(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-02-07
(45)【発行日】2025-02-18
(54)【発明の名称】部材連結金具
(51)【国際特許分類】
F16B 7/04 20060101AFI20250210BHJP
F16B 2/06 20060101ALI20250210BHJP
E04G 7/14 20060101ALI20250210BHJP
【FI】
F16B7/04 301M
F16B2/06 A
E04G7/14 A
(21)【出願番号】P 2021063063
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592018629
【氏名又は名称】三進金属工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000152424
【氏名又は名称】株式会社日建設計
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】橋本 明彦
(72)【発明者】
【氏名】大庭 拓也
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】実公昭35-013964(JP,Y1)
【文献】実公昭35-013963(JP,Y1)
【文献】実公昭48-020900(JP,Y1)
【文献】特開2021-071199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/04
F16B 2/06
F16L 3/22
E04G 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの連結対象部材を連結するための部材連結金具であって、
第1クランプおよび第2クランプと、両クランプを連結するためのクランプ連結具とを備え、
前記第1クランプおよび前記第2クランプは、連結対象部材を挟持可能な両側板部の基端部間が中間板部によって連結されたコ字型のクランプ本体と、前記両側板部の先端部間に架橋され、かつ前記両側板部の間隔を調整するための締結具とを備え、
前記第1クランプおよび前記第2クランプは、互いの中間板部の外面同士を対向させた状態で前記クランプ連結具によって連結され
、
前記第1クランプおよび前記第2クランプの両側板部のうち、一方の側板部の先端部に、前記締結具を揺動自在に、かつ挿通移動可能に支持する支持孔が設けられるとともに、他方の側板部の先端部に、前記締結具の他端を掛止し、かつ先端側に開口する切欠部が設けられ、
前記締結具の揺動操作に基づいて、前記締結具の他端が前記切欠部に対し離脱可能に構成されていることを特徴とする部材連結金具。
【請求項2】
前記第1クランプのコ字凹部における両端開口の開口方向と、前記第2クランプのコ字凹部における両端開口の開口方向とが直交して配置された状態で、両クランプが前記クランプ連結具によって固定されている請求項1に記載の部材連結金具。
【請求項3】
前記第1クランプのコ字凹部における両端開口の開口方向と、前記第2クランプのコ字凹部における両端開口の開口方向とが平行に配置された状態で、両クランプが前記クランプ連結具によって固定されている請求項1に記載の部材連結金具。
【請求項4】
前記第1クランプおよび前記第2クランプの中間板部に対して直交する中心軸回りに、前記第1クランプが前記第2クランプに対し前記クランプ連結具によって回転操作可能に連結されている請求項1に記載の部材連結金具。
【請求項5】
前記締結具による拘束が解除された自然状態において、前記第1クランプおよび前記第2クランプにおける両側板部は、その先端部側の間隔が基端部側の間隔よりも広くなるように形成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の部材連結金具。
【請求項6】
前記締結具は、ボルトと、ナットとを備え、
前記ナットは、前記ボルトの軸部を螺合する筒状部の端部に抜け止め部が設けられた長ナットによって構成され、
前記第1クランプおよび前記第2クランプの両側板部のうち、一方の側板部に前記ナットの筒状部が貫通するように設けられるとともに、他方の側板部に前記ボルトの軸部が貫通するように設けられている請求項1~
5のいずれか1項に記載の部材連結金具。
【請求項7】
前記一方の側板部の外面に座ぐり部が設けられ、その座ぐり部内に前記ナットの抜け止め部が収容されるとともに、
前記他方の側板部の外面に座ぐり部が設けられ、その座ぐり部内に前記ボルトの頭部が収容されている請求項
6に記載の部材連結金具。
【請求項8】
