(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-06
(45)【発行日】2025-02-17
(54)【発明の名称】ウエハ載置台における均熱性の調整方法およびウエハ載置台の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20250207BHJP
【FI】
H01L21/68 R
(21)【出願番号】P 2023568093
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2022037254
(87)【国際公開番号】W WO2024075208
(87)【国際公開日】2024-04-11
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】杉本 博哉
(72)【発明者】
【氏名】森岡 育久
(72)【発明者】
【氏名】峯 慶太
(72)【発明者】
【氏名】田村 隆二
(72)【発明者】
【氏名】平田 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】梶浦 陽平
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157234(JP,A)
【文献】特開2020-53576(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2021-92207(KR,A)
【文献】特開2011-205000(JP,A)
【文献】特開2003-257943(JP,A)
【文献】特開2020-13931(JP,A)
【文献】特開2019-75399(JP,A)
【文献】特開2010-272873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基体に埋設されたESC電極に対し電圧を印加することにより前記セラミックス基体の載置面にウエハを静電吸着固定した状態で、前記セラミックス基体内に埋設されたヒータ電極による通電加熱と前記セラミックス基体に接合された冷却板内に設けられた流路に循環供給される冷媒による冷却とが行われるウエハ載置台の、前記ウエハ載置面の均熱性を調整する方法であって、
a)前記セラミックス基体と前記冷却板とを備え、前記冷却板が、前記セラミックス基体に接合されてなるとともに前記流路を備える基部と、前記基部に対して着脱自在であり、前記基部から取り外すことにより前記流路を開放可能な蓋部とによって構成されてなる前記ウエハ載置台を、用意する工程と、
b)前記蓋部を前記基部に取り付けた状態において、前記通電加熱と前記冷却とを行いつつ前記載置面の温度分布を測定する工程と、
c)測定された前記温度分布が所定の基準をみたさない場合に、前記蓋部を前記基部から取り外して前記流路の形状を局所的に調整する工程と、
d)前記工程c)において前記流路の形状が調整された前記ウエハ載置台の前記温度分布を、前記蓋部を前記基部に取り付けたうえで前記通電加熱と前記冷却とを行いつつ再測定する工程と、
を備え、
前記工程d)において再測定された前記温度分布が前記所定の基準をみたすまで、前記工程c)と前記工程d)を繰り返す、
ことを特徴とする、ウエハ載置台における均熱性の調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウエハ載置台における均熱性の調整方法であって、
前記工程a)において用意する前記ウエハ載置台の前記基部において、前記流路の少なくとも一つの箇所にフィンを突設させておく、
ことを特徴とする、ウエハ載置台における均熱性の調整方法。
【請求項3】
請求項2に記載のウエハ載置台における均熱性の調整方法であって、
前記工程c)においては、前記温度分布の測定結果に応じて定まる所定の位置にて、
前記フィンの高さを低くする工程、
前記流路の幅を広げる工程、
前記蓋部の一方主面の前記流路に面する箇所に溝部を形成する工程、または、
前記流路に新たなフィンを追加する工程、
の少なくとも1つを行う、
ことを特徴とする、ウエハ載置台における均熱性の調整方法。
【請求項4】
請求項3に記載のウエハ載置台における均熱性の調整方法であって、
前記工程c)において前記流路に前記新たなフィンを追加する場合に、前記新たなフィンの材質の熱伝導率を前記冷却板の材質の熱伝導率よりも高くする、
