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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】蓋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 51/16 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
B65D51/16 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021128233
(22)【出願日】2021-08-04
(65)【公開番号】P2023023056
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】592145039
【氏名又は名称】協栄プリント技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】小林 明宏
(72)【発明者】
【氏名】梶 孝之
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-050008(JP,A)
【文献】特開平10-006296(JP,A)
【文献】実開昭59-044622(JP,U)
【文献】特開2008-254031(JP,A)
【文献】特開平07-014978(JP,A)
【文献】特開2000-153321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使い捨てタイプの食品用容器における蓋の製造方法であって、
プレス金型におけるパンチを用いて前記蓋を部分的に打ち抜くことにより、前記蓋に通気孔と、前記通気孔を開閉可能に閉止する片持ち状の弁とを同時に形成する孔加工工程を備え
前記プレス金型は、前記パンチと協働して前記蓋を部分的に打ち抜くダイプレートを備え、
前記パンチは、前記ダイプレートと共に前記蓋のせん断を行うせん断部と、前記蓋のせん断を行わない非せん断部とを有し、
打ち抜き時、前記パンチのせん断部は、前記ダイプレートのダイ穴に挿入されて前記蓋をせん断し、前記パンチの非せん断部は、前記ダイプレートの前記ダイ穴にクリアランスを隔てて挿入され、前記蓋をクランク状に折曲し、この折曲部で前記蓋に繋がる前記弁を形成する
ことを特徴とする蓋の製造方法。
【請求項2】
前記通気孔は、0.1mm以上1mm以下の最小幅を有する
請求項1に記載の蓋の製造方法。
【請求項3】
前記プレス金型は、前記パンチを支持するパンチプレートと、前記パンチプレートに昇降可能に取り付けられたストリッパプレートとを備え、
前記パンチプレートは、前記パンチの被支持部を嵌合挿入させ固定するためのパンチ挿入穴と、前記パンチ挿入穴の周囲に設けられ前記パンチの先端側に向かって突出された凸部とを有し、
前記ストリッパプレートは、前記凸部を隙間を以て嵌合させるための凹部と、前記凹部の底面に貫通形成され前記パンチの刃部をスライド可能に常時挿通させるためのパンチガイド穴とを有する
請求項1または2に記載の蓋の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の蓋の製造方法で使用される前記プレス金型の製造方法であって、
前記パンチ、前記パンチ挿入穴、前記ダイ穴および前記パンチガイド穴を、ワイヤー放電加工によって作製するステップを備える
ことを特徴とするプレス金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は蓋の製造方法に係り、特に、使い捨てタイプの食品用容器における蓋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弁当、生鮮食品等の食品を入れる容器本体と、容器本体に被さってその上端開口部を閉じる蓋とを備えた食品用容器が公知である。こうした食品用容器は一般的に、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店で食品を販売するときだけ使用される使い捨てタイプであり、蓋は中味が見えるよう、透明なプラスチックシートでできている。また、容器内の食品の鮮度を保つため、蓋には通気孔が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-20850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この通気孔に関しては、外部の塵埃等が通気孔を通じて容器内に浸入しないよう、そのサイズをできるだけ小さくすることが望まれる。
