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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】移動・滞留判定装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/246 20170101AFI20250210BHJP
【FI】
G06T7/246
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020123673
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020273
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390001454
【氏名又は名称】NECネッツエスアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518126409
【氏名又は名称】株式会社アジラ
(74)【代理人】
【識別番号】100176256
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 隆敬
(72)【発明者】
【氏名】野村 安英
(72)【発明者】
【氏名】高寺 香子
(72)【発明者】
【氏名】平田 克己
(72)【発明者】
【氏名】西森 大貴
(72)【発明者】
【氏名】木村 大介
【審査官】吉田 千裕
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0106796(KR,A)
【文献】寺田 賢治 Kenji Terada,電子・情報・システム分野の最先端技術,電気学会論文誌C Vol.133 No.3 IEEJ,日本,一般社団法人電気学会 The Institute of Electrical Engineers of Japan,2013年03月01日,第133巻
【文献】岩藤 那留 Naru Iwado,カメラを用いた不審者の自動検出 The Automatic Detection of Suspicious Person by Using Camera,SSII2011 第17回 画像センシングシンポジウム講演論文集 [CD-ROM] 17th Symposium on Sensing via Image Information,日本,画像センシング技術研究会,2011年06月08日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/246
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に固定された撮影手段によって撮影され、対象となる行動体が映った複数の時系列画像からそれぞれ検出された前記行動体の体の所定の部位を観察点として取得する取得部と、
各時系列画像においてそれぞれ取得された観察点のうち、基準点となる一の観察点を中心とした所定範囲内に含まれる観察点の割合に基づいて前記行動体の移動又は停留を判定する判定部と、
を備えたことを特徴とする移動・滞留判定装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記複数の時系列画像を1セットとした場合に、前記撮影手段によって撮影された時間が前又は後のセットと所定時間ずつ重なるような複数セットからそれぞれ検出された前記観察点を取得し、
前記判定部は、各セットにおいて、所定番目の画像で取得された観察点を中心とした前記所定範囲内に含まれる観察点の割合に基づいて前記行動体の移動又は滞留の判定を順次行うことを特徴とする請求項1に記載の移動・滞留判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、各セットにおいて順次行った判定結果に基づいて前記行動体の移動又は滞留の報知を行うか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載の移動・滞留判定装置。
【請求項4】
前記所定範囲を設定するための設定部を更に備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の移動・滞留判定装置。
【請求項5】
前記観察点は、前記行動体の体の中心線上の部位を検出されたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の移動・滞留判定装置。
【請求項6】
コンピュータに、
所定の位置に固定された撮影手段によって撮影され、対象となる行動体が映った複数の時系列画像からそれぞれ検出された前記行動体の体の所定の部位を観察点として取得するステップと、
