(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】ケーソン工法
(51)【国際特許分類】
E02D 23/00 20060101AFI20250207BHJP
E02D 23/08 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
E02D23/00 B
E02D23/08 C
E02D23/08 D
(21)【出願番号】P 2021095115
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2024-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
(72)【発明者】
【氏名】下坂 賢二
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-070422(JP,A)
【文献】特開2014-156733(JP,A)
【文献】特開平07-076844(JP,A)
【文献】特開2017-227054(JP,A)
【文献】特開平10-184257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 19/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上で躯体を構築し、これを順次地中へ沈設するとともに、躯体内部の掘削を繰り返しながら、所定深さの地中構造物を構築するケーソン工法において、
地中への沈設を開始する前段階において、躯体内部の掘削予定領域に、
アースドリル工法のドリリングバケット、又はハンマグラブによって円柱状に所定深さの掘削孔を複数形成するとともに、これら掘削孔内に高吸水性ポリマー安定液を充填することにより孔壁の安定を図った状態とし、
次いで、通常の施工手順に従って、地上での躯体構築と、地中への沈設と、躯体内部の掘削とを繰り返しながら、所定深さの地中構造物を構築することを特徴とするケーソン工法。
【請求項2】
前記掘削孔は、躯体内部に平面視で正格子配列又は千鳥格子配列で複数形成する請求項
1記載のケーソン工法。
【請求項3】
前記ケーソン工法は、オープンケーソン工法又は圧入式オープンケーソン工法を対象とする請求項1
、2いずれかに記載のケーソン工法。
【請求項4】
前記ケーソン工法は、圧入式オープンケーソン工法を対象とし、前記掘削孔は、グランドアンカーの工事に併行して、かつグランドアンカー工事の期間内に形成するようにする請求項1
、2いずれかに記載のケーソン工法。
【請求項5】
前記躯体内部の掘削によって発生した土砂は、高吸水性ポリマー安定液の分離処理を行った後に、廃棄処理を行うようにする請求項1~
4いずれかに記載のケーソン工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラムシェルなどの掘削機械による掘削作業量を減らして、工程の短縮化とコスト低減化を図ったケーソン工法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、橋梁基礎、建築物基礎、止水壁、地下タンク、トンネル立坑などの地中構造物を築造するために、従来からケーソン工法が採用されている。このケーソン工法は、オープンケーソン工法と、これを改良した圧入式オープンケーソン工法と、ニューマチックケーソン工法とに大別される。前記オープンケーソン工法は、上下面が開放された筒状の躯体内部を地上からクラムシェルなどの掘削機械により、掘削・搬出しながら、地上で構築した躯体を徐々に沈設する工法であり(例えば、下記特許文献1参照)、前記圧入式オープンケーソンは、地中に打ち込んだグランドアンカーにグリッパロッドを連結し、下端に刃口を有する筒状の躯体を構築し、その躯体の上部に支圧材を介して載荷桁を載置し、躯体の内部地盤をクラムシェルなどの掘削機械により掘削しながら載荷桁に取り付けた油圧ジャッキでグリッパロッドを緊張し、前記グランドアンカーで反力を取りながら躯体を地中に圧入(沈設)する工法であり(例えば、下記特許文献2参照)、前記ニューマチックケーソン工法は、躯体下部に気密な作業室を設け、底に地盤の間隙水圧に見合った圧縮空気を送り込むことにより地下水の浸入を防ぎ、ドライな状態で人力又は掘削機械により土砂を掘削・搬出しながら、地上で構築した躯体を徐々に沈設する工法である(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-50464号公報
