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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/48 20200101AFI20250207BHJP
【FI】
D06F33/48
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021114072
(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公開番号】P2023010153
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(74)【代理人】
【識別番号】100129377
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】川口 智也
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-074105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽内に配置され、パルセータが底部に配置された脱水槽と、
前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフルと、
前記バッフルの各々に注水するための注水装置と、
前記脱水槽の振動を検出する加速度検出手段と、
前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置と、
前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、
脱水工程において、前記偏芯量が注水閾値以上になったときに前記偏芯位置に対向する前記バッフルへの注水を開始し、前記偏芯量が加速閾値以下になったときに当該バッフルへの注水を停止するように前記注水装置を制御する制御手段とを備え、
前記脱水槽の回転数が共振回転数より大きい状態において、
前記脱水槽内の偏芯位置と前記バッフル内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量が大きいほど前記加速閾値が大きい値に設定されることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記脱水槽内の偏芯位置が前記バッフル内に給水された水の重心位置よりも下方にある場合の前記加速閾値は、前記脱水槽内の偏芯位置が前記バッフル内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の前記加速閾値よりも大きいとともに、
前記脱水槽内の偏芯位置が前記バッフル内に給水された水の重心位置と略同一高さにある場合の前記加速閾値は、前記脱水槽内の偏芯位置が前記バッフル内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の前記加速閾値よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水槽の回転を継続したまま脱水槽のアンバランスを解消して、脱水時における洗濯物の偏心による振動や騒音を抑制可能な洗濯機に関する。
【0002】
一般家庭あるいはコインランドリーなどに設置される一般的な洗濯機は、脱水時に脱水槽内で洗濯物が偏って振動や騒音が発生する。また、そのときの洗濯物の偏りが大きい場合、回転時の脱水槽の振幅が大きくなり、大きな振動となるので脱水運転を開始することができない。そこで、特許文献1には、脱水時に洗濯槽内の衣類のアンバランス量およびアンバランス位置を検出し、アンバランスがある場合には、脱水槽の周方向に均等に複数設けられたバッフルへの注水を行うことにより脱水槽のアンバランス状態を積極的に解消しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-56025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の洗濯機では、脱水時に、外槽に取り付けられた加速度センサから与えられた加速度値に基づいてアンバランス量を検出し、その検出されたアンバランス量(M)がアンバランス量設定値(mb)より小さいか否か判断される。アンバランス量設定値(mb)は、バッフルへの調整水の供給がなくても騒音が発生しない程度に洗濯物の偏りが小さいことを示す閾値である。
【0005】
偏芯荷重であるアンバランス量(M)がアンバランス量設定値(mb)より大きいと判断されると、アンバランス位置と対向するバッフルに給水される。アンバランス量(M)がアンバランス量設定値(mb)より小さくなるまで給水されて、アンバランス量(M)がアンバランス量設定値(mb)より小さくなると、バッフルへの給水が停止された後、脱水槽の回転数を脱水定常回転数まで上昇させて、所定脱水時間が経過すると脱水処理を終了する。
【0006】
このように、脱水槽が中速回転で回転している際に偏芯荷重と対向するバッフルに給水することにより、図13(a)または図13(b)に示すように、偏芯荷重が支持部を支点として脱水槽を偏芯荷重側に倒そうとするモーメントA1と、バッフルに給水された水が支持部を支点として脱水槽をバッフル内に給水された水重心側に倒そうとするモーメントA2とが略一致すると、脱水槽のアンバランスがほとんど無くなる。なお、図13では、バッフル内に給水された水の重心位置が、脱水槽の高さ方向中央部にある場合について図示している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1の洗濯機において、偏芯荷重と対向するバッフルに給水を行いながら、アンバランス量(M)がアンバランス量設定値(mb)より小さくなるとバッフルへの給水が停止されるが、その際に、脱水槽の振動を極力抑えるように制御しようとすると、バッフルに給水される水量がアンバランス量を打ち消すために必要な水量を超えた後でバッフルへの給水が停止される場合がある。その場合、上記モーメントA2が上記モーメントA1よりも大きくなる。
【0008】
例えば、脱水槽を500rpmで中速回転させた場合に偏芯荷重が大きくなるにつれて、上記モーメントA1は、図14の(直線1)に示すように徐々に大きくなる。同様に、脱水槽を500rpmで中速回転させた場合にバッフルに給水される水量が大きくなるにつれて、上記モーメントA2は、図14の(直線2)に示すように徐々に大きくなる。なお、図14の(直線3)及び(直線4)は、脱水槽を1200rpmで高速回転させた場合について、(直線1)及び(直線2)と同様の変化を示している。