各時系列画像においてそれぞれ取得された観察点のうち、基準点となる一の観察点を中心とした所定範囲内に含まれる観察点の割合に基づいて前記行動体の移動又は停留を判定するステップと、
実行させるための移動・滞留判定プログラム。
【請求項7】
前記取得するステップでは、前記複数の時系列画像を1セットとした場合に、前記撮影手段によって撮影された時間が前又は後のセットと所定時間ずつ重なるような複数セットからそれぞれ検出された前記観察点を取得し、
前記判定するステップでは、各セットにおいて、所定番目の画像で取得された観察点を中心とした前記所定範囲内に含まれる観察点の割合に基づいて前記行動体の移動又は滞留の判定を順次行うことを特徴とする請求項6に記載の移動・滞留判定プログラム。
【請求項8】
前記判定するステップでは、各セットにおいて順次行った判定結果に基づいて前記行動体の移動又は滞留の報知を行うか否かを判定することを特徴とする請求項7に記載の移動・滞留プログラム。
【請求項9】
前記観察点は、前記行動体の体の中心線上の部位を検出されたものであることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の移動・滞留判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列画像に映った行動体の体の所定部位について検出された観察点に基づき、行動体の移動や滞留を判定するための移動・滞留判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、映像データに含まれる対象の物体(人)が対象領域(待合所)に入ってからの経過時間を計算することにより、対象領域(待合所)における滞在時間を特定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6534715号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、介護の現場などでは、被介護者が僅かでも動いているのか、全く動いていないのかの情報が必要なことがあるが、上記技術では、対象の物体(人)が待合所のようなある程度広い範囲内に滞在しているか否かを検出しているだけであり、対象の物体(人)の僅かな移動まで検出する方法は開示していない。
【0005】
また、検出装置が対象物の検出を失敗することもあるが、そのような場合、上記技術では、対象の物体(人)が対象領域(待合所)内に存在しているにも関わらず、滞在時間がリセットされてしまうことになる。
【0006】
そこで、本発明は、時系列画像に映った行動体の移動や滞留を適切に判定することが可能な移動・滞留判定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、所定の位置に固定された撮影手段によって撮影され、対象となる行動体が映った複数の時系列画像からそれぞれ検出された前記行動体の体の所定の部位を観察点として取得する取得部と、各時系列画像においてそれぞれ取得された観察点のうち、基準点となる一の観察点を中心とした所定範囲内に含まれる観察点の割合に基づいて前記行動体の移動又は停留を判定する判定部と、を備えたことを特徴とする移動・滞留判定装置を提供している。
【0008】
このような構成によれば、所定範囲内に含まれる観察点の割合と、設定された割合と、を比較するという簡易な構成で、行動体の“移動”、“滞留”を高精度に判定することが可能となる。また、“滞留(移動)”に向かっている可能性の高いものまで含めて“滞留(移動)”の判定が行われるので、実態に即した適切な判定を行うことが可能となる。また、移動や滞留の判定のためには観察点さえ検出できればよく、顔画像などの個人を特定可能な画像を必要としないので、プライバシーも保護される。また、“割合”を10割未満に設定しておくことで、観察点の検出に失敗したような場合であっても、誤った判定が行われることが抑制される。
【0009】
また、前記取得部は、前記複数の時系列画像を1セットとした場合に、前記撮影手段によって撮影された時間が前又は後のセットと所定時間ずつ重なるような複数セットからそれぞれ検出された前記観察点を取得し、前記判定部は、各セットにおいて、所定番目の画像で取得された観察点を中心とした前記所定範囲内に含まれる観察点の割合に基づいて前記行動体の移動又は滞留の判定を順次行うことが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、変化していく基準点に対して移動又は滞留の判定が順次行われるので、より適切な判定を行うことが可能となる。
【0011】
また、前記判定部は、各セットにおいて順次行った判定結果に基づいて前記行動体の移動又は滞留の報知を行うか否かを判定することが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、例えば、所定時間以上“滞留”している場合のように、必要性の高い状況で“移動”又は“滞留”の報知を行うことが可能となる。