連結対象部材は角材である請求項1~
7のいずれか1項に記載の部材連結金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、角材等の2つの連結対象部材を互いに連結するための部材連結金具に関する。
【背景技術】
【0002】
角材等の長尺な2つの木質製連結対象部材を連結するための部材連結金具としては例えば、下記特許文献1に示すように両側板部の基端部間が中間板部によって連結されたコ字状の連結金具が周知である。この連結金具は、その中間板部の外面にネジ留めによって第1連結対象部材が固定されるとともに、コ字凹部内に第2連結対象部材が収容された状態でその第2連結対象部材がネジ留めによって両側板部に固定されることによって、第1連結対象部材および第2連結対象部材が互いに連結されるように構成されている。
【0003】
また特許文献2に示す連結金具は、コ字状のクランプ金具を備え、そのコ字凹部内に第1連結対象部材および第2連結対象部材を重ね合わせて収容し、一方の側板部に設けられたボルトによって第1連結対象部材および第2連結対象部材を他方の側板部側に圧締して固定することにより、第1連結対象部材および第2連結対象部材をコ字凹部内で互いに圧接した状態に連結するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】意匠登録第1446609号
【文献】特許第5244866号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す従来の部材連結金具は、各連結対象部材を両側板部および中間板部にネジ留めによって固定するものであるため、このネジ留め作業が面倒であり、部材連結作業が困難であるという課題があった。さらに特許文献1の部材連結金具は、第1部材に対し第2部材を位置合わせするのに手間取り、位置合わせを精度良く簡単に行うことができないという課題があった。
【0006】
また特許文献2に示す従来の部材連結金具においても、第1連結対象部材に対し第2連結対象部材が位置ずれし易く、位置合わせを効率良く簡単に行うことができないという課題があった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、連結対象部材同士を位置精度良く簡単に連結することができる部材連結金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0009】
[1]2つの連結対象部材を連結するための部材連結金具であって、
第1クランプおよび第2クランプと、両クランプを連結するためのクランプ連結具とを備え、
前記第1クランプおよび前記第2クランプは、連結対象部材を挟持可能な両側板部の基端部間が中間板部によって連結されたコ字型のクランプ本体と、前記両側板部の先端部間に架橋され、かつ前記両側板部の間隔を調整するための締結具とを備え、
前記第1クランプおよび前記第2クランプは、互いの中間板部の外面同士を対向させた状態で前記クランプ連結具によって連結されていることを特徴とする部材連結金具。
【0010】
なお本発明において「対向」という場合、対接、つまり接触させる場合も含まれる。
【0011】
[2]前記第1クランプのコ字凹部における両端開口の開口方向と、前記第2クランプのコ字凹部における両端開口の開口方向とが直交して配置された状態で、両クランプが前記クランプ連結具によって固定されている前項1に記載の部材連結金具。
【0012】
[3]前記第1クランプのコ字凹部における両端開口の開口方向と、前記第2クランプのコ字凹部における両端開口の開口方向とが平行に配置された状態で、両クランプが前記クランプ連結具によって固定されている前項1に記載の部材連結金具。
【0013】
[4]前記第1クランプおよび前記第2クランプの中間板部に対して直交する中心軸回りに、前記第1クランプが前記第2クランプに対し前記クランプ連結具によって回転操作可能に連結されている前項1に記載の部材連結金具。
【0014】
[5]前記締結具による拘束が解除された自然状態において、前記第1クランプおよび前記第2クランプにおける両側板部は、その先端部側の間隔が基端部側の間隔よりも広くなるように形成されている前項1~4のいずれか1項に記載の部材連結金具。
【0015】
[6]前記第1クランプおよび前記第2クランプの両側板部のうち、一方の側板部の先端部に、前記締結具を揺動自在に、かつ挿通移動可能に支持する支持孔が設けられるとともに、他方の側板部の先端部に、前記締結具の他端を掛止し、かつ先端側に開口する切欠部が設けられ、