ことを特徴とする、ウエハ載置台における均熱性の調整方法。
【請求項5】
請求項1に記載のウエハ載置台における均熱性の調整方法であって、
前記工程c)においては、前記温度分布の測定結果に応じて定まる所定の位置にて、
前記流路の幅を広げる工程、
前記蓋部の一方主面の前記流路に面する箇所に溝部を形成する工程、または、
前記流路の少なくとも一つの箇所にフィンを突設させる工程、
の少なくとも1つを行う、
ことを特徴とする、ウエハ載置台における均熱性の調整方法。
【請求項6】
セラミックス基体に埋設されたESC電極に対し電圧を印加することにより前記セラミックス基体の載置面にウエハを静電吸着固定した状態で、前記セラミックス基体内に埋設されたヒータ電極による通電加熱と前記セラミックス基体に接合された冷却板内に設けられた流路に循環供給される冷媒による冷却とが行われる、ウエハ載置台の製造方法であって、
a)前記ESC電極および前記ヒータ電極を埋設したセラミックス基体と、前記流路となる溝部を備える前記冷却板の基部とを接合する工程と、
b)前記セラミックス基体と前記基部との接合体に、前記ESC電極に給電するための第1給電部と前記ヒータ電極に給電するための第2給電部とを埋設する工程と、
c)前記冷却板の蓋部を前記基部に対して着脱自在に取り付け、前記流路を閉じる工程と、
d)前記蓋部を前記基部に取り付けた状態において前記通電加熱と前記冷却とを行いつつ前記載置面の温度分布を測定する工程と、
e)測定された前記温度分布が所定の基準をみたさない場合に、前記蓋部を前記基部から取り外して前記流路の形状を局所的に調整する工程と、
f)前記工程e)において前記流路の形状が調整された前記ウエハ載置台の前記温度分布を、前記蓋部を前記基部に取り付けたうえで前記通電加熱と前記冷却とを行いつつ再測定する工程と、
を備え、
前記工程f)において再測定された前記温度分布が前記所定の基準をみたすまで、前記工程e)と前記工程f)を繰り返す、
ことを特徴とする、ウエハ載置台の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のウエハ載置台の製造方法であって、
遅くとも前記工程c)を行う前までに、前記流路の少なくとも一つの箇所にフィンを突設させる、
ことを特徴とする、ウエハ載置台の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のウエハ載置台の製造方法であって、
前記工程e)においては、前記温度分布の測定結果に応じて定まる所定の位置にて、
前記フィンの高さを低くする工程、
前記流路の幅を広げる工程、
前記蓋部の一方主面の前記流路に面する箇所に溝部を形成する工程、または、
前記流路に新たなフィンを追加する工程、
の少なくとも1つを行う、
ことを特徴とする、ウエハ載置台の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のウエハ載置台の製造方法であって、
前記工程e)において前記流路に前記新たなフィンを追加する場合に、前記新たなフィンの材質の熱伝導率を前記冷却板の材質の熱伝導率よりも高くする、
ことを特徴とする、ウエハ載置台の製造方法。
【請求項10】
請求項6に記載のウエハ載置台の製造方法であって、
前記工程e)においては、前記温度分布の測定結果に応じて定まる所定の位置にて、
前記流路の幅を広げる工程、
前記蓋部の一方主面の前記流路に面する箇所に溝部を形成する工程、または、
前記流路の少なくとも一つの箇所にフィンを突設させる工程、
の少なくとも1つを行う、
ことを特徴とする、ウエハ載置台の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハが静電吸着固定されるウエハ載置台に関し、特にその均熱調整処理に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単にウエハとも称する)に対しプラズマ処理などの所定の処理を行う際に、該ウエハが静電吸着固定されるウエハ載置台(ウエハステージなどとも称される)がすでに公知である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
係るウエハ載置台は概略、ウエハを静電吸着するためのESC電極(静電チャック電極)と、ウエハを加熱するためのヒータ電極とが埋設されているセラミックス基体と、該セラミックス基体を冷却するための冷媒が流れる流路を内部に備える冷却板(基台などとも称される)とが、接合層にて接合された構成を有する。
