(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】マッシュフィルターメンブレン
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20250207BHJP
C12C 7/00 20060101ALN20250207BHJP
【FI】
B01D39/16 C
C12C7/00 Z
(21)【出願番号】P 2021510224
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 NL2019050553
(87)【国際公開番号】W WO2020046122
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591211799
【氏名又は名称】ハイネケン サプライ チェーン ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】Heineken Supply Chain B.V.
【住所又は居所原語表記】Tweede Weteringplantsoen21 1017 ZD Amsterdam The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヌース, マルチヌス アドリアヌス
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-109666(JP,A)
【文献】特開平08-238404(JP,A)
【文献】特開2011-199262(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0300673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00 - 41/04
B01D 24/00 - 37/04
C12C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー組成物中のポリマーの合計重量に基づいて、100重量%のエチレンプロピレンジエンモノマーのコポリマー(EPDM)を含有するエラストマー組成物を含むマッシュフィルターメンブレン。
【請求項2】
ISO815-1:2014
・方法A
・テストピースBに従って、70℃で72時間後に決定される圧縮永久歪みが35%未満であり、前記圧縮永久歪みが前記メンブレンの使用前に決定される、請求項1に記載のマッシュフィルターメンブレン。
【請求項3】
ISO815-1:2014・方法A・テストピースBに従って、70℃で72時間後に決定される圧縮永久歪みが50%未満であり、前記圧縮永久歪みは、前記メンブレンを使用して4700回の醸造後または90週間
の使用後に決定される、請求項1または2に記載のマッシュフィルターメンブレン。
【請求項4】
前記エラストマー組成物は、前記メンブレンの使用前において、次の材料特性のうちの1項目以上の材料特性を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のマッシュフィルターメンブレン:
- ISO37:2011, Type2により特定された引張強度が、
10MPaを超える。
- ISO37:2011, Type2により特定されたM300変形モジュラスが、
5MPaを超える。
- ISO37:2011, Type2により特定された破断点での伸びが、
400%を超える。
- UNI EN ISO1183-1により特定された密度が、1g/cm
3を超える。
- UNI ISO 7619-1により特定されたショアA硬度が、
65から
71ShAの範囲である。
【請求項5】
片側表面積が、1m
2を超える、請求項1から
4のいずれか一項に記載のマッシュフィルターメンブレン。
【請求項6】
前記エラストマー組成物は、過酸化物により硬化または架橋された、請求項1から
5のいずれか一項に記載のマッシュフィルターメンブレン。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載のマッシュフィルターメンブレンを有するマッシュ濾過ユニット。
【請求項8】
マッシュの濾過における、請求項1から
7のいずれか一項に記載のマッシュフィルターメンブレンまたは前記マッシュ濾過ユニットの使用。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載のマッシュフィルターメンブレンの製造方法であって、前記方法は、前記エラストマー組成物の溶融物を混合する工程を含む、方法。
【請求項10】
請求項1から
6のいずれか一項に記載のマッシュフィルターメンブレン、又は、前記メンブレンを有する請求項