前記締結具の揺動操作に基づいて、前記締結具の他端が前記切欠部に対し離脱可能に構成されている前項1~5のいずれか1項に記載の部材連結金具。
【0016】
[7]前記締結具は、ボルトと、ナットとを備え、
前記ナットは、前記ボルトの軸部を螺合する筒状部の端部に抜け止め部が設けられた長ナットによって構成され、
前記第1クランプおよび前記第2クランプの両側板部のうち、一方の側板部に前記ナットの筒状部が貫通するように設けられるとともに、他方の側板部に前記ボルトの軸部が貫通するように設けられている前項1~6のいずれか1項に記載の部材連結金具。
【0017】
[8]前記一方の側板部の外面に座ぐり部が設けられ、その座ぐり部内に前記ナットの抜け止め部が収容されるとともに、
前記他方の側板部の外面に座ぐり部が設けられ、その座ぐり部内に前記ボルトの頭部が収容されている前項7に記載の部材連結金具。
【0018】
[9]連結対象の連結対象部材は角材である請求項1~8のいずれか1項に記載の部材連結金具。
【発明の効果】
【0019】
発明[1]の部材連結金具によれば、両クランプの両側板部間に連結対象部材をそれぞれ収容して、締結具により締結するだけで、両連結対象部材を位置精度良く簡単に連結することができる。
【0020】
発明[2]の部材連結金具によれば、連結対象の2つの連結対象部材を直交した状態にスムーズに連結することができる。
【0021】
発明[3]の部材連結金具によれば、連結対象の2つの連結対象部材を平行に配置した状態にスムーズに連結することができる。
【0022】
発明[4]の部材連結金具によれば、第1連結対象部材に対し第2連結対象部材を回転操作自在に連結することができる。
【0023】
発明[5]の部材連結金具によれば、両クランプの各コ字凹部に対し、各連結対象部材の出し入れ操作を効率良く簡単に行うことができる。
【0024】
発明[6]の部材連結金具によれば、締結具をその他端を切欠部から離脱させて支持孔側に移動させることによって、締結具の例えばボルトをナット等から切り離すことなく接続したままの状態で、コ字凹部の両側板部先端側を開放できて、その先端側開放部を介して連結対象部材の出し入れ操作を行うことができる。
【0025】
発明[7]の部材連結金具によれば、ボルトの挿入側端部がナットを貫通して突出するのを防止でき、ボルトの挿入側端部が突出することによる不具合例えば、部材連結の弊害になる等の不具合を防止することができる。
【0026】
発明[8]の部材連結金具によれば、ボルトの頭部やナットの抜け止め部が両側板部の外面から突出するのを防止でき、その突出による不具合をより一層確実に防止することができる。
【0027】
発明[9]の部材連結金具によれば、角材同士を確実に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1はこの発明の第1実施形態である部材連結金具を用いて角材を連結した状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は第1実施形態の部材連結金具を示す斜視図である。
【
図3】
図3は第1実施形態の部材連結金具を示す正面図である。
【
図4】
図4は第1実施形態の部材連結金具を分解して示す正面図である。
【
図5】
図5は第1実施形態の部材連結金具のクランプ本体を示す斜視図である。
【
図6A】
図6Aは第1実施形態の部材連結金具において連結対象部材の取付手順を説明するための斜視図である。
【
図6B】
図6Bは第1実施形態の部材連結金具において連結対象部材の取付手順を説明するための斜視図である。
【
図7】
図7は第2実施形態の部材連結金具を示す斜視図である。
【
図8A】
図8Aは第3実施形態の部材連結金具を示す正面図である。
【
図9】
図9は本発明の部材連結金具の締結具に適用可能な変形例としてのボルトを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1はこの発明の第1実施形態である部材連結金具P1を用いてT1,T2を連結した状態で示す斜視図、
図2~
図5は第1実施形態の部材連結金具P1を説明するための図である。これらの図に示すように本第1実施形態の部材連結金具P1は、角材等の連結対象の部材である第1連結対象部材T1および第2連結対象部材T2を連結する際に用いられるものである。
【0030】
この第1実施形態の部材連結金具P1は、第1連結対象部材T1を保持(挟持)するための第1クランプ11と、第2連結対象部材T2を保持(挟持)するための第2クランプ12と、両クランプ11,12を連結するためのクランプ連結具としての金属製のリベット13とを基本的な構成要素として備えている。また本実施形態において、第1および第2クランプ11,12は、共に同じ構成を有しており、金属製のクランプ本体2と、金属製の締結具5とをそれぞれ備えている。