【0005】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、蓋に小サイズの通気孔を形成することができる蓋の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、
使い捨てタイプの食品用容器における蓋の製造方法であって、
プレス金型におけるパンチを用いて前記蓋を部分的に打ち抜くことにより、前記蓋に通気孔と、前記通気孔を開閉可能に閉止する片持ち状の弁とを同時に形成する孔加工工程を備える
ことを特徴とする蓋の製造方法が提供される。
【0007】
好ましくは、前記通気孔は、0.1mm以上1mm以下の最小幅を有する。
【0008】
好ましくは、前記プレス金型は、前記パンチと協働して前記蓋を部分的に打ち抜くダイプレートを備え、
前記パンチは、前記ダイプレートと共に前記蓋のせん断を行うせん断部と、前記蓋のせん断を行わない非せん断部とを有する。
【0009】
好ましくは、前記パンチの非せん断部は、前記ダイプレートのダイ穴にクリアランスを隔てて挿入される。
【0010】
好ましくは、前記パンチの非せん断部は、前記ダイプレートのダイ穴に挿入されない。
【0011】
好ましくは、前記プレス金型は、ストリッパプレートを備え、前記ストリッパプレートは、前記パンチをスライド可能に常時挿通させるパンチガイド穴を有する。
【0012】
好ましくは、前記プレス金型は、前記パンチを支持するパンチプレートを備え、前記パンチプレートは、前記パンチを嵌合挿入させるパンチ挿入穴と、前記パンチ挿入穴の周囲に設けられ前記パンチの先端側に向かって突出された凸部とを有する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、蓋に小サイズの通気孔を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る食品用容器を示す図である。
図2】通気孔等を示す拡大平面図である。
図3】通気孔等を示す正面断面図である。
図4】プレス金型を示す正面断面図である。
図5】パンチの断面形状(図4のZ-Z断面)を示す図である。
図6】パンチとダイ穴の断面形状(図4のZ-Z断面)を示す図である。
図7図4の要部拡大図である。
図8】パンチ挿入穴の断面形状(図4のZh-Zh断面)を示す図である。
図9】第1変形例の構成を示す正面断面図である。
図10】第2変形例の構成を示す正面断面図である。
図11】第3変形例の通気孔等を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0016】
図1は、本開示の実施形態に係る食品用容器を示し、(A)は平面図、(B)は正面断面図((A)のIb-Ib断面図)である。便宜上、前後左右上下の各方向を図示の通り定める。但しこれら各方向が説明の便宜上定められたものに過ぎない点に留意されたい。また以下に述べる各図の寸法は、理解容易のため誇張している場合があり、必ずしも正確ではない点に留意されたい。
【0017】
食品用容器1は、コンビニエンスストア、スーパーマーケット等の商店で食品を販売するときだけ使用される使い捨てタイプの容器である。食品用容器1は、食品Fを入れる容器本体2と、容器本体2に被さってその上端開口部を閉じる蓋3とを備える。本実施形態の食品Fは弁当であり、食品用容器1は、例えばコンビニエンスストアで販売される弁当を入れる密閉容器として使用される。本実施形態の容器本体2と蓋3は、図1(A)に示すように平面視において円形であるが、その形状は限定されず、四角形、楕円形等であってもよい。
【0018】
