(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】シール材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20250207BHJP
C08L 27/12 20060101ALI20250207BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20250207BHJP
C08K 5/06 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
C09K3/10 M
C09K3/10 Q
C08L27/12
C08K3/36
C08K5/06
(21)【出願番号】P 2022161774
(22)【出願日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 龍平
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隆男
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-214743(JP,A)
【文献】特開2022-097403(JP,A)
【文献】特開2020-203444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素含有フッ素ゴムと、熱架橋剤と、耐ラジカル性向上剤と、を含有する未架橋ゴム組成物を
架橋させた架橋ゴム組成物で形成されたシール材であって、
前記耐ラジカル性向上剤は、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロ骨格の化合物を含み
かつ架橋剤を含まないA液と、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロ骨格の化合物及び架橋剤を含むB液とを有する二液型材料のうちの前記A液のみで構成され
、前記未架橋ゴム組成物には、前記二液型材料のうちの前記A液のみが添加され、前記B液が添加されていないシール材。
【請求項2】
請求項1に記載されたシール材において、
前記A液におけるシリカの含有量が25質量%以下であるシール材。
【請求項3】
請求項1に記載されたシール材において、
前記A液の23℃における粘度が40Pa・s以上1200Pa・s以下であるシール材。
【請求項4】
請求項1に記載されたシール材において、
前記未架橋ゴム組成物における前記A液の含有量が、前記水素含有フッ素ゴム100質量部に対して7質量部以上20質量部以下であるシール材。
【請求項5】
請求項1に記載されたシール材において、
前記未架橋ゴム組成物がポリビニリデンフルオロライドパウダーを分散して含有するシール材。
【請求項6】
請求項5に記載されたシール材において、
前記未架橋ゴム組成物における前記ポリビニリデンフルオロライドパウダーの含有量が、前記水素含有フッ素ゴム100質量部に対して1質量部以上12質量部以下であるシール材。
【請求項7】
請求項1に記載されたシール材において、
前記架橋ゴム組成物のJIS K6251に基づいて測定される引張強さが13MPa以上であるシール材。
【請求項8】
請求項1に記載されたシール材において、
前記架橋ゴム組成物のJIS K6262:2013に基づいて、試験時間72時間及び試験温度200℃として測定される圧縮永久ひずみが35%以下であるシール材。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載されたシール材の製造方法であって、
前記水素含有フッ素ゴムと、
前記熱架橋剤と、
前記耐ラジカル性向上剤と、を含有する
前記未架橋ゴム組成物を作製した後、前記未架橋ゴム組成物でシール材形状の未架橋成形体を成形し、前記未架橋成形体を加熱して前記水素含有フッ素ゴムを前記熱架橋剤で架橋させることにより成形品を得るシール材の製造方
法。
【請求項10】
請求項
9に記載されたシール材の製造方法において、
前記未架橋成形体を加熱して前記水素含有フッ素ゴムを前記熱架橋剤で架橋させて得た前記成形品には放射線の照射処理を行わないシール材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素含有フッ素ゴムの架橋ゴム組成物で形成されたシール材が知られている。