【0031】
クランプ本体2は、略平行に配置された両側板部3,3と、両側板部3の基端部間を連結する中間板部4とが一体に形成されたコ字型の形状を有している。このクランプ本体2は、両側板部3間に形成されるコ字凹部20内に連結対象部材T1,T2を収容可能に構成されており、後述するようにコ字凹部20内に収容された連結対象部材T1,T2を両側板部3によって挟持してクランプできるように構成されている。
【0032】
クランプ本体2における両側板部3の両側縁部および先端縁部と、中間板部4の両側縁部とは内側に曲げ加工されて縁曲げ部31,41が形成されている。さらに両側板部3における両側縁部の縁曲げ部31には、鋸歯状の刻み目が形成されて滑り止め部39として構成されている。
【0033】
中間板部4には、中間板部4を貫通する貫通孔42が形成されている。貫通孔42は中央に1つと、その周囲に4つとの計5つ設けられており、換言すると5つの貫通孔42が、サイコロの「5」の目の点記号のように配置されている。
【0034】
両側板部3にも、中央に1つと、その周囲に4つとの計5つの貫通孔32がそれぞれ設けられており、上記と同様5つの貫通孔32が、サイコロの「5」の目の点記号のように配置されている。両側板部3間において、5つの貫通孔32は互いに対向した状態に配置されている。
【0035】
両側板部3における貫通孔32よりも先端側には、その外面側に座ぐり部33が形成されている。両側板部3のうち、一方の側板部3における座ぐり部33には、正方形の角孔状の支持孔34が形成されている。さらに他方の側板部3には、座ぐり部33から先端縁に至り、かつ先端側に開口する切欠部35が形成されている。
【0036】
ここで本実施形態のクランプ本体2は、後述するように締結具5によって拘束されていない自然状態においては
図4および
図5に示すように、両側板部3間の間隔が、基端側から先端側に向かうに従って次第に広くなるように形成されている。換言すると、両側板部3の中間板部4に対する開き角度が90°よりも大きくなるように形成されており、両側板部3が外側に少し開いた逆ハの字状ないし先開き状に配置されている。
【0037】
一方、締結具5は、ボルト51と、そのボルト51が螺合されるナット55とを備えている。
【0038】
ナット55は、袋状の長ナットによって構成されており、内周面に雌ねじが刻設された筒状部56と、その筒状部56におけるボルト51の受入側の端部とは反対側の端部(非受入側端部)に大径の抜け止め部57が形成されている。
【0039】
このナット55における筒状部56が、クランプ本体2における両側板部3のうち、一方の側板部3の外面側から支持孔34に挿通されて、抜け止め部57が座ぐり部33内に配置されることにより、ナット55が一方の側板部3に組み付けられている。この組付状態においては、ナット55の筒状部56が支持孔34に揺動自在に支持されており、ナット55を、他方の側板部3の切欠部35の切欠方向(
図4の上下方向)に沿って揺動操作可能に構成されている。さらにナット55の抜け止め部57は、座ぐり部33内に確実に収容できて、抜け止め部57の端面が一方の側板部3の外面から外側に突出しないように構成されている。
【0040】
ボルト51は、外周面に雄ねじが刻設された軸部52と、軸部52の挿入側の端部とは反対側の端部(非挿入側端部)に大径の頭部53が形成されている。このボルト51の軸部52がナット55の筒状部56に挿入されて軸部52の雄ねじが筒状部56の雌ねじに螺合されることによって、ボルト51がナット55に組み付けられて、締結具5が構成されている。
【0041】
なお一方の側板部3における支持孔34は、ボルト51の軸部52と、ナット55の筒状部56とは挿通可能であるが、ボルト51の頭部53と、ナット55の抜け止め部57とは挿通できない大きさに形成されている。
【0042】
そしてこの締結具5においてボルト51を緩めた状態で既述したようにナット55をボルト51と共に揺動操作すると、ボルト51の軸部52が他方の側板部3の切欠部35に挿入掛止したり、切欠部35から取り外したりできるように構成されている。こうして締結具5が一方の側板部3に揺動操作可能に支持されて、その揺動操作に基づいて、締結具5の他端(軸部52の非挿入側端部)を切欠部35に対し掛脱可能に構成されている。さらにボルト51を切欠部35から離脱させた状態では、後述するように締結具5を全体的に支持孔34側に移動させると、コ字凹部20における両側板部3の先端側が開放されるようになっている(
図6B参照)。
