(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】乾留ガス化焼却処理装置
(51)【国際特許分類】
F23M 5/08 20060101AFI20250207BHJP
F23G 5/027 20060101ALI20250207BHJP
F23N 3/02 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
F23M5/08 A
F23G5/027 Z
F23N3/02
(21)【出願番号】P 2020178265
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】391060281
【氏名又は名称】株式会社キンセイ産業
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金子 正元
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237046(JP,A)
【文献】特開平08-296824(JP,A)
【文献】特開2003-194320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 1/00-7/14
F23M 5/08
F23J 15/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納された廃棄物の一部を燃焼させつつその燃焼熱により該廃棄物の残部を乾溜して可燃性ガスを発生させる乾溜炉と、該乾溜炉から導入される可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉と、該燃焼炉から排出される燃焼排気を排出する排出手段と、該排出手段の途中で該燃焼排気を冷却する冷却炉とを備え、該乾溜炉は炉壁内に炉内と隔離されたウォータージャケットを備える乾溜ガス化焼却処理装置において、
該ウォータージャケットに冷却水を補給する補給手段と、該ウォータージャケット又は該冷却炉から熱水を取出す熱水取出手段と、該熱水取出手段により取出された熱水を冷却して冷水を得る冷却手段と、該冷却手段により冷却された冷水を該ウォータージャケット又は該冷却炉に供給する冷水供給手段とを備え、
該乾溜炉で該廃棄物が灰化される段階に、該補給手段から該ウォータージャケットに
、その水位を安全なレベルに保持する必要最低限
の量の冷却水を補給
し、かつ、該乾溜炉に対する酸素の供給を少なくすることにより廃棄物が灰化される際の
該廃棄物の燃焼熱を低減し
、その状態で
該ウォータージャケットから該熱水取出手段により取出された熱水を該冷却手段によ
り冷却することを特徴とする乾溜ガス化焼却処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の乾溜ガス化焼却処理装置において、前記冷却手段は前記熱水の温度を80~95℃の範囲の温度となるように制御することを特徴とする乾溜ガス化焼却処理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の乾溜ガス化焼却処理装置において、前記冷却手段は前記熱水取出手段により取出された熱水に送風して冷却する冷却ファンを備えるラジエーターであることを特徴とする乾溜ガス化焼却処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾留ガス化焼却処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾溜炉と、燃焼炉とを備え、該乾溜炉で生成した可燃性ガスを該燃焼炉に導いて完全燃焼させる乾溜ガス化焼却処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記乾溜ガス化焼却処理装置では、前記乾溜炉内に収納した廃タイヤ等の廃棄物の一部を燃焼させ、その燃焼熱により該廃棄物の残部を乾溜(熱分解)して、可燃性ガスを生成させる乾溜ガス化を行い、該乾溜ガス化により生成する可燃性ガスを該乾溜炉から前記燃焼炉に導入して燃焼させる。前記燃焼炉の燃焼排気は、冷却炉、急冷塔等による冷却、脱硫、脱臭処理を経て、バグフィルタで飛灰、煤塵等を除去した後、煙突から大気中に放出される。
