7630337 鉄筋受け付きスペーサ、スペーサ付きデッキプレートおよび合成スラブ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2025-02-06

(45)【発行日】2025-02-17

(54)【発明の名称】鉄筋受け付きスペーサ、スペーサ付きデッキプレートおよび合成スラブ

(51)【国際特許分類】

   E04B 5/40 20060101AFI20250207BHJP

【ＦＩ】

E04B5/40 C

【請求項の数】 10

(21)【出願番号】P 2021062135

(22)【出願日】2021-03-31

(65)【公開番号】P2022157735

(43)【公開日】2022-10-14

【審査請求日】2023-12-01

(73)【特許権者】

【識別番号】000231110

【氏名又は名称】ＪＦＥ建材株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100114890

【弁理士】

【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス＝ラインハルト

(74)【代理人】

【識別番号】100116403

【弁理士】

【氏名又は名称】前川 純一

(74)【代理人】

【識別番号】100162880

【弁理士】

【氏名又は名称】上島 類

(72)【発明者】

【氏名】加藤 鐘悟

(72)【発明者】

【氏名】神谷 洋介

【審査官】須永 聡

(56)【参考文献】

【文献】特開２００７－１６２４３３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１０－１２１２７１（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開平０６－０４９６２１（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０４Ｂ ５／４０

Ｅ０４Ｃ ５／００－５／２０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

山頂部と谷底部とが傾斜部を介して交互に連なった断面波型形状の波型部を有する波型鋼板からなるデッキプレートの前記傾斜部に係合することにより組み付けられ、前記山頂部と対向して前記山頂部から上方に離間して設けられる橋部と、前記橋部と繋がり前記傾斜部と係合可能に設けられる脚部と、を有するスペーサと、
前記橋部に対して鉄筋を載置するために当該橋部と一体に固定されて前記鉄筋を保持する鉄筋受けと、
前記橋部において、前記脚部と接続されていない側に設けられた鉄筋保持部と、を備え、
前記鉄筋保持部は、上底部分と、下底部分と、前記上底部分と前記下底部分とを連結する斜辺部分とを有し、
前記下底部分は、前記橋部の長手方向に対して直交し、前記山頂部と平行かつ前記山頂部の長手方向に沿った方向に突出し、前記山頂部に載置される足部を備える、鉄筋受け付きスペーサ。

【請求項2】

前記下底部分は、２つの前記足部を有しており、
前記足部は、互いに反対の方向に突出している、
請求項１に記載の鉄筋受け付きスペーサ。

【請求項3】

前記鉄筋受けは、前記デッキプレートの前記山頂部に設けられた溝部からずれた前記橋部の位置に設けられている、
請求項１または２に記載の鉄筋受け付きスペーサ。

【請求項4】

前記鉄筋受けは、前記橋部の金属線材を屈曲することにより形成されている、
請求項１から３までのいずれか一項に記載の鉄筋受け付きスペーサ。

【請求項5】

前記鉄筋受けは、前記金属線材の弾性変形により前記鉄筋を挟み付けた状態で保持する腕部を有する、
請求項４に記載の鉄筋受け付きスペーサ。

【請求項6】

前記鉄筋保持部は、前記橋部の金属線材を屈曲することにより形成されている、
請求項１から５までのいずれか一項に記載の鉄筋受け付きスペーサ。

【請求項7】

山頂部と谷底部とが傾斜部を介して交互に連なった断面波型形状の波型部を有する波型鋼板からなるデッキプレートと、
前記デッキプレートの前記傾斜部に係合することにより組み付けられ、前記山頂部と対向して前記山頂部から上方に離間して設けられる橋部と、前記橋部と繋がり前記傾斜部と係合可能に設けられる脚部と、を有するスペーサと、
前記橋部に対して鉄筋を載置するために当該橋部と一体に固定されて前記鉄筋を保持する鉄筋受けと、
前記橋部において、前記脚部と接続されていない側に設けられた鉄筋保持部と、を備え、
前記鉄筋保持部は、上底部分と、下底部分と、前記上底部分と前記下底部分とを連結する斜辺部分とを有し、
前記下底部分は、前記橋部の長手方向に対して直交し、前記山頂部と平行かつ前記山頂部の長手方向に沿った方向に突出し、前記山頂部に載置される足部を備える、スペーサ付きデッキプレート。

【請求項8】

前記下底部分は、２つの前記足部を有しており、
前記足部は、互いに反対方向を向くように設けられている、
請求項７に記載のスペーサ付きデッキプレート。

【請求項9】

前記鉄筋受けには、前記鉄筋が保持されている、
請求項７または８に記載のスペーサ付きデッキプレート。

【請求項10】

山頂部と谷底部とが傾斜部を介して交互に連なった断面波型形状の波型部を有する波型鋼板からなるデッキプレートと、
前記デッキプレートの前記傾斜部に係合することにより組み付けられ、前記山頂部と対向して前記山頂部から上方に離間して設けられる橋部と、前記橋部と繋がり前記傾斜部と係合可能に設けられる脚部と、を有するスペーサと、
前記橋部に対して鉄筋を載置するために当該橋部と一体に固定されて前記鉄筋を保持する鉄筋受けと、
前記橋部において、前記脚部と接続されていない側に設けられた鉄筋保持部と、
前記鉄筋受けに保持された鉄筋と、
前記デッキプレートの上面に打設されて固化されたコンクリートと、を備え、
前記鉄筋保持部は、上底部分と、下底部分と、前記上底部分と前記下底部分とを連結する斜辺部分とを有し、
前記下底部分は、前記橋部の長手方向に対して直交し、前記山頂部と平行かつ前記山頂部の長手方向に沿った方向に突出し、前記山頂部に載置される足部を備える、合成スラブ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、鉄筋受け付きスペーサ、スペーサ付きデッキプレートおよび合成スラブに関する。

