(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】トラクタ
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20250207BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20250207BHJP
F01P 11/12 20060101ALI20250207BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20250207BHJP
A01B 71/08 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
B60K11/04 D
B60K11/04 F
B60K11/04 E
B62D25/20 N
F01P11/12 D
F01P11/12 H
F01P11/10 B
A01B71/08
(21)【出願番号】P 2021204481
(22)【出願日】2021-12-16
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】正円 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 康夫
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 達人
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100237(JP,A)
【文献】実開昭62-052085(JP,U)
【文献】特開平11-091369(JP,A)
【文献】特開2017-071263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0383204(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
B62D 25/20
F01P 11/12
F01P 11/10
A01B 71/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、
前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、
前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、
前記エンジンの下方に設けられ、機体の前後方向に沿って延び、前記エンジンを支持する左右の機体フレームと、が備えられ、
前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され
、
前記吸気口は前記左右の機体フレームの間に設けられているトラクタ。
【請求項2】
前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成されている請求項1に記載のトラクタ。
【請求項3】
エンジンと、
前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、
前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、
前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、
前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、
前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、
前記エンジンの下方に、機体の前後方向に沿って延び、前記エンジンを支持する左右の機体フレームが備えられ、
前記防塵部は、左側の前記機体フレームと右側の前記機体フレームとに亘る状態で設けられ、
前記防塵部の左右側方は、前記左右の機体フレームによって塞がれてい
るトラクタ。
【請求項4】
エンジンと、
前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、
前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、
前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、
前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、
前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、
前記防塵部の前部に、上下方向に沿って延びる縦壁部が備えられ、
前記縦壁部は、通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止するように構成されてい
るトラクタ。
【請求項5】
エンジンと、
前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、
前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、