【0004】
このとき、前記乾溜炉では、前記廃棄物の乾留に要する酸素の供給量を調整することにより、前記可燃性ガスの発生量がフィードバック制御されており、この結果として、該可燃性ガスの燃焼により前記燃焼炉内の温度が所定の温度に維持されている。
【0005】
一方、前記乾溜炉では前記廃棄物の乾留による熱から該乾溜炉の炉体を保護する必要があるが、該炉体を耐火煉瓦等の耐火材により形成すると、該耐火材が蓄熱するために前記フィードバック制御が困難になることがあるという問題がある。前記問題を解決するために、前記乾溜炉では炉壁内に炉内と隔離されたウォータージャケットを備え、該ウォータージャケットに供給される水により前記炉体を冷却して保護することが行われている。
【0006】
また、前記冷却炉では、炉壁内に設けられた水路に流通される水と前記燃焼排気との熱交換により該燃焼排気が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記乾溜ガス化焼却処理装置では、前記乾溜炉で前記廃棄物の乾溜が完了すると、該廃棄物が灰化されるが、このときには乾溜炉内の温度が1000℃程度となり、前記ウォータージャケットの水が沸騰して蒸発するので、蒸発により減少した分を補給する必要がある。また、前記冷却炉に流通される水も同様に蒸発により減少した分を補給する必要がある。
【0009】
しかしながら、前記乾溜ガス化焼却処理装置を山間部等の工業用水が乏しい場所に設置する場合には、十分な水量を確保することが難しいことがあり、前記ウォータージャケット又は前記冷却炉に補給する水量をできるだけ少なくすることが望まれる。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、前記ウォータージャケット又は前記冷却炉に補給する水量を低減することができる乾溜ガス化焼却処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明の乾溜ガス化焼却処理装置は、収納された廃棄物の一部を燃焼させつつその燃焼熱により該廃棄物の残部を乾溜して可燃性ガスを発生させる乾溜炉と、該乾溜炉から導入される可燃性ガスを燃焼させる燃焼炉と、該燃焼炉から排出される燃焼排気を排出する排出手段と、該排出手段の途中で該燃焼排気を冷却する冷却炉とを備え、該乾溜炉は炉壁内に炉内と隔離されたウォータージャケットを備える乾溜ガス化焼却処理装置において、該ウォータージャケットに冷却水を補給する補給手段と、該ウォータージャケット又は該冷却炉から熱水を取出す熱水取出手段と、該熱水取出手段により取出された熱水を冷却して冷水を得る冷却手段と、該冷却手段により冷却された冷水を該ウォータージャケット又は該冷却炉に供給する冷水供給手段とを備え、該乾溜炉で該廃棄物が灰化される段階に、該補給手段から該ウォータージャケットに、その水位を安全なレベルに保持する必要最低限の量の冷却水を補給し、かつ、該乾溜炉に対する酸素の供給を少なくすることにより廃棄物が灰化される際の該廃棄物の燃焼熱を低減し、その状態で該ウォータージャケットから該熱水取出手段により取出された熱水を該冷却手段により冷却することを特徴とする。
本発明の乾溜ガス化焼却処理装置では、前記熱水取出手段により前記ウォータージャケット又は前記冷却炉から取り出された熱水を前記冷却手段で冷却して冷水とし、該冷水を前記冷水供給手段により該ウォータージャケット又は該冷却炉に供給する。従って、前記ウォータージャケット又は前記冷却炉における水の沸騰、蒸発を抑制することができ、該ウォータージャケット又は該冷却炉に補給する水量を低減することができる。
【0012】
本発明の乾溜ガス化焼却処理装置において、前記冷却手段は前記熱水の温度を80~95℃の範囲の温度となるように制御することが好ましい。前記冷却手段が前記熱水の温度を前記範囲の温度となるように制御することにより、前記ウォータージャケット又は前記冷却炉における水の沸騰、蒸発を確実に抑制することができる。
【0013】
また、本発明の乾溜ガス化焼却処理装置において、前記冷却手段は、例えば、前記熱水取出手段により取出された熱水に送風して冷却する冷却ファンを備えるラジエーターとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の乾溜ガス化焼却処理装置の一構成例を示すシステム構成図。
