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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】冷蔵ショーケース
(51)【国際特許分類】
   F25D 19/00 20060101AFI20250207BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
F25D19/00 560Z
F25D19/00 550E
F25D19/00 510E
F25D11/00 101C
F25D19/00 510Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021082640
(22)【出願日】2021-05-14
(65)【公開番号】P2022175878
(43)【公開日】2022-11-25
【審査請求日】2024-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】新田 真広
(72)【発明者】
【氏名】門脇 静馬
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298382(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0116440(KR,A)
【文献】実開昭56-114386(JP,U)
【文献】特開昭62-073076(JP,A)
【文献】特開平06-147744(JP,A)
【文献】特開2011-104345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 19/00 ~ 19/04
F25D 23/00
A47F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する箱体(12)の内側一側部に設けられて圧縮機(CM)およびファン(F)を収容する機械室(16)と、前記機械室(16)を形成する背板(28)に形成されて前記ファン(F)の動作により前記機械室(16)内に外気を流入させる吸気口(51)と、前記機械室(16)を形成する側板(32)に形成されて前記ファン(F)の動作により前記機械室(16)内の空気を外部に流出させる排気口(52)とを備え、前記ファン(F)を挟んで前記吸気口(51)と反対側に前記圧縮機(CM)が配設されている冷蔵ショーケースにおいて、
前記排気口(52)と連通するよう前記機械室(16)内に形成される前記圧縮機(CM)の囲繞空間(55)のうち、前記ファン(F)の送出側と前記排気口(52)との間に、前記ファン(F)の送出側から前記排気口(52)の位置する方向に向けた空気の流れを阻害して前記囲繞空間(55)のうち前記排気口(52)から離間する側の経路(57)に誘導する第1の阻害手段(70)が設けられていると共に、
前記機械室(16)において前記ファン(F)および前記圧縮機(CM)の対向領域(55a)の上側に、当該対向領域(55a)から上方への空気の流れを阻害する第2の阻害手段(EV)が設けられており、
前記第1の阻害手段(70)は、前記ファン(F)の外周を覆う筒状のカバー部材(63)と、前記排気口(52)が設けられた前記側板(32)との間に、当該カバー部材(63)の上方から下方に亘って延在するよう配置されて、当該第1の阻害手段(70)の上端から下端までの範囲にファン(F)の全体が位置するよう構成され、
前記第2の阻害手段(EV)は、前記対向領域(55a)の上方において、前記圧縮機(CM)の後端位置から前記カバー部材(63)の前端位置までの前後間を超える範囲を被覆するよう構成されている
ことを特徴とする冷蔵ショーケース。
【請求項2】
前記第1の阻害手段(70)と前記機械室(16)の底面との間を空気が流通可能に構成されると共に、前記第2の阻害手段(EV)が当該第1の阻害手段(70)の上面に至るように構成されている請求項1記載の冷蔵ショーケース。
【請求項3】
前記第1の阻害手段(70)と前記圧縮器(CM)との間に、空気が流通可能な狭窄部(56)が形成されている請求項1または2記載の冷蔵ショーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を冷却貯蔵する貯蔵室と、圧縮機、凝縮器およびファンを収容する機械室とを有する冷蔵ショーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