前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、
前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、
前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、
前記防塵部の前下部に、前記吸気口に向けて凹入する凹入部が備えられ、
前記凹入部は、通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止するように構成されてい
るトラクタ。
【請求項6】
エンジンと、
前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、
前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、
前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、
前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、
前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、
前記防塵部の底部に、後ろ下がりに傾斜する傾斜部が備えられ、
前記傾斜部は、通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止するように構成されてい
るトラクタ。
【請求項7】
前記防塵部の下部に、下窄まり形状の下窄まり部が備えられている請求項2から6のいずれか一項に記載のトラクタ。
【請求項8】
エンジンと、
前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、
前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、
前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、
前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、
前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、
前記吸気口は、前記床部のうち、前記ラジエータの下端部に対応する位置まで開口するように構成され、
前記防塵部は、前記吸気口のうち、前記下端部に対応する部分から下向きに延ばされてい
るトラクタ。
【請求項9】
エンジンと、
前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、
前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、
前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、
前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、
前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、
前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、
前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、
前記防塵部に、開口部と、前記開口部を閉塞する閉状態と前記開口部を開放する開状態とに切り換え可能な蓋体と、が備えられてい
るトラクタ。
【請求項10】
前記吸気口は、前記床部における前部に備えられ、
前記蓋体は、前記蓋体の後部に設けられたヒンジ部まわりに揺動可能に構成されている請求項9に記載のトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと、エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、エンジン冷却用のラジエータと、ラジエータを冷却する冷却ファンと、が備えられたトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタには、エンジンと、エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、エンジン冷却用のラジエータと、ラジエータを冷却する冷却ファンとが備えられたものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来のトラクタでは、エンジン冷却用の冷却風は、冷却ファンの駆動によって、エンジンボンネットに設けられたフロントグリルやサイドグリルから吸込まれていた。近年においては、エンジンの高出力化等の理由から、冷却効率の向上が望まれている。冷却効率を上げるためには、冷却ファンの駆動によって発生する冷却風の上流側、つまり、ボンネットの前側部分に、冷却風を吸込むための吸気口を増やし、冷却風の風量を増やすことが望ましいが、ボンネットの前側部分には、既にフロントグリルやサイドグリルが設けられているうえに、ライト等の機器も設けられていることから、ボンネットの前側部分に、さらに冷却風を吸込むための吸気口を設けることは困難であった。
