(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】走行管理システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20250207BHJP
G05D 1/222 20240101ALI20250207BHJP
G05D 1/223 20240101ALI20250207BHJP
【FI】
A01B69/00 303P
A01B69/00 303Z
G05D1/222
G05D1/223
(21)【出願番号】P 2021214419
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤原 長浩
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095566(JP,A)
【文献】特開2020-099240(JP,A)
【文献】特開2020-103141(JP,A)
【文献】特開2016-086668(JP,A)
【文献】特開2019-208413(JP,A)
【文献】米国特許第06119069(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置で圃場を走行しながら農作業を行う作業車の走行管理システムであって、
前記作業車
による前記圃場における外周部分の
周回走行中に、
前記圃場よりも外側の圃場外縁部を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて平面視における前記作業車に対する前記圃場外縁部の離間距離を取得する離間距離取得部と、
前記検出部の検出結果に基づいて
、前記圃場外縁部のうち前記作業車に対して前記離間距離だけ離間した箇所における前記作業車に対す
る高さを示す第一高さデータを経時的に取得する第一高さ取得部と、
衛星測位によって前記作業車の三次元位置情報を経時的に取得する測位情報取得部と、
前記第一高さデータと前記三次元位置情報とを経時的に記憶する記憶部と、
前記第一高さデータと前記三次元位置情報とに基づいて圃場面に対する前記圃場外縁部の高さを示す第二高さデータを算出する第二高さ算出部と、が備えられ
、
前記測位情報取得部は、前記作業車が前記離間距離に亘って走行する前後において、前記離間距離だけ離間した二地点における前記三次元位置情報の夫々を取得するように構成され、
前記第二高さ算出部は、前記二地点のうち前記作業車が前記離間距離に亘って走行する前の地点において前記第一高さ取得部によって取得された前記第一高さデータと、前記二地点における前記三次元位置情報の夫々の高さ成分の差と、に基づいて、前記第二高さデータを算出するように構成されている走行管理システム。
【請求項2】
前記検出部は、横方向に沿って光ビームを走査することによって測距データを二次元座標で取得する光学式測距装置であって、
前記第一高さ取得部は、前記作業車が走行しているときの前記測距データに基づいて前記第一高さデータを経時的に取得するように構成されている請求項1に記載の走行管理システム。
【請求項3】
前記第一高さ取得部は、前記走行装置の底部を基準に前記第一高さデータを取得するように構成されている請求項1または2に記載の走行管理システム。
【請求項4】
前記第二高さ算出部は、前記圃場外縁部における第一位置に対応する前記第一高さデータと、前記第一位置の近傍の前記圃場面である第二位置に対応する前記三次元位置情報と、に基づいて、前記第二位置に対する前記第一位置の相対高さを、前記第一位置に対応する前記第二高さデータとして算出するように構成されている請求項1から
3のいずれか一項に記載の走行管理システム。
【請求項5】
前記第二高さ算出部は、前記第一高さ取得部によって前記圃場の一周分に相当する前記第一高さデータが取得されてから、前記第二高さデータを算出するように構成されている請求項1から
4のいずれか一項に記載の走行管理システム。
【請求項6】
前記圃場外縁部の高さを表示する表示装置が備えられ、
前記第二高さ算出部は、前記圃場の一周分に相当する前記第二高さデータを前記表示装置へ一括送信するように構成され、
前記表示装置は、前記第二高さデータを前記圃場外縁部の高さとして表示するように構成されている請求項
5に記載の走行管理システム。
【請求項7】
前記第二高さ算出部は、前記第二高さデータを経時的に算出するように構成されている請求項1から
4のいずれか一項に記載の走行管理システム。
【請求項8】
前記圃場外縁部の高さを表示する表示装置が備えられ、
前記第二高さ算出部は、経時的に算出された前記第二高さデータを前記表示装置へ逐次送信するように構成され、
前記表示装置は、逐次送信された前記第二高さデータを前記圃場外縁部の高さとして逐次表示するように構成されている請求項
7に記載の走行管理システム。
【請求項9】
前記第二高さデータの集合体に基づいて、圃場走行中の前記作業車が越境不能な境界を示す外縁マップを生成するマップ生成部が備えられている請求項1から
8のいずれか一項に記載の走行管理システム。
【請求項10】
前記外縁マップに基づいて、前記作業車の自動走行を制御する走行制御部が備えられている請求項