【文献】特開2006-207152号公報
【文献】特許第6653510号工法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に前記オープンケーソン工法や圧入式オープンケーソン工法の場合は、躯体の上部が開放されていることや掘削深度が深いことを考慮し、クレーンからのワイヤーロープによって吊持されたクラムシェルバケットによる掘削が通常行われている。
【0005】
しかしながら、クラムシェルバケットは構造上、バックホウなどに比べて掘削能力は低いため、全体の作業工程の内、掘削作業に多くの時間と手間が掛かっていた。そのため、工事の工期短縮が難しいという問題や掘削コストが多く掛かるといった問題があった。
【0006】
そこで本発明の主たる課題は、クラムシェルなどの掘削機械による掘削作業量を減らし、工程の短縮化とコスト低減化を図ったケーソン工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、地上で躯体を構築し、これを順次地中へ沈設するとともに、躯体内部の掘削を繰り返しながら、所定深さの地中構造物を構築するケーソン工法において、
地中への沈設を開始する前段階において、躯体内部の掘削予定領域に、アースドリル工法のドリリングバケット、又はハンマグラブによって円柱状に所定深さの掘削孔を複数形成するとともに、これら掘削孔内に高吸水性ポリマー安定液を充填することにより孔壁の安定を図った状態とし、
次いで、通常の施工手順に従って、地上での躯体構築と、地中への沈設と、躯体内部の掘削とを繰り返しながら、所定深さの地中構造物を構築することを特徴とするケーソン工法が提供される。
【0008】
上記請求項1記載の発明では、地中への沈設を開始する前段階において、躯体内部の掘削予定領域に、アースドリル工法のドリリングバケット、又はハンマグラブ円柱状に所定深さの掘削孔を複数形成するとともに、掘削孔内に高吸水性ポリマー安定液を充填することにより孔壁の安定を図った状態とする。前記円柱状の掘削孔は、アースドリル工法のドリリングバケット、又はハンマグラブなどの掘削装置を使って行う。これら掘削装置の掘削効率は、ケーソン内部のクラムシェルバケットによる掘削よりも効率的に行うことが可能であり、前もって、前記掘削孔を複数形成することにより、クラムシェルによる掘削土量を削減することが可能であり、これにより工程の短縮化とコスト低減化を図ることが可能になる。
【0009】
また、前記掘削孔の孔壁保護には、一般的にはベントナイト安定液が使用されるが、このベントナイト安定液は、モンモリロナイト、石英、オパールなどの鉄鉱が含まれる粘土の一種であり、廃棄処分に当たっては、その全量が産業廃棄物としての取扱いになるため廃棄コストが多く掛かっていた。しかし、本願発明で使用する高吸水性ポリマー安定液の場合は、塩化カルシウムなどの二価の金属イオンを添加して溶媒の電気伝導率を上昇させることでポリマー材に吸着されていた水が分離する現象を利用して、廃液処分量の減量化が図ることが可能になるため、処分費も低減できるようになる。
【0010】
請求項2に係る本発明として、前記掘削孔は、躯体内部に平面視で正格子配列又は千鳥格子配列で複数形成する請求項1記載のケーソン工法が提供される。
【0011】
上記請求項2記載の発明は、前記掘削孔の形成パターンを規定したものである。具体的には、掘削孔は平面視で正格子配列又は千鳥格子配列で複数形成することが望ましい。この場合は、掘削孔の孔壁保護の観点から、平面視で躯体内部のケーソン掘削面積に対する前記掘削孔の面積は、15~30%程度とすることが好ましい。
【0012】
請求項3に係る本発明として、前記ケーソン工法は、オープンケーソン工法又は圧入式オープンケーソン工法を対象とする請求項1、2いずれかに記載のケーソン工法が提供される。
【0013】
上記請求項3記載の発明は、本発明の適用対象となる好適なケーソン工法を規定したものである。すなわち、ケーソン工法の内のニューマチックケーソン工法に適用することも可能であるが、本願発明が好適に適用される工事は、比較的掘削効率の悪いクラムシェルにより掘削を採用しているオープンケーソン工法又は圧入式オープンケーソン工法である。
【0014】