【0043】
また本実施形態においてボルト51の軸部52を切欠部35内に確実に収容した状態においては、頭部53の端面が他方の側板部3の外面から外側に突出しないように構成されている。
【0044】
さらにボルト51を切欠部35に掛止した状態において、ボルト51を締付方向に回転操作すると、締結具5の全長が短くなり、それに追従して両側板部3がその弾性力に抗して間隔が狭くなるように内側に閉じて、コ字凹部20内に収容された連結対象部材T1,T2が両側板部3によって挟持される一方、ボルト51を緩める方向に回転操作すると、締結具5の全長が長くなり、それに追従して両側板部3がその弾性復元力によって間隔が広がるように外側に開いて、コ字凹部20内に収容された連結対象部材T1,T2に対し両側板部3による挟持が解除されるように構成されている。
【0045】
このように本実施形態においては、ボルト51の回転操作に基づいて、両側板部3の間隔を調整できて、その調整によって、両側板部3間に配置された連結対象部材T1,T2を挟持したり解除したりできるように構成されている。
【0046】
また本実施形態においては、締結具5のナット55として長ナットを用いているため、ボルト51のナット55へのねじ込み量にかかわらず、例えばボルト51をナット55に多量にねじ込んだとしても、ボルト51の挿入側端部が、ナット55の非受入側端部を突き抜けて外側に配置されることがない。従って締結具5の端部が、両側板部3の外面から外側に突出するのを防止することができる。
【0047】
なお本実施形態においては、締結具5におけるナット55を一方の側板部3に設けるとともに、ボルト51を他方の側板部3に設けるようにしているが、それだけに限られず、本発明においては、ボルト51を一方の側板部3に設けるとともに、ナット55を他方の側板部3に設けるようにしても良い。
【0048】
第1クランプ11および第2クランプ12は、上記のクランプ本体2と、上記の締結具5とをそれぞれ備え既述した通り、互いに同一の構成を有している。そして両クランプ11,12が以下に説明するようにクランプ連結具としてのリベット13によって連結されている。
【0049】
まず第1クランプ11の中間板部4の外面と、第2クランプ12の中間板部4の外面とを対向させて重ね合わせる状態に配置する。この場合、両クランプ11,12の中間板部4,4の対向面に対し直交し、かつ中間板部4,4の中心を通る軸を中心軸Xとして(
図3参照)、この中心軸X回りに第1クランプ11が第2クランプ12に対し90°位相をずらせた捻回状態で、互いの中間板部4,4同士をリベット留めで固定する。換言すると、第1クランプ11のコ字凹部20の両端に設けられた両端開口の開口方向D1と、第2クランプ12のコ字凹部20の両側に設けられた両端開口の開口方向D2を直交させるように配置した状態で、リベット留めで固定する。
【0050】
リベット留めに際しては、中間板部4,4に設けられた5つの貫通孔32のうち、対角位置に配置される2つの貫通孔32にリベット13をそれぞれ挿通して、そのリベット13の挿入側の端部をカシメ加工することによって固定する。こうして第1クランプ11を第2クランプ12に対し90°捻回した状態で固定することにより、本第1実施形態の部材連結金具P1が形成される。
【0051】
なお本第1実施形態の部材連結金具P1においては、後述の第3実施形態とは異なり、第1クランプ11は第2クランプ12に対し中心軸X回りに回転操作できない状態となっている。
【0052】
この構成の部材連結金具P1においては、第1クランプ11のコ字凹部20の両側に設けられた両端開口の開口方向D1と、第2クランプ12のコ字凹部20の両側に設けられた両端開口の開口方向D2とが直交して配置されている。さらに開口方向D1,D2は中心軸Xに対しそれぞれ直交して配置されている。
【0053】
本第1実施形態において、部材連結金具P1を用いて第1連結対象部材T1を連結する場合、
図6Aに示すように、第1クランプ11における締結具5のボルト51を緩めた状態で、締結具5を外側(
図6Aの上側)に揺動させてボルト51を切欠部35から離脱させる。続いて
図6Bに示すように、締結具5の全体を一方の側板部3の支持孔34に挿通させながら一方の側板部3側に移動させて、締結具5のボルト頭部53を、一方の側板部3の支持孔34の位置まで移動させる。これにより第1クランプ11のコ字凹部20における両側板部3の先端側(
図6Bの上方側)が開放される。なお、この状態ではボルト頭部53が一方の側板部3における支持孔34の周縁部に掛止しているため、締結具5がクランプ本体2から外れ落ちるような不具合を確実に防止することができる。
【0054】