貯蔵室内で食品や飲料品等の物品を冷却しつつ外から見えるように展示する冷蔵ショーケースが広く使用されている。冷蔵ショーケースは、貯蔵室に対して区画された機械室を備え、この機械室には、貯蔵室を冷却するための冷却機構(圧縮機、凝縮器、膨張弁等)やファン等が収容されている。機械室は、吸気口および排気口により外部と連通しており、機械室内(吸気口近傍)のファンが動作して外気を吸気口から機械室内に吸い込み、機械室内の空気を排気口から排出するように構成される。冷蔵ショーケースはこのように、機械室内の空気をファンの動作により入れ替えるように構成され、機械室内に配置されている凝縮器および圧縮機の放熱を促し、機械室の過度な温度上昇を防ぐようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-298382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷蔵ショーケースとして例えば、寿司ネタ等の生鮮食材を展示しながら冷蔵保存するネタケースと呼ばれるものは、一般に左右に横長の形状であり、寿司屋のカウンタ等に設置される。このネタケースが置かれたカウンタの前には客が着座し、背後では店員が食材の出し入れ等を行うので、ネタケースでは、機械室が左右一方の側端部に設けられ、ネタケースの後方から機械室に吸気して該ネタケースの側方に排気する構成となっている。機械室が形成されるネタケースの側端部では、その一側面を形成するサイドパネルに排気口が設けられて、当該排気口がリアパネルの吸気口と近接している。すなわち、吸気口と排気口とが圧縮機を挟む位置関係にないため、吸気口から機械室内に取り込んだ空気の一部が圧縮機の周囲で排気口に近い側をショートカットして外部へと排出される。このように機械室内をショートカットして排出される空気は、機械室内で圧縮機との充分な熱交換を行わないまま排出されるので、機械室内が高温となって圧縮機や関連機器に悪影響を及ぼす虞がある。
【0005】
そこで本発明は、従来の冷蔵ショーケースに内在する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、圧縮機の熱による圧縮機や関連機器への悪影響を抑止し得る冷蔵ショーケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、第1の手段は、
外郭を構成する箱体の内側一側部に設けられて圧縮機およびファンを収容する機械室と、前記機械室を形成する背板に形成されて前記ファンの動作により前記機械室内に外気を流入させる吸気口と、前記機械室を形成する側板に形成されて前記ファンの動作により前記機械室内の空気を外部に流出させる排気口とを備え、前記ファンを挟んで前記吸気口と反対側に前記圧縮機が配設されている冷蔵ショーケースにおいて、
前記排気口と連通するよう前記機械室内に形成される前記圧縮機の囲繞空間のうち、前記ファンの送出側と前記排気口との間に、前記ファンの送出側から前記排気口の位置する方向に向けた空気の流れを阻害して前記囲繞空間のうち前記排気口から離間する側の経路に誘導する阻害手段が設けられていることを要旨とする。
この構成によれば、機械室内において、圧縮機の囲繞空間のうち排気口から離間する側の経路を流れる空気が増大し、機械室内での空気の停滞が抑止される。従って、圧縮機が充分に放熱し、機械室の換気が効率的に行われて、機械室内の圧縮機や関連機器の過度な温度上昇が防がれる。すなわち、圧縮機が発する熱による悪影響(圧縮機や関連機器の耐久性を低下させて寿命を縮める等の悪影響)を抑止することができる。
【0007】
第2の手段は、
前記阻害手段は、前記圧縮機の駆動源と電気的に接続されるキャパシタであることを要旨とする。
この構成によれば、キャパシタを阻害手段として利用することにより、機械室内での部材点数の増加や、機械室内の煩雑化、コスト増といったデメリットを抑制することが可能となる。
【0008】
第3の手段は、
物品が冷却貯蔵される貯蔵室を冷却する蒸発器に冷媒配管を介して接続する膨張弁が、前記機械室において前記ファンおよび前記圧縮機の対向領域の上側に位置するように配設されていることを要旨とする。
この構成によれば、圧縮機や阻害手段との接触による対向領域から上方への空気の移動を膨張弁で阻害して、囲繞空間のうち排気口から離間する側の経路へと誘導することができる。これにより、囲繞空間のうち排気口から離間する側の経路に流れる空気が増大し、機械室内での空気の停滞が抑止されるので、圧縮機が発する熱による悪影響(圧縮機や関連機器の耐久性を低下させて寿命を縮める等の悪影響)を抑止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る冷蔵ショーケースによれば、圧縮機の熱による圧縮機や関連機器への悪影響を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例に係る冷蔵ショーケースを右上前方から見た状態の斜視図である。なお、箱体の内部に形成される機械室を破線で示している。
