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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】食酢含有飲料、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/68 20060101AFI20250207BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20250207BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20250207BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
A23L2/00 D
A23L2/00 B
A23L2/02 C
A23L2/52
A23L2/68
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021057566
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154498
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】尾嶋 満里子
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108117967(CN,A)
【文献】特開2019-140948(JP,A)
【文献】米国特許第04701336(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105112277(CN,A)
【文献】特開2012-029626(JP,A)
【文献】特開2016-002008(JP,A)
【文献】「香りの分子(香り別)」,2013年,インターネット<URL:http://web.archive.org/web/20130708101147/http://www.ecosci.jp/i/kaori2a.html>,[オンライン]
【文献】「ふんわり香る薔薇の”飲むお酢”ローズメイ秋田バラ園からお届けします。」,[オンライン],2017年,インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170408181626/http://rosemay.jp/shopdetail/000000000232/002/002/X/page1/order/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A)、(B)及び(C)を含有する飲料。
(A)リンゴ果汁
(B)玄米黒酢
(C)フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテート
【請求項2】
成分(A)リンゴ果汁及び(B)玄米黒酢を含有する飲料に、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合することを特徴とする飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食酢含有飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料の果汁感付与に関しては、3-カレンオキシドを用いた方法(特許文献1)、ボルネオールとデカナールを併用する方法(特許文献2)、乳清ミネラルを用いる方法(特許文献3)、パルミトレイン酸を用いる方法(特許文献4)が報告されており、また食酢の果汁感増強に関しては、ブラウンシュガーを用いる方法(特許文献5)など報告されている。しかしながら食酢を含む飲料における果汁感増強においては知見が少なく、いずれも十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-149997号公報
【文献】特開2019-135990号公報
【文献】特開2018-068237号公報
【文献】特許6097036号公報
【文献】特開2019-140948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、リンゴ果汁及び食酢を含有する飲料において、果汁感を増強した食酢含有飲料、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
(1)
成分(A)、(B)及び(C)を含有する飲料。
(A)リンゴ果汁
(B)食酢
(C)フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテート
(2)
成分(A)及び(B)を含有する飲料に、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合することを特徴とする飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の飲料は、リンゴ果汁及び食酢を含有する飲料において、果汁感を増強する効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0008】
本発明に係る食酢含有飲料は、食酢を含有する飲料であり、そのまま若しくは希釈、溶解して摂取する飲料である。
【0009】
本発明に係る食酢含有飲料に含有される食酢としては、一般的に食酢として用いられているものを使用することができる。食酢としては醸造酢、米酢、米黒酢、玄米酢、もろみ酢、大麦黒酢、黒糖黒酢、その他の穀物酢、リンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢を用いることが出来る。発明に係る食酢含有飲料には、食酢のいずれか1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0010】
特に、米黒酢、大麦黒酢、黒糖黒酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、その他果実酢から選ばれる1種又は2種以上を用いた場合、特にリンゴ酢を用いた場合、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートによる果汁感を増強する効果が十分に発揮されるため好ましい。
【0011】
本発明に用いるリンゴ果汁は、絞ったリンゴ果汁をそのまま、また濃縮したものを用いる。
【0012】
