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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】車両用収納装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/32 20140101AFI20250207BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20250207BHJP
   E05C 21/00 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
E05B83/32
B60R7/04 C
E05C21/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022179627
(22)【出願日】2022-11-09
(65)【公開番号】P2024068938
(43)【公開日】2024-05-21
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】508309887
【氏名又は名称】森六テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】洪 松
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103672(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0274270(US,A1)
【文献】特開2021-020637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
B60R 7/04
E05C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物を収納可能な収納箱と、前記収納箱の開口を開閉可能な蓋と、前記蓋をロック可能なロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
スイング可能に設けられ、前記蓋に接触して前記蓋をロック可能なロック位置と、ロックが解除された解除位置とに位置することが可能なロック部材と、
前記ロック部材が前記ロック位置へ向かってスイングできるように前記ロック部材に対して力を加えている付勢部材と、
前記付勢部材の力に抗して前記ロック部材を押す作用部を有し、前記蓋のロックを解除可能なボタンと、
前記ロック部材及び前記ボタンの双方を支持している支持部材と、を備えた車両用収納装置において、
前記支持部材は、前記ロック部材が前記ロック位置に留まることができるように前記ロック部材の位置を規制するストッパを備え、
前記ストッパは、前記支持部材と一体化され、
前記ボタンは、前記ロック部材が前記ロック位置にあるときに、前記ロック部材から離れており、
前記ロック部材は、
スイング中心となる軸からこの軸の径方向外側へ延びており、前記蓋に接触可能な蓋側スイング部と、
前記軸から前記蓋側スイング部が延びる方向と略反対側へ延びており、前記ボタンの前記作用部に押される被作用部を有するボタン側スイング部と、を備え、
前記ボタン側スイング部は、前記ストッパを受けるストッパ受け部を有している、車両用収納装置。
【請求項2】
前記軸の径方向を基準とすると、前記ボタン側スイング部の前記被作用部は、前記ストッパ受け部よりも径方向外側に位置している、請求項1に記載の車両用収納装置。
【請求項3】
物を収納可能な収納箱と、前記収納箱の開口を開閉可能な蓋と、前記蓋をロック可能なロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
スイング可能に設けられ、前記蓋に接触して前記蓋をロック可能なロック位置と、ロックが解除された解除位置とに位置することが可能なロック部材と、
前記ロック部材が前記ロック位置へ向かってスイングできるように前記ロック部材に対して力を加えている付勢部材と、
前記付勢部材の力に抗して前記ロック部材を押す作用部を有し、前記蓋のロックを解除可能なボタンと、
前記ロック部材及び前記ボタンの双方を支持している支持部材と、を備えた車両用収納装置において、
前記支持部材は、前記ロック部材が前記ロック位置に留まることができるように前記ロック部材の位置を規制するストッパを備え、
前記ストッパは、前記支持部材と一体化され、
前記ボタンは、前記ロック部材が前記ロック位置にあるときに、前記ロック部材から離れており、
