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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】マフラー装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/08 20100101AFI20250207BHJP
   F01N 13/16 20100101ALI20250207BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20250207BHJP
【FI】
F01N13/08 Z
F01N13/08 G
F01N13/16
B62M7/02 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023511481
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022015982
(87)【国際公開番号】W WO2022210876
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2021061677
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】ミンデーン ジェッサダー
(72)【発明者】
【氏名】ケハーバーン ポンパット
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特許第7071417(JP,B2)
【文献】特開2009-108824(JP,A)
【文献】特開2006-017046(JP,A)
【文献】特開2009-264293(JP,A)
【文献】特開2016-070208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/08
F01N 13/16
B62M 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両(1)の内燃機関(3)の排気管(55)の後端部(55a)に接続されるマフラー本体(70)を有するマフラー装置(7)において、
前記マフラー本体(70)の後部には、排気出口(74a)を後方に向けて突出させたテールパイプ(74)が設けられ、
前記排気出口(74a)の周囲には前記マフラー本体(70)から離間したマフラーカバー(8)を備え、
前記マフラーカバー(8)と前記マフラー本体(70)との間に走行風が導入される隙間(81)が設けられ、
前記隙間(81)から導入された走行風を、前記排気出口(74a)に対して該排気出口(74a)の側方にガイドする導入風ガイド部(84)を備え
前記マフラー装置(7)は、前記マフラー本体(70)の外側面(70a)を覆うとともに、前記マフラーカバー(8)との間に走行風を導く走行風ガイド部(91)を有する第二のマフラーカバー(9)を備えていることを特徴とするマフラー装置。
【請求項2】
前記マフラーカバー(8)は、その後部の車両外側部(8c)に前記排気出口(74a)から離間して後方に向けて開口する導入風ガイド孔(83)を有し、
前記導入風ガイド部(84)は、前記マフラーカバー(8)の内部に、前記排気出口(74a)と前記導入風ガイド孔(83)との間に位置して、前記排気出口(74a)から排出される排気ガスの排出方向に対して平行に立設されたことを特徴とする請求項1に記載のマフラー装置。
【請求項3】
前記マフラーカバー(8)は、前記マフラー本体(70)の後端部(70b)全体を覆うテールキャップであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマフラー装置。
【請求項4】
前記マフラーカバー(8)は樹脂製であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のマフラー装置。
【請求項5】
前記第二のマフラーカバー(9)と前記マフラー本体(70)との間に隙間(75)が設けられており、
前記第二のマフラーカバー(9)は、その上面に走行風を流入させる吸入口(90)を車両外側方に向けて有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のマフラー装置。
【請求項6】
前記マフラー本体(70)は、後ろ上がりに傾斜して設けられたことを特徴とする請求項に記載のマフラー装置。
