(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】異材積層構造レール材
(51)【国際特許分類】
B60P 7/08 20060101AFI20250207BHJP
F16B 11/00 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
B60P7/08
F16B11/00 D
(21)【出願番号】P 2021000883
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594016768
【氏名又は名称】オールセーフ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521303523
【氏名又は名称】株式会社コンテック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山田 吉徳
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6733049(JP,B2)
【文献】特開2019-043314(JP,A)
【文献】特開2008-201208(JP,A)
【文献】特開平06-292984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 7/08
F16B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送構体に物品を固定するための係合部材を所定の位置に係合することができるレール構造を表面に有し、かつ、該輸送構体の側壁面又は床面に固定することができる裏面を有する、所定の厚みを有する異材積層構造レール材であって、該厚み方向において該レール構造と該裏面との間に、互いに異種の金属同士が、接合面の全面にわたり冶金的に接合して一体化している接合面を少なくとも1つ有
し、かつ、
該表面にあるレール構造は、第一金属層内に形成されており、該裏面は、第一金属層とは異種の第二金属層の、輸送構体側固定面であり、該第一金属層は、該レール構造のある表面と反対側の面で、該第一金属層と同種の第一中間金属層に固定されており、該第一中間金属層と該第二金属層が接する接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈しており、かつ、
該第一金属層と、該レール構造のある表面と反対側の面での、該第一中間金属層との固定は、溶接によるものである、異材積層構造レール材。
【請求項2】
前記輸送構体側固定面における、前記第二金属層と、
前記輸送構体の側壁面又は床面との固定は、溶接によるものである、請求項
1に記載の異材積層構造レール材。
【請求項3】
前記第一中間金属層は、
前記第一金属層とは反対側の面で第二中間金属層と、かつ、該第二中間金属層は、該第一中間金属層とは反対側の面で、前記第二金属層と、それぞれ、接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している、請求項1
又は2に記載の異材積層構造レール材。
【請求項4】
前記第一金属層が、純アルミ、アルミ合金、純チタン、チタン合金、及びマグネシウム合金からなる群から選ばれる金属層である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の異材積層構造レール材。
【請求項5】
前記第二金属層が、炭素鋼、及びステンレス鋼からなる群から選ばれる金属層である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の異材積層構造レール材。
【請求項6】
前記第一中間金属
層は、純チタン、チタン合金、純アルミ、アルミ合金、純ニッケル、及びニッケル合金からなる群から選ばれる金属層である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の異材積層構造レール材。
【請求項7】
前
記第二中間金属層は、純チタン、チタン合金、純アルミ、アルミ合金、純ニッケル、及びニッケル合金からなる群から選ばれる金属層である、請求項
3に記載の異材積層構造レール材。
【請求項8】
前記接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈してい
る、前記第一中間金属層と前記第二金属層との間の接合面
は、爆発圧着によって接合され形成されたものである、請求項1~
7のいずれか1項に記載の異材積層構造レール材。
【請求項9】
前記接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈してい
る、前記第一中間金属層と前記第二中間金属層との間の接合面、
及び、前記第二中間金属層と前記第二金属層との間の接合面は、それぞれ、爆発圧着によって接合され形成されたものである、請求項3