9に記載の走行管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を走行しながら農作業を行う作業車の走行管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の走行を管理する際に、圃場の外縁部の高さを把握することは重要である。例えば特許文献1に記載の作業車(文献では「コンバイン」)では、作業車の前部に検出部(文献では符号「2」で示された「レーダーセンサ」)が備えられている。この検出部は作業車の前方の物体を検出可能に構成され、この検出部の検出結果に基づいて圃場外縁部の高さ(文献では「畦高さ」)が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に開示された検出部は、作業車の前部に固定されているため、この検出部で作業車の前方における圃場外縁部の高さを算出すると、作業車の対地高さを基準とした圃場外縁部の高さが算出される。しかし、圃場が湿田であったり傾斜地であったりする場合等では、圃場面が一律に同じ高さとは限らない。このため、検出部が前方の圃場外縁部の高さを算出するタイミングにおいて作業車が位置する圃場面と、検出部が前方の圃場外縁部の高さを算出した後で作業車が前進する圃場面と、の夫々の高度が異なる場合が考えられる。このような場合、単に検出部で圃場外縁部の高さを算出するだけの構成では、圃場面に対する圃場外縁部の高さを算出できない虞がある。
【0005】
本発明の目的は、圃場面に対する圃場外縁部の高さを好適に算出できる走行管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行装置で圃場を走行しながら農作業を行う作業車の走行管理システムであって、前記作業車による前記圃場における外周部分の周回走行中に、前記圃場よりも外側の圃場外縁部を検出する検出部と、前記検出部の検出結果に基づいて平面視における前記作業車に対する前記圃場外縁部の離間距離を取得する離間距離取得部と、前記検出部の検出結果に基づいて、前記圃場外縁部のうち前記作業車に対して前記離間距離だけ離間した箇所における前記作業車に対する高さを示す第一高さデータを経時的に取得する第一高さ取得部と、衛星測位によって前記作業車の三次元位置情報を経時的に取得する測位情報取得部と、前記第一高さデータと前記三次元位置情報とを経時的に記憶する記憶部と、前記第一高さデータと前記三次元位置情報とに基づいて圃場面に対する前記圃場外縁部の高さを示す第二高さデータを算出する第二高さ算出部と、が備えられ、前記測位情報取得部は、前記作業車が前記離間距離に亘って走行する前後において、前記離間距離だけ離間した二地点における前記三次元位置情報の夫々を取得するように構成され、前記第二高さ算出部は、前記二地点のうち前記作業車が前記離間距離に亘って走行する前の地点において前記第一高さ取得部によって取得された前記第一高さデータと、前記二地点における前記三次元位置情報の夫々の高さ成分の差と、に基づいて、前記第二高さデータを算出するように構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、検出部の検出結果が、圃場外縁部の高さを示す第一高さデータとして経時的に取得されるとともに、作業車の三次元位置情報が測位情報取得部によって経時的に取得される。衛星測位によって取得される三次元位置情報には、高度に関する情報も含まれている。このことから、本発明は、検出部が前方の圃場外縁部の高さを算出するタイミングにおいて作業車が位置する圃場面と、検出部が前方の圃場外縁部の高さを算出した後で作業車が前進する圃場面と、の夫々の高度を把握できる。これにより、圃場外縁部の高さを、圃場面に対する圃場外縁部の高さを好適に算出できる走行管理システムが実現される。
また、本構成は、予め設定された離間距離だけ作業車から前方に離間した地点における圃場外縁部の高さを検出部が算出するタイミングにおいて作業車が位置する圃場面と、作業車が当該離間距離だけ前進したタイミングにおいて作業車が位置する圃場面と、の夫々の高度差を取得できる。これにより、本構成は、作業車が当該離間距離だけ前進したタイミングにおいて作業車が位置する圃場面を基準に、圃場外縁部の高さを好適に算出できる。
【0008】
本発明に係る走行管理システムの別の好適な特徴は、前記検出部は、横方向に沿って光ビームを走査することによって測距データを二次元座標で取得する光学式測距装置であって、前記第一高さ取得部は、前記作業車が走行しているときの前記測距データに基づいて前記第一高さデータを経時的に取得するように構成されている点にある。
【0009】
本構成によると、検出部が、測距データを二次元座標で取得する方式の光学式測距装置で構成されている。二次元座標で取得する方式の光学式測距装置は、三次元座標で取得する方式の光学式測距装置と比較して、応答性に優れ、低価格である。本構成であれば、作業車が走行しながら光学式測距装置が光ビームを照射する。このため、三次元座標で取得する方式の光学式測距装置を採用する構成と比較して、機体の進行方向に沿って第一高さデータを連続的に取得する構成が、低コストで実現される。
【0010】
本発明において、前記第一高さ取得部は、前記走行装置の底部を基準に前記第一高さデータを取得するように構成されている点にある。
【0011】
本構成であれば、第一高さデータが走行装置の底部を基準とした圃場外縁部の高さとして示されるため、管理者やオペレータは、第一高さデータの数値を直感的に理解し易くなる。
【0012】
【0013】
【0014】
本発明に係る走行管理システムの別の好適な特徴は、前記第二高さ算出部は、前記圃場外縁部における第一位置に対応する前記第一高さデータと、前記第一位置の近傍の前記圃場面である第二位置に対応する前記三次元位置情報と、に基づいて、前記第二位置に対する前記第一位置の相対高さを、前記第一位置に対応する前記第二高さデータとして算出するように構成されている点にある。
【0015】
本構成は、作業車が第一位置の近傍に位置する状態で取得された三次元位置情報に基づいて、第二位置を基準に圃場外縁部の高さを好適に算出できる。
【0016】
本発明に係る走行管理システムの別の好適な特徴は、前記第二高さ算出部は、前記第一高さ取得部によって前記圃場の一周分に相当する前記第一高さデータが取得されてから、前記第二高さデータを算出するように構成されている点にある。
