(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】転がり軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20250207BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/06
(21)【出願番号】P 2023142075
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2024-12-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】中尾 吾朗
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-71451(JP,A)
【文献】特開平11-218143(JP,A)
【文献】特開2000-230565(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102021123477(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 41/00
F16C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方部材(1)及び内方部材(2)と、
前記外方部材(1)の内径面と前記内方部材(2)の外径面との間の環状空間に周方向に沿って配置される複数の転動体(3)と、
前記外方部材(1)及び前記内方部材(2)の一方に設けられた周方向の係止部(11)及び他方に設けられた周方向の摺接部(12)と、
前記係止部(11)及び前記摺接部(12)に当接して前記外方部材(1)と前記内方部材(2)との間を電気的に接続する止め輪(20)と、を備え、
前記止め輪(20)は導電性を有するとともに弾性変形可能であり、前記摺接部(12)に対してアキシアル方向に締め代(a)をもって接触している転がり軸受。
【請求項2】
前記外方部材(1)及び前記内方部材(2)の一方は固定側の軌道輪、他方は回転側の軌道輪であり、前記止め輪(20)は前記回転側の軌道輪に対してのみアキシアル方向に締め代(a)をもって接触している請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記止め輪(20)は、前記係止部(11)へ係止される第一部分(21)と、前記摺接部(12)へ摺接する第二部分(22)が周方向に沿って交互に配置されている請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項4】
前記外方部材(1)及び前記内方部材(2)の一方は固定側の軌道輪、他方は回転側の軌道輪であり、前記止め輪(20)は前記回転側の軌道輪に対して軸回り相対回転可能である請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項5】
前記止め輪(20)は、無端状のリング状部材である請求項1に記載の転がり軸受。
【請求項6】
前記止め輪(20)は、その表面に導電性を有する素材からなる表層部を備えている請求項1に記載の転がり軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電食を防止する機能を備えた転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車のモータや鉄道車両の主電動機等、電気を帯びる構造体付近に適用される転がり軸受として、電気絶縁性を有した耐電食転がり軸受が提案されている。耐電食転がり軸受は、電気的に外部に通じる軌道輪から転動体に電流が流れる状態である場合に、軌道輪等の金属製部品に電食現象が起こることを防止するものである。
【0003】
耐電食転がり軸受として、例えば、特許文献1,2に記載の転がり軸受がある。この転がり軸受は、転動体を設置した軸受内部空間に導電性グリースを充填して、その導電性グリースを通じて内外の軌道輪間を導通させている。また、特許文献3に記載の転がり軸受は、一方の軌道輪に固定したシール部材に導電性の細線を埋設し、その細線の先端をシール部材から突出させて対側の軌道輪に摺接させている。さらに、特許文献4に記載の転がり軸受は、シール部材よりも軸受の軸心方向外側に内外の軌道輪間を導通させる通電部材を備え、通電部材はブラシを介して対側の軌道輪に摺接している。
【0004】
また、特許文献5に記載の転がり軸受は、内外の軌道輪のいずれか一方の周面にC字状の金属製ワイヤが嵌合され、他方の周面には、そのワイヤの両端部が折り曲げられた折曲部がそれぞれ摺接して、内外の軌道輪間を導通させている。さらに、特許文献6に記載の転がり軸受は、内外の軌道輪間に螺旋状のばねを配置し、そのばねに外輪の内周面に弾力をもって当接する外周部と、内輪の外周面に弾力をもって当接する内周部を設定して、内外の軌道輪間を導通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-102200号公報
【文献】特開2010-261522号公報
【文献】特開2008-286331号公報
【文献】特開2019-86152号公報
【文献】特開平11-218143号公報
