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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/04 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
B62D1/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022210138
(22)【出願日】2022-12-27
(65)【公開番号】P2024093629
(43)【公開日】2024-07-09
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/230591(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0137414(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017007841(DE,A1)
【文献】特開2020-063016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵中立状態で上部となる領域が途切れた非環状のリム部と、
操舵中立状態で車幅方向となる方向に沿って延在し、車幅方向外側の端部が前記リム部に連結されるスポーク部と、を備え、
前記リム部は、前記スポーク部と交差する交差領域から操舵中立状態で上方となる側に向かって突出する突出部を備え、
前記突出部は、前記交差領域の車両後方側に向く面から操舵中立状態で上方となる側に向かって車両後方側に傾斜する傾斜後面と、前記交差領域の車両前方側に向く面から操舵中立状態で上方となる側に向かって車両前方側に傾斜する傾斜前面の少なくともいずれか一方を有し、
前記突出部は、操舵中立状態での車幅方向の幅が、突出方向の端部に向かって広がっていることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記リム部は、前記交差領域から操舵中立状態で下方となる側に延出する下延出部を備え、
前記下延出部の車両後方側に向く後面は、前記交差領域の車両後方側に向く面から操舵中立状態で下方となる側に向かって車両後方側に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記突出部のうちの操舵中立状態で上方を向く面は、平坦面とされていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項4】
前記突出部の車両後方側に向く面と車両前方側に向く面は、当該突出部の突出方向に向かって車両前後方向の同側に傾斜していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般の車両のステアリングホイールは、ステアリングシャフトに支持されるハブ部と、運転者が把持する円環状のリム部と、ハブ部とリム部を連結するスポーク部と、を備えている。近年、前方視認性の確保等の観点から、非環状のリム部を備えたステアリングホイールが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のステアリングホイールとして、リム部が略半円状、若しくは、横長の略半楕円状に形成され、操舵中立状態において、リム部の上部となる領域が存在しないものがある。このステアリングホイールでは、操舵中立状態で車幅方向となる方向に沿ってスポーク部が延在し、スポーク部の延在方向の端部がリム部の左右の各上端部領域に連結されている。
このステアリングホイールの場合、リム部は、操舵中立状態で上部となる領域(ハブ部の上方に配置される部分)が存在しないため、前方を視認する運転者の視界をリム部が遮らなくなり、運転者の前方視認性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-69717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のステアリング装置は、操舵中立状態で、運転者がリム部の左右の側縁部の上部を把持したときに、運転者の親指を回し込む位置にスポーク部が存在するため、運転者が不自然な指位置のままスポーク部を把持せざるを得ない場合が多い。
【0006】
また、上記従来のステアリング装置は、操舵中立状態で、リム部の左右のスポーク部との交差領域よりも上方側にリム部が存在しない。このため、リム部のうちの左右のスポーク部との交差領域の近傍を運転者が把持してリム部を旋回操作するときには、運転者は把持部の位置ずれが生じないように慎重な旋回操作を強いられる。すなわち、運転者がリム部を旋回操作するときには、上方に押し回そうとする運転者の手がリム部の端部から押し回し方向にずれ易く、運転者はこの押し回し方向のずれが生じないように慎重な旋回操作を強いられる。