【0013】
また、前記所定範囲を設定するための設定部を更に備えたことが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、目的に応じて所定範囲を設定することで、適切な“移動”、“滞留”の判定を行うことが可能となる。
【0015】
また、前記観察点は、前記行動体の体の中心線上の部位を検出されたものであることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、体全体が移動していなければ、手足を動かした程度で“移動”と判定されることが防止される。
【0017】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータにインストールされるプログラムであって、所定の位置に固定された撮影手段によって撮影され、対象となる行動体が映った複数の時系列画像からそれぞれ検出された前記行動体の体の所定の部位を観察点として取得するステップと、各時系列画像においてそれぞれ取得された観察点のうち、基準点となる一の観察点を中心とした所定範囲内に含まれる観察点の割合に基づいて前記行動体の移動又は停留を判定するステップと、を備えたことを特徴とする移動・滞留判定プログラムを提供している。
【発明の効果】
【0018】
本発明の移動・滞留判定装置によれば、時系列画像に映った行動体の移動や滞留を適切に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態による時系列画像の説明図
図2】本発明の実施の形態による移動・滞留判定装置のブロック図
図3】本発明の実施の形態による所定の範囲の説明図
図4】本発明の実施の形態による複数セットの移動検出の説明図
図5】本発明の実施の形態による移動検出のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による移動・滞留判定装置1について、図1図5を参照して説明する。
【0021】
移動・滞留判定装置1は、図1に示すように、所定の位置に固定された撮影手段によって撮影された複数の時系列画像X(動画を構成する各フレーム等)に映った対象となる行動体Yの移動や滞留を判定するためのものである。本実施の形態では、行動体Yとして人間を採用し、理解容易のため、行動体Yを骨格だけで簡易的に表示する。
【0022】
移動・滞留判定装置1は、図2に示すように、記憶部2と、検出部3と、取得部4と、判定部5と、設定部6と、報知部7と、を備えている。
【0023】
記憶部2は、“関節識別基準”と、“行動体特定基準”と、を記憶している。
【0024】
“関節識別基準”は、行動体Yの複数の関節(図1では、首、右肘、左肘、腰、右膝、左膝)を識別するためのものであり、関節ごとに、それぞれを識別するための形状、方向、サイズ等を示したものである。
【0025】
“行動体特定基準”は、行動体Yの行動の様々なバリエーション(“歩行”、“直立”等)の “基本姿勢 “、”各関節の可動域“、一の行動体Yにおける”各関節間の距離“等を示したものである。
【0026】
検出部3は、行動体Yが映った複数の時系列画像Xのそれぞれから、行動体Yの体の所定の部位を検出し、取得部4は、検出部3によって検出された所定の部位を観察点Zとして取得する。所定の部位としては、体の中心線上の部位であることが好ましく、本実施の形態では、図3に示すように、首の関節を観察点Zとして検出するものとする。
【0027】
観察点Zの検出は、各時系列画像Xに映った行動体Yを特定した上で行われる。
【0028】
行動体Yの特定としては、公知の方法を用いることもできるが、本実施の形態では、記憶部2に記憶された“関節識別基準”に該当する複数の関節を識別した上で、“行動体特定基準”を参照して、行動体Yに含まれる複数の関節を特定する。そして、特定された行動体Yの関節の中で、所定の部位(本実施の形態では、“首”)の“関節識別基準”に該当する関節を識別する。そして、次の時系列画像Xでも同様の特定を行った上で、“行動体特定基準”を参照して連続する行動や動作である可能性が高ければ、前の時系列画像Xで特定された行動体Yと同一であると特定する。
【0029】
判定部5は、各時系列画像Xにおいてそれぞれ取得された観察点Zのうち、基準点Sとなる一の観察点Zを中心とした所定範囲R内に含まれる観察点Zの割合に基づいて行動体Yの移動や滞留を判定する(図3参照)。本実施の形態では、判定部5が所定範囲R内に含まれる観察点Zの割合も算出するものとする。
【0030】
例えば、取得部4が5枚の時系列画像Xを取得するように設定されているとき、4個以上の観察点Zが所定範囲R内に含まれていない場合(図3(a))には「移動」と判定するように設定し、4個以上の観察点Zが所定範囲R内に含まれていた場合(図3(b)-(e))には「移動していない(滞留)」と判定することが考えられる。