次に、第1クランプ11のコ字凹部20にその先端側開放部から第1連結対象部材T1を収容した後、締結具5を他方の側板部3側に引き出して、ボルト頭部53を他方の側板部3の切欠部35に挿入して掛止する。その後、ボルト51を締め付けて両側板部3を狭幅操作して、両側板部3により第1連結対象部材T1を挟持する。これにより部材連結金具P1の第1クランプ11に第1連結対象部材T1を連結固定することができる。
【0055】
なお言うまでもなく、第2クランプ12に第2連結対象部材T2を挟持させる場合も同様な手順で挟持させるものである。
【0056】
こうして両連結対象部材T1,T2を部材連結金具P1を用いて連結した状態では、中心軸Xに沿って見た場合
図1に示すように、両連結対象部材T1,T2は互いに直交した状態に配置されている。
【0057】
一方、連結対象部材T1,T2の連結を解除する場合には、ボルト51を緩めて、両側板部3を拡幅操作し、ボルト51を切欠部35から離脱させて、締結具5を支持孔34に挿通しつつ一方の側板部3側に移動させてボルト頭部53を支持孔34に掛止する。こうしてクランプ11,12のコ字凹部20の先端側を開放してその開放部を介して連結対象部材T1、T2をコ字凹部20から抜き取れば良い。
【0058】
以上のように構成された本実施形態の部材連結金具P1においては、両クランプ11,12のコ字凹部20内に2つの連結対象部材T1,T2を収容して、ボルト51を締結するだけで、両連結対象部材T1,T2を位置精度良く簡単に連結することができる。
【0059】
また本実施形態では、両クランプ11,12において、締結具5による拘束を解除した自然状態、すなわちボルト51を切欠部35から離脱させて、締結具5を支持孔34側に移動させてコ字凹部20の先端側を開放させた状態では、両側板部3が先開き状に開いているため、両側板部3間のコ字凹部20に対する連結対象部材T1,T2の出入操作を容易に行うことができ、連結対象部材T1,T2の連結作業をより一層簡単に行うことができる。
【0060】
さらに締結具5を支持孔34側に移動させて、コ字凹部20の先端側を開放させた状態では、締結具5のボルト頭部52が支持孔34の周縁部に掛止して、締結具5がクランプ本体2から抜け落ちるのを防止することができる。このように締結具5の抜け落ちを防止できるため、締結具5を付け直したり、締結具5を紛失してしまう等の不具合を確実に防止でき、利便性を向上させることができる。
【0061】
また本第1実施形態の部材連結金具P1において、締結具5のナット55として長ナットを用いているため、ボルト51の締付量にかかわらず、ボルト51の挿入側端部がナット55を突き抜けて配置されることがなく、突き抜けたボルト端部が連結対象部材T1,T2の連結の弊害となるような不具合を防止でき、連結対象部材T1,T2の連結作業を一層スムーズに行うことができる。
【0062】
その上さらに本実施形態においては、両側板部3の外面に座ぐり部33を形成して、その座ぐり部33内にボルト51の頭部53やナット55の抜け止め部57を確実に収容するようにしているため、ボルト頭部53やナット抜け止め部57の一部がクランプ本体2の外面に突出するようなことがなく、この点からも、その突出部が連結対象部材T1,T2の連結の弊害となるような不具合をより確実に防止でき、連結対象部材T1,T2の連結作業をより一層スムーズに行うことができる。
【0063】
また本第1実施形態の部材連結金具P1においては、締結具5を揺動自在に支持する角孔状の支持孔34における内周縁部の上縁部34aを円弧状に形成しているため(
図2および
図5等参照)、締結具5の揺動動作がスムーズに行われるようになり、締結具5の切欠部35に対する掛脱操作を容易に行うことができ、ひいては部材連結作業を容易に行うことができる。
【0064】
<第2実施形態>
図7はこの発明の第2実施形態である部材連結金具P2を示す斜視図である。同図に示すように、この第2実施形態の部材連結金具P2が、上記第1実施形態の部材連結金具P1と相違する点は、第1実施形態の部材連結金具P1においては、第1クランプ11が第2クランプ12に対し中心軸X回りに90°位相をずらせた捻回状態で固定されているのに対し、この第2実施形態の部材連結金具P2においては、第1クランプP1が第2クランプP2に対し中心軸X回りの位相を一致させた非捻回状態で固定されている点である。
【0065】
この第2実施形態の部材連結金具P2においては、第1クランプ11が第2クランプ12に対し非捻回状態に配置されているため、第1クランプ11におけるコ字凹部20の両端開口の開口方向D1と、第2クランプ12におけるコ字凹部20の両端開口の開口方向D2とが平行に配置される。このため第1クランプ11に保持した第1連結対象部材T1と、第2クランプ12に保持した第2連結対象部材T2とを平行に配置することができる。