【背景技術】

【0002】

従来、鉄骨造建築物の床構法の過半数を占める標準的工法により形成される合成スラブとして、デッキプレートとコンクリートとの合成構造であり、簡易な構成、施工により実現することが可能な強度と靭性に優れたデッキ合成スラブがある。

【0003】

このようなデッキ合成スラブは、従来の鉄筋コンクリートスラブに比べて鉄筋の量を削減することができる等のメリットが存在するが、そのためにコンクリートがひび割れし易いというデメリットも存在している。

【0004】

そのような点から、デッキプレートの上に、コンクリートのひび割れ防止を目的とする溶接金網を配置した状態でコンクリートを打設することにより合成スラブを構築することが一般的に行われている。

【0005】

このような合成スラブにおいては、デッキプレート上面から溶接金網までの高さを確保するため、デッキプレート上にスペーサを配置し、このスペーサ上に溶接金網を配置している。

【0006】

近年、デッキプレート上に溶接金網を載置した状態で安定的に自立するとともに、デッキプレート上面からの高さ位置を安定的に確保することが可能な構造の配筋用スペーサについても提案されている（例えば、特許文献１参照。）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【文献】特許第６１５９８４２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

特許文献１に記載の配筋用スペーサにおいては、作業者が施工現場においてデッキプレートの上に複数の配筋用スペーサを配置するとともに当該複数の配筋用スペーサを起立させる作業が行われている。しかしながら、デッキプレートの上に配筋用スペーサを単に置くだけなので、施工作業中に配筋用スペーサの間隔がずれてしまう。そのため、作業者にとって面倒で煩雑な作業が強いられており、さらなる施工性の向上が求められていた。

【0009】

本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら施工性に優れた鉄筋受け付きスペーサ、スペーサ付きデッキプレートおよび合成スラブを提供することを目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0010】

かかる課題を解決するため本発明の鉄筋受け付きスペーサにおいては、山頂部と谷底部とが傾斜部を介して交互に連なった断面波型形状の波型部を有する波型鋼板からなるデッキプレートの前記傾斜部に係合することにより組み付けられ、前記山頂部と対向して設けられる橋部と、前記橋部と繋がり前記傾斜部と係合可能に設けられる脚部とを有するスペーサと、前記橋部に対して鉄筋を載置するために当該橋部と一体に固定されて前記鉄筋を保持する鉄筋受けとを備える。

【0011】

本発明において、前記鉄筋受けは、前記デッキプレートの前記山頂部に設けられた溝部からずれた前記橋部の位置に設けられていることが好ましい。

【0012】

本発明において、前記鉄筋受けは、前記橋部の金属線材を屈曲することにより形成されていることが好ましい。

【0013】

本発明において、前記鉄筋受けは、前記金属線材の弾性変形により前記鉄筋を挟み付けた状態で保持する腕部を有することが好ましい。

【0014】

本発明の鉄筋受け付きスペーサにおいては、デッキプレートに取り付けられ又は載置され、平坦な橋部と、前記橋部と繋がって起立する脚部とを有するスペーサと、前記橋部に対して鉄筋を載置するために当該橋部と一体に固定されて前記鉄筋を保持する鉄筋受けとを備える。

【0015】

本発明のスペーサ付きデッキプレートにおいては、山頂部と谷底部とが傾斜部を介して交互に連なった断面波型形状の波型部を有する波型鋼板からなるデッキプレートと、前記デッキプレートの前記傾斜部に係合することにより組み付けられ、前記山頂部と対向して設けられる橋部と、前記橋部と繋がり前記傾斜部と係合可能に設けられる脚部とを有するスペーサと、前記橋部に対して鉄筋を載置するために当該橋部と一体に固定されて前記鉄筋を保持する鉄筋受けとを備える。

【0016】

本発明のスペーサ付きデッキプレートにおいて、前記鉄筋受けには、前記鉄筋が保持されていることが好ましい。

【0017】

本発明の合成スラブにおいては、山頂部と谷底部とが傾斜部を介して交互に連なった断面波型形状の波型部を有する波型鋼板からなるデッキプレートと、前記デッキプレートの前記傾斜部に係合することにより組み付けられ、前記山頂部と対向して設けられる橋部と、前記橋部と繋がり前記傾斜部と係合可能に設けられる脚部とを有するスペーサと、前記橋部に対して鉄筋を載置するために当該橋部と一体に固定されて前記鉄筋を保持する鉄筋受けと、前記鉄筋受けに保持された鉄筋と、前記デッキプレートの上面に打設されて固化されたコンクリートと、を備える。

【発明の効果】

【0018】

本発明によれば、簡易な構成でありながら施工性に優れた鉄筋受け付きスペーサ、スペーサ付きデッキプレートおよび合成スラブを実現することができる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】本発明の第１の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの外観構成を示す略線的斜視図である。