【0004】
係るウエハ載置台においては、セラミックス基体の上面である載置面にウエハが載置された状態で、ESC電極に直流電圧が印加されることにより、ウエハが静電吸着固定される。併せて、冷却板内部の流路に冷媒を流しつつ、ヒータ電極に対する通電を行うことで、ウエハがあらかじめ設定された所定の温度分布(均熱分布)にて加熱されるようになっている。
【0005】
上述のようなウエハ載置台においては通常、抜熱分布に見合う発熱密度が得られるようにヒータ電極が設けられることにより、所望の温度分布が確保されるようになっている。
【0006】
ただし、ウエハ載置台における抜熱分布は、接合層の厚みばらつきや冷却板の加工精度などの製造時の誤差要因により、個体毎に異なる。また、ヒータ電極の形状(断面積、幅など)に設計時からのばらつきが生じていることに起因して、想定されている発熱密度が得られない場合もある。これらの要因のため、ウエハ載置台に固定されたウエハ面上の温度分布は、個体毎に異なり得る。場合によっては、所望の温度分布が得られないウエハ載置台が、製造されてしまうことも起こり得る。
【0007】
そのため、従来構成のウエハ載置台については、製造歩留まりの向上に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-60019号公報
【文献】特許第6918642号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、ウエハ載置台のウエハ載置面における均熱性を、ウエハ載置台の製造後に調整可能な方法を提供することを、目的とする。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、セラミックス基体に埋設されたESC電極に対し電圧を印加することにより前記セラミックス基体のウエハ載置面にウエハを静電吸着固定した状態で、前記セラミックス基体内に埋設されたヒータ電極による通電加熱と前記セラミックス基体に接合された冷却板内に設けられた流路に循環供給される冷媒による冷却とが行われるウエハ載置台の、前記ウエハ載置面の均熱性を調整する方法であって、a)前記セラミックス基体と前記冷却板とを備え、前記冷却板が、前記セラミックス基体に接合されてなるとともに前記流路を備える基部と、前記基部に対して着脱自在であり、前記基部から取り外すことにより前記流路を開放可能な蓋部とによって構成されてなる前記ウエハ載置台を、用意する工程と、b)前記蓋部を前記基部に取り付けた状態において前記通電加熱と前記冷却とを行いつつ前記載置面の温度分布を測定する工程と、c)測定された前記温度分布が所定の基準をみたさない場合に、前記蓋部を前記基部から取り外して前記流路の形状を局所的に調整する工程と、d)前記工程c)において前記流路の形状が調整された前記ウエハ載置台の前記温度分布を、前記蓋部を前記基部に取り付けたうえで前記通電加熱と前記冷却とを行いつつ再測定する工程と、を備え、前記工程d)において再測定された前記温度分布が前記所定の基準をみたすまで、前記工程c)と前記工程d)を繰り返す、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係るウエハ載置台における均熱性の調整方法であって、前記工程a)において用意する前記ウエハ載置台の前記基部において、前記流路の少なくとも一つの箇所にフィンを突設させておく、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様に係るウエハ載置台における均熱性の調整方法であって、前記工程c)においては、前記温度分布の測定結果に応じて定まる所定の位置にて、前記フィンの高さを低くする工程、前記流路の幅を広げる工程、前記蓋部の一方主面の前記流路に面する箇所に溝部を形成する工程、または、前記流路に新たなフィンを追加する工程、の少なくとも1つを行う、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の態様は、第3の態様に係るウエハ載置台における均熱性の調整方法であって、前記工程c)において前記流路に前記新たなフィンを追加する場合に、前記新たなフィンの材質の熱伝導率を前記冷却板の材質の熱伝導率よりも高くする、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