例えば、特許文献1には、水素含有フッ素ゴムと、有機過酸化物と、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロ骨格の化合物を含む一液型材料とを含有する未架橋ゴム組成物を架橋させた架橋ゴム組成物で形成されたシール材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、耐ラジカル性が優れるシール材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、水素含有フッ素ゴムと、熱架橋剤と、耐ラジカル性向上剤とを含有する未架橋ゴム組成物を架橋させた架橋ゴム組成物で形成されたシール材であって、前記耐ラジカル性向上剤は、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロ骨格の化合物を含みかつ架橋剤を含まないA液と、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロ骨格の化合物及び架橋剤を含むB液とを有する二液型材料のうちの前記A液のみで構成され、前記未架橋ゴム組成物には、前記二液型材料のうちの前記A液のみが添加され、前記B液が添加されていない。
【0006】
本発明は、本発明のシール材の製造方法であって、前記水素含有フッ素ゴムと、前記熱架橋剤と、前記耐ラジカル性向上剤とを含有する前記未架橋ゴム組成物を作製した後、前記未架橋ゴム組成物でシール材形状の未架橋成形体を成形し、前記未架橋成形体を加熱して前記水素含有フッ素ゴムを前記熱架橋剤で架橋させることにより成形品を得る。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シール材の製造に用いる未架橋ゴム組成物に含有させる耐ラジカル性向上剤として、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロ骨格の化合物を含むA液と、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロ骨格の化合物及び架橋剤を含むB液とを有する二液型材料のうちのA液のみを用いることにより、優れた耐ラジカル性を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0009】
実施形態に係るシール材は、水素含有フッ素ゴムと、熱架橋剤と、耐ラジカル性向上剤とを含有する未架橋ゴム組成物を用いて製造されるものである。つまり、このシール材は、シール材形状の未架橋ゴム組成物の未架橋成形体を加熱して水素含有フッ素ゴムを熱架橋剤で架橋させた架橋ゴム組成物で形成されている。そして、ラジカル性向上剤は、分子内にアルケニル基を2個以上有するパーフルオロ骨格の化合物(以下「化合物X」という。)を含むA液と、化合物X及び架橋剤を含むB液とを有する二液型材料のうちの架橋剤を含まない前者のA液のみで構成されている。
【0010】
この実施形態に係るシール材によれば、シール材の製造に用いる未架橋ゴム組成物に含有させる耐ラジカル性向上剤として、化合物Xを含むA液と、化合物X及び架橋剤を含むB液とを有する二液型材料のうちのA液のみを用いることにより、優れた耐ラジカル性を得ることができる。そのため、このシール材は、例えば半導体のエッチング装置やプラズマCVD装置のようなプラズマを使用する半導体プロセス装置において好適に用いることができる。
【0011】
水素含有フッ素ゴムは、未架橋ゴム組成物及び架橋ゴム組成物におけるマトリクスのゴム成分を構成する。ここで、本出願における「水素含有フッ素ゴム」とは、高分子の主鎖に水素が結合した炭素が含まれたフッ素ゴムである。
【0012】
水素含有フッ素ゴムとしては、例えば、ビニリデンフルオライド(VDF)の重合体(PVDF)、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体、テトラフルオロエチレン(TFE)とプロピレン(Pr)との共重合体(FEP)、ビニリデンフルオライド(VDF)とプロピレン(Pr)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体、エチレン(E)とテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合体(ETFE)、エチレン(E)とテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)との共重合体、ビニリデンフルオライド(VDF)とテトラフルオロエチレン(TFE)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)との共重合体、ビニリデンフルオライド(VDF)とパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)との共重合体等が挙げられる。水素含有フッ素ゴムは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、単量体としてビニリデンフルオライド(VDF)を有するフッ化ビニリデン系ゴム(FKM)を含むことがより好ましい。
【0013】
