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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】エクステンシブルカーブド吸引管
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
A61M1/00 161
A61M1/00 133
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020119592
(22)【出願日】2020-07-12
(65)【公開番号】P2022016718
(43)【公開日】2022-01-24
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】720005987
【氏名又は名称】谷口 理章
(72)【発明者】
【氏名】谷口 理章
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050552(JP,A)
【文献】特許第2674719(JP,B2)
【文献】特表2018-517452(JP,A)
【文献】特表平07-501716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する軸部と、湾曲した先端部、軸部に挿通された内筒、ならびに操作部を備えた基部からなる医療用吸引管であって、上記操作部には吸引圧を調節することを可能とする調節孔と、前期内筒を押下するための突起が隣接して設置され、一つの指の先端と腹で吸引調節と内筒の押出を可能とすることを特徴とし、上記操作部の突起の押下により、軸部に挿通された内筒の先端が、軸部の長手方向から角度をもって伸長することを特徴とする医療用吸引管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用の吸引器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡手術の際に出る血液、組織液、組織片は手術野の視認性を著しく低下させるため、速やかに除去する必要がある。また視認性を確保するため食塩水、あるいは人口髄液のような洗浄液で手術野を絶えず洗浄する必要があり、これらの液体も逐次除去しなければならない。現在はこの目的のために手術用の吸引管が使用されている。これは陰圧吸引措置にホース状の管で接続された細径の金属製の筒状の器具であり、先端部から吸引をかけ、液体や小型の組織片を吸い込んで除去するものである。
【0003】
吸引管の長手方向から離れた部位の吸引処理を行うに際しては、あらかじめ先端が屈曲した、あるいは術野への挿入前に先端部を用手的に屈曲させて使用する吸引管が存在する。
【0004】
また術野内に挿入した後に、基部に設けられたダイアルを操作して先端部を首振り可動させ、吸引管の長手方向から離れた範囲での吸引処理を可能にする吸引管も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実全昭55-170581号公報
【文献】実全昭59-53039号公報
【文献】特開2005-261621号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】手術機器カタログ「Neurosurgery Vol. 18-20」株式会社フジタ医科器械
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
内視鏡下手術、とくに鼻孔を経由して行う経鼻内視鏡手術においては、手術に用いられる空間は細い円筒状となり、手術器具を挿入する方向は、円筒状の侵入経路に対して長手方向に限られる。術野の観察については、内視鏡の長手方向に対して30度や70度の方向が観察できる内視鏡(側視鏡)を利用することにより、円筒状の術野の側方を観察することが可能である。しかし前記側視鏡を用いて観察した側方の術野に手術操作を加えるためには、器具の挿入軸と目的物への操作軸が異なるため、先端が屈曲し、側方に到達できる手術器具が必要となる。
【0008】
吸引管については、あらかじめ先端部が屈曲したもの、あるいは用手的にあらかじめ屈曲させて使用するものが存在するが、屈曲の角度および先端長は術野への挿入前に固定されるため、側方への必要到達度ごとに複数種類の吸引管の準備が必要となる、あるいはその都度吸引管を術野から引き戻して用手的に変形させる必要がある。また屈曲部以降の先端部が長くなると、狭い侵入経路を通過させる途中で周辺の組織に係留して挿入が困難となるため、先端部の長さは制限され、側方への到達度も制限される。
【0009】