【0009】
ここで、仮にモーメントA1が値aである場合、(直線2)から分かるようにバッフルに給水される水量が約0.35kgになったときにモーメントA2がモーメントA1と略同一となるが、バッフルに対して約0.55kgの水量が給水された後でバッフルへの給水が停止された場合を考える。その場合、モーメントA1が値aであるのに対してモーメントA2が値cとなっており、モーメントA2がモーメントA1よりも大きくなる。この場合でも、脱水槽の回転数が500rpmであれば、モーメントA1とモーメントA2とのモーメント差T1が小さいため、脱水槽が大きく振動しない。
【0010】
そこで、本発明の発明者は、脱水槽が中速回転で回転している際、アンバランス量を打ち消すために必要な水量を超える水量が供給された後でバッフルへの給水が停止された場合に、その後、脱水槽を高速回転させたとしても脱水槽が大きく振動しない状態が維持されるか否かを確認した。すると、脱水槽の回転数を約1200rpmまで上昇させた場合、回転数の上昇に応じて遠心力が大きくなり、図14に示すように、モーメントA1とモーメントA2とのモーメント差T2が上記のモーメント差T1と比べて著しく大きくなることが分かった。
【0011】
このように、本発明の発明者は、脱水槽が中速回転で回転している際、仮にバッフルに対して水を必要量よりも多く給水した場合でも脱水槽が大きく振動することはないが、その後、脱水槽を高速回転させた場合に、モーメントA1とモーメントA2とのモーメント差が著しく大きくなり、脱水槽が大きく振動してしまう問題が発生し得ることを見出した。
【0012】
そこで、本発明の発明者は、バッフルに対して給水が行われる中速回転時において、バッフルに給水される水量が必要な水量を超えないように制御することが重要であり、そのために、注水処理を終了するときの脱水槽内の偏芯量の閾値である加速閾値をどのように設定するかについて研究を重ねた結果、脱水槽内の偏芯位置がバッフル内に給水された水の重心位置に対して、どのような位置にあるかにより脱水槽を高速回転させた際の脱水槽の振動の挙動が異なるという知見を得た。
【0013】
すなわち、(1)脱水槽内の偏芯位置とバッフル内に給水された水の重心位置とが略同一高さにあるときに、加速閾値を極力小さく設定して、低振動を目指してバッフルに給水した場合に、結果的として、バッフルに対して水を必要量よりも多く給水してしまった場合であっても、高速脱水時の振動が大きく悪化することはない。
【0014】
(2)脱水槽内の偏芯位置がバッフル内に給水された水の重心位置よりも低い位置にあるときに、偏芯荷重の支持部支点からの距離は小さいので、同じ偏芯荷重量が水の重心位置よりも高い位置にあるときに比べて、中速回転時の振動を低振動化しなくても高速回転を実現できる。そのために、この場合における加速閾値は、偏芯荷重が水の重心位置よりも高い位置にあるときに比べて大きく設定する(甘く設定する)ことが望ましい。
【0015】
(3)脱水槽内の偏芯位置がバッフル内に給水された水の重心位置よりも高い位置にあるときに、偏芯荷重の支持部支点からの距離は大きいので、同じ偏芯荷重量が水の重心位置よりも低い位置にあるときに比べて、中速回転時の振動を低振動化せずに高速回転化することが難しい。そのために、この場合における加速閾値は、偏芯荷重が水の重心位置よりも低い位置にあるときに比べて小さく設定する(厳しく設定する)ことが望ましい。
【0016】
このように、本発明は、脱水槽内の偏芯位置とバッフル内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量に基づいて加速閾値を適正に設定することにより、脱水槽内の偏芯位置にかかわらず、低振動の状態で脱水槽を高速回転させて脱水を行うことを可能とするものである。
【0017】
本発明に係る洗濯機は、外槽内に配置され、パルセータが底部に配置された脱水槽と、前記脱水槽の内周面に対して周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフルと、前記バッフルの各々に注水するための注水装置と、前記脱水槽の振動を検出する加速度検出手段と、前記脱水槽の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置と、前記脱水槽内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段と、脱水工程において、前記偏芯量が注水閾値以上になったときに前記偏芯位置に対向する前記バッフルへの注水を開始し、前記偏芯量が加速閾値以下になったときに当該バッフルへの注水を停止するように前記注水装置を制御する制御手段とを備え、前記脱水槽の回転数が共振回転数より大きい状態において、前記脱水槽内の偏芯位置と前記バッフル内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量が大きいほど前記加速閾値が大きい値に設定されることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る洗濯機において、前記脱水槽内の偏芯位置が前記バッフル内に給水された水の重心位置よりも下方にある場合の前記加速閾値は、前記脱水槽内の偏芯位置が前記バッフル内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の前記加速閾値よりも大きいとともに、前記脱水槽内の偏芯位置が前記バッフル内に給水された水の重心位置と略同一高さにある場合の前記加速閾値は、前記脱水槽内の偏芯位置が前記バッフル内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の前記加速閾値よりも小さいことが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、脱水槽内の偏芯位置とバッフル内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量が大きい場合に加速閾値を大きくすることにより、脱水槽内の偏芯位置とバッフル内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量が大きい場合に、水を必要以上入れすぎないように加速閾値を大きく設定している。従って、脱水槽の振動を極力抑えながら、高速回転時に脱水槽が大きく振動するのを防止することができる。そのため、脱水槽内の偏芯位置とバッフル内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量にかかわらず、低振動の状態で脱水槽を高速回転させて脱水を行うことができる。
