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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/06 20060101AFI20250207BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20250207BHJP
   B60R 99/00 20090101ALI20250207BHJP
【FI】
B60W30/06
B60W40/02
B60R99/00 340
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023568783
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021047089
(87)【国際公開番号】W WO2023119375
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝口 雅人
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-264840(JP,A)
【文献】特開2018-184139(JP,A)
【文献】特開2019-073243(JP,A)
【文献】特開2018-158674(JP,A)
【文献】特開2005-075013(JP,A)
【文献】特開2011-000899(JP,A)
【文献】特開2014-227021(JP,A)
【文献】特開2021-187248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場内における自車両周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて前記自車両を駐車スペースに後進で自動駐車させる駐車支援制御部と
を備える駐車支援装置において、
前記駐車支援制御部は、
前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて前記駐車場内の駐車可能スペースを検出する駐車可能スペース検出部と、
前記駐車可能スペース検出部で前記駐車可能スペースを検出した場合、該駐車可能スペースに対して前記自車両を後進で誘導する最小舵角の目標誘導経路を通行帯の幅と前記自車両の幅とに応じて設定する目標誘導経路設定部と、
前記目標誘導経路設定部で設定した前記目標誘導経路の前記駐車可能スペース側に駐車目標停車位置を設定すると共に該目標誘導経路上に前記自車両を停車させた後に後進させる切返し目標停車位置を設定する目標停車位置設定部と、
前記目標停車位置設定部で設定した前記切返し目標停車位置で前記目標誘導経路に沿って前記自車両を後進させる際の操舵角に操舵輪を据え切りして固定すると共に、前記駐車目標停車位置で前記自車両を前記駐車可能スペースに対し縦列状態で後進させる操舵角に前記操舵輪を据え切りする操舵制御部と
を備えることを特徴とする駐車支援装置。
【請求項2】
前記駐車支援制御部は前記自車両の移動を制御する移動制御部を更に有し、
前記移動制御部は、前記操舵制御部が前記操舵輪の前記操舵角を据え切りした後に前記自車両の移動を開始させる
ことを特徴とする請求項1記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記目標停車位置設定部で設定する前記駐車目標停車位置は前記駐車可能スペースに面する前記通行帯に縦列状態で設定され、前記切返し目標停車位置は前記駐車目標停車位置から任意の角度旋回した位置に設定される
ことを特徴とする請求項1或いは2記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記駐車支援制御部は移動可能判定部を更に有し、
前記移動可能判定部は、前記移動制御部が前記自車両を前記切返し目標停車位置から前記駐車目標停車位置へ移動させるに際し、該自車両の移動方向に後進待機判定エリアを設定し、該後進待機判定エリアに移動物標が検出された場合前記自車両の移動を停止する
ことを特徴とする請求項2記載の駐車支援装置。
【請求項5】
駐車場内における自車両周囲の環境情報を取得する環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて前記自車両を駐車スペースに後進で自動駐車させる回路を備える駐車支援装置において、
前記回路は、
前記環境情報に基づいて前記駐車場内の駐車可能スペースを検出し、
前記駐車可能スペースを検出した場合、該駐車可能スペースに対して前記自車両を後進で誘導する最小舵角の目標誘導経路を通行帯の幅と前記自車両の幅とに応じて設定し、
設定した前記目標誘導経路の前記駐車可能スペース側に駐車目標停車位置を設定すると共に該目標誘導経路上に前記自車両を停車させた後に後進させる切返し目標停車位置を設定し、
前記切返し目標停車位置で前記目標誘導経路に沿って前記自車両を後進させる際の操舵角に操舵輪を据え切りして固定すると共に、前記駐車目標停車位置で前記自車両を前記駐車可能スペースに対し縦列状態で後進させる操舵角に前記操舵輪を据え切りする