【図2】本発明の第１の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの構成を示す正面図である。

【図3】本発明の第１の実施の形態におけるデッキプレートの構成を示す断面図である。

【図4】本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサの外観構成を示す斜視図である。

【図5】本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサの正面図および側面図である。

【図6】本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサを形成する第１支持脚および第２支持脚の構成を示す正面図および上面図である。

【図7】本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサを形成する第１支持脚および第２支持脚を溶接する前の状態を示す正面図および上面図である。

【図8】本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサを形成する第１支持脚および第２支持脚を溶接した後の状態を示す正面図および上面図である。

【図9】本発明の第１の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートが積み重ねられた状態を示す正面図である。

【図10A】本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサに対する変形例の構成を示す正面図である。

【図10B】本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサに対する変形例の構成が積み重ねられた状態を示す正面図である。

【図11】本発明の第２の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの外観構成を示す斜視図である。

【図12】本発明の第２の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの構成を示す正面図である。

【図13】本発明の第２の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサの正面図である。

【図14】本発明の第３の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの外観構成を示す斜視図である。

【図15】本発明の第３の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの構成を示す正面図である。

【図16】本発明の第３の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサの正面図である。

【発明を実施するための形態】

【0020】

（１）第１の実施の形態
以下、本発明の第１の実施の形態にかかるスペーサ付きデッキプレートの構成について図１乃至図１０Ｂを参照しながら詳細に説明する。ここで、図１は、本発明の第１の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの外観構成を示す略線的斜視図である。図２は、本発明の第１の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの構成を示す正面図である。図３は、本発明の第１の実施の形態におけるデッキプレートの構成を示す断面図である。図４は、本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサの外観構成を示す斜視図である。図５は、本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサの正面図および側面図である。図６は、本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサを形成する第１支持脚および第２支持脚の構成を示す正面図および上面図である。図７は、本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサを形成する第１支持脚および第２支持脚を溶接する前の状態を示す正面図および上面図である。図８は、本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサを形成する第１支持脚および第２支持脚を溶接した後の状態を示す正面図および上面図である。図９は、本発明の第１の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートが積み重ねられた状態を示す正面図である。図１０Ａは、本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサに対する変形例の構成を示す正面図である。図１０Ｂは、本発明の第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサに対する変形例の構成が積み重ねられた状態を示す正面図である。

【0021】

図１および図２に示すように、スペーサ付きデッキプレート１００は、デッキプレート２０および鉄筋受け付きスペーサ３０からなり、互いに対向配置された例えばＨ型鋼からなる梁（図示せず）と梁との間にデッキプレート２０が架け渡されている。

【0022】

図３に示すように、デッキプレート２０は、亜鉛メッキ等の表面処理が施された薄板状の鋼板をロールフォーミング等することによって形成されており、山頂部分に位置する平坦な面を有する山頂部２１と、当該山頂部２１と平行又は略平行であり谷底部分に位置する平坦な面を有する１対の谷底部２２と、山頂部２１と谷底部２２とを連結し所定角度に傾斜した面を有する１対の傾斜部２３とを有している。

【0023】

この場合、デッキプレート２０は、１つの山頂部２１、１対の谷底部２２、および、１対の傾斜部２３からなるプレート単体の端部同志を長手方向に加えて短手方向においても複数連結されて用いられる。

【0024】

デッキプレート２０のプレート単体では、１つの山頂部２１、１対の谷底部２２、１対の傾斜部２３からなる断面波型形状の波型部２４を有している。ただし、これに限るものではなく、デッキプレート２０のプレート単体としては、２対の谷底部２２と、２つの山頂部２１と２対の傾斜部２３からなる２つの波型部２４が連続した断面波型形状を有していてもよい。さらに、デッキプレート２０としては、長手方向の両端部に対して、いわゆるエンドクローズ加工が施されていてもよい。

【0025】

デッキプレート２０の山頂部２１には、当該山頂部２１の強度を向上させるべく、そのほぼ中央に長手方向に沿って僅かに下方に凹んだ凹状の１つの溝部２１ｍが形成されている。なお、溝部２１ｍは、山頂部２１に１つ形成されている場合に限らず、その他の数だけ形成されていてもよい。

【0026】

因みに、デッキプレート２０の山頂部２１において溝部２１ｍが形成されている必要は必ずしもない。溝部２１ｍは、山頂部２１の上側から見た場合に溝であるが、山頂部２１の下側から見た場合には下方に突出した凸部でもある。したがって、溝部２１ｍは場合によって凸部２１ｍともいう。

【0027】

デッキプレート２０の１対の傾斜部２３における下方端部には、当該傾斜部２３と谷底部２２とが連結される部分の近傍において、波型部２４（１つの山頂部２１、一対の谷底部２２および１対の傾斜部２３）の外側すなわち波型部２４が形成する内側空間とは反対の外側へ向かって断面Ｖ字形状に僅かに突出した突部２３ｃが形成されている。

【0028】

この傾斜部２３の突部２３ｃは、後述する鉄筋受け付きスペーサ３０をデッキプレート２０に対して一体に取り付ける際に用いられる係合部分であり、その形状は断面Ｖ字形状に限らず、係合可能な形状であれば任意の形状であってよい。