【請求項7】
鞍乗型車両(1)の内燃機関(3)の排気管(55)の後端部(55a)に接続されるマフラー本体(70)を有するマフラー装置(7)において、
前記マフラー本体(70)の後部には、排気出口(74a)を後方に向けて突出させたテールパイプ(74)が設けられ、
前記排気出口(74a)の周囲には前記マフラー本体(70)から離間したマフラーカバー(8)を備え、
前記マフラーカバー(8)と前記マフラー本体(70)との間に走行風が導入される隙間(81)が設けられ、
前記隙間(81)から導入された走行風を、前記排気出口(74a)に対して該排気出口(74a)の側方にガイドする導入風ガイド部(84)を備え、
前記マフラーカバー(8)は、その後部の車両外側部(8c)に前記排気出口(74a)から離間して後方に向けて開口する導入風ガイド孔(83)を有し、
前記マフラーカバー(8)の後端部(8b)は、前記テールパイプ(74)の前記排気出口(74a)と前記導入風ガイド孔(83)との間の後方に位置することを特徴とするマフラー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に備えられるマフラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鞍乗型車両のマフラー装置にはマフラーカバーが備えられるが、マフラーカバーの周囲を流れた走行風がマフラーカバー後端で巻き込みによる乱流を発生し、排気性能に影響を生じる場合がある。
それに対して、マフラーカバーに吸気口を設け、マフラー本体のテールパイプの排気出口側を側方に向けて曲げ、吸気口からの走行風を当てて排気を促進するものが、例えば下記特許文献1に示されているが、テールパイプとマフラーカバーの成形・組み合わせに工数を要し、また、マフラー本体とマフラーカバーが一体に構成されており、軽量化・コストダウン上の課題を有する。
また、マフラー本体後端部にマフラー本体との隙間を設けて走行風を取り込むマフラーカバーを備えたものが、例えば下記特許文献2に示されるが、その隙間から流入した走行風がテールパイプの周囲を流れてテールパイプの排気出口で排気との干渉が生じ、排気への影響が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2006-017046号公報(図3図8
【文献】日本国特開2009-264293号公報(図2図7~9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来技術に鑑みなされたものであり、鞍乗型車両に備えられるマフラー装置において、テールパイプの排気出口近傍での乱流の発生を防ぎ排気流れを良好にして、走行性能への影響をなくすことができ、テールパイプとマフラーカバーの成形・組み合わせの工数が低減されるマフラー装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、
鞍乗型車両の内燃機関の排気管の後端部に接続されるマフラー本体を有するマフラー装置において、
前記マフラー本体の後部には、排気出口を後方に向けて突出させたテールパイプが設けられ、前記排気出口の周囲には前記マフラー本体から離間したマフラーカバーを備え、前記マフラーカバーと前記マフラー本体との間に走行風が導入される隙間が設けられ、前記隙間から導入された走行風を、前記排気出口に対して該排気出口の側方にガイドする導入風ガイド部を備え、前記マフラー装置は、前記マフラー本体の外側面を覆うとともに、前記マフラーカバーとの間に走行風を導く走行風ガイド部を有する第二のマフラーカバーを備えていることを特徴とするマフラー装置である。
【0006】
上記構成によれば、
走行風を排気出口に対して該排気出口の側方にガイドする導入風ガイド部を設けたことで、排気出口近傍に走行風があたることが防がれ排気出口近傍での乱流の発生を防ぐことができ、排気流れを良好にして、走行性能への影響をなくすことができる。
また、テールパイプは排気出口を後方へ向けたものであり、テールパイプとマフラーカバーの成形・組み合わせの工数が低減される。
また、第二のマフラーカバーとマフラーカバーとの間の走行風ガイド部から、マフラーカバーとマフラー本体との間の隙間に走行風が導入されるので、マフラーカバーの冷却性が向上するとともに、走行風の排気出口への巻き込みによる乱流の発生を防ぐことができる。