の態様は、第1の態様に係るウエハ載置台における均熱性の調整方法であって、前記工程c)においては、前記温度分布の測定結果に応じて定まる所定の位置にて、前記流路の幅を広げる工程、前記蓋部の一方主面の前記流路に面する箇所に溝部を形成する工程、または、前記流路の少なくとも一つの箇所にフィンを突設させる工程、の少なくとも1つを行う、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の態様は、セラミックス基体に埋設されたESC電極に対し電圧を印加することにより前記セラミックス基体のウエハ載置面にウエハを静電吸着固定した状態で、前記セラミックス基体内に埋設されたヒータ電極による通電加熱と前記セラミックス基体に接合された冷却板内に設けられた流路に循環供給される冷媒による冷却とが行われる、ウエハ載置台の製造方法であって、a)前記ESC電極および前記ヒータ電極を埋設したセラミックス基体と、前記流路となる溝部を備える前記冷却板の基部とを接合する工程と、b)前記セラミックス基体と前記基部との接合体に、前記ESC電極に給電するための第1給電部と前記ヒータ電極に給電するための第2給電部とを埋設する工程と、c)前記冷却板の蓋部を前記基部に対して着脱自在に取り付け、前記流路を閉じる工程と、d)前記蓋部を前記基部に取り付けた状態において前記通電加熱と前記冷却とを行いつつ前記載置面の温度分布を測定する工程と、e)測定された前記温度分布が所定の基準をみたさない場合に、前記蓋部を前記基部から取り外して前記流路の形状を局所的に調整する工程と、f)前記工程e)において前記流路の形状が調整された前記ウエハ載置台の前記温度分布を、前記蓋部を前記基部に取り付けたうえで前記通電加熱と前記冷却とを行いつつ再測定する工程と、を備え、前記工程f)において再測定された前記温度分布が前記所定の基準をみたすまで、前記工程e)と前記工程f)を繰り返す、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第7の態様は、第6の態様に係るウエハ載置台の製造方法であって、遅くとも前記工程c)を行う前までに、前記流路の少なくとも一つの箇所にフィンを突設させる、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第8の態様は、第7の態様に係るウエハ載置台の製造方法であって、前記工程e)においては、前記温度分布の測定結果に応じて定まる所定の位置にて、前記フィンの高さを低くする工程、前記流路の幅を広げる工程、前記蓋部の一方主面の前記流路に面する箇所に溝部を形成する工程、または、前記流路に新たなフィンを追加する工程、の少なくとも1つを行う、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第9の態様は、第8の態様に係るウエハ載置台の製造方法であって、前記工程e)において前記流路に前記新たなフィンを追加する場合に、前記新たなフィンの材質の熱伝導率を前記冷却板の材質の熱伝導率よりも高くする、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第10の態様は、第6の態様に係るウエハ載置台の製造方法であって、前記工程e)においては、前記温度分布の測定結果に応じて定まる所定の位置にて、前記流路の幅を広げる工程、前記蓋部の一方主面の前記流路に面する箇所に溝部を形成する工程、または、前記流路の少なくとも一つの箇所にフィンを突設させる工程、の少なくとも1つを行う、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第1ないし第10の態様によれば、載置面における温度分布が所定の基準をみたさない場合に、蓋部を取り外して流路の形状を調整することにより温度分布を改善することができる。これにより、製造後のウエハ載置台における温度分布を調整できるので、ウエハ載置台の製造歩留まりが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ウエハ載置台10の構成を示す模式断面図である。
【
図3】温度分布測定装置100の構成を模式的に示す図である。
【
図4】流路調整処理の様子を段階的に示す図である。
【
図5】流路調整処理の様子を段階的に示す図である。
【