【0021】
本発明によれば、バッフル内に給水された水の重心位置に対して脱水槽内の偏芯位置が何れの位置にある場合でも、脱水槽の振動を極力抑えながら、高速回転時に脱水槽が大きく振動するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る洗濯機1の外観を示す斜視図である。
図2図1の洗濯機1の構成を示す模式図である。
図3図1の洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
図4図1の洗濯機1の電気系ブロック図である。
図5】加速閾値(mc)を説明する図である。
図6図1の洗濯機1の脱水工程での制御の流れを説明するための図である。
図7】開口させる給水バルブ31a,31b,31cを示すパラメータ表である。
図8】脱水槽2内の偏芯位置を示す模式的な図である。
図9】加速度センサ5から得られた加速度と、近接スイッチ55から得られたパルス信号psとの関係を示したグラフである。
図10】偏芯量・偏芯位置測定の処理を示すフローチャートである。
図11】脱水工程の手順を示すフローチャートである。
図12】脱水工程の手順を示すフローチャートである。
図13】脱水槽内のアンバランス状態を打ち消す制御を説明するための模式図である。
図14】偏芯荷重または注水量が増加したときのモーメントの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態の洗濯機1について、図に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の実施形態に係る縦型の洗濯機(以下、「洗濯機」と称す。)1の外観を示す斜視図である。図2は、本実施形態の洗濯機1の構成を示す模式図である。図3は、洗濯機1が有する脱水槽2の横断面図である。
【0026】
本実施形態の洗濯機1は、洗濯機1aと、脱水槽2と、外槽3と、注水装置30と、駆動部50と、制御手段60(図4参照)とを備える。
【0027】
図1に示す洗濯機本体1aは、略直方体形状である。洗濯機本体1aの上面には、脱水槽2に対して洗濯物を出し入れするための開口11が形成されるとともに、開口11を開閉可能な開閉蓋11aが取り付けられる。
【0028】
脱水槽2は、外槽3内において外槽3と同軸に配置されるとともに、回転自在に支持される有底筒状の部材である。脱水槽2は、内部に洗濯物を収容可能で、その内周面2aに多数の通水孔を有する。
【0029】
このような脱水槽2の底部2c中央には、パルセータ(撹拌翼)4が回転自在に配置される。図2に示すように、パルセータ4は、略円盤形状のパルセータ本体4aと、パルセータ本体4aの上面に形成される複数の上羽根部4bと、パルセータ本体4aの下面に形成される複数の下羽根部4cとを有する。パルセータ4は、外槽3内に貯留された洗濯水を撹拌して水流を発生させる。
【0030】
外槽3は、洗濯機本体1aの内部に配置された有底筒状の部材であり、内部に洗濯水を貯留可能である。図2に示すように、外槽3の外周面3aには、左右方向、上下方向及び前後方向の3方向の加速度を検出可能な2つの加速度センサ5,6が取り付けられる。加速度センサ5は、外槽3の上端部近傍に取り付けられ、加速度センサ6は、外槽3の下端部近傍に取り付けられる。本実施形態では、加速度センサ5により外槽3の上端部の加速度が検出され、加速度センサ6により外槽3の下端部の加速度が検出されるが、脱水槽2の上端部または下端部の加速度は、外槽3の上端部または下端部の加速度と略同一であるとする。そのため、本実施形態の洗濯機1において、2つの加速度センサ5,6が、脱水槽2の振動を検出する加速度検出手段を構成する。
【0031】
図3に示すように、脱水槽2の内周面2aには、周方向に等間隔(等角度)で3つのバッフル(注水管)8が設けられる。各バッフル8は、脱水槽2の底部2cから上端部に亘って上下方向に延び、脱水槽2の内周面2aから軸線S1に向けて突出して形成される。また、各バッフル8は、中空状であり、横断面形状が円弧状に形成される。このように、バッフル8の形状が、脱水槽2の軸線S1への突出が小さく、脱水槽2の周方向に沿って広がる形状であることで、脱水槽2の収容空間が狭くなることを抑制できる。
【0032】
図2に示すように、このようなバッフル8の上端部には、横長の循環水口8aが形成される。また、バッフル8の下端部には、脱水槽2の底部2c近傍、より具体的にはパルセータ本体4aよりも下方で開口する開口部8cが形成される。
【0033】
そのため、外槽3の底面に接続される排水配管3nの排水バルブ3n図2参照)が閉じられて外槽3内に洗濯水が貯められた状態で実施される洗い工程では、図2において矢印で示すように、パルセータ4の下羽根部4cで撹拌された洗濯水が開口部8cより浸入してバッフル8内をかけあがり、循環水口8aより吐出され、衣類がシャワー洗いされる。この動作が繰り返されることで、洗濯水が脱水槽2内で循環する。すなわち、バッフル8は洗濯水の循環機能を有する。
【0034】
注水装置30は、3つのバッフル8に個別に調整水を注水するものである。注水装置30は、3つのバッフル8にそれぞれ接続された3本の注水ホース30aを有し、注水ホース30aには、給水バルブ31aがそれぞれ配置される。注水ホース30aは、3つのバッフル8と同数だけ設けられ、3つのバッフル8の上端部にそれぞれ取り付けられる。なお、本実施形態では調整水として水道水が用いられる。
【0035】
図2に示す駆動部50は、モータ51によりプーリー52およびベルト53を回転させるとともに、脱水槽2の底部2cに向けて延出する駆動軸54を回転させて、脱水槽2やパルセータ4に駆動力を与え、脱水槽2やパルセータ4を回転させる。洗濯機1は、洗い工程では主としてパルセータ4のみを回転させ、脱水工程では脱水槽2とパルセータ4とを一体的に高速で回転させる。また、一方のプーリー52の近傍には、プーリー52に形成されたマーク52aの通過を検出できる近接スイッチ55が設けられる。
【0036】