【
図2】本発明の乾溜ガス化焼却処理装置における乾溜炉及び冷却炉とラジエーターとの間の配管の構成を示す
図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0016】
本実施形態の乾溜ガス化焼却処理装置1は、例えば、
図1に示すように、廃タイヤ等の廃棄物Aを収納し、その乾留ガス化及び灰化を行う2基の乾溜炉2a,2bと、乾溜炉2a,2bにガス通路3a,3bを介して接続される燃焼炉4とを備える。
【0017】
乾溜炉2a,2bは、その上面部にそれぞれ開閉自在な投入扉5a,5bを備える投入口6a,6bが形成され、投入口6a,6bから廃棄物Aを乾溜炉2a,2b内に投入可能とされている。また、乾溜炉2a,2bの下部は開閉自在の底扉7a,7bとなっている。そして、乾溜炉2a,2bは、投入扉5a,5b及び底扉7a,7bを閉じた状態では、その内部が実質的に外部と遮断されるようになっている。
【0018】
また、乾溜炉2a,2bはその炉壁内に、図示しないウォータージャケットを備えている。前記ウォータージャケットは乾溜炉2a,2bの炉内から隔離された構成とされている。
【0019】
底扉7a,7bの下部には乾溜炉2a,2bの内部と隔離された空室8a,8bが形成されており、空室8a,8bは、底扉7a,7bに設けられた複数の給気ノズル9a,9bを介して、乾溜炉2a,2bの内部に連通している。乾溜炉2a,2bの下部の空室8a,8bには、それぞれ乾溜酸素供給路10a,10bが接続されており、乾溜酸素供給路10a,10bは、酸素供給路11を介して押込ファン等により構成された酸素供給源12に接続されている。
【0020】
乾溜酸素供給路10a,10bにはそれぞれ制御弁13a,13bが設けられ、制御弁13a,13bは弁駆動器14a,14bによりその開度が制御されるようになっている。この場合、弁駆動器14a,14bは、CPU等を含む電子回路により構成された制御装置15により制御される。
【0021】
さらに、乾溜炉2a,2bの下部には、それぞれ乾溜炉2a,2bに収容された廃棄物Aに着火するための着火装置16a,16bが取り付けられている。着火装置16a,16bは点火バーナ等により構成され、燃料供給装置17a,17bから燃料供給路18a,18bを介して供給される助燃料を燃焼させることにより、廃棄物Aに燃焼炎を供給する。
【0022】
燃焼炉4は、廃棄物Aの乾溜により生じる可燃性ガスとその完全燃焼に必要な酸素(空気)とを混合するバーナ部19と、酸素(空気)と混合された可燃性ガスを燃焼させる燃焼部20とからなり、燃焼部20はバーナ部19の下流側でバーナ部19に連通している。バーナ部19の上流側には、ガス通路3a,3bがそれぞれダンパ21a,21bを介して接続され、乾溜炉2a,2bにおける廃棄物Aの乾溜により生じた可燃性ガスがガス通路3a,3bを介してバーナ部19に導入される。
【0023】
バーナ部19の外周部には、その内部と隔離された空室(図示せず)が形成され、該空室はバーナ部19の内周部に穿設された複数のノズル孔(図示せず)を介してバーナ部19の内部に連通している。前記空室には、酸素供給路11から分岐する燃焼酸素供給路22が接続されている。
【0024】
燃焼酸素供給路22には制御弁23が設けられ、制御弁23は弁駆動器24によりその開度が制御されるようになっている。この場合、弁駆動器24は、制御装置15により制御される。
【0025】
バーナ部19の上流側には、燃焼装置25が取り付けられている。燃焼装置25は点火バーナ等により構成され、燃料供給装置26から燃料供給路27を介して供給される助燃料を燃焼させることにより、バーナ部19に導入された可燃性ガスに着火し、或いは燃焼炉4を加熱する。
【0026】
燃焼部20の下流側には、燃焼炉4内での前記可燃性ガスの燃焼により生じた燃焼排気により加熱される温水ボイラ28が取り付けられている。燃焼炉4から排出される前記燃焼排気は1000℃程度の温度であり、温水ボイラ28を加熱した後、温水ボイラ28の出口側に設けられているダクト29aに排出される。ダクト29aは開閉弁30を介して冷却炉31の上端部に接続されている。冷却炉31は炉壁内に冷却水が流通される水路を備えており、1000℃程度の温度の前記燃焼排気は該水路に流通される水との熱交換により、500~600℃程度の温度に冷却され、冷却炉31の下部に開閉弁32を介して接続されたダクト29bに排出される。