【0031】
そして、判定部5は、上記判定を複数セットに関して順次行う。
【0032】
詳細には、取得部4は、複数の時系列画像Xを1セットとした場合に、撮影された時間が前又は後のセットと所定時間ずつ重なるような複数セットからそれぞれ検出された観察点Zを順次取得し、判定部5は、各セットにおいて、所定番目の画像で取得された観察点Zを中心とした所定範囲内Rに含まれる観察点Zの割合に基づいて行動体Yの移動や滞留の判定を順次行う。
【0033】
例えば、1秒間隔で撮影された5枚の時系列画像Xを1セットで用いるとすると、図3及び図4に示すように、まず、1セット目では、5枚の時系列画像X1-X5のうちの1枚目の画像X1で検出された観察点Z1を基準点Sとし、画像X1-X5においてそれぞれ検出された観察点Zのうち、基準点Sを中心とした所定範囲R内に含まれる観察点Zの割合を算出する。図3(a)及び図4では、画像X1の観察点Z1を基準点Sとする1セット目では、3個の観察点Zしか所定範囲R内に含まれていないので、“移動(MOVE)”判定が行われることとなる。
【0034】
続いて、2セット目では、5枚の時系列画像X2-X6のうちの画像X2で検出された観察点Z2を基準点Sとし、画像X2-X6においてそれぞれ検出された観察点Zのうち、基準点Sを中心とした所定範囲R内に含まれる観察点Zの割合を算出する。図3(b)及び図4では、画像X2の観察点Z2を基準点Sとする2セット目では、5個の観察点Zが所定範囲R内に含まれているので、“滞留(STAY)”判定が行われることとなる。同様にして、画像X3-5の観察点Z3-5を基準点Sとする3-5セット目でも“滞留(STAY)”判定が行われることとなる。
【0035】
なお、連続する時系列画像Xが撮影される間隔(時間)は均一なので、上記例では、前後のセットにおいて4枚の画像分の時間が重なっていることとなる。
【0036】
ここで、もし公知のトラッキング方法で行動体Yの移動を判定したとすると、「画像X1-X4(観察点Z1-Z4)で大きく移動し、画像X4-X9(観察点Z4-Z9)で小さく移動しているので、画像X4-X9(観察点Z4-Z9)で滞留した」と判定することが考えられる。
【0037】
一方で、本実施の形態では、図4に示すように、画像X1で検出された観察点Z1を基準点Sとした1セット目だけ“移動”と判定され、以降は“滞留”と判定される。これは、行動体Yが“移動”や“滞留”に収束していくことを先読みしていることを意味している。すなわち、例えば、実際には“移動”していても、“滞留”に向かっているものに関しては、早めに“滞留”判定を行っていることとなる。
【0038】
このようにして、本実施の形態では、“滞留(移動)”に向かっている可能性の高いものまで含めて“滞留(移動)”の判定が行われるので、実態に即した適切な判定を行うことが可能となる。
【0039】
ところで、各セットの“移動”、“滞留”の判定結果を羅列して出力されるだけでは、ユーザは、その判定結果に基づきどのように判断を行えば良いのかが分かりにくい可能性がある。
【0040】
例えば、移動・滞留判定装置1を高齢者や乳児等の見守りに用いる場合や、不審者のうろつき等の防犯に用いる場合には、ユーザとしては、所定時間以上“滞留”した際に“滞留”の報知を行ってもらいたいものと考えられる。
【0041】
そこで、本実施の形態では、判定部5は、このようにして各セットで得られた判定結果に基づいて、行動体Yの移動又は滞留の報知を行うか否かを判定する。詳細には、報知基準を設定しておき、各セットで得られた判定結果が報知基準を満たした場合に行動体Yの移動又は滞留の報知を行う。
【0042】
例えば、所定セット以上“滞留”又は“移動”判定が連続した場合に“滞留”又は“移動”の報知を行う旨の報知基準を設定しておくことが考えられる。
【0043】
また、記憶部2に様々な動作の“滞留”、“移動”のタイミングを記憶しておくことで、複数セットから得られた判定結果に応じて、例えば、「寝返りを打った」、「キョロキョロしている」等の移動の態様も併せて報知を行ってもよい。
【0044】
設定部6は、所定範囲Rを設定するためのものである。
【0045】
所定範囲Rは、例えば、「基準点Sを中心とした○○cmの半径を有する円周内」のように設定することが考えられる。この場合の半径は、目的に応じて設定すればよく、例えば、移動・滞留判定装置1を高齢者や乳児等の見守りに用いる場合には、僅かな動きでも“移動”と判定されるように、所定範囲Rを狭くしておくことが考えられる。一方、移動・滞留判定装置1を不審者のうろつき等の発見に用いる場合には、多少の移動ならば“滞留”と判定されるように、所定範囲Rを広くしておくことが考えられる。
【0046】
