制御装置12は、近接目標位置FPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、内側基準位置TPに基づいて第2前照灯11の照射を制御する。なお、第2前照灯11の照度は、第1前照灯10の照度よりも高くてもよい。なお、照度は、光度または輝度に対応する。
【0075】
図15は、車両21が基準対応位置CPを超えたときの配光制御装置12の動作を示す。
図15の状態では、配光制御装置12は、近接目標位置FPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、第2前照灯11を消灯する。
【0076】
図16及び
図17のそれぞれは、第1曲路と第2曲路と第3曲路とが連続する場合の本実施の形態1に係る配光制御装置12の動作例を示す図である。
図16及び
図17では、ロービームの照射範囲の図示は省略されている。(1)の矢印は、運転者からの近接目標位置FPへの視線を示し、(2)の矢印は、運転者からの内側基準位置TPへの視線を示し、(3)の矢印は近接目標位置FPよりも遠い車両21の位置である将来位置への視線を示す。将来位置は、例えば5秒後の車両21の位置である。
【0077】
図16(a)では、車両21が第1曲路に進入する3秒前の状態が示されており、近接目標位置FPと、第1曲路の内側基準位置TPとは、第1前照灯10によって概ね照射される。
【0078】
図16(b)では、車両21が第1曲路に進入する2秒前の状態が示されており、近接目標位置FPと、第1曲路の内側基準位置TP及び内側基準位置ETPと、将来位置とは、第1前照灯10によって概ね照射される。
【0079】
図16(c)では、車両21が第1曲路に進入する1秒前の状態が示されており、近接目標位置FPと、将来位置とは、第1前照灯10によって概ね照射され、第1曲路の内側基準位置TPは、第2前照灯11によって概ね照射される。
【0080】
図17(a)では、車両21が第2曲路に進入する3秒前の状態が示されており、近接目標位置FPと、第2曲路の内側基準位置TP及び内側基準位置ETPと、将来位置とは、第1前照灯10によって概ね照射される。第2前照灯11は消灯される。
【0081】
図17(b)では、車両21が第2曲路に進入する1秒前の状態が示されており、近接目標位置FPと、将来位置とは、第1前照灯10によって概ね照射され、第2曲路の内側基準位置TPは、第2前照灯11によって概ね照射される。
【0082】
図17(c)では、車両21が第3曲路に進入する3秒前の状態が示されており、近接目標位置FPと、第3曲路の内側基準位置TP及び内側基準位置ETPと、将来位置とは、第1前照灯10によって概ね照射される。第2前照灯11は消灯される。
【0083】
図17(d)では、車両21が第3曲路に進入する1秒前の状態が示されており、近接目標位置FPと、将来位置とは、第1前照灯10によって概ね照射され、第3曲路の内側基準位置TPは、第2前照灯11によって概ね照射される。
【0084】
なお以上では説明していないが、曲路は、交差点及びT字路などの屈曲部分を含んでもよい。また、第1前照灯10は、ロービームの照射範囲の左端または右端の外側を照射可能な配光パターンを形成するADB機能を有してもよい。さらに、第1前照灯10は、ADB機能を有するハイビーム前照灯の機能を流用してもよい。このような構成によれば、照射距離、及び、照射幅(指向角度)を自在に可変できるので、適切な照射を行うことができる。また、第1前照灯10は、俯角制御が可能であってもよい。
【0085】
<実施の形態1のまとめ>
以上のような本実施の形態1に係る配光制御装置12によれば、差Δθが閾値θth未満である場合に近接目標位置FP及び内側基準位置TPに基づいて車両21の第1前照灯10の照射を制御する。そして、差Δθが閾値θth以上である場合に近接目標位置FPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、かつ、内側基準位置TPに基づいて車両21の第2前照灯11の照射を制御する。このような構成によれば、車両21が曲路を走行する際に、近接目標位置FPが照射されるだけでなく、内側基準位置TPが照射される時間が長くなる。このため、運転者にとって曲路での運転計画の基準となる近接目標位置FP及び内側基準位置TPを適切に照射することができるので、曲路における運転者の運転を適切に補助することができる。
【0086】