【0027】
一方、ダクト29aからは、開閉弁30の上流側でダクト29cが分岐しており、ダクト29cは開閉弁33を介して急冷塔34の上端部に接続されている。急冷塔34は、ダクト29cから導入される燃焼排気に散水して冷却するスプレー35を備えており、スプレー35は冷却水を供給する給水装置(図示せず)及び空気圧縮機(図示せず)に接続されている。
【0028】
急冷塔34で冷却された燃焼排気は、急冷塔34の下部に開閉弁36を介して接続されたダクト29dにより取出される。ダクト29dは開閉弁32,36の下流側でダクト29bに合流する。
【0029】
ダクト29bはバグフィルタ37の一方の端部に接続されており、ダクト29bからバグフィルタ37に導入される燃焼排気には薬剤サイロ38から供給される消石灰及び活性炭が混合され、脱硫及び脱臭が行われる。バグフィルタ37の他方の端部には、ダクト29eが接続されており、ダクト29eは燃焼炉4内の燃焼排気を誘引する誘引ファン39を介して煙突40に接続されている。この結果、ダクト29eに流通される燃焼排気は、煙突40から大気中に放出される。
【0030】
また、燃焼炉4の下流側には、温水ボイラ28を用いない場合に燃焼排気を排出するダクト29fが設けられており、ダクト29fは開閉弁41を介してダクト29aに接続されている。
【0031】
次に、乾溜ガス化焼却処理装置1における廃棄物Aの焼却処理について、乾溜炉2aを用いる場合を例に説明する。尚、乾溜炉2bを用いる場合の処理は、aをbと読み替える以外、乾溜炉2aを用いる場合と同様である。
【0032】
乾溜ガス化焼却処理装置1において、廃棄物Aを焼却処理する際には、まず、底扉7aが閉じた状態で乾溜炉2aの投入扉5aを開き、投入口6aから廃タイヤ等の廃棄物Aを乾溜炉2a内に投入する。次に、制御装置15により乾溜炉2aに対する廃棄物Aの投入が完了し、乾溜炉2aに廃棄物Aが収容されていることが検知されると、投入扉5aを閉じて乾溜炉2a内を密封状態としたのち、燃焼炉4の燃焼装置25を作動させることにより、燃焼炉4の予熱が開始される。
【0033】
次に、燃焼炉4内の温度が、例えば760℃に達すると、制御装置15により弁駆動器14aが駆動されて制御弁13aの開度が所定の開度、例えば25%とされ、乾溜炉2aに酸素(空気)の供給が開始される。次に、制御装置15により、乾溜炉2aに対する廃棄物Aの投入の完了と、乾溜炉2aに廃棄物Aが収容されていること、ダンパ21aが開かれていることとが検知されると、乾溜炉2aの着火装置16aが作動されて廃棄物Aに着火され、廃棄物Aの部分的燃焼が開始される。
【0034】
次に、乾溜炉2aでは、制御装置15により弁駆動器14aが制御されて、制御弁13aの開度が段階的に増大される。これに伴って、乾溜炉2aにおける廃棄物Aの部分的燃焼は、次第に拡大して安定化し、廃棄物Aの底部に火床が形成される。前記火床が形成されると着火装置16aは停止され、廃棄物Aの部分的燃焼の熱により廃棄物Aの他の部分の乾溜が開始され、可燃性ガスの生成が始まり、該可燃性ガスはガス通路3aを介してバーナ部19に導入される。
【0035】
バーナ部19では、制御装置15により弁駆動器24が駆動されて制御弁23の開度が所定の開度とされ、酸素供給源12から酸素供給路11、燃焼酸素供給路22を介して酸素(空気)が供給されている。そこで、前記可燃性ガスは、燃焼酸素供給路22を介して供給される酸素(空気)と混合され、燃焼装置25から供給される燃焼炎により着火されて、燃焼部20における燃焼が開始される。
【0036】
乾溜炉2aにおける可燃性ガスの発生が活発になり、該可燃性ガスが燃焼炉4において自然燃焼を開始すると、燃焼炉4内の温度は次第に上昇し、予め設定された第1の設定温度、例えば1000℃に達する。
【0037】
前記可燃性ガスの燃焼により燃焼炉4内の温度が前記第1の設定温度に達すると、燃焼装置25が停止され、制御装置15は、前記可燃性ガスの燃焼により、燃焼炉4内の温度が該第1の設定温度に維持されるように制御弁13aの開度を調整し、乾溜炉2aにおける該可燃性ガスの生成をフィードバック制御する。