図6】流路調整処理の様子を段階的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<ウエハ載置台>
図1は、本発明の実施の形態に係る均熱調整処理方法の対象となるウエハ載置台10の構成を示す模式断面図である。ウエハ載置台10は、半導体ウエハ(ウエハ)に対しプラズマ処理などの所定の処理を行う際に際し、ウエハを所定の温度分布にて加熱しつつ静電吸着により固定するためのものである。
【0023】
ウエハ載置台10は概略、セラミックス基体20と冷却板30とが、接合層40にて接合されることにより、セラミックス基体20と冷却板30とが積層配置された構成を有する。
【0024】
セラミックス基体20は、Al2O3やAlNなどの絶縁性セラミックスからなる円板状の部材である。セラミックス基体20においては、接合層40との接合面と反対側の主面が、ウエハの載置される載置面20aとなっている。
【0025】
セラミックス基体20には、ウエハを静電吸着するためのESC電極(静電チャック電極)21と、ウエハを加熱するためのヒータ電極22とが埋設されている。ESC電極21の方がヒータ電極22よりも、載置面20aの近くに埋設されている。
【0026】
ESC電極21およびヒータ電極22の材料としては、W、Mo、Ti、Si、Ruなどの金属、もしくはその炭化物や窒化物などが例示される。
【0027】
冷却板30は、内部に流路31を備えており、該流路31に対し外部から冷媒(例えば水)を導入することによってセラミックス基体20さらにはその載置面20aに静電吸着固定されたウエハを冷却する部位である。流路31は、セラミックス基体20の略全域が冷却されるよう、一の連続する溝部が平面視で渦巻き状に設けられるのが好適な一例である。あるいは、複数の独立した開環状の溝部が平面視で同心円状に設けられる態様であってもよい。
【0028】
より詳細には、冷却板30は、基部30aと蓋部30bとから構成されてなる。基部30aは、その一方主面側(図面視上側)において接合層40にてセラミックス基体20と接合されてなるとともに、他方主面側(図面視下側)には、蓋部30bが嵌め込まれる凹部30cと、該凹部30cからさらに掘り込まれた溝部である流路31とを備える。蓋部30bは、基部30aに設けられた凹部30cに嵌め込まれ、図示しないネジにて基部30aに対し複数箇所にてネジ止め固定されるが、係るネジ止め固定を解除することにより取り外すことができる。すなわち、蓋部30bは、基部30aに対し着脱自在とされてなる。
【0029】
なお、蓋部30bの固定に際し、基部30aと蓋部30bとの間に、冷媒の漏洩を防ぐための封止部材が配置される態様であってもよい。係る封止部材としては、液状ガスケットやOリングなどが例示される。
【0030】
蓋部30bが基部30aに固定された状態では、流路31は蓋部30bの一方主面30dによって閉じられるが、係る固定を解除して蓋部30bを取り外すことにより、流路31を開放状態とすることができる。これにより、本実施の形態に係るウエハ載置台10においては、蓋部30bを取り外すことにより、完成後も流路31にアクセスすることが可能となっている。
【0031】
冷却板30の材料としては、アルミニウムなどの金属材料を用いるのが好適であるが、セラミックスや、金属とセラミックスとの複合材料が用いられる態様であってもよい。
【0032】
接合層40によるセラミックス基体20と冷却板30との接合は、例えば、接合前のセラミックス基体20と冷却板30とを樹脂製の接着剤あるいは接着シート、金属ロウ材、セラミックボンドなどの接着層にて接着することによって得られる積層体を対象に、所定の温度で加熱しつつ加圧する加熱加圧接合を行うことにより、実現されてなる。
【0033】
また、ウエハ載置台10にはさらに、ESC電極21に対する給電を担う第1給電部50と、ヒータ電極22に対する給電を担う第2給電部60とが備わっている。
【0034】
第1給電部50は、セラミックス基体20と冷却板30との積層方向に沿って設けられてなり、給電端子51と、該給電端子51を囲繞する絶縁部材(スリーブ)52と、給電端子51の一方端部に設けられ、ESC電極21に接続される接続部53とを備える。第1給電部50は、接続部53が備わる側の所定範囲がセラミックス基体20および基部30aに埋設固定されてなる一方、残りの部分は冷却板30に備わる貫通穴33に貫通させられてなり、他方端部側において外部に露出してなる。そして、係る他方端部側において給電端子51が外部に備わるESC電源70と電気的に接続されてなる。