また本実施の形態1では、内側基準位置は、内周部分の端の位置TP、または、車両21と当該端とを通る直線上の位置ETPである。このような構成によれば、内側基準位置が固定されることにより、一定曲率以上の急な曲路でも照射方向が安定するので、曲路における運転者の運転を適切に補助することができる。
【0087】
また本実施の形態1では、位置ETPは、車両21と位置TPとを通る直線と走行軌跡ILとの交点の位置、または、当該直線と曲路の外周部分との交点の位置である。このような構成によれば、車両21が曲路をある程度走行したときに、運転者は曲路の出口付近である位置ETPを容易に確認することができる。
【0088】
また本実施の形態1では、車両21が、基準対応位置CPに達する前に、近接目標位置FPと車両21との間の距離を小さくする。このような構成によれば、急な曲路などにおいて運転者が把握すべき内側基準位置TP近傍に近接目標位置FPを設定することができる。
【0089】
また本実施の形態1では、車両21が、基準対応位置CPを超えて離れるにつれて、近接目標位置FPと車両21との間の距離を大きくする。このような構成によれば、車両21が基準対応位置CPを超えて曲路から脱出するまでに、運転者の注意が徐々に遠くに向けられる傾向に合致する近接目標位置FPを設定することができる。
【0090】
<実施の形態2>
本実施の形態2に係る配光制御装置12の構成を示すブロック図は、
図2のブロック図と同様である。以下、本実施の形態2に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0091】
図18は、本実施の形態2に係る内側基準位置を説明するための図である。実施の形態1では、1つの曲路の内周部分に1つの内側基準位置TPが予め対応付けられていた。これに対して本実施の形態2では、1つの曲路に複数の内側基準位置TPが予め対応付けられている。
図18では、その一例として、内側基準位置TPとして第1内側基準位置TP1及び第2内側基準位置TP2が、1つの曲路の内周部分に予め対応付けられている。なお、第2内側基準位置TP2は、車両21に関して第1内側基準位置TP1よりも遠くなっている。
【0092】
近接目標位置設定部6は、第1内側基準位置TP1及び第2内側基準位置TP2について、内側基準位置TPと同様の動作を行う。これにより、近接目標位置設定部6は、第1内側基準位置TP1に基づいて、近接目標位置FPである第1近接目標位置FP1を設定し、第2内側基準位置TP2に基づいて、近接目標位置FPである第2近接目標位置FP2を設定する。
【0093】
照射制御部9は、第2近接目標位置FP2の距離Lfpである距離Lfp2と、第1近接目標位置FP1の距離Lfpである距離Lfp1とを、次式(5)に適用することにより、第1近接目標位置FP1と第2近接目標位置FP2との間の距離Δfを算出する。
【0094】
【0095】
照射制御部9は、第1近接目標位置FP1と第2近接目標位置FP2との間の距離Δfが閾値Fth以上であるか否かを判定する。以下では、説明を簡単にするために、閾値Fthの値は0であるものとして説明する。
【0096】
距離Δfが閾値Fth以上であると判定された場合、照射制御部9は、実施の形態1と同様に、第1近接目標位置FP1及び第2近接目標位置FP2のそれぞれに基づいて第1前照灯10を制御する。つまり、照射制御部9は、第1近接目標位置FP1を算出するための注視時間Tiの変化が完了した後に、第2近接目標位置FP2を算出するための注視時間Tiをデフォルト時間から変化させる。
【0097】
一方、距離Δfが閾値Fth未満であると判定された場合、照射制御部9は、第1近接目標位置FP1を算出するための注視時間Tiの変化が完了する前に、第2近接目標位置FP2を算出するための注視時間Tiを途中から変化させる。これについては、後で詳細に説明する。
【0098】
<動作>
図19及び
図20は、本実施の形態2に係る配光制御装置12の動作を示すフローチャートである。なお、
図19のステップS1~S4,S6の処理は、
図5のステップS1~S4,S6の処理と同様であるため、その処理の詳細な説明は適宜省略する。
【0099】
ステップS4の後、ステップS5aが行われる。ステップS5aにて、内側基準位置取得部5は、
図5のステップS5での内側基準位置TPの取得と同様に、第1内側基準位置TP1及び第2内側基準位置TP2を取得する。その後、ステップS6に進む。
【0100】
ステップS6にて、情報取得部3は、時刻tでの車両の位置情報を取得する。
【0101】
その後、ステップS41にて、第1内側基準位置TP1について、
図5のステップS7~S10及び