【0017】
第一高さデータの取得と第二高さデータの算出とが同時に行われる構成であると、演算処理の負荷が増大したりネットワークのトラフィック負荷が増大したりする虞が考えられる。本構成によると、圃場の一周分に相当する第一高さデータが揃った後に、第二高さデータが算出される。これにより、演算処理の負荷が増大したりネットワークのトラフィック負荷が増大したりする虞が軽減される。
【0018】
本発明に係る走行管理システムの別の好適な特徴は、前記圃場外縁部の高さを表示する表示装置が備えられ、前記第二高さ算出部は、前記圃場の一周分に相当する前記第二高さデータを前記表示装置へ一括送信するように構成され、前記表示装置は、前記第二高さデータを前記圃場外縁部の高さとして表示するように構成されている点にある。
【0019】
本構成によって、管理者やオペレータは、圃場外縁部の高さを圃場の一周分に亘って俯瞰でき、第二高さデータが適切に算出されたか否かを確認できる。
【0020】
本発明に係る走行管理システムの別の好適な特徴は、前記第二高さ算出部は、前記第二高さデータを経時的に算出するように構成されている点にある。また、本発明に係る走行管理システムの好適な特徴は、前記圃場外縁部の高さを表示する表示装置が備えられ、前記第二高さ算出部は、経時的に算出された前記第二高さデータを前記表示装置へ逐次送信するように構成され、前記表示装置は、逐次送信された前記第二高さデータを前記圃場外縁部の高さとして逐次表示するように構成されている点にある。
【0021】
本構成によって、第二高さ算出部がリアルタイムに算出される。これにより、例えば管理者やオペレータは、圃場の一周分に相当する第一高さデータが取得されるのを待たなくても、第二高さデータが適切に算出されたか否かをリアルタイムに確認できる。
【0022】
本発明に係る走行管理システムの別の好適な特徴は、前記第二高さデータの集合体に基づいて、圃場走行中の前記作業車が越境不能な境界を示す外縁マップを生成するマップ生成部が備えられている点にある。また、本発明に係る走行管理システムの好適な特徴は、前記外縁マップに基づいて、前記作業車の自動走行を制御する走行制御部が備えられている点にある。
【0023】
本構成であれば、例えば作業車が圃場を越境する場合に、実際に何処で越境不能になるのかの把握が外縁マップによって容易になる。これにより、作業車は、圃場外側の障害物等との接触を回避しながら圃場内を効率よく走行可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】圃場外縁部を検出しながら圃場を走行するコンバインの平面図である。
【
図2】走行管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】第二高さデータの算出と、外縁マップの生成と、の流れを示すフローチャート図である。
【
図4】第一高さデータを取得する様子を示すコンバインの側面図である。
【
図5】第二高さデータを算出する様子を示すコンバインの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明においては、特に断りがない限り、
図1、
図4及び
図5に示す矢印「F」の方向を「前」、矢印「B」の方向を「後」とする。
図1に示す矢印「L」の方向を「左」、矢印「R」の方向を「右」とする。また、
図4及び
図5に示す矢印「U」の方向を「上」、矢印「D」の方向を「下」とする。
【0026】
本発明の走行管理システムが適用される作業車の一例である普通型のコンバイン1について説明する。
図1、
図4及び
図5に示すように、コンバイン1の機体10に、機体フレーム9と、クローラ式の走行装置11と、運転部12と、脱穀装置13と、穀粒タンク14と、収穫部15と、搬送部16と、穀粒排出装置18と、衛星測位モジュール80と、検出部81と、が備えられている。
【0027】
走行装置11は、エンジン(図示せず)からの動力によって駆動する。運転部12には、コンバイン1を操作または監視するオペレータが搭乗可能である。なお、オペレータは、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0028】
収穫部15は、機体10における前部に備えられている。収穫部15は、刈取シリンダ17を介して機体フレーム9に対して昇降可能に構成されている。そして、搬送部16は、収穫部15の後方に設けられている。収穫部15は、圃場5の作物を収穫する。そして、コンバイン1は、収穫部15によって圃場5の植立穀稈を刈り取りながら走行装置11によって走行する刈取走行が可能である。なお、本実施形態における「作業走行」は、具体的には刈取走行である。なお、「作業走行」は、走行しながら、植立穀稈の刈り取り以外の作業を行うものであっても良い。
【0029】
収穫部15により収穫された刈取穀稈は、搬送部16によって機体後方へ搬送される。これにより、刈取穀稈は脱穀装置13へ搬送される。脱穀装置13において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒は、穀粒タンク14に貯留される。穀粒タンク14に貯留された穀粒は、必要に応じて、穀粒排出装置18によって機外に排出される。
【0030】
ここで、コンバイン1は、圃場外縁部6よりも内側に位置する圃場5において、作物を収穫するように構成されている。なお、圃場外縁部6は、圃場5を囲む状態で設けられている。圃場外縁部6には、例えば、畦畔61、給排水ポンプ(不図示)、水口(不図示)等が含まれている。換言すると、圃場外縁部6は圃場5よりも外側の領域である。
【0031】