【0035】
セラミックス基体20の載置面20aにウエハが載置された状態で、ESC電源70にて給電端子51および接続部53を通じてESC電極21に直流電圧が印加されることにより、ウエハが載置面20aに静電吸着される。
【0036】
また、第2給電部60は、給電端子61と、該給電端子61を囲繞する絶縁部材(スリーブ)62と、給電端子61の一方端部に設けられ、ヒータ電極22に接続される接続部63とを備える。第2給電部60は、接続部63が備わる側の所定範囲がセラミックス基体20および基部30aに埋設固定されてなる一方、残りの部分は冷却板30に備わる貫通穴34に貫通させられてなり、他方端部側において外部に露出してなる。そして、係る他方端部側において給電端子61が外部に備わるヒータ電源80と電気的に接続されてなる。
【0037】
ヒータ電源80にて給電端子61および接続部63を通じてヒータ電極22に通電がなされることにより、ウエハ載置台10さらにはウエハが加熱される。
【0038】
また、蓋部30bの所定位置には、該蓋部30bが基部30aに固定された状態において流路31に連通する冷媒出入口35が貫通してなる。なお、
図1においては図示の簡単のため、冷媒出入口35を1つのみ示しているが、実際には、冷媒出入口35は、流路31を構成する溝部の両端部にそれぞれ1つずつ設けられる。それぞれの冷媒出入口35は、流路31に対し冷媒を循環供給させるチラーユニット90に接続されてなる。
【0039】
流路31の少なくとも一つの箇所には、フィン32が突設されてなる。フィン32は、その配置箇所における冷媒の流速を増大させ、局所的に冷却効率を高める作用を有する。フィン32の形状およびサイズは、その配置箇所に求められる冷却状況に応じて、適宜に定められる。フィン32は、冷却板30の材料と同じ材料にて設けられていてもよいし、冷却板30とは異なる材料にて設けられていてもよい。なお、フィン32が設けられない態様であってもよい。
【0040】
以上のような構成を有するウエハ載置台10においては、載置面20aに載置したウエハをESC電極21に対する電圧の印加によって静電吸着固定させた状態で、ヒータ電極22に対する通電による加熱と流路31に対する冷媒の循環供給とを並行して行うことにより、加熱と冷却とをバランスさせることによって、所定の温度分布にてウエハを加熱することができるようになっている。
【0041】
係るウエハ載置台10は、例えば、ESC電極21とヒータ電極22とが埋設されたセラミックス基体20と、基部30aおよび蓋部30bをそれぞれに用意したうえで、セラミックス基体20と基部30aとを接合層40にて接合し、続いて第1給電部50および第2給電部60を埋設し、最後に蓋部30bを基部30aに対し取り付けるという手順にて、製造可能である。
【0042】
セラミックス基体20の作製は例えば、ESC電極21用の電極パターンが印刷形成されたセラミックスグリーンシートと、ヒータ電極22用の電極パターンが印刷形成されたセラミックスグリーンシートとを含む複数のセラミックスグリーンシートを積層接着することで形成したグリーンシート成形体を、ホットプレス焼成することにより行える。
【0043】
また、冷却板30の基部30aおよび蓋部30bは、バルク金属の切削加工や、ゲルキャスティングその他の鋳造などの手法にて、作製することができる。その際、基部30aには凹部30cおよび流路31が形成され、さらには、フィン32が所定の位置に突設される。一方、蓋部30bには貫通穴33、貫通穴34、および冷媒出入口35が設けられる。また、基部30aおよび蓋部30bの双方に、蓋部30bを基部30aにネジ止め固定する際に使用される図示しないネジ穴が設けられる。
【0044】
さらに、セラミックス基体20と基部30aとの接合体には、第1給電部50および第2給電部60とを埋設するための孔(埋設孔)も、設けられる。なお、埋設孔は、接合後に連通するように、接合前のセラミックス基体20と基部30aのそれぞれに個別に設けられてもよい。
【0045】
なお、あらかじめ接合前のセラミックス基体20に第1給電部50および第2給電部60を埋設させた後、これら第1給電部50および第2給電部60をそれぞれ貫通穴33および貫通穴34に挿通させつつセラミックス基体20と基部30aとを接合する態様であってもよい。
【0046】
<均熱調整処理>
次に、本実施の形態に係るウエハ載置台10を対象とする均熱調整処理について説明する。