【0007】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記マフラーカバーは、その後部の車両外側部に前記排気出口から離間して後方に向けて開口する導入風ガイド孔を有し、前記導入風ガイド部は、前記マフラーカバーの内部に、前記排気出口と前記導入風ガイド孔との間に位置して、前記排気出口から排出される排気ガスの排出方向に対して平行に立設される。
そのため、マフラーカバー内に導入された走行風を、導入風ガイド部によって導入風ガイド孔へ排気ガスに当てることなく排出することができるうえ、導入された走行風を導入風ガイド部が排気ガスの排出方向と平行方向にガイドすることで、排気ガスの排出方向と平行方向に走行風のカーテンを作れるため、マフラーカバーの車両外側面からの走行風の巻き込みを防ぐことができる。
【0008】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記マフラーカバーは、前記マフラー本体の後端部全体を覆うテールキャップである。
マフラーカバーがテールキャップとして、マフラー本体の後端部全体を覆うものなので、周囲にいる人をマフラー本体の後端部の熱から保護することができる。
【0009】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記マフラーカバーは樹脂製である。
マフラーカバーを樹脂製にすることで、軽量化およびコストダウンが可能となり、輻射熱の発生も低減できる。
【0011】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記第二のマフラーカバーと前記マフラー本体との間に隙間が設けられており、前記第二のマフラーカバーは、その上面に走行風を流入させる吸入口を車両外側方に向けて有している。
吸入口から第二のマフラーカバーとマフラー本体との間の隙間に取り入れた走行風を、マフラーカバー内で導入風ガイド部によって導入風ガイド孔から排出することにより、第二のマフラーカバー外周を流れる走行風による乱流の発生を防ぐことができる。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、
前記マフラー本体は、後ろ上がりに傾斜して設けられる。
後ろ上がりに傾斜するマフラー本体の場合、第二のマフラーカバーの上面には走行風が当たりやすいが、当たった走行風は、吸入口から第二のマフラーカバーとマフラー本体との間の隙間に効率よく取り入れられる。
また、他の本発明は、
鞍乗型車両の内燃機関の排気管の後端部に接続されるマフラー本体を有するマフラー装置において、前記マフラー本体の後部には、排気出口を後方に向けて突出させたテールパイプが設けられ、前記排気出口の周囲には前記マフラー本体から離間したマフラーカバーを備え、前記マフラーカバーと前記マフラー本体との間に走行風が導入される隙間が設けられ、前記隙間から導入された走行風を、前記排気出口に対して該排気出口の側方にガイドする導入風ガイド部を備え、前記マフラーカバーは、その後部の車両外側部に前記排気出口から離間して後方に向けて開口する導入風ガイド孔を有し、前記マフラーカバーの後端部は、前記テールパイプの前記排気出口と前記導入風ガイド孔との間の後方に位置することを特徴とするマフラー装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマフラー装置によれば、
走行風を排気出口に対して該排気出口の側方にガイドする導入風ガイド部を設けたことで、排気出口近傍に走行風があたることが防がれ排気出口近傍での乱流の発生を防ぐことができ、排気流れを良好にして、走行性能への影響をなくすことができる。
また、テールパイプは排気出口を後方へ向けたものであり、テールパイプとマフラーカバーの成形・組み合わせの工数が低減される。
また、第二のマフラーカバーとマフラーカバーとの間の走行風ガイド部から、マフラーカバーとマフラー本体との間の隙間に走行風が導入されるので、マフラーカバーの冷却性が向上するとともに、走行風の排気出口への巻き込みによる乱流の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るマフラー装置を備えた自動二輪車の、車体カバーを除いた右側面を示す概要図である。
図2図1の排気管とマフラー装置を取り出して示す右側面図である。
図3図2中III-III矢視による排気管よびマフラー装置の上面図である。
図4】マフラー装置におけるマフラー本体に対する第1マフラーカバーと第2マフラーカバーの関係を示す斜視図である、