図11のステップS31と同様の処理が行われる。これにより、第1角度θp1、第2角度θtp1、第1注視時間Ti1、第1近接目標位置FP1、第1基準対応位置CP1及び差Δθ1を含む第1パラメータが取得される。つまり、第1パラメータは、第1内側基準位置TP1に関する、第1角度θp、第2角度θtp、注視時間Ti、近接目標位置FP、基準対応位置CP及び差Δθを含む。
【0102】
ステップS42にて、照射制御部9は、ステップS41の第1パラメータに基づいて、
図11のステップS32~S34と同様の処理を行う。これにより、第1内側基準位置TP1について、実施の形態1で説明した内側基準位置TPについての配光制御と同様の配光制御が行われる。
【0103】
ステップS43にて、第2内側基準位置TP2について、
図5のステップS8,S9と同様の処理が行われる。これにより、第2内側基準位置TP2の近接目標位置FPである第2近接目標位置FP2が取得される。
【0104】
ステップS44にて、照射制御部9は、ステップS41の第1パラメータに含まれる第1近接目標位置FP1と、ステップS43の第2近接目標位置FP2との間の距離Δfを、上述した式(5)によって算出する。
【0105】
図20のステップS45にて、照射制御部9は、距離Δfが閾値Fth以上であるか否かを判定する。距離Δfが閾値Fth以上であると判定された場合には、処理がステップS46に進み、距離Δfが閾値Fth未満であると判定された場合には、処理がステップS53に進む。
【0106】
ステップS46にて、照射制御部9は、車両21が第1基準対応位置CP1を通り過ぎたか否かを判定する。車両21が第1基準対応位置CP1を通り過ぎたと判定された場合には、処理がステップS47に進む。車両21が第1基準対応位置CP1を通り過ぎていないと判定された場合には、処理が
図19のステップS6に戻って、第1内側基準位置TP1についての配光制御が継続される。
【0107】
ステップS47にて、照射制御部9は、第2前照灯11を消灯する。
【0108】
ステップS48にて、照射制御部9は、車両21が、曲路でない直線道路を走行しているか否かを判定する。直線道路を走行していると判定された場合には、処理がステップS49に進む。直線道路を走行していないと判定された場合には、
図11のステップS39と同様の処理が行われた後、処理がステップS45に戻って、第1内側基準位置TP1についての配光制御が継続される。
【0109】
ステップS49にて、照射制御部9は、第1前照灯10を消灯する。このステップS49の処理が完了すると、第1内側基準位置TP1についての配光制御が完了する。
【0110】
ステップS50にて、第2内側基準位置TP2について、ステップS6,S41と同様の処理が行われる。これにより、第1角度θp2、第2角度θtp2、第2注視時間Ti2、第2近接目標位置FP2、第2基準対応位置CP2及び差Δθ2を含む第2パラメータが取得される。つまり、第2パラメータは、第2内側基準位置TP2に関する、第1角度θp、第2角度θtp、注視時間Ti、近接目標位置FP、基準対応位置CP及び差Δθである。
【0111】
ステップS51にて、照射制御部9は、ステップS50の第2パラメータに基づいて、
図11のステップS32~S34と同様の処理を行う。これにより、第2内側基準位置TP2について、実施の形態1で説明した内側基準位置TPについての配光制御と同様の配光制御が行われる。
【0112】
ステップS52にて、照射制御部9は、車両21が第2基準対応位置CP2を通り過ぎたか否かを判定する。車両21が第2基準対応位置CP2を通り過ぎたと判定された場合には、処理がステップS56に進む。車両21が第2基準対応位置CP2を通り過ぎていないと判定された場合には、処理がステップS50に戻って、第2内側基準位置TP2についての配光制御が継続される。
【0113】
ステップS53にて、照射制御部9は、第1近接目標位置FP1を算出するための第1注視時間Ti1の変化が完了していないが、第1内側基準位置TP1についての配光制御を途中で終了する。
【0114】
ステップS54にて、ステップS50及びステップS51と同様の処理が行われる。これにより、第2パラメータが取得され、第2内側基準位置TP2についての配光制御が行われる。なお、なるべく早く第2内側基準位置TP2についての配光制御を行うために、第2パラメータを取得する処理は、ステップS54より前に行われていてもよい。
【0115】
ステップS55にて、車両21が第2基準対応位置CP2を通り過ぎたか否かを判定する。車両21が第2基準対応位置CP2を通り過ぎたと判定された場合には、処理がステップS56に進む。車両21が第2基準対応位置CP2を通り過ぎていないと判定された場合には、処理がステップS54に戻って、第2内側基準位置TP2についての配光制御が継続される。