請求項4に係る本発明として、前記ケーソン工法は、圧入式オープンケーソン工法を対象とし、前記掘削孔は、グランドアンカーの工事に併行して、かつグランドアンカー工事の期間内に形成するようにする請求項1、2いずれかに記載のケーソン工法が提供される。
【0015】
上記請求項4記載の発明は、前記掘削孔の形成のために工事期間の延長を招くことは望ましくないため、前記ケーソン工法は、圧入式オープンケーソン工法を対象とする場合は、前記掘削孔の形成は、グランドアンカーの工事に併行して、かつその期間内に行うようにすることが望ましい。
【0016】
請求項5に係る本発明として、前記躯体内部の掘削によって発生した土砂は、高吸水性ポリマー安定液の分離処理を行った後に、廃棄処理を行うようにする請求項1~4いずれかに記載のケーソン工法が提供される。
【0017】
上記請求項5記載の発明は、掘削土砂の減量化のために、高吸水性ポリマーの分離処理を行った後に、廃棄処理を行うようにするものである。
【発明の効果】
【0018】
以上詳説のとおり本発明によれば、クラムシェルなどの掘削機械による掘削作業量を減らし、工程の短縮化とコスト低減化を図ったケーソン工法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るケーソン工法の概要説明図である。
【
図3】本発明に係るケーソン工法の施工手順図(その1)である。
【
図4】本発明に係るケーソン工法の施工手順図(その2)である。
【
図5】本発明に係るケーソン工法の施工手順図(その3)である。
【
図6】本発明に係るケーソン工法の施工手順図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0021】
ケーソン工法は、地上で躯体を構築し、これを順次地中へ沈設するとともに、躯体内部の掘削を繰り返しながら、所定深さの地中構造物1を構築するものである。幾つかあるケーソン工法の中で、本形態例では、圧入式オープンケーソン工法の例に基づいて、本発明方法を説明する。
【0022】
圧入式オープンケーソン工法は、先ず最初にグランドアンカーのための地中削孔を行い、この削孔内にテンドン(引張材)13を挿入するとともに、削孔底部にグラウト材注入によって定着部12を造成し、ケーソン躯体2nを沈設する際に、前記テンドン13にセンターホールジャッキ6をセットし引張力を導入することにより、その反力によって躯体2nを地中に圧入するものである。躯体2の構築は、1ロッド毎に地上にて行い、躯体2nを完成させたならば、地中への沈設を行い、掘削を繰り返すことにより、橋梁基礎、建築物基礎、止水壁、地下タンク、トンネル立坑などの地中構造物1を築造するものである。
【0023】
本発明では、前記圧入式オープンケーソン工法において、
図1及び
図2に示されるように、躯体2を地中に沈設を開始する前段階において、躯体2内部の掘削予定領域に、円柱状に所定深さの掘削孔3、3…を複数形成するとともに、これら掘削孔3、3…内に高吸水性ポリマー安定液4を充填することにより孔壁の安定を図った状態とし、
次いで、通常の施工手順に従って、地上での躯体構築と、地中への沈設と、躯体内部の掘削とを繰り返しながら、所定深さの地中構造物1を構築するものである。なお、前記躯体2は、上下方向に分割躯体2
1~2
6の6分割構造とされ、分割躯体2
1、2
2、2
3…2
6の順番で地上で構築され、地中に沈設されるようになっている。
【0024】
以下、図面に基づいて更に具体的に詳述する。
<グランドアンカー工及び掘削孔形成工>
躯体の沈設に先立って、
図3に示されるように、グランドアンカー工と、これに併行してアースドリル工法によるドリリングバケットを用いて、躯体2内部の掘削予定領域内に、円柱状に所定深さの掘削孔3、3…を複数形成する。
【0025】
前記グランドアンカー工では、同図に示されるように、削孔機10を用いて所定径の孔3を所定深さで形成する。次いで、同図面の左側の削孔位置に示されるように、テンドン13(引張材)を挿入し、先端部分にグラウト材を注入することにより定着部12を形成し、この定着部12を固定部としてテンドン13に引張力を導入可能とする。グランドアンカー5の個数は、
図2に示されるように、四隅に配置された載荷桁8に対して2本、合計8本のグランドアンカー5を設置する。
【0026】