又は7に記載の異材積層構造レール材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送構体、荷室、荷台又はコンテナに物品を固定するための係合部材を所定の位置に係合することができる異材積層構造レール材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸送構体やトラックの荷室又は荷台、コンテナなどに、座席や荷物、棚板などを固定する場合、任意の位置で物品を直接又はラッシングベルト等で固定締結できるレールが用いられている。
【0003】
一般的に前記レールの部材としては、重量増加に伴う燃費悪化などの点から軽量部材が望まれるため、アルミニウム、アルミニウム合金、ジュラルミンなどの軽量金属が用いられている。他方、輸送構体や荷室、コンテナなどは強度が求められるため、鉄鋼材料が使用されており、軽量部材のレールと強度部材の鉄鋼材料の異種金属材料を締結(ボルト締め等)することが求められる。
【0004】
互に異種の金属同士の締結においては、溶接、ボルトなどの機械締結が用いられるが、アルミニウムと鉄鋼材料の溶接は、それぞれの融点の著しい乖離や金属間化合物の生成により、強固な接合は望めない。また、機械締結では、異種金属の接触による電食の懸念があり、輸送構体やコンテナに用いられる鉄鋼材料が著しく腐食する現象が生じ、輸送構体やコンテナ等の老朽化促進につながる。電食は互いに異種の金属間の空隙に水分や砂塵、ほこりなどが侵入することで、電荷の移動が生じて、腐食が起こる現象である。この電食を防ぐ方法としては、塗装などを鉄鋼材料表面に施すことにより、異種金属同士を絶縁することで、防止することは可能であるが、締結時の締付による塗膜の破壊、塗装の経時変化によるひび割れ等により、半永久的な異種金属同士の絶縁は望めない。
【0005】
以下の特許文献1には、アルミニウム系のレールの固定方法として、鉄やステンレス製の土台枠に同じく鉄やステンレス製の取付具を溶接で取付け、皿ネジでレールと取付具を固定する方法を示している。この場合、材質の異なるレールと取付具同士の接触箇所が存在し、電食が発生する。仮に取付具に絶縁塗装を行ったとしても、皿ネジが単一のアルミニウム製、鉄やステンレス製であった場合、皿ネジ自身が異なる金属と接触することになるため、例え、皿ネジに絶縁塗装を施したとしても、ネジの締め込み等において、容易に塗膜が破壊されてしまうことから、電食による著しい腐食は回避できない。
【0006】
また、以下の特許文献2には、荷室の床面と側壁の両者にレールをボルトで固定する方法が示されているが、レールや、レールを固定するボルト、床面、側壁の材質は何ら示されておらず、互いに異種の金属同士の接触における電食の懸念に触れられていない。
【0007】
以下、特許文献2に開示された従来使用されてきた輸送構体に物品を固定するための軽量金属製レール60を、図面を参照しながら説明する。
レール60は、乗用自動車、トラック等の荷役用乗り物、コンテナ等の荷室の側壁や床面に沿って延びるように複数のボルトB(図示せず)により固定されるものである。
レール60は、
図4に示すように、その長手方向の略全体に亘って設けられ、固縛用長尺部材であるラッシングベルト20の端部に取付けられた金具21が連結される被連結部材30(スタッドフィッティングともいう)が係合するように形成された溝13と、当該長手方向に間隔をおいて配置され、一端が側壁側固定面61に開口する複数のボルト孔62とを備える。
ボルト孔62は貫通孔であり、ボルトBが挿通するようになっている。本実施形態では、ボルト孔62の他端は溝13内に開口している。また、
図1に示すように、ボルト孔62はレール60の長手方向に所定間隔で配置されている。
ボルト孔62の他端側には座ぐり部62aが設けられ、座ぐり部62aにボルトBの頭部が押付けられることにより、側壁側固定面61が側壁に圧接され、これにより、レール60が側壁に固定される。ボルト孔62に挿通するボルトBは側壁や床面に螺合するものであってもよく、側壁や床面の裏側等に配置されたフレームに螺合するものであってもよい。
溝13は、例えば、エアラインレール(オールセーフ株式会社、旧アンクラジャパン株式会社製、登録商標)と称される公知のレールの溝と同一であり、
図4に示すように、レール60の長手方向の略全体に亘って延びる内部空間13aと底面13bとを有する。また、レール60の長手方向の略全体に亘って延び、内部空間13aに接続している開口部16を有し、開口部16は、幅が小さい複数の幅狭部16aと幅が大きい複数の幅広部16bとがレール60の長手方向に交互に設けられている。
【0008】
図2に示すように、複数の幅狭部16aは、溝13の幅方向両側から溝13の幅方向内側に向かって延びる複数のフランジ部13cにより形成されており、フランジ部13cの内部空間13a側の面13dは底面13bと対向している。幅狭部16aの溝13の幅方向の寸法は、幅広部16bの溝13の幅方向の寸法よりも小さい。