図2】冷蔵ショーケースの右側端部に収納される機械ユニットを左上前方から見た状態の斜視図である。なお、機械室の外形を一点鎖線で示している。
図3】機械ユニットを示す平面図である。なお、機械ユニットの周囲に、機械室の前後左右の壁(リアパネル、フロントパネル、右サイドパネル、区画板)を下端部付近で横断した状態で示している。
図4】機械ユニットの右側面図である。
図5】シュラウドの平面図であり、凝縮器およびファン等を破線で示している。
図6】ファンの動作に伴う機械室での空気の流れに関する説明図であり、機械室の平面視におけるシュラウド(第1板部)の位置を基準として、吸気口、排気口、凝縮器、ファン、圧縮機、キャパシタおよび膨張弁等の位置関係を、一点鎖線を用いて簡略に示すと共に、吸気口から排気口にかけての空気の流れを矢印(二点鎖線)で示してある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る冷蔵ショーケースにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、明細書中の説明において「左」「右」とは、冷蔵ショーケース10を正面側(前側)から見た状態での左右を意味する。実施例では、「ネタケース」と呼ばれる形態の冷蔵ショーケース10について説明するが、他の形態の冷蔵ショーケースにも本発明を適用し得る。
【実施例
【0012】
(冷蔵ショーケース10の概略構成について)
図1に示すように、実施例の冷蔵ショーケース(ネタケース)10は、左右に長い形状の箱体12によって外郭が形成されている。この箱体12の内側には、食材(物品)を外部(前方)から視認可能に冷却保存するための貯蔵室14と、この貯蔵室14を冷却する冷却機構18の構成要素(圧縮機CM、凝縮器CD、膨張弁EVおよび冷媒配管P)やファンF等を収容するための機械室16とが形成されている。貯蔵室14および機械室16は左右に横並びで形成されており、箱体12内部における左側4分の3(または5分の4)程度が貯蔵室14、残りの右側4分の1(または5分の1)程度が機械室16となっている。箱体12は、左右に長い皿状の箱体ベース34を台座としており、箱体ベース34の上面側で骨格をなすフレーム(図示せず)に沿って組み付けられる複数のパネル24,26,28,30,32によって外面が形成されている。また、箱体12の前面側には、貯蔵室14を前方から視認可能とする透明なフロントガラス20が設けられており、箱体12の後面側には、貯蔵室14に対する生鮮食材等の物品の出し入れを可能とするスライド扉22が左右に開閉自在に設けられている。
【0013】
ここで、貯蔵室14は、フロントガラス20、スライド扉22、箱体ベース34(右端部を除く部位)と、箱体12の上面を形成するトップパネル24(右端部を除く部位)と、箱体12の左側面を形成する左サイドパネル30と、貯蔵室14および機械室16の間を区画する区画板36とによって形成されている。
【0014】
また、機械室16は、トップパネル24および箱体ベース34の右端部と、区画板36と、箱体12の前面を形成するフロントパネル26と、箱体12の後面を形成するリアパネル(背板)28と、箱体12の右側面を形成する右サイドパネル(側板)32とによって形成されている。すなわち、機械室16は、フロントパネル26の後面、リアパネル28の前面、区画板36の右側面、右サイドパネル32の左側面、の4つの板面(前後左右の板面)によって形成されている。機械室16には、圧縮機CM、凝縮器CD、膨張弁EV、ファンF等が、一体的に組み付けられた状態で(機械ユニットUとして)収容されている。この機械室16に収容される機械ユニットUについて、図2図4に示してある。
【0015】
なお、冷却機構18は、圧縮機CM、凝縮器CD、膨張弁EV、蒸発器EPの順番で冷媒が循環するように各機器が冷媒配管Pで連通接続されている。すなわち、圧縮機CMで圧縮された気化冷媒は、冷媒配管Pを経て凝縮器CDで凝縮液化された後に膨張弁EVで減圧され、蒸発器EPに流入して一挙に膨張して蒸発し、貯蔵室14内の空気と熱交換を行なって貯蔵室14を冷却する。そして、蒸発器EPで蒸発して熱交換した気化冷媒が冷媒配管Pを経て圧縮機CMに帰還するサイクルを反復するようになっている。なお、蒸発器EPは、冷却機構18を構成する冷媒配管Pのうち、膨張弁EVから左方(区画板36側)へと延びる特定の冷媒配管Pa(図2図3参照)に連通するように貯蔵室14の上部に配設されている。この特定の冷媒配管Paを含む一部の冷媒配管Pは、円筒状の断熱材38によって外面が被覆され、断熱されている。また、凝縮器CDを空冷する手段として、凝縮器CDと対向するよう機械ユニットUに配置されたファンF(図4参照)が利用されている。