【0029】

また、突部２３ｃは、傾斜部２３と谷底部２２とが連結される部分の近傍に形成されているが、これに限るものではなく、傾斜部２３と山頂部２１とが連結される部分の近傍や、傾斜部２３の中腹近傍に形成されていてもよい。

【0030】

図１および図２に示したように、デッキプレート２０には、鉄筋受け付きスペーサ３０が一体に取り付けられている。例えば、この場合、鉄筋受け付きスペーサ３０が一定の間隔でデッキプレート２０に取り付けられている。

【0031】

図４乃至図８に示すように、鉄筋受け付きスペーサ３０は、一方の脚部を形成する第１支持脚３１と、他方の脚部を形成する第２支持脚３６とを有し、第１支持脚３１と第２支持脚３６とが溶接により一体化された構成を有している。鉄筋受け付きスペーサ３０は、第１支持脚３１および第２支持脚３６が一体化されると初めてスペーサとしての機能を発揮するようになる。

【0032】

図５および図６に示すように、第１支持脚３１は、デッキプレート２０の山頂部２１および傾斜部２３に沿った全体的に略く字状に形成された棒状部材であり、棒型鋼（鉄筋）を屈曲加工することにより形成されている。

【0033】

第１支持脚３１は、デッキプレート２０の傾斜部２３と係合可能に設けられた棒状の脚部３２と、当該脚部３２と繋がりデッキプレート２０の山頂部２１と対向して設けられた直線状の橋部３３とを有している。

【0034】

第１支持脚３１の脚部３２は、デッキプレート２０の傾斜部２３と平行となるような角度に傾斜され、当該傾斜部２３よりも長く形成されている。脚部３２は、その棒状部材の先端部分が所定の角度に折り曲げられた屈曲部３２ｃを有しおり、デッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合可能である。

【0035】

第１支持脚３１の橋部３３は、デッキプレート２０の山頂部２１と平行かつ当該山頂部２１よりも短く形成された棒状部材である。橋部３３において脚部３２と接続されていない側には、棒状部材が略台形状に屈強形成された鉄筋保持部３４が設けられている。

【0036】

鉄筋保持部３４は、台形の上底に相当する上底部分３４ａ、下底に相当する下底部分３４ｂ、斜辺に相当する斜辺部分３４ｃ、３４ｄによって形成されており、斜辺部分３４ｄの先端側が、上底部分３４ａよりも上方に飛び出している。ここで、斜辺部分３４ｄの飛び出している先端の長さは、鉄筋５０を挟持して保持するに必要な高さであり、少なくとも鉄筋５０の直径と同じ、もしくは大きい。

【0037】

鉄筋保持部３４は、当該鉄筋保持部３４の下底部分３４ｂの一部として平面視略三角形状に折り曲げられた足部３４ｔを有している。足部３４ｔは、橋部３３の長手方向とは直交し、デッキプレート２０の山頂部２１と平行かつ山頂部２１の長手方向に沿った方向に突出した部分である。すなわち、足部３４ｔは、鉄筋受け付きスペーサ３０がデッキプレート２０に組み付けられた際に山頂部２１の平坦面に載置される部分である。

【0038】

また、鉄筋保持部３４は、当該鉄筋保持部３４を形成している斜辺部分３４ｄの先端側が橋部３３の長手方向とは直交する方向へ向かって約９０度前後に折り曲げられた先端部３４ｓを有している。鉄筋保持部３４の先端部３４ｓは、補強用の鉄筋５０を挟み付けて保持する腕部として用いられる。なお、鉄筋５０は、例えば鋼を圧延して表面にリブや節と呼ばれる凹凸の突起を設けた異形鉄筋である。ただし、これに限らず、補強用の鉄筋５０としては、例えば丸鋼や角鋼等のその他種々の形状および種類の鉄筋を用いるようにしてもよい。

【0039】

第２支持脚３６は、第１支持脚３１と同様に、デッキプレート２０の山頂部２１および傾斜部２３に沿った全体的に略く字状に形成された棒状部材であり、棒型鋼（鉄筋）を屈曲加工することにより形成されている。

【0040】

第２支持脚３６は、デッキプレート２０の傾斜部２３と係合可能に設けられた棒状の脚部３７と、当該脚部３７と繋がりデッキプレート２０の山頂部２１と対向して設けられた直線状の橋部３８とを有している。

【0041】

第２支持脚３６の脚部３７は、デッキプレート２０の傾斜部２３と平行となるような角度に傾斜され、当該傾斜部２３よりも長く形成されている。脚部３７は、その棒状部材の先端部分が所定の角度に折り曲げられた屈曲部３７ｃを有しおり、デッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合可能である。

【0042】

このように第２支持脚３６の脚部３７は、第１支持脚３１の脚部３２と基本的に同一構造であるため、鉄筋受け付きスペーサ３０において脚部３２および脚部３７が互いに対向し、正面視において略ハ字状となる。

【0043】

第２支持脚３６の橋部３８は、デッキプレート２０の山頂部２１と平行かつ当該山頂部２１よりも短く形成された棒状部材である。橋部３８において脚部３７と接続されていない側には、棒状部材が略台形状に屈強形成された鉄筋保持部３９が設けられている。

