(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】コロナ放電式空気清浄装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/22 20060101AFI20250207BHJP
B03C 3/02 20060101ALI20250207BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20250207BHJP
B03C 3/41 20060101ALI20250207BHJP
B03C 3/49 20060101ALI20250207BHJP
F24F 8/192 20210101ALI20250207BHJP
【FI】
A61L9/22
B03C3/02 A
B03C3/40 C
B03C3/41 B
B03C3/49
F24F8/192
(21)【出願番号】P 2023003479
(22)【出願日】2023-01-13
(62)【分割の表示】P 2021088018の分割
【原出願日】2018-03-16
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】519037337
【氏名又は名称】株式会社フォレストウェル
(74)【代理人】
【識別番号】100194467
【氏名又は名称】杉浦 健文
(72)【発明者】
【氏名】森井 隆平
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-160383(JP,A)
【文献】特開2005-177706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0158766(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0018812(US,A1)
【文献】特開2008-047324(JP,A)
【文献】特開昭60-132661(JP,A)
【文献】特開平10-156215(JP,A)
【文献】特開2016-039843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
A61L 9/00- 9/22
F24F 8/00- 8/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気孔が形成されたプラス電極、及び吸気口を有するケース本体と、
前記ケース本体内に筒状に突出する、プラスに帯電された集塵板と、
前記ケース本体内に収容され、先端部が前記プラス電極に対向するマイナス電極と、
前記プラス電極と前記マイナス電極との間に直流電圧を印加する直流高圧電流ユニットと、
外部電源端子と、
を備え、
前記プラス電極と前記マイナス電極との間に直流電圧を印加することにより、前記マイナス電極と前記プラス電極との間にコロナ放電を生じさせてオゾン及びイオンを発生させると共に、前記排気孔に向かうマイナスイオン風を発生させ
、
前記マイナス電極の先端部は、前記集塵板によって囲まれた領域内に位置する、
空気清浄装置。
【請求項2】
排気孔が形成されたプラス電極、及び吸気口を有するケース本体と、
前記ケース本体内に筒状に突出する、プラスに帯電された集塵板と、
前記ケース本体内に収容され、先端部が前記プラス電極に対向するマイナス電極と、
前記プラス電極と前記マイナス電極との間に直流電圧を印加する直流高圧電流ユニットと、
外部電源端子と、
を備え、
前記プラス電極と前記マイナス電極との間に直流電圧を印加することにより、前記マイナス電極と前記プラス電極との間にコロナ放電を生じさせてオゾン及びイオンを発生させると共に、前記排気孔に向かうマイナスイオン風を発生させ、
前記排気孔は、平行に配置された複数のスリットである、
空気清浄装置。
【請求項3】
前記マイナス電極は、複数の針状である、
請求項1又は2に記載の空気清浄装置。
【請求項4】
前記プラス電極は、前記ケース本体の一部を構成する1.5mmの厚さの板材である、請求項1から3のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【請求項5】
前記集塵板は、前記ケース本体に対して取外し可能に取り付けられている、
請求項1から4のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【請求項6】