【0016】
図3に示すように、機械室16を後方から覆うリアパネル28には、機械室16を箱体12の後方の外部空間と連通させる吸気口51が形成されている。また、機械室16を右側方から覆う右サイドパネル32には、機械室16を箱体12の右側方の外部空間と連通させる排気口52が形成されている。機械室16の略中央部には圧縮機CMが載置されており、この圧縮機CMの外周面と、機械室16を前後左右から形成する各板面(前後左右の板面)との間に、排気口52に連通すると共に圧縮機CMの周囲を囲繞する囲繞空間55が画成されている。機械室16内において圧縮機CMは、リアパネル28に形成された吸気口51の前方で、かつ右サイドパネル32に形成された排気口52の左側方に位置している。また、機械室16内には、圧縮機CMの後方でリアパネル28の前面(内面)に近接して対向するように凝縮器CDが配設され、この凝縮器CDの前面側に、ファンFがその中心の回転軸線を前後方向に向けた姿勢で配設されている(図4および図5参照)。
【0017】
凝縮器CDは、板金を折り曲げて形成されたシュラウド60によって上面および前面が覆われた状態で機械室16に配置されている。図4および図5に示すように、シュラウド60は、上下に延在して後面が凝縮器CDの前面に対向する第1板部61と、第1板部61の上縁から後方に延出して下面が凝縮器CDの上面に対向する第2板部62とを備え、第1板部61の略中央部に、正面視で円形の通気口61aが大きく貫通形成されている。ファンFは、通気口61aの位置に合わせて、図示しない取付枠により第1板部61に取り付けられている。そして、前後方向に開口する筒状のカバー部材63が第1板部61の前面に取り付けられ、ファンFを外周側から覆うように位置している。なお、第1板部61の通気口61aおよびファンFは、リアパネル28における吸気口51の形成範囲に対して前方に位置している。
【0018】
このように、機械室16は、圧縮機CMを基準として後方に、ファンF、凝縮器CD、リアパネル28(吸気口51)の順で前から並んでおり、圧縮機CMの右側方には右サイドパネル32の排気口52が開口している。すなわち、吸気口51から機械室16に取り込まれた空気(外気)は、凝縮器CDを前方に向けて通過し、ファンFから圧縮機CMに向けて送り出される。吸気口51から機械室16に外気が取り込まれると、機械室16内の空気が圧縮機CMの周囲(囲繞空間55)を通り、排気口52から箱体12の右側方へと押し出されるように排出され、機械室16内の換気がなされる。
【0019】
機械室16内の囲繞空間55は、凝縮器CDの配設側を除いた、シュラウド60(第1板部61)よりも圧縮機CM側(前側)に、ファンF(の回転動作範囲)および圧縮機CMの間の領域(以下「対向領域55a」という)と、第1板部61と圧縮機CMとの間で対向領域55aの右端と排気口52とを繋ぐように形成される空間部分(以下「第1領域56」という)と、区画板36・フロントパネル26と圧縮機CMとの間で対向領域55aの左端と排気口52とを繋ぐように形成される空間部分(以下「第2領域57」という)とを有する。ここで、冷蔵ショーケース10では、吸気口51が形成されたリアパネル28における右縁と、排気口52が形成された右サイドパネル32における後縁とが接続して、当該リアパネル28の板面と右サイドパネル32の板面とが直交方向を向く位置関係にあり、排気口52が吸気口51に対して右方に偏って位置しているために、対向領域55aから第1領域56を通って排気口52に至る空気の移動距離が、対向領域55aから第2領域57を通って排気口52に至る空気の移動距離と比較して、大幅に短くなる。すなわち第1領域56は、機械室16内に取り込んだ空気が排気口52に直行する直行経路として機能するため、第1領域56を通過して排気口52から排出される空気の流れでは、機械室16内での空気の移動距離が短くなり圧縮機CMとの充分な熱交換が行われない。一方で第2領域57は、機械室16内に取り込んだ空気が迂回して排気口52に至る迂回経路として機能し得るが、ファンFから送出される空気が対向領域55aから第1領域56に流れ易いと、その分、第2領域57では空気が流動し難くなり、圧縮機CMの温度が上昇して、機械室16全体の温度も高まる。従って結果的に、機械室16内にある圧縮機CMや関連機器の温度が高まって支障を来し得る。そこで、本実施例では、後述する阻害手段(キャパシタ70)により機械室16(囲繞空間55)での空気の流れを制御して、圧縮機CMの充分な排熱を実現している。