【0044】

鉄筋保持部３９は、台形の上底に相当する上底部分３９ａ、下底に相当する下底部分３９ｂ、斜辺に相当する斜辺部分３９ｃ、３９ｄによって形成されており、斜辺部分３９ｄの先端側が上底部分３９ａよりも上方に飛び出している。この場合も、斜辺部分３９ｄの飛び出している長さは、鉄筋５０を挟持して保持するに必要な高さであり、少なくとも鉄筋５０の直径と同じ、もしくは大きい。

【0045】

ここで、第２支持脚３６の鉄筋保持部３９は、第１支持脚３１の鉄筋保持部３４よりも大きな台形形状を有し、具体的には上底部分３９ａおよび下底部分３９ｂが鉄筋保持部３４の上底部分３４ａおよび下底部分３４ｂよりも長くなっている。ただし、斜辺部分３９ｃ、３９ｄの傾斜角度および上底部分３９ａよりも上方に飛び出している長さは第１支持脚３１と同じである。

【0046】

鉄筋保持部３９は、当該鉄筋保持部３９の一部として平面視略三角形状に折り曲げられた足部３９ｔを有している。足部３９ｔは、橋部３８の長手方向とは直交し、デッキプレート２０の山頂部２１と平行かつ山頂部２１の長手方向に沿った方向に突出した部分である。すなわち、足部３９ｔは、鉄筋受け付きスペーサ３０がデッキプレート２０に組み付けられた際に山頂部２１の平坦面に載置される部分である。

【0047】

鉄筋保持部３９における足部３９ｔは、第１支持脚３１の鉄筋保持部３４における足部３４ｔとは反対方向を向くように設けられている。これにより、鉄筋受け付きスペーサ３０がデッキプレート２０に組み付けられた場合、第１支持脚３１の鉄筋保持部３４における足部３４ｔ、および、第２支持脚３６の鉄筋保持部３９における足部３９ｔによって倒れることなく安定した状態が維持される。

【0048】

また、鉄筋保持部３９は、当該鉄筋保持部３９を形成している斜辺部分３９ｄの先端側が橋部３８の長手方向とは直交する方向へ向かって約９０度前後に折り曲げられた先端部３９ｓを有している。鉄筋保持部３９の先端部３９ｓは、鉄筋保持部３４の先端部３４ｓと同様に、補強用の鉄筋５０を挟み付けて保持する腕部として用いられる。

【0049】

この場合、鉄筋保持部３９の先端部３９ｓおよび鉄筋保持部３４の先端部３４ｓは、互いに反対向きに折り曲げられており、デッキプレート２０の山頂部２１の長手方向に沿って先端部３４ｓと先端部３９ｓとの合計の長さが鉄筋５０を挟持して保持する範囲の距離となる。因みに先端部３４ｓおよび先端部３９ｓは、両者が互いに近づくように９０度以下に折り曲げられていてもよい。

【0050】

このような構成の第１支持脚３１および第２支持脚３６は、図７に示すように、鉄筋保持部３４の先端部３４ｓおよび鉄筋保持部３９の先端部３９ｓによって鉄筋５０を強固に挟持して保持可能な間隔にまで近づけ、第１支持脚３１の橋部３３と第２支持脚３６の橋部３８とを重ね合わせた状態で互いに対向配置する。

【0051】

ここで、図８に示すように、鉄筋保持部３４の先端部３４ｓおよび鉄筋保持部３９の先端部３９ｓによって鉄筋５０を強固に挟持して保持可能な間隔とは、先端部３４ｓと先端部３９ｓとの間の距離Ｌ１が鉄筋５０の直径と同じかそれより僅かに小さい間隔である。

【0052】

そして、鉄筋５０を強固に挟持して保持可能な間隔になるように第１支持脚３１の橋部３３と第２支持脚３６の橋部３８とを互いに対向配置した後、第１支持脚３１の橋部３３と第２支持脚３６の橋部３８とが接触した箇所Ｐ１で溶接される。同時に、第１支持脚３１および第２支持脚３６は、第１支持脚３１の鉄筋保持部３４の下底部分３４ｂと、第２支持脚３６の鉄筋保持部３９の下底部分３９ｂとが接触した箇所Ｐ２で溶接される。これにより、第１支持脚３１と第２支持脚３６とは一体化されて鉄筋受け付きスペーサ３０が形成されることになる。

【0053】

かくして、鉄筋受け付きスペーサ３０は、第１支持脚３１の鉄筋保持部３４の先端部３４ｓと第２支持脚３６の鉄筋保持部３９の先端部３９ｓとにより、鉄筋５０を挟持して保持することが可能な鉄筋受け４０を形成することができる。

【0054】

この場合、鉄筋受け付きスペーサ３０の鉄筋受け４０は、デッキプレート２０における山頂部２１の中央に設けられた溝部２１ｍとは対向することがないように、当該溝部２１ｍから所定の距離だけシフトされた位置に形成されている。

【0055】

これにより、図９に示すように、スペーサ付きデッキプレート１００が上下方向に複数積み重ねられた場合であっても、デッキプレート２０の山頂部２１に形成された凸部２１ｍと、鉄筋受け付きスぺ―サ３０の鉄筋受け４０とが空間的に対向配置されることがない。かくして、スペーサ付きデッキプレート１００を複数積み重ねたときの高さを極力低くすることができるので、効率的に搬送することができる。