基部の操作部に設けられたダイアルを操作して処理部先端を首振りさせ、深部の術野内で側方に吸引孔を向けることを可能にするする吸引管も考案されているが、先端部を屈曲させるに際し、ダイアルの調節といった手元での複雑な操作が追加で必要になる。内視鏡手術では利き手に鉗子やハサミなどの手術器具を保持し、非利き手に吸引管を保持することが多く、このため吸引管の操作が煩雑になることは、非利き手での複雑な操作を要することとなるため、手術の難易度を高め、術者の負担が増え、手術のリスクを増加させる因子ともなりうる。
【0010】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、内視鏡の長手方向から離れた部位での術中の出血や体液などの漏出、組織片の散布に対し、基部の単純な操作で、本体の長手方向から離れた部位での吸引処理が可能な吸引管を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る吸引管は、一端側先端部が湾曲した処理部、本体部に形成された中空の軸部と、本体中空部に挿通して、本体の後端側に連結された中空部を有する可撓性の内筒を備え、前記内筒の後端側に任意の回転角度で連結された、内筒の中空部に対して吸引を行う吸引機構と、内筒を押出する機構を有する操作部を備え、前記押出機構により前記内筒が本体先端部の湾曲した処理部から、本体軸部の長手方向より角度をもって伸長することにより、軸部の突き当りの周辺をある程度の広がりを持って吸引処置することができることを特徴とする。また操作部に吸引圧を調節することを可能とする調節孔と、前期内筒を押下するための突起を隣接して設置することで、吸引圧の調節を一つの指の腹で行い、また同一の指の先で内筒を押下することができることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸引管先端が長手方向から角度をもって伸長するので、内視鏡の長手方向から離れた部位で生じた術中の出血や体液などの漏出、組織片の散布に対し、吸引処理が可能となる。軸部内筒を操作部に対して所望の回転角度で連結できるので、本体軸部横断面において所望の方向に伸長でき、吸引処理が可能となる。内筒を伸長させるのに必要な動作は、操作部の突起を押下する単純なもので済むため、非利き手でも容易に処置を施すことができる。軸部の突き当りの周辺をある程度の広がりを持って吸引処置することができるため、目標とする部位に応じて吸引管を付け替えたり、術野から吸引管をいったん引き出して先端を成形しなおしたりする必要がなく、同一の吸引管で手術を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は本発明の第1の状態に係る医療用吸引管の側面図である。
図2図2は本発明の第1の状態に係る医療用吸引管の背面図である。
図3図3図1乃至図2に示す軸部1とコイルばね4と外筒甲部6を示した図である。
図4図4図1乃至図2に示す内筒7と外筒乙部8を示した図である。
図5図5図1乃至図2に示すハンドル14を示した図である。
図6図6図1乃至図2に示すカバー19を示した図である。
図7図7図6に示すカバー19の立体斜視図である。
図8図8は本発明の第2の状態に係る医療用吸引管の側面図である。
図9図9図1乃至図8に示す医療用吸引管を使用した手術例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の記述に限定されるものではなく、本発明の要旨に逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0015】
図1乃至図2 に示すように、この医療用処置具である吸引管は、折曲可能な可撓管から成る軸部1と、その先端に処理部2と、後端に操作部3 を備える。
【0016】
図1乃至図3に示すように、本体軸部1は中空部を有し、軸部先端部は湾曲した処理部2を有し、軸部1の長手方向に角度をもって開口する。
【0017】
図3に示すように、軸部1の後端にはコイルばね4が外嵌され、コイルばね先端は本体軸部に溶接して溶接部5aに固定される。コイルばねの後端側には鋼製素材で形成された外筒甲部6が溶接部5bにおいて連結する。
【0018】
図1乃至図4に示すように、軸部1中空内にはシリコン樹脂等で形成された弾性を有する細径の円筒状の内筒7が挿通される。内筒7は後端で鋼製に形成された外筒乙部8と連結され、外筒乙部8は軸部1後端側にコイルばね4を介して連結された外筒甲部6に接続部9において螺嵌される。シリコン樹脂等で形成された内筒7と外筒乙部8は連結部10において嵌脱可能であり、内筒の損傷や変形に際し、新しい内筒と適宜交換が可能である。
【0019】