ことを特徴とする駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両を駐車スペースに自動で駐車させる駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駐車場に設定されている、駐車区画線で区画された駐車スペースに、運転者が自車両を駐車させる際の操作を支援し、運転者の負担を軽減する駐車支援装置が知られている。この種の駐車支援装置では、運転者が自車両を操作して駐車場内を走行させている際に、制御ユニットは、空いている駐車スペースの候補を検出し、候補に掲げられた駐車スペースをモニタに表示する。運転者は表示された駐車スペースの候補から所望の駐車スペースを選択する。すると、制御ユニットは、運転者が選択した駐車スペースに自車両を駐車させるための駐車誘導経路を設定する。そして、制御ユニットが自車両を駐車誘導経路に沿って駐車スペースに自動で駐車させる。
【0003】
制御ユニットが駐車スペースに対して自車両を後向きで並列駐車させようとする場合、例えば、日本国特開2021-94932号公報に開示されているように、制御ユニットが検出した駐車可能スペースに、運転者が自車両を駐車させようとする場合、先ず、自車両の現在位置から切返し位置を経て駐車スペースに入庫させるまでの軌道(経路)を算出する。次いで、制御ユニットは自車両を軌道に沿って走行させる駆動処理を実行し、先ず、自車両を進行させて切返し位置で一旦停止させた後、ハンドルを切返しながら、自車両を後進させて駐車スペースへ導き、自車両が駐車スペースに入庫されたところで駆動処理を終了する。
【0004】
一般に、自動駐車によって自車両を切返し位置から駐車スペースの左右を区画する駐車区画線に対して並列駐車させるに際し、制御ユニットは、先ず、ハンドルを徐々に切返しながら自車両を低速で後進させ、その後、ハンドルを徐々に戻して、左右の駐車区画線間に自車両を平行な姿勢で入庫させる。
【0005】
切返し位置から駐車スペースの方向へ後進させるに際し、自車両は切返し位置で一旦停車するため、後進時にはハンドルの切返しを開始する制御と、低速であっても加速を開始する制御との2つの過渡制御を同時に行う必要があり、制御が複雑化する不都合がある。
【0006】
又、駐車スペースへの誘導経路(軌道)は、現在の自車両の位置を基準に設定されるが、現在の自車両の位置と駐車スペースとの位置関係は毎回異なるため、その誘導経路を算出する必要があり、演算処理が複雑化する不都合もある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、自車両を自動で駐車させるに際し、ハンドルの切返し、切り戻しを行う過渡制御と、自車速の加減速を行う過渡制御とを容易に行うことかでき、しかも、切返し位置から駐車スペースへ導く誘導経路の算出も容易に行うことのできる駐車支援装置を提供することを目的とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、駐車場内における自車両周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて前記自車両を駐車スペースに後進で自動駐車させる駐車支援制御部とを備える駐車支援装置において、前記駐車支援制御部は、前記環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて前記駐車場内の駐車可能スペースを検出する駐車可能スペース検出部と、前記駐車可能スペース検出部で前記駐車可能スペースを検出した場合、該駐車可能スペースに対して前記自車両を後進で誘導する最小舵角の目標誘導経路を通行帯の幅と前記自車両の幅とに応じて設定する目標誘導経路設定部と、前記目標誘導経路設定部で設定した前記目標誘導経路の前記駐車可能スペース側に駐車目標停車位置を設定すると共に該目標誘導経路上に前記自車両を停車させた後に後進させる切返し目標停車位置を設定する目標停車位置設定部と、前記目標停車位置設定部で設定した前記切返し目標停車位置で前記目標誘導経路に沿って前記自車両を後進させる際の操舵角に操舵輪を据え切りして固定すると共に、前記駐車目標停車位置で前記自車両を前記駐車可能スペースに対し縦列状態で後進させる操舵角に前記操舵輪を据え切りする操舵制御部とを備える。
【0009】
本発明の一態様は、駐車場内における自車両周囲の環境情報を取得する環境情報取得部で取得した前記環境情報に基づいて前記自車両を駐車スペースに後進で自動駐車させる回路を備える駐車支援装置において、前記回路は、前記環境情報に基づいて前記駐車場内の駐車可能スペースを検出し、前記駐車可能スペースを検出した場合、該駐車可能スペースに対して前記自車両を後進で誘導する最小舵角の目標誘導経路を通行帯の幅と前記自車両の幅とに応じて設定し、設定した前記目標誘導経路の前記駐車可能スペース側に駐車目標停車位置を設定すると共に該目標誘導経路上に前記自車両を停車させた後に後進させる切返し目標停車位置を設定し、前記切返し目標停車位置で前記目標誘導経路に沿って前記自車両を後進させる際の操舵角に操舵輪を据え切りして固定すると共に、前記駐車目標停車位置で前記自車両を前記駐車可能スペースに対し縦列状態で後進させる操舵角に前記操舵輪を据え切りする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】駐車支援装置の全体概略構成図