【0038】
燃焼部20における前記可燃性ガスの燃焼により発生する燃焼排気は、温水ボイラ28で冷却されてダクト29aに排出され、又は、温水ボイラ28を経由することなく、ダクト29fを介してダクト29aに排出される。
【0039】
ダクト29aに排出された前記燃焼排気は、温水ボイラ28を経由した場合には、ダクト29aから冷却炉31に導入されてさらに冷却され、ダクト29bに排出される。また、温水ボイラ28を経由しなかった場合には、ダクト29cから急冷塔34に導入されて冷却され、ダクト29dを介してダクト29bに排出される。
【0040】
次に、ダクト29bに排出された前記燃焼排気は、薬剤サイロ38から供給される消石灰及び活性炭と混合されて脱硫及び脱臭され、バグフィルタ37に導入されて飛灰や塵埃等が除去された後、ダクト29eに排出され、さらに煙突40から大気中に放出される。
【0041】
乾溜ガス化焼却処理装置1における廃棄物Aの焼却処理において、乾溜炉2a,2bは前記ウォータージャケットに収容された水により冷却されることにより、前記廃棄物の乾溜による熱から炉体が保護されており、冷却塔31では前記水路に循環される水により冷却塔31に導入された燃焼排気が冷却される。
【0042】
乾溜ガス化焼却処理装置1では、前記ウォータージャケットに収容された水を冷却塔31の前記水路に循環させるようにすることができるが、この場合、乾溜炉2aにおける廃棄物Aの乾溜が完了し、廃棄物Aが灰化される段階では、乾溜炉2a内の温度が1000℃程度となり、前記ウォータージャケットの水が沸騰して蒸発する。このため、蒸発により減少した分の水を補給する必要が生じるが、山間部等の工業用水が乏しい場所では、十分な水量を確保することが難しい。
【0043】
そこで、乾溜ガス化焼却処理装置1では、
図2に示すように、乾溜炉2a,2bのウォータージャケット41a、41bに、ウォータージャケット41a
、41bから熱水を取出す熱水取出手段としての第1の熱水導管43を備え、第1の熱水導管43は熱水を冷却して冷水を得る冷却手段としての複数のラジエーター44に接続されている。各ラジエーター44は内部に流通される熱水を冷却する冷却ファン45を備えており、例えば冷却塔31用に18基、乾溜炉2a又は乾溜炉2b用に2基のラジエーター44が第1の熱水導管43に互いに並列に接続されている。
【0044】
各ラジエーター44は、前記冷水を取り出す取出導管46を備えており、各取出導管46は互いに合流して、冷水をウォータージャケット41aに供給する冷水供給手段としての第1の冷水導管47となり、第1の冷水導管47は第1の循環ポンプ48を介してウォータージャケット41aに接続されている。
【0045】
また、冷却塔31の水路42は、水路42から熱水を取出す熱水取出手段としての第2の熱水導管49を備え、第2の熱水導管49は複数のラジエーター44の上流側で第1の熱水導管43に接続されている。一方、第1の冷水導管47からは、冷水を水路42に供給する冷水供給手段としての第2の冷水導管50が分岐しており、第2の冷水導管50は第2の循環ポンプ51を介し水路42に接続されている。
【0046】
乾溜ガス化焼却処理装置1では、装置の運転が開始されたとき、例えば、燃焼炉4の燃焼装置25の作動に合わせて、第1、第2の循環ポンプ48、51が作動される。乾溜炉2aのウォータージャケット41aでは、第1の循環ポンプ48が作動されると、ウォータージャケット41aから取り出された熱水が第1の熱水導管43を介してラジエーター44に供給され、ラジエーター44で冷却された冷水が取出導管46、第1の冷水導管47を介してウォータージャケット41aに供給されることにより循環される。
【0047】
また、冷却塔31の水路42では、第2の循環ポンプ51が作動されると、水路42から取り出された熱水が熱水導管49、第2の第1の熱水導管43を介してラジエーター44に供給され、ラジエーター44で冷却された冷水が取出導管46、第1の冷水導管47、第2の冷水導管50を介して水路42に供給されことにより循環される。
【0048】