7に記載のマッシュ濾過ユニットを使用してマッシュを濾過する工程を含む、マッシュを濾過する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビールのような飲料の醸造分野におけるものであり、特に、マッシュの濾過に使用するためのマッシュフィルターメンブレンに関する。
【背景技術】
【0002】
マッシングは通常、醸造において、製粉された穀物と水を一緒に加熱し、穀物から糖およびその他の成分を生成し抽出を行い、麦汁と固形物としてのビール粕の懸濁液であるマッシュを生成する工程段階である。醸造工程をさらに進めるには、マッシュ濾過工程またはラウタリング工程によりマッシュ中のビール粕から麦汁を分離する必要がある。大規模な醸造所では、この工程は通常、EP0674929に記載されたベルギーのMeura S.A.社から上市されているマッシュ濾過ユニットなどを用いて行われる。その他の同様のタイプのマッシュ濾過ユニットは、スペインのLandaluce S.A.社や中国のLehui社からも上市されている。
【0003】
US5453285には、マッシュ濾過の一例が記載されている。通常、このような工程においては、マッシュは、マッシュ濾過ユニットのフィルター(一般には布フィルター)とメンブレン(ブラダと呼ばれることもある)との間のチャンバーに導入される。メンブレンは、麦汁をマッシュからフィルターを通して押し出すようにマッシュに圧力を加えるために用いられる。フィルターとメンブレンの間に置かれた(サンドイッチされた)残留ビール粕床は、必要に応じて熱水ですすぐことで、残留ビール粕床に残留する糖をさらに抽出することができる。濾過が終了したら、チャンバーを開けてビール粕床を取り出し、次の醸造あるいは次のマッシュのバッチでこのサイクルを繰り返すことができる。
【0004】
EP0674929に記載されているように、マッシュフィルターメンブレンはある程度の弾力性を有し、マッシュがチャンバーに導入されると収縮し、マッシュにさらに圧力(例えば、約最大1200 mbar)が加わるように膨張できる。
【0005】
Meura S.A.社から上市されているような従来のマッシュフィルターメンブレンには幾つかの欠点がある。醸造をある程度の回数行うと、メンブレンは破損したり裂けたりして構造的な完全性が失われるため、メンブレンは交換しなければならない。この交換のためには、濾過ユニットの休止(ダウンタイム)が余儀なくされる。さらに問題なことは、メンブレンの破損の頻度は、予測することが比較的難しく、これは、ある型の一つのメンブレンは同じ型の別のメンブレンよりも長持ちする可能性があることを意味している。これは、各メンブレンでゴム組成にバラツキがあることを意味する。従来のメンブレンの耐久性はこのように予測不能なので、メンテナンスを計画することが難しく、さらに多くのダウンタイムを発生させる。また、従来のマッシュフィルターメンブレンは、裂けたり破損したりするばかりでなく、時間の経過とともに折れ目やしわが形成されやすい。折れ目は、メンブレンの構造的完全さに影響するのみならず、ビール粕床が折れ目に引っ掛かり残留することで、開放したチャンバーからのビール粕床の排出が妨げられる。そのため、ビール粕床を排出するには手作業の助けが必要となり、これは効率と安全性にとって望ましくない。また、従来のマッシュフィルターメンブレンの別の欠点として、特に、定置洗浄(CIP)が行われた後の最初の2回の醸造時における粘着性がある。
【0006】
DE4313103は、メンブレンフィルターシステムとエラストマーメンブレンシートを開示している。しかしながら、本技術においてはより一般的であるように、シートの一部はエラストマーでないと明示的に記載されているが、このシートはエラストマーであると考えられている。また、従来のメンブレンは、エラストマーの性質を有していたとしても、含まれているエラストマーは50 %未満であり得ることが知られている。
【0007】
EP0142173には、フィルタープレス用のダイヤフラムが開示されている。 このダイヤフラムは、別のゴム製のダイヤフラムと比較して、良好な耐熱性および耐熱老化性または耐薬品性を示すことが記載されている。しかし、マッシュ濾過への適性に関する情報はなく、ましてやその利点はEP0142173からはわからない。
【0008】
本発明の目的は、従来のメンブレンに関する上述したような1つ以上の欠点に悩まされることのない改良されたマッシュフィルターメンブレンを提供することである。特に、従来のメンブレンよりも耐久性があって交換が不要または交換が少なくて済むマッシュフィルターメンブレンを提供することが目的である。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、多数回の醸造においてもその弾性を保持するマッシュフィルターメンブレンを提供することでこの目的は実現されるという驚くべきことを見出した。上記目的を達成するために、本発明は、エラストマー組成物中のポリマーの合計量に基づいて、50重量%(wt%)を超える1種以上のエラストマーを有するエラストマー組成物を有するマッシュフィルターメンブレンを提供する。