容器本体2と蓋3は、ともにプラスチック製であり、プラスチックのシート材を真空成形等することにより形成される。プラスチック材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等が使用可能である。例えば、容器本体2をポリプロピレン製、蓋3をポリエチレン製とすることができる。蓋3は、内容物が見えるよう透明とされる。
【0019】
なお、容器本体2と蓋3の材質はプラスチック以外であってもよく、例えば紙であってもよい。
【0020】
容器本体2は、円形ボウル状とされ、その上端縁部2Aは半径方向外側に向かって折り返されている。この上端縁部2Aの外側に、略円盤状の蓋3の外周縁部3Aがきつく嵌合され、容器1内が密閉状態とされる。蓋3の外周縁部3Aも、容器本体2の上端縁部2Aに符合した折り返し形状とされている。蓋3の外周縁部3Aより内側の部分は、外周縁部3Aより低く位置された水平円板状の中央部3Bとされる。
【0021】
この蓋3の中央部3Bに、容器1内の食品Fの鮮度を保つための通気孔4が形成される。特に本実施形態では、後述の孔加工工程により、通気孔4と同時に、通気孔4を開閉可能に閉止する片持ち状の弁5が形成される。通気孔4と弁5の組(便宜上、孔組という)は、本実施形態では格子状に配列されて6個設けられている。この6個の孔組の群(便宜上、孔組群という)は、本実施形態では図1(A)に示すように、蓋3の中心から半径方向外側(前側)にオフセットして配置されている。
【0022】
なお、孔組の数、位置、配置方法等は任意であり、1個でもよいし、6個以外の複数個であってもよい。孔組群についても同様である。
【0023】
図2に拡大して示すように、1つの孔組における通気孔4と弁5は、本実施形態では左右方向に延びるU字状(もしくはヘアピン形状)とされている。蓋3には、通気孔4と弁5を分離するU字状の切れ目6が形成される。直線状の破線7は、通気孔4の長手方向の基端(一端)と、蓋3に繋がる弁5の長手方向の基端(一端)とを表す。一方、符号8は、通気孔4および弁5における半円状の長手方向の先端(他端)を表す。
【0024】
通気孔4、弁5および切れ目6(通気孔4等という)は非常に小さいサイズを有し、極めて細長いサイズを有する。本実施形態の場合、通気孔4等の幅Bは0.3mm、長さAは5.0mmである。幅Bは長さA方向に一定である。なおこれら寸法は変更可能である。
【0025】
図3に示すように、通常時、弁5は通気孔4をほぼ完全に閉じている。両者の隙間は切れ目6だけである。従って通気孔4を通じて外部の塵埃等(塵埃、虫、異物等)が容器1内に浸入するのをほぼ完全に抑制することができる。本実施形態の蓋3は、外部の塵埃等の容器1内への浸入抑制に極めて有利である。
【0026】
またこのとき、切れ目6を通じて容器内外間の空気の流通を行うことができる。よって容器1内の食品Fの鮮度を良好に保つことができる。
【0027】
仮に、何等かの原因で弁5が開いてしまったとしても、通気孔4の幅Bが非常に小さいので、通気孔4を通じた塵埃等の浸入リスクを最大限に抑制できる。
【0028】
一方、蓋3が被せられて密閉された容器1内の食品Fは、容器1ごと電子レンジで加熱することが予定されている。こうした加熱時に、食品Fから水蒸気や湯気(水蒸気等という)が発生するので、これを外部に逃がす必要がある。
【0029】
このとき、弁5が仮想線aで示す如く水蒸気等Vに押されて上方に弾性的に湾曲変形し、通気孔4を開く。これにより通気孔4を通じて、水蒸気等Vをスムーズに排出することができ、加熱を円滑かつ安全に行うことができる。こうして通気孔4は良好な蒸気抜き孔としても機能する。
【0030】
このように本実施形態によれば、通常時における容器内への塵埃等の浸入抑制と、加熱時における容器外への水蒸気等の排出促進とを良好にバランスさせることができる。
【0031】
ところで、通気孔4の用途は上記に限られない。例えば、食品Fがカップ焼きそばの麺であるとき、通気孔4を湯切り孔として使用することができる。このとき弁5がお湯に押されて上方に湾曲変形するので、通気孔4を通じて容器内のお湯を円滑に排出することができる。
【0032】