図2は、均熱調整処理の流れを示す図である。均熱調整処理は概略、いったん作製されたウエハ載置台10の載置面20aにおける温度分布が、所望の均熱性をみたしていない場合に、係る均熱性を向上させるために行う処理である。
【0047】
まず、例えば上述のような手順で作製された、調整対象となるウエハ載置台10を用意し(ステップS1)、係るウエハ載置台10を対象に、載置面20aにおける温度分布を測定する(ステップS2)。
【0048】
図3は、載置面20aの温度分布の測定に用いる、温度分布測定装置100の構成を、模式的に示す図である。
【0049】
温度分布測定装置100は、測定対象たるウエハ載置台10が内部に配置されるチャンバ110を備える。チャンバ110にはウエハ載置台10を下方支持する支持台111が設けられてなり、ウエハ載置台10は、載置面20aが鉛直上方を向く姿勢にて支持台111に支持される。
【0050】
ウエハ載置台10が支持台111に支持された状態で該ウエハ載置台10の載置面20aと対向する、チャンバ110の天井面には、窓120が設けられてなる。さらに、チャンバ110の外部には、窓120を通してチャンバ110内を撮像可能なIRカメラ130が備わっている。
【0051】
また、
図3においては図示を省略するが、温度分布測定装置100においては、ウエハ載置台10を支持台111に支持させた状態において、第1給電部50に対するESC電源70の接続と、第2給電部60に対するヒータ電源80の接続と、冷媒出入口35に対するチラーユニット90の接続とが、可能となっている。
【0052】
以上のような構成を有する温度分布測定装置100においては、ヒータ電源80からヒータ電極22への通電による加熱と、チラーユニット90による流路31に対する冷媒の循環供給とを行いつつ、IRカメラ130により、支持台111に支持されたウエハ載置台10の載置面20aを撮像することが可能となっている。すなわち、載置面20aにおける温度分布を測定することが可能となっている。測定結果は、例えば温度マッピングデータとして得ることができる。
【0053】
温度分布測定装置100により載置面20aの温度分布が得られると、次いで、係る測定の結果に基づき、載置面20aの均熱評価を行う(ステップS3)。
【0054】
均熱評価においては、測定により得られた温度分布があらかじめ設定された所定の基準をみたしている否かが判断される(ステップS4)。基準の設定は、ウエハに求められる温度分布などに応じて適宜に行われてよい。例えば、得られた温度分布における局所的な温度ばらつきが所定の閾値範囲内であるか否かが判断される態様であってもよいし、得られた温度分布とウエハ載置台10の設計時に想定されている温度分布との差異が所定の閾値範囲内に収まっているか否かが判断されてもよい。
【0055】
温度分布が所定の基準をみたしていると判断された場合(ステップS4でYES)、その時点で処理は終了する。
【0056】
一方、温度分布が所定の基準をみたしていないと判断された場合(ステップS4でNO)、温度分布を改善させるため、より具体的には冷却板30による抜熱分布を改善させるため、流路31の形状(典型的には断面積)を局所的に調整する処理である流路調整処理を行う。
図4ないし
図6は、係る流路調整処理の様子を段階的に示す図である。流路調整処理により、調整対象箇所における冷媒の流れが局所的に変化する。
【0057】
具体的にはまず、温度分布測定装置100から取り出された、ヒータ電源80およびチラーユニット90との接続が解除されるとともに流路31から冷媒が除去されてなるウエハ載置台10において、
図4に示すように蓋部30bが基部30aから取り外される(ステップS5)。これにより、流路31が開放状態とされ、係る流路31に対するアクセスが可能となる。
【0058】
続いて、アクセス可能となった流路31に対し、温度分布の測定の結果に基づき形状の調整を行う(ステップS6)。
【0059】
具体的な調整の手法には、以下の手法(a)~(d)の4通りがある。温度分布を改善したい箇所および所望される効果(温度上昇あるいは低下)に応じて、これらの手法(a)~(d)による調整が単独で、あるいは組み合わされて行われる。
図5に、それぞれの手法の例を示している。
【0060】
(a)流路31にあるフィン32の高さを低くする:フィン32の高さが低くなると、当該フィン32の突設箇所における流路31の断面積が大きくなる。これによって当該箇所における冷媒の流速が低下し、抜熱効率が下がるため、載置面20aの当該箇所の近傍における温度が調整前よりも上昇する。