図5】マフラー装置の主要部の右側面断面図である。
図6図2中VI-VI矢視による第1マフラーカバーの後面外面図である。
図7図2中VII-VII矢視による第1マフラーカバーの前面内面図である。
図8】マフラー装置の後端側を、車両内方後側から見た斜視図である。第1マフラーカバーが外されて示されている。
図9図2中IX-IX矢視による、第1マフラーカバーとマフラー本体の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図9に基づき、本発明の一実施形態に係るマフラー装置につき説明する。
本実施形態においてマフラー装置を備えた鞍乗型車両は、自動二輪車の場合を示し、特許請求の範囲および本明細書の説明における前後左右上下等の向きは、本実施形態の車両(自動二輪車)の向きに従うものとする。
図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
【0016】
図1は、本実施形態に係るマフラー装置を備えた自動二輪車1の一般的態様の一例の、車体カバーを除いた右側面を示す概要図である。
図1に示されるように、本実施形態の自動二輪車(本発明における「鞍乗型車両」)1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ20から後方へメインフレーム21が、若干下向きに延出した後に、側面視でさらに屈曲部21aを形成して下方に屈曲し、急傾斜部21bを形成してピボットフレーム22に至っている。
【0017】
また、ヘッドパイプ20から斜め急角度に下方へダウンフレーム23が、側面視でメインフレーム21の急傾斜部21bに略平行に延出している。
メインフレーム21の屈曲部21aからは、左右一対のシートレール24が後方に延出し、シートレール24の後部とピボットフレーム22とを連結した左右一対のバックステー25が、シートレール24を支持している。
【0018】
以上のような車体フレーム2において、ヘッドパイプ20にはフロントフォーク11が枢支され、その下端に前輪12が軸支される。
メインフレーム21の急傾斜部21bの下部に接続するピボットフレーム22には、前端を枢支されたリヤフォーク13が、後方へ延出し、その後端に後輪14が軸支され、リヤフォーク13と車体フレーム2との間に、図示しないリヤクッションが介装されている。
メインフレーム21の前部には、燃料タンク16が架設され、燃料タンク16の後方に運転者用の乗員シート17Aと同乗者用のピリオンシート17Bがシートレール24に支持されて前後に設けられている。
【0019】
本実施形態において、自動二輪車1はメインフレーム21の下方でその急傾斜部21bの前方に内燃機関3を搭載している。内燃機関3は、そのクランクケース30の前部をダウンフレーム23の下端に取付けられたブラケット23aに締結され、クランクケース30の後部をピボットフレーム22に締結されて、車体フレーム2に懸架されている。
【0020】
本実施形態の内燃機関3は、クランクケース30内の後部に変速機4を備えて、いわゆるパワーユニットを構成しており、そのクランク軸31を、自動二輪車1の車幅方向、すなわち左右方向に配向させて自動二輪車1に搭載された空冷単気筒の4ストロークサイクル内燃機関である。
【0021】
クランクケース30内の後部には、クランク軸31と平行に変速機4の図示しないメイン軸とカウンタ軸が設けられており、カウンタ軸はクランクケース30を左方に貫通して外部に突出して、パワーユニットの最終の出力軸となっており、突出部位に図示しない出力スプロケットを備える。出力スプロケットに巻き掛けられた駆動チェーン41が、後輪14側の被動スプロケット42に架渡されてチェーン伝達機構が構成され、後輪14に動力が伝達される。
【0022】
内燃機関3は、クランクケース30上にシリンダ軸線を前傾させて、シリンダブロック32、シリンダヘッド33、シリンダヘッドカバー34を起立させた姿勢で懸架される。
内燃機関3のシリンダヘッド33からは後方に、その吸気ポート35に接続して吸気系装置50が設けられエアクリーナケース51に至っている。
シリンダヘッド33から前方には、その排気ポート36に接続して排気管55が延出し下方に屈曲して内燃機関3の下方を後方に延び、後輪14の右側のマフラー装置7に至っている。
【0023】
図2は、図1の排気管55とマフラー装置7を取り出して示す右側面図であり、図3は、図2中III-III矢視による排気管55よびマフラー装置7の上面図である。