衛星測位モジュール80及び検出部81は、運転部12の上部に取り付けられている。なお、衛星測位モジュール80による衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法ユニットが衛星測位モジュール80に組み込まれている。もちろん、慣性航法ユニットは、コンバイン1において衛星測位モジュール80と別の箇所に配置されても良い。
【0032】
衛星測位モジュール80は、GNSS(グローバル・サテライト・ナビゲーション・システム、例えばGPS、GLONASS、Galileo、QZSS、BeiDou、等)で用いられる人工衛星GSからの測位信号を受信する。
【0033】
検出部81は、例えば、ToF(Time of Flight)測定方式の光学式測距装置である。検出部81は、二次元スキャンLiDARであって、赤外線レーザー光のような光ビームを横方向に沿って走査することによって測距データを二次元座標で取得するように構成されている。検出部81が検出対象物に対して当該光ビームを照射すると、当該光ビームの光波は空中伝搬して検出対象物の表面で反射し、反射光波が空中伝搬して検出部81へ到達する。検出部81は、検出対象物の表面で反射した光波を、反射信号として取得する。そして、検出部81は、光ビームを照射してから反射信号を取得するまでの時間に基づいて、検出部81と検出対象物との距離を算出するように構成されている。このため、検出部81は、ToF測定方式の測定結果に基づいて光ビームの照射範囲FA(
図1及び
図4参照)に存在する物体の位置及び高さを検出可能である。このように、検出部81は、コンバイン1の圃場走行中に、コンバイン1の前方に位置する圃場外縁部6を検出するように構成されている。なお、『前方』とは、コンバイン1の真前に限定されず、コンバイン1の左右斜め前方も含まれる。
【0034】
〔システムの構成〕
本実施形態の走行管理システムを
図2に基づいて説明する。
図2に示すように、本発明の走行管理システムに、コントローラ20とデータ算出ユニット30とが備えられている。コンバイン1には、多数のECUと呼ばれる電子制御ユニットが備えられている。コントローラ20は、コンバイン1における電子制御ユニットの一構成であって、コンバイン1の各種入出力機器等と車載LANなどの配線網を通じて信号通信(データ通信)を可能に構成されている。データ算出ユニット30は、コンバイン1に備えられず、例えば遠隔地に設けられた管理コンピュータに組み込まれたものであって、コントローラ20と通信ネットワークを介してデータの送受信を可能に構成されている。
【0035】
コントローラ20に、測位情報取得部21と、第一高さ取得部22と、形状記憶部23と、走行制御部24と、が備えられている。
【0036】
衛星測位モジュール80は、受信した測位信号に基づいて、コンバイン1の自車位置を示す測位データを測位情報取得部21へ送る。測位情報取得部21は、衛星測位モジュール80により出力された測位データに基づいて、コンバイン1の三次元位置情報Pを経時的に取得する。
【0037】
検出部81は、検出結果である測距データを第一高さ取得部22へ経時的に送る。第一高さ取得部22は、コンバイン1の圃場走行中にコンバイン1の進行方向前方において検出部81によって検出された物体の二次元座標を経時的に取得する。そして第一高さ取得部22は、検出部81によって取得された二次元座標に基づいて、コンバイン1に対する物体の高さを算出可能なように構成されている。コンバイン1に対する物体の高さとは、走行装置11の底部を基準とした物体の高さである。なお、第一高さ取得部22が、どの部分を基準にして物体の高さを算出するかに関しては、走行装置11の底部以外にも適宜変更可能である。
【0038】
第一高さ取得部22は、圃場外縁部6のうち、コンバイン1の進行方向前方における畦畔61(
図1,
図4及び
図5参照)や給排水ポンプ(不図示)、水口(不図示)等の高さを示すデータを取得する。コンバイン1に対する圃場外縁部6の高さに関するデータを、『第一高さデータH1』と称する。つまり、第一高さ取得部22は、コンバイン1が走行しているときの検出部81の検出結果に基づいてコンバイン1に対する圃場外縁部6の高さを示す第一高さデータH1を経時的に取得する。本実施形態において、第一高さ取得部22は、走行装置11の底部を基準に第一高さデータH1を取得する。
【0039】
また、本実施形態における第一高さ取得部22は、圃場外縁部6だけでなく、圃場5の物体の高さに関するデータも取得可能に構成されている。例えば、第一高さ取得部22は、圃場5における植立穀稈や倒伏穀稈、雑草等の高さを示すデータも取得可能である。
【0040】
離間距離取得部25は、検出部81の検出結果に基づいて平面視におけるコンバイン1に対する圃場外縁部6の離間距離L1を取得する。
図4に示す例では、検出部81から照射された光ビームが、コンバイン1の右前方の畦畔61における照射ポイントIRで反射している。
図4に示す照射ポイントIRは、コンバイン1の進行方向において、検出部81から機体前方へ離間距離L1(
図4及び
図5では『L1(i)』と示している)だけ離間している。
【0041】
なお、照射ポイントIRは畦畔61の上端部に位置し、圃場5の圃場面と畦畔61の上端部との間は、畦畔61における法面であって傾斜している。第一高さ取得部22は、検出部81の検出結果に基づいて、畦畔61における法面の高さも取得可能である。
【0042】
なお、本実施形態において「圃場走行」は、圃場5において走行することを意味する。例えば、圃場5における外周部分を周回走行することは、本発明に係る「圃場走行」の具体例である。また、圃場5における外周部分よりも内側を走行することも、本発明に係る「圃場走行」の具体例である。
【0043】