熱架橋剤は、所定の温度に加熱されたときに水素含有フッ素ゴムを架橋させる。熱架橋剤としては、例えば、パーオキサイド、ポリオール、ポリアミン、トリアジン等が挙げられる。熱架橋剤は、プラズマ雰囲気下でのパーティクルの発生の原因となる受酸剤を用いる必要がないという観点から、これらのうちのパーオキサイドが好ましい。
【0014】
熱架橋剤のパーオキサイドとしては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-ヘキシン-3、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゼン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエイト等が挙げられる。熱架橋剤のパーオキサイドは、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンを含むことがより好ましい。
【0015】
未架橋ゴム組成物における熱架橋剤のパーオキサイドの含有量は、十分に架橋を進めるとともに、シール材として良好な物性を得るという観点から、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上2.5質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上2.0質量部以下である。
【0016】
耐ラジカル性向上剤は、実施形態に係るシール材の耐ラジカル性を向上させる。耐ラジカル性向上剤は、上記の通り、化合物Xを含むA液と、化合物X及び架橋剤を含むB液とを有する二液型材料のうちの架橋剤を含まない前者のA液のみで構成されている。市販の二液型材料としては、例えば、信越化学工業社製のSIFELシリーズのSIFEL3405A/B、SIFEL3505A/B、SIFEL3705A/B等が挙げられる。
【0017】
耐ラジカル性向上剤を構成するA液が含む化合物Xとしては、例えば、パーフルオロポリエーテル構造の化合物、パーフルオロアルキレン構造の化合物等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられる。アルケニル基は、これらのうちのビニル基が好ましい。なお、2個以上のアルケニル基は、同一であっても、また、異なっていても、どちらでもよい。
【0018】
耐ラジカル性向上剤を構成するA液が含有しない架橋剤としては、例えば、化合物Xが有するアルケニル基に反応するオルガノハイドロジェンポリシロキサン等が挙げられる。
【0019】
耐ラジカル性向上剤を構成するA液は、化合物X以外にシリカを含有していてもよい。A液におけるシリカの含有量は、優れた耐ラジカル性を得る観点から、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。A液は、その他に金属触媒等を含有していてもよい。
【0020】
耐ラジカル性向上剤を構成するA液の23℃における粘度は、優れた耐ラジカル性を得る観点から、好ましくは40Pa・s以上1200Pa・s以下、より好ましくは50Pa・s以上500Pa・s以下であり、更に好ましくは60Pa・s以上200Pa・s以下である。
【0021】
未架橋ゴム組成物における耐ラジカル性向上剤を構成するA液の含有量は、優れた耐プラズマ性を得る観点から、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは7質量部以上20質量部以下、より好ましくは10質量部以上15質量部以下である。
【0022】
未架橋ゴム組成物は、架橋助剤を更に含有していてもよい。架橋助剤は、水素含有フッ素ゴムが熱架橋剤により架橋するときに、水素含有フッ素ゴムの分子間に介在するように水素含有フッ素ゴムと結合する。
【0023】
架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5-トリス(2,3,3-トリフルオロ-2-プロペニル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリオン)、トリス(ジアリルアミン)-S-トリアジン、亜リン酸トリアリル、N,N-ジアリルアクリルアミド、1,6-ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N’,N’-テトラアリルフタルアミド、N,N,N’,N’-テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6-トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5-ノルボルネン-2-メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイト等が挙げられる。架橋助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を含むことが好ましく、優れた耐プラズマ性を得る観点から、トリアリルイソシアヌレートを含むことがより好ましい。