前記プラス電極はチタンで構成されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【請求項7】
前記排気孔は、格子状に形成された複数の孔である、
請求項1、3、4、5、又は6のいずれか1項に記載の空気清浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン風・オゾンを発生させるコロナ放電式空気清浄装置に関し、除菌・殺菌・消臭・集塵するコロナ放電式空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コロナ放電によりイオン及びオゾンを発生させゴミ等の対象物を殺菌・消臭する装置があり、対象物の配される空間とは別空間でコロナ放電を行い、発生したイオン及びオゾンを対象物の空間に送給し、殺菌・消臭する装置がある。
【0003】
しかしながら、従来のコロナ放電式の殺菌・消臭装置ではコロナ放電を利用して空気を清浄化することは出来るが、イオン風が弱く、塵を帯電して集塵を行う能力も十分ではないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、イオン風を強くして集塵効率が強く十分な除菌・殺菌・消臭・集塵効果を有するコロナ放電式空気清浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を達成するため、以下の殺菌・消臭・集塵用コロナ放電式空気清浄装置を提供する。
本発明に係る殺菌・消臭・集塵用コロナ放電式空気清浄装置は、
空気吸引口を有しチタンで形成された上面部を含むケース本体と、
該ケース本体の上面部に形成された複数のスリット状孔部あるいは格子状孔部の排気孔により構成されたプラス電極であって、該プラス電極は約1.5mmの厚さを有するプラス
電極と、
該排気孔の周囲の該上面部からケース本体の内部に垂設されプラスに帯電する筒状の集塵板と、
該格子状プラス電極に対抗させた複数のマイナス電極のステンレス製針状電極であって、該複数の針状電極の先端部がプラス電極とを対向させられた複数の針状電極と、
直流低圧電圧を受け直流高圧電圧を発生し該複数の針状電極に直流高圧電圧を印加する直流高圧電流ユニットとからなる、コロナ放電式空気清浄装置であって、
プラス電極と該複数の針状電極との間に直流高電圧を印加することによりマイナス電極とプラス電極との間にコロナ放電を生じオゾンとイオンを発生しプラス電極へ向かってマイナスイオン風を形成し、周囲の空気をケース本体内で該排気孔に向かって巻き込み、空気中に含まれる微細な粉塵をプラスに帯電した集塵板に付着させつつ殺菌・消臭・集塵を行う放電式空気清浄装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る殺菌・消臭・集塵用コロナ放電式空気清浄装置によれば、例えば7KV-8KVの高電圧を印加してスリット状のチタン製プラス電極と針状電極との間にコロナ放電とオゾンを発生しプラス電極へ向かって強いマイナスイオン風を形成し、、排気孔の周囲に配置したプラスに帯電した筒状の集塵板によりマイナスに帯電した粒子を効率的に集塵するとともに、効率的にイオン流を排気孔へ導き、殺菌・消臭することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るコロナ放電式空気清浄装置の斜視図である。
【
図2】複数のスリット状孔部あるいは格子状孔部の排気孔により構成されたプラス電極を有するコロナ放電式空気清浄装置のケース本体の上面部を示す。
【
図3】本発明に係るコロナ放電式空気清浄装置の側面図である。
【
図4】本発明に係るコロナ放電式空気清浄装置の内部構造を示す模式図である。
【
図5】ケース本体内部に配置され上面に針状電極を立設するための針状電極取付板を示す図である。
【
図6】針状電極取付板の下面に形成され上面に立設した針状電極に導通する導電性パターンである。
【
図8】自然減衰の場合の浮遊粒子数の測定結果を示す。
【
図9】検体作動の場合の浮遊粒子数の測定結果を示す。
【
図11】自然減衰の場合の測定中の浮遊粒子数の測定結果を示す。
【
図12】検体作動の場合の測定中の浮遊粒子数の測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。これらの実施態様は本発明を説明するための例示であり、本発明をそれらの実施態様に限定して解釈してはならない。請求項に定義する発明に入るものは、特に矛盾がなければ全て本発明に属する。
【0010】