【0116】
ステップS56にて、第2内側基準位置TP2について、
図11のステップS36~S39と同様の処理が行われる。このステップS56の処理が完了すると、第2内側基準位置TP2についての配光制御が完了し、
図19の動作が終了する。この後、
図19の動作が適宜開始される。
【0117】
図21は、距離Δfが閾値Fth以上である場合のタイムチャートである。
図21のタイムチャートは、第1内側基準位置についての
図7のタイムチャートと、第2内側基準位置についての
図7のタイムチャートとを、横に並べたタイムチャートに対応する。
図21のタイムチャートでは、第1近接目標位置FP1を設定するための第1注視時間Ti1の変化が完了した後に、第2近接目標位置FP2を設定するための第2注視時間Ti2がデフォルト時間から変化している。
【0118】
図22は、距離Δfが閾値Fth未満である場合のタイムチャートである。
図22のタイムチャートは、第1内側基準位置についての
図7のタイムチャートと、第2内側基準位置についての
図7のタイムチャートとを、部分的に重ねたタイムチャートに対応する。
図22のタイムチャートでは、第1近接目標位置FP1を設定するための第1注視時間Ti1の変化が完了する前に、第2近接目標位置FP2を設定するための第2注視時間Ti2が、第1注視時間Ti1と同じ時間から変化している。
【0119】
図21だけでなく
図22においても、第1内側基準位置TP1に基づく配光制御から第2内側基準位置TP2に基づく配光制御への切り替え時点で、第1近接目標位置FP1と第2近接目標位置FP2とが実質的に重なる。このため、第1内側基準位置TP1と第2内側基準位置TP2との間の距離に関わらず、第1近接目標位置FP1から第2近接目標位置FP2への切り替えを滑らかに行うことができる。
【0120】
<実施の形態2のまとめ>
仮に、配光制御への切り替えに伴い、第1近接目標位置FP1から、第1近接目標位置FP1と位置が大きく異なる第2近接目標位置FP2に切り替えられると、運転者に違和感及び戸惑いを与える可能性がある。これに対して本実施の形態2によれば、距離Δfが閾値Fth未満であると判定された場合、第1注視時間Ti1の変化が完了する前に、第2注視時間Ti2を第1注視時間Ti1と同じ時間から変化させる。このような構成によれば、第1近接目標位置FP1から第2近接目標位置FP2への切り替えを滑らかに行うことができるので、運転者に違和感及び戸惑いを与える可能性を低減することができる。
【0121】
<実施の形態3>
図23は、本実施の形態3に係る配光制御装置12の構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態3に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0122】
図23の配光制御装置12は、監視装置13と通信可能に接続されている。監視装置13は、車両室内に設けられた監視カメラ14を含み、監視カメラ14は、運転者の顔を含む画像情報を生成し、当該画像情報を配光制御装置12に出力する。
【0123】
図23の配光制御装置12は、
図2の配光制御装置12に注意方向推定部15が追加された構成と同様である。注意方向推定部15は、運転者が注意を向けている方向である注意方向を推定する。本実施の形態3では、注意方向推定部15は、監視カメラ14の出力、つまり監視カメラ14で生成された画像情報から、運転者の視線の向きまたは顔の向きを抽出し、視線の向きまたは顔の向きに基づいて注意方向を推定する。本実施の形態3に係る注意方向は、車両の前方方向を基準とする左右の角度で表され、以下では注意方向θdrと記す。
【0124】
照射制御部9は、第1前照灯10の照射範囲10a及び第2前照灯11の照射範囲11aのうち、注意方向θdrに対応する範囲である注意範囲の照度を上げる。
【0125】
図24は、本実施の形態3に係る配光制御装置12の動作例を示す図である。
図24では、注意方向θdrに対応する注意範囲26が、第1前照灯10の照射範囲10aに含まれる場合が示されている。注意範囲26は、
図24(a)に示すように照射範囲10aの一部であってもよいし、
図24(b)に示すように照射範囲10aの全部であってもよい。
【0126】
なお、以上のことは、注意範囲が、第2前照灯11の照射範囲11aに含まれる場合も同様である。
図24(a)のような照射は、注意範囲が第1前照灯10の照射範囲10aに含まれる場合に用いられることが好ましく、