図4は、本実施形態の洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。洗濯機1の動作は、マイクロコンピュータを含む制御手段60によって制御される。制御手段60は、システム全体の制御を司る中央制御部(CPU)61を備え、中央制御部61にメモリ62を接続する。制御手段60により、メモリ62に格納されたプログラムをマイクロコンピュータが実行することにより、予め定められた運転動作が行われるとともに、メモリ62には、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶される。
【0037】
メモリ62には、それぞれ以下に詳述する値である、脱水槽2の共振点(共振回転数)CPよりも低い所定回転数(N1)、注水閾値(ma)、加速閾値(mc)としての加速閾値(mc)、第1加速閾値(mc)、第2加速閾値(mc)及び第3加速閾値(mc)、脱水定常回転数、脱水運転が継続される所定脱水時間などが格納される。なお、本実施形態において、脱水槽2の共振点(共振回転数)CPは、外槽3自身の共振回転数より低く設定されている。
【0038】
(注水閾値)
注水閾値(ma)は、注水ノズル30a,30b,30cから3つのバッフル8に調整水の注水を開始するか否かを判定するための脱水槽2内の偏芯量の閾値である。そのため、脱水槽2内の偏芯量が注水閾値(ma)を上回っている場合に、注入処理を実施する。本実施形態では、注水閾値(ma)として、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい状態または脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態にかかわらず、さらに、脱水槽2内の偏芯位置にかかわらず、所定の注水閾値(ma)が設定される。
【0039】
(加速閾値)
加速閾値(mc)は、注水ノズル30a,30b,30cから3つのバッフル8に調整水の注水を開始した後、注水を終了するときの脱水槽2内の偏芯量の閾値である。そのため、注水処理を開始した後、脱水槽2内の偏芯量が所定の加速閾値(mc)以下になった場合に、注水処理を終了する。
【0040】
本実施形態では、加速閾値(mc)として、図5に示すように、脱水槽2の回転数が共振回転数より小さい場合に、脱水槽2内の偏芯位置にかかわらず、加速閾値(mc)が設定される。脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の上部にある場合に第1加速閾値(mc)が設定され、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の高さ方向中央部にある場合に第2加速閾値(mc)が設定され、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合に第3加速閾値(mc)が設定される。第3加速閾値(mc)は、第1加速閾値(mc)より大きい値であり、第2加速閾値(mc)は、第1加速閾値(mc)より小さい値である。
【0041】
なお、バッフル8に対して給水が行われる中速回転時(例えば500~600rpm)において、バッフル8内に給水された水の重心高さは、脱水槽2の高さ方向中央部の高さと略同一であり、バッフル8内に給水される水量にかかわらずほとんど変化しないと考えられる。
【0042】
本実施形態において、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にあるときは、偏芯荷重が脱水槽2を倒そうとするモーメントA1が比較的小さいため、仮にバッフル8への給水が必要量よりも少ない場合でも、低振動の状態で高速回転が可能である。これに対して、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の上部にあるときは、偏芯荷重が脱水槽2を倒そうとするモーメントA1が比較的大きいため、仮にバッフル8への給水が必要量よりも少ない場合、脱水槽2の振動が非常に大きくなってしまう。そのため、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にある場合の第3加速閾値(mc)は、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の上部にある場合の第1加速閾値(mc)より大きい値に設定される。
【0043】
また、上述したように、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にある場合、及び、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の上部にある場合は、脱水槽2内の偏芯荷重位置とバッフル8内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれが大きく、偏芯荷重が支持部を支点として脱水槽2を偏芯荷重側に倒そうとするモーメントA1と、バッフルに給水された水が支持部を支点として脱水槽2をバッフルに給水された水重心側に倒そうとするモーメントA2との差が大きくなる。
【0044】
これに対して、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の高さ方向中央部にある場合は、脱水槽2内の偏芯荷重位置とバッフル8内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれが、非常に小さくまたはほとんど無く、偏芯荷重が支持部を支点として脱水槽を偏芯荷重側に倒そうとするモーメントA1と、バッフルに給水された水が支持部を支点として脱水槽をバッフルに給水された水重心側に倒そうとするモーメントA2との差が非常に小さい。
【0045】
そのため、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の高さ方向中央部にある場合、仮にバッフル8に対して水を給水しすぎた場合でも、モーメントA1とモーメントA2とのモーメント差が著しく大きくなる可能性が低いため、第2加速閾値(mc)は、第1加速閾値(mc)より小さい値に設定される。
【0046】