図1は、本発明の一実施態様に係る殺菌・消臭・集塵用コロナ放電式空気清浄装置1を示す。空気清浄装置1は正方体形状を有し、上面部4に複数の平行な6本のスリット2を有する円形の排気孔3からなるプラス電極を設け、上面部4の外周は正方形状の4つの側面で囲われている。側面5-1、5-2の上方部には3列の吸気口6が設けられ、側面5-1の下方部には空気清浄装置をON/OFFするスイッチSWが設けられている。
図1及び
図3参照。本実施態様では空気清浄装置本体を正方体形状としたが、上面部4に複数の平行なスリット状の円形の排気孔3を設けることが出来るのであれば、空気清浄装置本体の形状は正方体形状に限らない。空気清浄装置本体を別体のカバーで覆う場合には本体強度に支障がでなければ、1つあるいは2つの側面を省略することも可能である。
【0011】
本発明に係る殺菌・消臭・集塵用コロナ放電式空気清浄装置では、プラス電極の厚さを好ましくは1.5mmとすることにより、後述のイオン風を強くすることができ、効率的に集塵、殺菌・消毒を行うことが可能となる。また、オゾン酸化による劣化を防止するため、空気清浄装置本体の少なくとも上面部、好ましくは空気清浄装置本体全体をチタンから形成する。
【0012】
図2は、複数の平行な6本の長短のスリット2からなる円形の排気孔3をほぼ中央に設けた上面部4を示す。本発明のコロナ放電式空気清浄装置では、複数の平行なスリットに代えて、タテ及びヨコに格子状とした格子形状の排気孔としてもよい。
図4に示すように排気孔の周囲にからケース本体の内部に筒状の集塵板7が垂設され、集塵板はプラスに帯電しマイナスイオンに帯電した花粉等の微粒子を集塵できるようになっている。詳細には図示していないが、上面部4は空気清浄装置本体からビス等で取り外し可能となっており、筒状の集塵板7も上面部4から取り外し可能となっており集塵した花粉等の塵粒子を除去できるようになっている。
【0013】
図4は、コロナ放電式空気清浄装置の内部構造を示し、
図5は針状電極取付板8の上面であり、
図6は針状電極取付板8の上面に均等に配置した21個の針状電極取付位置9に導通する導電性パターン10である。
図4に示すように、針状電極取付板8の針状電極取付位置9には針状電極11の基部が半田等によって固定され、先端部は筒状の集塵板7の内方に延び上面部4円形の排気孔3と所望の距離で対向させられており、針状電極取付板8は空気清浄装置1の底板に支持脚12によって支持されている。
【0014】
図4において、13は外部電源端子、14は100Vの交流電圧を12V程度の直流電圧に変えるアダプターであり、15は12V等の直流電圧を7KV-8KVの高圧電圧に変える変圧器であり、高圧電圧は導電性パターン10を介して針状電極取付位置9の針状電極11に印加される。
該複数の針状マイナス電極と排気孔からなるプラス電極との間に高電圧を印加することによって、ケース本体の排気孔と該複数の針状電極の先端部との間にコロナ放電を発生し、イオン及びオゾンを発生させるとともにプラス電極へ向かってマイナスイオン風を形成し、周囲の空気をケース本体内で該排気孔に向かって巻き込み、空気中に含まれる微細な粉塵をプラス電極の集塵板に付着させ、殺菌・消毒することが可能となっている。
【実施例】
【0015】
本発明に係る以下のコロナ放電式空気清浄装置について、下記の空気清浄性能試験を行った。2、3、4については、一般財団法人日本食品分析センター彩都研究所(大阪府茨木彩都あさぎ7町目4番41号)において実施された。
1.浮遊細菌に対する除去性能評価試験(表皮ブドウ球菌)
2.花粉除去性能評価試験
3.脱臭効果試験(アンモニア及び硫化水素)
【0016】
検体(試験した本発明に係るコロナ放電式空気清浄装置)
1.コロナ放電式空気清浄装置
(1)ケース外寸 10cmx10cmx10cm立法形状
(2)ケース壁厚 1.5mm
(3)ケース材質 チタン
(4)円形排気孔 直径70mmの排気孔に均等間隔で設けられた平行なスリット(スリット8mm幅、スリット間距離4mm)
(5)円筒状集塵板 直径70mm、高さ10mm
(6)針状マイナス電極21本、排気孔に対応して等間隔に配置、
針状電極とプラス電極との距離8mm~10mm(
図4参照)
(7)アダプター(交流電圧をDC12Vと変換)
(8)高圧変圧器(DC12Vを高圧電7000-8000Vに変圧)
(9)針状電極用導電パターン(
図6参照)
【0017】
1.浮遊細菌に対する除去性能評価試験(ブドウ球菌)
(1)試験概要