【0005】
また、エンジンルームの床部に吸気口を設ける場合には、エンジンルームの床部は、地面から近く、走行時に地面から上がる塵埃が吸気口から入り込んでしまうという不都合があった。これを防ぐには、吸気口に塵埃の通過を阻止する防塵網を設ける必要があるが、防塵網を吸引口に設けた場合、吸気口を通過する冷却風は、防塵網に設けられた小さな開口を通過する必要があり、これにより冷却風の風量が低下していた。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するものであり、エンジンルームの床部に吸気口を設けた場合においても、吸気口から塵埃が入り込むのを防ぐとともに、吸気口からの冷却風の風量を増やし、冷却効率を向上させることができるトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴は、エンジンと、前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、前記エンジンの下方に、機体の前後方向に沿って延び、前記エンジンを支持する左右の機体フレームと、が備えられ、前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、前記吸気口は前記左右の機体フレームの間に設けられていることにある。
【0008】
本特徴構成によれば、吸引口から吸込まれる冷却風は、三次元形状に立体的に形成された防塵部を介して吸込まれることとなる。防塵部は、複数の方向から吸込みが可能であることから、立体的に構成された防塵部の複数の方向から冷却風の吸込みが可能となる。つまり、平面的に構成された防塵部と比べ、防塵部の表面積のうち、より多くの面積を利用して冷却風を吸込むことが可能となり、冷却風の風量が増加し、冷却効率を向上させることができる。
【0009】
本発明において、前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成されていると好適である。
【0010】
本特徴構成によれば、防塵部は、エンジンルームの床部に設けられた吸気口から下方に向けて膨出する構成となる。つまり、エンジンルームの外側に向けて防塵部が膨出することから、エンジンルーム内に防塵部を設けるためのスペースを確保する必要がなくなる。
【0011】
本発明に係る別のトラクタの特徴は、エンジンと、前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、前記エンジンの下方に、機体の前後方向に沿って延び、前記エンジンを支持する左右の機体フレームが備えられ、前記防塵部は、左側の前記機体フレームと右側の前記機体フレームとに亘る状態で設けられ、前記防塵部の左右側方は、前記左右の機体フレームによって塞がれていることにある。
【0012】
本特徴構成によれば、吸引口から吸込まれる冷却風は、三次元形状に立体的に形成された防塵部を介して吸込まれることとなる。防塵部は、複数の方向から吸込みが可能であることから、立体的に構成された防塵部の複数の方向から冷却風の吸込みが可能となる。つまり、平面的に構成された防塵部と比べ、防塵部の表面積のうち、より多くの面積を利用して冷却風を吸込むことが可能となり、冷却風の風量が増加し、冷却効率を向上させることができる。
本特徴構成によれば、防塵部は、エンジンルームの床部に設けられた吸気口から下方に向けて膨出する構成となる。つまり、エンジンルームの外側に向けて防塵部が膨出することから、エンジンルーム内に防塵部を設けるためのスペースを確保する必要がなくなる。
本特徴構成によれば、防塵部の左右の側壁は機体フレームによって構成されることとなる。したがって、防塵部は左右の側壁を有しない構成となることから、防塵部の構成の簡素化を図ることができ、防塵部の製造工程の削減を図ることを可能とする。また、既存の構成を利用していることから、防塵部の左右の側壁を構成するための材料が不要となり、材料費の削減をも可能とする。
【0013】
本発明に係る別のトラクタの特徴は、エンジンと、前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、前記防塵部の前部に、上下方向に沿って延びる縦壁部が備えられ、前記縦壁部は、通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止するように構成されていることにある。
【0014】
本特徴構成によれば、吸引口から吸込まれる冷却風は、三次元形状に立体的に形成された防塵部を介して吸込まれることとなる。防塵部は、複数の方向から吸込みが可能であることから、立体的に構成された防塵部の複数の方向から冷却風の吸込みが可能となる。つまり、平面的に構成された防塵部と比べ、防塵部の表面積のうち、より多くの面積を利用して冷却風を吸込むことが可能となり、冷却風の風量が増加し、冷却効率を向上させることができる。
本特徴構成によれば、防塵部は、エンジンルームの床部に設けられた吸気口から下方に向けて膨出する構成となる。つまり、エンジンルームの外側に向けて防塵部が膨出することから、エンジンルーム内に防塵部を設けるためのスペースを確保する必要がなくなる。