本実施形態の洗濯機1では、外槽3の上端部に取り付けられた加速度センサ5により検出される振動が、外槽3の下端部に取り付けられた加速度センサ6により検出される振動より規定値以上大きい場合、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の上部にあると判定される。また、外槽3の下端部に取り付けられた加速度センサ6により検出される振動が、外槽3の上端部に取り付けられた加速度センサ5により検出される振動より規定値以上大きい場合、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にあると判定される。よって、外槽3の上端部に取り付けられた加速度センサ5により検出される振動と、外槽3の下端部に取り付けられた加速度センサ6により検出される振動との差が規定値より小さい場合、脱水槽2内の偏芯位置が脱水槽2の高さ方向中央部にあると判定される。なお、上記の規定値は、脱水槽2の上部領域と、脱水槽2の高さ方向中央部領域と、脱水槽2の下部領域とが、略均等になる(略同一の高さの領域になる)ように設定される。
【0047】
中央制御部61は、回転速度制御部63へ制御信号を出力し、さらにその制御信号をモータ制御部(モータ制御回路)64へ出力してモータ51の回転制御を行う。なお、回転速度制御部63は、モータ制御部64からモータ51の回転速度を示す信号を実時間で入力し、制御要素となるようにしている。
【0048】
アンバランス量検出部65には、2つの加速度センサ5,6が接続される。アンバランス位置検出部66には、加速度センサ5及び近接スイッチ55が接続される。本実施形態では、アンバランス量検出部65とアンバランス位置検出部66とによって偏芯検出手段を構成する。
【0049】
これにより、近接スイッチ55がマーカー52a(図2参照)を検知すると、2つの加速度センサ5,6から得られた左右方向、上下方向及び前後方向の加速度の大きさから、アンバランス量検出部65において脱水槽2の偏芯量(M)が算出され、偏芯量(M)がアンバランス量判定部67へ出力される。
【0050】
アンバランス位置検出部66は、近接スイッチ55から入力されたマーカー52aの位置を示す信号からアンバランス方向の角度を算出し、偏芯位置(N)であるアンバランス位置信号を注水制御部68へ出力する。ここで、アンバランス方向の角度とは、軸線S1の周方向におけるバッフル8に対する相対角度である。本実施形態では図8に示すようにその一例として、軸線S1を中心として等角度間隔で配される3つのバッフル8(A),8(B),8(C)と偏芯位置との相対角度を示すべくバッフル8(B),8(C)との中間位置を0°に設定している。
【0051】
注水制御部68は、アンバランス量判定部67及びアンバランス位置検出部66からの偏芯量(M)と偏芯位置(N)を示す信号が入力されると、予め格納される制御プログラムに基づいて給水すべきバッフル8及びその給水量を判断する。そして、注水制御部68は、選定した給水バルブ31a,31b,31cを開き、調整水Wの注入を開始する。注水制御部68は、脱水槽2に予め定める基準以上の偏芯量(M)が生じたときは、偏芯量(M)の算出に基づいて選定された注水ノズル30aからバッフル8の少なくとも1つに調整水Wの注入を開始し、偏芯量(M)が予め定める基準以下となったとき、調整水Wの注入を停止する。
【0052】
注水制御部68は、例えば図6に示すように、偏芯の要因となっている洗濯物の塊D(X)が脱水槽2のバッフル8(B)とバッフル8(C)の間にある場合は、バッフル8(A)に調整水Wを供給するように、ノズルユニット30とを制御する。また、洗濯物の塊D(Y)がバッフル8(A)の近傍にある場合は、バッフル8(B)とバッフル8(C)の両方に調整水Wを供給するようにノズルユニット30を制御する。
【0053】
中央制御部61は、図7のパラメータ表に記載された通り、給水バルブX、給水バルブZを開口させている。本実施形態では、偏芯位置(N)の特定を、図8に示すように、脱水槽2を周方向に関して6等分することにより、注水すべきバッフル8を1つに特定する偏芯位置(N)と、注水すべきバッフル8を2つに特定する偏芯位置(N)とに場合分けされる。
【0054】
注水すべきバッフル8を1つに特定する偏芯位置(N)の領域Yとは、領域(P(A)),(P(B))及び(P(C))である。また、偏芯の解消に要する偏芯位置(N)の領域Yとは、領域(P(AB)),(P(BC))及び(P(CA))である。また領域(P(A))、(P(B))及び(P(C))の軸心S1を中心とした角度は20°、領域(P(AB)),(P(BC))及び(P(CA))の軸心S1を中心とした角度は100°に設定されている。
【0055】
(偏芯量・偏芯位置の算出)
本実施形態の洗濯機1において、偏芯量(M)及び偏芯位置θ1の算出手順について、図9図10に基づいて説明する。
【0056】
本実施形態では、脱水工程において、加速度センサ5から発信される脱水槽2の少なくとも1周期t2を示す加速度に係る信号における任意の時点と近接スイッチ55からパルス信号psが発信されるタイミングとの時間差t1を演算し、時間差t1と脱水槽2の回転数との関係から脱水槽2内の周方向における偏芯位置θ1を算出し、算出された偏芯位置θ1に基づいて偏芯量(M)を低減させる制御を行う。本実施形態では、2つの加速度センサ5,6からの信号のうち、加速度センサ5からの信号を偏芯位置θ1の算出に利用する。
【0057】
これに対して、偏芯量(M)の算出には、外槽3の上端部に取り付けられた加速度センサ5からの信号と、外槽3の下端部に取り付けられた加速度センサ6からの信号とを利用するが、加速度センサ5からの信号の方が加速度センサ6からの信号よりも脱水槽2の振動を検知する際に重要と考えられる。そのため、加速度センサ5からの信号をa、加速度センサ6からの信号をbとすると、偏芯量(M)の算出には、(2×a+b)/3で算出される信号cが使用される。
【0058】
図9は、加速度センサ5に基づいて算出された加速度の時間変化を示す情報と、近接スイッチ55から得られたパルス信号psとの関係を示したグラフである。図9では便宜上、加速度センサ5から得られた上下方向の加速度の極大値(Ymax)とパルス信号psとの時間差t1から、偏芯位置θ1を算出する。なお、図9に示す本実施形態では一例として、加速度の極大値(Ymax)及び極小値(Ymin)から偏芯位置θ1を算出する態様を示したが、本発明の他の実施例として加速度ゼロ点、加速度の極大値(Ymax)、極小値(Ymin)何れか1つ又は複数から偏芯位置θ1を算出するようにしてもよい。
【0059】
図10は、偏芯量・偏芯位置測定の処理手順を示すフローチャートである。
【0060】
<ステップS1>
ステップS1では、中央制御部61は、2つの加速度センサ5,6から、左右方向、上下方向及び前後方向に係る加速度データ(MX,MY,MZ)を検出する。
【0061】
<ステップS2>