図24(b)のような照射は、注意範囲が第2前照灯11の照射範囲11aに含まれる場合に用いられることが好ましい。
【0127】
注意範囲26の幅を規定する
図24(a)の狭指向角度θntは、例えば運転者などによって任意に設定されてもよい。また、照射範囲10aに含まれる注意範囲26の幅を規定する狭指向角度θntと、照射範囲11aに含まれる注意範囲26の幅を規定する狭指向角度θntとは異なっていてもよい。
【0128】
図25は、本実施の形態3に係る配光制御装置12の動作を示すフローチャートである。この動作は、第1前照灯10及び第2前照灯11のいずれもが消灯されるまで行われる。
【0129】
ステップS61にて、注意方向推定部15は、監視装置13の監視カメラ14で生成された画像情報を取得する。
【0130】
ステップS62にて、注意方向推定部15は、ステップS61の画像情報に基づいて、運転者の注意方向θdrを推定する。
【0131】
ステップS63にて、照射制御部9は、ステップS62の注意方向θdrに対応する注意範囲26が、第1前照灯10の照射範囲10a及び第2前照灯11の照射範囲11a内に含まれるか否かを判定する。注意範囲26が照射範囲10a,11a内に含まれると判定された場合には処理がステップS64に進み、注意範囲26が照射範囲10a,11a内に含まれないと判定された場合には処理がステップS61に戻る。
【0132】
ステップS64にて、照射制御部9は、第1前照灯10の照射範囲10a及び第2前照灯11の照射範囲11aのうちの注意範囲26の照度を上げる。その後、処理がステップS61に戻る。
【0133】
<実施の形態3のまとめ>
以上のような本実施の形態3に係る配光制御装置12によれば、第1前照灯10の照射範囲10a及び第2前照灯11の照射範囲11aのうち、注意方向θdrに対応する範囲の照度を上げる。このような構成によれば、運転者が注意を向けている範囲の照度を上げることができるので、曲路における運転者の運転を適切に補助することができる。
【0134】
なお、照射制御部9は、第1角度θpまたは第2角度θtpと、運転者の注意方向θdrとの差が閾値(例えば5度)以内である場合にのみ、注意範囲26の輝度を上げてもよい。このような構成によれば、運転者が、近接目標位置FP及び内側基準位置TP以外の方向へ視線を向けた場合に、照射範囲10a,11aにおける急激な照度の変化を抑制することができる。
【0135】
<実施の形態4>
本実施の形態4に係る配光制御装置12の構成を示すブロック図は、
図23のブロック図と同様である。以下、本実施の形態4に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0136】
本実施の形態3では、注意方向推定部15は、車両の室内の監視カメラ14の出力に基づいて注意方向θdrを推定した。本実施の形態4では、注意方向推定部15は、この推定に加え、車両の図示しない操舵角センサの出力に基づいて注意方向θdrを推定する。以下、監視カメラ14の出力に基づく注意方向θdrを第1注意方向θdr1と記し、操舵角センサの出力に基づく注意方向θdrを第2注意方向θdr2と記す。
【0137】
照射制御部9は、第1注意方向θdr1及び第2注意方向θdr2が得られた場合に、第1注意方向θdr1に対して第2注意方向θdr2を優先して用いる。例えば、照射制御部9は、第1注意方向θdr1及び第2注意方向θdr2が得られた場合に、第1注意方向θdr1に関わらず、照射範囲10a及び照射範囲11aのうち、第2注意方向θdr2に対応する範囲の照度を上げる。
【0138】
第2注意方向θdr2は、
図3の走行軌跡ILに概ね対応するが、推定で得られる走行軌跡ILよりも精度が高い。また、一般的に第2注意方向θdr2は、第1注意方向θdr1よりも精度が高い。このため、第2注意方向θdr2を優先して用いることにより、運転者が注意を向けている範囲の精度を高めることができる。
【0139】
なお、実運用上、何らかの理由により、第1注意方向θdr1及び第2注意方向θdr2のうちの一方の注意方向だけしか得られない場合が想定される。そのような場合には、照射制御部9は、第1前照灯10の照射範囲10a及び第2前照灯11の照射範囲11aのうち、当該一方の注意方向に対応する範囲の照度を上げてもよい。
【0140】
<実施の形態4のまとめ>
以上のような本実施の形態4に係る配光制御装置12によれば、照射制御部9は、第1注意方向θdr1及び第2注意方向θdr2が得られた場合に、第1注意方向θdr1に対して第2注意方向θdr2を優先して用いる。このため、運転者が注意を向けている範囲の精度を高めることができるので、曲路における運転者の運転を適切に補助することができる。