図2に示されるように、排気管55の後端部に接続したマフラー装置7のマフラー本体70は、やや後ろ上がりに傾斜してその後端部70bを車両後方に向けている(図1参照)。
マフラー本体70の上部には、その前部に前部取付けブラケット71、その後部に後部取付けブラケット72が上方に突出して設けられている。
【0024】
本実施形態において、前部取付けブラケット71はピボットフレーム22aに締結され、後部取付けブラケット72は、バックステー25に取付けられたピリオンステップ支持ステー26の下端に締結されている(図1参照)。なお、車体フレーム2の何処に固定するかは限定されない。
したがって、本実施形態では、マフラー装置7のマフラー本体70は車体フレーム2に固定されたものとなり、内燃機関3も車体フレーム2に固定されているから、マフラー装置7は、内燃機関3と相互の移動関係なく接続される。
【0025】
図2に示されるように、排気管55の後端が接続したマフラー本体70には、排気出口74aを後方に向けて突出させたテールパイプ74が後部に内設される(図5参照)。
マフラー本体70の後端部70bより後方に向けて突出させたテールパイプ74の排気出口74aの周囲には、マフラー本体70と隙間81を開けて取付けられた第1マフラーカバー(本発明における「マフラーカバー」)8が設けられている。第1マフラーカバー8は、マフラー本体70の後端部70b全体を後方から覆う態様であり、いわゆるテールキャップを形成しており(図4図5図9参照)、樹脂製である。
そのため、周囲にいる人をマフラー本体70の後端部70bの熱から保護することができ、樹脂製であるので、軽量化およびコストダウンが可能となるうえ、輻射熱の発生を低減でき、周囲を輻射熱から保護できる。
【0026】
また、マフラー装置7は、マフラー本体70の上側と右側にかけて外側面70aを覆う第2マフラーカバー(本発明における「第二のマフラーカバー」)9が、マフラー本体70との間に隙間75を設けて備えられている(図3図5参照)。
図3に略図示されるように、マフラー本体70の右側面には第1取付け台76と第2取付け台77が設けられており、第1取付け台76に第2マフラーカバー9の内面に設けられた係合部96を係合させるとともに、第2取付け台77に第2マフラーカバー9の締結孔97からボルト98を締結することで、第2マフラーカバー9はマフラー本体70との間に隙間75を設けた状態で取付けられる。
【0027】
また、第2マフラーカバー9の上面9aから側面9cにかけては、周囲の走行風を流入させる吸入口90が車両外側方に向けて設けられている。
そのため、吸入口90から第2マフラーカバー9とマフラー本体70との間の隙間75に取り入れたマフラー装置7周囲の走行風を、第1マフラーカバー8内に導き(図2図3中、破線白抜き矢印)、第1マフラーカバー8内で後述の導入風ガイド部84によって導入風ガイド孔83から排出する(図6図7参照)ことにより、第2マフラーカバー9外周を流れる走行風による乱流の発生を防ぐことができる。
【0028】
図4は、マフラー装置7におけるマフラー本体70に対する第1マフラーカバー8と第2マフラーカバー9の関係を示す斜視図である。
図4に示されるように、第1マフラーカバー8は、マフラー本体70の後端部70bとの間に走行風(図4中、白抜き矢印A)が導入される隙間81が設けられるように取付けられているとともに、第2マフラーカバー9の後端部9bは、第1マフラーカバー8の前端部8aとの間に、隙間82を形成するように段付き組合せ部をなす走行風ガイド部91を有し、走行風ガイド部91の隙間82から第1マフラーカバー8とマフラー本体70との間の隙間81に走行風(図4中、白抜き矢印B)が導入されるので、第1マフラーカバー8の冷却性が向上する。
【0029】
本実施形態のマフラー装置7のマフラー本体70は、やや後ろ上がりに傾斜してその後端部70bを車両後方に向けており(図1図2参照)、後ろ上がりに傾斜するマフラー本体70の場合、第2マフラーカバー9の上面9aには走行風が当たり易いが、当たった走行風は、吸入口90から、第2マフラーカバー9とマフラー本体70との間の隙間75に効率よく取り入れることができ、隙間75から第1マフラーカバー8内へ走行風を導入でき、第1マフラーカバー8の冷却性が向上するとともに、マフラー装置7周囲の走行風の排気出口74aへの巻き込みによる乱流の発生を防ぐことができる。