ここで、ラジエーター44は冷却ファン45を作動又は停止させることにより、ウォータージャケット41aに貯留される水又は水路42に流通される水の温度が80~95℃の範囲となるように制御する。前記温度の制御は、例えば、ウォータージャケット41a、水路42に図示しない温度センサ等の温度検知手段を設け、該温度検知手段により検知される温度が90℃を超えたら冷却ファン45を作動させ、80℃を下回ったら冷却ファン45を停止させることにより行うことができる。また、前記温度検知手段により検知される温度の検出、冷却ファン45の作動又は停止は
図1に示す制御装置15により行うことができる。
【0049】
この結果、本実施形態の乾溜ガス化焼却処理装置1では、乾溜炉2a,2bのウォータージャケット41a、41bに貯留される水又は冷却炉31の水路42に流通される水の沸騰、蒸発を抑制することができ、ウォータージャケット41a、41b又は水路42に補給する水量を低減することができる。
【0050】
しかし、乾溜ガス化焼却処理装置1では、ラジエーター44を使用しても、冷却炉31の前記冷却水の温度が上昇し、沸騰、蒸発して、冷却炉31に補給する水量が増加することがある。
【0051】
このような場合には、冷却炉31に補給する水量を必要最低限な量で増加させて冷却炉31の水位を安全なレベルに保持している間に、燃焼炉4における第1の設定温度を例えば1000℃から900℃に低下させる。そして、前記可燃性ガスの燃焼量、燃焼排気量を低減した状態で、ラジエーター44を使用して前記冷却水を冷却することにより、該冷却水の沸騰、蒸発を抑制して、乾溜ガス化焼却処理装置1の運転を続行することができる。
【0052】
乾溜ガス化焼却処理装置1では、例えば、冷却炉31の冷却水の温度が97℃に達したら前記第1の設定温度を900℃に低下させ、冷却炉31の冷却水の温度が94℃に低下したら前記第1の設定温度を1000℃に戻すようにすることができる。
【0053】
また、乾溜ガス化焼却処理装置1では、乾溜炉2aで廃棄物Aが灰化される段階においてラジエーター44を使用しても、乾溜炉2aのウォータージャケット41aの温度が上昇し、沸騰、蒸発して、ウォータージャケット41aに補給する水量が増加することがある。
【0054】
このような場合には、ウォータージャケット41aに補給する水量を必要最低限な量で増加させてウォータージャケット41aの水位を安全なレベルに保持している間に、制御弁13aの開度を例えば80%から50%に低下させる。そして、廃棄物Aが灰化される際の熱量を低減した状態で、ラジエーター44を使用して前記冷却水を冷却することにより、該冷却水の沸騰、蒸発を抑制して、乾溜ガス化焼却処理装置1の運転を続行することができる。
【0055】
乾溜ガス化焼却処理装置1では、例えば、ウォータージャケット41aの冷却水の温度が97℃に達したら制御弁13aの開度を50%に低下させ、ウォータージャケット41aの冷却水の温度が94℃に低下したら制御弁13aの開度を80%に戻すようにすることができる。
【0056】
また、乾溜炉2aで廃棄物Aが灰化される段階において制御弁13aの開度を低下させると、未燃ガスが発生し燃焼炉4に流れ込むため、該未燃ガスをもう一方の乾溜炉2bで燃焼させる必要がある。しかし、制御弁13aの開度を低下させることにより、乾溜炉2aで廃棄物Aが灰化される時間が長くなることを見越して、燃焼炉4における第1の設定温度を例えば1000℃から900℃に低下させると、乾溜炉2aで生成した可燃性ガスが燃焼炉4内で自己燃焼する時間を長くすることができ、廃棄物Aが灰化される時間を十分に確保することができる。この結果、燃焼炉4における第1の設定温度が低下しても、燃料供給装置26で助燃料を燃焼させる必要がなく、乾溜ガス化焼却処理装置1を経済的に運転することができる。
【0057】
尚、燃焼炉4における第1の設定温度を低下させたり、乾溜炉2aにおける制御弁13aの開度を低下させたりするときには、廃棄物Aの単位時間当たりの焼却処理量が低減するので注意が必要である。
【符号の説明】
【0058】
1…乾溜ガス化焼却処理装置、 2a,2b…乾溜炉、 4…燃焼炉、 29…排出取段、 31…冷却塔、 41a,41b…ウォータージャケット、 43,49…熱水取出手段、 44…冷却手段、 47、50…冷水供給手段。