【0141】
<実施の形態5>
図26は、本実施の形態4に係る配光制御装置12の構成を示すブロック図である。以下、本実施の形態4に係る構成要素のうち、上述の構成要素と同じまたは類似する構成要素については同じまたは類似する参照符号を付し、異なる構成要素について主に説明する。
【0142】
図26の配光制御装置12は、
図23の配光制御装置12に補正部16が追加された構成と同様である。
【0143】
注意方向推定部15は、実施の形態3と同様に運転者が注意を向けている方向である注意方向を推定する。ただし本実施の形態5に係る注意方向は、水平方向を基準とする上下の角度、つまり仰俯角で表され、以下では注意方向θdと記す。
【0144】
補正部16は、注意方向θdに基づいて、注意方向θdに対応する位置である注意位置FPdに近接目標位置FPを近づける補正を行う。
【0145】
図27は、本実施の形態5に係る配光制御装置12の動作を示すフローチャートである。この動作は、
図6の動作と並列的に行われる。
【0146】
ステップS71にて、注意方向推定部15は、監視装置13の監視カメラ14で生成された画像情報を取得する。
【0147】
ステップS72にて、注意方向推定部15は、ステップS71の画像情報に基づいて、運転者の注意方向θdを推定し、かつ、運転者の頭または視線の高さを推定する。
【0148】
ステップS73にて、補正部16は、注意方向θdと、運転者の頭または視線の高さと、地図情報に示される高低差と、車両21の位置情報と、走行軌跡ILとに基づいて、注意方向θdに対応する位置である注意位置FPdを設定する。なお、注意位置FPdの設定に用いられる車両21の位置情報は、ステップS71,S72の処理が行われている間に取得される。
【0149】
図28は、ステップS73の注意位置の設定を説明するための図である。
図28の上側の図は断面図であり、
図28の下側の図は平面図である。
【0150】
補正部16は、
図28に示すように、注意方向θdと、運転者31の頭または視線の高さhと、高低差Δhとを、次式(6)に適用することにより、注意位置FPdを設定するための距離Ldを算出する。なお、次式(6)が成り立つことは、
図28の上側の図から明らかである。
【0151】
【0152】
補正部16は、車両21の位置情報と、走行軌跡ILと、距離Ldとに基づいて、
図28の下側の図のように、車両21の位置から距離Ldだけ離れた円弧状の候補位置32と、走行軌跡ILとの交点を、注意位置FPdとして設定する。
【0153】
図29は、車両21の位置情報と、走行軌跡ILと、距離Ldとに基づく注意位置FPdの設定を説明するための図である。
図29では、破線の楕円部分が拡大して示されており、破線の楕円部分内には、走行軌跡ILを規定するノードLn1~Ln4が示されている。
【0154】
図29の状態の場合、補正部16は、ノードLn1~Ln4のうち、候補位置32と走行軌跡ILとの交点に最も近いノードLn2を、注意位置FPdとして設定してもよい。このような構成によれば、新たな座標を規定しなくても、既存の座標を利用することができるため、情報量の増加を抑制することができる。なお、補正部16は、候補位置32と走行軌跡ILとの交点に最も近いノードLn2と、次に最も近いノードLn3と、それらの間の比とを、注意位置FPdとして設定してもよい。このような構成によれば、注意位置FPdの精度を高めることができる。
【0155】
図27のステップS74にて、補正部16は、近接目標位置設定部6で設定された近接目標位置FPを取得する。また、補正部16は、車速情報Vsと、近接目標位置設定部6が当該近接目標位置FPを設定する際に
図6のステップS22で取得した、車両21が基準対応位置CPに達するまでの時間Ttpとを取得する。
【0156】
ステップS75にて、補正部16は、ステップS73の注意位置FPdと、ステップS74の近接目標位置FPとに基づいて、走行軌跡IL上の、注意位置FPdと近接目標位置FPとの間の距離ΔLdsを算出する。
図30は、距離ΔLdsと、時間Ttpに対応する距離Ltpとを示す図である。以下の説明では、ΔLdsが正の場合には、注意位置FPdが、車両21に関して近接目標位置FPよりも遠くに位置することを示すものとする。
【0157】
補正部16は、ステップS74の車速情報Vsと、距離ΔLdsとを、次式(7)に適用することにより、距離ΔLdsに対応する時間ΔTdsを算出する。次に説明するように、時間ΔTdsは補正量として用いられる。