【0056】

以上の構成において、スペーサ付きデッキプレート１００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ３０が一体に取り付けられている。デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ３０を取り付けるには、第１支持脚３１の脚部３２における屈曲部３２ｃをデッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合させるとともに、第２支持脚３６の脚部３７における屈曲部３７ｃをデッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合させるだけでよい。

【0057】

このとき鉄筋受け付きスペーサ３０は、デッキプレート２０に対して容易に取り付けられると共に、鉄筋保持部３４の足部３４ｔおよび鉄筋保持部３９の足部３９ｔがデッキプレート２０の山頂部２１の平坦面に載置されるので、倒れることなく安定した状態が維持される。

【0058】

鉄筋受け付きスペーサ３０は、鉄筋保持部３４の上底部分３４ａおよび鉄筋保持部３９の上底部分３９ａよりも上方に位置する鉄筋受け４０（先端部３４ｓおよび先端部３９ｓ）に鉄筋５０を保持することができるので、デッキプレート２０の山頂部２１よりも上方に所定の距離だけ離間した位置において鉄筋５０を保持することができる。

【0059】

鉄筋受け付きスペーサ３０は、鉄筋保持部３４の先端部３４ｓおよび鉄筋保持部３９の先端部３９ｓによって形成された鉄筋受け４０に補強用の鉄筋５０が押し込められると、先端部３４ｓおよび先端部３９ｓの弾性変形により鉄筋５０を強固に挟み付けて脱落することのない状態で保持することができる。

【0060】

このようにスペーサ付きデッキプレート１００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ３０の鉄筋受け４０を介して補強用の鉄筋５０を予め装着しておくことができる。

【0061】

以上の構成によれば、スペーサ付きデッキプレート１００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ３０を取り付けて一体化することができるので、鉄筋受け付きスペーサ一３０の鉄筋受け４０に対して鉄筋５０を予め保持した状態を形成することができる。

【0062】

これによりスペーサ付きデッキプレート１００は、作業者が施工現場においてデッキプレート２０に対してスペーサおよび補強用の鉄筋５０を取り付ける手間および時間を削減し、施工性を大幅に向上させることができる。

【0063】

なお、図１０Ａに示すように、第１の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサ３０に代えて鉄筋受け付きスペーサ３０Ｓを形成するようにしてもよい。例えば、デッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃが当該傾斜部２３の中腹近傍に形成されていた場合、第１支持脚３１の脚部３２および第２支持脚３６の脚部３７の中央寄りの位置に屈曲部３２ｚ、３７ｚを形成すればよい。これにより、図１０Ｂに示すように、スペーサ付きデッキプレート１００を複数積み重ねたときに一段と安定させた状態で搬送することができる。

【0064】

（２）第２の実施の形態
以下、本発明の第２の実施の形態にかかるスペーサ付きデッキプレートの構成について図１１乃至図１３を参照しながら詳細に説明する。ここで、図１１は、本発明の第２の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの外観構成を示す斜視図である。図１２は、本発明の第２の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの構成を示す正面図である。図１３は、本発明の第２の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサの正面図である。

【0065】

図１との対応部分に同一符号を付した図１１に示すように、第２の実施の形態にかかるスペーサ付きデッキプレート２００は、デッキプレート２０および鉄筋受け付きスペーサ６０からなり、互いに対向配置された例えばＨ型鋼からなる梁（図示せず）と梁との間にデッキプレート２０が架け渡されている。ここで、デッキプレート２０の構成については第１の実施の形態において説明した通りであるため、その説明を省略する。

【0066】

鉄筋受け付きスペーサ６０は、スペーサ７０および鉄筋受け７５を有しており、スペーサ７０に対して鉄筋受け７５が一体に固定されている。スペーサ７０は、棒型鋼（鉄筋）を屈曲加工することにより形成されており、デッキプレート２０の形状に合わせた下底部分の存在しない台形状である。スペーサ７０は、デッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合することにより一体に組み付けられることになる。

【0067】

図１２および図１３に示すように、スペーサ７０は、デッキプレート２０の山頂部２１と対向して平行に設けられた棒状かつ直線状の橋部７１と、当該橋部７１と繋がりデッキプレート２０の傾斜部２３と平行な棒状の脚部７２とを有している。

【0068】

スペーサ７０の橋部７１は、デッキプレート２０の山頂部２１と平行かつ当該山頂部２１よりも短く形成された棒状部分である。スペーサ７０の橋部７１は、鉄筋受け付きスペーサ６０がデッキプレート２０に取り付けられた際、デッキプレート２０の山頂部２１と対向するように配置される。

【0069】

スペーサ７０における１対の脚部７２は、デッキプレート２０の傾斜部２３とほぼ平行になるように、橋部７１の両側端部から外側かつ下方へ向かって延びた棒状部分である。脚部７２は、デッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合可能にその先端部分が所定の角度に折り曲げられた屈曲部７２ｃを有している。

【0070】

また、脚部７２は、その長さがデッキプレート２０の傾斜部２３よりも長く形成されている。したがって、脚部７２の屈曲部７２ｃがデッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合して係止された場合、橋部７１がデッキプレート２０の山頂部２１から所定の距離だけ上方へ離間した位置に配置される。

【0071】

したがって、スペーサ７０の橋部７１とデッキプレート２０の山頂部２１の溝部２１ｍとの間には空間が形成されるため、施工時には作業者がその空間に指を差し込むことができる。これにより作業者は、スペーサ付きデッキプレート２００を持ち運ぶ際にスペーサ７０の橋部７１を持ち手とすることができる。