前記ボタンは、前記支持部材に対してスライド可能な本体部と、前記本体部から下方へ延びている腕部と、を備え、
前記ボタンの前記作用部は、前記腕部の先端に位置している、車両用収納装置。
【請求項4】
物を収納可能な収納箱と、前記収納箱の開口を開閉可能な蓋と、前記蓋をロック可能なロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
スイング可能に設けられ、前記蓋に接触して前記蓋をロック可能なロック位置と、ロックが解除された解除位置とに位置することが可能なロック部材と、
前記ロック部材が前記ロック位置へ向かってスイングできるように前記ロック部材に対して力を加えている付勢部材と、
前記付勢部材の力に抗して前記ロック部材を押す作用部を有し、前記蓋のロックを解除可能なボタンと、
前記ロック部材及び前記ボタンの双方を支持している支持部材と、を備えた車両用収納装置において、
前記支持部材は、前記ロック部材が前記ロック位置に留まることができるように前記ロック部材の位置を規制するストッパを備え、
前記ストッパは、前記支持部材と一体化され、
前記ボタンは、前記ロック部材が前記ロック位置にあるときに、前記ロック部材から離れており、
前記支持部材は、前記ボタンの移動をガイド可能な一対のレール部を備え、
前記ボタンは、前記一対のレール部に対してスライド可能な一対のスライド部と、前記一対のスライド部の端部から互いに離れる方向へ突出して前記レール部から前記ボタンが抜けることを防ぐ前記一対の抜け止め部と、を備え、
各々の前記レール部は、前記スライド部を前後方向にガイド可能なレール側壁部と、各々の前記レール側壁部の上端から互いに近づく方向へ延びているレール上壁部と、を備え、
各々の前記レール上壁部は、前記ボタンを前記一対のレール部に組み付ける際に、前記抜け止め部が通過可能な組み付け溝を備えている、車両用収納装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記ボタンの移動をガイド可能な一対のレール部を備え、
前記ボタンは、前記一対のレール部に対してスライド可能な一対のスライド部と、前記一対のスライド部の端部から互いに離れる方向へ突出して前記レール部から前記ボタンが抜けることを防ぐ前記一対の抜け止め部と、を備え、
各々の前記レール部は、前記スライド部を前後方向にガイド可能なレール側壁部と、各々の前記レール側壁部の上端から互いに近づく方向へ延びているレール上壁部と、を備え、
各々の前記レール上壁部は、前記ボタンを前記一対のレール部に組み付ける際に、前記抜け止め部が通過可能な組み付け溝を備えている、請求項1~請求項3のいずれかに記載の車両用収納装置。
【請求項6】
前記スライド部と、前記抜け止め部との間には、前記抜け止め部が突出している方向へ開いている凹部が形成されており、
前記レール上壁部のうち、前記組み付け溝よりも前方の部位を上壁前部とし、
前記ボタンを使用する際の前記ボタンの移動方向を基準とすると、前記凹部の寸法は、前記上壁前部の寸法よりも大きい、請求項4に記載の車両用収納装置。
【請求項7】
前記スライド部と、前記抜け止め部との間には、前記抜け止め部が突出している方向へ開いている凹部が形成されており、
前記レール上壁部のうち、前記組み付け溝よりも前方の部位を上壁前部とし、
前記ボタンを使用する際の前記ボタンの移動方向を基準とすると、前記凹部の寸法は、前記上壁前部の寸法よりも大きい、請求項5に記載の車両用収納装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック機構を備えた車両用収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用自動車の車両には、乗員が物を収納可能な車両用収納装置を備えているものがある。センターコンソールに備えられた車両用収納装置に関する従来技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された車両用収納装置は、物を収納可能な収納箱と、収納箱の開口を開閉可能な蓋と、蓋をロック可能なロック機構と、を備えている。
【0004】
ロック機構は、蓋に係止可能な爪により蓋をロック可能なロック部材と、ロック部材の爪と反対側の部位を押すことによりロック部材をスイングさせ、爪が蓋から離れることにより蓋のロックを解除可能なボタンと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-020637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蓋をロックしている部材は、スイング可能なロック部材である。そのロック部材を支持している部材は、前後方向に移動可能なボタンである。さらに、ボタンには寸法公差が設定されている。即ち、ロック部材もボタンもその位置が変化する部材であり、ボタンには寸法のばらつきがある。ロックの確実性を改善する余地がある。