【文献】特開平2-110717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2では導電性グリースを用いていることから、グリース寿命が短くなるという問題がある。また、特許文献3,4では、シール部材に導電性の細線を埋設し、あるいは、ブラシを備えた通電部材を配置するなど、軸受構造が複雑になりコスト高であるという問題がある。
【0007】
特許文献5,6では、C字状又は螺旋状の線材を使用しているため、比較的安価である。しかし、線材と軌道輪とがラジアル接触のため、線材の内径部と外径部の両方を変形させて軸受に取り付ける必要がある点で、作業性に問題がある。また、線材の端部が開放されている(形状が環状に閉じていない)ため、その線材の端部が他の部材、例えば、止め輪が絡む等、組付け時の作業性に問題がある。
【0008】
そこで、この発明の課題は、コストアップを抑制しつつ組付け時の作業性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、外方部材及び内方部材と、前記外方部材の内径面と前記内方部材の外径面との間の環状空間に周方向に沿って配置される複数の転動体と、前記外方部材及び前記内方部材の一方に設けられた周方向の係止部及び他方に設けられた周方向の摺接部と、前記係止部及び前記摺接部に当接して前記外方部材と前記内方部材との間を電気的に接続する止め輪とを備え、前記止め輪は導電性を有するとともに弾性変形可能であり、前記摺接部に対してアキシアル方向に締め代をもって接触している転がり軸受とした(構成1)。
【0010】
構成1において、前記外方部材及び前記内方部材の一方は固定側の軌道輪、他方は回転側の軌道輪であり、前記止め輪は前記回転側の軌道輪に対してのみアキシアル方向に締め代をもって接触している構成を採用できる(構成2)。
【0011】
構成1を備えた態様、又は、構成1及び構成2を備えた態様において、前記止め輪は、前記係止部へ係止される第一部分と、前記摺接部へ摺接する第二部分が周方向に沿って交互に配置されている構成を採用できる(構成3)。
【0012】
構成1を備えた態様、構成1に対して構成2又は構成3を備えた態様、又は、構成1に対して構成2及び構成3を備えた態様において、前記外方部材及び前記内方部材の一方は固定側の軌道輪、他方は回転側の軌道輪であり、前記止め輪は前記回転側の軌道輪に対して軸回り相対回転可能である構成を採用できる(構成4)。
【0013】
構成1を備えた態様、構成1に対して構成2、構成3及び構成4の中から選択される単一の又は複数の要素を付加した態様において、前記止め輪は、無端状のリング状部材である構成を採用できる(構成5)。ここで、無端状とは、切れ目のない閉じられた形状からなる部材を意味し、その一部を弾性変形させても開口を生じない部材であることを意味する。
【0014】
構成1を備えた態様、構成1に対して構成2、構成3、構成4及び構成5の中から選択される単一の又は複数の要素を付加した態様において、前記止め輪は、その表面に導電性を有する素材からなる表層部を備えている構成を採用できる(構成6)。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、コストアップを抑制しつつ組付け時の作業性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の一実施形態に係る転がり軸受の断面図
【
図6】止め輪を組付けるために変形させた状態を示す断面図
【
図8】この発明の他の実施形態に係る転がり軸受の断面図
【
図9】この発明のさらに他の実施形態に係る転がり軸受の断面図
【
図10】この発明のさらに他の実施形態に係る転がり軸受の断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、各種の産業用機械や、電動自動車や鉄道車両等の各種の輸送用機械等に適用される耐電食転がり軸受である。特に、軌道輪が電気的に外部に通じて、転動体に電流が流れ得る状態で使用される用途に有効である。
【0018】
図1に示すように、耐電食転がり軸受10(以下、単に軸受10と称する。)は、軸心が一致した状態に配置された環状の外方部材1及び環状の内方部材2と、外方部材1の内径面1bと内方部材2の外径面2bとの間の環状空間に周方向に沿って配置される複数の転動体3とを備えている。転動体3は、外方部材1の軌道面1aと内方部材2の軌道面2aとの間に配置され、環状を成す保持器4によって周方向に沿って一定の間隔で保持されている。
【0019】
以下、外方部材1及び内方部材2の軸心に沿った方向を「軸方向」と称する。軸方向は、
図1及び
図2において左右方向に相当する。また、
図1及び
図2において、左方向を軸方向一方又は単に一方と称し、右方向を軸方向他方又は単に他方と称する。さらに、軸心に対して直角な方向を「径方向」と称する。径方向は、
図1及び
図2において上下方向に相当する。また、軸心周りの円周方向を「軸回り方向」又は「周方向」と称する。
【0020】
外方部材1は、その外径面1cが環状等の形状からなるハウジング(図示せず)の内径部に固定され、回転軸を軸回り回転自在に支持する。なお、このハウジングに代えて、ギヤ等の内径部に外方部材1が固定される場合もある。また、ハウジングやギヤ等の内径部が、それらの部材と一体で外方部材1を構成する場合もある。以下、この実施形態では、外方部材1を外輪1と称する。