また、食品Fが水分を多く含む野菜等であるとき、野菜等が所謂汗をかいて容器内に水が溜まることがある。このとき、通気孔4を水切り孔として使用することもできる。
【0033】
通気孔4等のサイズ、数および形状等は、上記機能を満足できるよう最適に設定される。
【0034】
本実施形態は、このように優れた小サイズの弁5付き通気孔4を蓋3に形成することができる蓋3の製造方法を提供するものである。
【0035】
本実施形態の蓋3の製造方法は、プラスチックシート材を切断および成形(特に真空成形)して所定形状の蓋3を作成する成形工程と、成形工程によって作成された蓋3に通気孔4と弁5を同時に形成する孔加工工程とを備える。本実施形態の製造方法は、この孔加工工程で後述のプレス金型を用いる点に特徴がある。
【0036】
特に孔加工工程では、プレス金型におけるパンチを用いて蓋3を部分的に打ち抜くことにより、蓋3に通気孔4と弁5が同時に形成される。ここで「蓋3を部分的に打ち抜く」とは、パンチの全周の一部のみで蓋3をせん断し、残部でせん断を行わないことをいう。
【0037】
通常のプレス金型では、パンチの小型化に限界があり、本実施形態より大きい通気孔を単に貫通形成するだけである。しかし本実施形態では、後述するような高精度タイプのプレス金型を用いて所謂部分抜きを行うので、通常のプレス金型より小さいパンチで通気孔4のような微小孔を加工でき、しかも弁5を同時形成できる。
【0038】
幅Bは、通気孔4の最小幅(Bmin)を規定する。ここで最小幅とは、通気孔4のうち、幅が最小となる部分の幅をいう。本実施形態ではこの最小幅を、通常のプレス金型を用いた場合より小さくでき、0.1mmまで小さくできる。一方、通常のプレス金型の最小幅は1mmを超える。従って本実施形態の通気孔4の最小幅は、0.1mm以上1mm以下であるのが好ましい。なお本実施形態の通気孔4の幅Bは前述の通り0.3mmである。
【0039】
図4は、孔加工工程で用いられるプレス金型を示す正面断面図である。なお、6個の通気孔4等は同様の方法で作製されるので、以下便宜上、通気孔4等を1個とした場合について説明する。
【0040】
プレス金型10は、蓋3を部分的に打ち抜くためのパンチ11と、打ち抜き時にパンチ11が挿入されパンチ11と協働して蓋3を部分的に打ち抜くためのダイプレート12と、パンチ11を支持するパンチプレート13と、打ち抜き後に蓋3をパンチ11から離脱させるためのストリッパプレート14とを備える。プレス機の可動側上型15にパンチプレート13が、固定側の下型16にダイプレート12が、それぞれ図示しないボルト等により固定される。
【0041】
蓋3は、上下反転した状態でダイプレート12上に載置され、裏面側、すなわち使用状態における下面側(図3参照)から打ち抜かれる。
【0042】
パンチ11は、上下方向に伸長され、打ち抜きを行う先端側(下端側)の刃部17と、パンチプレート13によって支持される基端側(上端側)の被支持部18とを有する。パンチ11は、図5に示すように、通気孔4等と同一のU字状の断面形状を全長に亘って有する。従って刃部17と被支持部18も図5に示すような断面形状を有する。刃部17の断面の長さApと幅Bpは通気孔4等の長さAと幅Bに等しい。
【0043】
パンチ11の刃部17は、その外周縁に、ダイプレート12と共に蓋3のせん断を行うせん断部41と、蓋3のせん断を行わない非せん断部42とを有する。図2と比較すると分かるように、せん断部41は切れ目6と同様のU字状であり、非せん断部42は前記破線7と同様の直線状である。
【0044】
図4に示すように、パンチ11の刃部17の先端面43は、パンチ11の長手方向(上下方向)に垂直な平面とされる。
【0045】
通気孔4と同様、パンチ11の断面のサイズが非常に小さく、パンチ11が極めて細長いので、打ち抜き時にパンチ11がブレないよう、工夫する必要がある。本実施形態のプレス金型10では、こうした工夫が随所に凝らされている。
【0046】
図6および図7にも示すように、ダイプレート12の上面部には、パンチ11の刃部17を挿入させるためのダイ穴19が設けられている。ダイ穴19の断面の長さAhは、刃部17の断面の長さApより大きく、ダイ穴19の断面の幅Bhは、刃部17の断面の幅Bpに実質的に等しい。打ち抜き時、刃部17はダイ穴19内の最も左側の位置に挿入される。また刃部17は全周、蓋3の厚さtlと同程度の深さHまでダイ穴19内に挿入される。