【0158】
【0159】
ステップS76にて、補正部16は、
図7のタイムチャートから、ステップS74の時間Ttpに対応する注視時間Tiを取得する。そして、補正部16は、当該注視時間Tiと、ステップS75の時間ΔTdsとを、次式(8)に適用することにより、補正後の注視時間Ticを算出する。
【0160】
【0161】
図31は、ステップS76での補正後の注視時間Ticを説明するための図である。
図31には、補正前の注視時間Tiと時間Ttpとの関係を示す補正前タイムチャートTsと、補正後の注視時間Ticと時間Ttpとの関係を示す補正後タイムチャートTdとが図示されている。
図31の例では、時間ΔTdsが正の値であり、注意位置FPdが車両21に関して補正前の近接目標位置FPよりも遠い場合が示されている。また、
図31の例では、-3秒前の時間Ttp、-3秒~-1秒の時間Ttp、0秒以降の時間Ttpにおいて、値が異なる時間ΔTdsが算出されている。
【0162】
図27のステップS77にて、近接目標位置設定部6は、注視時間Tiの代わりに補正後の注視時間Ticを、上述した式(4)に適用することにより、補正後の近接目標位置FPを設定する。その後、処理がステップS71に戻る。
【0163】
図32、
図33及び
図34は、注意位置FPdと、補正前の近接目標位置FPと、補正後の近接目標位置FPとを示す図である。
図32~
図34では、補正前の近接目標位置FPが白抜きの丸で示され、補正後の近接目標位置FPが黒塗りの四角で示されている。
図32~
図34に示すように、補正後の近接目標位置FPは、補正前の近接目標位置FPよりも注意位置FPdに近くなっている。
【0164】
なお、
図32では、補正前の注視時間Ti及び補正後の注視時間Ticはそれぞれ2.5秒及び2.8秒であり、補正量である時間ΔTdsは0.3秒である。
図33では、補正前の注視時間Ti及び補正後の注視時間Ticはそれぞれ1.2秒及び1.4秒であり、補正量である時間ΔTdsは0.2秒である。
図34では、補正前の注視時間Ti及び補正後の注視時間Ticはそれぞれ1秒及び1.1秒であり、補正量である時間ΔTdsは0.1秒である。
【0165】
<実施の形態5のまとめ>
以上のような本実施の形態5に係る配光制御装置12によれば、注意方向θdに基づいて、注意方向θdに対応する注意位置FPdに近接目標位置FPを近づける補正を行う。このような構成によれば、運転者31に固有の視線特性及び運転特性に合わせた配光制御を実現することができる。
【0166】
なお、
図31のタイムチャートの補正に関して、以上の説明ではリアルタイムで補正したが、運転者認証及び機械学習機能などの技術を用いて、認証された運転者の運転特性に適切な補正後タイムチャートを予め学習、作成、保存及び適用してもよい。また、システムが大きくなるが、曲路ごとに補正後タイムチャートを予め学習、作成、保存及び適用してもよい。
【0167】
また、式(7)で算出した補正量である時間ΔTdsを、式(8)に直接用いるのではなく、時間ΔTdsに上下閾値を設定し、補正量を一定範囲内に制限してもよい。このような構成によれば、補正後タイムチャートが、補正前タイムチャートから大きく乖離することを抑制することができる。また、実施の形態1で説明した、車両21が基準対応位置CPに達する前に、近接目標位置FPと車両21との間の距離Lfpを小さくするという制御が容易になる。
【0168】
<その他の変形例>
上述した
図2の情報取得部3、走行軌跡推定部4、内側基準位置取得部5、近接目標位置設定部6、第1角度算出部7、第2角度算出部8、及び、照射制御部9を、以下「情報取得部3等」と記す。情報取得部3等は、
図35に示す処理回路81により実現される。すなわち、処理回路81は、各種情報を取得する情報取得部3と、走行軌跡ILを推定する走行軌跡推定部4と、近接目標位置FPを設定する近接目標位置設定部6と、第1角度θpを算出する第1角度算出部7と、内側基準位置TPを取得する内側基準位置取得部5と、第2角度θtpを算出する第2角度算出部8と、第1角度θと第2角度θtpとの差Δθが閾値θth未満である場合に近接目標位置FP及び内側基準位置TPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、差Δθが閾値θth以上である場合に近接目標位置FPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、かつ、内側基準位置TPに基づいて第2前照灯11の照射を制御する照射制御部9と、を備える。処理回路81には、専用のハードウェアが適用されてもよいし、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサが適用されてもよい。プロセッサには、例えば、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)などが該当する。