図3に示すように、被連結部材30は、長手方向の一端側が溝13の内部空間13a内に挿入される係合部材31と、係合部材31の長手方向の他端側に溝13の長手方向に延びる軸線周りに回動可能に連結されたリング等の被連結部32と、係合部材31の外周側に係合部材31の長手方向に移動可能に設けられた移動規制部材33と、係合部材31の外周側における被連結部32と移動規制部材33との間に配置されたスプリング等の付勢部材34とを有する。付勢部材34の一端側は被連結部32に係合部材31の長手方向に当接している。
係合部材31の長手方向の一端側には大径部31aが形成されている。移動規制部材33は大径部31aに当接するように構成され、また、移動規制部材33は付勢部材34により大径部31a側に付勢されている。これにより、移動規制部材33は係合部材31の外周側から脱落することがない。移動規制部材33における溝13(レール60)の長手方向の両端にはそれぞれ移動規制係合部33aが設けられている。移動規制係合部33aは移動規制部材33の長手方向の両端から係合部材31の前記一端側に向かって突出している。
【0009】
大径部31aは幅広部16bより少し小さい幅寸法(溝13の幅方向の寸法)を有し、幅狭部16aより大きい幅寸法(溝13の幅方向の寸法)を有する。このため、係合部材31の大径部31aを幅広部16bから内部空間13a内に挿入し、係合部材31を溝13の長手方向に移動して大径部31aを幅狭部16aに対応した位置に配置することにより、大径部31aが溝13の幅方向の両側のフランジ部13cにおける内部空間13a側の面(一対の係合部)13dに当接する。これにより、被連結部材30の係合部材31の大径部31aがレール60の溝13に係合する(
図4参照)。
大径部31aを幅広部16bから内部空間13a内に挿入し、係合部材31を溝13の長手方向に移動する際には、作業者は移動規制部材33を付勢部材34による付勢力に抗して被連結部32側に移動する。これにより、移動規制係合部33aが溝13外に配置された状態となる。他方、溝13の任意の幅狭部16aにおいて係合部材31の大径部31aをレール60の溝13に係合させる場合は、作業者が付勢部材34による移動規制部材33の溝13側への移動を許容することにより、移動規制係合部33aの少なくとも一部が内部空間13a内に配置される。移動規制係合部33aは幅広部16bより少し小さい幅寸法(溝13の幅方向の寸法)を有し、幅狭部16aより大きい幅寸法(溝13の幅方向の寸法)を有するため、移動規制係合部33aの少なくとも一部が内部空間13a内に配置されることにより、被連結部材30の溝13の長手方向への移動が規制される。
【0010】
図4に示すように、ラッシングベルト20の両端にはフック部材等の金具21が取付けられている。また、ラッシングベルト20の中間部分にはラチェットバックル等の固縛力調整器が設けられる(図示せず)。
上記のように構成された1つの又は一対のレール60が、荷室の幅方向の両側に配置されると共に、前述のようにボルトBにより側壁又は床面に固定される。この状態で、
図4に示すように、レール60の溝13の長手方向の任意の位置に一対の被連結部材30が前述のように係合し、一対の被連結部材30の被連結部32にラッシングベルト20の両端の金具21がそれぞれ連結される。この状態でラッシングベルト20の固縛力調整器(図示せせず)で固縛力を増すことにより、荷物Fが側壁又は床面に押付けられ固定される。
【0011】
レール60は、例えば、十数cmや数十cmの幅寸法を有し、それよりも小さい厚さ寸法を有する。また。レール60のラッシングポイントは、例えば、25.4mmピッチであることができる。スタッドフィッチングとして、リング付きやリングなし、シングルやダブル等各種のものが使用でき、また、レールも、フランジ付きや埋め込みタイプや各種のものが知られている。
【0012】
しかしながら、従来技術の軽量金属製レールはいずれも、ボルト等の係合手段により互いに異種の金属同士を係合して使用されるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2008-201208号公報
【文献】特開2019-43314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記した従来の現状に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、レールの材質とレールを固定する部位の材質が異種金属である場合に、電食を生じることなく、強固に固定が可能となる、輸送構体、荷室、荷台又はコンテナに物品を固定するための係合部材を所定の位置に係合することができる異材積層構造レール材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、レール構造を表面に有し、かつ、輸送構体の側壁面又は床面に固定することができる裏面を有するレール材の厚み方向において、互いに異種の金属同士が、接合面の全面にわたり冶金的に接合して一体化している接合面を