【0007】
そこで本発明は、操舵中立状態での運転者の良好な前方視認性を確保しつつ、運転者による無理のない自然なリム部の把持と、良好な旋回操作を得ることができるステアリングホイールを提供しようとするものである。そして、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係るステアリングホイールは、操舵中立状態で上部となる領域が途切れた非環状のリム部(例えば、実施形態のリム部11)と、操舵中立状態で車幅方向となる方向に沿って延在し、車幅方向外側の端部が前記リム部に連結されるスポーク部(例えば、実施形態のスポーク部12)と、を備え、前記リム部は、前記スポーク部と交差する交差領域(例えば、実施形態の交差領域13)から操舵中立状態で上方となる側に向かって突出する突出部(例えば、実施形態の突出部15)を備え、前記突出部は、前記交差領域の車両後方側に向く面から操舵中立状態で上方となる側に向かって車両後方側に傾斜する傾斜後面(例えば、実施形態の後面15r)と、前記交差領域の車両前方側に向く面から操舵中立状態で上方となる側に向かって車両前方側に傾斜する傾斜前面(例えば、実施形態の前面15f)の少なくともいずれか一方を有し、前記突出部は、操舵中立状態での車幅方向の幅が、突出方向の端部に向かって広がっていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成のステアリングホイールは、操舵中立状態のときには、リム部の上部の途切れた部分が運転者の視線の前方位置に位置されることになる。このため、ステアリングホイールが運転者の前方視線を遮らなくなり、運転者の視認性が良好になる。
また、運転者は、手の親指を突出部の基部の内側に回し込み、その状態で親指以外の指でリム部のスポーク部との交差領域を把持することができる。このため、運転者は、手に無理な力のかからない自然な状態でステアリングを安定して把持することが可能になる。
また、上記のようにして運転者がリム部を把持すると、把持した部分の直上部に突出部の傾斜後面または傾斜前面が位置されることになる。このため、この状態で運転者が操舵中立状態から一方向にリム部を旋回させるときには、突出部の傾斜後面や傾斜前面が抵抗となり、上方に押し回す側の手が旋回操作方向に位置ずれし難くなる。
また、この場合、運転者が親指を突出部の基部側の内側に回し込んでリム部のスポーク部との交差領域を把持すると、操舵中立状態では、突出部の幅の増大する側が運転者の把持位置の上方側に位置されることになる。このとき、突出部の基部側は幅が相対的に狭いため、突出部が運転者によるリム部の把持を阻害することがない。また、突出部は、突出端側に向かって幅が増大しているため、運転者がリム部のスポーク部との交差領域を把持した状態でステアリングホイールを旋回操作する際には、上方に押し回す側の運転者の把持部の位置ずれを突出部によってより確実に阻止することができる。
【0010】
前記リム部は、前記交差領域から操舵中立状態で下方となる側に延出する下延出部(例えば、実施形態の下延出部14)を備え、前記下延出部の車両後方側に向く後面は、前記交差領域の車両後方側に向く面から操舵中立状態で下方となる側に向かって車両後方側に傾斜するようにしても良い。
【0011】
この場合、リム部の交差領域を把持した運転者が操舵中立状態から一方向にリム部を旋回させるときには、上方に押し回そうとする運転者の手の平の腹部分が、手首を略直角に曲げた状態で下延出部の後面の傾斜部分に押し当てられるようになる。このため、運転者は旋回操作方向への把持部のずれを抑制した状態で、リム部を容易に旋回操作することが可能になる。
【0014】
前記突出部のうちの操舵中立状態で上方を向く面(例えば、実施形態の上端面15u)は、平坦面であることが望ましい。
【0015】
この場合、運転者が突出部を直接把持するときに、人差指や中指の一部を突出部の上部の平坦面に安定して載せ置くことができる。こうして、人差指や中指の一部を突出部の上部の平坦面に載せ置くことにより、突出部に対する指掛かりが良好になる。したがって、本構成を採用した場合には、突出部を把持するときの把持状態が安定する。
【0016】
前記突出部の車両後方側に向く面と車両前方側に向く面は、当該突出部の突出方向に向かって車両前後方向の同側に傾斜することが望ましい。
【0017】