【0072】

また、スペーサ７０の脚部７２はデッキプレート２０の傾斜部２３の上方端部と部分的に当接されるため、鉄筋受け付きスペーサ３０がデッキプレート２０に一体に取り付けられた場合に倒れることなく維持される。仮に、鉄筋受け付きスペーサ３０が僅かに傾いた場合であっても、スペーサ７０の橋部７１がデッキプレート２０の山頂部２１に接触することになり、倒れが防止される。

【0073】

さらに、スペーサ７０の橋部７１には、当該橋部７１の中央すなわち溝部２１ｍからずれた位置に対して鉄筋受け７５が溶接等によって固定されている。鉄筋受け７５は、底部がデッキプレート２０の山頂部２１と接触した状態でスペーサ７０と溶接されている。ただし、これに限らず、鉄筋受け７５の底部がデッキプレート２０の山頂部２１と非接触状態でスペーサ７０と溶接されていてもよい。

【0074】

鉄筋受け７５は、スペーサ７０とほぼ同じ太さまたは僅かに細い棒型鋼（鉄筋）を屈曲加工することにより断面略Ｕ字状に形成されている。鉄筋受け７５は、鉄筋５０の直径と同一または僅かに小さな鉄筋保持幅を有しているため、補強用の鉄筋５０を嵌合によって強固に保持することが可能である。

【0075】

以上の構成において、スペーサ付きデッキプレート２００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ６０を一体に取り付ける際、スペーサ７０における脚部７２の屈曲部７２ｃをデッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃに係合するだけで、安定した状態で倒れることなくデッキプレート２０と一体化することができる。

【0076】

鉄筋受け付きスペーサ６０がデッキプレート２０に取り付けられた状態において、当該鉄筋受け付きスペーサ６０の鉄筋受け７５に補強用の鉄筋５０が押し込められると、スペーサ付きデッキプレート２００は、鉄筋５０を強固に保持することができる。

【0077】

このようにスペーサ付きデッキプレート２００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ６０の鉄筋受け７５を介して補強用の鉄筋５０を予め装着しておくことができる。

【0078】

以上の構成によれば、スペーサ付きデッキプレート２００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ６０を取り付けて一体化することができるので、鉄筋受け付きスペーサ６０の鉄筋受け７５に対して鉄筋５０を予め保持した状態を形成することができる。

【0079】

これによりスペーサ付きデッキプレート２００は、作業者が施工現場においてデッキプレート２０に対してスペーサおよび補強用の鉄筋５０を取り付ける手間および時間を削減し、施工性を大幅に向上させることができる。

【0080】

（３）第３の実施の形態
以下、本発明の第３の実施の形態にかかるスペーサ付きデッキプレートの構成について図１４乃至図１６を参照しながら詳細に説明する。ここで、図１４は、本発明の第３の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの外観構成を示す斜視図である。図１５は、本発明の第３の実施の形態におけるスペーサ付きデッキプレートの構成を示す正面図である。図１６は、本発明の第３の実施の形態における鉄筋受け付きスペーサの正面図である。

【0081】

図１１との対応部分に同一符号を付した図１４に示すように、第３の実施の形態にかかるスペーサ付きデッキプレート３００は、デッキプレート２０および鉄筋受け付きスペーサ９０からなり、互いに対向配置された例えばＨ型鋼からなる梁（図示せず）と梁との間にデッキプレート２０が架け渡されている。ここで、デッキプレート２０の構成については第１および第２の実施の形態において説明した通りであるため、その説明を省略する。

【0082】

図１５および図１６に示すように、鉄筋受け付きスペーサ９０は、棒型鋼（鉄筋）を屈曲加工することにより形成されており、デッキプレート２０の形状に合わせた下底部分の存在しない略台形状である。鉄筋受け付きスペーサ９０は、デッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合することにより一体に組み付けられる。

【0083】

鉄筋受け付きスペーサ９０は、デッキプレート２０の山頂部２１と対向して平行に設けられた棒状の橋部９１と、当該橋部９１と繋がりデッキプレート２０の傾斜部２３と平行な棒状の脚部９２とを有している。

【0084】

鉄筋受け付きスペーサ９０の橋部９１は、デッキプレート２０の山頂部２１と平行な平坦部分９１ａと、当該橋部９１の中央部分において全体的に上方に突出した鉄筋受け部分９５とを有している。

【0085】

橋部９１は、鉄筋受け付きスペーサ９０がデッキプレート２０に取り付けられた際、当該デッキプレート２０の山頂部２１の平坦部分９１ａに載置されることになるので、鉄筋受け付きスペーサ９０を倒れさせることなく安定させることができる。

【0086】

鉄筋受け部分９５は、鉄筋受け付きスペーサ９０の一部であり、当該鉄筋受けスペーサ９０の橋部９１の平坦部分９１ａと一体化されている。鉄筋受け部分９５は、下底部分の存在しない略台形状であり、橋部９１の平坦部分９１ａの端部と接続された台形の斜辺に相当する１対の斜辺部分９６と、当該斜辺部分９６の上方端部と接続されて橋部９１の平坦部分９１ａに対して水平かつ中央へ向かって延びる１対の上底部分９７と、当該上底部分９７の端部から円弧状に凹んだ鉄筋保持部分９８とを有している。