ステップS2では、中央制御部61は、加速度センサ5,6から得られた加速度データ(MX,MY,MZ)及び近接スイッチ55からの割り込み信号であるパルス信号psから、加速度データ(MX,MY,MZ)の極大値(Xmax,Ymax,Zmax)・極小値(Xmin,Ymin,Zmin)を決定する計算処理を行う。
【0062】
<ステップS3>
ステップS3では、中央制御部61は、近接スイッチ55からの割り込み信号である複数のパルス信号ps間の間隔から、脱水槽2が1回転する時間である1周期t2の値を算出して決定する。
【0063】
<ステップS4>
ステップS4では、中央制御部61は、近接スイッチ55からの割り込み信号である複数のパルス信号ps及びステップS2から得られた加速度データ(MX,MY,MZ)の極大値(Xmax,Ymax,Zmax)から、その時間差t1を算出して決定する。中央制御部61は、ステップS4において、図9に図示した上下方向に係る時間差t1である時間差t1Y以外に、左右方向、前後方向に係る時間差t1X,t1Zも併せて算出している。
【0064】
<ステップS5>
ステップS5では、中央制御部61は、ステップS2から得られた加速度データ(MX,MY,MZ)の極大値(Xmax,Ymax,Zmax)・極小値(Xmin,Ymin,Zmin)から、偏芯量(M)である左右方向、上下方向及び前後方向それぞれに係る偏芯量Mx,My,Mzを算出して決定する。本実施形態では、偏芯量Mx,My,Mzは、極大値(Xmax,Ymax,Zmax)及び極小値(Xmin,Ymin,Zmin)の差から求められる。
【0065】
<ステップS6>
ステップS6では、中央制御部61は、ステップS3から得られた1周期t2、ステップS4から得られた時間差t1から、左右方向、上下方向及び前後方向それぞれに係る偏芯位置θX1,θY1,θZ1を以下の式により算出して決定する。
θX1=t1X×360÷t2
θY1=t1Y×360÷t2
θZ1=t1Z×360÷t2
【0066】
脱水工程の手順について、図11及び図12に基づいて説明する。図11及び図12は、脱水工程の手順を示すフローチャートである。
【0067】
本実施形態では、中央制御部61が、図示しない脱水ボタンからの入力信号あるいは洗濯コース運転中に脱水工程を開始すべき旨の信号を受信すると、脱水工程を開始する。
【0068】
<ステップS101>
ステップS101では、中央制御部61は、脱水槽2をほぐし反転させた後、脱水槽2の回転を脱水槽2の共振点CPである約250~260rpmよりも低い所定回転数(N1)まで上昇させる。
【0069】
<ステップS102>
ステップS102では、中央制御部61は、脱水槽2内の偏芯量(M)が注水閾値(ma)以上であるか否かを判定する。中央制御部61により偏芯量(M)が注水閾値(ma)以上であると判定された場合、ステップS103に進む。中央制御部61により偏芯量(M)が注水閾値(ma)より小さいと判定された場合、ステップS105に進む。
【0070】
そのため、ステップS102において、まず、中央制御部61は、2つの加速度センサ5,6から与えられた加速度信号に基づいて、偏芯検出手段に偏芯量(M)及び偏芯位置θ1を算出させる制御を実行する。具体的に説明すると、中央制御部61は、例えば2つの加速度センサ5,6から得られた左右方向、上下方向及び前後方向に係る加速度信号を基に各方向についてそれぞれ偏芯量(M)を算出するとともに、加速度センサ5から得られた加速度信号を基に各方向についてそれぞれ偏芯位置θ1を算出する。その後、中央制御部61は、算出された偏芯量(M)と、メモリ62に格納された注水閾値(ma)とを比較し、偏芯量(M)が注水閾値以上であるか否かを判定する。
【0071】
<ステップS103>
ステップS104では、中央制御部61は、脱水槽2内の偏芯位置θ1に対向するバッフル8に対して注水を行う。
【0072】
<ステップS104>
ステップS104では、中央制御部61は、脱水槽2内の偏芯量(M)が加速閾値(mc)以下であるか否かを判定する。中央制御部61により偏芯量(M)が加速閾値(mc)以下であると判定された場合、ステップS105に進む。中央制御部61により偏芯量(M)が加速閾値(mc)より大きいと判定された場合、ステップS103に戻って、注水を継続する。
【0073】
<ステップS105>
ステップS105では、中央制御部61は、注水が行われている場合、注水を停止して、脱水槽2の回転数を上昇させる。なお、ステップS102において、中央制御部61により偏芯量(M)が注水閾値(ma)より小さいと判定されてステップS105に進んだ場合、注水が行われていないため、脱水槽2の回転数を上昇させる。
【0074】
<ステップS106>
ステップS106では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が脱水槽2の共振点CPよりも高い500rpmに到達したか否かを判定する。本実施形態において、脱水槽2の回転数500rpmは、脱水槽2の共振点CPよりも高い回転数であり、且つ、バッフル8に対して給水したときに適正にバッフル8を間違うことなく給水される可能な限り高い回転数である。中央制御部61により脱水槽2の回転数が500rpmに到達したと判定された場合、ステップS107に進む。中央制御部61により脱水槽2の回転数が500rpmに到達してないと判定された場合、ステップS102に戻る。
【0075】
<ステップS107>
ステップS107では、中央制御部61は、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にあるか否かを判定する。具体的には、中央制御部61は、外槽3の下端部に取り付けられた加速度センサ6により検出される振動が、外槽3の上端部に取り付けられた加速度センサ5により検出される振動より規定値以上大きい場合、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にあると判定する。中央制御部61により偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にあると判定された場合、ステップS108に進む。中央制御部61により偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にないと判定された場合、ステップS109に進む。
【0076】
<ステップS108>
ステップS108では、中央制御部61は、加速閾値(mc)を第3加速閾値(mc)に設定する。その後、ステップS112に進む。
【0077】
<ステップS109>