有するものとすることにより、電食を生じさせることなく、物品を強固に固定することができることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0016】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]輸送構体に物品を固定するための係合部材を所定の位置に係合することができるレール構造を表面に有し、かつ、該輸送構体の側壁面又は床面に固定することができる裏面を有する、所定の厚みを有する異材積層構造レール材であって、該厚み方向において該レール構造と該裏面との間に、互いに異種の金属同士が、接合面の全面にわたり冶金的に接合して一体化している接合面を少なくとも1つ有する、前記異材積層構造レール材。
[2]前記表面にあるレール構造は、第一金属層内に形成されており、前記裏面は、第一金属層とは異種の第二金属層の、前記輸送構体側固定面であり、該第一金属層と該第二金属層が接する接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している、前記[1]に記載の異材積層構造レール材。
[3]前記輸送構体側固定面における、前記第二金属層と、該輸送構体の側壁面又は床面との固定は、溶接によるものである、前記[2]に記載の異材積層構造レール材。
[4]前記表面にあるレール構造は、第一金属層内に形成されており、前記裏面は、第一金属層とは異種の第二金属層の、前記輸送構体側固定面であり、該第一金属層は、前記レール構造のある表面と反対側の面で、該第一金属層と同種の第一中間金属層に固定されており、該第一中間金属層と該第二金属層が接する接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している、前記[1]に記載の異材積層構造レール材。
[5]前記第一金属層と、前記レール構造のある表面と反対側の面での、前記第一中間金属層との固定は、溶接によるものである、前記[4]に記載の異材積層構造レール材。
[6]前記輸送構体側固定面における、前記第二金属層と、該輸送構体の側壁面又は床面との固定は、溶接によるものである、前記[4]又は[5]に記載の異材積層構造レール材。
[7]前記表面にあるレール構造は、第一金属層内に形成されており、前記裏面は、第一金属層とは異種の第二金属層の、前記輸送構体側固定面であり、該第一金属層は、前記レール構造のある表面と反対側の面で、該第一金属層と同種の第一中間金属層に固定されており、該第一中間金属層は、該第一金属層とは反対側の面で第二中間金属層と、かつ、該第二中間金属層は、該第一中間金属層とは反対側の面で、前記第二金属層と、それぞれ、接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している、前記[1]に記載の異材積層構造レール材。
[8]前記第一金属層と、前記レール構造のある表面と反対側の面での、前記第一中間金属層との固定は、溶接によるものである、前記[7]に記載の異材積層構造レール材。
[9]前記輸送構体側固定面における、前記第二金属層と、該輸送構体の側壁面又は床面との固定は、溶接によるものである、前記[7]又は[8]に記載の異材積層構造レール材。
[10]前記第一金属層が、純アルミ、アルミ合金、純チタン、チタン合金、及びマグネシウム合金からなる群から選ばれる金属層である、前記[1]~[9]のいずれかに記載の異材積層構造レール材。
[11]前記第二金属層が、炭素鋼、及びステンレス鋼からなる群から選ばれる金属層である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の異材積層構造レール材。
[12]前記第一中間金属層及び/又は第二中間金属層は、純チタン、チタン合金、純アルミ、アルミ合金、純ニッケル、及びニッケル合金からなる群から選ばれる金属層である、前記[1]~[11]のいずれかに記載の異材積層構造レール材。
[13]前記接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している、前記第一金属層と第二金属層との間の接合面、前記第一中間金属層と前記第二金属層との間の接合面、前記第一中間金属層と前記第二中間金属層との間の接合面、並びに、前記前記第二中間金属層と前記第二金属層との間の接合面は、それぞれ、爆発圧着によって接合され形成されたものである、前記[1]~[12]のいずれかに記載の異材積層構造レール材。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る異材積層構造レール材は、輸送構体や荷台、コンテナなどの材質とレールが互いに異種の金属材料である場合の接触による電食を防ぐとともに、互いに異種の金属材料同士を強固に接合し、更にはレールの固定を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】従来技術の金属製レールを溝側から見た図である。