なお、所定範囲Rは、円周に限らず、楕円や四角形等の基準点Sに対して点対称な形状に設定することも可能である。例えば、上下方向への移動を主に検出したい場合には、長軸を水平方向にした楕円を用い、左右方向への移動を主に検出したい場合には、長軸を垂直方向にした楕円を用いることが考えられる。
【0047】
また、所定範囲Rとしては、画像X上のサイズを用いてもよいし、実際のサイズを用いてもよい。実際のサイズを用いる場合には、例えば、“関節識別基準”と、検出された関節と、を比較して画像Xにおける行動体Yの縮尺率を算出し、当該縮尺率に応じた所定範囲Rを用いることが考えられる。
【0048】
また、設定部6では、上述した“移動や滞留の判定の基準(観察点Zの割合)”や“報知基準”も設定される。
【0049】
報知部7は、判定部5により「報知を行う」と判定された場合に報知を行う。報知としては、音声によりアラートを行ってもよいし、メール等での通知を行ってもよいし、単に「移動」又は「滞留」を示す出力を行うだけであってもよい。
【0050】
続いて、図5のフローチャートを用いて、移動・滞留判定装置1による移動・滞留判定について説明する。
【0051】
まず、複数の時系列画像Xからそれぞれ検出された行動体Yの体の所定の部位(本実施の形態では、“首”の関節)を観察点Zとして取得する(S1)。
【0052】
続いて、各時系列画像Xにおいてそれぞれ取得された観察点Zのうち、一の観察点Z(基準点S)を中心とした所定範囲R内に含まれる観察点Zの割合に基づいて行動体Yの移動又は滞留を判定する(S2)。
【0053】
そして、S1-S2の動作を複数セット繰り返す中で、報知基準を満たした場合に(S3:YES)、行動体Yの移動又は滞留の報知を行う(S4)。
【0054】
このような構成を有する移動・滞留判定装置1は、防犯、救助等の様々な用途で用いることができる。
【0055】
例えば、移動・滞留判定装置1を、施設の軒先で取得した時系列画像Xに対して移動・滞留判定装置1を用いることで、敷地内に勝手に入り込んで寝ている人間等を検出することが可能となる。
【0056】
また、移動・滞留判定装置1を、一人暮らしの高齢者宅、介護施設、乳児の見守り等に用いることで、生存確認することが可能となる。
【0057】
更に、本実施の形態による移動・滞留判定装置1では、複数人それぞれの観察点Zを検出することで、複数人のそれぞれについて、滞留しているのか、移動しているのか、を判定することも可能である。例えば、同一画面内に複数人が映っていて、それぞれが画面内で横切っていたり、転倒や暴力行為などを行っていたり、滞留していたりした場合でも、観察点Zをもとに、滞留している人物又は移動している人物のみを把握することが可能である。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態による移動・滞留判定装置1では、各時系列画像Xにおいてそれぞれ検出された観察点Zのうち、一の観察点Z(基準点S)を中心とした所定範囲R内に含まれる観察点Zの割合に基づいて行動体Yの移動又は滞留を判定する。
【0059】
このような構成によれば、所定範囲R内に含まれる観察点Zの割合と、設定された割合と、を比較するという簡易な構成で、行動体Yの“移動”、“滞留”を高精度に判定することが可能となる。また、“滞留(移動)”に向かっている可能性の高いものまで含めて“滞留(移動)”の判定が行われるので、実態に即した適切な判定を行うことが可能となる。また、移動や滞留の判定のためには観察点Zさえ検出できればよく、顔画像などの個人を特定可能な画像を必要としないので、プライバシーも保護される。また、“割合”を10割未満に設定しておくことで、観察点Zの検出に失敗したような場合であっても、誤った判定が行われることが抑制される。
【0060】
また、本実施の形態による移動・滞留判定装置1では、複数の時系列画像Xを1セットとした場合に、撮影手段によって撮影された時間が前又は後のセットと所定時間ずつ重なるような複数セットからそれぞれ検出された観察点Zを取得し、各セットにおいて、所定番目の画像で取得された観察点Zを中心とした所定範囲内Rに含まれる観察点Zの割合に基づいて行動体Yの移動又は滞留の判定を順次行う。
【0061】
このような構成によれば、変化していく基準点Sに対して移動又は滞留の判定が順次行われるので、より適切な判定を行うことが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態による移動・滞留判定装置1では、各セットで求められた複数の観察点Zの割合に基づいて行動体Yの移動又は滞留の報知を行うか否かを判定する。
【0063】
このような構成によれば、例えば、所定時間以上“滞留”している場合のように、必要性の高い状況で“移動”又は“滞留”の報知を行うことが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態による移動・滞留判定装置1では、所定範囲Rを設定するための設定部6を備えている。