【0087】

鉄筋受け９５における１対の斜辺部分９６は、対称的に向かい合ったハ字状に形成されている。また鉄筋受け９５における鉄筋保持部分９８は、その直径が鉄筋５０の外径と同じか、またはそれよりも少し大きく形成されている。ただし、これに限らず、鉄筋保持部分９８は、鉄筋５０が挿入される開口を当該鉄筋５０の外径よりも僅かに小さくしてもよい。この場合、鉄筋５０を鉄筋保持部分９８に押し込む必要があるものの、容易に鉄筋５０が抜け出ることを防止することができる。

【0088】

なお、鉄筋受け９５における斜辺部分９６の長さは、鉄筋受け付きスペーサ９０がデッキプレート２０に取り付けられた際に、デッキプレート２０の山頂部２１との間に必要とするスペースを考慮して設定される。

【0089】

鉄筋受け付きスぺーサ９０の脚部９２は、デッキプレート２０の傾斜部２３とほぼ平行になるように、橋部９１の両側端部から外側かつ下方へ向かって延びた棒状部分である。脚部９２は、デッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合可能にその先端部分が所定の角度に折り曲げられた屈曲部９２ｃを有している。

【0090】

また、脚部９２は、その長さがデッキプレート２０の傾斜部２３よりも僅かに長く形成されている。脚部９２は、脚部９２の屈曲部９２ｃがデッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃと係合して係止された場合、デッキプレート２０の傾斜部２３の上方端部と部分的に当接される。

【0091】

このため、鉄筋受け付きスペーサ９０がデッキプレート２０に一体に取り付けられた場合に倒れることなく維持される。仮に、鉄筋受け付きスペーサ９０が僅かに傾いた場合であっても、橋部９１の平坦部分９１ａがデッキプレート２０の山頂部２１に接触することになり、倒れが防止される。

【0092】

さらに、鉄筋受け付きスペーサ９０がデッキプレート２０に取り付けられた場合、鉄筋受け９５の上底部分９７とデッキプレート２０の山頂部２１との間には空間Ｓ１が形成されるため、施工時には作業者がその空間に指を差し込むことができる。

【0093】

同様に、鉄筋受け９５の鉄筋保持部分９８とデッキプレート２０の山頂部２１の溝部２１ｍとの間には空間Ｓ２が形成されるため、施工時には作業者がその空間に指を差し込むことができる。これにより作業者は、鉄筋受け付きスペーサ９０の橋部９１を、スペーサ付きデッキプレート３００を持ち運ぶ際の持ち手とすることができる。

【0094】

以上の構成において、スペーサ付きデッキプレート３００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ９０を一体に取り付ける際、脚部９２の屈曲部９２ｃをデッキプレート２０の傾斜部２３の突部２３ｃに係合するだけで、安定した状態で倒れることなくデッキプレート２０と一体化することができる。

【0095】

鉄筋受け付きスペーサ９０がデッキプレート２０に取り付けられた状態において、当該鉄筋受け付きスペーサ９０には、鉄筋受け９５が一体に設けられているので、当該鉄筋受け９５における鉄筋保持部分９８に補強用の鉄筋５０を保持することができる。

【0096】

このようにスペーサ付きデッキプレート３００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ９０の鉄筋受け９５を介して補強用の鉄筋５０を予め装着しておくことができる。

【0097】

スペーサ付きデッキプレート３００の鉄筋受け付きスペーサ９０は、１本の棒型鋼（鉄筋）を屈曲加工することにより鉄筋受け９５についても同時に形成することができるので、別途、鉄筋受け９５を形成して溶接する等の手間が不要であり、部品点数が少なく構成を簡素化することができる。

【0098】

以上の構成によれば、スペーサ付きデッキプレート３００は、デッキプレート２０に対して鉄筋受け付きスペーサ９０を取り付けて一体化することができるので、鉄筋受け付きスペーサ９０の鉄筋受け９５に対して鉄筋５０を予め保持した状態を形成することができる。

【0099】

これによりスペーサ付きデッキプレート３００は、作業者が施工現場においてデッキプレート２０に対してスペーサおよび補強用の鉄筋５０を取り付ける手間および時間を削減し、施工性を大幅に向上させることができる。

【0100】

（４）他の実施の形態
なお、上述した第１乃至第３の実施の形態においては、断面波型形状の波型部２４を有する波型鋼板からなるデッキプレート２０を適用対象とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、平坦な面に取り付けられ又は載置され、平坦な橋部と、当該橋部と繋がって起立する脚部とを有するスペーサであれば、波型鋼板からなるデッキプレート以外のフラットな面を有する鋼板を適用対象とするようにしてもよい。

【0101】

なお、その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のスペーサ付きデッキプレート１００、２００，３００を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。

【符号の説明】

【0102】

１００，２００，３００……スペーサ付きデッキプレート、２０……デッキプレート、２１……山頂部、２２……谷底部、２３……傾斜部、２４……波型部、３０、６０、９０……鉄筋受け付きスペーサ、３１……第１支持脚、３３，７１，９１……橋部、３２，７２，９２……脚部、３６……第２支持脚、４０，７５，９５……鉄筋受け、５０……鉄筋。

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10A】

【図10B】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】