図2】自車両に設けたカメラ、センサによる探索領域を示す説明図
図3】自動駐車モード時の処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
図4】自動駐車モード時の処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
図5】自動駐車モード時の処理ルーチンを示すフローチャート(その3)
図6】駐車場全体を示す模式図
図7A】駐車可能な駐車スペースを探索している状態を示す説明図
図7B】駐車可能な駐車スペースを検出した状態を示す説明図
図8】自動駐車時に設定する目標経路を示す説明図
図9A】駐車スペースを検出した状態を示す説明図
図9B】駐車目標停車位置と切返し目標停車位置を設定した状態を示す説明図
図9C】自車両を切返し目標停車位置へ移動させた状態を示す説明図
図9D】自車両を駐車目標停車位置へ移動させた状態を示す説明図
図9E】自車両を駐車スペースに入庫させる状態を示す説明図
図9F】自車両の駐車スペースへの入庫が完了した状態を示す説明図
図10】車両二輪モデルの説明図
図11】二輪モデルに基づいてハンドル角に応じて求めた自車両の旋回時の横位置移動量と前後移動量とを示す図表
図12】切返し目標停車位置への移動可能な領域を示す説明図
図13】自動駐車時の移動物標検出領域を示す説明図
図14】自車両を自動駐車させる際の操舵角と自車速との関係を示すタイムチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。尚、図面は模式的なものであり、比率などは現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
図1に示す駐車支援装置1は自車両M(図2参照)に搭載されている。この駐車支援装置1は駐車支援制御部としての運転支援制御ユニット11を備えている。この運転支援制御ユニット11は、CPU、RAM、ROM、書き換え可能な不揮発性メモリ(フラッシュメモリ又はEEPROM)、及び周辺機器を備えるマイクロコントローラで構成されている。ROMにはCPUにおいて各処理を実行させるために必要なプログラムや固定データ等が記憶されている。又、RAMはCPUのワークエリアとして提供され、CPUでの各種データが一時記憶される。尚、CPUはMPU(Microprocessor)、プロセッサとも呼ばれている。又、CPUに代えてGPU(Graphics Processing Unit)やGSP(Graph Streaming Processor)を用いても良い。或いはCPUとGPUとGSPとを選択的に組み合わせて用いても良い。
【0013】
この運転支援制御ユニット11は、モード設定部12を備えている。このモード設定部12には自動運転モードと自動駐車モードとを有し、運転者が所望のモードを選択すると、運転支援制御ユニット11は対応する運転モードを実行する。
【0014】
自動運転モードは、後述する地図ロケータユニット22のGNSSセンサ22aで取得した自車位置情報に基づき、道路地図データベース22bの道路地図上に自車位置をマップマッチングし、予め設定されている目標進行路に沿って、自動運転が可能な区間を自律走行させる。又、この自動運転モードは、自動運転が困難な走行路では、周知の追従車間距離(ACC:Adaptive Cruise Control)制御、車線維持(ALK:Active Lane Keep)制御、車線逸脱抑制(LDP:Lane Departure Prevention)制御を実行させて、自車両Mが車線に沿い、且つ先行車を検出した場合は、当該先行車に追従して走行する走行制御を実行させる。
【0015】
一方、自動駐車モードは、自車両Mが駐車場に進入した際に運転者が当該支援モードを選択すると、運転支援制御ユニット11は駐車可能な駐車スペースを検索し、検索した駐車可能な駐車スペースに自車両Mを自動で駐車させる。
【0016】
この運転支援制御ユニット11の入力側には、各運転モードを実行させる際に必要とする、自車両Mの走行状態情報(位置、方角を含む)、及び自車両Mの周辺環境情報を取得するセンサ・ユニット類が接続されている。
【0017】
モード設定部の各運転モードを実行するに際し必要とするセンサ・ユニット類として、本実施形態では、カメラユニット21、地図ロケータユニット22、自律走行センサ23、自車両Mの後方の環境情報を取得する後方センサ24、左右前側方カメラ25、及び左右後側方センサ26を備えている。尚、各センサ類21,24~26で、本発明の環境情報取得部が構成されている。
【0018】
カメラユニット21はイメージセンサの一例である。本実施形態では、カメラユニット21としてCCDやCMOS等を撮像素子とする、メインカメラ21aとサブカメラ21bとからなるステレオカメラ、及び画像処理ユニット(IPU)21cを有している。両カメラ21a,21bは所定の基線長を有して、例えば車内前部のルームミラー上方であって、フロントガラスに近接する位置の車幅方向中央から左右に等間隔を開けて水平な状態で設置されている。カメラユニット21は、図2に示すように、両カメラ21a,21bで認識する前方撮像領域21Arで撮像した環境情報の画像をIPU21cで画像処理した後、運転支援制御ユニット11へ送信する。