図1乃至図5に示すように、内筒7に連結された外筒乙部8は、後端側でハンドル14に挿嵌する。ハンドル14の後端側にはハンドルと一体成形された、円筒状の鋸歯状コネクター15を有し、これは吸引源16に接続するためのチューブを連結するためのものである。吸引源16に接続することにより、内筒7中空部内に吸引圧をかけることが可能となる。
【0020】
図5に示すように、ハンドル14には、調節孔17が設けられ、親指で調節孔をふさぐことで、内筒7にかかる吸引圧を最大にし、調節孔を開放することで、吸引圧を下げるといった吸引圧の調節が可能である。またハンドル14には調節孔17に隣接して先端側に突起18が設けられている。
【0021】
図1乃至図8に示すように、前記コイルばねは、少なくとも自然長である第1状態4と、第1状態よりも収縮した第2状態11との間で、軸部1の長手方向に伸縮する。第1状態におけるコイルばね4の長手方向の長さは、第2状態におけるコイルばね11の長手方向の長さよりも長い。したがって、第1状態における処理部2と、ハンドルの突起18との間の長手方向の距離は、第2状態における処理部2と、ハンドルの突起18との間の長手方向の距離よりも長い。また、少なくとも第2状態におけるコイルばね11の長手方向の長さは、コイルばね4の自然長よりも短い。
【0022】
図8に示すように、コイルばねが収縮した第2状態11では、コイルばねに外筒甲部6ならびに外筒乙部8を介して連結した内筒7が軸部1の先端方向へ移動し、軸部先端の湾曲した処理部2から可撓性の内筒の先端13が、軸部長手方向から角度をもって伸長する。
【0023】
前記ハンドルの突起18は、これを軸部1の長手方向に押下することで、ハンドルに連結された外筒甲部6および外筒乙部8を介して、コイルばねを収縮した第2状態11にし、内筒7の押出を可能とする。
【0024】
図1に示すように、ハンドルの突起18を押出する力を弱めると、ばねの自然長に復帰する力によって、コイルばねは第1状態4に復帰し、内筒7が軸部後方へ移動し、内筒の先端12が軸部先端開口部に収納される。
【0025】
図5に示すように、ハンドルの調節孔17と突起18は隣接しており、親指の腹で調節孔17の開閉を行いつつ、親指の先端で突起18の押下を可能とする。
【0026】
図6乃至図7に示すように、円筒状の長手方向に一部の隙間を設けた、筒型の横断面がC型状に形成された樹脂製のカバー19を設け、図1の示すように、前期カバーをコイルばね4に冠着する。前記カバー19は前期コイルばね4と前期本体軸部1の溶接部5aに、固定部20において係合して固定される。
【0027】
カバー19の後端側にはフランジ21が一体成型され、親指で前記ハンドル部の突起18を押下する際に、フランジ21が中指および薬指、または他の適当な指の組み合わせにより、本体軸部を支えるための支点となる。
【実施例
【0028】
図9 に示すように、例えばこの医療用吸引管を下垂体の腫瘍A の摘出に使用するものとする。まず、内視鏡Bを鼻孔Cから下垂体の方へと挿入し、内視鏡B により患部を照明する。
【0029】
術者がハンドル14を持ち、係る医療用吸引管の軸部1を鼻孔C内に内視鏡と並行して挿入する。ハンドル14後端部の鋸歯状コネクター15はチューブを介して吸引源が接続され、内筒7中空部内に吸引圧をかけることが可能となる。吸引圧は術者がハンドル14を保持する手の親指で、調節孔17を閉鎖することで最大となり、調節孔を開放することで最小となる。
【0030】
続いて、ハンドル14を持つ手の中指および薬指でカバーのフランジ21を保持し、親指の先端で突起18を押下して内筒7を押出することで、軸部先端の処理部2から内筒7を軸部1の長手方向に対して角度をもって押出することが可能となる。
【0031】
このように、軸部1を患者の体内に挿入した場合に、内筒7を長手方向から角度をもって押出できるので、患者の体内における処理部2の突き当りの周辺をある程度の広がりを持って処置することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ・・・ 軸部
2 ・・・ 処理部
3 ・・・ 操作部
4, 11 ・・・ コイルばね
5a ・・・ コイルばねと軸部の溶接部
5b ・・・ コイルばねと外筒甲部の溶接部
6 ・・・ 外筒甲部
7, 12, 13 ・・・ 内筒
8 ・・・ 外筒乙部
9 ・・・ 外筒甲部と外筒乙部の接続部
10 ・・・ 内筒と外筒乙部の接続部
14 ・・・ ハンドル
15 ・・・ 鋸歯状コネクター
16 ・・・ 吸引源
17 ・・・ 調節孔
18 ・・・ 突起
19 ・・・ カバー
20 ・・・ カバーの軸部との固定部
21 ・・・ フランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9