第一高さ取得部22によって取得された第一高さデータH1と、離間距離取得部25によって取得された離間距離L1と、は経時的に記憶部31へ送られる。また、測位情報取得部21により算出されたコンバイン1の三次元位置情報Pは、経時的に記憶部31へ送られる。
【0044】
図2に示すデータ算出ユニット30に、記憶部31と、第二高さ算出部32と、閾値設定部33と、マップ生成部34と、報知部35と、が備えられている。
【0045】
記憶部31は、位置情報記憶部31Aと、第一高さデータ記憶部31Bと、第二高さデータ記憶部31Cと、閾値記憶部31Dと、マップ記憶部31Eと、を有する。
【0046】
測位情報取得部21によって算出されたコンバイン1の三次元位置情報Pは、取得したタイミングにおける時間情報と、取得したタイミングにおける慣性航法ユニット(不図示)の検出結果(例えばピッチ角、ロール角、ヨー角)と、に関連付けられる。そして、時間情報と慣性航法ユニットの検出結果とに関連付けられた三次元位置情報Pが、位置情報記憶部31Aに経時的に記憶される。この結果、位置情報記憶部31Aにコンバイン1の走行軌跡が記憶される。
【0047】
なお、取得したタイミングにおける三次元位置情報Pが、取得したタイミングにおける慣性航法ユニットの検出結果に基づいて補正される構成であっても良い。つまり、衛星測位モジュール80によって測位された位置情報はコンバイン1の傾斜分だけ誤差を生じるが、この位置情報の誤差が、慣性航法ユニットの検出結果に応じて補正される構成であっても良い。位置情報記憶部31Aに多数の三次元位置情報Pが記憶されている。
【0048】
第一高さ取得部22によって取得された第一高さデータH1は、第一高さデータH1の取得タイミングにおける時間情報と、当該取得タイミングにおける慣性航法ユニットの検出結果と、に関連付けられる。そして、時間情報と慣性航法ユニットの検出結果とに関連付けられた第一高さデータH1が、第一高さデータ記憶部31Bに経時的に記憶される。また、第一高さデータH1の取得タイミングにおいて離間距離取得部25によって取得された離間距離L1は、当該取得タイミングにおける時間情報と関連付けられる。そして、時間情報に関連付けられた離間距離L1が、第一高さデータ記憶部31Bに経時的に記憶される。このことから、第一高さデータH1を離間距離L1と時間情報と慣性航法ユニットの検出結果とに関連付ける構成が可能である。第一高さデータ記憶部31Bに多数の第一高さデータH1及び離間距離L1が記憶されている。
【0049】
このように、記憶部31は、第一高さデータH1と離間距離L1と三次元位置情報Pとを経時的に記憶する。第二高さデータ記憶部31Cと、閾値記憶部31Dと、マップ記憶部31Eと、に関しては後述する。
【0050】
本実施形態では、
図4に示すように、任意のタイミングにおいて、検出部81が照射範囲FAとして示す光ビームを照射し、当該光ビームがコンバイン1の前方の畦畔61の上端部における照射ポイントIRで反射している。そして第一高さ取得部22は、走行装置11を基準に、照射ポイントIRにおける第一高さデータH1(i)を取得する。また、第一高さ取得部22が第一高さデータH1(i)を取得したタイミングで、離間距離取得部25が離間距離L1(i)を取得し、測位情報取得部21が三次元位置情報P(i)を取得する。
【0051】
ここで、「i」とは、第一高さ取得部22が第一高さデータH1を取得したタイミング、及び、測位情報取得部21が三次元位置情報Pを取得したタイミングを意味し、後述の「時系列カウンタi」と同じである。本実施形態では、任意の時系列カウンタiにおいて取得された第一高さデータH1を第一高さデータH1(i)と記載し、任意の時系列カウンタiにおいて取得された離間距離L1を離間距離L1(i)と記載し、任意の時系列カウンタiにおいて取得された三次元位置情報Pを三次元位置情報P(i)と記載する。なお、「i」の値が同一であると、三次元位置情報P(i)と第一高さデータH1(i)と離間距離L1(i)との夫々は、同一のタイミングに取得されたものである。
【0052】
図4及び
図5に示す例では、コンバイン1の右方に、圃場外縁部6の畦畔61が存在し、コンバイン1は畦畔61に沿って圃場5の外周領域を走行している。
【0053】
図4及び
図5に示す例では、圃場5においてコンバイン1の前方の領域が、前下がりに傾斜して、三次元位置情報P(i)を取得した地点よりも低地になっている。実際にコンバイン1の前方には作物が植立しているため、検出部81の検出結果だけでは、圃場5におけるコンバイン1の前方の領域の高さを正確に取得できない場合が多い。第一高さデータH1(i)は、走行装置11の底部を基準に取得される。このため、
図4及び
図5に示す例では、第一高さデータH1(i)が、圃場5に対する実際の圃場外縁部6の高さと相違している。このため、本実施形態では、圃場5に対する実際の圃場外縁部6の正確な高さを算出するための処理として、
図3に示すステップ#01~ステップ#09の処理が行われる。
【0054】
図3は、圃場5の外縁マップを生成するフローチャートを示している。コンバイン1が圃場5の外周領域に沿って周回走行している間、第一高さ取得部22は第一高さデータH1を経時的に取得し(ステップ#01)、離間距離取得部25は離間距離L1を経時的に取得し(ステップ#02)、測位情報取得部21は三次元位置情報Pを経時的に取得する(ステップ#03)。ステップ#01及びステップ#03は、コンバイン1が圃場5を一周するまで継続する。ステップ#04において、データ算出ユニット30は、コンバイン1が圃場5を一周したか否かを判定する。
【0055】
第一高さ取得部22によって圃場5の一周分に相当する第一高さデータH1が取得されると(ステップ#04:Yes)、第二高さ算出部32は、ステップ#05~ステップ#09の処理に基づいて、第二高さデータH2を算出する。