【0019】
又、地図ロケータユニット22は、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ22aと道路地図データベース22bとを備えている。GNSSセンサ22aは複数の測位衛星から発信される測位信号を受信して自車両Mの位置座標を取得する。又、道路地図データベース22bはHDD等の大容量記憶媒体であり、道路地図情報が記憶されている。この道路地図データベース22bに記憶されている道路地図情報としては、自動運転モードを実行する際に必要とする道路情報(一般道路、幹線道路、高速道路、道路形状、道路方位、車線数、車線幅等)、及び自動駐車モードを実行する際に必要とする駐車場の静的情報(駐車場の入出口の位置情報、敷地内の駐車スペース情報等)が記憶されている。
【0020】
運転支援制御ユニット11は、GNSSセンサ22aが取得した自車両Mの位置座標(緯度、経度、高度)を、道路地図データベース22bに記憶されている道路地図情報上にマップマッチングして、道路地図上における自車位置(現在位置)を推定する。
【0021】
自律走行センサ23は、自車両Mを自律走行させる際に必要とするセンサの総称であり、自車両Mの車速(自車速)を検出する車速センサ、自車両Mに作用するヨーレートを検出するヨーレートセンサ、前後加速度を検出する前後加速度センサ等で構成されている。
【0022】
又、後方センサ24は、CCDやCMOS等を撮像素子とする単眼カメラと超音波センサ、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、赤外線センサ、レーザレーダ、LiDAR(Light Detection And Ranging)等のうち少なくとも一つとの組み合わせで構成されており、自車両Mの後方領域24Aを探索する。尚、この後方センサ24は、上述したカメラユニット21と同様、メインカメラとサブカメラとからなるステレオカメラであっても良い。
【0023】
又、左右前側方カメラ25は、例えば、自車両Mの左右に設けたサイドミラーの外側部に取付けられたCCDやCMOS等を撮像素子とするイメージセンサである。図2に示すように、この左右前側方カメラ25によって自車両M左右の前側方領域25lA,25rAを撮像して所定に画像処理を行う。運転支援制御ユニット11は、左右前側方カメラ25で取得し、所定に画像処理した情報から、自車両Mが通過しようとする前側方の駐車スペースの左右を区画する区画線、駐車スペースに駐車している駐車車両、隣接する駐車車両間の間隔等、駐車場内の情報を取得する。
【0024】
又、左右後側方センサ26は、ミリ波レーダ、マイクロ波レーダ、LiDAR等、走査型のセンサであり、例えば、リヤバンパの左右稜部に配置されて、自車両Mの後方から左右側方にかけての、左右前側方カメラ25では認識することのできない領域(左右の後側方領域)26lA,26rA(図2参照)を走査し、駐車車両、外壁、移動体等の物標からの反射波を受信する。運転支援制御ユニット11は左右後側方センサ26からの情報に基づき、自車両Mから物標までの距離及び方角等の環境情報を取得する。尚、図2の符号Psは並列駐車用の駐車スペースであり、各駐車スペースPsは左右が区画線で区画されている。
【0025】
又、運転支援制御ユニット11はHMI(Human Machine Interface)モニタ31と接続されている。このHMIモニタ31には、運転支援制御ユニット11において実行する支援モードとして、運転者が自動運転モードと自動駐車モードとの何れかを選択する運転モード選択画面、自動駐車を開始した際の対象となる駐車スペースと自車両Mとの位置関係を表す画面等が表示される。因みに、このHMIモニタ31はコンビネーションメータのマルチインフォメーションディスプレイやカーナビゲーションシステムのナビ表示装置(ナビモニタ)と兼用されていても良い。
【0026】
又、運転支援制御ユニット11の出力側に駆動制御アクチュエータ32、シフトチェンジアクチュエータ33、報知装置34、及びハザードランプ35が接続されている。
【0027】
駆動制御アクチュエータ32は、自車両Mの走行状態を支援する、パワーアクチュエータ、電動パワーステアリング(EPS)アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ等の総称である。ここで、パワーアクチュエータはエンジンや電動モータ等の駆動源の出力を制御する。EPSアクチュエータはEPSモータの駆動を制御する。又、ブレーキアクチュエータは、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに対して供給するブレーキ油圧を調整する。
【0028】
又、シフトチェンジアクチュエータ33は、自車両Mに搭載されている自動変速機のシフトポジション(ドライブ(D)、リバース(R)、パーキング(P))を、運転支援制御ユニット11からの指令信号に従い自動で切換えるための機構である。更に、報知装置34は、各支援モードを実行している際に必要とする各種インフォメーションを運転者に音声で報知するものである。又、運転支援制御ユニット11は、自動駐車を開始する際にハザードランプ35を点灯させる。
【0029】