本特徴構成によれば、通気を許容する縦壁部は、防塵部の前部に備えられており、走行に伴う風は、縦壁部に向けて流れる。その結果、走行時には、縦壁部から効率的に冷却風の吸込みをすることが可能となる。
【0015】
本発明に係る別のトラクタの特徴は、エンジンと、前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、前記防塵部の前下部に、前記吸気口に向けて凹入する凹入部が備えられ、前記凹入部は、通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止するように構成されていることにある。
【0016】
本特徴構成によれば、吸引口から吸込まれる冷却風は、三次元形状に立体的に形成された防塵部を介して吸込まれることとなる。防塵部は、複数の方向から吸込みが可能であることから、立体的に構成された防塵部の複数の方向から冷却風の吸込みが可能となる。つまり、平面的に構成された防塵部と比べ、防塵部の表面積のうち、より多くの面積を利用して冷却風を吸込むことが可能となり、冷却風の風量が増加し、冷却効率を向上させることができる。
本特徴構成によれば、防塵部は、エンジンルームの床部に設けられた吸気口から下方に向けて膨出する構成となる。つまり、エンジンルームの外側に向けて防塵部が膨出することから、エンジンルーム内に防塵部を設けるためのスペースを確保する必要がなくなる。
本特徴構成によれば、凹入部が設けられていることにより、防塵部の表面積がより大きくなる。凹入部は、通気を許容する構成を備えていることから、冷却風を吸込むことができる部分が増加し、より多くの冷却風を吸込むことが可能となる。さらに、凹入部は、防塵部の前下部に備えられていることから、走行に伴う風は、凹入部に流れ込むこととなる。その結果、走行時には、凹入部から効率的に冷却風の吸込みをすることが可能となる。
【0017】
本発明に係る別のトラクタの特徴は、エンジンと、前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、前記防塵部の底部に、後ろ下がりに傾斜する傾斜部が備えられ、前記傾斜部は、通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止するように構成されていることにある。
【0018】
本特徴構成によれば、吸引口から吸込まれる冷却風は、三次元形状に立体的に形成された防塵部を介して吸込まれることとなる。防塵部は、複数の方向から吸込みが可能であることから、立体的に構成された防塵部の複数の方向から冷却風の吸込みが可能となる。つまり、平面的に構成された防塵部と比べ、防塵部の表面積のうち、より多くの面積を利用して冷却風を吸込むことが可能となり、冷却風の風量が増加し、冷却効率を向上させることができる。
本特徴構成によれば、防塵部は、エンジンルームの床部に設けられた吸気口から下方に向けて膨出する構成となる。つまり、エンジンルームの外側に向けて防塵部が膨出することから、エンジンルーム内に防塵部を設けるためのスペースを確保する必要がなくなる。
本特徴構成によれば、エンジンルーム内部で発生した塵埃は、防塵部の底部に備えられた傾斜部に落ちる。傾斜部は、後ろ下がりに傾斜していることから、後に向けて滑り落ち、傾斜部の後側に集まる。つまり、傾斜部に落ちてきた塵埃は、傾斜部のうち後側以外の場所においては、少なくなっており、塵埃により傾斜部における通気が阻害されることを軽減することができる。また、傾斜部に落ちてきた塵埃が、傾斜部の後側に集まることから、清掃を容易に行うことが可能となる。
【0019】
本発明において、前記防塵部の下部に、下窄まり形状の下窄まり部が備えられていると好適である。
【0020】
本特徴構成によれば、エンジンルーム内部で発生した塵埃は、防塵部の下部に備えられた下窄まり部に集まる。防塵部のうち下窄まり部以外の場所においては、塵埃が少なくなっており、塵埃により通気が阻害されることを軽減することができる。また、塵埃が、下窄まり部に集まることから、清掃を容易に行うことが可能となる。
【0021】
本発明係る別のトラクタの特徴は、エンジンと、前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、前記吸気口は、前記床部のうち、前記ラジエータの下端部に対応する位置まで開口するように構成され、前記防塵部は、前記吸気口のうち、前記下端部に対応する部分から下向きに延ばされていることにある。
【0022】
本特徴構成によれば、吸引口から吸込まれる冷却風は、三次元形状に立体的に形成された防塵部を介して吸込まれることとなる。防塵部は、複数の方向から吸込みが可能であることから、立体的に構成された防塵部の複数の方向から冷却風の吸込みが可能となる。つまり、平面的に構成された防塵部と比べ、防塵部の表面積のうち、より多くの面積を利用して冷却風を吸込むことが可能となり、冷却風の風量が増加し、冷却効率を向上させることができる。
本特徴構成によれば、防塵部は、エンジンルームの床部に設けられた吸気口から下方に向けて膨出する構成となる。つまり、エンジンルームの外側に向けて防塵部が膨出することから、エンジンルーム内に防塵部を設けるためのスペースを確保する必要がなくなる。