【0047】
これにより、刃部17のせん断部41は、これに隣接するダイ穴19の周縁部(せん断部44)と協働して、蓋3をせん断し、通気孔4と切れ目6を形成する。
【0048】
一方、刃部17の非せん断部42は、クリアランスCLを隔ててダイ穴19に挿入される。このクリアランスCLは、非せん断部42とこれに対向するダイ穴19の周縁部(非せん断部45)との間に、蓋3の肉を残すのに十分な大きさのクリアランスである。本実施形態では、蓋3の厚さtlと同程度のクリアランスCLが形成される。これにより刃部17の非せん断部42は、蓋3をクランク状に折曲し、この折曲部で蓋3に繋がる弁5を形成する。
【0049】
こうして1回のプレス加工で、通気孔4、弁5および切れ目6を同時かつ容易に加工、形成できる。なお刃部17とダイプレート12には、エッジを丸めてクランク曲げを緩やかに行わせるためのアール部46,47が形成されている。
【0050】
図4に戻って、パンチプレート13には、パンチ11の被支持部18をぴったりと嵌合挿入させるためのパンチ挿入穴22が設けられている。パンチ挿入穴22は、パンチプレート13を上下方向に貫通され、図8に示すように、被支持部18と同一の断面形状を有する。被支持部18はパンチ挿入穴22の全長に亘って挿入される。本実施形態では被支持部18が接着剤によりパンチ挿入穴22に固定される。パンチ11ないし被支持部18の基端面(上端面)23は、パンチプレート13の基端面(上端面)24と面一とされる。特に、被支持部18がパンチ挿入穴22に固定された後、被支持部18の基端面23とパンチプレート13の基端面24とが同時に研磨され、同一平面上に高精度で位置される。これら基端面23,24が共に上型15に面接触されるので、上型15からの下向きの力を効率よく安定してパンチ11に伝達することができる。また、打ち抜き時のパンチ11の反力を上型15によって確実に受け止めることができる。
【0051】
パンチプレート13におけるパンチ挿入穴22の周囲には、下方すなわちパンチ11の先端側に向かって突出された凸部25が設けられている。これによりパンチ挿入穴22が長くなり、パンチ11の支持長を長くすると共に、パンチ挿入穴22から突出するパンチ11の突出長を短くすることができ、パンチ11のブレを抑制することができる。
【0052】
ストリッパプレート14は周知のように、図示しないスプリング等を介してパンチプレート13に昇降可能に取り付けられている。ストリッパプレート14は、パンチ11による打ち抜き直前に蓋3をダイプレート12上に押さえ付ける役割と、打ち抜き後にパンチ11が上昇したとき蓋3をパンチ11から離脱させる役割とを果たす。
【0053】
特に本実施形態では、このストリッパプレート14を利用してパンチ11をガイドし、パンチ11のブレを抑えるようにした。すなわち、図7にも示すように、ストリッパプレート14には、パンチ11の刃部17をスライド可能に常時挿通させるためのパンチガイド穴26が設けられている。パンチガイド穴26は、ストリッパプレート14を上下方向に貫通され、図8に示すように、刃部17と同一の断面形状を有する。なおパンチガイド穴26の断面形状はパンチ挿入穴22の断面形状と同じなので、便宜上図8に併記する。刃部17がパンチガイド穴26に挿通されたとき、刃部17はパンチガイド穴26の内周面によって全周支持される。これにより打ち抜き時に刃部17が反力で撓もうとしても、その撓みが抑制される。そして刃部17のブレが抑制され、打ち抜きを精度よく安定的に行うことができる。
【0054】
図4および図7は、パンチ11が下死点にある打ち抜き後の状態を示しているが、刃部17ないし、凸部25から下方に突出されたパンチ11の部分は、パンチガイド穴26に常時挿通されている。よってパンチ11の上死点から下死点まで常に、パンチ11をパンチガイド穴26によって案内でき、パンチ11を一定軌道で安定して昇降させることができる。
【0055】
ストリッパプレート14には、パンチプレート13の凸部25を隙間を以て嵌合させるための凹部27が設けられている。