【0024】
未架橋ゴム組成物における架橋助剤の含有量は、優れた耐プラズマ性を得る観点から、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下、より好ましくは3質量部以上5質量部以下である。
【0025】
未架橋ゴム組成物は、パーティクルの放出による装置内汚染の問題が生じにくいことから、充填剤としてポリビニリデンフルオライドパウダー(PVDFパウダー)を分散して含有していてもよい。PVDFパウダーは、ビニリデンフルオライド(VDF)のホモポリマーで形成されていても、ビニリデンフルオライド(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)との共重合体で形成されていても、どちらでもよいが、優れた耐ラジカル性を得る観点から、前者が好ましい。
【0026】
PVDFパウダーの体積平均粒径は、優れた耐ラジカル性を得る観点から、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。PVDFパウダーの融点は、同様の観点から、165℃以上172℃以下であることが好ましい。PVDFパウダーの溶融粘度は、同様の観点から、35kpoise以上39kpoise以下であることが好ましい。この溶融粘度は、ASTM D3835に基づいて232℃及び100秒の条件で測定されるものである。
【0027】
未架橋ゴム組成物におけるPVDFパウダーの含有量は、優れた耐プラズマ性を得る観点から、水素含有フッ素ゴム100質量部に対して、好ましくは1質量部以上12質量部以下、より好ましくは3質量部以上7質量部以下である。
【0028】
未架橋ゴム組成物は、実施形態に係るシール材の用途が許容すれば、その他に水素含有フッ素ゴム以外のゴム成分、カーボンブラックなどの補強材、可塑剤、加工助剤、加硫促進剤、老化防止剤、界面活性剤等を含有していてもよい。
【0029】
実施形態に係るシール材を形成する架橋ゴム組成物の硬さは、好ましくは50A以上70A以下、より好ましくは55A以上65A以下である。この硬さは、JIS K6253-3:2012に基づいて、タイプAデュロメータで測定されるものである。
【0030】
実施形態に係るシール材を形成する架橋ゴム組成物の引張強さ(TB)は、好ましくは13MPa以上20MPa以下、より好ましくは14MPa以上16MPa以下である。切断時伸び(EB)は、好ましくは150%以上400%以下、より好ましくは250%以上350%以下である。100%モジュラス(M100:100%伸び時における引張応力)は、好ましくは1.5MPa以上3.5MPa以下、より好ましくは2MPa以上3.0MPa以下である。これらの引張強さ(TB)、切断時伸び(EB)、及び100%モジュラス(M100)は、JIS K6251に基づく引張試験で測定されるものである。
【0031】
実施形態に係るシール材を形成する架橋ゴム組成物の圧縮永久ひずみは、試験時間72時間及び試験温度200℃の場合、好ましくは15%以上50%以下、より好ましくは25%以上35%以下であり、試験時間72時間及び試験温度150℃の場合、好ましくは5%以上25%以下、より好ましくは10%以上20%以下である。これらの圧縮永久ひずみは、JIS K6262:2013に基づいて測定されるものである。
【0032】
次に、実施形態に係るシール材の製造方法について説明する。
【0033】
実施形態に係るシール材の製造では、まず、オープンロールなどの開放式のゴム混練機、或いは、ニーダーなどの密閉式のゴム混練機を用い、未架橋ゴム組成物を混練により作製する。
【0034】
その後、未架橋ゴム組成物の所定量を、予熱した金型のキャビティに充填して型締めし、その状態で、所定の成形温度及び所定の成形圧力で所定の成形時間だけ保持する。これにより、未架橋ゴム組成物をキャビティのシール材形状の未架橋成形体に成形し、そのシール材形状の未架橋成形体を加熱して水素含有フッ素ゴムを熱架橋剤で架橋させる。この成形は、プレス成形であってもよく、また、射出成形であってもよい。成形温度は、例えば150℃以上180℃以下である。成形圧力は、例えば0.1MPa以上25MPa以下である。成形時間は、例えば3分以上20分以下である。
【0035】
そして、金型を型開きして内部から実施形態に係るシール材を脱型して取り出す。
【0036】
なお、金型から脱型した成形品の実施形態に係るシール材に対して放射線を照射して後架橋を行ってもよい。この場合、放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、イオン等が挙げられる。放射線は、これらのうちの電子線又はγ線が好ましい。放射線の照射線量は20kGy以上100kGy以下が好ましい。しかしながら、優れた耐熱老化性を得る観点からは、未架橋成形体を加熱して水素含有フッ素ゴムを熱架橋剤で架橋させて得た成形品には、この放射線の照射処理を行わないことが好ましい。