また、マフラー本体70が後ろ上がりになっているため、走行風ガイド部91の隙間82から走行風が入り込んで第1マフラーカバー8内に走行風を導入できるため、第1マフラーカバー8の冷却性が向上するとともに、マフラー装置7周囲の走行風の排気出口74aへの巻き込みによる乱流の発生を防ぐことができる。
【0030】
図5は、マフラー装置7の主要部の右側面断面図である。マフラー本体70内に挿入された排気管55の後端部55aは、第1仕切り板78aと第2仕切り板78bとの間の第1膨張室79a内に開口し排気ガスの排気圧を開放する。排気ガスは、さらに第2仕切り板78bを通過する連通管78cを通り、第2仕切り板78bと後端板73との間の第2膨張室79bに入って排気圧を開放する。しかして排気圧を減じた排気ガス74bは、後端板73を貫通する直管状のテールパイプ74を通って、その後端の排気出口74aからマフラー装置7の後方へ消音作用を得て排出される(図4図5中、黒矢印74b)。第1膨張室79a、第2膨張室79bの内部にはグラスウール等が充填されてもよい。
マフラー本体70の後端部70bから突出したテールパイプ74の周囲は第1マフラーカバー8で囲まれる。マフラー本体70の外側面70aには、上述のように第2マフラーカバー9が隙間75を開けて設けられている。
なお、本発明において、マフラー本体70内の構造、例えば膨張室の数、配置は上述のものに限定されず、図5は例示である。
【0031】
図6は、図2中VI-VI矢視による第1マフラーカバー8の後面外面図であり、図7は、図2中VII-VII矢視による第1マフラーカバー8の前面内面図である。
第1マフラーカバー8は、図6図7に示されるように前後方向から見て環状に形成されており、マフラー本体70から後方へ突出したテールパイプ74を囲むように中央開口80を備えている。
【0032】
第1マフラーカバー8の右部、すなわち車両外側部8cには、上下に長いスリット状の導入風ガイド孔83が前後に貫通して設けられ、導入風ガイド孔83と中央開口80との間の内面には導入風ガイド孔83の上下長さを超す上下長さで導入風ガイド部84が立設されている。
すなわち、導入風ガイド孔83は、テールパイプ74の排気出口74aから離間して後方に向けて開口し、導入風ガイド部84は、第1マフラーカバー8の内部に、排気出口74aと導入風ガイド孔83との間において排気出口74aから排出される排気ガス74bの排出方向(図4図5中、黒矢印)に対して平行な立壁状に設けられる。
【0033】
そのように、本実施形態では、第1マフラーカバー8とマフラー本体70の後端部70bとの間の隙間81から導入された走行風を、排気出口74aに対して排気出口74aの側方にガイドする導入風ガイド部84が設けられており、走行風が排気出口74a近傍に当たることが防がれ、排気出口74a近傍での乱流の発生を防ぐことができ、排気流れを良好にして、走行性能への影響をなくすことができる。
また、第1マフラーカバー8内に導入された走行風は、導入風ガイド部84によって排気ガス74b(図4図5中、黒矢印)に当てることなく導入風ガイド孔83から排出することができ、導入風ガイド部84が排気出口74aからの排気ガス74bの排出方向と平行方向に走行風をガイドすることで、排気ガス74bの排出方向と平行方向に走行風のエアカーテン83aを作れるため(図4図9参照)、第1マフラーカバー8の車両外側面からの走行風の巻き込みを防ぐことができる。
【0034】
また、第1マフラーカバー8の内部の導入風ガイド部84の上方には、後述のマフラーカバー係合部85d(図8参照)と係合する支持ステー係合部89が突設されている。
第1マフラーカバー8の左部、すなわち、車両内側部8dには、後述の第1マフラーカバー支持ステー85のマフラーカバー固定部86(図8参照)に締結されるための被締結孔87が上下2か所設けられ、その間には第1マフラーカバー8を前後に貫通する通風孔88が設けられている。
そのため、マフラー本体70の車両内側面に沿って隙間81へ流入した走行風も、通風孔88から車両後方へ、排気出口74aから排出される排気ガス74bと平行に通風流れ88aを形成して排出される(図9参照)。
【0035】
図8は、マフラー装置7の後端側を、車両内方後側から見た斜視図であり、第1マフラーカバー8が外されて示されている。
マフラー本体70の後端板73には直管状のテールパイプ74が貫通して後方に突出しており(図5参照)、突出したテールパイプ74を挿通させた第1マフラーカバー支持ステー85が後端板73に溶接部85cで固定されている。
【0036】