【0056】
このように本実施形態のプレス金型10によれば、パンチ11のブレを抑制した結果、通気孔4の加工精度を高めることができる。またパンチ11のブレが抑制されているので、図7に示すように、パンチ11とダイ穴19のせん断部41,44のクリアランスCLa、およびパンチ11とパンチガイド穴26のクリアランスCLbを、小さくすることができ、これも加工精度の向上につながる。本実施形態では、前者のクリアランスCLaを0.005mm、後者のクリアランスCLaを0.003mmとしている。但しこれらクリアランスCLa,CLbの大きさは、蓋3の材質、厚さ等に応じて適宜変更可能である。
【0057】
本実施形態では、蓋3を部分的に打ち抜くので、打ち抜きによるスクラップ(抜きカス)が発生しない。よってスクラップが蓋3に付着し誤って容器内に混入するリスクを無くすことができる。
【0058】
パンチ11のブレを抑制したので、打ち抜き時にパンチ11がダイプレート12に接触して起こるカジリも抑制できる。
【0059】
本実施形態では、パンチ11がワイヤー放電加工によって作製される。すなわち、パンチ11の長さ(上下方向の寸法)以上の厚さの導電性金属(特に鉄)の素材を、図5に示した断面形状となるようにワイヤー放電加工でくり抜くことによってパンチ11が作製される。これによりパンチ11の小サイズの断面形状を、高精度かつ容易に作製することができる。
【0060】
同様に、ダイ穴19、パンチ挿入穴22およびパンチガイド穴26も、ワイヤー放電加工で作製される。これにより、図6および図8に示したような各穴の小サイズの断面形状を、高精度かつ容易に作製することができる。
【0061】
なお、可能であれば、これらパンチ11、ダイ穴19、パンチ挿入穴22およびパンチガイド穴26の少なくとも一つを、高精度型のマシニングセンタで機械加工してもよい。
【0062】
次に、本開示の変形例を説明する。なお前記基本実施形態と同様の部分については説明を割愛し、以下、基本実施形態との相違点を主に説明する。
【0063】
[第1変形例]
図9は、第1変形例の構成を示す。この第1変形例では、蓋3の部分抜きの方法が変更されている。すなわち、前記基本実施形態ではパンチ11とダイ穴19の間にクリアランスCLを設けて蓋3の一部をせん断しないようにしたが、本変形例ではパンチ11の一部をダイ穴19に挿入しないことによって蓋3の一部をせん断しないようにする。
【0064】
図9は、パンチ11の刃部17が下死点にあるときの状態を示す。このとき、刃部17のせん断部41はダイ穴19に挿入されるが、刃部17の非せん断部42はダイ穴19に挿入されない。刃部17の先端面43は、パンチ11の長手方向(上下方向)に垂直な方向に対し傾斜され、左側(通気孔4の先端8側)が右側(通気孔4の基端7側)より下になるよう傾斜される。すなわち刃部17の先端面43には所定角度のシャー角θが設けられている。
【0065】
これにより、刃部17のせん断部41は、これに隣接するダイ穴19の周縁部(せん断部44)と協働して、蓋3をせん断し、通気孔4と切れ目6を形成する。
【0066】
一方、刃部17の非せん断部42は、ダイ穴19に挿入されないので、当然に蓋3をせん断しない。よってこの非せん断位置で蓋3に繋がる弁5が形成される。
【0067】
左側が右側より下になるよう、刃部17の先端面43を傾斜させたので、左側から右側に向かって順次せん断を行い、切れ目6を入れていくことができる。これにより綺麗な切れ目6を形成することができる。
【0068】
なお、本変形例ではパンチ11とダイ穴19の間にクリアランスCLを設けないので、ダイ穴19の断面形状は、図8に示したパンチ挿入穴22およびパンチガイド穴26の断面形状と同じになるよう変更される。
【0069】
[第2変形例]
図10は、第2変形例の構成を示す。この第2変形例では、パンチプレート13に対するパンチ11の固定方法が変更されている。
【0070】
すなわち、パンチ11の被支持部18がパンチ挿入穴22に嵌合挿入される点は前記同様である。しかし、接着剤による固定はなされておらず、代わりにパンチ11は、キー28とキー溝29によって、パンチ挿入穴22内に位置決め固定されている。