【0010】
本明細書におけるエラストマーという用語は、弾性特性を有するポリマーを意味し、ゴムとも呼ばれる天然および合成のエラストマーを含む。本発明のエラストマーは、その特性を良好に制御するため、合成エラストマーからなることが好ましい。
【0011】
従来のあるマッシュフィルターメンブレンは、弾性コポリマーであるエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)と、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)などの非弾性熱可塑性ポリマー(塑性または熱可塑性相とも呼ばれる)に基づくエラストマー組成物を含む。例えば、ベルギーのMeura S.A.社が提供するマッシュフィルターメンブレンの組成は、50 %のEPDMと50 %のPEからなる。メンブレンの弾性特性は主にEPDMが寄与しているので、従来のメンブレンは、PEなどのプラスチックが含まれている場合でも、EPDMメンブレンと呼ばれることがある。従来の組成物にはプラスチックが存在するため、この組成物はプラスチックとみなすことができ、関連当局(例えば、米国食品医薬品局FDA、オランダ食品消費者製品安全庁NVWA)によって定められた規制に従って食品グレードの評価を取得することが容易である。例えば、従来のプラスチック含有エラストマー組成物は、EU規則(EU)10/2011および/またはEU規則(EU)282/2008に準拠し得る。学説に縛られることを望まず、本発明者らは、エラストマー組成物中のプラスチックの存在がメンブレンの耐久性に悪影響を与えることを確信している。
【0012】
本エラストマー組成物は、プラスチックの含有ができるだけ少ないことが好ましい。プラスチックが50 重量%未満での有益な効果は既に観察されているかもしれないが、特に60 %を超えて含むエラストマー組成物は耐久性の向上を示す。耐久性の向上は、組成物中のエラストマーの量の増加に伴って観察できる。従って、本エラストマー組成物中のポリマーの合計重量に基づく組成は、前記エラストマーが、80 重量%を超えることが好ましく、90重量%を超えることがより好ましく、95重量%を超えることがさらに好ましく、ほぼ100重量%であることが最も好ましい。すなわち、エラストマー組成物は基本的にプラスチックを含まないことが最も好ましい。
【0013】
本エラストマー組成物にプラスチックを限定的に用いることやプラスチックを用いないことは、代替的に、あるいは追加的に、エラストマー組成物は、エラストマー組成物中のポリマーの合計重量に基づいて、50 %未満の非弾性熱可塑性ポリマーなどの1種以上の非弾性ポリマーを含み、好ましくは25 %未満であること、より好ましくは10 %未満であること、とも表現できる。非弾性ポリマーは、一般的に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの群から選択される1種以上のポリマー等のポリオレフィンホモポリマーである。
【0014】
エラストマー組成物は、CIPに使用可能なアルカリ溶液(例えば、2 %アルカリ溶液)に対して十分な耐性があることが好ましい。このため、エラストマーはEPDMを含むことが好ましい。それ以外の好適なエラストマーとしては、EPDM、FKM(ASTM D1418規格に準拠した、例えばViton(商標))、FFKM(ASTM D1418規格に準拠した、例えばKalrez(商標))、ニトリルブタジエンゴム(NBR)からなる群から選択された1種以上が挙げられる。
【0015】
個別の実施形態において、エラストマーは、トリブロックコポリマーである、ポリスチレン・ブロック・ポリブタジエン・ブロック・ポリスチレン(SBS)やポリスチレン・ブロック・ポリイソブテン・ブロック・ポリスチレン(SIS)のようなブロックコポリマー等のコポリマーを含むことが好ましい。別の個別の実施形態において、エラストマーは、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、EPDM、ポリスチレン・コポリブタジエンゴム(SBR)などのオレフィンエラストマーを含む。
【0016】
エラストマー組成物は、カーボンブラックのような充填剤、硬化剤、安定剤、可塑剤などの添加剤を適宜含んでよいことが理解される。本発明のエラストマー組成物は、過酸化物によって硬化または架橋されることが好ましい。従来のメンブレン用のエラストマー組成物は硫黄によって硬化または架橋されていたが、過酸化物により硬化または架橋することで、より耐久性のあるメンブレンが得られることを見出した。すなわち、硫黄による架橋または硬化はあまり好ましくない。
【0017】