【
図3】従来技術の金属製レールと係合する被連結部材の正面図である。
【
図4】従来技術の金属製レール、被連結部材、及び金具の斜視図である。
【
図5(A)】本発明の1の実施形態に係る異材積層構造レール材の模式図である。
【
図5(B)】本発明の他の実施形態に係る異材積層構造レール材の模式図である。
【
図5(C)】本発明の他の実施形態に係る異材積層構造レール材の模式図である。
【
図6】実施形態の異材積層構造レール材がコンテナの荷室に固定された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本発明は、輸送構体に物品を固定するための係合部材を所定の位置に係合することができるレール構造を表面に有し、かつ、該輸送構体の側壁面又は床面に固定することができる裏面を有する、所定の厚みを有する異材積層構造レール材であって、該厚み方向において該レール構造と該裏面との間に、互いに異種の金属同士が、接合面の全面にわたり冶金的に接合して一体化している接合面を有する、前記異材積層構造レール材に関する。
本発明の1の実施形態は、前記表面にあるレール構造は、第一金属層内に形成されており、前記裏面は、第一金属層とは異種の第二金属層の、前記輸送構体側固定面であり、該第一金属層と該第二金属層が接する接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している、異材積層構造レール材である(
図5(A)参照)。
本発明の他の実施形態は、前記表面にあるレール構造は、第一金属層内に形成されており、前記裏面は、第一金属層とは異種の第二金属層の、前記輸送構体側固定面であり、該第一金属層は、前記レール構造のある表面と反対側の面で、該第一金属層と同種の第一中間金属層に固定されており、該第一中間金属層と該第二金属層が接する接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している異材積層構造レール材である(
図5(B)参照)
本発明のさらに他の実施形態は、前記表面にあるレール構造は、第一金属層内に形成されており、前記裏面は、第一金属層とは異種の第二金属層の、前記輸送構体側固定面であり、該第一金属層は、前記レール構造のある表面と反対側の面で、該第一金属層と同種の第一中間金属層に固定されており、該第一中間金属層は、該第一金属層とは反対側の面で第二中間金属層と、かつ、該第二中間金属層は、該第一中間金属層とは反対側の面で、前記第二金属層と、それぞれ、接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している異材積層構造レール材(
図5(C)参照)。
尚、前記第二中間金属層に、さらに第三中間金属層、第四中間金属層等を含むが、同様の関係にある態様も、本発明の範囲に包含される。
【0020】
本明細書中、「互いに異種の金属同士」とは、1の金属又は合金の主金属成分が、他の金属又は合金の主金属成分とは異なる関係をいう。例えは、純アルミニウムは、アルミニウム合金と、アルミニウムが主金属成分として同一であるため、互いに同種の金属である一方、鉄が主金属成分である炭素鋼、ステンレス鋼と、互いに異種の金属である。例えば、アルミニウム合金と、純チタン、炭素鋼同士も互いに異種の金属である。
本発明の異材積層構造レール材は、厚み方向において、互いに異種の金属同士が、接合面の全面にわたり冶金的に接合して一体化している接合面を少なくとも1つ有することを特徴とする。
尚、互いに同種の金属同士であれば、溶接やボルト締めによって接合しても、電食は生じない。
【0021】
1の実施形態は、
図5(A)に示すように、表面にレール構造を有する第一金属層1と、裏面が該第一金属層の材質とは異種である第二金属層2で構成され、1と2が接する面で全面にわたって冶金的に接合している異材積層構造レール材であり、4で示す輸送構体や荷台、コンテナなどの側壁面や床面などに溶接3により固定されることができるものである。尚、互いに同種の金属同士である2と4の固定手段としては、強度の点から、溶接が好ましいが、電食が生じない限り、ボルト締めを排除するものではない。
また、他の実施形態は、
図5(B)、
図5(C)に示すように、表面にレール構造を有する第一金属層1と、裏面が該第一金属層(レール材質)とは異種である第二金属層2の間に、第一中間金属層5及び/又は第二中間金属層6が配置されている異材積層構造レール材である。
上記いずれの実施形態でも、前記第一金属層と第二金属層との間の接合面、前記第一中間金属層と前記第二金属層との間の接合面、前記第一中間金属層と前記第二中間金属層との間の接合面、並びに、前記前記第二中間金属層と前記第二金属層との間の接合面の内の少なくとも1の接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している。かかる「接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している」接合面は、強度の観点から、爆発圧着によって接合され形成されたものであることが好ましい。