【0021】
内方部材2は、その内径面2cが回転軸(図示せず)の外径部に固定され、回転軸と一体に軸回り回転する。回転軸は、例えば、各種機械や各種機器における駆動力伝達経路の回転部、具体的には、電動自動車のモータの駆動軸や、各種自動車のトランスミッション、ドライブシャフト、プロペラシャフト等の回転部で構成される。以下、この実施形態では、内方部材2を内輪2と称する。
【0022】
この実施形態は、転動体3として鋼製等の玉(ボール)を用いた深溝玉軸受である。また、外輪1の内径面と内輪2の外径面に形成された軌道面1a,2aは、
図1及び
図2の縦断面に示すように、玉に対応した円弧状断面といなっている。保持器4は金属であるが、これを樹脂製としてもよい。なお、外輪1や内輪2は金属製であり、それに接触するハウジングや軸を通じて電気的に外部に導通している。このため、外輪1及び内輪2は、装置の運転状態によっては電流が流れる状態である。
【0023】
なお、外輪1と内輪2との間には、複数のシール部材(図示せず)が取り付けられていてもよい。シール部材の素材は、軸受の仕様条件に応じて、ゴム、樹脂、金属、あるいは、それらの組み合わせで構成できる。
【0024】
外輪1及び内輪2との間には、止め輪20が配置される。止め輪20は、導電性を有するとともに弾性変形可能な線材で構成されたリング状部材である。この実施形態では、外輪1は固定側の軌道輪であり、内輪2は回転側の軌道輪である。このため、止め輪20は、固定側の軌道輪である外輪1に固定されるようになっている。ただし、止め輪20は、回転側の軌道輪に対して軸回り相対回転しないように固定されていてもよいし、軸回り相対回転可能に固定されていてもよい。
【0025】
外輪1には、周方向に沿って係止部11が設けられている。係止部11は、外輪1の内径面に設けられた全周に亘る溝で構成されている。内輪2には、周方向に沿って摺接部12が設けられている。摺接部12は、内輪2の外径面に設けられた全周に亘る円筒面12a及び傾斜面12bとで構成されている。ただし、摺接部12は、円筒面12aを省略した態様としてもよい。
【0026】
外輪1の係止部11に対して止め輪20に設定された第一部分21が当接し(係止され)、内輪2の摺接部12に対して止め輪20に設定された第二部分22が当接する(摺接する)ので、止め輪20は、外輪1と内輪2との間を電気的に接続する。これにより、導電性の高い止め輪20を通って外輪1と内輪2とが導通するので、転動体3に電気が通るのを抑制できる。このため、軌道輪等の金属製部品に電食現象が起こることを防止できる。ここで、外輪1と内輪2との間において、止め輪20の通電抵抗は、転動体3の通電抵抗よりも小さく設定されていることが望ましい。
【0027】
この実施形態では、固定側の軌道輪である外輪1の係止部11を溝としたので、止め輪20を外輪1に容易に嵌合固定できる。ここで、
図5に示すように、係止部11の軸方向外側には、係止部11の溝の底よりも小径の円筒面13が設けられているので、止め輪20が溝に向かってスムーズに案内される。
【0028】
また、回転側の軌道輪である内輪2の摺接部12として傾斜面12bを備えたので、外輪1及び内輪2や止め輪20の寸法の誤差(公差)に関わらず、止め輪20と外輪1、止め輪20と内輪2との接触状態を安定させることができる。また、止め輪20が円筒面に接触する場合よりも、内輪2の接触面積を相対的に広く確保できる。
【0029】
ここで、止め輪20は、回転側の軌道輪である内輪2に対してアキシアル方向に締め代aをもって接触している。
図3では、内輪2の傾斜面12bと止め輪20とが、符号aで示す軸方向寸法だけ重複しているように記載しているが、実際の部材は図示のように重ならず、傾斜面12bに当接する止め輪20が符号aで示す軸方向寸法を締め代aとして、その傾斜面12bを押圧している。この押圧により、止め輪20と内輪2との接触状態をさらに安定させている。また、回転側の軌道輪と止め輪20との接触を、ラジアル方向ではなくアキシアル方向とすることで、その組み込み時に、従来のように線材の内径部と外径部の両方を変形させる必要がなく、組み込み作業が容易になる。また、接触部の締め代の管理も容易になる。
【0030】
また、この実施形態では、止め輪20を無端状のリング状部材としたので、止め輪20を弾性変形させながら挿入しやすいという利点がある。また、線材の端部が開放されていない(形状が環状に閉じている)ため、その線材の端部が他の部材に絡むことがない。
【0031】
なお、止め輪20は、係止部11及び摺接部12の少なくとも一方に対してアキシアル方向に締め代aをもって接触していればよい。アキシアル方向への締め代aの設定は、係止部11及び摺接部12の両方に対して行ってもよいが、これを一方に対してのみ行う場合は、この実施形態のように、回転側の軌道輪(摺接部12)に対してアキシアル方向への締め代aを設定することが有利である。
【0032】
また、
図1に示すように、止め輪20は、係止部11へ係止される第一部分21と、摺接部12へ摺接する第二部分22を周方向に沿って交互に備えているので外輪1と内輪2との間の通電経路の距離をできる限り短くできる。
【0033】