この場合、突出部の車両前後方向の厚みが厚くなり過ぎないため、運転者が突出部を直接把持するときにも、把持のし易さを損なうことがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るステアリングホイールは、リム部の突出部が傾斜後面と傾斜前面の少なくともいずれか一方を有する。このため、本発明に係るステアリングホイールを採用した場合には、操舵中立状態での運転者の良好な前方視認性を確保しつつ、運転者による無理のない自然なリム部の把持と、良好な旋回操作を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】運転席の前方に配置された実施形態のステアリングホイールの正面図。
図2】実施形態のステアリングホイールの側面図
図3】実施形態のステアリングホイールの正面図。
図4】実施形態のステアリングホイールの把持状態を示す正面図。
図5】実施形態のステアリングホイールの別の把持状態を示す正面図。
図6】他の実施形態1のテアリングホイールの側面図。
図7】他の実施形態2のテアリングホイールの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下で説明する各実施形態では、共通部分に同一符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。また、図面の適所には、車両の前方を指す矢印FRと、車両の上方を指す矢印UPと、車両の左側方を指す矢印LHが記されている。
【0021】
図1は、車両の運転席の前方に配置された本実施形態のステアリングホイール1の正面図である。図2は、ステアリングホイール1の側面図である。
ステアリングホイール1は、図示しないステアリングシャフトに支持されたハブ部10と、運転者が把持する非環状のリム部11と、ハブ部10とリム部11を連結する三つのスポーク部12と、を備えている。ステアリングホイール1の車両前方側には、インストルメントパネル2が配置されている。インストルメントパネル2には、車速等の車両情報やその他の情報を表示する表示部2a~2cが運転者の方向(車両後方側)を向いて配置されている。
【0022】
ハブ部10は、運転席に着座した運転者と正対するように配置されている。本実施形態では、ハブ部10は、操舵中立状態のときに、正面視が横長の略楕円形状となる形状に形成されている。ハブ部10には、図示しないホーンとエアバッグ装置が内蔵されている。
なお、本明細書において、「操舵中立状態」とは、車両の操舵輪が直進方向を向くときの操舵状態(ステアリングホイール1の回転位置)を意味する。また、以下では、ステアリングホイール1に関する「上」「下」や「車幅方向」等の用語は、特別に断らない限りステアリングホイール1が操舵中立状態であるときの方向を意味するものとする。
【0023】
リム部11は、操舵中立状態で上部となる領域が途切れた非環状形状とされている。リム部11は、ハブ部10の下方において車幅方向に沿って延びる下辺部11aと、下辺部11aの車幅方向の両端部から上方に延出する一対の側辺部11bと、を備えている。下辺部11aの両側の端部は、上方側に円弧状に湾曲して各側辺部11bの下端に連続している。
【0024】
スポーク部12は、操舵中立状態でハブ部10から車幅方向に沿って延在する一対の側部スポーク部12sと、操舵中立状態でハブ部10から下方に向かって延びる下スポーク部12lと、を備えている。側部スポーク部12sは、ハブ部10の側端部から車幅方向外側に向かって若干下方に傾斜して延びている。各側部スポーク部12sの延出方向の端部は、リム部11の側辺部11bに連結されている。
【0025】
ここで、リム部11の各側辺部11bは、側部スポーク部12sの延出端と交差する交差領域13と、交差領域13から下方に延び、下端が下辺部11aに連結される下延出部14と、交差領域13から上方に向かって突出する突出部15と、を備えている。側辺部11bの詳細形状については後に詳述するが、側辺部11bの全体形状は概ね正面視で略円弧形状に形成されている。
なお、交差領域13とは、リム部11の各側辺部11bのうちの、側部スポーク部12sの上辺の延長線と下辺の延長線に挟まれた領域を意味する。
【0026】
また、各側部スポーク部12sは、当該側部スポーク部12sの延在方向に沿って延び、かつ運転者側(車両後方側)に向く変曲部16と、変曲部16から上方に向かって車両前方側に湾曲して延びる上斜面17と、変曲部16から下方に向かって車両前方側に湾曲して延びる下斜面18と、を備えている。変曲部16は、側部スポーク部12sの延在方向と交差する断面のうちの最も運転者側(車両後方側)に膨出する部分である。変曲部16は、最も運転者側(車両後方側)に膨出する部分が側部スポーク部12sの延在方向に沿って延び、リム部11の交差領域13の後面13rに連続している。
本実施形態の場合、変曲部16は、ある程度の上下幅を持つ帯状形状とされている。ただし、変曲部16は、上下幅を殆ど持たない線状のものであっても良い。
【0027】