【0056】
位置情報記憶部31Aに、圃場5の一周分に相当する三次元位置情報Pの配列が、時系列順にP(0),P(1),P(2)…と並んでいる。また、第一高さデータ記憶部31Bに、圃場5の一周分に相当する第一高さデータH1の配列が、時系列順にH1(0),H1(1),H1(2)…と並んでいる。加えて、第一高さデータ記憶部31Bに、圃場5の一周分に相当する離間距離L1の配列が、時系列順にL1(0),L1(1),L1(2)…と並んでいる。
【0057】
ステップ#05では、データ算出ユニット30は時系列カウンタiをゼロに設定する。ステップ#06において第二高さ算出部32は、第一高さデータH1(i)と離間距離L1(i)と三次元位置情報P(i)とを読み出し、更に、三次元位置情報P(i)と異なる時系列カウンタiを有する三次元位置情報P(j)を読み出す。三次元位置情報P(j)は、三次元位置情報P(i)で示す位置から離間距離L1(i)だけコンバイン1の前方へ離間した地点の三次元位置情報Pである。第一高さデータH1(i)は、三次元位置情報P(i)で示す位置からコンバイン1の前方へ向けて離間距離L1(i)だけ離間した位置における圃場外縁部6の高さを示している。このことから、
図5に示すように、三次元位置情報P(j)の位置は、第一高さデータH1(i)を取得した照射ポイントIRの位置の近傍である。
【0058】
ステップ#05で時系列カウンタiがゼロに設定される。この直後にステップ#06に移行すると、第二高さ算出部32は、最初に取得された第一高さデータH1(0)と、最初に取得された離間距離L1(0)と、最初に取得された三次元位置情報P(0)と、を読み出す。第一高さデータH1(0)は、三次元位置情報P(0)の位置からコンバイン1の前方へ向けて離間距離L1(0)だけ離間した位置における圃場外縁部6の高さである。そして第二高さ算出部32は、三次元位置情報P(0)の位置からコンバイン1の前方へ向けて離間距離L1(0)だけ離間した位置における三次元位置情報P(j)を読み出す。三次元位置情報P(j)は、第一高さデータH1(0)を取得した照射ポイントIRに対応する。
【0059】
ステップ#06において第二高さ算出部32は、三次元位置情報P(i)の高さ成分情報Pz(i)と、三次元位置情報P(j)の高さ成分情報Pz(j)と、を算出し、高さ成分情報Pz(i)と高さ成分情報Pz(j)との差を算出する。これにより、
図5に示すように、圃場5において三次元位置情報P(i)で示す位置と三次元位置情報P(j)で示す位置との高さの差が算出される。そして、第一高さデータH1(i)と高さ成分情報Pz(i)と高さ成分情報Pz(j)とに基づいて、下記の式で第二高さデータH2(i)が算出される。
【0060】
H2(i)=H1(i)+{Pz(i)-Pz(j)}
【0061】
図5に示す例では、検出部81が機体前方に離間距離L1(i)だけ離間した照射ポイントIRを照射した(
図4参照)後にコンバイン1が離間距離L1(i)だけ走行したタイミングで、測位情報取得部21が三次元位置情報P(j)を取得する。このため、
図5において三次元位置情報P(j)が取得されるタイミングは、衛星測位モジュール80が、
図4に示す照射ポイントIRの真横に位置するタイミングである。
【0062】
つまり、
図4及び
図5に示す例では、測位情報取得部21は、コンバイン1が離間距離L1(i)に亘って前進走行する前後において、離間距離L1(i)だけ離間した二地点における三次元位置情報P(i),P(j)の夫々を取得するように構成されている。そして第二高さ算出部32は、第一高さデータH1(i)と、当該二地点における三次元位置情報P(i),P(j)の夫々の高さ成分情報Pz(i),Pz(j)の差と、に基づいて、第二高さデータH2(i)を算出するように構成されている。
【0063】
図4に示す例では、検出部81から照射された光ビームの先に検出対象物として照射ポイントIRが畦畔61の上端部分に存在する。この畦畔61における照射ポイントIRが、圃場外縁部6における『第一位置』に相当する。このときに第一高さ取得部22は第一位置に対応する第一高さデータH1を取得する。
【0064】
図5において、三次元位置情報P(j)の位置する地点が、当該第一位置の近傍の圃場面である『第二位置』に相当する。このときに測位情報取得部21は第二位置に対応する三次元位置情報Pを取得する。
【0065】
つまり、本実施形態では、第二高さ算出部32は、第一位置に対応する第一高さデータH1と、第一位置の近傍の圃場面である第二位置に対応する三次元位置情報Pと、に基づいて、第二位置に対する第一位置の相対高さを、第一位置に対応する第二高さデータH2として算出するように構成されている。
【0066】
このように、第二高さ算出部32は、第一高さデータH1と三次元位置情報Pとに基づいて圃場面に対する圃場外縁部6の高さを示す第二高さデータH2を算出する。
【0067】
第二高さ算出部32が任意の時系列カウンタiにおける第二高さデータH2(i)を算出すると、第二高さ算出部32は第二高さデータH2(i)を第二高さデータ記憶部31Cに記憶する(ステップ#07)。
【0068】
第二高さ算出部32が、任意の時系列カウンタiにおける第二高さデータH2(i)を第二高さデータ記憶部31Cに記憶すると、データ算出ユニット30は時系列カウンタiをインクリメント(ステップ#08)する。そして、時系列カウンタiが最大値に到達していなければ(ステップ#09:No)、第二高さ算出部32はステップ#06~ステップ#08の処理を繰り返す。時系列カウンタiの最大値とは、圃場5の一周分に亘って第一高さデータH1が取得された回数に相当する。つまり、時系列カウンタiが最大値に到達するまで第二高さデータH2(i)の算出が繰り返されると、圃場5の一周分に相当する第二高さデータH2が算出される。