【0169】
処理回路81が専用のハードウェアである場合、処理回路81は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。情報取得部3等の各部の機能それぞれは、処理回路を分散させた回路で実現されてもよいし、各部の機能をまとめて1つの処理回路で実現されてもよい。
【0170】
処理回路81がプロセッサである場合、情報取得部3等の機能は、ソフトウェア等との組み合わせにより実現される。なお、ソフトウェア等には、例えば、ソフトウェア、ファームウェア、または、ソフトウェア及びファームウェアが該当する。ソフトウェア等はプログラムとして記述され、メモリに格納される。
図36に示すように、処理回路81に適用されるプロセッサ82は、メモリ83に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、配光制御装置12は、処理回路81により実行されるときに、各種情報を取得するステップと、走行軌跡ILを推定するステップと、近接目標位置FPを設定するステップと、第1角度θpを算出するステップと、内側基準位置TPを取得するステップと、第2角度θtpを算出するステップと、第1角度θと第2角度θtpとの差Δθが閾値θth未満である場合に近接目標位置FP及び内側基準位置TPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、差Δθが閾値θth以上である場合に近接目標位置FPに基づいて第1前照灯10の照射を制御し、かつ、内側基準位置TPに基づいて第2前照灯11の照射を制御するステップと、が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ83を備える。換言すれば、このプログラムは、情報取得部3等の手順や方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。ここで、メモリ83は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、それらのドライブ装置、または、今後使用されるあらゆる記憶媒体であってもよい。
【0171】
以上、情報取得部3等の各機能が、ハードウェア及びソフトウェア等のいずれか一方で実現される構成について説明した。しかしこれに限ったものではなく、情報取得部3等の一部を専用のハードウェアで実現し、別の一部をソフトウェア等で実現する構成であってもよい。例えば、情報取得部3については専用のハードウェアとしての処理回路81、インターフェースなどの取得サーキットリーでその機能を実現し、それ以外についてはプロセッサ82としての処理回路81がメモリ83に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0172】
以上のように、処理回路81は、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0173】
なお、各実施の形態及び各変形例を自由に組み合わせたり、各実施の形態及び各変形例を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0174】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、限定的なものではない。例示されていない無数の変形例が、想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0175】
4 走行軌跡推定部、5 内側基準位置取得部、6 近接目標位置設定部、7 第1角度算出部、8 第2角度算出部、9 照射制御部、10 第1前照灯、10a,11a 照射範囲、11 第2前照灯、12 配光制御装置、14 監視カメラ、15 注意方向推定部、16 補正部、21 車両、22 前方方向、23,24 方向、26 注意範囲、31 運転者、32 候補位置、CP 基準対応位置、FP 近接目標位置、FP1 第1近接目標位置、FP2 第2近接目標位置、FPd 注意位置、IL 走行軌跡、TP,ETP 内側基準位置、TP1 第1内側基準位置、TP2 第2内側基準位置、θd,θdr 注意方向、θp 第1角度、θtp 第2角度。