側部スポーク部12sの上斜面17は、車両前方側に湾曲する部分の曲率半径が、下斜面18の車両前方側に湾曲する部分の曲率半径よりも大きく設定されている。また、上斜面17は、正面視で側部スポーク部12sの延在方向に沿って直線状に延びる主部領域17aと、主部領域17aのリム部11側の端部から上方側に凹状に湾曲して延びる連接部領域17bと、を備えている。主部領域17aは、変曲部16に近接した部分は、車両前方側に湾曲しているが、その湾曲部よりも車両前方側はほぼ平坦に形成されている。また、連接部領域17bの正面視での円弧は、奥行き方向の奥側から手前側に向かって(車両前方側から後方側に向かって)曲率半径が漸増している。
【0028】
リム部11の各側辺部11bのうちの、交差領域13から上方に突出する突出部15は、車幅方向の幅が突出方向の端部(上端部)に向かって漸次増大している。特に、突出部15の車幅方向の内側の端部である内側端部15ieは、交差領域13との連接部から上方に向かって車幅方向の内側に略一定角度で傾斜している。つまり、突出部15の内側端部15ieは、上方側に向かって迫り出し幅が漸増するように車幅方向内側に迫り出している。
【0029】
また、リム部11の左右の交差領域13の各後面13rは、隣接するスポーク部12の変曲部16の後面とほぼ面一に形成されている。これに対し、リム部11の左右の突出部15の後面15rは、図2に示すように、交差領域13の後面13rから上方に向かって車両後方側に傾斜している。また、リム部11の左右の突出部15の前面15fは、後面15rと同じ側にほぼ同角度で傾斜している。
本実施形態では、突出部15の傾斜した後面15rが交差領域13の後面13rから上方に向かって車両後方側に傾斜する傾斜後面を構成している。
【0030】
また、各突出部15は、側部スポーク部12sの上斜面17の連接部領域17bと隣接する位置から上方に突出している。上斜面17の連接部領域17bは、上斜面17の主部領域17aのリム部11側の端部から上方側に湾曲して突出部15に連続している。また、各突出部15の上端面15u(操舵中立状態で上方を向く面)は、略水平な平坦面とされている。
【0031】
図3は、リム部11の交差領域13の外周面(車幅方向外側の端面)の旋回軌道Toと、リム部11の交差領域13の内周面(車幅方向外側の端面)の旋回軌道Tiを仮想線で追加したステアリングホイール1の正面図である。
図3に示すように、左右の各交差領域13から上方に突出する突出部15の外側端部15oeの一部は、リム部11の交差領域13の外周面の旋回軌道Toよりも外側に膨出している。また、左右の突出部15の内側端部15ieの一部は、リム部11の交差領域13の内周面の旋回軌道Tiよりも内側に膨出している。
【0032】
また、各突出部15の車幅方向の内側領域には、運転者側(車両後方側)と車幅方向の内側に向く平坦な内傾斜面19が形成されている。内傾斜面19は、側部スポーク部12sの上斜面17のうちの、湾曲した連接部領域17bの上端部に滑らかに連続している。
【0033】
また、左右の交差領域13から下方に延びる下延出部14の後面14rは、交差領域13の後面13rから下方に向かって車両後方側に傾斜している。
【0034】
<ステアリングホイールの把持>
運転席に着座した運転者は、以下のようにしてステアリングホイール1を把持することができる。
(1)把持形態1
図4は、運転者が把持形態1でステアリングホイール1を把持した状態を示す正面図である。なお、図中の符号Hl,Hrは、運転者の左手と右手であり、符号Thは、手の親指であり、Fiは、人差指や中指等の親指Th以外の指である。
この把持形態1では、運転者は、左右の手Hl,Hrの親指Thの腹と第1関節付近をスポーク部12の上斜面17の主部領域17aと連接部領域17bに押し当て、その状態で残余の指Fiによってリム部11の交差領域13の外側を把持する。このとき、左右の手Hl,Hrの親指Thが車幅方向内側に傾斜した状態で上方を向き、親指Thの内側面が上斜面17の連接部領域17bに当接する。さらに、このとき、左右の手Hl,Hrの親指Thと人差指の間の付根部領域は、突出部15の傾斜した後面15rの下部領域に接する。このため、運転者の手Hl,Hrが上方側にずれにくくなり、リム部11に対する把持が安定する。また、このとき、運転者の左右の手Hl,Hrの親指Th以外の指Fiは、突出部15の直下の交差領域13を把持することになる。
(2)把持形態2
図5は、運転者が把持形態2でステアリングホイール1を把持した状態を示す正面図である。
この把持形態2では、運転者は、左右の手Hl,Hrの親指Thと親指Th以外の指Fiによって左右の突出部15の外周面を直接把持する。このとき、運転者は、左右の手Hl,Hrの親指Thの腹や付根部によって平坦な内傾斜面19を押さえ込むことができる。また、このとき、左右の手Hl,Hrの人差指や中指の一部は、左右の突出部15の平坦な上端面15uに載せ置くこともできる。なお、左右の手Hl,Hrの親指Thの付根部付近の一部は、スポーク部12の上斜面17の連接部領域17bや主部領域17aに載せ置くこともできる。