特定の実施形態においては、メンブレンは基本的に完全にエラストマー組成物からなる。別の実施形態においては、メンブレンは、当該組成物、および、メンブレンにおいてマッシュに接触することが想定される側に配置された別の組成物(例えば過フッ素化化合物(PFC)組成物)の層またはパッチを有してもよい。過フッ素化化合物の長所はその不活性であり、それによりメンブレンの耐久性がさらに向上され得る。
【0018】
本発明のエラストマー組成物は、食品グレードであることが好ましい。意外にも、基本的にEPDMからなるエラストマー組成物においてもこれを達成できる。従って、本発明者らは、従来のエラストマー組成物の場合のように、規制に対応するために、組成物に少なくとも50 %のプラスチックを含有させる必要はないということを見出した。本発明のエラストマー組成物は、一般製品の安全性に関するEU指令95/2001/EC、食品との接触が意図される材料および物品に関する規則(EC)N. 1935/2004、オランダ食品消費財法(包装および消費財に関する(商品法の)法令および規制(Warenwetbesluit en-regeling verpakkingen en gebruiksartikelen)を含むがこれらに限定されない)、REACH法で定義されているような懸念が非常に高い物質は0.1 wt%を超えて存在してはいけないとのEU規制(EC)1907/2006の第33条、および/または食品医薬品局(FDA)CFR Title 21 - Part 177-間接食品添加物:ポリマー§177.2600の繰り返し使用を目的としたゴム製品、に準拠できる。このことは、本エラストマー組成物は、規則(EC)N.1935/2004に定められた総移行限度よりも低く維持されるような組成物のみからなることが好ましいことを意味している。この検査は、関連する法律、例えば、食品との接触が意図されるプラスチック材料および物品の成分の移行の検査に必要な基本規則を定める米国連邦規則21章、EU指令82/711/EEC、EU指令93/8/EEC、EU指令97/48/EC、および/または移行のテストに使用される模擬品のリストを定めるEU指令85/572/EECに従って実施できる。エラストマー組成物に好適な組成および添加剤は、これらの規制に関連するいわゆる「ホワイトリスト」にも記載されている。本発明のエラストマー組成物は、規則(EC)N.2023/2006適正製造基準に定められた要件も満たすことが好ましい。
【0019】
本発明のさらなる態様は、メンブレンの製造方法である。従来、一般的にメンブレンは圧縮成形によって製造されている。この方法の欠点は、工程パラメータの制御が制限されることである。例えば、原料EPDMや原料PEなどの出発物質のペレットが偏ることがあり、その結果、最終的な組成が不均一になる。本発明者らは、従来のメンブレンの耐久性が一定しないことは、圧縮成形における工程の制御が不十分であることによる可能性があることを見出した。従って、本発明のメンブレンは、組成物の溶融物が混合されることを含む成形工程、例えば射出成形により作製することが好ましい。射出成形により、メンブレンの耐久性のばらつきがより狭くなることが見出された。すなわち、本発明のメンブレンは、組成物の溶融物の混合を含む射出成形のような成形プロセスによって得ることが好ましい。この方法が、本発明による、通常1 m2を超え、好ましくは2 m2を超え、より好ましくは3 m2を超え、さらに好ましくは3.5 m2を超え、最も好ましくは約3.6 m2の片側表面積を有するような比較的大きなサイズを有するメンブレンの作製に特に適していることもわかった。
【0020】
特に好ましい耐久性を有するメンブレンは、当該メンブレンの使用前において、エラストマー組成物が次の材料特性のうち、好ましくは1項目以上、より好ましくは全項目を備えることがわかった。
ISO37:2011, Type 2により特定された引張強度が5 MPaを超え、好ましくは8 MPaを超え、より好ましくは10 MPaを超え、例えば約12 MPaである。
ISO37:2011, Type 2により特定されたM300変形モジュラスが4 MPaを超え、好ましくは4.5 MPaを超え、より好ましくは5 MPaを超え、例えば約8.6 MPaである。
ISO37:2011, Type 2により特定された破断点での伸びが200 %を超え、好ましくは300 %を超え、より好ましくは400 %を超え、例えば421 %である。
UNI EN ISO1183-1により特定された密度が1 g/cm3を超え、例えば1.06 g/m3である。
UNI ISO 7619-1により特定されたショアA硬度が60から75 ShAの範囲であり、好ましくは65~71 ShAの範囲であり、例えば66 ShAである。
【0021】