【0065】
このような構成によれば、目的に応じて所定範囲Rを設定することで、適切な“移動”、“滞留”の判定を行うことが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態による移動・滞留判定装置1では、観察点Zは、行動体Yの体の中心線上の部位を検出されたものである。
【0067】
このような構成によれば、体全体が移動していなければ、手足を動かした程度で“移動”と判定されることが防止される。
【0068】
尚、本発明の移動・滞留判定装置は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。
【0069】
例えば、上記実施の形態では、“所定範囲R内に含まれる観察点Zの割合”として“所定範囲R内に含まれる観察点Zの数”を例に説明を行ったが、“観察点Zが所定範囲R内に留まった時間”を用いてもよい。例えば、1秒間隔で撮影された時系列画像Xのうち、4個の観察点Zが所定範囲R内に留まった場合には、「5秒間のうち、4秒間留まった」ことになる。この場合、“観察点Zが所定範囲R内に留まった時間”は、連続している必要はなく、トータルの時間で考えれば良い。
【0070】
また、上記実施の形態では、各セットの1番目の画像Xの観察点Zを基準点Sとしたが、1番目以外の画像Xの観察点Zを基準点Sとしてもよい。但し、先読み機能を果たすためには、最終番目以外の画像Xの観察点Zを基準点Sとすることが好ましい。
【0071】
また、上記実施の形態では、各セットに含まれる時系列画像Xは1枚ずつずれていったが、複数枚ずつずれていってもよい。また、判定に用いる時系列画像Xは、撮影された動画上で連続しているフレームを必ずしも用いなくても、所定フレーム数ごとに取得したものを時系列画像Xとして用いてもよく、この場合も本発明の“時系列画像”に含まれる。
【0072】
また、上記実施の形態では、一の円周内のみを所定範囲Rとして用いたが、同心円状の複数の円周を設け、内側の円周を用いて詳細判定を行い、外側の円周を用いて簡易判定を行っても良い。この場合も、所定範囲Rの形状は円周に限らないのはもちろんである。
【0073】
また、上記実施の形態では、一の観察点Z(“首”)に着目して“移動”、“滞留”の判定を行ったが、他の観察点Z(“腰”)に関しても同時並行で着目して“移動”、“滞留”の判定を行ってもよい。この場合、例えば、“首”を基準とした所定範囲Rと、“腰”を基準とした所定範囲Rと、が重なっている場合に、「判定が正しい」と判断する構成が考えられる。
【0074】
また、上記実施の形態では関節(上記実施の形態では、“首”の関節)を観察点Zとして検出したが、関節以外の部位を観察点Zとして検出してもよい。
【0075】
また、上記実施の形態では、“移動”、“滞留”の判定を行ったが、検出された観察点Zに基づき、行動体Yの“移動の軌跡”、“移動の態様”を求めることも可能である。
【0076】
また、報知は、他の条件と合わせて行ってもよい。例えば、“立っている人”に限定して“移動”、“滞留”を報知する等が考えられる。この場合には、記憶部2に記憶された“関節識別基準”及び“行動体特定基準”を参照して、“立っている人”を特定することが可能である。
【0077】
また、上記実施の形態では、記憶部2及び検出部3が移動・滞留判定装置1に含まれていたが、観察点Zを取得することができれば、移動・滞留判定装置1に含まれていなくてもよい。例えば、移動・滞留判定装置1とは別体に設けられた検出部3が記憶部2を参照して観察点Zを検出し、検出された観察点Zを取得部4が通信により取得する構成等が考えらえる。
【0078】
また、本実施の形態による移動・滞留判定は、リアルタイムで行ってもよいし、目的によっては録画した時系列画像Xを用いて後から行ってもよい。
【0079】
また、上記実施の形態では、行動体Yとして人間を例に説明したが、動物やロボットについて使用することも可能である。例えば、動物の場合には、喧嘩を始めたような場合に迅速に対処することが可能となる。
【0080】
また、本発明は、移動・滞留判定装置1が行う処理に相当するプログラムや、当該プログラムを記憶した記録媒体にも応用可能である。記録媒体の場合、コンピュータ等に当該プログラムがインストールされることとなる。ここで、当該プログラムを記憶した記録媒体は、非一過性の記録媒体であっても良い。非一過性の記録媒体としては、CD-ROM等が考えられるが、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
1 移動・滞留判定装置
2 記憶部
3 検出部
4 取得部
5 判定部
6 設定部
7 報知部
R 所定範囲
S 基準点
X 時系列画像
Y 行動体
Z 観察点
図1
図2
図3
図4
図5