第1マフラーカバー支持ステー85は、概ね第1マフラーカバー8の中央開口80を塞ぐ形状の板金部材である。
第1マフラーカバー支持ステー85には上部支持脚85a、下部支持脚85bが前方向に屈曲形成され、その前端が後端板73に溶接部85cで固定されている。
第1マフラーカバー支持ステー85の左部、すなわち車両内側部にはマフラーカバー固定部86が前方向に屈曲形成されて2カ所に締結孔86aが設けられる。
マフラーカバー固定部86の屈曲された前端は、後端板73に溶接部85cで固定されている。
マフラーカバー固定部86の反対側、すなわち車両右側部には、マフラーカバー係合部85dが設けられる。
【0037】
第1マフラーカバー8は、第1マフラーカバー支持ステー85に後方から被さるように配置されて、車両内側部8dの外側から被締結孔87に締結ボルト86bを挿入し、第1マフラーカバー支持ステー85の締結孔86aにねじ止めすることで、マフラー本体70に締結される。
その際、第1マフラーカバー支持ステー85のマフラーカバー係合部85dが、図7に示される第1マフラーカバー8の車両外側部8c内面の支持ステー係合部89に嵌合して、第1マフラーカバー8の位置が固定される。
【0038】
図9は、図5中IX-IX矢視による、第1マフラーカバー8とマフラー本体70の平面断面図である。やや下部の断面であるため、テールパイプ74は見えない。
第1マフラーカバー支持ステー85の下部支持脚85bがマフラー本体70の後端板73に溶接部85cで固定され、屈曲形成されたマフラーカバー固定部86の下方側の締結孔86aに第1マフラーカバー8の車両内側部8dが締結された状態が図示される。
また、第1マフラーカバー8の車両外側部8cの内面に立設された導入風ガイド部84とその外側に開けられた導入風ガイド孔83の下端が図示される。
【0039】
図9の図示のように、マフラー本体70と第1マフラーカバー8との間の隙間81から流入した走行風は、第1マフラーカバー8内において導入風ガイド部84によって、テールパイプ74の排気出口74aと隔てられ導入風ガイド孔83から車両後方へ、排気出口74aから排出される排気ガス74b(図9中、黒矢印)と平行にエアカーテン83aを形成して排出される。図9において、8bはマフラーカバー8の後端部である。
なお、マフラー本体70の車両内側面に沿って隙間81へ流入した走行風も、第1マフラーカバー支持ステー85のマフラーカバー固定部86によって排気出口74aと隔てられ通風孔88から車両後方へ、排気出口74aから排出される排気ガス74bと平行に通風流れ88aを形成して排出される。

【0040】
本実施形態のマフラー装置7は上述のように構成されており、その作用と効果を、以下述べる。
すなわち、マフラー本体70の後部には、排気出口74aを後方に向けて突出させたテールパイプ74が設けられ、排気出口74aの周囲にはマフラー本体70から離間した第1マフラーカバー8を備えており、第1マフラーカバー8とマフラー本体70との間に走行風が導入される隙間81が設けられている。
そして、隙間81から導入された走行風を排気出口74aに対して排気出口74aの側方にガイドする導入風ガイド部84を備えている。
【0041】
従来、マフラーカバー外周を流れる走行風がマフラー装置の下流端で巻き込まれて乱流を発生することを低減するために、マフラーカバーをマフラー本体70と離間して設け隙間81に走行風を導入するものがあったが、その場合、隙間81から流入した走行風が排気出口74a近傍での乱流を発生していた。
しかし、本実施形態では、走行風を排気出口74aに対して排気出口74aの側方にガイドする導入風ガイド部84を設けたことで、排気出口74a近傍に走行風が当たることが防がれ排気出口74a近傍での乱流の発生を防ぐことができ、排気流れを良好にして、走行性能への影響をなくすことができる。
【0042】
第1マフラーカバー8は、その車両外側部8cに排気出口74aから離間して後方に向けて開口する導入風ガイド孔83を有しており、導入風ガイド部84は、第1マフラーカバー8の内部に、排気出口74aと導入風ガイド孔83との間に位置して、排気出口74aから排出される排気ガス74bの排出方向に対して平行に立設されている。
そのため、第1マフラーカバー8内に導入された走行風を、導入風ガイド部84によって排気ガス74bに当てることなく導入風ガイド孔83へ排出することができる。
さらに、導入された走行風を、導入風ガイド部84が排気ガス74bの排出方向と平行方向にガイドすることで、排気ガス74bの排出方向と平行方向に走行風のエアカーテン83aを作れるため、第1マフラーカバー8の車両外側面からの走行風の巻き込みを防ぐことができる。