本特徴構成によれば、ラジエータから落ちてくる塵埃は、開口を介して、防塵部に集まることから、清掃を容易に行うことが可能となる。
【0023】
本発明に係る別のトラクタの特徴は、エンジンと、前記エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、前記エンジンルームに設けられたエンジン冷却用のラジエータと、前記エンジンルームにおいて前記ラジエータと隣り合う状態で設けられ、前記ラジエータに向けて外気を引き込んで前記ラジエータを冷却する冷却ファンと、前記エンジンルームの床部に設けられた吸気口と、前記吸気口を覆うように設けられ、前記冷却ファンの駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止する防塵部と、が備えられ、前記防塵部は、三次元形状に形成され、複数方向からの吸込みが可能なように構成され、前記防塵部は、前記エンジンルームから下方に向けて膨出する形状に構成され、前記防塵部に、開口部と、前記開口部を閉塞する閉状態と前記開口部を開放する開状態とに切り換え可能な蓋体と、が備えられていることにある。
【0024】
本特徴構成によれば、吸引口から吸込まれる冷却風は、三次元形状に立体的に形成された防塵部を介して吸込まれることとなる。防塵部は、複数の方向から吸込みが可能であることから、立体的に構成された防塵部の複数の方向から冷却風の吸込みが可能となる。つまり、平面的に構成された防塵部と比べ、防塵部の表面積のうち、より多くの面積を利用して冷却風を吸込むことが可能となり、冷却風の風量が増加し、冷却効率を向上させることができる。
本特徴構成によれば、防塵部は、エンジンルームの床部に設けられた吸気口から下方に向けて膨出する構成となる。つまり、エンジンルームの外側に向けて防塵部が膨出することから、エンジンルーム内に防塵部を設けるためのスペースを確保する必要がなくなる。
本特徴構成によれば、開口部を使用して、防塵部の内部を清掃することができる。その結果、防塵部の内部の清掃を行う際に、防塵部を取り外す必要がなく、清掃を容易に行うことが可能となる。
【0025】
本発明において、前記吸気口は、前記床部における前部に備えられ、前記蓋体は、前記蓋体の後部に設けられたヒンジ部まわりに揺動可能に構成されていると好適である。
【0026】
本特徴構成によれば、吸気口が床部における前部に備えられていることにより、機体前方から防塵部及び蓋体へのアクセスを容易に行うことができる。したがって、蓋体の開閉作業及び防塵部内部の清掃を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態で、機体の前後方向を定義するときは、作業状態における機体進行方向に沿って定義し、機体の左右方向を定義するときは、機体進行方向視で見た状態で左右を定義する。すなわち、
図1に矢印Fで示す方向が機体前側、
図1に矢印Bで示す方向が機体後側である。前後方向での前向き姿勢を基準として右側に相当する方向(
図3に矢印Rで示す方向)が機体右側であり、左側に相当する方向(
図3に矢印Lで示す方向)が機体左側である。
【0029】
〔トラクタの全体構成について〕
図1には、トラクタを示している。本トラクタには、機体の前後方向に沿って延びる左右の機体フレーム1と、機体フレーム1を支持するホイール式の走行装置2と、機体フレーム1の前側部分に設けられた原動部3と、原動部3の後方に設けられた運転部4と、運転部4を覆うキャビン5とが備えられている。
【0030】
走行装置2は、操舵可能かつ駆動可能な左右の前輪2Fと、駆動可能な左右の後輪2Bと、を有している。キャビン5には、キャビン5の後部に開閉揺動可能に支持された左右のドアパネル5aが備えられている。
【0031】
〔原動部の構成について〕
原動部3には、エンジンEを収容するエンジンルームERを構成するエンジンボンネット6が備えられている。エンジンボンネット6の前面部には、多数の通気孔を有するフロントグリル6aが備えられている。エンジンボンネット6における左側部及び右側部には、それぞれ、多数の通気孔を有するサイドグリル6bと、サイドグリル6bの後方に、吸気部6cとが備えられている。
【0032】
図2に示すように、エンジンルームERには、エンジンEの他に、エンジンEの冷却を行うラジエータ7、ラジエータ7に向けて外気を引き込んでラジエータ7を冷却する冷却ファン8、冷却ファン8の外周を覆うファンシュラウド8a、キャビン5内を空調する空調装置(図示せず)における冷媒を凝縮するコンデンサ9、バッテリ10、エンジンEの燃料のための燃料クーラ11等が備えられている。ラジエータ7の前方には、コンデンサ9及び燃料クーラ11の横外側を覆う左右のサイドカバー12が備えられている。
【0033】
機体フレーム1は、原動部3の前端に対応する箇所まで延びている。エンジンEは、エンジンEの下方に位置する機体フレーム1に支持されている。機体フレーム1のうち、エンジンEよりも前側に位置する箇所に、ラジエータ7が支持されている。機体フレーム1の前端には、左右の機体フレーム1に亘って設けられる前プレート1Fが備えられている。機体フレーム1の下側部分のうちラジエータ7や冷却ファン8等の下方に位置する箇所に、左右の機体フレーム1に亘って設けられる下プレート1Dが備えられている。