【0022】
レール構造を有する第一金属層のレール構造の形状は、ラッシングベルトなどの連結部材が任意の場所で固定できるような機構であれば、特に限定されない。レール構造の具体例としては、直線状の第一金属層1の内部に直線状の空洞が設けられ、連結部材を挿入できる丸形の孔が一列に連続するレール構造などが挙げられ、例えば、前記した公知のエアラインレール(オールセーフ株式会社、旧アンクラジャパン株式会社製、登録商標)と同一の構造を有するものであることができる。尚、本実施形態のいずれにおいても、従来技術のエアラインレールが具備しているボルト孔は不要であるが、レールと同種の中間金属層との接合において、同じく同種のボルトを用いても構わない。この場合、従来技術のエアラインレールをそのまま用いることができる。
【0023】
レール構造を有する第一金属層1は、純アルミ、アルミ合金、例えば、ジュラルミン、純チタン、チタン合金、及びマグネシウム合金からなる群から選ばれる金属材料で構成されることができる。
【0024】
レール構造を有する第一金属層1とは異種の第二金属層2は、炭素鋼、及びステンレス鋼からなる群から選ばれる金属材料で構成されることができ、4に示す輸送構体や荷台、コンテナなどの金属材料と同一又は類似した金属材料であることが望ましい。これにより、本実施形態の異材積層構造レール材の固定を、ボルトやビス、リベットを用いた場合であっても、同種材同士が接することになるため、電食による腐食が生じにくくなり、経年劣化を防止できる。また、本実施形態の異材積層構造レール材の固定時に溶接3を用いる場合、互いに同種の材料同士の溶接であれば、溶接が容易で且つ強固な固定が可能となる。
【0025】
第一中間金属層5及び/又は第二中間金属層6は、純チタン、チタン合金、純アルミ、アルミ合金、マグネシウム合金、純ニッケル、及びニッケル合金からなる群から選ばれる金属材料であり、レール構造を有する第一金属層1を固定する第一中間金属層5には、第一金属層1の材料に応じて、同種材料からなる純チタン、チタン合金、純アルミ、アルミ合金、及びマグネシウム合金からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を用いることがより好ましい。より強固な固定器具となることに寄与する観点から、第一中間金属層5と併せて、第二中間金属層6を設け、第二中間金属層6として純チタン、及び純ニッケルからなる群から選ばれる金属材料を用いることが、更に好ましい。互いに同種である第一金属層1と第一中間金属層5の間の固定方法は特に限定しないが、溶接3を用いても、ボルト、ビス、リベットなどを用いても構わない。
【0026】
図6は、本実施形態の固定器具を取り付けたトラックの荷台後方から見た図である。本実施形態の固定器具を荷台の側壁面や床面に固定することにより、任意の場所で、貨物や座席などを固定することができ、また、任意の高さ方向に棚などを設置することにより、荷台上方のデッドスペースを有効活用することが可能となる。尚、レール構造を有する第一金属層1は、長尺レール全面が第二金属層2や第二中間金属層5と接する必要はなく、部分的に接するように固定することもできる。また、レール構造を有する第一金属層1も連続している必要はなく、短尺材として間隔を空けて直線状に配置しても構わない。
【0027】
前記したように、前記第一金属層と第二金属層との間の接合面、前記第一中間金属層と前記第二金属層との間の接合面、前記第一中間金属層と前記第二中間金属層との間の接合面、並びに、前記前記第二中間金属層と前記第二金属層との間の接合面の内の少なくとも1の接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している。かかる「接合面の全面にわたって、冶金的に接合して一体構造を呈している」接合面を形成する方法は、特に限定しないが、拡散接合法や熱間等方圧加圧法(HIP)、電磁圧接法、爆発圧着法などが選ばれる。中でも、爆発圧着法は、爆薬の大きなエネルギーを利用した金属の接合法であり、特に互いに異種の金属同士を強固に接合できる手法である。また、爆発圧着法による接合界面には、特異な波形が観察されるため、当業者であれば、かかる波形の観察により、かかる全面にわたる冶金的な接合が爆発圧着によりなされたものであると判定することができる。爆発圧着は、貨物を載せる棚板や座席などの重量物の荷重がかかるため、特に強固な接合強度が要求される場合に、好ましい接合方法である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
〔実施例1〕
純アルミニウム(JIS A1050、板厚12mm)と一般構造用圧延鋼材(JIS SS400、板厚20mmの2層接合品を爆発圧着法により作製した。この接合品に対して、JIS G 0601に従った超音波探傷試験を行い、全面に渡って接合が確認された位置から、棒状の接合品を切り出し、