地図ロケータユニット22は道路地図上の自車位置(現在位置)と道路地図データとを常時照合している。運転支援制御ユニット11は、地図ロケータユニット22からの情報に基づき、例えば、図6に示すように、自車両Mが一般道から駐車場内に進入したと判定した場合、HMIモニタ31に自動駐車モードを選択するか否かの運転モード選択画面を表示する。運転者がHMIモニタ31に表示された自動駐車モードを選択すると、運転支援制御ユニット11は、駐車場内の駐車可能なスペースを検索し、検索した駐車可能な駐車スペースに対して、先ず、駐車目標停車位置Mf2を設定する。次いで、この駐車目標停車位置Mf2から、切返し目標停車位置Mf1までの目標誘導経路Rpを設定し、自車両Mを目標誘導経路Rpに沿って誘導して、当該駐車スペースに自車両Mを自動駐車させる。
【0030】
運転支援制御ユニット11で実行される自動駐車制御は、具体的には、図3図5に示す自動駐車制御ルーチンに従って処理される。
【0031】
このルーチンは、自動駐車モードが選択された後、所定演算周期毎に実行され、先ず、ステップS1で、自車両Mの駐車スペースを探索するための走行経路を、駐車場内の通行帯に設定する。この走行経路は、予め設定された走行条件に従って設定される。例えば、駐車場内における通行帯、及びこの通行帯に面する駐車スペースPsのデータが道路地図データベース22bに登録されている場合は、当該データに基づいて走行経路を設定する。
【0032】
その際、例えば、図6に示す駐車場内のように、一方通行に規制されている通行帯(図においては外周)が設定されている場合は、当該通行規制に従って走行経路を設定する。又、道路地図情報に駐車場内の通行帯の詳細が登録されていない場合は、前側方の情報を取得する各センサ21,25で取得した前側方の走行環境情報に基づいて走行経路を設定するようにしても良い。そして、例えば、図6に示す駐車場では、入口から進入した自車両Mが最初に検出した、並列駐車用駐車スペースPsに面する通行帯を走行経路として設定する。
【0033】
次いで、ステップS2へ進み、走行経路に沿って自車両Mを自動運転により徐行速度(10~15[Km/h])で走行させ、ステップS3へ進み、通行帯に面して並列に配列されている複数の駐車スペースPsの中から、自車両Mを駐車可能な駐車スペース(駐車可能スペース)Psaを検出する。
【0034】
運転支援制御ユニット11にて駐車可能スペースを検出するに際しては、左右前側方カメラ25で撮像した前側方画像を、二次平面の俯瞰に変換する。そして、隣接する駐車車両間の間隔と、運転支援制御ユニット11の記憶部に予め記憶されている自車両Mを駐車させるために必要な駐車枠(必要駐車枠)Mfとを比較する。
【0035】
例えば、図7Aに破線で示すように、隣接する駐車車両間の間隔が自車両Mの必要駐車枠Mfよりも狭い場合は、駐車不可であるため駐車可能スペースの対象から外す。一方、図7B図9Aに示すように、駐車車両間の間隔が必要駐車枠Mfよりも広く、この駐車車両間に必要駐車枠Mfが収まる場合は、この駐車スペースPsの左右を区画する区画線を検出する。そして、左右の区画線が検出された場合は、当該駐車スペースPsを駐車可能スペースPsaとして設定して、ステップS4へ進む。又、駐車スペースPsを区画する区画線が認識できない場合は、当該駐車スペースPsを駐車可能スペースとしては設定せずにステップS4へ進む。
【0036】
ステップS4へ進むと、駐車可能スペースPsaが設定されているか否かを調べ、設定されていない場合は、ステップS2へ戻り、次の駐車可能スペースの候補を検出する。又、駐車可能スペースPsaが設定されている場合は、ステップS5へ進む。尚、ステップS3,S4での処理が、本発明の駐車可能スペース検出部の処理に対応している。
【0037】
ステップS5へ進むと、運転支援制御ユニット11は、先ず、図9Bに示すように、駆動制御アクチュエータ32に設けられているブレーキアクチュエータを駆動させてブレーキを動作させ、自車両Mを駐車可能スペースPsaの前方に面する通行帯で停車させる。その後、運転支援制御ユニット11は、駐車可能スペースPsaに自車両Mを後進で自動駐車させるための目標誘導経路Rpを設定する。尚、このステップS5での処理が、本発明の目標誘導経路設定部に対応している。
【0038】
本実施形態では、切返し目標停車位置Mf1駐車目標停車位置Mf2に対する目標誘導経路Rpの範囲を任意の角度に設定することが可能である。尚、本実施形態では、説明を容易にするためにほぼ直角に、すなわち、通行帯の延在方向と平行に設定した場合について説明する。従って、図8に示すように、目標誘導経路Rpは、自車両Mのヨー角θが90[deg]旋回する範囲に設定される。
【0039】
この目標誘導経路Rpを設定するに際しては、先ず、道路地図データベース22bに記憶されている道路地図情報、或いはカメラユニット21の前方撮像領域21Arで撮像した環境情報に基づいて、図9Aに示すように、通行帯の全幅(対向する駐車スペースPsを区画する区画線の端部間の距離)2Wを検出する。尚、通行帯の片側幅はWである。
【0040】
そして、自車両Mの車幅Wcarに基づき、横位置移動量Xが、
W-(Wcar/2)<X<2W-(Wcar/2)
の関係を満たす、自車両Mを後進で自動駐車させるための最小舵角を求める。
【0041】