図7は、軸受10への組み込み前の止め輪20の形状を示している。
図6は、軸受10への組み込みのために、止め輪20に外力を加えて止め輪20を弾性変形させた状態を示している。
図6に示すように、止め輪20の全体を係止部11よりも小径に変形させ、その一部を係止部11に当接させ(嵌合させ)、その後に外力を解放すれば、
図1に示すように、隣り合う第一部分21と第一部分21との中間部分が、摺接部12に接触するようになる。ここで、摺接部12に接触する部分は、第二部分22に相当する。
【0034】
図8~
図10は、それぞれこの発明の他の実施形態を示している。
【0035】
図8は、係止部11へ係止される第一部分21と、摺接部12へ摺接する第二部分22をそれぞれ3個備えた止め輪20を示している。曲率が大きい(曲線半径が小さい)第一部分21と、曲率が小さい(曲線半径が大きい又は直線の)第二部分22をそれぞれ3個備えているので、全体として三角形状の止め輪20となっている。
【0036】
このように、第一部分21と第二部分22の数は、軸受10の仕様に応じて適宜変更できる。ここで、係止部11へ係止される第一部分21と、摺接部12へ摺接する第二部分22を、周方向に沿って交互に備えている点は、前述の実施形態と同様である。なお、第一部分21と第二部分22とを周方向に沿って交互配置とせず、第一部分21と第一部分21とが周方向に沿って隣り合う、あるいは、第二部分22と第二部分22とが周方向に沿って隣り合う部分が介在している態様も考えられる。
【0037】
図9は、止め輪20の形状を端部が開放されたC字状としたものである。線材の端部が開放されている(形状が環状に閉じていない)ため、その線材の端部が他の部材に干渉しないよう、線材の端部を円弧状に曲げ加工している。この端部の曲げ加工した部分を、外輪1の係止部11へ係止される第一部分21(端部円弧状部23)としている。また、端部円弧状部23以外にも、線材の長さ方向中ほどに2箇所の第一部分21を設定し、全体として
図8の態様に近似した三角形状の止め輪20としている。
【0038】
このように、止め輪20は無端状のリング状部材には限定されず、端部が開放されている(形状が環状に閉じていない)止め輪20を採用してもよい。
【0039】
図10は、第一部分21と第二部分22をそれぞれ6個備えた止め輪20を示している。外径側へ突出する第一部分21と、内径側へ突出する第二部分22をそれぞれ6個備え、全体として星型の止め輪20となっている。止め輪20は無端状のリング状部材となっているが、これを
図9と同様に、端部が開放されている(形状が環状に閉じていない)止め輪20としてもよい。
【0040】
いずれの実施形態においても、止め輪20は、その全体が導電性を有する素材(例えば、鉄等の金属)で構成されていてもよいし、導電性を有さない素材(例えば、ゴムや樹脂等)を用いる場合には、その表面に導電性を有する素材(例えば、金属膜、金属のコーティング等)からなる表層部を備えている構成としてもよい。
【0041】
上記の実施形態では、外輪1は固定側の軌道輪であり、内輪2は回転側の軌道輪としたが、これを内外逆にして、外輪1を回転側の軌道輪、内輪2を固定側の軌道輪としてもよい。この場合、止め輪20は、固定側の軌道輪である内輪2に係止されることが望ましい。このとき、係止部と摺接部の形状も内外逆転させて、外輪1に摺接部を、内輪2に係止部を設けることが望ましい。外輪1に設けられる摺接部を周方向に沿って形成された円筒面と傾斜面(又は傾斜面のみ)で構成し、内輪2に設けられる係止部を周方向の溝で構成することが望ましい。また、止め輪20は、内輪2側の係止部へ係止される第一部分21と、外輪1側の摺接部12へ摺接する第二部分22を備えた態様となる。
【0042】
また、いずれの実施形態においても、止め輪20の素材は線材には限定されず、止め輪20を線材以外の材料、例えば、板材等で構成してもよい。
【0043】
上記の実施形態では、転動体3として鋼製の玉を採用しているが、転動体3を他の金属素材やその他の素材としてもよい。また、上記の実施形態では、軸受10として深溝玉軸受を採用しているが、軸受10の種別はこの実施形態には限定されない。例えば、アンギュラ玉軸受等の他の玉軸受であってもよいし、円筒ころや円錐ころ等を用いたころ軸受、あるいは、それ以外の転がり軸受であってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 外方部材(外輪)
1a 外側軌道面
2 内方部材(内輪)
2a 内側軌道面
3 転動体
4 保持器
10 転がり軸受(軸受)
11 係止部
12 摺接部
12a 円筒面
12b 傾斜面
20 止め輪
21 第一部分
22 第二部分
【要約】
【課題】コストアップを抑制しつつ組付け時の作業性を改善する。
【解決手段】外方部材1及び内方部材2と、外方部材1の内径面と内方部材2の外径面との間の環状空間に周方向に沿って配置される複数の転動体3と、外方部材1及び内方部材2の一方に設けられた周方向の係止部11及び他方に設けられた周方向の摺接部12と、係止部11及び摺接部12に当接して外方部材1と内方部材2との間を電気的に接続する止め輪20とを備え、止め輪20は導電性を有するとともに弾性変形可能であり、摺接部12に対してアキシアル方向に締め代aをもって接触している転がり軸受とした。
【選択図】
図1