【0020】
(阻害手段(キャパシタ70)について)
図5に示すように、シュラウド60には、第1板部61の右縁上端部から前方に向けて延出する支持片64と、支持片64の左側面に対向する帯状の固定板65とが設けられている。そしてこの支持片64および固定板65は、圧縮機CMの駆動源と電気的に接続されるキャパシタ(阻害手段)70を固定するために使用されている。このキャパシタ70は、圧縮機CMの駆動源としてのモータ(単相誘導モータ)に始動トルクを付与するスタートキャパシタであり、その全体として円柱状をなしている。なお、キャパシタ70は消耗品である(劣化が進むと始動時トルクの減少や電流の増加、振動等が生じる)ため、圧縮機CMの外部に交換可能に設けられている。キャパシタ70は一般的に、機械室16内における交換作業がし易い位置、例えば、機械室16の天井面等に配設される。これに対し、本実施例では、キャパシタ70を支持片64および固定板65の間に挟み込み、この状態で固定板65および支持片64の各延出端部(前端部)をネジ止めすることで、シュラウド60(第1板部61)の前面の右側部にキャパシタ70が固定されている。
【0021】
ここで、キャパシタ70は、囲繞空間55のうち、ファンFの送出側(回転動作範囲の前端)から排気口52の位置する側に向けた空気の流れを阻害し得る位置に配置されている(すなわち、阻害手段として機能している)。具体的には、機械室16内における囲繞空間55のうち第1板部61より前側で、第1領域56内か、或いは対向領域55a内における右寄り(排気口52寄り)の位置に、キャパシタ70が配設されていることにより、当該キャパシタ70がファンFから送出された空気と接触して第1領域56側よりも第2領域57側に多く流れるように誘導する。ここで、図4図6を参照し、本実施例におけるより具体的なキャパシタ70の位置(範囲)を説明する。キャパシタ70が機械室16の左右方向に占める範囲は、ファンFに対して右から近接する位置(ファンFを外周側から囲むカバー部材63の右側面に近接する位置)を左端とし、第1板部61の右端と前後に重なる位置を右端とする範囲となっている。すなわち、本実施例のキャパシタ70は、図6に示すように、対向領域55a(ファンFの前方領域)に対して右側から近接する位置(第1領域56の左端部)に配置されている。また、キャパシタ70が機械室16の前後方向に占める範囲は、第1板部61の前面と近接する位置を後端とし、圧縮機CMの後端よりも僅かに前側の位置を前端とする範囲となっている。更に、図4に示すように、キャパシタ70が機械室16の上下方向に占める範囲は、ファンF(回転動作範囲)またはカバー部材63よりも上方であって第1板部61の上縁と前後に重なる位置を上端とし、ファンF(回転動作範囲)またはカバー部材63よりも下方の位置を下端とする範囲となっている。すなわち、本実施例においては、キャパシタ70の上下寸法がファンF(回転動作範囲)の上下寸法よりも大きく、キャパシタ70の上端から下端までの範囲にファンF(回転動作範囲)全体が位置する構成となっており、ファンFの高さ位置に合わせてキャパシタ70が配設されている。
【0022】
図4に示すように、キャパシタ70は、シュラウド60(第1板部61)および圧縮機CMの間隙の延在方向(上下方向)に沿わせた姿勢(長手方向を上下に向けた縦向き姿勢)で配設されており、シュラウド60(第1板部61)および圧縮機CMの間隙を上下・前後に広い範囲で埋めている。図6に示すように、キャパシタ70は、第1領域56内に位置し、その前側が圧縮機CMに近接して、第1領域56内で空気が排気口52に直行し得る経路を狭めている(なお、空気の移動経路が狭められた部分を以下「狭窄部56a」という)。すなわち、第1領域56の狭窄部56aでは空気の流通抵抗が大きくなり、対向領域55aからの空気が狭窄部56aを通過し難くなる。従って、一部の空気は狭窄部56aを通過するものの、大半の空気は狭窄部56aを通過せず、対向領域55a側へと流れる。このようにして対向領域55a側へと流れる空気は、その直後にファンFから送出される空気に押されて、囲繞空間55のうち排気口52から離間する第2領域57へと進行する。そして結果的に、第1領域56から排気口52への空気の流れが抑制され、第2領域57から排気口52への空気の流れが増大する。