ここで、横位置移動量Xは、駐車可能スペースPsaを区画する区画線の端部から自車両Mの車幅方向中央(Wcar/2)までの移動距離であり、図9Aに示すように、
W-(Wcar/2)=Xmin
2W-(Wcar/2)=Xmax
となる。
【0042】
因みに、図10に示す一般的な二輪モデルによる、操舵輪である前輪の操舵角δと自車両Mの重心位置に作用するヨーレートγs及び車体すべり角βsとの関係は以下の通りである。
【0043】
γs=(V/L)δ
βs=(Lr/L)δ
尚、図において、Lはホイルベース、Lfは前輪軸から重心位置までの距離、Lrは重心位置から後輪軸までの距離である。
【0044】
又、横位置移動量X、及び自車両Mの駐車目標停車位置Mf2から切返し目標停車位置Mf1までの前後位置移動量Yにおけるサンプリング周期Δt毎の移動量XK+1,YK+1は以下の通りである。ここで、kは前回の演算値、K+1は今回の演算値を示し、Vは自車両Mの後進車速、θはヨー角である。
【0045】
Xk+1=Xk+Vk・COS(θk+βs)Δt
Yk+1=Yk+Vk・sin(θk+βs)Δt
θk+1=θk+(γk・Δt)
上式に基づいて、後進車速Vと、Δt毎の操舵角δとから横位置移動量Xと前後位置移動量Yとを一律に算出することができる。因みに、V=5[Km/h]で自車両Mをβs=90[deg]だけ後進方向へ90[deg]毎のハンドル角θhで旋回させた際の重心位置における横位置移動量X[m]と前後位置移動量Y[m]は、図11のように一律に算出することができる。尚、図11に示すハンドル角θh[deg]は例示であり、このハンドル角θh[deg]をより細かく設定することも可能である。
【0046】
例えば、図11において、求めた横位置移動量Xが8[m]の場合、ハンドル角θhは、270[deg],360[deg],450[deg]が候補となる。そして、このハンドル角θhの候補の中から最小舵角の270[deg]が選択される。従って、目標誘導経路は、ハンドル角θh=270[deg]に対応する操舵角δに基づいて求められる横位置移動量Xと前後位置移動量Yから目標誘導経路Rpが設定される。
【0047】
ところで、本実施形態では、図8に示すように、駐車目標停車位置Mf2から切返し目標停車位置Mf1までの目標誘導経路Rpを、自車両Mにおける左右後輪軸の中間位置での移動経路に設定している。一方、図11に示す横位置移動量Xと前後位置移動量Yは自車両Mの重心位置である。そのため、横位置移動量Xと前後位置移動量Yとを重心位置から後輪軸までの距離Lrに移動させた値に換算して、目標誘導経路Rpを設定する。その結果、目標誘導経路Rpはヨー角θが90[deg]において、ほぼ旋回半径Rの円弧状に設定される。尚、この目標誘導経路Rpを自車両Mの重心位置での移動経路に設定しても良い。
【0048】
次いで、ステップS6へ進み、駐車目標停車位置Mf2を駐車可能スペースPsaの進入口に、自車両Mの姿勢が駐車可能スペースPsaの延長上に連なるように設定する。図8に示すように、本実施形態では、駐車目標停車位置Mf2の自車両Mにおける後輪軸に対応する位置に停車位置st2を設定する。そして、この停車位置st2を駐車可能スペースPsa前方の所定位置、例えば、区画線の端部に直行するように設定する。更に、駐車目標停車位置Mf2の幅方向の中央を、駐車可能スペースPsaの左右を区画する区画線間の駐車枠幅Pwの中央に設定する。
【0049】
その後、ステップS7へ進み、駐車目標停車位置Mf2を基準(θ=0[deg])として、ステップS5で設定した目標誘導経路Rpに沿って、θ=90[deg]の位置に切返し目標停車位置Mf1を設定する。尚、このステップS6,S7での処理が、本発明の目標停車位置設定部に対応している。
【0050】
次いで、ステップS8へ進み、運転支援制御ユニット11は、自車両Mを切返し目標停車位置Mf1へ移動させることが可能か否かを調べる。図12に示すように、切返し目標停車位置Mf1への移動が可能か否かは、通行帯の片側幅Wに対する切返し目標停車位置Mf1の横幅Xf1に基づいて判定する。すなわち、駐車目標停車位置Mf2が設定されている側の区画線の端部から切返し目標停車位置Mf1の幅方向中央までの横幅Xf1が通行帯の片側幅Wの1/2を越えている場合は(Xf1>W/2)、移動可能と判定し、ステップS9へ進む。又、横幅Xf1が通行帯の片側幅Wの1/2以下の場合は(Xf1≦W/2)、移動不可と判定し、ステップS2へ戻る。
【0051】
ステップS9へ進むと、運転支援制御ユニット11はハザードランプ35に対してON信号を送信してハザードランプ35を点滅させた後、ステップS10へ進む。ステップS10では、自車両Mを切返し目標停車位置Mf1へ移動させるに際し、予め設定した待機判定エリアZfに歩行者、自転車や対向車両等の移動物標OBが検出されているか否かを調べる。この待機判定エリアZfとして本実施形態では、通行帯の全幅2Wにおいて、駐車目標停車位置Mf2の幅方向中央から切返し目標停車位置Mf1方向への所定距離Lpeの範囲に設定されている。この所定距離Lpeは、予め設定した距離(例えば、20[m])と駐車エリアの終了点Epとの何れか短い方の距離に設定される。
【0052】