ステップS109では、中央制御部61は、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の上部にあるか否かを判定する。具体的には、中央制御部61は、外槽3の上端部に取り付けられた加速度センサ5により検出される振動が、外槽3の下端部に取り付けられた加速度センサ6により検出される振動より規定値以上大きい場合、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の上部にあると判定する。中央制御部61により偏芯荷重位置が脱水槽2の上部にあると判定された場合、ステップS110に進む。中央制御部61により偏芯荷重位置が脱水槽2の下部にないと判定された場合、ステップS111に進む。
【0078】
<ステップS110>
ステップS110では、中央制御部61は、加速閾値(mc)を第1加速閾値(mc)に設定する。その後、ステップS112に進む。
【0079】
<ステップS111>
ステップS111では、中央制御部61は、加速閾値(mc)を第2加速閾値(mc)に設定する。その後、ステップS112に進む。
【0080】
<ステップS112>
ステップS112では、中央制御部61は、脱水槽2内の偏芯量(M)が注水閾値(ma)以上であるか否かを判定する。中央制御部61により偏芯量(M)が注水閾値(ma)以上であると判定された場合、ステップS113に進む。中央制御部61により偏芯量(M)が注水閾値(ma)より小さいと判定された場合、ステップS115に進む。ステップS112での処理方法は、ステップS102での処理方法と同様である。
【0081】
<ステップS113>
ステップS114では、中央制御部61は、脱水槽2内の偏芯位置θ1に対向するバッフル8に対して注水を行う。
【0082】
<ステップS114>
ステップS114では、中央制御部61は、脱水槽2内の偏芯量(M)がステップS108,S110, S111の何れかで設定された加速閾値(mc)以下であるか否かを判定する。中央制御部61により偏芯量(M)が加速閾値(mc)以下であると判定された場合、ステップS115に進む。中央制御部61により偏芯量(M)が加速閾値(mc)より大きいと判定された場合、ステップS113に戻って、注水を継続する。
【0083】
<ステップS115>
ステップS115では、中央制御部61は、注水を停止して、脱水槽2の回転数を上昇させる。なお、ステップS112において、中央制御部61により偏芯量(M)が注水閾値(ma)より小さいと判定されてステップS115に進んだ場合、注水が行われていないため、脱水槽2の回転数を上昇させる。
【0084】
<ステップS116>
ステップS116では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が800rpmに到達したか否かを判定する。中央制御部61により脱水槽2の回転数が800rpmに到達したと判定された場合、ステップS117に進む。中央制御部61により脱水槽2の回転数が800rpmに到達してないと判定された場合、ステップS112に戻る。
【0085】
<ステップS117>
ステップS117では、中央制御部61は、脱水槽2の回転数が1200rpmになるまで、脱水槽2の回転数を上昇させる。
【0086】
<ステップS118>
ステップS118では、中央制御部61は、脱水開始から所定脱水時間が経過したか否かを繰り返し判定する。中央制御部61により脱水開始から所定脱水時間が経過したと判定された場合、脱水処理を終了する。
【0087】
本実施形態の洗濯機1は、外槽3内に配置され、パルセータ4が底部に配置された脱水槽2と、脱水槽2の内周面2aに対して周方向に等間隔で配置される3つ以上のバッフル8と、バッフル8の各々に注水するための注水装置30と、脱水槽2の振動を検出する加速度検出手段である加速度センサ5,6と、脱水槽2の回転に応じてパルス信号を発信する位置検出装置である近接スイッチ55と、脱水槽2内の偏芯量及び偏芯位置を検出する偏芯検出手段であるアンバランス量検出部65とアンバランス位置検出部66と、脱水工程において、偏芯量が注水閾値(ma)以上になったときに偏芯位置に対向するバッフル8への注水を開始し、偏芯量が加速閾値(mc)以下になったときに当該バッフル8への注水を停止するように注水装置30を制御する制御手段60とを備え、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、脱水槽内の偏芯位置とバッフル内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量が大きいほど加速閾値が大きい値に設定される。
【0088】
本実施形態の洗濯機1によれば、脱水槽2内の偏芯位置とバッフル8に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量が大きい場合に加速閾値を大きくすることにより、脱水槽2内の偏芯位置とバッフル8内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量が大きい場合に、水を必要以上入れすぎないように加速閾値(mc)を大きく設定している。従って、脱水槽2の振動を極力抑えながら、高速回転時に脱水槽2が大きく振動するのを防止することができる。そのため、脱水槽2内の偏芯位置とバッフル8内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量にかかわらず、低振動の状態で脱水槽2を高速回転させて脱水を行うことができる。
【0089】
本実施形態の洗濯機1において、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも下方にある場合の加速閾値(mc)は、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の加速閾値(mc)よりも大きいとともに、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置と略同一高さにある場合の加速閾値(mc)は、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の加速閾値(mc)よりも小さい。
【0090】
本実施形態の洗濯機1によれば、バッフル8内に給水された水の重心位置に対して脱水槽2内の偏芯位置が何れの位置にある場合でも、脱水槽の振動を極力抑えながら、高速回転時に脱水槽が大きく振動するのを防止することができる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本実施形態の構成は上述したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【0092】