このように、機械室16の囲繞空間55における阻害手段として機能する位置にキャパシタ70を配置することで、機械室16に外部から取り込んだ空気が充分に第2領域57へと流れるようになる。すなわち、従来の機械室16内での空気流動に関する、ファンFからの空気が第1領域56を通じて排気口52に直行し易いという問題点を、充分解消し得る構成となっている。なお、キャパシタ70は、ファンFの送出側から排気口52に直行する空気の移動経路を完全に遮断するものではなく、圧縮機CMとの間に狭窄部56aを確保する配置となっている。このため、圧縮機CMの周囲では、ファンFの回転に応じて、第2領域57のみでなく第1領域56にも空気が流れ、圧縮機CMの周囲の空気が全体的に流動して、効率的に圧縮機CMの外周面全体との熱交換が行われ、その後に機械室16から排出されるように構成されている。
【0023】
(第2の阻害手段(膨張弁EV)について)
また、本実施例では、前述した阻害手段(キャパシタ70)に加え、蒸発器EPと冷媒配管P(前記特定の冷媒配管Pa)を介して接続する膨張弁EVを、対向領域55aから上方への空気の移動を阻害する第2の阻害手段として機能するよう配置している。具体的には、図3および図4に示すように、ファンFおよび圧縮機CMの対向領域55aの上側に位置するように膨張弁EVを配置している。対向領域55aでは前述のように、ファンFを通過して対向領域55aから第1領域56側に向かおうとする空気の流れが、キャパシタ70によって阻害される。この場合に、キャパシタ70に接触した空気が上方に向けて移動すると、その空気はキャパシタ70を越えて第1領域56経由で排気口52を通過することになり、圧縮機CMとの充分な熱交換が行われない。そこで、対向領域55aを上方から覆うように膨張弁EVを配置することで、ファンFから圧縮機CM側に送出された空気が対向領域55aから上昇するのを規制し、第2領域57側に流れるよう誘導する構成となっている。膨張弁EVには、図2図4に示すように、結露を防ぐためのインシュレーション75が施してあり、全体として水平方向に幅広の扁平形状となっている。そして、インシュレーションを含む膨張弁EVの全体が、対向領域55aの上方で、圧縮機CMの後端位置からファンFの前端位置(カバー部材63の前端位置)までの前後間を超える範囲を被覆するように位置している。また、インシュレーション75の一部(右部)が、シュラウド60の右上部に配置されたキャパシタ70の上面に上方から近接位置で被さるように位置することで、膨張弁EVおよびキャパシタ70の間隙が狭められている。
【0024】
(第3の阻害手段(特定の冷媒配管Pa)について)
更に、本実施例では、前述した阻害手段(キャパシタ70)と第2の阻害手段(膨張弁EV)とに加えて、膨張弁EVと蒸発器EPとを接続する前記特定の冷媒配管Paを、対向領域55aの左端部または第2領域57の後端部から上方への空気の移動を阻害する第3の阻害手段として機能するよう配置している。具体的には、図2および図3に示すように、膨張弁EVの左上側で特定の冷媒配管Paが蛇行状に折り返すように配設されており、囲繞空間55のうち対向領域55aの左端部から第2領域57の後端部までの領域を上方から覆っている。また、特定の冷媒配管Paは、前述のように外面が断熱材38で被覆されており、この断熱材38によって径寸法が大幅に拡大されているので、対向領域55aの左端部や第2領域57の後端部に対する上方位置が広い範囲で覆われている。すなわち、断熱材38で外面が覆われた状態の特定の冷媒配管Paにより、対向領域55aの左端部や第2領域57の後端部での空気の上昇を規制して、当該空気を第2領域57から排気口52へと移動させ得るようになっている。なお、特定の冷媒配管Paは、対向領域55aの左端部や第2領域57の後端部に対する上方位置を隙間なく覆うものではない。すなわち、機械室16の上部への空気の上昇をある程度許容することで、圧縮機CMの上部や冷媒配管Pの結露を防止している。
【0025】
〔実施例の作用〕
次に、図6を参照し、実施例に係る冷蔵ショーケース10の作用について説明する。
【0026】