そして、運転支援制御ユニット11はカメラユニット21や左右の前側方カメラ25で撮像した前方画像や前側方画像に基づいて取得した環境情報から、待機判定エリアZf内に移動物標OBが検出された場合、ステップS11へ分岐する。又、待機判定エリアZf内に移動物標OBが検出されていない場合はステップS12へ進む。
【0053】
ステップS11へ進むと、移動物標OBが待機判定エリアZfから外れ、或いは切返し目標停車位置Mf1の自車両Mから見た前方で移動物標OBが停止するまで待機する。そして、移動物標OBが待機判定エリアZfから外れ、或いは前方で停止していると判定した場合、ステップS12へ進む。
【0054】
ステップS10、或いはステップS11からステップS12へ進むと、運転支援制御ユニット11は、自車両Mを切返し目標停車位置Mf1へ移動させるための自動運転を開始する。すなわち、運転支援制御ユニット11は、先ず、停車している自車両Mの現在位置から、自車両Mを通行帯に沿って設定された切返し目標停車位置Mf1へ移動させるための目標進行路を設定する。次いで、運転支援制御ユニット11は、駆動制御アクチュエータ32に設けられているブレーキアクチュエータによるブレーキ動作を解除し、パワーアクチュエータを動作させて自車両Mを発進させる。又、運転支援制御ユニット11は、EPSアクチュエータを動作させて、自車両Mを目標進行路に沿って、図9Bに示す切返し目標停車位置Mf1まで移動させる。
【0055】
そして、ステップS13へ進み、自車両Mが予め設定した減速開始位置に到達したか否かを、例えば、GNSSセンサ22aが取得した自車両Mの位置座標と道路地図データベース22bに記憶されている道路地図情報とに基づいて調べ、未だ、到達していない場合は、ステップS12の処理を繰り返す。又、減速開始位置に到達したと判定した場合は、ステップS14へ進む。
【0056】
ステップS14へ進むと、運転支援制御ユニット11は停車制御を実行する。運転支援制御ユニット11による停車制御では、パワーアクチュエータによる駆動源の出力とブレーキアクチュエータによるブレーキ動作とを調整して減速し、自車両Mを切返し目標停車位置Mf1で停車させる。その結果、図9C示すように、自車両Mは、その後輪軸が切返し目標停車位置Mf1に設定した停車位置st1と一致した位置で停車される。尚、このときの操舵角δは0[deg]である(図14の経過時間t0)。
【0057】
以下、図14のタイムチャートを参照しながら説明する。ステップS14からステップS15へ進むと、自車両Mを停車させた状態で左右前輪の切返し制御を実行する。運転支援制御ユニット11は、駆動制御アクチュエータ32に設けられているEPSアクチュエータを動作させ、左右前輪を、上述のステップS5で設定した操舵角δまで転舵(据え切り)させて固定する(図14の経過時間t1~t2)。尚、このステップS15,及び後述するステップS22での処理が、本発明の操舵制御部に対応している。
【0058】
その後、ステップS16へ進み、運転支援制御ユニット11は、シフトチェンジアクチュエータ33を動作させ、自動変速機のシフトポジションをR(リバース)にセットしてステップS17へ進む。
【0059】
ステップS17では、切返し目標停車位置Mf1で停車している自車両Mから駐車目標停車位置Mf2にかけて設定されている後進待機判定エリアZrに、移動物標OBが検出されているか否かを、後方センサ24及び左右の後側方センサ26で検出した後方の環境情報に基づいて判定する。
【0060】
図13に示すように、この後進待機判定エリアZrの幅方向は、通行帯における駐車可能スペースPsa側の区画線と、その反対側の切返し目標停車位置Mf1からややオーバした位置に設定されている。又、長さ方向は、切返し目標停車位置Mf1の重心位置から駐車目標停車位置Mf2側において、この駐車目標停車位置Mf2の幅方向中央から所定長さLex(例えば、駐車枠幅Pw/2)だけ延長した位置の長さ(Lr+R+Lex)に設定されている。
【0061】
そして、後進待機判定エリアZr内に移動物標OBが検出された場合、或いは後進待機判定エリアZr内に移動物標OBが進入する可能性がある場合は、移動不可と判定してステップS18へ分岐する。又、後進待機判定エリアZr内に移動物標OBが検出されていない場合、或いは移動物標OBが後進待機判定エリアZr内に進入する可能性がない場合は、移動可能と判定しステップS19へ進む。
【0062】
移動物標OBが後進待機判定エリアZrに進入する可能性があるか否かは、例えば、移動物標OBの後進待機判定エリアZrに進入する物標予測時間([移動物標OBが後進待機判定エリアZrまでの距離]/[移動物標OBの移動速度])と自車両Mが駐車目標停車位置Mf2に到達する自車予測時間([自車両Mから駐車目標停車位置Mf2までの距離]/[自車速])とを比較する。そして、物標予測時間<自車予測時間の場合、移動物標OBが後進待機判定エリアZrに進入する可能性ありと判定する。
【0063】
ステップS18へ分岐すると、移動物標OBが後進待機判定エリアZrから外れ、或いは、図13に示す移動物標OBとしての他車両が、切返し目標停車位置Mf1から駐車目標停車位置Mf2への自車両Mの移動経路から外れた位置で停止していると判定するまで待機する。そして、移動物標OBが後進待機判定エリアZrから外れ、或いは自車両Mの移動経路から外れた位置で停止していると判定した場合、ステップS19へ進む。尚、このステップS17,S18での処理が、本発明の移動可能判定部に対応している。