【0034】
エンジンEとラジエータ7との間において、ラジエータ7と隣り合う状態で冷却ファン8とファンシュラウド8aとが備えられている。機体フレーム1の前端側において、機体フレーム1の上側部分にバッテリ10を載置固定するためのバッテリ載置台21が支持されている。バッテリ10とラジエータ7の間のうち、前側に燃料クーラ11が設けられ、後側にコンデンサ9が設けられている。
【0035】
〔バッテリ載置台の構成について〕
バッテリ載置台21は、バッテリ10を載置するための床部22と、バッテリ載置台21を機体フレーム1に支持させるための左右の支持部23と、バッテリ10を固定するためのバッテリ固定部24とを備える。
【0036】
バッテリ載置台21の下側に、機体の前後方向に沿って延びる左右一対の支持部23が備えられている。支持部23は、機体の前後方向で前側に位置する前側部分23aと、前側部分23aよりも後側に位置し、前側部分23aよりも下方に延びるように構成されている後側部分23bとを有する。左右一対の支持部23は、左右一対の機体フレーム1に内側から当接する状態で、ボルト固定されている。
【0037】
左右一対の機体フレーム1の上方に、床部22が位置している。床部22は、機体の前後方向において、機体フレーム1のラジエータ7が支持されている位置から機体フレーム1の前端部分に対応する位置まで延びる板状部材からなる。なお、詳しくは説明しないが、床部22の前側部分は、エンジンボンネット6の前側部分に対応する形状に成形されており、エンジンルームERの前側部分の床部として構成されている。床部22には、緩衝材25を介して、バッテリ10が載置されている。
【0038】
バッテリ固定部24は、床部22から上方に延びる左右の縦フレーム24aを備える。バッテリ10は、左右の縦フレーム24aの上側部分と床部22とに支持された固定具26によってバッテリ載置台21に固定されている。
【0039】
図2及び
図3に示すように、床部22の下側面には、左右の支持部23に亘るように設けられている内側補強部材22aが備えられている。床部22の下側面のうち、左右の支持部23の横外側には、左右の外側補強部材22bが備えられている。
【0040】
図2及び
図4に示すように、床部22の前部かつ内側補強部材22aよりも後側に、吸気口27が設けられている。吸気口27は、機体の前後方向において、バッテリ10の前側部分に対応する位置からラジエータ7の下端部に対応する位置まで開口するように構成されている。吸気口27が設けられることにより、冷却ファン8の駆動により、エンジンボンネット6に設けられたフロントグリル6aやサイドグリル6bだけでなく、床部22に設けられた吸気口27からも外気を吸入することができる。
【0041】
〔防塵部の構成について〕
図2から
図4に示すように、床部22の下側面に、吸気口27を覆うように設けられた防塵部31が備えられている。防塵部31は、床部22から下方、つまり、エンジンルームERから下方に向けて膨出する形状に構成されている。
【0042】
防塵部31は、複数の面を有し、三次元形状に形成されている。防塵部31は、いずれの面も平板状の部材に多数の小さな開口部が開口されたパンチングメタルにより構成されており、冷却ファン8の駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止するように構成されている。具体的には、平面状の板材を折り曲げて形成されており、防塵部31の前部に形成された第一縦面部31a(本発明に係る「縦壁部」に相当)と、第一縦面部31aの下端から後方に延びる第一水平面部31bと、第一水平面部31bの後端から下方に延びる第二縦面部31cと、第二縦面部31cの下端から後ろ下がりに傾斜する傾斜部31dと、傾斜部31dの後端から上方に延びる後面部31eと、後面部31eの上端から後方に延びる第二水平面部31fとを有する形状に構成されている。この構成により、冷却ファン8の駆動により外気を吸入する際、防塵部31は複数方向からの吸込みが可能なように構成されている。
【0043】
第一縦面部31aは、床部22の下側面のうち、機体の前後方向において、内側補強部材22aよりも前側部分、つまり、吸気口27よりも前側部分から下方に延びる。第一縦面部31aは、機体の上下方向及び機体の左右方向に沿って延びる平面形状に構成されている。第一縦面部31aの左右両端の上側部分には、切欠きが形成されており、左右の支持部23の前側部分23aと干渉しないように構成されている。
【0044】
第一水平面部31bは、機体の前後方向及び機体の左右方向に沿って延びる平面形状であり、矩形形状に構成されている。第一水平面部31bは、左右の支持部23の前側部分23aの下端よりも下方に位置する。第二縦面部31cは、機体の上下方向及び機体の左右方向に沿って延びる平面形状であり、矩形形状に構成されている。第二縦面部31cは、左右の支持部23の後側部分23bの前端よりも前方に位置する。第一水平面部31bと第二縦面部31cとにより、防塵部31の前下部に、吸気口27に向けて凹入する凹入部Qが構成される。
【0045】