この把持形態2では、突出部15の後面15rと前面15fが上方(突出端側)に向かって後方に傾斜しているため、運転者は、より自然な把持姿勢(手に無理な力のかかりにくい把持姿勢)で突出部15を把持することができる。
【0035】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態のステアリングホイール1は、リム部11のうちの、操舵中立状態で上部となる領域が途切れている。このため、リム部11は運転者の前方視線を遮らない。したがって、本実施形態のステアリングホイール1を採用した場合には、運転者は、インストルメントパネル2上の表示部2a~2cや車外前方を良好に視認することができる。
【0036】
また、本実施形態のステアリングホイール1は、運転者が手Hl,Hrの親指Thを突出部15の基部の内側に回し込み、その状態で親指Th以外の指Fiでリム部11の交差領域13を把持することができる。このため、運転者は、手Hl,Hrに無理な力のかからない自然な状態でステアリングホイール1を安定して把持することができる。
さらに、本実施形態のステアリングホイール1では、リム部11の交差領域13から上方に突出する突出部15の後面15rが、上方に向かって車両後方側に傾斜する傾斜後面とされている。このため、運転者がリム部11を把持すると、把持した部分の直上部に車両後方側に傾斜した突出部15の後面15rが位置されることになる。このため、この状態で運転者がリム部11を旋回させるときには、突出部15の傾斜した後面15rが抵抗となり、上方に押し回す側の運転者の手Hl,Hrが旋回操作方向に位置ずれし難くなる。
したがって、本実施形態のステアリングホイール1を採用した場合には、操舵中立状態での運転者の良好な前方視認性を確保しつつ、運転者による無理のない自然なリム部11の把持と、良好な旋回操作を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態のステアリングホイール1は、リム部11の下延出部14の後面14rが下方に向かって後方側に傾斜している。このため、リム部11の交差領域13を把持した運転者が操舵中立状態から一方向にリム部11を旋回させるときに、上方に押し回そうとする運転者の手の平の腹部分が、手首を略直角に曲げた状態で下延出部の後面の傾斜部分に押し当てられるようになる。
したがって、本実施形態のステアリングホイール1を採用した場合には、運転者は、把持部のずれを抑制した状態で、リム部11をより容易に旋回操作することができる。
【0038】
また、本実施形態のステアリングホイール1では、突出部15の車幅方向の幅が突出方向の端部(上端部)に向かって広がっている。このため、親指Thの付根部から第1関節付近に亘る部位を側部スポーク部12sの上斜面17に押し当て、その状態でリム部11の交差領域13の外側部分を他の指で把持すると、突出部15の幅の増大する側が親指Thの付根部と他の指の上方側に位置される。このとき、突出部15の基端側は車幅方向の幅が相対的に狭いため、親指Thを上斜面17に押し付けた状態でのリム部11の良好な把持を阻害することがない。また、突出部15は、突出端側(上端側)に向かって幅が増大しているため、運転者がステアリングホイール1を旋回操作する際には、上方に押し回す側の運転者の手の位置ずれを突出部15によってより確実に阻止することができる。
【0039】
また、本実施形態のステアリングホイール1は、突出部15の上端面15uが平坦面とされている。このため、運転者が突出部15を直接把持するときに、人差指や中指の一部を突出部15の平坦な上端面15uに安定して載せ置くことができる。そして、こうして人差指や中指の一部を突出部15の平坦な上端面15uに載せ置くと、突出部15に対する指掛かりが良好になる。
したがって、本実施形態のステアリングホイール1を採用した場合には、突出部15を直接把持するときにおける把持状態を安定させることができる。
【0040】
さらに、本実施形態のステアリングホイール1は、突出部15の前面15fが後面15r側と同様に上方側に向かって車両後方側に傾斜している。このため、突出部15の車両前後方向の厚みが厚くなり過ぎることがない。
したがって、本構成を採用した場合、運転者が突出部15を直接把持するときにも、把持のし易さを損なうことがない。
【0041】
さらに、本実施形態のステアリングホイール1では、側部スポーク部12sがハブ部10の側端部から車幅方向外側に向かって下方に傾斜している。このため、運転者がリム部11の交差領域13の外側部分を把持する際に、親指Thを無理なく、側部スポーク部12sの上斜面17(連接部領域17b)に押し当てることができる。