【0007】
本発明は、高いロック性能を備えた車両用収納装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1に、物を収納可能な収納箱と、前記収納箱の開口を開閉可能な蓋と、前記蓋をロック可能なロック機構と、を備え、
前記ロック機構は、
スイング可能に設けられ、前記蓋に接触して前記蓋をロック可能なロック位置と、ロックが解除された解除位置とに位置することが可能なロック部材と、
前記ロック部材が前記ロック位置へ向かってスイングできるように前記ロック部材に対して力を加えている付勢部材と、
前記付勢部材の力に抗して前記ロック部材を押す作用部を有し、前記蓋のロックを解除可能なボタンと、
前記ロック部材及び前記ボタンの双方を支持している支持部材と、を備えた車両用収納装置において、
前記支持部材は、前記ロック部材が前記ロック位置に留まることができるように前記ロック部材の位置を規制するストッパを備え、
前記ストッパは、前記支持部材と一体化され、
前記ボタンは、前記ロック部材が前記ロック位置にあるときに、前記ロック部材から離れている、車両用収納装置が提供される。
【0009】
第2に、好ましくは、第1に記載の車両用収納装置であって、前記ロック部材は、
スイング中心となる軸からこの軸の径方向外側へ延びており、前記蓋に接触可能な蓋側スイング部と、
前記軸から前記蓋側スイング部が延びる方向と略反対側へ延びており、前記ボタンの前記作用部に押される被作用部を有するボタン側スイング部と、を備え、
前記ボタン側スイング部は、前記ストッパを受けるストッパ受け部を有している。
【0010】
第3に、好ましくは、第2に記載の車両用収納装置であって、前記軸の径方向を基準とすると、前記ボタン側スイング部の前記被作用部は、前記ストッパ受け部よりも径方向外側に位置している。
【0011】
第4に、好ましくは、第1に記載の車両用収納装置であって、前記ボタンは、前記支持部材に対してスライド可能な本体部と、前記本体部から下方へ延びている腕部と、を備え、
前記ボタンの前記作用部は、前記腕部の先端に位置している。
【0012】
第5に、好ましくは、第1~第4のいずれかに記載の車両用収納装置であって、前記支持部材は、前記ボタンの移動をガイド可能な一対のレール部を備え、
前記ボタンは、前記一対のレール部に対してスライド可能な一対のスライド部と、前記一対のスライド部の端部から互いに離れる方向へ突出して前記レール部から前記ボタンが抜けることを防ぐ前記一対の抜け止め部と、を備え、
各々の前記レール部は、前記スライド部を前後方向にガイド可能なレール側壁部と、各々の前記レール側壁部の上端から互いに近づく方向へ延びているレール上壁部と、を備え、
各々の前記レール上壁部は、前記ボタンを前記一対のレール部に組み付ける際に、前記抜け止め部が通過可能な組み付け溝を備えている。
【0013】
第6に、好ましくは、第5に記載の車両用収納装置であって、前記スライド部と、前記抜け止め部との間には、前記抜け止め部が突出している方向へ開いている凹部が形成されており、
前記レール上壁部のうち、前記組み付け溝よりも前方の部位を上壁前部とし、
前記ボタンを使用する際の前記ボタンの移動方向を基準とすると、前記凹部の寸法は、前記上壁前部の寸法よりも大きい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、高いロック性能を備えた車両用収納装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1Aは、実施例による車両用収納装置を備えたセンターコンソールの斜視図である。図1Bは、図1の1B-1B線断面図である。
図2】ロック機構の断面図である。
図3】ロック機構の分解斜視図である。
図4図4Aは、支持部材の組み付け溝の上方にボタンの抜け止め部が位置した状態を説明する図である。図4Bは、ボタンの抜け止め部が支持部材の組み付け溝を通過した状態を説明する図である。図4Cは、支持部材に対してボタンの組み付けが完了した図である。
図5図5Aは、ボタンの抜け止め部が支持部材の組み付け溝を通過した状態の平面図である。図5Aの5B-5B線断面図である。