なお、前記テンドン13はPC鋼棒、PC鋼より線、多重PC鋼より線、連続繊維補強材などを材料とした引張材料により構成され、地中部分に配置される。地上部分には前記テンドン13にグリッパロッド14が連結される。前記グリッパロッド14は、載荷桁6の上面に設置されたセンターホールジャッキ6に挿通され、センターホールジャッキ6によって引張力が導入される。
【0027】
前記グランドアンカー工に併行して、好ましくはその期間内に前記掘削孔3、3…の形成工事を行うようにする。掘削孔工事は、同
図3に示されるように、アースドリル工法に用いられるドリリングバケット16を用いて行うのが望ましい。図示例では、クレーン15によって吊持されたドリリングバケット16によるロープ方式としている。掘削孔3の深さは、地中に構築されるケーソン(地中構造物1)の底面位置に合わせてもよいし、若干これよりも短くても良いし長くてもよい。掘削孔3の形成による効果をケーソン1の全長に亘って得たいとするならば、ケーソン1の底面位置に合わせて掘削孔3を形成することが望ましい。
【0028】
前記掘削孔3、3…の内部には、孔壁保護のために高吸水性ポリマー安定液4を充填する。高吸水性ポリマー安定液4は、従来のベントナイト系安定液に比べて、掘削地盤の安定性を向上させるとともに,場所打ちコンクリート構造物の品質向上、安定液掘削工法で発生する産廃処分量の減量化、施工の合理化が図れるようになる。
【0029】
前記高吸水性ポリマー安定液4としては、水と、吸水して膨潤した高吸水性ポリマー粒子と、少なくとも、加重材、安定剤、助剤の何れかを含む地盤掘削用膨潤高吸水性ポリマー安定液であって、ベントナイトを含まず、比重が1.20以下の範囲であるのが望ましい。また、前記高吸水性ポリマー粒子はポリアクリル酸ナトリウムであり、前記加重材が、最大粒径が2.0mm以下の無機材の微砂、硫酸塩鉱物から選ばれる少なくとも1種であり、前記安定剤が、ポリアクリルアミドであり、前記助剤が、孔壁安定性を向上させる、おが屑、パルプ、ロックウール、繊維の逸泥防止材から選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0030】
この高吸水性ポリマー安定液は、本出願人が他者との共同により開発したものであり、具体的には、特許第6113433号に記載された高吸水性ポリマー安定液である。
【0031】
前記掘削孔3の孔壁保護のために、前記高吸水性ポリマー安定液4を用いることにより、掘削土砂の大幅な減量化を図ることが可能になる。具体的には、前記高吸水性ポリマー安定液4は、塩化カルシウムなどの二価の金属イオンを添加して養液の電気伝導率を上昇させることによりポリマー材に吸着されていた水が分離する現象を利用して、土砂と水成分とに分離することが可能であり、産廃処分量の低減を図ることが可能になる。
【0032】
前記掘削孔3は、
図2に示されるように、平面視で正格子配列状に複数形成しても良いし、千鳥格子配列状に複数形成するようにしてもよい。この場合は、掘削孔3の孔壁保護の観点から、平面視で躯体2内部のケーソン掘削面積に対する前記掘削孔3、3…の総面積は、15~30%程度、好ましくは17~25%程度とすることが好ましい。
【0033】
<躯体工及び躯体沈設工>
次いで、躯体工と躯体沈設工に入る。躯体2は、上下方向に分割躯体21~26の6分割構造とされ、分割躯体21、22、23…26の順番で、構築済みの躯体の上部側に連続してそれぞれ地上で構築される。
【0034】
先ず、
図4に示されるように、先端に刃口を備えた最先端の第1躯体2
1を地上で築造する。そして、躯体上部に突出させた圧入力伝達部材7、7間に横架するように載荷桁8を配設するとともに、グランドアンカー5のテンドン13に連結されたグリッパロッド14を前記載荷桁8に挿通させるとともに、載荷桁8の上面に載置されたセンターホールジャッキ6に連結させるようにする。
【0035】
次に、前記センターホールジャッキ6の油圧駆動によりグランドアンカー5に引張力を導入して第1躯体2
1を地中に圧入する。圧入が完了したならば、
図5に示されるように、クラムシェルバケット9により第1躯体2
1内部の土砂を掘削する。
前記クラムシェルバケット9は、オープンケーソン工法又は圧入式オープンケーソン工法で一般的に用いられている掘削機であり、開口したクラムシェルバケットを落下させ、引き上げによってバケットを閉じることによって土砂を掴み取る形式のものである。クラムシェルバケット9の稼働方式としては、クレーンによる吊り上げ方式(ロープ方式)、伸縮アーム方式、油圧クラム方式などがある。掘削能力は、ロープ方式の場合は概ね0.6m