実施例の冷蔵ショーケース10は、機械室16内に配設されているファンFの回転動作により、後方の吸気口51から機械室16に空気(外気)が取り込まれる。吸気口51を通過した空気(外気)は、前方に向かって凝縮器CDを通過し、シュラウド60の第1板部61に形成されている通気口61aを通過して、ファンFにより前方(ファンFおよび圧縮機CMの対向領域55a)に送出される。ファンFの前方には圧縮機CMが配置されているので、ファンFから送出された空気は圧縮機CMの外周面の後部に接触する。ここで、第1領域56にキャパシタ(阻害手段)70が位置していることにより、圧縮機CMの外周面との接触により対向領域55aから右方の排気口52にショートカットして流れようとする空気は、キャパシタ70が第1領域56において圧縮機CMとの間に狭窄部56aを形成し、ファンFから送出された空気が排気口52に直行する経路を狭めていることによって、排気口52側への移動を阻害される。従って、狭窄部56aに到達した空気は、その一部が狭窄部56a(第1領域56)を通過して排気口52に至るものの、大半は移動方向を変更して第2領域57へと進行する。すなわち、第1領域56から排気口52への空気の流れが抑制され、第2領域57から排気口52への空気の流れが増大する。対向領域55aの上方は、インシュレーション75を施された膨張弁EVによって覆われている。また、対向領域55aの左端部から第2領域57の後端部までの領域の上方は、断熱材38で断熱された特定の冷媒配管Paによって覆われている。従って、対向領域55aの空気は、その後のファンFからの継続的な送風に応じて、第1領域56や排気口52から離間する側、すなわち、囲繞空間55の第2領域57側へと流れる。対向領域55aから第2領域57を通って排気口52に到達する空気は、圧縮機CMの外周面の広い範囲と接触するため、圧縮機CMと充分に熱交換を行い、昇温した状態で排気口52から外部に排出される。
【0027】
このように、実施例の冷蔵ショーケース10は、ファンFの送出側から排気口52の位置する方向に向けた空気の流れ(第1領域56側を経由して排気口52に至る空気の流れ)を阻害する阻害手段(キャパシタ70)が設けられた構成となっているので、囲繞空間55のうち排気口52から離間する側の経路(第2領域57)を流れる空気が増大し、機械室16内での空気の停滞が抑止される。従って、圧縮機CMが充分に放熱し、機械室16の換気が効率的に行われて、機械室16内の各機器(圧縮機CMや、凝縮器CD等の関連機器)の過度な温度上昇が防がれる。すなわち、圧縮機CMが発する熱による悪影響(圧縮機CMや関連機器の耐久性を低下させて寿命を縮める等)を抑止することができる。
【0028】
ここで、圧縮機CMの駆動源と電気的に接続するキャパシタ70を阻害手段として利用することにより、機械室16内での部材点数の増加や、機械室16内の煩雑化、コスト増といったデメリットを抑制することが可能となる。
【0029】
また、物品が冷却貯蔵される貯蔵室14を冷却する蒸発器EPに冷媒配管Pを介して接続する膨張弁EVが、機械室16においてファンFおよび圧縮機CMの対向領域55aの上側に位置するように配設されているので、圧縮機CMやキャパシタ70との接触による対向領域55aから上方への空気の移動を膨張弁EVで阻害して、囲繞空間55のうち排気口52から離間する側の経路(第2領域57)へと誘導することができる。これにより、第2領域57に流れる空気が増大し、機械室16内での空気の停滞が抑止されるので、圧縮機CMが発する熱による悪影響(圧縮機CMや関連機器の耐久性を低下させて寿命を縮める等の悪影響)を抑止することができる。
【0030】
〔変更例〕
本発明は、前述した実施例の構成に限定されるものではなく、例えば以下のように変更して採用することができる。
(1) 実施例では、貯蔵室および機械室が箱体の内側に横並びで形成された冷蔵ショーケースについて、ファンから送出された空気が排気口に直行するのを阻害手段で阻害する(圧縮機の周囲を迂回して排気口に至るよう阻害手段で誘導する)構成を説明したが、機械室を形成する背板(リアパネル)に吸気口が形成され、側板(右サイドパネル)に排気口が形成されるものであれば、箱体の内側で貯蔵室および機械室が上下に並ぶよう形成された冷蔵ショーケースであっても本発明の阻害手段を適用し得る。
(2) 実施例では、箱体の内側における貯蔵室の右側に機械室を形成したが、貯蔵室の左側に機械室を形成してもよい(すなわち、貯蔵室との位置関係を逆に形成してもよい)。この場合には、箱体ベースの左端部の上面と、トップパネルの左端部の下面と、フロントパネルの後面と、リアパネルの前面と、区画板の左面と、左サイドパネルの右面とで、機械室を形成し、リアパネル(背板)に吸気口を形成すると共に、左サイドパネル(側板)に排気口を形成して、吸気口の前方(圧縮機の後方)のファンの送出側と、圧縮機の左方の排気口との間に阻害手段としてのキャパシタを配置することができる。なお、この場合の圧縮機、ファン、凝縮器およびリアパネルの位置関係は、実施例と同様とすればよい。