例えば、上記実施形態では、加速閾値(mc)として、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、偏芯位置が脱水槽2の上部にある場合(脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合)の加速閾値(mc)、偏芯位置が脱水槽2の高さ方向中央部にある場合(脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置と略同一の高さにある場合)の加速閾値(mc)、偏芯位置が脱水槽2の下部にある場合(脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも下方にある場合)の加速閾値(mc)の3段階に設定したが、それに限られない。
【0093】
そのため、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、加速閾値(mc)を、偏芯位置が脱水槽2の高さ方向中央部より上方にある場合の加速閾値(mc)、偏芯位置が脱水槽2の高さ方向中央部より下方にある場合の加速閾値(mc)の2段階に設定してもよい。また、脱水槽2の回転数が共振回転数より大きい状態において、加速閾値(mc)を、脱水槽2内の偏芯位置とバッフル8内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量(上方向のずれ量、下方向のずれ量それぞれ)に応じて徐々に変化するように複数段階または無段階に設定してもよい。
【0094】
その場合において、加速閾値(mc)は、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合と脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも下方にある場合とで異なる値に設定され、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも下方にある場合の加速閾値(mc)の増大量は、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の加速閾値(mc)の増大量よりも大きいことが好適である。
【0095】
具体的には、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置と略同一の高さにある場合の加速閾値を基準値mcとした場合に、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも下方にある場合の加速閾値(mc)を、上記水の重心位置に対する偏芯位置の下方向へのずれ量が大きくなるにつれて基準値mcとの差が大きくなるように設定する。また、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の加速閾値(mc)を、上記水の重心位置に対する偏芯位置の上方向へのずれ量が大きくなるにつれて基準値mcとの差が大きくなるように設定する。
【0096】
そのとき、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも下方にある場合の加速閾値(mc)が下方向へのずれ量に応じて基準値mcとの差が大きくなるときの増大量が、脱水槽2内の偏芯位置がバッフル8内に給水された水の重心位置よりも上方にある場合の加速閾値(mc)が上方向へのずれ量に応じて基準値mcとの差が大きくなるときの増大量よりも大きくなるように設定される。
【0097】
なお、本実施形態の洗濯機1において、脱水槽2内の偏芯位置とバッフル8内に給水された水の重心位置との高さ方向のずれ量が所定値よりも大きい第1状態と、上述のずれ量が所定値よりも小さい第2状態とがある場合に、第1状態の加速閾値が第2状態の加速閾値よりも大きい値に設定された第1状態及び第2状態が少なくとも1つあれば、本発明の効果が得られる。
【0098】
上記実施形態では、加速度センサ5により検出される脱水槽2の上端部の振動と、加速度センサ6により検出される脱水槽2の下端部の振動とに基づいて、脱水槽2内の偏芯荷重位置が脱水槽2の上部、高さ方向中央部及び下部の何れにあるかを判定しているが、それに限られない。本発明に係る洗濯機において、偏芯荷重位置が脱水槽2の何れの高さにあるかを判定する方法は、任意である。
【0099】
上記実施形態では、脱水槽2の上部領域、脱水槽2の高さ方向中央部領域及び脱水槽2の下部領域が均等になるように規定値が設定されるが、それらの領域の高さは均等になる場合に限られない。例えば、脱水槽2の上部領域、脱水槽2の高さ方向中央部領域及び脱水槽2の下部領域の少なくとも1つの領域の高さが異なってもよい。
【0100】
上記実施形態では、バッフル8内に給水された水の重心高さが、脱水槽2の高さ方向中央部の高さと略同一である場合を説明したが、それに限られない。例えば、脱水槽2の内周面に設けられたバッフル8の形状などにより、バッフル8内に給水された水の重心高さが、脱水槽2の高さ方向中央部の高さより上方に配置されてもよいし、脱水槽2の高さ方向中央部の高さより下方に配置されてもよい。
【0101】
上記実施形態では、2つの加速度センサ5,6からの信号のうち、加速度センサ5からの信号を偏芯位置θ1の算出に利用し、偏芯量(M)の算出には、2つの加速度センサ5,6からの信号を利用する場合を説明したが、それに限られない。例えば、偏芯量(M)及び偏芯位置θ1の算出方法は、2つの加速度センサ5,6からの信号の少なくとも一方を利用するものであればよい。
【0102】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1 洗濯機
2 脱水槽
2a 脱水槽の内周面
2c 脱水槽の底部
3 外槽
4 パルセータ
5 加速度センサ(第1加速度センサ、加速度検出手段)
6 加速度センサ(第2加速度センサ、加速度検出手段)
8 バッフル(通水管部)
30 注水装置
55 近接スイッチ(位置検出装置)
60 制御手段
65 アンバランス量検出部(偏芯検出手段)
66 アンバランス位置検出部(偏芯検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14