【0069】
このように、第二高さ算出部32は、第一高さ取得部22によって圃場5の一周分に相当する第一高さデータH1が取得されてから、第二高さデータH2を算出するように構成されている。
【0070】
時系列カウンタiが最大値に到達し、圃場5の一周分の第二高さデータH2が算出されると(ステップ#09:Yes)、ステップ#10において、第二高さ算出部32は圃場5の一周分に相当する第二高さデータH2を報知部35へ一括送信する(ステップ#10)。そして報知部35は、表示装置4が第二高さデータH2を圃場外縁部6の高さとして表示するように、表示装置4を制御する。表示装置4は、例えば運転部12に設けられたモニターであっても良いし、オペレータや管理者等が携帯するスマートフォンやタブレットコンピュータであっても良い。つまり、第二高さ算出部32は、圃場5の一周分に相当する第二高さデータH2を表示装置4へ一括送信するように構成され、表示装置4は、第二高さデータH2を圃場外縁部6の高さとして表示するように構成されている。報知部35は、音声等を報知する構成であっても良い。
【0071】
ステップ#11において、マップ生成部34は高さ閾値HTを閾値記憶部31Dから読み出す。高さ閾値HTは閾値設定部33によって設定され、閾値記憶部31Dに記憶される。
【0072】
閾値設定部33は、第二高さデータH2に関する高さ閾値HTを設定する。高さ閾値HTは、例えば、走行装置11の底部の高さや、機体フレーム9の下端部の対地高さや、収穫部15が最も上昇した状態における収穫部15の下端部の対地高さ等である。閾値記憶部31Dは、これら複数の異なる高さ閾値HTを記憶可能に構成されている。例えば閾値設定部33は、コンバイン1のオペレータが手入力で設定した値を受け付けて高さ閾値HTとして設定しても良いし、外部の管理コンピュータから通信ネットワークを介して送られてきたデータ値を受け付けて高さ閾値HTとして設定しても良い。つまり、高さ閾値HTは、コンバイン1における種々の部分の対地高さに応じて設定可能である。閾値記憶部31Dに一つ以上の高さ閾値HTが記憶され、閾値設定部33が閾値記憶部31Dから高さ閾値HTを読み出す。
【0073】
ステップ#12において、マップ生成部34は、時系列カウンタiごとに第二高さデータH2(i)が高さ閾値HTよりも高いか低いかを判定する。また、ステップ#13においてマップ生成部34は高さ閾値HTよりも高い第二高さデータH2の集合体に基づいて、圃場走行中のコンバイン1が越境不能な境界を示す外縁マップを生成する。外縁マップは、圃場走行中のコンバイン1が越境不能な境界を示すものである。そしてステップ#14において、生成された外縁マップが、マップ生成部34からマップ記憶部31Eへ送られ、マップ記憶部31Eに記憶される。
【0074】
閾値記憶部31Dは、複数の異なる高さ閾値HTを記憶可能に構成されている。このため、複数の異なる高さ閾値HTごとに、ステップ#11~ステップ#14の処理が行われて、複数の異なる高さ閾値HTの夫々に対応する外縁マップが生成される構成であっても良い。つまり、マップ生成部34は、複数の異なる高さ閾値HTを基準にした複数の判定処理が可能であり、マップ生成部34は、複数の判定処理ごとに外縁マップを生成する。
【0075】
図6に示す例では、走行装置11の底部と、機体フレーム9の下端部と、収穫部15が最も上昇した状態における収穫部15の下端部と、の夫々で高さ閾値HTが設定される。そして、
図6に示す例では、三つの高さ閾値HTの夫々を基準としてマップ生成部34による判定処理が行われ、当該判定処理ごとの外縁マップが示されている。
【0076】
図6において、機体フレーム9の下端部を基準に生成された外縁マップの外縁線L32が、走行装置11の底部を基準に生成された外縁マップの外縁線L31よりも圃場外側に位置する。この場合、機体フレーム9の下端部の対地高さが、畦畔61(
図1,
図4及び
図5参照)の高さよりも高いため、走行装置11が圃場5に位置する状態で、機体フレーム9が圃場5よりも外側の畦畔61にはみ出すことが可能となる。
【0077】
また、
図6において、収穫部15が最も上昇した状態における収穫部15の下端部を基準に生成された外縁マップの外縁線L33が、走行装置11の底部を基準に生成された外縁マップの外縁線L31よりも圃場外側に位置する。この場合、収穫部15を最上昇位置まで上昇させれば、走行装置11が圃場5に位置する状態で、収穫部15が圃場5よりも外側の畦畔61にはみ出すことが可能となる。
【0078】
コンバイン1のコントローラ20に形状記憶部23(
図2参照)が備えられている。形状記憶部23にコンバイン1の主要な部位の形状情報が記憶されている。主要な部位の形状情報とは、例えば三次元座標に基づく形状であったり、主要な部位の高さ情報であったり、走行装置11に対する主要な部位のオーバーハングの長さであったりする。
【0079】
走行制御部24(
図2参照)はマップ記憶部31Eから外縁マップを読み出し可能に構成されている。走行制御部24は、外縁マップと、コンバイン1の位置情報と、主要な部位の形状情報と、に基づいてコンバイン1の自動走行を制御する。また、走行制御部24は、刈取シリンダ17を制御可能に構成されている。走行制御部24が刈取シリンダ17を伸び方向に制御すると、収穫部15及び搬送部16は、一体的に、収穫部15が上昇する方向に揺動する。また、走行装置11にはモンロー機構が備えられ、走行制御部24がモンロー機構を上昇させる制御を行うと、機体フレーム9の高さが上昇する。つまり、走行制御部24は、コンバイン1の主要な部位が、その主要な部位の高さに対応する高さ閾値HTを基準として生成された外縁マップの外縁線L3を越境しないように、コンバイン1の走行を制御する。