図6図6Aは、抜け止め部がレールの後端に接触した状態を説明する図である。図6Bは、抜け止め部がレールの後端の傾斜面を乗り越えている状態を説明する図である。図6Cは、支持部材に対してボタンの組み付けが完了した際の、抜け止め部とレールの後端との状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付図に基づいて実施例を説明する。なお、左右とは車両の乗員を基準として左右(車幅方向)、前後とは車両の進行方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0017】
<実施例>
図1Aには、乗用自動車の運転席と助手席の間に配置可能なセンターコンソール10が示されている。センターコンソール10は、実施例による車両用収納装置11をその後部に備えている。
【0018】
図1Bを参照する。車両用収納装置11は、上方に開いている開口21を有し物を収納可能な略ブロック状の収納箱20と、収納箱20の開口21を開閉可能な蓋30と、を備えている。
【0019】
蓋30は、開口21を塞いでおり収納箱20と共に収納空間を画定している基材31と、基材31の上面に重ね合わされたクッション材を覆っている表皮32と、を備えている。基材31は、基材31の後端を中心にスイング可能となるように、収納箱20に支持されている。
【0020】
基材31の前端31aと、収納箱20の前壁22の上端22aとは、前端31a及び上端22aの前方に設けられたロック機構12によりロック可能である。ロック機構12を支持する構成についての説明は省略する。
【0021】
[ロック機構12]
図2を参照する。ロック機構12は、基材31の前端31aに接触して蓋30をロック可能なロック部材40と、ロック部材40が蓋30をロックできるようにロック部材40に対して力を加えているねじりコイルばね13(付勢部材)と、ねじりコイルばね13の力に抗してロック部材40を押すことにより蓋30のロックを解除可能なボタン50と、ボタン50が押される方向と反対側へボタン50に対して力を加えている圧縮コイルばね14と、ロック部材40及びボタン50を支持している支持部材15と、を備えている。
【0022】
[ロック部材40]
ロック部材40は、支持部材15に回転可能に支持された2つの軸41,41(図3参照)と、軸41から蓋30に近づく方向(上方)へ延び軸41を中心にスイング可能な蓋側スイング部42と、軸41から蓋側スイング部42が延びる方向と略反対側(下方)へ延びて軸41を中心にスイング可能であり、ボタン50に押されることが可能なボタン側スイング部44と、が一体となり構成されている。
【0023】
[蓋側スイング部42]
蓋側スイング部42の先端は、その先端から後方へ突出し基材31の前端31aと係止可能な爪43を有している。
【0024】
[ボタン側スイング部44]
ボタン側スイング部44は、前方を向いておりボタン50に押される平面状の被作用部46と、被作用部46よりも軸41に近い部位から前方へ突出しており後述するストッパ86を受ける板状のストッパ受け部47と、を有している。ストッパ受け部47は、被作用部46に対して略直交している。被作用部46及びストッパ受け部47は、単一のフェルト49に覆われている。
【0025】
[ねじりコイルばね13(付勢部材)]
ねじりコイルばね13は、ロック部材40の軸41を中心に配されている。ねじりコイルばね13は支持部材15に支持されていると共にボタン側スイング部44に支持されている。
【0026】
[ボタン50]
ボタン50は、乗員に押されて後方へ移動可能であると共に圧縮コイルばね14に押されて前方へ移動可能である。
【0027】
[本体部51、腕部56]
図2及び図3を参照する。ボタン50は、支持部材15に対してスライド可能な本体部51と、本体部51を覆っているカバー部材52と、本体部51から下方(本体部51の移動方向に対して略直交する方向)へ延びている腕部56と、を有している。
【0028】
本体部51は、支持部材15の底面82に対してスライド可能な板状のボタン下壁部60と、ボタン下壁部60の前端から上方へ延びている板状のボタン前壁部53と、ボタン前壁部53の上端からロック部材40側へ延びている板状のボタン上壁部55と、を有している。
【0029】
ボタン前壁部53は、圧縮コイルばね14の前端を支持可能である。さらに、ボタン前壁部53は、ボタン前壁部53から後方へ突出して圧縮コイルばね14の内周面を支持可能な柱状の前端支持部54を有している。
【0030】
[作用部57]