傾斜部31dは、平面形状であり、防塵部31の底部に位置する。後面部31eは、平面形状であり、吸気口27のうちコンデンサ9の下端部に対応する部分から下方に向けて延びるように構成されている。後面部31eと傾斜部31dとにより、防塵部31の下部に、下窄まり形状の下窄まり部Cが構成される。
【0046】
第二水平面部31fは、後面部31eの上端から後方に向けて、床部22の下側面に沿うように延ばされている。第二水平面部31fの後端は、床部22の下側面のうち吸気口27の後端よりも後側に位置する箇所まで延びている。
【0047】
床部22のうち第一縦面部31aに対応する箇所に、床部22の底面から下方に延びる2つのステー28が設けられている。2つのステー28は、機体の左右方向に沿って所定の間隔をあけて配置されている。ステー28の前側面と第一縦面部31aの後側面とが当接した状態でボルトBoにより締結固定されている。また、床部22の下側面のうち吸気口27の後側部分の左右端部と第二水平面部31fの左右端部との間は、床部22の下側面と第二水平面部31f上側面とが当接している状態となっている。この床部22の下側面と第二水平面部31f上側面とが当接している箇所において、機体の左右方向に沿って所定の間隔をあけてボルトBoにより締結固定されている。この構成により、防塵部31は、床部22の下側面に支持されている。
【0048】
防塵部31は、左側の機体フレーム1と右側の機体フレーム1とに亘る状態で設けられている。防塵部31は、左右の機体フレーム1と対向する側面部を備えておらず、防塵部31の左右側方は、左右の機体フレーム1によって塞がれている。
【0049】
また、左右の機体フレーム1の上面には、隙間埋め部材13が取り付けられている。隙間埋め部材13として、左右の機体フレーム1の前側部分の上端と、支持部23の前側部分23aの下端との間に生じる隙間を塞ぐ前側隙間埋め部材13aと、支持部23の後側部分23bの後端部と防塵部31の後面部31eとの間に生じる隙間を塞ぐ後側隙間埋め部材13bとが、それぞれ左右に備えられる。
【0050】
〔開口部及び蓋体の構成について〕
傾斜部31dは、後側部分に開口部32が形成されている。開口部32は、蓋体33により、開口部32を閉塞する閉状態と開口部32を開放する開状態とに切り換え可能に構成されている。開口部32の縁の全周に亘って、トリム34が取り付けられている。閉状態において、トリム34は、蓋体33と密着するように構成されている。
【0051】
蓋体33は、下窄まり部Cの形状に対応する形状を有している。具体的には、蓋体33は、平面状の板材を折り曲げて形成され、傾斜部31dに対向する第一面部33aと後面部31eに対向する第二面部33bとを有する。蓋体33は、パンチングメタルにより構成されており、冷却ファン8の駆動による外気の通気を許容するとともに塵埃の通過を阻止するように構成されている。閉状態において、蓋体33の縁のうちトリム34が密着する箇所よりも、前側部分にトリム35が取り付けられている。トリム35は、閉状態において、傾斜部31dと密着するように構成されている。
【0052】
図2に示すように、後面部31eには、蓋体33の揺動を実現させる2つのヒンジ部36が備えられている。
図3及び
図4に示すように、2つのヒンジ部36は、後面部31eに機体の左右方向に沿って所定の間隔をあけて配置されている。左右のヒンジ部36は、棒状部材で構成されており、後面部31eを貫通する状態で固定されている。ヒンジ部36は、後面部31eから後方へ延び、ヒンジ部36の前後方向の略中央部分で屈曲する屈曲部分36a(
図5参照)を有している。ヒンジ部36の屈曲部分36aから後側は、後ろ上がりに傾斜している。
【0053】
蓋体33の第二面部33bには、2つの開口37が形成されている。2つの開口37は、後面部31eに備えられている左右のヒンジ部36と対応する箇所に形成されている。左右のヒンジ部36は、蓋体33の2つの開口37にそれぞれ挿通されることにより、蓋体33は、左右のヒンジ部36に吊り下げられて、ヒンジ部36まわりに揺動可能に支持されている。
【0054】
蓋体33の第一面部33aの前側部分と、傾斜部31dのうち開口部32よりも前側部分とに、支持孔が形成されている。第一面部33aの支持孔と傾斜部31dの支持孔とに、ノブボルト39を挿通させてボルト固定すると、左右のヒンジ部36とノブボルト39により防塵部31に蓋体33が支持されて、閉状態を維持することができる。また、ノブボルト39によるボルト固定を解除することにより、開状態にすることができる。
【0055】
図5に示すように、蓋体33が閉状態から開状態に切り換えられるときには、蓋体33は、
図5における反時計回りに揺動するとともに、開口37の上側縁部分がヒンジ部36の上側を後方に向けて摺動する。ここで、開口37の上側の縁部分から第二面部33bの上端までの距離は、ヒンジ部36における屈曲部分36aから後面部31eまでの距離よりも長く構成されている。第二面部33bの上端が防塵部31の後面部31eに当接し、さらに開口37の上側の縁部分がヒンジ部36の屈曲部分36aに引っ掛かり、蓋体33の揺動が停止することで、蓋体33の閉状態から開状態への切り換えが完了する。この状態において、蓋体33の重心Gは、機体の前後方向において、開口37の上側の縁部分が当接している屈曲部分36aよりも前側に位置するように構成されている。この構成により、蓋体33には、ヒンジ部36と開口37の上側の縁部分とが当接している当接箇所Pと重心Gとを結ぶ仮想線L2から、当接箇所Pを通過する重力方向の仮想線L1に向けて、当接箇所Pを中心軸とする円CLの接線方向に揺動力SFが作用する。揺動力SFにより、第二面部33bの上端部分は、当接箇所Pを軸として