本発明に用いるフェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートは、フレーバー成分であり、単品香料をそのまま用いてもよく、混合香料として用いてもよい。
【0013】
食酢、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートの配合比は、食酢:フェニルエチルアルコール:シトロネロール:ゲラニルアセテート=1:0.0000001~0.0001:0.00000001~0.000001:0.00000001~0.000001とすることが好ましい。食酢1質量部に対しフェニルエチルアルコールの配合量が0.0000001未満又はシトロネロール、又はゲラニルアセテートの配合量がそれぞれ0.00000001未満では、果汁感を増強効果が得られない場合がある。食酢1質量部に対しフェニルエチルアルコールの配合量が0.0001を超える場合又はシトロネロール、又はゲラニルアセテートの配合量がそれぞれ0.000001を超える場合、嗜好性が低減し好ましくない場合がある。
【0014】
また、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートの配合は3成分の合計で、食酢1質量部に対し0.00000001~0.0022質量部が好ましい。0.00000001質量部未満では果汁感を増強効果が得られない場合がある。0.0022質量部を超えると嗜好性が低減し好ましくない場合がある。
【0015】
本発明の食酢含有飲料は、リンゴ果汁以外の果汁又はその濃縮物を添加することができる。リンゴ果汁以外の果汁又はその濃縮物としては、特に限定されないが、かんきつ系果汁、ブドウ系果汁、梅果汁、プルーン果汁、ベリー系果汁等が例示される。
【0016】
本発明の食酢含有飲料には、ビタミン類を配合することができる。かかるビタミン類としては、飲料に配合し得るビタミンであれば特に限定されない。例えばアスコルビン酸若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンC類、チアミン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB類、リボフラビン若しくはその誘導体並びにそれらの塩類から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB類、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種または2種以上のビタミンB類などが例示される。
【0017】
本発明の食酢含有飲料には、アミノ酸、ペプチド、タンパク質を配合することができる。かかるアミノ酸、ペプチド、タンパク質としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得るものであれば特に限定されない。例えばアミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、テアニンなどが例示される。ペプチド、タンパク質としては、例えばコラーゲン及びその加水分解物、エラスチン及びその加水分解物などが例示される。
【0018】
本発明の食酢含有飲料には、甘味料を配合することができる。かかる甘味料としては飲料の分野に利用し得る甘味料であれば特に限定されず、白砂糖、グラニュー糖、和三盆、黒糖、三温糖などの砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、水飴、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ブドウ糖果糖液糖、還元麦芽糖水飴、粉飴、還元澱粉糖化物、エリスリトール、マルトース、トレハロース、マルチトール、パラチノース、キシリトール、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア抽出物及び/又はその精製物、羅漢果抽出物、ソーマチン、モネリン、ミラクリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン及び/又はその塩、ズルチン、ネオテームなどが挙げられる。これらの甘味料は、1種を単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
本発明においては、蜂蜜、黒糖から選択される1種又は2種を添加することが好ましい。蜂蜜、黒糖を添加することにより食酢含有飲料の味にコクを加えることが可能である。
【0020】
本発明の食酢含有飲料は、増粘剤を配合して、ゼリー状飲料として用いることもできる。かかる増粘剤としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得る増粘剤であれば特に限定されない。例えば寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナン、キサンタンガム、タマリンド種子多糖類、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、未加工でんぷん、加工でんぷん、ペクチン、タラガム等が挙げられる。
【0021】
本発明の食酢含有飲料は、賦形剤を添加し乾燥させることにより、粉末化したものを摂取時溶解して用いることもできる。また、飲料は炭酸タイプであってもよい。
【0022】
本発明の食酢含有飲料には、通常飲料に用いることが可能な成分、例えば、上記以外のビタミン類、有機酸類、無機酸類、生薬、着色料、香料、保存剤、増粘剤、オリゴ糖類、多糖類、などの他、キトサン化合物、栄養強化成分、滋養強壮成分などを適時選択して配合することができ、飲料製造の常法により製造することができる。
【0023】
本発明の製造方法は、成分(A)及び(B)を含有する飲料に、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合することを特徴とする飲料の製造方法である。
【実施例
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0025】
香料成分と果汁の併用による果汁感増強効果を検討した。表1に示した食酢含有飲料を調製し、果汁感スコアを算定した。
官能評価専門員3名による、官能評価の結果「果汁感増強効果が非常に高い」を10、「果汁感増強効果が全く得られない」を1として、絶対評価を行いスコア化した。
【0026】
【表1】
【0027】
表1に示した通り、フェニルエチルアルコール、シトロネロール及びゲラニルアセテートを配合した本発明のリンゴ果汁含有食酢飲料は、いずれの果汁濃度であっても果汁感に優れたものであった。