3~1.0m
3であり、伸縮アーム方式の場合は概ね0.25m
3~0.6m
3である。
【0036】
クラムシェルバケット9による掘削が完了したならば、
図5に示されるように、前記第1躯体2
1の上部側に第2躯体2
2を築造する。第2躯体2
2の築造は、同図に示されるように、スリップフォーム装置17を用いたスリップ工法によって築造することが可能である。スリップフォーム工法は、コンクリートの型枠(FORM)をジャッキで押し上げ、滑らせて(SLIP)上昇させながら、連続的にコンクリートを打設し躯体を構築していく工法である。第2躯体2
2の築造に当たっては、圧入力伝達部材7を第1躯体2
1の圧入力伝達部材7に連続させるようにしながら躯体内部に埋め込むようにする。
【0037】
第2躯体22の築造が完了したならば、圧入力伝達部材7、7間に載荷桁8を設置するとともに、グリッパロッド14をセンターホールジャッキ6に連結させるようにして圧入準備を完了し、前記センターホールジャッキ6の油圧駆動によりグランドアンカー5に引張力を導入して第1躯体21及び第2躯体22を地中に圧入する。圧入が完了したならば、クラムシェルバケット9により躯体2内部の土砂を掘削する。
【0038】
以上の要領によって、分割躯体2
1~2
6の築造と、躯体圧入と、躯体内部の掘削とを順次繰り返すことにより、
図6に示されるように、全ての分割躯体2
1~2
6を地中に圧入し、その内部土砂を掘削した状態とし、更に底版コンクリート18を打設することにより、地中構造物1を完成させる。
〔本発明法による効果試算〕
本発明法を適用するに当たって、グランドアンカー5の打設期間内に、アースドリルに用いられるドリリングバケット16を用いて掘削孔3、3…の形成を行うことにした場合は、クラムシェル9の掘削土量が減った分だけの工程短縮と、これに伴う施工コストの低減が図れることになる。
【0039】
(1)工程短縮効果
総掘削土量を5,765m3とし、その全量をクラムシェルによって掘削した場合、10m3当たりの掘削沈下時間を2.16時間(平均)とすると、実稼働日数は38.1日(7時間/日)となる。
【0040】
これに対して、本発明方法を適用し、総掘削土量5,765m3の内の954.3m3をアースドリル工法によるドリリングバケット掘削とした場合は、
・クラムシェル掘削土量4,811m3⇒実稼働日数31.8日
・アースドリル掘削土量954.3m3⇒グランドアンカー工事中に行うため実稼働日数は0日となる。
【0041】
従って、本発明法による場合は、約6日の工程短縮が可能になる。
【0042】
(2)施工コスト低減効果
総掘削土量を5,765m3とし、その全量をクラムシェルによる掘削とした場合は、5,765m3×5,053(円/m3)=29,132,061円となる。
【0043】
これに対して、本発明方法を適用し、総掘削土量5,765m3の内の954.3m3をアースドリル工法によるドリリングバケット掘削とした場合は、
・クラムシェル掘削⇒4,811m3×5,053(円/m3)=24,309,983円
・アースドリル掘削⇒954.3m3×3,846(円/m3)=3,670,237円
+設備撤去費用(490,500円)で、合計27,980,221円となる。
【0044】
従って、本発明法による場合は、1,151,840円だけ施工コストの低減が図れるようになる。
【0045】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、前記掘削孔3の形成は、アースドリル工法のドリリングバケット16によって形成するようにしたが、ハンマグラブによって掘削するようにしてもよい。
(2)本発明に係るケーソン工法は、オープンケーソン工法や圧入式オープンケーソン工法などに対して好適に適用されるが、ニューマチックケーソン工法に対しても適用が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…地中構造物(ケーソン)、2…躯体、3…掘削孔、4…高吸水性ポリマー安定液、5…グランドアンカー、6…センターホールジャッキ、7…圧入力伝達部材、8…載荷桁、9…クラムシェルバケット、10…削孔機、12…定着部、13…テンドン、14…グリッパロッド、15…クレーン、16…ドリリングバケット、17…スリップフォーム装置、18…底版コンクリート