【0080】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0081】
(1)上述の実施形態では、データ算出ユニット30は、コンバイン1に備えられず、例えば遠隔地に設けられた管理コンピュータに組み込まれたものであって、コントローラ20と通信ネットワークを介してデータの送受信を可能に構成されている。この実施形態に限定されず、例えば、データ算出ユニット30がコンバイン1における電子制御ユニットの一構成であっても良い。
【0082】
(2)上述の実施形態では、コンバイン1が圃場外縁部6に沿って圃場5を周回走行した際に三次元位置データが取得されるが、この実施形態に限定されない。例えば、コンバイン1が圃場5において180度の旋回走行を伴う往復走行を繰り返しながら、第一高さ取得部22が圃場外縁部6から第一高さデータH1を取得する構成であっても良い。つまり、第二高さ算出部32は、第一高さ取得部22によって圃場5の一周分に相当する第一高さデータH1が取得されてから、第二高さデータH2を算出するように構成されても良い。
【0083】
(3)上述の実施形態では、第二高さ算出部32は、第一高さ取得部22によって圃場5の一周分に相当する第一高さデータH1が取得されてから、第二高さデータH2を算出するように構成されている。この実施形態に限定されず、コンバイン1が圃場外縁部6に沿って圃場5を周回走行している最中に、第二高さ算出部32は、第二高さデータH2を経時的に算出するように構成されても良い。
【0084】
また、上述の実施形態では、第二高さ算出部32は、圃場5の一周分に相当する第二高さデータH2を表示装置4へ一括送信するように構成され、表示装置4は、第二高さデータH2を圃場外縁部6の高さとして表示するように構成されている。この実施形態に限定されず、第二高さ算出部32は、経時的に算出された第二高さデータH2を表示装置4へ逐次送信するように構成され、表示装置4は、逐次送信された第二高さデータH2を圃場外縁部6の高さとして逐次表示するように構成されても良い。
【0085】
(4)上述の実施形態では、第一高さデータ記憶部31Bには圃場5の一周分の第一高さデータH1が記憶されるが、この実施形態に限定されない。一般的にコンバイン1は、最初に圃場5の外周領域において二回~三回の周回走行を行う。このため、コンバイン1が外周領域において二回~三回の周回走行を行うと、第一高さデータ記憶部31Bには、圃場外縁部6に関する第一高さデータH1が、二回~三回の周回走行の分だけ重複して記憶される構成であっても良い。
【0086】
(5)
図2に示す測位情報取得部21と第一高さ取得部22との少なくとも一方は、コントローラ20ではなくデータ算出ユニット30に設けられても良い。
【0087】
(6)測位情報取得部21と衛星測位モジュール80とが一体的に構成されても良い。
【0088】
(7)第一高さ取得部22と検出部81とが、一体的に構成されても良い。
【0089】
(8)走行制御部24は、自動走行を可能な構成であっても良いし、手動走行をアシストする構成であっても良い。走行制御部24が手動走行をアシストする構成である場合、コンバイン1に例示されるコンバイン1の一部が外縁線L3を越境しそうになると、コンバイン1が自動的に停車する構成であっても良い。
【0090】
(9)上述した実施形態において、測位情報取得部21は、コンバイン1が離間距離L1(i)に亘って前進走行する前後において、離間距離L1(i)だけ離間した二地点における三次元位置情報P(i),P(j)の夫々を取得するように構成されている。この実施形態に限定されず、例えば、測位情報取得部21は、コンバイン1が離間距離L1(i)に亘って後進走行する前後において、離間距離L1(i)だけ離間した二地点における三次元位置情報P(i),P(j)の夫々を取得するように構成されも良い。このとき、第一高さ取得部22は、コンバイン1が後進走行しているときの検出部81の検出結果に基づいてコンバイン1に対する圃場外縁部6の高さを示す第一高さデータH1を経時的に取得する構成であっても良い。
【0091】
(10)上述の実施形態では、作業車としてコンバイン1が示されているが、作業車は、例えばトウモロコシ、サトウキビ、根菜類等に応じた種々の収穫機であっても良い。また、作業車は、例えばトラクタ、田植機、施肥機、散布機、畝立機等であっても良い。
【0092】
(11)上述の実施形態では、検出部81はコンバイン1の前方における圃場外縁部6を検出するが、この実施形態に限定されない。例えば、検出部81がコンバイン1の後部に備えられ、検出部81はコンバイン1の後方における圃場外縁部6を検出する構成であっても良い。このとき、離間距離取得部25はコンバイン1の後方への離間距離L1を取得する構成であっても良い。そして第二高さ算出部32は、第一高さデータH1と、離間距離L1だけ離間した二地点における三次元位置情報Pの夫々の高さ成分情報Pzの差と、に基づいて、第二高さデータH2を算出する構成であっても良い。
【0093】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、圃場を走行しながら農作業を行う作業車の走行管理システムに適用できる。
【符号の説明】
【0095】
1 :コンバイン
4 :表示装置
5 :圃場
6 :圃場外縁部
21 :測位情報取得部
22 :第一高さ取得部
24 :走行制御部
25 :離間距離取得部
31 :記憶部
32 :第二高さ算出部
34 :マップ生成部
80 :衛星測位モジュール
81 :検出部
H1 :第一高さデータ
H2 :第二高さデータ
IR :照射ポイント(第一位置)
L1 :離間距離
P :三次元位置情報
Pz :高さ成分情報(高さ成分)