図5(A)に示すような短冊状の純アルミニウム内部に直線状の空洞と連結部材を挿入できる丸形の孔が一列に連続するレール構造に切削加工を行い、異材積層構造レール材を製作した。このレール材の鋼材側を鉄製のコンテナに溶接にて固定して、棚板を設置、貨物を積載したところ、異材積層構造レール材の外れや、接合面での剥離などは生じなかった。また、1年間の使用においても電食の発生は認められなかった。異材積層構造レール材と同一の2層接合品からJIS G 0601に従ったせん断試験片を作製し、せん断試験を行ったところ、85MPaのせん断強さを示した。
【0029】
〔実施例2〕
純アルミニウム(JIS A1070、板厚3mm)と一般構造用圧延鋼材(JIS SS400、板厚5mmの2層接合品を爆発圧着法により作製した。この接合品に対して、JIS G 0601に従った超音波探傷試験を行い、全面に渡って接合が確認された位置から、棒状の接合品を切り出した。他方、
図5(B)に示すような短冊状のアルミニウム合金(JIS A2017、ジュラルミン)の内部に直線状の空洞と連結部材を挿入できる丸形の孔が一列に連続するレール構造の部材を、前記のように切り出した接合品の板純アルミニウム側に溶接して一体化して異材積層構造レール材を製作した。この異材積層構造レール材の鋼材側を鉄製のコンテナに溶接にて固定して、棚板を設置、貨物を積載したところ、異材積層構造レール材の外れや、接合面での剥離などは生じなかった。また、1年間の使用においても電食の発生は認められなかった。異材積層構造レール材と同一の2層接合品からJIS G 0601に従ったせん断試験片を作製し、せん断試験を行ったところ、85MPaのせん断強さを示した。
【0030】
〔実施例3〕
アルミニウム合金(JIS A3003、板厚15mm)と純チタン(JIS TP270、板厚3mm)と溶接構造用圧延鋼材(JIS SM400B、板厚25mm)の3層接合品を爆発圧着法により作製した。この接合品に対して、JIS G 0601に従った超音波探傷試験を行い、全面に渡って接合が確認された位置から、棒状の接合品を切り出た。他方、
図5(C)に示すような短冊状のアルミニウム合金(JIS A6061)の内部に直線状の空洞と連結部材を挿入できる丸形の孔が一列に連続するレール構造の部材を、前記のように切り出した接合品アルミニウム合金側に溶接して一体化して異材積層構造レール材を製作した。この異材積層構造レール材の鋼材側を鉄製のコンテナに溶接にて固定して、棚板を設置、貨物を積載したところ、異材積層構造レール材の外れや、接合面での剥離などは生じなかった。また、1年間の使用においても電食の発生は認められなかった。異材積層構造レール材と同一の3層接合品からJIS G 0601に従ったせん断試験片を作製し、せん断試験を行ったところ、117MPaのせん断強さを示した。
【0031】
〔比較例1〕
鉄製コンテナの側壁面に締結用の孔を開け、短冊状のアルミニウム合金(JIS A2017、ジュラルミン)の内部に直線状の空洞と連結部材を挿入できる丸形の孔が一列に連続するレールを、ステンレス製のリベットを用いて、該鉄製コンテナの側壁に締結した。数か月の使用において、鉄製コンテナの孔を通じて雨水や砂塵等が侵入し、コンテナとレールが接する部分において、コンテナ側壁の鉄材に著しい腐食が発生し、レールのがたつき、外れが生じた。
【0032】
〔比較例2〕
鉄製コンテナの側壁面にステンレス製の凹型の部材を溶接し、部材の凹部中央にレール締結用の孔を開け、短冊状のアルミニウム合金(JIS A6061)の内部に直線状の空洞と連結部材を挿入できる丸形の孔が一列に連続するレールを、ステンレス製のリベットを用いて、該ステンレス製の凹型部材に締結した。1年間の使用において、ステンレス製の凹型部材とレールが接する箇所で、該ステンレス製凹型部材側に腐食が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る異材積層構造レール材は、輸送構体や荷台、コンテナなどの材質とレールが異種金属材料である場合の接触による電食を防ぐとともに、互いに異種の金属材料同士を強固に接合し、更にはレールの固定を容易にすることができるため、貨物を載せる棚板や座席などの重量物の荷重がかかるため、特に強固な接合強度が要求される場合に、好適に利用可能な異材積層構造レール材である。
【符号の説明】
【0034】
1 レール構造を有する第一金属層
2 第二金属層
3 溶接
4 荷台又はコンテナ部材
5 第一中間金属層
6 第二中間金属層
60 従来技術のエアラインレール(登録商標)
61 側壁側固定面(圧接面)
62 ボルト孔
62a 座ぐり部
13 溝
13a 内部空間
13b レールの底面
13c フランジ部
13d 内部空間側の面
16 開口部
16a 幅狭部
16b 幅広部
20 ラッシングベルト(固縛用長尺部材)
21 金具
30 被連結部材
31 係合部材
31a 大径部
32 被連結部
33 移動規制部材
33a 移動規制係合部
34 付勢部材