(3) 実施例では、機械室においてファンから送出された空気が排気口に直行するのを阻害する阻害手段(キャパシタ)と、機械室においてファンおよび圧縮機の対向領域の上側に位置して対向領域から上方への空気の移動を阻害する第2の阻害手段(膨張弁)とを備えるようにしたが、阻害手段(キャパシタ)のみを備えて対向領域を上方に開放しても、圧縮機の熱による悪影響を抑止するという阻害手段の効果は期待し得る。
(4) 実施例では、ファンの送出側から排気口の位置する方向に向けた空気の流れを阻害する阻害手段として、圧縮機の駆動源と電気的に接続するキャパシタを用いたが、他の部材(例えば専用の板状部材等)を阻害手段として用いる構成としてもよい。
例えば、機械ユニット(または機械室)の底面から上方へ延出するように立ち上がり、ファンの前方の対向領域よりも排気口側(第1領域上)に位置する板状部材を、その板厚方向が対向領域および排気口を指向する姿勢で設け、当該板状部材によってシュラウド(凝縮器)と圧縮機との間を全体的または部分的に塞ぐ(第1領域内での空気の移動経路を遮断するまたは狭める)ようにする。このように構成することで、板状部材を阻害手段として機能させ得る。
(5) 実施例では、阻害手段(キャパシタ)を第1領域の左端部(対向領域との近接位置)に配置したが、対向領域における排気口寄りの位置に阻害手段を配置してもよいし、第1領域のうち側板(右サイドパネル)に沿う右端側に阻害手段を配置してもよい。このような阻害手段の配置としても、ファンの送出側から排気口の位置する方向に向けた空気の流れを阻害手段により阻害して、囲繞空間のうち排気口から離間する側の経路(第2領域)を流れる空気を増大させ得る。
(6) 実施例では、阻害手段(キャパシタ)の下端よりもファンの回転動作範囲の下端が下側となるように構成したが、阻害手段の下端よりもファンの回転動作範囲の下端が下側となるように構成する場合であっても、例えば、阻害手段の上端がファンの回転動作範囲よりも上方に位置し、阻害手段の下端がファンの回転中心より下方に位置するような構成であれば、ファンの回転動作範囲の高さ位置と阻害手段の高さ位置とが比較的広範囲に重複するので、この場合の阻害手段の配置は、ファンの回転動作範囲(その前方の対向領域)の高さ位置に合わせた配置であると言え、ファンの送出側から排気口の位置する方向に向けた空気の流れを阻害手段によって効率的に阻害し得る。
また、実施例では、機械室の上下方向の範囲において阻害手段の上端から下端までの範囲にファンの回転動作範囲の全体が位置するように構成したが、例えば阻害手段の上下寸法がファンの回転動作範囲の上下寸法よりも小さい場合等には、ファンの回転動作範囲の上端から下端までの範囲に阻害手段の全体が位置するようにすることで、阻害手段をファンの回転動作範囲(その前方の対向領域)の高さ位置に合わせた配置とし得る。
(7) 実施例では、シュラウドの第1板部の前面にファンを囲むカバーを設け、このカバーの内側空間をファンの回転動作範囲として説明を行ったが、カバーを省略してもよい。なお、実施例のようにカバーでファン(回転動作範囲)を外周側から覆う構成においては、ファン(回転動作範囲)からの空気が前方(圧縮機との対向領域)に向けて送出され、ファンの径方向に送出されることはカバーによって規制される。これに対し、カバーを省略した場合には、ファン(回転動作範囲)からの空気が、基本的には前方(対向領域)に向けて送出されるものの、ある程度はファン(回転動作範囲)の径方向へと送出されることになる。この場合、ファンから径方向に送出される空気が対向領域を経由せずそのまま第1領域へと移動し得ることになるが、実施例のように阻害手段としてのキャパシタをファン(回転動作範囲)に対して外周側から近接するよう配置することで、ファンから径方向に送出された空気における第1領域への移動をキャパシタで好適に阻害し得る。
(8) 実施例では、機械室においてファンおよび圧縮機の対向領域の上側に位置して対向領域から上方への空気の移動を阻害する第2の阻害手段として、蒸発器に冷媒配管を介して接続する膨張弁を用いたが、他の部材(例えば専用の板状部材等)を阻害手段として用いる構成としてもよい。
(9) 実施例では、インシュレーションを付加した膨張弁を使用したが、インシュレーションを付加しない状態で膨張弁を第2の阻害手段として利用してもよい。
【符号の説明】
【0031】
12 箱体,14 貯蔵室,16 機械室,28 リアパネル(背板),
32 右サイドパネル(側板),51 吸気口,52 排気口,
55a 対向領域,57 第2領域(経路),70 キャパシタ(阻害手段),
CM 圧縮機,EP 蒸発器,EV 膨張弁,F ファン,P 冷媒配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6