一般社団法人日本電機工業会 JEM1467 家庭用空気清浄機(2015年3月25日改正)付属書D(規定)「浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験」を参考にして試験を行った。ただし、試験微生物は以下に示す菌株を用い、培養条件を変更して実施した。Staphylococcus epidermidis NBRC 12993(表皮ブドウ球菌)。測定条件を、表1に示し、測定開始時及び終了時の温湿度を表2に示す。
【表1】
【0018】
【表2】
(2)測定結果
ゼラチンフィルタの生菌数測定結果を、
図7に示し、自然減衰と検体作動の場合の浮遊粒子数の測定結果を
図8と
図9にそれぞれ示す。
図7,8,9から分かるように、ブドウ球菌の数は、自然減衰による減少に比較して、検体を作動させることによって大幅に減少することが分かり、本コロナ放電式空気清浄装置は空気中に浮遊する細菌(ブドウ球菌)に対する除去性能は非常に高いことが判明した。
【0019】
2.花粉除去性能評価試験
(1)試験概要
一般社団法人日本電機工業会 JEM1467 家庭用空気清浄機(2015年3月25日改正)付属書D(規定)「浮遊ウイルスに対する除去性能評価試験」を参考にして試験を行った。ただし、試験対象物はスギ花粉抽出物を用い、試験条件を変更して実施した。試験条件を表3に示し、試験開始時及び終了時の温湿度を表4に示す。
【表3】
【0020】
【表4】
(2)測定結果
Cryjl濃度測定結果を、
図10に示す。また、自然減衰と検体作動の場合の測定中の浮遊粒子数の測定結果を
図11と
図12にそれぞれ示す。
図10,11、12から分かるように、浮遊花粉粒子の数は、自然減衰による減少に比較して、検体を作動させることによって大幅に減少することが分かり、本コロナ放電式空気清浄装置は空気中に浮遊する花粉粒子に対する除去性能は非常に高いことが判明した。
【0021】
3.脱臭効果試験(アンモニア及び硫化水素)
(1)試験概要
検体についてアンモニア及び硫化水素の脱臭効果をガス検知管法により試験した。
(2)試験方法
a)試薬及び器具
デシケータ(約109L)[Fine]
アンモニア:アンモニア水(28%、特級)(小宗化学薬品株式会社)から発生させたガスを用いた。
硫化水素:硫化鉄(II)(硫化水素発生用)(小宗化学薬品株式会社)に希硫酸を加えて発生させたガスを用いた。
ガス検知管(株式会社 ガステック)
b)操作
検体をかくはんファンとともにデシケータ(約109L)に入れ、かくはんファンを作動させ設定したガス濃度となるように試験対象ガスを添加した。かくはんファンを停止し、検体を作動させ、経過時間ごとにデシケータ内のガス濃度をガス検出管で測定した。また、検体を作動させずに同様な操作を行った。検体を入れずに同様な操作をしたものを空試験とした。試験条件を表5に示した。
【0022】
【表5】
(3)試験結果
アンモニアの試験結果を
図13に示し、硫化水素の試験結果を
図14に示す。
図13から分かるように、アンモニア脱臭については検体を作動させることによってアンモニア除臭効果が高いことが分かり、
図14から硫化水素に対する除去性能は非常に高いことが判明した。
【0023】
4.タバコ粉塵除去性能評価試験
タバコ粉塵除去性能評価試験を以下の通り行ない、サイズ幅750×奥350×高300mmの密封箱中に、タバコ1本を着火し完全燃焼するまで放置後測定開始し、3分毎にタバコ粉塵濃度を測定した。試験機として、柴田科学株式会社製「デジタル粉塵計 P-5H」を用いた。タバコ粉塵除去性能の試験結果データを
図15に示す。
タバコ粉塵除去性能の試験結果データから分かる通り、自然減衰させた場合30分間タバコ粉塵濃度はほとんど低下しなかったのに対し、本発明に係る空気清浄装置を用いた場合には12分後には非常に低レベルまでタバコ粉塵濃度が低下することが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係るコロナ放電式空気清浄装置は、浮遊細菌除去性能、花粉除去性能、脱臭効果(アンモニア及び硫化水素)、タバコ粉塵除去性能等の集塵・殺菌・消毒性能に優れているので、産業上利用可能性が大きい。
【符号の説明】
【0025】
1・・・コロナ放電式空気清浄装置、
2・・・スリット、
3・・・排気孔(プラス電極)、
4・・・上面部、
5-1,5-2・・・側面、
6・・・吸気口、
7・・・集塵板、
8・・・針状電極取付板、
9・・・針状電極取付位置、
10・・・導電性パターン、
11・・・針状電極、
12・・・支持脚、
13・・・外部電源端子、
14・・・直流電圧アダプター、
15・・・変圧器、
SW・・・ON/OFFスイッチ