【0043】
第1マフラーカバー8は、マフラー本体70の後端部70b全体を覆うテールキャップであり、周囲にいる人をマフラー本体70の後端部70bの熱から保護することができる。
また、第1マフラーカバー8は樹脂製であるので、軽量化およびコストダウンが可能となるうえ、輻射熱の発生を低減でき、周囲を輻射熱から保護できる。
【0044】
マフラー装置7は、マフラー本体70の外側面70aを覆う第2マフラーカバー9を備え、第2マフラーカバー9は第1マフラーカバー8との間に走行風を導く段付き組合せ部をなす走行風ガイド部91を有している。
そのため、第2マフラーカバー9と第1マフラーカバー8との間の走行風ガイド部91の隙間82から、第1マフラーカバー8とマフラー本体70との間の隙間81に走行風が導入されるので、第1マフラーカバー8の冷却性が向上している。
【0045】
第2マフラーカバー9とマフラー本体70との間には隙間75が設けられており、第2マフラーカバー9は、その上面9aに走行風を流入させる吸入口90を車両外側方に向けて有している。
そのため、吸入口90から第2マフラーカバー9とマフラー本体70との間の隙間75に取り入れた走行風を、第1マフラーカバー8内で導入風ガイド部84によって導入風ガイド孔83から排出することにより、第2マフラーカバー9外周を流れる走行風による乱流の発生を防ぐことができる。
【0046】
マフラー本体70は、後ろ上がりに傾斜して設けられており、後ろ上がりに傾斜するマフラー本体70の場合、第2マフラーカバー9の上面9aには走行風が当たり易いが、当たった走行風は、吸入口90から第2マフラーカバー9とマフラー本体70との隙間75に効率よく取り入れることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態に係るマフラー装置につき説明したが、本発明の態様が上記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲で、多様な態様で実施されるものを含むことは勿論であり、請求項1の要件を備えるマフラー装置であればよい。
また、本発明のマフラー装置を備えた鞍乗型車両は、実施形態に一般的態様例として示した自動二輪車に限らず、多様な形態、構造の自動二輪車であってよく、さらに例えば、3輪、4輪のバギー車等、多様な鞍乗型車両であってもよい。
内燃機関は、実施形態の空冷単気筒の4ストロークサイクル内燃機関に限定されず他種の多気筒内燃機関であってもよい。
また、各機器の左右の配置は、説明の便宜上、図示のものに特定して記載したが、上記実施形態に示すものと左右逆となる配置のものであってもよく、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…自動二輪車、2…車体フレーム、3…内燃機関、7…マフラー装置、8…第1マフラーカバー(本発明における「マフラーカバー」)、8a…前端部、8b…後端部、8c…車両外側部、8d…車両内側部、9…第2マフラーカバー(本発明における「第二のマフラーカバー」)、9a…上面、9b…後端部、9c…側面、13…リヤフォーク、14…後輪、22…ピボットフレーム、23…ダウンフレーム、23a…ブラケット、24…シートレール
、25…バックステー、26…ピリオンステップ支持ステー、30…クランクケース、31…クランク軸、33…シリンダヘッド、36…排気ポート、55…排気管、55a…後端部、70…マフラー本体、70a…外側面、70b…後端部、71…前部取付けブラケット、72…後部取付けブラケット、73…後端板、74…テールパイプ、74a…排気出口、74b…排気ガス、75…隙間、80…中央開口、81…隙間、82…隙間、83…導入風ガイド孔、83a…エアカーテン、84…導入風ガイド部、85…第1マフラーカバー支持ステー、85a…上部支持脚、85b…下部支持脚、85c…溶接部、85d…マフラーカバー係合部、86…マフラーカバー固定部、86a…締結孔、86b…締結ボルト、87…被締結孔、88…通風孔、88a…通風流れ、89…支持ステー係合部、90…吸入口、91…走行風ガイド部
図1
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図7
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図9