腕部56は、ボタン下壁部60の後端61から下方へ延びている。腕部56の先端は、フェルト49を介して、ボタン側スイング部44の被作用部46を押すことが可能な作用部57を有している。作用部57は、腕部56の先端からボタン側スイング部44の被作用部46へ突出している。なお、作用部57は、突出していなくても構わない。必要に応じて、被作用部46を突出させてもよい。よって、作用部57と被作用部46は実施例に限定されない。
【0031】
[支持部材15]
図3を参照する。支持部材15は、ロック部材40を支持しているロック部材支持部70と、ロック部材支持部70の前方に位置しボタン50を支持しているボタン支持部80と、が一体となり構成されている。
【0032】
[ロック部材支持部70]
ロック部材支持部70は、ロック部材40の軸41を支持可能な軸孔71を有する板状の一対の軸支持部72,72と、一対の軸支持部72,72の後端同士を接続していると共にねじりコイルばね13を支持している板状のばね支持部73と、を有している。
【0033】
[ボタン支持部80]
ボタン支持部80は、ボタン下壁部60がスライド可能な底面82を有する底部81と、底部81に設けられボタン50の前後方向の移動をガイド可能な一対のレール部90,90と、底部81の後端から上方へ延びて圧縮コイルばね14の後端を支持可能な後端支持部83と、を有している。底部81は、ボタン50の腕部56が貫通している矩形状の貫通孔84を有している。貫通孔84は、ボタン50が移動する際に腕部56と干渉しないように設定されている。貫通孔84は、後端支持部83よりも前方に位置している。
【0034】
[ボタン50とロック部材40の大きさ・位置]
図2を参照する。上下方向を基準として、ボタン50の寸法と、ロック部材40の寸法は略同一である。即ち、ボタン上壁部55の後方には、ロック部材40の蓋側スイング部42の上端が位置している。ボタン50の作用部57の後方には、ボタン50側延出部の先端付近に設けられた被作用部46が位置している。圧縮コイルばね14の中心線CLは、前上がり方向(前方に向かうに上昇)に延びている。ロック部材40の軸41は、中心線よりも下方に位置している。
【0035】
[ロック位置]
蓋30の基材31の前端31aに対して爪43の下端面43aが接触して蓋30の上方へのスイングが規制された位置をロック位置とする。
【0036】
[ストッパ86]
ロック部材40は、ストッパ86によりロック位置に留められている。ストッパ86は、ボタン支持部80の後端支持部83から下方へ延びて形成され、ボタン支持部80と一体化されている。ストッパ86は、フェルト49を介して、ボタン側スイング部44のストッパ86受け部47に接触可能な接触面87を有している。接触面87は下方を向いており、ストッパ受け部47に対して面接触可能である。なお、接触面87にリブ等を形成し、線接触可能としても良い。ボタン50の作用部57は、ロック部材40がロック位置にあるとき、ロック部材40の被作用部46から離れている。
【0037】
[解除位置]
鎖線で示されたロック部材40’は、蓋30のロックが解除された解除位置に位置している。解除位置では、ボタン50の作用部57がロック部材40の被作用部46に押されていると共に、爪43が蓋30から離れている。
【0038】
[スライド部62、抜け止め部65]
図3を参照する。ボタン下壁部60は、ボタン50を操作する際に一対のレール部90に対してスライド可能な一対のスライド部62,62を有している。さらに、ボタン下壁部60は、その後端の左右両端から後方へ延出している一対の延出部64,64を有している。一対の延出部64,64は、その先端から車幅方向外側へ突出してレール部90,90からボタン50が抜けることを防ぐ抜け止め部65,65を有している。抜け止め部65とスライド部62との間には、車幅方向外側に開いている凹部69が形成されている。
【0039】
[レール部90]
各々のレール部90は、底部81から上方へ延びてボタン50の前後方向への移動をガイドするレール側壁部91と、レール側壁部91の上端から車幅方向内側へ延びてボタン50の上方への移動を規制するレール上壁部96と、を有している。
【0040】
[組み付け溝98]
各々のレール上壁部96は、ボタン50をレール90,90に組み付ける際に抜け止め部65が通過可能な組み付け溝98を有している。組み付け溝98は、レール上壁部96に上下方向に延びて形成されている。
【0041】
[組み付け溝98によるボタン50の組付け]
図4Aを参照する。最初に、ボタン50の腕部56を底部81の貫通孔84(図2参照)の内部に位置させると共に、組み付け溝98の上方に抜け止め部65を位置させる。次に、ボタン50を下方へ移動させる。
【0042】