上記の材料特性の各項目は、エラストマー組成物が好ましい特性を有することに寄与する。時間経過、すなわち使用に伴う材料特性の変化は、メンブレンの耐久性を示し得ることがわかった。従って、エラストマー組成物は、使用による材料特性の変化ができるだけ小さいように構成されることが好ましい。これは、ISO 815-1:2014、方法A、テストピースBに従って、70 ℃で72時間後に特定された材料特性の圧縮永久歪みに特に当てはまることが分かった。実際、圧縮永久歪みは、エラストマー組成物の耐久性を特定するための信頼できるパラメータとして特に使用可能であると考えられている。一般に、圧縮永久歪みは組成物の弾性を示すものである。例えばベルギーのMeura S.A.社から入手可能な従来のメンブレンの初期圧縮永久歪み(すなわち約40 %)は、効果的なマッシュ濾過工程には十分ではあるものの、代表的な従来のメンブレンは、このような工程での使用により、圧縮永久歪みが(たとえば、4700回の醸造により約59 %)増加することがわかった。一方、本発明によるメンブレンの圧縮永久歪みは、4700回の醸造の間、実質的に一定である。このために、本発明のマッシュフィルターメンブレンは、使用前における圧縮永久歪みが、好ましくは35 %未満、より好ましくは25 %未満であり、かつ/または、メンブレンを使用して約2時間の醸造を4700回行った後、または90週間の使用後の圧縮永久歪みが、好ましくは50 %未満、より好ましくは25 %未満、最も好ましくは20 %未満である。
【0022】
本発明のさらなる態様は、マッシュの濾過における、マッシュフィルターメンブレンの使用またはマッシュ濾過ユニットの使用に関するものである。言い換えると、特定の態様では、本発明は、マッシュフィルターメンブレンまたは前記マッシュフィルターメンブレンを有するマッシュ濾過ユニットを使用してマッシュを濾過することを含む方法に関するものである。より具体的には、前記方法は、麦汁がマッシュからフィルターを通して押し出されるように、マッシュにメンブレンで圧力を加えることを含む。
【0023】
本発明は、以下の実施例によって説明することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施例1 メンブレンの作製
黒色の過酸化物により硬化された100 %のEPDM(組成物中のポリマーの合計重量に基づく)を含むエラストマー組成物を有するマッシュフィルターメンブレンを、射出成形により型内で作製する。メンブレンのサイズは2 x 1.8 m
2であり、材料特性は表1に示す通りである。
【表1】
【0025】
比較例1 従来のメンブレンの分析
ベルギーのMeura S.A.社から上市されている、50 wt%のEPDMと50 %のPEの組成を有する2×1.8 m
2のマッシュフィルターメンブレンを使用に先立って分析したところ、表2に示す次の材料特性であった。
【表2】
【0026】
実施例2 メンブレンの粘着性の評価
Meura S.A.社から上市されている1台のマッシュ濾過ユニットに、実施例1で作製したマッシュフィルターメンブレンを138個装着した。同じ型のもう1台のマッシュ濾過ユニットには、比較例1に示す従来のマッシュフィルターメンブレンを138個装着した。同じ部屋に配置した両方のマッシュ濾過ユニットに同じ醸造物(マッシュ)を供給し、醸造プロセスが並行して進行するように同じように扱った(メンテナンス時期については下記参照)。
【0027】
メンブレンの粘着性は、日毎または月毎のCIPの後に、ビール粕床をメンブレンから取り除くために必要とされる手動の作業支援を考慮に入れて分析した。結果を表3に示す。
【表3】
【0028】
表3の結果から、本発明のメンブレンは従来のメンブレンよりも、動作状態を通じて粘着性が小さいことがわかる。
【0029】
実施例3 メンブレンの耐久性の評価
実施例2において、濾過ユニットは、約90週間、濾過に使用され、マッシュを濾過するための4700回の醸造を行った。この間、比較例1に記載の従来のマッシュフィルターメンブレンの故障率は13 %(138のうち18)であったが、実施例1の本発明のマッシュフィルターメンブレンの故障率は0 %であった (138のうち0)。また、本発明のメンブレンではいずれも折れ目が見られなかったが、従来のフィルターでは顕著な折れ目が観察された。
【0030】
90週間で約2時間の醸造を4700回行った後、表1および表2に示したのと同様の方法により、両タイプのマッシュフィルターメンブレンのサンプルに対して、表4に示すメンブレン特性の分析を行った。
【表4】
【0031】
表2から、従来のメンブレンと本発明のメンブレンとを比較すると、本発明のメンブレンは顕著に高い強度を有し、これは時間経過してもほぼ一定に維持されるが、従来のメンブレンは初期からすでに低い強度と剛性がさらにある程度失われる。本発明のメンブレンの引き裂き強度は初期からより高く、これは4700回の醸造後も同様であり、また試験を行ったメンブレンの永久変形(圧縮永久歪み)は著しく小さく、この種の用途においては、圧縮永久歪みはできるだけ小さいことが好ましいので、このことは望ましい。