また、側部スポーク部12sの上下幅が広い場合であっても、親指Thを旋回中心C1の高さに近い高さに置き、その状態でリム部11を安定して把持することができる。したがって、本構成を採用した場合には、ステアリングホイール1の旋回操作性を良好に保つことができる。
【0042】
さらに、本実施形態のステアリングホイール1は、突出部15の外周面の一部(外側端部15oe)がリム部11の交差領域13の外周面の旋回軌道Toよりも外側に膨出している。このため、運転者がリム部11の交差領域13の外側部分を把持すると、親指Th以外の指(人差指)の上方側に、交差領域13の外周面の旋回軌道Toよりも外側に膨出する突出部15の外側端部15oeが位置される。したがって、この状態で運転者がステアリングホイール1を旋回操作すると、上方に押し回す側の運転者の親指Th以外の指が突出部15の外側端部15oeに引っ掛かり、運転者の把持位置のずれが阻止される。
【0043】
また、本実施形態のステアリングホイール1は、突出部15の外周面の一部(内側端部15ie)がリム部11の交差領域13の内周面の旋回軌道Tiよりも内側に膨出している。このため、運転者が親指Thを上斜面17に押し付けてリム部11の交差領域13の外側部分を把持すると、親指Thの上方側に、交差領域13の内周面の旋回軌道Tiよりも内側に膨出する突出部15の内側端部15ieが位置される。したがって、この状態で運転者がステアリングホイール1を旋回操作すると、上方に押し回す側の運転者の親指Thが突出部15の内側端部15ieに引っ掛かり、運転者の把持位置のずれが阻止される。
なお、運転者が突出部15を直接把持してステアリングホイール1を旋回操作するときにも、同様に上方に押し回す側の運転者の親指Thが突出部15の内側端部15ieに引っ掛かり、運転者の把持位置のずれが阻止される。
【0044】
<他の実施形態1>
図6は、他の実施形態1のテアリングホイール101の側面図である。
本実施形態のテアリングホイール101は、リム部11から上方に突出する突出部15の前面15fが、上方に向かって車両前方側に傾斜する傾斜前面とされている。そして、突出部15の後面15rは、前面15fと同じ側にほぼ同角度で傾斜している。本実施形態では、突出部15の傾斜した前面15fが交差領域13の前面13fから上方に向かって車両前方側に傾斜する傾斜前面を構成している。
【0045】
本実施形態のテアリングホイール101は、突出部15の前面15fが、上方に向かって車両前方側に傾斜する傾斜前面とされているため、運転者がリム部11を把持して旋回させるときに、突出部15の傾斜した前面15fが抵抗となり、上方に押し回す側の運転者の手が旋回操作方向に位置ずれし難くなる。
【0046】
<他の実施形態2>
図7は、他の実施形態2のテアリングホイール201の側面図である。
本実施形態のテアリングホイール201は、突出部15の後面15rが、上方に向かって車両後方側に傾斜する傾斜後面とされ、突出部15の前面15fが、上方に向かって車両前方側に傾斜する傾斜前面とされている。そして、突出部15は、交差領域13との連接部から上方(突出端側)に向かって前後幅が漸増している。
【0047】
本実施形態のテアリングホイール201は、突出部15の前後幅が交差領域13から上方に向かって漸増しているため、運転者がリム部11を把持して旋回させるときに、突出部15の前後幅の漸増部が抵抗となり、上方に押し回す側の運転者の手が旋回操作方向により位置ずれし難くなる。
【0048】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、リム部11のうちの、左右の側部スポーク部12sよりも下方側が横長の略コ字形状に形成されているが、左右の側部スポーク部12sよりも下方側(交差領域よりも下方側)のリム部11の形状はこれに限定されない。左右の側部スポーク部12sよりも下方側のリム部11の形状は、例えば、半円形状等であっても良い。また、リム部は、下辺部11aのない形状であっても良い。
【0049】
さらに、上記の実施形態では、左右の側部スポーク部12sの他に、一つの下スポーク部12lが設けられているが、下スポーク部12lの個数や形状は上記の実施形態のものに限定されない。下スポーク部12lは二つ以上であっても良く、必ずしも設けなくても良い。
【符号の説明】
【0050】
1…ステアリングホイール
11…リム部
12s…側部スポーク部(スポーク部)
13…交差領域
14…下延出部
15…突出部
15f…前面(傾斜前面)
15r…後面(傾斜前面)
15u…上端面(上方を向く面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7