【実施例】
【0037】
(架橋ゴム組成物)
以下の実施例及び比較例の架橋ゴム組成物を作製した。それぞれの構成については表1にも示す。
【0038】
<実施例1-1>
水素含有フッ素ゴムのFKM(テクノフロンP959 Solvay社製)100質量部に対し、熱架橋剤のパーオキサイド(パーヘキサ25B 日本油脂社製、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン)1.5質量部、化合物Xを含むA液と化合物X及び架橋剤を含むB液とを有する二液型材料1(SIFEL3405A/B 信越化学工業社製)のうちの架橋剤を含まないA液(シリカ含有量:8.3質量%、粘度(23℃):70Pa・s)12質量部、架橋助剤のトリアリルイソシアヌレート(TAIC 三菱ケミカル社製)4質量部、充填剤のPVDFパウダー(カイナーMG15 アルケマ社製、体積平均粒径:7.9μm、融点:165乃至172℃、溶融粘度:35kpoise乃至39kpoise)5質量部、及び界面活性剤0.5質量部を添加して混練することにより未架橋ゴム組成物を作製した。この未架橋ゴム組成物を加熱して水素含有フッ素ゴムのFKMを熱架橋剤のパーオキサイドで架橋させることにより得られた架橋ゴム組成物を実施例1-1とした。
【0039】
<実施例1-2>
実施例1-1の架橋ゴム組成物に対して30kGyのγ線を照射したものを実施例1-2とした。
【0040】
<比較例1-1及び1-2>
二液型材料1のA液に代えて、架橋剤を含むB液(シリカ含有量:10.6質量%、粘度(23℃):80Pa・s)を用いたことを除いて実施例1-1及び1-2と同様にして得られた架橋ゴム組成物を、それぞれ比較例1-1及び1-2とした。
【0041】
<比較例1-3及び1-4>
二液型材料1のA液の半分をB液に置き換え、A液及びB液の両方を用いたことを除いて実施例1-1及び1-2と同様にして得られた架橋ゴム組成物を、それぞれ比較例1-3及び1-4とした。
【0042】
<実施例2-1及び2-2>
二液型材料1のA液に代えて、二液型材料2(SIFEL3705A/B 信越化学工業社製)のうちの架橋剤を含まないA液(シリカ含有量:21.8質量%、粘度(23℃):1100Pa・s)を用いたことを除いて実施例1-1及び1-2と同様にして得られた架橋ゴム組成物を、それぞれ実施例2-1及び2-2とした。
【0043】
<参考例1及び2>
二液型材料1のA液に代えて、一液型材料(X-71-369 信越化学工業社製、シリカ含有量:10質量%、粘度(23℃):9Pa・s)を用いたことを除いて実施例1-1及び1-2と同様にして得られた架橋ゴム組成物を、それぞれ参考例1及び2とした。
【0044】
【0045】
(試験方法)
<硬さ>
各実施例及び各比較例並びに各参考例について、JIS K6253-3:2012に基づいて、タイプAデュロメータで硬さを測定した。
【0046】
<引張特性>
各実施例及び各比較例並びに各参考例について、JIS K6251に基づいて引張試験を行い、引張強さ(TB)、切断時伸び(EB)、及び100%モジュラス(M100)を測定した。
【0047】
<圧縮永久ひずみ>
各実施例及び各比較例並びに各参考例について、JIS K6262:2013に基づき、試験時間72時間及び試験温度200℃の場合、並びに試験時間72時間及び試験温度150℃の場合のそれぞれについて、圧縮永久ひずみ(CS)を測定した。
【0048】
<耐プラズマ性>
各実施例及び各比較例並びに各参考例について、マイクロ波プラズマ発生機を用いてO2プラズマを照射した。反応ガスとしてO2及びCF4を用い、それらの流量比を50:1とした。また、反応圧力を100Pa及びプラズマ照射時間を60分とした。そして、プラズマ照射開始からクラックが発生し始めるまでの時間を測定した。また、O2プラズマを60分間照射した後の質量減量率を求めた。
【0049】
(試験結果)
試験結果を表2に示す。
【0050】
【0051】
表2によれば、二液型材料1のA液のみを用いた実施例1-1及び1-2は、それぞれに対応するB液のみを用いた比較例1-1及び1-2、並びにA液及びB液の両方を用いた比較例1-3及び1-4と比べて、プラズマ照射開始からクラックが発生し始めるまでの時間が長く、したがって、耐プラズマ性が優れることが分かる。
【0052】
二液型材料1のA液のみを用いた実施例1-1及び1-2は、二液型材料2のA液のみを用いた実施例2-1及び2-2と比べて耐プラズマ性が優れることが分かる。
【0053】
γ線の照射処理を行っていない実施例1-1は、γ線の照射処理を行った実施例1-2と比べて、圧縮永久ひずみが小さく、したがって、耐熱老化性が優れることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、シール材及びその製造方法の技術分野について有用である。