【0064】
ステップS17、或いはステップS18からステップS19へ進むと、運転支援制御ユニット11は、自車両Mを駐車目標停車位置Mf2へ移動させる自動運転を開始する(図14の経過時間t3)。
【0065】
すなわち、運転支援制御ユニット11は、左右前輪を、上述のステップS15で切返した操舵角δで固定したまま、先ず、ブレーキアクチュエータによるブレーキ動作を解除し図14の経過時間t3)、次いで、パワーアクチュエータを動作させて自車両Mを、予め設定した微速(例えば、5[Km/h])で後進させる(図14の経過時間t4~t5)。そして、自車両Mを切返し目標停車位置Mf1から駐車目標停車位置Mf2の位置まで移動させる。このとき、操舵角δが固定されているため、結果的に自車両Mは、図9Cに示す目標誘導経路Rpに沿って駐車目標停車位置Mf2の方向へ移動することになる。
【0066】
その後、ステップS20へ進み、自車両Mが予め設定した減速開始位置に到達したか否かを、例えば、GNSSセンサ22aが取得した自車両Mの位置座標と道路地図データベース22bに記憶されている道路地図情報とに基づいて調べ、未だ、到達していない場合は、ステップS19の処理を繰り返す。又、減速開始位置に到達したと判定した場合は、ステップS21へ進む。尚、このステップS19、S20、及び後述するステップS23,S24での処理が、本発明の移動制御部に対応している。
【0067】
ステップS21へ進むと、運転支援制御ユニット11は停車制御を実行する。運転支援制御ユニット11による停車制御では、パワーアクチュエータによる駆動源の出力とブレーキアクチュエータによるブレーキ動作とを調整して減速し、自車両Mを駐車目標停車位置Mf2で停車させる(図14の経過時間t5~t6)。
【0068】
図9Dに示すように、この駐車目標停車位置Mf2は、駐車可能スペースPsaの進入口に、この駐車可能スペースPsaと縦列状に設定されている。又、自車両Mの後輪軸が駐車目標停車位置Mf2に設定した停車位置st2と一致した状態で停車される。
【0069】
次いで、ステップS22へ進み、ハンドル角θh(操舵角δ)を、据え切りで0[deg]に戻し、ステップS23へ進む(図14の経過時間t7~t8)。上述したように、自車両Mは駐車可能スペースPsaに対して縦列方向に停車しているため、ハンドルを切りながら自車両Mを駐車可能スペースPsaに入庫させる必要はない。尚、ハンドル角θh(操舵角δ)は、自車両Mを駐車可能スペースPsaに対し縦列状態で後進できる角度であれば、0[deg]である必要はない。
【0070】
その後、ステップS23へ進むと、運転支援制御ユニット11は、自車両Mを駐車可能スペースPsaに入庫させる走行制御を開始する。すると、図9Eに示すように、自車両Mは、パワーアクチュエータによる駆動源の出力とブレーキアクチュエータによるブレーキ動作とにより速度を調整されながら駐車可能スペースPsa方向への後進を開始する(図14の経過時間t9)。尚、このときの操舵角δは0[deg]であり、自車両Mは真っ直ぐに後進される。
【0071】
そして、ステップS24へ進み、自車両Mの駐車可能スペースPsaへの入庫が完了したか否かを調べ、入庫が完了していない場合は、ステップS23の処理を繰り返す(図14の経過時間t9~t12)。又、図9Fに示すように、入庫が完了したと判定した場合は、ステップS25へ進み、ブレーキアクチュエータによるブレーキ動作にて自車両Mを停車させる(図14の経過時間t12)
次いで、ステップS26へ進み、運転支援制御ユニット11は、ハザードランプ35に対してOFF信号を送信して、ハザードランプ35を消灯させた後、ステップS27へ進み、シフトチェンジアクチュエータ33を動作させて、自動変速機のシフトポジションをP(パーキング)にセットして、ルーチンを終了する。
【0072】
以上、説明したように、本実施形態によれば、図14のタイムチャートに示すように、運転支援制御ユニット11は、自車両Mを停車させた状態で切返し(据え切り)した後(経過時間t1~t2)、目標停車位置Mf1から駐車目標停車位置Mf2へ移動させる(経過時間t3~t6)。その後、停車させた状態で据え切りしてハンドル角θh(操舵角δ)を0[deg]に戻すようにしたので(経過時間t7~t8)、自動駐車において左右前輪の操舵角δの過渡制御区間(経過時間t0~t2,t7~t8)と、後進車速Vの加減速制御区間(t3~t4,t5~t6)とが同時に行われることがなく、制御が容易となる。
【0073】
又、切返し目標停車位置Mf1から駐車目標停車位置Mf2への移動はハンドル角θh(操舵角δ)を固定して行われるため、切返し位置から駐車スペースへ導く誘導経路の算出も容易に行うことができるばかりでなく、後進しながらハンドル角θh(操舵角δ)を制御する必要がないため、初期位置(切返し目標停車位置Mf1)を精度良く設定することができる。更に、ハンドル角θh(操舵角δ)が固定された状態で駐車目標停車位置Mf2に誘導されるので、運転者は自車両Mを駐車可能スペースPsaに駐車するための車両挙動を想定することが容易となり安心感を得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10
図11
図12
図13
図14