【0071】
キー28は、パンチ11の側面(図示例では左側面)に一体的に突出して設けられ、パンチ11の基端面(上端面)23から先端側(下側)に向かって所定長さ延びている。キー28は図示するように縦長長方形の断面形状を有する。
【0072】
一方、キー溝29は、パンチ挿入穴22の内側面(図示例では左内側面)に設けられ、パンチプレート13の基端面(上端面)24から先端側(下側)に向かって、キー28と同じ長さだけ延びている。キー溝29も図示するように縦長長方形の断面形状を有する。またキー溝29の横幅(左右方向の幅)はキー28よりも若干大きくされる。キー溝29の基端側は開放されている。
【0073】
パンチ11およびキー28は、パンチ挿入穴22およびキー溝29にそれぞれ着脱可能に挿入される。キー28はキー溝29にぴったりと嵌合挿入される。これによりパンチ11の前後左右方向および周方向の位置ずれが防止される。挿入状態において、キー28の先端面(下端面)30がキー溝29の先端面(下端面)31に接触される。また、パンチ11の基端面23およびキー28の基端面32は、上型15に接触される。これによりキー28がキー溝29の先端面31と上型15に挟まれ、軸方向に拘束されるので、パンチ挿入穴22に対するパンチ11の軸方向の位置ずれを防止することができる。
【0074】
こうしてパンチ11はパンチ挿入穴22に実質的に固定される。
【0075】
本実施形態によれば、パンチプレート13を上型15から取り外し、パンチ11を基端側に引き抜いてパンチプレート13から取り外すことができる。また逆方向の手順でパンチ11をパンチプレート13に取り付けることができる。よってパンチ11が劣化、破損等したときにパンチ11を容易に交換することができる。
【0076】
[第3変形例]
通気孔4等は、図2に示したようなU字状のものに限らず、様々な形状のものに変更可能である。特に、パンチ11等は、ワイヤー放電加工によって作製されるので、比較的複雑な断面形状にすることができる。よって通気孔4等を、より複雑な形状にすることが可能である。本実施形態によれば、微小な通気孔4等の意匠の自由度を高めることができる。
【0077】
図11には、通気孔4等の変形例を示す。なお通気孔4等の形状変更に合わせてパンチ11等の断面形状も変更することは勿論である。
【0078】
図11(A)はS字状、図11(B)は逆T字状、図11(C)はT字状、図11(D)は噴水状の通気孔4等をそれぞれ示す。
【0079】
図11(E)はK字状、図11(F)はY字状、図11(G)はO字状、図11(H)はE字状、図11(I)はI字状の通気孔4等をそれぞれ示す。なお図11(E)~(I)の通気孔4等の全体で、本出願人の名称の英語表記を表す。
【0080】
これら通気孔4等においても、最小幅(Bminで表す)は0.1mm以上1mm以下であるのが好ましい。
【0081】
ところで、図示した通気孔4等の形状に合わせてパンチ11の断面形状を変更すると、パンチ11の強度を増加することができる。よってこうした通気孔4等の形状変更は、孔形状の精度向上にも効果的である。
【0082】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。例えば、蓋3は必ずしも透明でなくてもよく、不透明であってもよい。上記の数値はあくまで一例であり、適宜変更可能である。通気孔4等は、他の単純形状であってもよく、四角形、略円形、略楕円形等であってもよい。
【0083】
前述の基本実施形態および各変形例の構成は、特に矛盾が無い限り、部分的にまたは全体的に組み合わせることが可能である。本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 食品用容器
3 蓋
4 通気孔
5 弁
10 プレス金型
11 パンチ
12 ダイプレート
13 パンチプレート
14 ストリッパプレート
19 ダイ穴
22 パンチ挿入穴
25 凸部
26 パンチガイド穴
41 せん断部
42 非せん断部
CL クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
図10
図11