図4Bを参照する。抜け止め部65は、組み付け溝98を通過しボタン支持部80の底部81の底面82(図5B参照)に接触する。
【0043】
図4Cを参照する。最後に、抜け止め部65,65全体がレール側壁部91,91よりも後方へ突出するまで、ボタン50を後方へ押し込む。図4Cに示すボタン50の位置は、図2に示すボタン50の位置と同一である。ボタン50は、移動可能な範囲のうち最も前方に位置している。
【0044】
[凹部69の幅]
上記の組付けについて補足する。図5A及び図5Bを参照する。レール上壁部96のうち、組み付け溝98よりも前方の部位を上壁前部97とする。ボタン50を使用する際のボタン50の移動方向(前後方向)を基準として、凹部69の寸法L1は、上壁前部97の寸法L2よりも広い(L1>L2)。
【0045】
レール側壁部91は、抜け止め部65の側面66を前後方向にガイド可能(図4B図4Cを参照)な抜け止め部ガイド面92を有している。図5Bを参照する。抜け止め部ガイド面92と、組み付け溝98の底面99とは、略同一平面上に位置している。抜け止め部65が組み付け溝98を通過し、ボタン支持部80の底面82に接触するまで、延出部64は撓まない。
【0046】
図6Aを参照する。抜け止め部ガイド面92の後端は、後方に向かうに連れて車幅方向内側へ向かう傾斜面93を有している。
【0047】
図5Aに示す状態から、ボタン50を後方へ押し込むと、抜け止め部65の面取りされた角は傾斜面93に接触する。さらにボタン50を後方へ押し込むと、図6Bに示されるように、延出部64は車幅方向内側へ撓み、抜け止め部65は傾斜面93をスライドする。
【0048】
さらにボタン50を後方へ押し込むと、抜け止め部65は、傾斜面93を乗り越え、図6Cに示すように、抜け止め部65の前面65aと、レール側壁部91の後面94とが接触する。抜け止め部65は、ボタン50の前方への移動を規制する。
【0049】
なお、レール側壁部90は、ボタン50が操作される際に、スライド部62をガイド可能なスライド部ガイド面95を有している。スライド部ガイド面95は、抜け止め部ガイド面92よりも前方に位置している。スライド部ガイド面95は、抜け止め部ガイド面92よりも車幅方向内側に位置している。また、図5Aに示されるように、レール上壁部96のうち、組み付け溝98よりも後方の部位を上壁後部100とする。車幅方向(左右方向)を基準として、上壁後部100の寸法L3は、上壁前部97の寸法L4よりも広い(L3>L4)。
【0050】
[第1の効果]
図2を参照する。ロック機構12は、スイング可能に設けられて蓋30に接触して蓋30をロック可能なロック位置に位置することが可能なロック部材40と、ロック部材40がロック位置へ向かってスイングできるようにロック部材40に対して力を加えているねじりコイルばね13と、ねじりコイルばね13の力に抗してロック部材40を押す作用部57を有し蓋30のロックを解除可能なボタン50と、ロック部材40及びボタン50の双方を支持している支持部材15と、を備えている。
【0051】
支持部材15は、ロック部材40が位置に留まることができるようにロック部材40の位置を規制するストッパ86を備えている。ストッパ86は、支持部材15と一体化されている。ボタン50は、ロック部材40がロック位置にあるときに、ロック部材40から離れている。
【0052】
即ち、ストッパ86は、支持部材15に組み付けられておらず、かつ、移動しない部位である。ロック部材40を支持している支持部材15の一部がロック部材40をロック位置に留めており、かつ、ボタン50はロック部材40による蓋30のロックに関与していない。したがって、ロック部材40をより確実に所定のロック位置に留めておくことができ、高いロック性能を備えた車両用収納装置11を提供できる。
【0053】
[第2の効果]
ロック部材40は、スイング中心となる軸41から軸41の径方向外側へ延びており、蓋30に接触可能な蓋側スイング部42と、軸41から蓋側スイング部42が延びる方向と略反対側へ延びており、ボタン50の作用部57に押される被作用部46を有するボタン側スイング部44と、を備えている。ボタン側スイング部44は、ストッパ86を受けるストッパ受け部47を有している。
【0054】
ストッパ受け部47は、例えば、蓋側スイング部42に接触可能となるように設けても良いが、収納箱20のスペースに影響を与えるおそれがある。実施例では、ストッパ受け部47は、ボタン側スイング部44に設けられているため、収納箱20のスペースに影響を与えない。また、ストッパ86が荷重負荷方向に延びる板状を呈している為、剛性が強く、ストッパ受け部47を安定的に支持できる。前後方向のスペースもコンパクトにできる。