【0066】
なおこの第2実施形態の部材連結金具P1においても上記第1実施形態と同様、第1クランプ11は第2クランプ12に対し中心軸X回りに回転操作できない状態となっている。
【0067】
この第2実施形態の部材連結金具P2において他の構成は、上記第1実施形態の部材連結金具P1と同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0068】
この第2実施形態の部材連結金具P2においても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0069】
<第3実施形態>
図8Aはこの発明の第3実施形態である部材連結金具P3を示す正面図、
図8Bはその分解図である。両図に示すように、この第3実施形態の部材連結金具P3が、上記第1および第2実施形態の部材連結金具P1,P2と相違する点は、第1および第2実施形態の部材連結金具P1,P2においては、第1クランプP1が第2クランプP2に対し中心軸X回りの回転を規制した状態に固定されているのに対し、この第3実施形態の部材連結金具P3においては、第1クランプP1が第2クランプP2に対し中心軸X回りに回転操作可能に取り付けられている点である。
【0070】
すなわちこの第3実施形態において、両クランプ11,12の重ね合わされた中間板部4の内面に回転軸プレート14がそれぞれ配置され、1本のリベット13が回転軸プレート14の中央孔および中間板部4の中央の貫通孔42に挿通されてカシメ加工されて固定されている。これにより第1クランプ11が第2クランプ12に対しリベット13の軸心(中心軸X)回りに相対的に回転自在に取り付けられている。
【0071】
この第3実施形態の部材連結金具P3において他の構成は、上記第1および第2実施形態の部材連結金具P1,P2と同様であるため、同一または相当部分に同一符号を付して重複説明は省略する。
【0072】
この第3実施形態の部材連結金具P3においては、第1クランプ11が第2クランプ12に対し回転操作自在に構成されているため、第1クランプ11に保持した第1連結対象部材T1を、第2クランプ12に保持した第2連結対象部材T2に対し回転自在に連結できて、2つの連結対象部材T1,T2を多様な形態で連結することができる。
【0073】
この第3実施形態の部材連結金具P3においても、上記第1および第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
<変形例>
なお上記実施形態においては、連結対象部材T1,T2として角材を用いる場合を例に挙げて説明したが、本発明において連結対象部材は特に限定されるものではなく、角材以外の連結対象部材を連結するようにしても良い。例えば丸棒材、板材等を連結するようにしても良いし、さらに木材等の木質製の連結対象部材以外の部材例えば、プラスチック製の連結対象部材や、金属製の連結対象部材を連結するようにしても良い。
【0075】
また上記実施形態においては、締結具5のナット55として長ナットを用いる場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、ナットとして、軸心方向の長さが短い一般的なナットを用いるようにしても良い。
【0076】
また上記実施形態においては、締結具5のボルト51として軸部52のほぼ全長に雄ねじが刻設されたものを使用しているが、それだけに限られず、本発明においては
図9に示すように、ボルト51として、軸部52の一部(頭部53寄りの部分)に網目状のローレット52aが設けられたローレット付きのものを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
この発明の部材連結金具は、角材等の連結対象の連結対象部材を所定の形に組み付けたり重ね合わせたりするにあたって連結対象部材同士を連結固定する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0078】
11:第1クランプ
12:第2クランプ
13:リベット(クランプ連結具)
2:クランプ本体
20:コ字凹部
3:両側板部
33:座ぐり部
34:支持孔
35:切欠部
4:中間板部
5:締結具
51:ボルト
52:軸部
53:頭部
55:ナット
56:筒状部
57:抜け止め部
D1:開口方向
D2:開口方向
T1:第1連結対象部材
T2:第2連結対象部材
P1~P3:部材連結金具
X:中心軸