図5における反時計回りに回転しようとするが、後面部31eに阻止される。その結果、蓋体33は、開状態に位置維持される。
【0056】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。以下の別実施形態は、矛盾が生じない限り、複数組み合わせて上記実施形態に適用してよい。なお、本発明の範囲は、各実施形態の内容に限定されるものではない。
【0057】
(1)上記実施形態では、防塵部31は、エンジンルームERから下方に向けて膨出する形状に構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防塵部31は、エンジンルームERから上方に向けて膨出する形状に構成されている構成としてもよい。
【0058】
(2)上記実施形態では、防塵部31は、左右の機体フレーム1と対向する側面部を備えておらず、防塵部31の左右側方は、左右の機体フレーム1によって塞がれている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防塵部31は、左右の機体フレーム1と対向する側面部を備えた構成としてもよい。
【0059】
(3)上記実施形態では、防塵部31の前部に形成された第一縦面部31aを備える構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防塵部31は、防塵部31の前部に上下方向に沿って延びる縦面部を備えない構成としてもよい。
【0060】
(4)上記実施形態では、防塵部31の前下部に、吸気口27に向けて凹入する凹入部Qが備えられた構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防塵部31の前下部に、吸気口27に向けて凹入する凹入部Qが備えられていない構成としてもよい。
【0061】
(5)上記実施形態では、防塵部31の底部に、後ろ下がりに傾斜する傾斜部31dが備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防塵部31の底部に、後ろ下がりに傾斜する傾斜部31dが備えられておらず、水平方向に延びる底部が備えられている構成としてもよい。
【0062】
(6)上記実施形態では、防塵部31の下部に、下窄まり形状の下窄まり部Cが備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防塵部31の下部に、下窄まり形状の下窄まり部Cが備えられていない構成としてもよい。
【0063】
(7)上記実施形態では、防塵部31の後面部31eは、吸気口27のうちコンデンサ9の下端部に対応する部分から下方に向けて延びるように構成されている例を基に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防塵部31の後面部31eは、吸気口27のうちラジエータ7の下端部に対応する部分から下向きに延びるように構成されていてもよい。また、後面部31eは、前下がりに傾斜する傾斜状態に構成されていてもよい。
【0064】
(8)上記実施形態では、防塵部31の傾斜部31dの後側部分に開口部32が形成され、開口部32を閉塞する閉状態と開口部32を開放する開状態とに切り換え可能な蓋体33を備え、後面部31eにヒンジ部36が備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、防塵部31の後面部31eに開口部32が形成され、防塵部31の傾斜部31dにヒンジ部36が備えられている構成としてもよく、また、防塵部31は、開口部32及び蓋体33を備えない構成としてもよい。
【0065】
(9)上記実施形態では、ヒンジ部36は、棒状部材で構成されている例を基に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ヒンジ部36は、丁番で構成されていてもよい。
【0066】
(10)上記実施形態では、床部22の前部に備えられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、床部22の後部に備えられている構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、エンジンと、エンジンを収容するエンジンルームを構成するエンジンボンネットと、エンジン冷却用のラジエータと、ラジエータを冷却する冷却ファンと、が備えられたトラクタに適用できる。
【符号の説明】
【0068】
1 :機体フレーム
6 :エンジンボンネット
7 :ラジエータ
8 :冷却ファン
22 :床部
27 :吸気口
31 :防塵部
31a :第一縦面部(縦壁部)
31d :傾斜部
32 :開口部
33 :蓋体
36 :ヒンジ部
E :エンジン
ER :エンジンルーム
C :下窄まり部
Q :凹入部