図5においては、フィン32aの高さがΔhだけ小さくされる場合を例示している。フィン32の高さを低くする具体的手法としては、フィン32の切削や、より短いフィン32への交換などが例示される。
【0061】
(b)流路31の幅を広げる:流路31の幅が広がると、当該箇所における流路の断面積が大きくなる。これによって冷媒の流速が低下し、抜熱効率が下がるため、載置面20aの当該箇所の近傍における温度が調整前よりも上昇する。
図5においては、流路31bの両側面においてΔtずつ幅が広げられる場合を例示している。流路31の幅を広げる具体的手法としては、流路31の側面の切削が例示される。
【0062】
(c)蓋部30bの一方主面30dの流路31に面する箇所に溝部を形成する:取り外した蓋部30bの一方主面30dの、基部30aに取り付けられた状態においては流路31に面する箇所に、溝部を形成すると、蓋部30bが再び取り付けられた状態において当該箇所における流路31の断面積が大きくなる。これによって冷媒の流速が低下し、抜熱効率が下がるため、載置面20aの当該箇所の近傍における温度が調整前よりも上昇する。
図5においては、流路31cに面する箇所に溝部gが設けられる場合を例示している。係る溝部を形成する具体的手法としては、切削、ハンマリングなどが例示される。
【0063】
(d)流路31にフィン32を追加する:フィン32がなかった箇所に、新たにフィン32を突設させることにより、当該箇所における流路31の断面積が
小さくなる。これによって冷媒の流速が増大し、抜熱効率が上がるため、載置面20aの当該箇所の近傍における温度が調整前よりも低下する。なお、係る手法(d)には、流路31にあらかじめ突設されてなるフィン32が存在しない場合にフィン32を設ける場合も含まれる。
図5においては、流路31dにフィン32dが追加される場合を例示している。
【0064】
フィン32の代わりに、ピン形状のものを設けるようにした場合にも、同様の効果が得られる。また、冷却効率を上げるため、追加するフィン32(もしくはピン)として、冷却板30の材質よりも熱伝導率が高い材質のものを使用するようにしてもよい。所望される調整態様(例えば温度の変化度合い)に応じて、適切な材料あるいは形状が選択されればよい。
【0065】
以上の手法(a)~(d)に基づく流路31の調整がなされると、
図6に示すように、蓋部30bが改めて基部30aに取り付けられる(ステップS7)。そして、温度分布測定装置100による温度分布の測定(ステップS2)と、得られた測定結果に基づく均熱評価(ステップS3)とが、改めて行われる。均熱評価の結果、温度分布が所定の基準をみたしていると判断された場合(ステップS4でYES)、処理は終了する。
【0066】
係る再度の均熱評価によっても温度分布が所定の基準をみたしていないと判断された場合(ステップS4でNO)は、最終的に温度分布が所定の基準を満たすようになるまで、流路調整処理と温度分布測定と均熱評価とが繰り返される。
【0067】
以上、説明したように、本実施の形態においては、セラミックス基体と冷却板とが接合されてなり、セラミックス基体内に埋設したヒータ電極による通電加熱と冷却板内に循環供給される冷媒による冷却とをバランスさせることによって、セラミックス基体上の載置面に静電吸着固定したウエハを所定の温度分布にて加熱することができるウエハ載置台において、冷却板を、セラミックス基体に接合される基部と、該基部に対し着脱自在とされてなる蓋部にて構成し、蓋部を取り外すことによって冷媒が流れる流路を開放できるようにしている。これにより、載置面における温度分布が所定の基準をみたさない場合に、蓋部を取り外して流路の形状を調整することにより温度分布を改善することができる。製造後のウエハ載置台における温度分布を調整できることにより、ウエハ載置台の製造歩留まりが向上する。
【0068】
<変形例>
上述の実施の形態においては、ウエハが載置されていない載置面20aを対象に温度分布を測定していたが、これに代わり、載置面20aにウエハを載置し、ESC電源70による電圧の印加にてウエハを載置面20aに静電吸着固定した状態で、ウエハ表面の温度分布を測定するようにしてもよい。この場合、流路調整処理を経たウエハ載置台の温度分布を再び測定する場合にも、ウエハを載置することが望ましい。