【0055】
さらに、上記の構成では、ストッパ受け部47と、被作用部46とが、互いに近くに位置する。そのため、ストッパ受け部47と、被作用部46とを、単一のフェルト49により覆うことができる。フェルト49のなかの、ストッパ受け部47を覆う部位と、被作用部46を覆う部位とは、別体としても良く、さらに、被作用部46をフェルト49で覆わなくても構わない。
【0056】
[第3の効果]
軸41の径方向を基準とすると、ボタン側スイング部44の被作用部46は、ストッパ受け部47よりも径方向外側に位置している。即ち、被作用部46は、軸41から離れた箇所に設けられている。小さな力でロック部材40をスイングさせることができ、ロックの解除が容易となる。
【0057】
[第4の効果]
ボタン50は、支持部材15に対してスライド可能な本体部51と、本体部51から下方へ延びている腕部56と、を備えている。ボタン50の作用部57は、腕部56の先端に位置している。ボタン50に腕部56を設けなくても良いが、仮に腕部56がない場合、被作用部46の前方にボタン50の本体部51が位置することとなり、ボタン50の本体部51は、蓋30の前端30aから下方へ離れてしまう。
【0058】
一方、腕部56を設ければ、ボタン50の本体部51が、蓋30の前端に近づく。車両用収納装置11をセンターコンソール10に設けた場合、肘をかけたままボタン50を押しやすくする。また、ロック部材40の係合する位置を操作面に近づけられる。
【0059】
[第5の効果]
図3を参照する。支持部材15は、ボタン50の移動をガイド可能な一対のレール部90を備えている。ボタン50は、一対のレール部90に対してスライド可能な一対のスライド部62と、一対のスライド部62の端部から互いに離れる方向へ突出してレール部90からボタン50が抜けることを防ぐ一対の抜け止め部65と、を備えている。各々のレール部90は、スライド部62を前後方向にガイド可能なレール側壁部91と、各々のレール側壁部91の上端から互いに近づく方向へ延びているレール上壁部96と、を備えている。各々のレール上壁部96は、ボタン50を一対のレール部90に組み付ける際に、抜け止め部65が通過可能な組み付け溝98を備えている。
【0060】
仮に、レール部90の前端を入口としてボタン50を支持部材15に組み付ける場合、抜け止め部65の位置をレール部90の前端に合わせ、かつ、抜け止め部65がレールにスライドできるように延出部64同士を撓ませる必要があり、所定の労力を要する。
【0061】
一方、実施例のレール部90は、組み付け溝98を有しており、ボタン50をレールに組み付ける際に組み付け溝98に対して抜け止め部65の位置を合わせるだけで足りる。延出部64を撓ませる必要がなくなり、最小限の力で組み付けが可能となり、スライドのガイド性を維持しながら組付け性が向上する。
【0062】
さらに、レール部90の前端を入口としてボタン50を組み付ける場合、腕部56が支持部材15に接触しないために貫通孔84を大きく設定する必要があるため、支持部材15が大型化してしまう。上記の構成ならば、支持部材15を大型化させずに、省スペースで対応可能である。
【0063】
[第6の効果]
図5Aを参照する。スライド部62と、抜け止め部65との間には、抜け止め部65が突出している方向へ開いている凹部69が形成されている。レール上壁部96のうち、組み付け溝98よりも前方の部位を上壁前部97とする。ボタン50を使用する際のボタン50の移動方向を基準とすると、凹部69の寸法は、上壁前部97の寸法よりも大きい。そのため、ガイド性を維持したまま、省スペースで対応できる。
【0064】
なお、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の車両用収納装置は、乗用車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0066】
11…車両用収納装置
12…ロック機構
13…ねじりコイルばね(付勢部材)
15…支持部材
20…収納箱
21…開口
30…蓋
40…ロック部材
41…軸
42…蓋側スイング部
44…ボタン側スイング部
46…被作用部
47…ストッパ受け部
50…ボタン
51…本体部
56…腕部
57…作用部
62…スライド部
65…抜け止め部
69…凹部
86…ストッパ
90…レール部
91…レール側壁部
96…レール上壁部
97…上壁前部
98…組み付け溝
L1…凹部の寸法
L2…上壁前部の寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6